JP2006117444A - 固体推進薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】末端水酸基ポリエーテルと硝酸アンモニウムを含有するにもかかわらず、ゲル化せず注型可能な流動性に優れた固体推進薬組成物を提供する。
【解決手段】硝酸アンモニウムを含む酸化剤と、燃料兼結合剤としての末端水酸基ポリエーテルとカチオン性、アニオン性又は両親媒性の界面活性剤である流動化剤を含む固体推進薬組成物。更に、硝酸アンモニウムはその表面で重合し、被覆膜を形成する化合物により被覆処理が施されている。
【選択図】なし

Description

本発明は燃料兼結合剤に末端水酸基ポリエーテルを用い、酸化剤に硝酸アンモニウムを用いた固体推進薬組成物に関する。
ロケットモータに用いられる固体推進薬は、酸化剤と燃料成分からなるコンポジット推進薬と、ニトログリセリンとニトロセルロースを主成分とするダブルベース推進薬とに大別される。現在、これらの固体推進薬の中で過塩素酸アンモニウムを酸化剤とし、アルミニウム粉を金属燃料とし、ポリブタジエンを主成分とする燃料兼結合剤からなるコンポジット推進薬が、その優れた燃焼特性と機械物性により最も広く使用されている。
一方、固体推進薬の開発において安全性向上のため、火災等の予期せぬ状況においても爆轟等の衝撃的な挙動をしない不感度性(IM性)を持った推進薬の要求が高くなっており、これらの要求を満足するために硝酸アンモニウムを酸化剤として用いた固体推進薬の研究が進められている。しかし、硝酸アンモニウムを酸化剤とする固体推進薬は、過塩素酸アンモニウムを酸化剤とする固体推進薬に比べ不感度性は優れているものの、燃焼性能が劣るという問題点が知られている。そこで、燃焼特性を改善するためにHMX等の高エネルギー酸化剤を用いる方法とバインダーにエネルギーを付加する方法が知られている。バインダーにエネルギーを付加する方法として、「燃料兼結合剤にアジ化ポリマーを用いる方法」と「エネルギー可塑剤、すなわちTEGDN(トリエチレングリコールジナイトレート)、BuNENA(n−ブチル−2−ニトラトエチルニトラミン)等の正の爆発熱を有する物質を用いる方法」が既に提案されている。(例えば特許文献1〜4参照)なお、TEGDNやBuNENA等のエネルギー可塑剤は極性物質であるため、従来よりコンポジット系固体推進薬に用いられてきた燃料兼結合剤であるブタジエン系ポリマーには良好な相溶性を示さない。そこで、これらエネルギー可塑剤を用いる際には、燃料兼結合剤をエネルギー可塑剤と相溶性を示すポリマーに変更する必要があり、ポリエチレンオキシドやポリテトラヒドロフランといったポリエーテルはこれらの要求を満たした燃料兼結合剤に適したポリマーの1つであり、さらにポリエチレンオキシドとポリテトラヒドロフランのコポリマーは非晶質であるため、より好んで用いられる。(特許文献2参照)
ところが、末端水酸基ポリエーテルと硝酸アンモニウムを混合するとゲル化する。その結果、推進薬スラリーに流動性がないため、ロケットモータに注型することができなかった。
特開平11−92263号公報 特許第3370669号公報 特表2002−516814号公報 特許第3370118号公報
本発明は、末端水酸基ポリエーテルと硝酸アンモニウムを含有するにもかかわらず、流動性に優れた固体推進薬組成物の提供を目的とする。
本発明者らは、前記の問題点を考慮し鋭意研究した結果、末端水酸基ポリエーテルと酸化剤に硝酸アンモニウムを含む推進薬組成物に流動化剤をわずかに配合することで推進薬スラリーに流動性を与え、注型ができるようになることを見出し本発明に到達した。即ち本発明は、下記の通りである。
(1)硝酸アンモニウムを含む酸化剤と、燃料兼結合剤としての末端水酸基ポリエーテルと流動化剤を含むことを特徴とする固体推進薬組成物。
(2)末端水酸基ポリエーテルが、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフランまたはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体であることを特徴とする(1)記載の固体推進薬組成物。
(3)流動化剤が、カチオン性、アニオン性または両親媒性の少なくともいずれかの界面活性剤であることを特徴とする(1)記載の固体推進薬組成物。
(4)流動化剤が、1級、2級または3級アミンであることを特徴とする(1)記載の固体推進薬組成物。
(5)流動化剤が、アミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基、イミン基、イミド基またはアジリジン環基の官能基の内、少なくともいずれかの官能基を有することを特徴とする(1)記載の固体推進薬組成物。
(6)アジリジン環基を有する流動化剤が、カルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物またはその誘導体であることを特徴とする(5)記載の固体推進薬組成物。
(7)アミド基またはエステル基を有する流動化剤が、芳香族ポリアミド化合物または/及び芳香族ポリエステル化合物であることを特徴とする(5)記載の固体推進薬組成物。
(8)芳香族ポリアミド化合物または/及び芳香族ポリエステル化合物が、カルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物もしくはその誘導体または/及びカルボン酸基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物もしくはその誘導体が重合したポリマーであることを特徴とする(7)記載の固体推進薬組成物。
(9)アジリジン環基を有する流動化剤が、アジリジン環基を少なくとも1個以上有するホスフィンオキシド化合物またはその誘導体であることを特徴とする(5)記載の固体推進薬組成物。
(10)アミド基を有する流動化剤が、窒素にホスフィンオキシド基が少なくとも1個結合したポリホスフィンオキシアミドであることを特徴とする(5)記載の固体推進薬組成物。
(11)少なくとも硝酸アンモニウム表面で重合し、被覆膜を形成する化合物により被覆処理を施された硝酸アンモニウムを含む酸化剤と、燃料兼結合剤としての末端水酸基ポリエーテルを含むことを特徴とする固体推進薬組成物。
(12)硝酸アンモニウム表面で重合し被覆膜を形成する化合物が、カチオン重合により被覆膜を形成するものであることを特徴とする(11)記載の固体推進薬組成物。
(13)カチオン重合により被覆膜を形成する化合物が、少なくとも1つ以上のアジリジン環基を有する化合物またはその誘導体であることを特徴とする(12)記載の固体推進薬組成物。
(14)被覆膜を形成するアジリジン環基を有する化合物が、カルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物またはその誘導体であることを特徴とする(13)記載の固体推進薬組成物。
(15)被覆膜を形成するアジリジン環基を有する化合物が、少なくとも1個以上有するホスフィンオキシド化合物またはその誘導体であることを特徴とする(14)記載の固体推進薬組成物。
に係わる。
末端水酸基ポリエーテルと硝酸アンモニウムを混合するとゲル化するが、流動化剤の添加により流動性が得られ、その結果、推進薬スラリーの流動性が維持され、ロケットモータに容易に注型が可能になった。
以下、本発明について、特にその好ましい態様について、説明する。
本発明である推進薬に用いるバインダーには、燃料兼結合剤として、末端水酸基ポリエーテル、例えばポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン、ポリネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、またはこれらポリエーテルのコポリマーが好ましく、硬化剤として、好ましくは水酸基と反応するイソシアネート化合物、例えばトリレジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメソシアネート、トリフェニルジメチレントリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が用いられる。架橋剤として、好ましくは多官能の水酸基をもつ化合物、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ジグリセリン等や、多官能のイソシアネートをもつ化合物等が用いられる。硬化触媒として、好ましくはブチルチントリクロライド、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート等の有機錫化合物や、フェリックアセチルアセトン、フェリックジフェニルアセチルアセトン等の有機鉄化合物、トリスパラ−エトキシフェニルビスマス、トリフェニルビスマス、無水マレイン酸等の触媒が使用できる。燃料兼結合剤以外にバインダー成分として、不活性及び/またはエネルギー可塑剤を添加することができる。
本発明において、硝酸アンモニウムとは、硝酸アンモニウム単体もしくは相安定化硝酸アンモニウムをいう。相安定化硝酸アンモニウムとは、硝酸カリウムとの共晶にした硝酸アンモニウム、または酸化亜鉛や酸化ニッケル等の金属酸化物をプレミックスした硝酸塩、あるいは長鎖脂肪族アミンをプレミックスした硝酸塩を意味する。硝酸アンモニウムに対する硝酸カリウムの添加量は特に限定されるものではないが、硝酸カリウムの添加量が少ないと相安定化効果が低く、また多すぎると酸化剤としてのエネルギー低下を招くため、酸化亜鉛や酸化ニッケル、長鎖脂肪族アミン、カリウム等の硝酸塩の添加量は必要とされる硝酸アンモニウムの相安定性を得られるよう、任意に決定してよい。ただし、これらの塩の添加量が少ないと相安定化効果が低く、また多すぎると酸化剤としてのエネルギー低下を招く。硝酸カリウムの添加量は、好ましくは5%〜15%、より好ましくは7%〜13%である。
本発明においては、固体推進薬に用いる酸化剤として硝酸アンモニウムを用いることを特徴とするが、酸化剤には硝酸アンモニウムの他、過塩素酸アンモニウムを初めとするコンポジット推進薬に一般的に用いられる酸化剤を併用してもよい。これら酸化剤の平均粒径は特に限定されないが、1〜500μmの範囲であるものが好ましい。
流動化剤とは、未硬化の流動状態にある推進薬(推進薬スラリー)のゲル化状態を緩和し、推進薬スラリーに流動性を与える添加物である。
流動化剤は、界面活性剤、アミン、またはアミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基、イミン基、イミド基、アジリジン環基の官能基の内、少なくともいずれかの管能基を有する化合物であることが好ましい。流動化剤として用いる界面活性剤は、好ましくはカチオン性ないしアニオン性ないし両親媒性のいずれかに属する化合物である。流動化剤として用いるアミンは、好ましくは1級ないし2級ないし3級であることが好ましく、さらに好ましくは3級であることが好ましい。流動化剤に用いるアジリジン環基を有する化合物は、好ましくはカルボキシルアジリジン環を少なくとも1個以上有する化合物またはその誘導体であり、さらに好ましくはカルボキシルアジリジン環基を有する芳香族化合物またはその誘導体である。その他、流動化剤として用いるアジリジン環基を有する化合物は、好ましくはアジリジン環基を有するホスフィンオキシド、さらに好ましくはアジリジン環基の窒素がホスフィンオキシドのリンに結合した化合物ないしはその誘導体である。流動化剤に用いるアミド基ないしはエステル基を有する化合物は、好ましくは芳香族ポリアミド化合物または/及び芳香族ポリエステル化合物であり、さらに好ましくはカルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物またはその誘導体または/及びカルボン酸基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物またはその誘導体が重合した芳香族ポリアミド化合物または/及び芳香族ポリエステルである。流動化剤として用いるポリホスフィンオキシアミドは、好ましくはアミド基の窒素にホスフィンオキシド基が1つ結合したポリフォスフィンオキシドであり、さらに好ましくはアミド基の窒素に炭素が2個以上の長さのアルキル鎖を1または2個結合したポリスルフィンオキシドである。
カルボキシルアジリジン環基とはカルボキシル基の炭素にアジリジン環基の窒素が結合した構造の原子団を言う。
本発明の推進薬の製造方法には、流動化剤を添加する以外、通常のコンポジット系固体推進薬の製造方法がそのまま適用できる。すなわち、燃料兼結合剤であるポリエチレンオキシドとポリテトラヒドロフランのコポリマーと硬化剤、硬化触媒、架橋剤、可塑剤、流動化剤、燃焼触媒、その他添加剤、酸化剤を投入したのち、加温条件下で十分な時間をかけてゆっくりと混合、真空脱泡することが好ましい。その後、この推進薬スラリーを所定の容器(鋳型)に減圧下で注型し、好ましくは35℃〜70℃より好ましくは55℃〜65℃の高温槽で硬化させて作ることが好ましい。投入および混合の順番は好ましくは硝酸アンモニウムを投入する前に流動化剤を入れること以外は、十分な時間をかけて混和をする限りいずれの順番でも良い。また、バインダーと固体成分の比率は、10/90〜30/70(重量比)が好ましい。
また、硝酸アンモニウムは非常に吸湿性が大きいという性質があり、硝酸アンモニウムが持つ水分とイソシアネートが反応し、ガスが発生し、その結果推進薬が発泡しやすいことが知られている。そこで、硝酸アンモニウムの持つ水とイソシアネートとの反応を抑制することが好ましい。硝酸アンモニウムの持つ水とイソシアネートの反応を制御する方法として、硝酸アンモニウムの表面を樹脂で被覆することが有効と考えられる。硝酸アンモニウムを被覆する方法として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂やポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂で被覆する方法が考えられる。しかし、これらの方法では、硝酸アンモニウムに対し、予め欠損無く被覆処理を施す必要がある。さらに欠損無く表面被覆された硝酸アンモニウムを用いても推進薬製造の仕込み、混和工程において被覆膜が剥がれ落ち、硝酸アンモニウムが露出すると、ガスが発生し発泡が起こることが容易に推測される。被覆膜が剥離しないように膜厚を厚くすると、推進薬の燃焼性能が低下するという新たな問題も生じる。しかし、硝酸アンモニウムの表面で重合し、被覆膜を形成する化合物を用いると、製造工程中に被覆膜が剥がれ落ちても、その部位で重合が起こり、被覆膜の補修が可能である。この被覆膜の原料となる化合物は、好ましくはカチオン重合する化合物、より好ましくはアジリジン環基を有する化合物、さらに好ましくはカルボキシルアジリジン環基を有する芳香族化合物またはその誘導体である。これらの化合物で行う硝酸アンモニウムの被覆処理は、推進薬製造前に予め行っても良いし、推進薬製造工程中にこれら被覆剤の原料と硝酸アンモニウムと接触させ、被覆することを前提に予め被覆処理を施すことなく、直接混和してもよい。特にカルボキシルアジリジン環基を有する芳香族化合物またはその誘導体のポリマー、すなわち芳香族ポリアミドまたは/および芳香族ポリエステルは、流動化剤としての効果もあるため、推進薬製造工程中に被覆膜の一部が推進薬スラリーに溶解し、流動性の改善に対しても効果を有する。そのような理由から、カルボキシルアジリジン環基を有する芳香族化合物は最も望ましい化合物と考えられる。なお、カルボキシルアジリジン環基を有する芳香族化合物は硝酸アンモニウムにより、一部変性を伴いながら重合し、芳香族ポリアミドポリエステルになることが知られている。
被覆剤の原料となるホスフィンオキシドは、好ましくはアジリジン環基を有する化合物またはその誘導体であり、さらに好ましくはホスフィンオキシドのリンにアジリジン環基の窒素が結合した化合物またはその誘導体、さらに好ましくはホスフィンオキシドのリンに窒素で結合したアジリジン環基が1個〜3個結合した化合物またはその誘導体である。
〔実施例1〕
次に実施例により、本発明を説明する。なお、実施例1〜4で用いた組成物の組成を表1に示す。特に記述しない限り重量%で示す。
表1に示す組成物のうち、硝酸アンモニウムと2官能、多官能イソシアネート以外を十分な時間をかけて混合したのち、推進薬中の水分率を測定し、0.05%以下であることを確認した。その後、硝酸アンモニウムと2官能、多官能イソシアネートを投入し再度混和・脱泡を行い、減圧下で鋳型に注型し、60℃で2日間硬化させた。
混和後の推進薬の流動性を示す定量的な値を得る目的で、鋳型に注型した推進薬スラリーまたは混和機に残った推進薬スラリーの一部を採取し、図1に示す荷重式推進薬流動性測定器により流動性を測定した。荷重式推進薬流動性測定器に気泡が入らないように細心の注意を行いながら推進薬スラリー50gを装置に入れ、280gの重りを載せ、低部の直径10mmの穴から5分間に落ちる推進薬スラリーの重量を測定した。従来の製造技術で製造性が得られる限界の落下重量は10gであった。
流動化剤1として、アニオン系界面活性剤の一種であるポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(「Newcol 707−SFC」:日本乳化剤株式会社)を用いた。その結果、32gの落下が確認され、流動性が良好であることが認められた。さらに鋳型に注型した推進薬に気泡や充填不良は確認されなかった。
実施例1の組成から流動化剤を除いた組成物について荷重式推進薬流動性測定器により流動性を測定した結果、5gと流動性が悪いことが確認され、従来の製造技術では製造が困難であることが判明した。さらに鋳型に注型した推進薬中に充填不良が多く確認された。
実施例2〜4においても実施例1と同様の方法を用いて流動性の評価を行った。
〔実施例2〕
流動化剤2として、3級アミンの一種であるトリエチレンジアミンを用いた。その結果、荷重式推進薬流動性測定器により流動性を測定した結果、21gの落下が確認され、流動性が良好あることが認められた。さらに鋳型に注型した推進薬中に気泡等の充填不良は確認されなかった。
〔実施例3〕
流動化剤3として、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジンポリマーを用いた。1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジンポリマーとは、1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジンを自己重合させたポリアミドであり、一部変性した1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジン由来のエステル結合を有したポリマーである。その結果、荷重式推進薬流動性測定器により流動性を測定した結果、42gの落下が確認され、流動性が良好あることが認められた。さらに鋳型に注型した推進薬中に気泡等の充填不良は確認されなかった。
〔実施例4〕
流動化剤4として、トリス(1−(2メチル)アジリジニル)フォスフィンンオキシドを用いた。その結果、荷重式推進薬流動性測定器により流動性を測定した結果、38gの落下が確認され、流動性が良好あることが認められた。さらに鋳型に注型した推進薬中に気泡等の充填不良は確認されなかった。
〔実施例5〕
なお、実施例5で用いた組成物の組成を重量%で表2に示す。表2に示す組成では推進薬として機能する酸素バランスに基づく組成比ではないが、硝酸アンモニウムの持つ水分とイソシアネートの反応によるガス発生量をより高感度に検出する目的から、酸化剤には硝酸アンモニウムのみを用い、バインダーの組成比を過剰である本条件に設定した。
表2に示す組成物を混和し、脱泡後、図2に示す発泡量測定装置にセットし、60℃/3日間反応させた。
酢酸エチルで希釈した1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジンに硝酸アンモニウムを浸漬し、50℃加温下で酢酸エチルを除去した。1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジンは硝酸アンモニウム表面で自己重合し、被覆膜を形成した。1,1’−(1,3−フェニレンジカルボキシル)ビス(2−メチル)アジリジンで被覆処理を施した硝酸アンモニウムを用い、フロート計で発泡量を調べた。その結果、発泡は確認されなかった。一方、被覆処理を行っていない硝酸アンモニウムを用いフロート計で発泡量を調べたところ、5.8mLのガス発生が確認された。
Figure 2006117444
Figure 2006117444
本発明の固体推進薬組成物は流動性があり、ロケットモータの分野で好適に用いられる。
本発明の実施例で用いた推進薬の流動性測定器を示す斜視説明図。 本発明の実施例で用いた発泡量測定装置を示す斜視説明図。
符号の説明
1 支柱
2 重り(280g)
3 試料ケース
4 試料
5 穴
6 穴より出てきた試料
7 落下した試料の受け皿
8 フロート計
9 液面
10 ゴム栓
11 発生ガス泡
12 流動パラフィン
13 試料瓶
14 試料

Claims (15)

  1. 硝酸アンモニウムを含む酸化剤と、燃料兼結合剤としての末端水酸基ポリエーテルと流動化剤を含むことを特徴とする固体推進薬組成物。
  2. 末端水酸基ポリエーテルが、ポリエチレンオキシド、ポリテトラヒドロフランまたはエチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体であることを特徴とする請求項1記載の固体推進薬組成物。
  3. 流動化剤が、カチオン性、アニオン性または両親媒性の少なくともいずれかの界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の固体推進薬組成物。
  4. 流動化剤が、1級、2級または3級アミンであることを特徴とする請求項1記載の固体推進薬組成物。
  5. 流動化剤が、アミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基、イミン基、イミド基またはアジリジン環基の官能基の内、少なくともいずれかの官能基を有することを特徴とする請求項1記載の固体推進薬組成物。
  6. アジリジン環基を有する流動化剤が、カルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項5記載の固体推進薬組成物。
  7. アミド基またはエステル基を有する流動化剤が、芳香族ポリアミド化合物または/及び芳香族ポリエステル化合物であることを特徴とする請求項5記載の固体推進薬組成物。
  8. 芳香族ポリアミド化合物または/及び芳香族ポリエステル化合物が、カルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物もしくはその誘導体または/及びカルボン酸基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物もしくはその誘導体が重合したポリマーであることを特徴とする請求項7記載の固体推進薬組成物。
  9. アジリジン環基を有する流動化剤が、アジリジン環基を少なくとも1個以上有するホスフィンオキシド化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項5記載の固体推進薬組成物。
  10. アミド基を有する流動化剤が、窒素にホスフィンオキシド基が少なくとも1個結合したポリホスフィンオキシアミドであることを特徴とする請求項5記載の固体推進薬組成物。
  11. 少なくとも硝酸アンモニウム表面で重合し、被覆膜を形成する化合物により被覆処理を施された硝酸アンモニウムを含む酸化剤と、燃料兼結合剤としての末端水酸基ポリエーテルを含むことを特徴とする固体推進薬組成物。
  12. 硝酸アンモニウム表面で重合し被覆膜を形成する化合物が、カチオン重合により被覆膜を形成するものであることを特徴とする請求項11記載の固体推進薬組成物。
  13. カチオン重合により被覆膜を形成する化合物が、少なくとも1つ以上のアジリジン環基を有する化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項12記載の固体推進薬組成物。
  14. 被覆膜を形成するアジリジン環基を有する化合物が、カルボキシルアジリジン環基を少なくとも1個以上有する芳香族化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項13記載の固体推進薬組成物。
  15. 被覆膜を形成するアジリジン環基を有する化合物が、少なくとも1個以上有するホスフィンオキシド化合物またはその誘導体であることを特徴とする請求項14記載の固体推進薬組成物。
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