JP2006116617A - 固定砥粒研削研磨用工具とその製造方法、並びに固定砥粒研削研磨用工具を用いた被研磨体の研磨方法 - Google Patents

固定砥粒研削研磨用工具とその製造方法、並びに固定砥粒研削研磨用工具を用いた被研磨体の研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被研磨体の研磨するための固定砥粒研削研磨用工具において、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加した状態で長時間研削作業を行った場合でも、研削研磨性能が劣化しない実用性に優れた固定砥粒研削研磨用工具を提供する。
【解決手段】砥粒の結合剤として、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶化あるいは固化する高分子を用いた。これにて、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加した場合でも、工具の硬度低下を少なくできるため、この固定砥粒研削研磨用工具は、長時間研削作業を行った場合でも、安定した研削研磨性能を発揮し得るものとなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、固定砥粒研削研磨用工具とその製造方法、並びに固定砥粒研削研磨用工具を用いた被研磨体の研磨方法に関する。
シリコンウエハーや水晶ウエハーの薄片化のニーズは強く、各種の方法により薄片化されている。ダイヤモンド砥粒を用いた砥石は、研削効率が高いため汎用されているが、研削効率が高い反面、研削痕が残り、この研削痕を除去するためにスラリー砥粒のような異なる方法により最終仕上げを行わなければいけないのが現状である。即ち、全く異なる方式により研削を行う必要があり、研削工程が複雑になり、結果的に研削効率が低下し、研削コストが高くなる問題がある。
一方シリコンウエハーや水晶ウエハーの研削には、酸化セリウム粒子のメカノケミカル作用を利用した酸化セリウムスラリー研削が汎用されている。この場合、通常1μm程度の大きさの酸化セリウム粒子を分散させたスラリーが使用されており、比較的高い研削効率と表面平滑性のバランスの良い研削方式として多用されているが、研削時の酸化セリウム粒子と被研磨体との接触機会が少なく、本質的に研削効率向上に限界があるのが現状である。またこのスラリー研削方式では、大量に発生する廃スラリーの処理が、環境上大きな問題になりつつある。
このように固定砥粒を用いた研削方式は、研削効率が高い反面、研削後の表面平滑性に劣る。一方スラリー砥粒を用いた研削方式では、研削後良好な表面平滑性が得られる反面、研削効率向上に限界がある。このように、研削効率の一層の向上が求められているのもかかわらず、研削効率を高めると研削後の表面平滑性が低下するという相反する本質的な課題のため、未だに市場ニーズを満たす研削研磨用工具は開発されていないのが現状である。
一方、特許文献1には、ガラスビーズとアルギン酸ナトリウムなどの水溶性の高分子結合剤を混合した液体を電気泳動を利用して砥石に加工した活性砥粒がメカノケミカル作用によって優れた研削性を示すことが記載されている。この砥石を用いた研削方式は、乾式研削であるのにもかかわらず、優れた鏡面創成が実現できることが記載されている。
さらに、特許文献2や特許文献3には、粒子の形状が板状で、粒子の板面方向の平均粒子径が10〜20nmの範囲にある酸化セリウム粒子が記載されている。
特開2003−73656号公報 特開2003−049158号公報 特開2003−206475号公報
このように砥粒となる物質と水溶性の高分子からなる固定砥粒はメカノケミカル作用により優れた研削性を示すことが知られているが、メカノケミカル作用を発現させるために添加する水により、研削時に固定砥粒の主構成物質である水溶性高分子が再溶解しやすく、長時間研削作業を行うと、固定砥粒研削研磨用工具の研削研磨性能が劣化しやすいという欠点があった。
本発明の目的は、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加した状態で長時間研削作業を行った場合でも、研削研磨性能が劣化しない実用性に優れた固定砥粒研削研磨用工具を提供することにある。本発明の目的は、上記作用効果に加えて、優れた研削性と研削後の優れた表面平滑性を同時に実現できる実用性に優れた固定砥粒研削研磨用工具を提供することにある。
本発明者らは、砥粒の結合剤として、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶化あるいは固化する高分子を用いると、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加した場合でも、工具の硬度低下は少なく、従って長時間研削作業を行った場合でも、安定した研削研磨性能を得られることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、被研磨体の研磨するための固定砥粒研削研磨用工具であって、砥粒としての酸化セリウム粒子が、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶性化あるいは固化する高分子を含有する結合剤により結合されていることを特徴とする。
かかる固定砥粒研削研磨用工具は、結合剤が乾燥後に水に不溶化あるいは固化するため、硬度の変化は少なく、安定した研削研磨性能を発揮する。すなわち、水溶性高分子を結合剤とする従来の固定砥粒研削研磨用工具では、初期硬度は高いため、初期は優れた研削研磨性能を発揮するものの、研磨作業時に添加される水により硬度が低下しやすく、長時間研磨作用を行ったときに、研削研磨性能が低下することが避けられなかった。これに対して、本発明に係る固定砥粒研削研磨用工具では、砥粒の結合剤として乾燥後に水に不溶化あるいは固化するものを用いたため、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加した場合でも硬度の低下は少なく、従って長時間研磨作業を行ったときでも、良好な研削研磨性能が安定して得られる点で優れている。
固定砥粒研削研磨用工具の形状としては、例えば円柱状、四角柱状、扁平状などを挙げることができ、その形状は限定されない。被研磨体に接する工具の表面には、線や溝を刻設したり、陥没穴を設けることができる。貫通孔を設けてもよい。
上記のような特性を示す高分子の具体例としては、アルギン酸アンモニウム系、カルボキシメチルセルロース系、アクリル系エマルジョン樹脂およびウレタン系エマルジョン樹脂の中から選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。これら高分子は、単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用することもできる。また、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、ポリビニールアルコールなどの水溶性高分子と組み合わせて使用することもできる。
本発明において、砥粒として採用される酸化セリウム粒子は、平均粒子径が10nm〜200nmの範囲にある板状であり、該粒子の板面方向における最大長さと厚さの比が2〜20の範囲にあるものであることが好ましい。一般的に砥粒の粒子径が小さいと、研削面の表面平滑性は良好になるものの、研削効率が低下する傾向があるが、本発明の砥粒は、平均粒子径が10nm〜200nm(10nm以上、200nm以下)と微粒子であるが、粒子が板状であるため、この板状粒子のエッジを利用することにより、微粒子であるにもかかわらず優れた研削性を示す。以上より、本発明に係る固定砥粒研削研磨用工具によれば、高い研削効率と研削後の優れた表面平滑性という、研削用砥石においては矛盾する2つの特性を、特異な形状と粒子径を有する酸化セリウム粒子を採用することにより実現することができる。なお、平均粒子径が10nmより小さい場合には、良好な研削効率を得難く、200nmより大きい場合には、研削後の表面平滑性が不良となる。
この板状の酸化セリウム粒子は、アルカリ水溶液に各種の金属塩の水溶液を添加し、得られた金属塩の水酸化物あるいは水和物を、水の存在下で110〜300℃の温度範囲で加熱処理し、ろ過、乾燥後、さらに空気中200〜1500℃の温度範囲で加熱処理することにより得ることができる。
すなわち、この板状の酸化セリウム粒子は、まず第一工程として、アルカリ水溶液に上述した金属塩の水溶液を添加し、得られた水酸化物あるいは水和物を、水の存在下で110〜300℃の温度範囲で加熱処理する水熱反応処理により、目的とする形状、粒子径に整える。この際、金属の種類により水酸化物あるいは水和物として析出するpHが金属の種類により異なるため、pHの制御は重要である。また水熱反応により目的の形状、粒子径を有する水酸化物あるいは水和物にするため、水熱反応時のpH制御も重要な因子である。
次に第二工程として、この水酸化物あるいは水和物を空気中加熱処理することにより、粒子径分布が均一で、焼結、凝集が極めて少なく、結晶性の良好な板状の酸化物粒子を得る。このように基本的に二段階の製造工程を経ることにより、粒子の形状が板状で、平均粒子径が、10nmから200nmの範囲にあり、かつ板状比(板面方向の最大長さ/厚さ)が2〜20の酸化セリウム粒子を製造することができる。
上記のような板状の酸化セリウム粒子は、そのエッジ部分に由来する優れた機械的研削作用(発刃作用)のみならず、優れたメカノケミカル作用を発揮する。つまり、板状の酸化セリウム粒子は、粒状の酸化セリウムに比べて表面積が大きいため、良好なメカノケミカル作用を示す点でも優れている。
固定砥粒研削研磨用工具中の砥粒および高分子のそれぞれの含有量は、50〜99重量%(砥粒の含有量:A)および0.5〜30重量%(高分子の含有量:B)とすることが好ましい(但し、A+B≦100)。
すなわち、高分子の含有量としては、0.5〜30重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.8〜25重量%の範囲、さらに1〜20重量%の範囲が最適である。高分子の含有量が少ないと、砥粒粒子の結合能力が低くなり、研削時に粒子が脱落しやすくなる。一方、高分子の含有量が多すぎると、分散体(後に詳述)としたときの粘度が高くなり、砥粒粒子の均一分散が困難となる。
砥粒粒子の含有量としては、50〜99重量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜97重量%であり、さらに70〜95重量%の範囲が最適である。含有量がこの範囲より少ないと、研削効率が低くなり、逆に多すぎると高分子との結合性が低下して、研削時に砥粒が脱落しやすくなる。
本発明に係る固定砥粒研削研磨用工具は、前述の高分子が溶解あるいは懸濁した溶液中に砥粒を投入して、該溶液中に該砥粒が分散された分散体を作製する工程と、前記分散体を用いて、前記砥粒を特定の形状に成形する工程とを経て製造することができる。すなわち、まず所定量の高分子を溶解あるいは懸濁させた溶液を作製し、この溶液中に少なくとも酸化セリウムを含む砥粒を所定量分散させて、分散体を得る。このときの高分子と砥粒の好適な配合割合については既に詳述した。分散方法としては、特に限定されるものではないが、例えばボールミルやペイントコンディショナー等を用いて、均一な分散体を作製する。
次に、この分散体を用いて、工具の元となる成形体を作製する。高分子として、アンモニウム系、カルボキシメチルセルロース系あるいはアクリル系エマルジョン樹脂などの電荷を有する高分子を使用する場合には、電気泳動現象を利用して成形体を作製することができる。かかる電気泳動現象を利用して作製したものは、板状粒子が特定方向に配向するしてエッジ部分が揃いやすく、また粒子が密に充填されやすいため、固定砥粒研削研磨用工具として、より優れた性能を発揮する。
一方、電気泳動現象を利用しないゲル状態から成形体を作製する場合には、高分子に対する選択の幅が広くなり、ウレタン系エマルジョン樹脂のような電荷を有さない高分子も使用可能となる。またこれらの成形体の作製方法も特に限定されるものではないが、例えば電気泳動現象を利用する作製方法では、基本的にはこの分散液中に正極と負極を対向するように配置し、この両極間に電圧を印加することにより、正極上に水溶性高分子と結合した酸化物粒子を堆積させることができる。
本発明に係る固定砥粒研削研磨用工具は、被研磨体に当該固定砥粒研削研磨用工具を押し当てながら、同時に適度の湿度あるいは水を付加しながら研削研磨することができる。これにて、酸化セリウムのメカノケミカル作用が発現されて、研削性の向上を図ることができる。即ち本発明の工具で被研磨体を研削研磨するときに、適度の湿度あるいは水を付加すると、酸化セリウムのメカノケミカル作用が現われてより研削性が向上する。さらに、この水を添加することによる硬度の変化がほとんどないため、安定した研削特性が得られる。この湿度あるいは水の使用において、使用量は、用途、目的に応じて任意に調整することができて、直接水を添加することも可能であり、また高湿度下で使用することによってもメカノケミカル作用を発現させることができる。さらにさらに直接水を添加する場合でも、連続添加や間欠的な滴下、さらに噴霧など用途、目的に応じて任意に選択できる。このように本発明の固定砥粒研削研磨用工具は、目的に応じて乾式研削用の固定砥粒としても、また水の存在化でメカノケミカル作用を利用した固定砥粒としても使用できる、広い範囲で使用可能な固定砥粒研削研磨用工具である。
本発明の固定砥粒研削研磨用工具によれば、砥粒の結合剤として、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶化あるいは固化する高分子を用いたので、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加した場合でも工具の硬度低下は少なく、従って、長時間研削作業を行った場合でも、安定した研削研磨性能を発揮する実用性に優れた固定砥粒研削研磨用工具を得ることができる。
また、本発明に係る固定砥粒研削研磨用工具によれば、構成粒子たる板状のセリウム粒子が、その板状のエッジ部分を利用して優れた機械的研削性を発揮するだけでなく、さらにその化学的特性に基づいて優れた化学的研削性を発揮する。また、その粒子径が10〜200nmと微細なため、被研磨体の研削後においても優れた表面平滑性が得られる。こうして優れた研削効率と、切削後の優れた表面平滑性とを同時に実現できる実用性に優れた固定砥粒研削研磨用工具を得ることができる。
固定砥粒研削研磨用工具中の砥粒および高分子のそれぞれの含有量を、50〜99重量%(砥粒の含有量:A)および0.5〜30重量%(高分子の含有量:B)としてあると、研削効率の低下と、研削時における砥粒の脱落を防ぐことができる。しかも、製造工程において、分散体の粘度が高くなることがなく、砥粒粒子の均一分散が可能となる。
以下に、砥粒として板状の酸化セリウム粒子を、高分子としてアクリル系エマルジョン樹脂を使用する場合を例に挙げて、本発明に係る固定砥粒研削研磨用工具およびその製造方法ついて詳述に説明する。
(沈殿物の作成)
塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウムなどのセリウム塩を水に溶解させ、セリウムイオンを含有する水溶解液を作製する。これらのセリウム塩のうち、粒径分布のシャープな酸化セリウム粒子を得る上で、塩化セリウムが最も好ましい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水溶液などが好ましく使用できる。
次に前記セリウム塩水溶液をアルカリ水溶液中に滴下して、セリウムの水酸化物あるいは水和物の沈殿物を生成する。この沈殿物を含む懸濁液のpHは、8〜11の範囲に調整し、またこの懸濁液を室温において1日程度熟成することが好ましい。このpH調整および熟成は、この後の工程の加熱処理において、比較的低い温度で、より結晶性の高い酸化セリウム粒子を得る上で効果的である。
(水熱処理)
セリウムの水酸化物あるいは水和物の上記沈殿物を含む懸濁液に対し、オートクレーブ等を用いて水熱処理を行う。この水熱処理において、上記の沈殿物を含む懸濁液をそのまま水熱処理を行っても構わないが、水洗により、上記沈殿物以外の生成物や残存物を除去し、その後NaOHなどにより再度pH調整することが好ましい。この時のpHの値は、7〜11とすることが好ましく、このpH値より低いと、水熱処理時に結晶成長が不十分になり、また高すぎると、粒子径分布が広くなる傾向を示す。
次に、水熱処理温度であるが、110℃から300℃の範囲とすることが好ましい。この温度より低いと、板状の形状を有するセリウムの水酸化物あるいは水和物が得られにくく、またこの温度より高いと発生圧力が高くなるため、装置が高価なものとなり、メリットはない。板状酸化セリウム粒子の粒子径は、水熱処理時のpHと温度と密接に関係し、一般的にはpHと処理温度が高くなるほど粒子径は大きくなる。
水熱処理時間は、1時間から4時間の範囲が好ましい。水熱処理時間が短すぎると、特定の形状への成長が不十分になり、水熱時間が長すぎても特に問題となることはないが、製造コストが高くなるだけで、意味がない。
(加熱処理)
水熱処理後のセリウムの水酸化物あるいは水和物粒子は、ろ過、乾燥した後、加熱処理を行うが、ろ過する前に、水洗によりpHを6〜9の付近の中性領域に調整しておくことが好ましい。これはこのpH値まで水洗することにより、加熱処理工程において、焼結などの悪影響をおよぼすナトリウムや塩素などの不純物が除去されるためである。また、セリウムの水酸化物あるいは水和物粒子に、さらに珪酸ナトリウムなどの珪素化合物を添加して、シリカ処理を施こしても良い。このシリカ処理は、最終目的物である酸化セリウム粒子を特定の形状に保持する効果がある。
ろ過、乾燥したセリウムの水酸化物あるいは水和物は、加熱処理により酸化セリウム粒子とすることができる。雰囲気は特に限定されないが、空気中加熱が、最も製造コストがかからないため、好ましい。この加熱処理温度としては、300℃から1200℃の範囲が好ましい。この温度より低いと、結晶性の酸化セリウム微粒子が得られにくく、高すぎると、焼結により粒子サイズが大きくなったり、さらに粒子径分布が広くなる。この加熱処理により、酸化セリウム粒子が得られるが、さらに水洗などにより、未反応物を除去すると、より高純度の酸化セリウム粒子が得られるため、研磨剤と使用するためには、最終工程で水洗することが好ましい。
このようにして得られた酸化セリウム粒子は、粒子径が10nmから200nmの範囲に、かつ板状比(板面方向の最大長さ/厚さ)が2〜20の範囲にある板状の形状を有する粒子であり、固定砥粒研削研磨工具用として最適の粒子となる。なおこの粒子の形状は、高分解能の透過電子顕微鏡を用いて観察することができる。粒子径は、例えば20万倍の倍率で撮影し、100個の粒子の平均値として求めることができる。また粒子の厚さは、例えば粒子をバインダ中に分散してシート上塗布し、このシートの断面を500万倍の倍率で観察することにより求めることができる。
この酸化セリウム粒子は、X線回折スペクトルを測定すると、CaF2 構造をもつCeO2 の結晶構造に対応するピークが明瞭に観察され、また電子顕微鏡観察においても晶壁が明瞭に観察され、これまでの製造法では得られなかった極めて良好な結晶性を有する板状の粒子であることが示された。
なお板状酸化セリウム粒子の作製方法を例に上げて説明したが、板状酸化アルミニウムや板状酸化ジルコニウム、板状酸化鉄も本発明の発明者の一人が開発した方法(特開2003−049518号公報、特開2003−206475号公報参照)により、同様の手法で作製できる。
(固定砥粒研削研磨工具用分散液の調整)
上述した方法で作製した酸化セリウム粒子を使用して、結合剤としてアクリル系エマルジョン樹脂を使用する場合を例にあげて、固定砥粒研削研磨用工具を作製するための分散液調整方法の一例を以下に示す。
アクリル系エマルジョン樹脂液に、酸化セリウム粒子を添加し分散させる。アクリル系エマルジョン樹脂および酸化セリウム粒子の含有量は、最終目的物である工具の状態で、それぞれ1〜50重量%および50〜99重量%が最適である。酸化セリウム粒子の含有量がこの範囲より少ないと固定砥粒研削研磨用工具としたときの高い研削効率を得にくくなり、また含有量がこの範囲より多いと酸化セリウム粒子の工具中での保持性が低下しやすくなる。また分散液作製時には、アクリル系エマルジョン樹脂および酸化セリウム粒子の添加量は、それぞれ0.02〜5重量%から1〜10重量%が適当である。樹脂および酸化セリウム粒子の添加量がこの範囲より少ないと、酸化セリウム粒子を均一に分散させることが困難になり、酸化セリウム粒子が沈降しやすくなる。一方添加量がこの範囲より多いと分散液の粘度が高くなり過ぎて、酸化セリウム粒子を分散させるときの分散性が悪くなる。
分散方法は特に限定されるものではなく、ボールミル、ペイントコンデイショナー、デイスパーなど各種の分散機が使用可能であるが、中でもペイントコンデイショナーが本目的に好適な分散機として使用できる。分散時間は、使用する分散装置により異なるが、例えばペイントコンデイショナーを使用する場合には、1〜10時間が適当である。また電気泳動現象を利用する場合にも、またゲル状態で乾燥させる場合でも、成形体を作製時の分散液中のアクリル系エマルジョン樹脂および酸化セリウム粒子の含有量を、蒸発濃縮などにより0.1〜30重量%および2〜60重量%になるようにすると、ひび割れ等の問題が生じにくく、成形体作製効率が良好となる。
(電気泳動を利用した酸化セリウム/高分子混合物の成形体の作製)
上述した分散液を樹脂製の容器に入れ、円形の金属製正極板を下方に配置した。この正極板と対向するようにらせん状に成形した負極を、正極板の上方に配置し、正極板を回転させながら、正負両極に直流電圧を印加した。印加電圧は、正負両極の大きさ、形状、間隔により異なるが、1〜100Vが好ましい。このときの電流は、0.1〜10A程度であり、アクリル系エマルジョン樹脂で覆われて電荷を帯びた酸化セリウム粒子が正極板に電気的に引き寄せられて正極板上に堆積し、時間共に堆積厚みが増加する。
(ゲル化法を利用した酸化セリウム/高分子混合物の成形体の作製)
テフロン製の円筒形容器に上述した分散液を入れた。この状態で、成形体が容器から取り出しても形状を保持できるまで、周囲の湿度を調整しながら室温で約1週間かけて徐々に乾燥した。この際、自然乾燥させると、収縮によりひび割れが発生しやすくなるため、湿度調整しながら長時間かけて徐々に水分を除去し乾燥させた。その後、実施例1と同様に、ポーラス状のセラミックスの板で挟んで真空乾燥し、セラミック板をはずしてから、さらにこの成形体を、空気中、40℃で約1日間かけて乾燥した。最後にこの乾燥物の両面を研磨して平滑にした。
(固定砥粒研削研磨用工具の作製)
上述した電気泳動法により作製した成形体は、まず真空乾燥した。この成形体は、乾燥時に反りなどによる乾燥物の変形やひび割れが発生しやすいため、これを防止するために、成形体をポーラス状のセラミックスの板で挟んで真空乾燥した。このようにすることにより、反りやひび割れを防止すると同時に、効率良く乾燥させることができる。
この真空乾燥により、ほとんど水分を除去した後、最後に仕上げとして、セラミックス板をはずしてから、空気中、40℃で約1日間かけて乾燥した。次にこの乾燥物の両面を研磨して平滑にした。この平滑化は重要で、乾燥物の平面に凹凸が存在すると、工具として研磨用の定盤等に取り付け、被研磨体に押し当てたときに、局部的に力が加わり、工具が割れ易くなる。以上の工程により、最終的に目的とする工具に仕上げた。
またゲル化法により作製した成形体は、上述した方法によりほぼ乾燥しているが、最後に空気中、40℃で約1日間かけて乾燥した。次に電気泳動法により作製した成形体と同様に、両面を研磨して平滑にした。
なお本例では、何段かの異なる手段により乾燥する例について説明したが、これは乾燥時の反りや割れを防止するための乾燥方法の一例を述べたもの、この方法に限定されるものではないことは言うまでもない。
[実施例]
以下本発明を実施例により詳細に説明する。
〈板状酸化セリウム粒子の作製〉
72.0モルの水酸化ナトリウムを64リットルの水に溶解し、アルカリ水溶液を作製した。このアルカリ水溶液とは別に、5.92モルの塩化セリウム(III)七水和物を32リットルの水に溶解して、塩化セリウムの水溶液を調整した。前者のアルカリ水溶液に、後者の塩化アルミニウム水溶液を滴下して、約25℃で水酸化セリウムを含む沈殿物を調整した。このときのpHは10.5であった。この沈殿物を懸濁液の状態で20時間熟成させた。
次に、上澄み液を除去した後、この沈殿物の懸濁液を、オートクレーブに仕込み、200℃で2時間水熱処理を施した。水熱処理生成物を水洗し、ろ過して、90℃で空気中乾燥させた。この乾燥物を乳鉢で軽く解砕した後、空気中800℃で1時間の加熱処理を行って酸化セリウム粒子とした。加熱処理後、未反応物や残存物を除去するために、さらに超音波分散機を使って水洗し、ろ過乾燥した。
得られた酸化セリウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、蛍石構造の酸化セリウムに対応するスペクトルが観測された。また透過電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、平均粒子径は58nmの板状の粒子であることがわかった。なお平均粒子径は、透過電子顕微鏡(日立電界放出型電子顕微鏡HF−200型)を用いて20万倍で撮影した印画紙上、100個の粒子の粒子径の平均値として求めた。また粒子の板面方向におけるの最大長さと厚さの比は、約8であった。この粒子の板面方向におけるの最大長さと厚さの比は、同じ電子顕微鏡を用いて500万倍でのこの粒子をバインダ中に分散させたシートの断面観察により求めた。
〈板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製〉
高分子として、不揮発成分含有量が60〜63重量%のSoken社製のアクリル系エマルジョン樹脂(E−3365)を使用した。このアクリル系エマルジョン樹脂溶液50gに上述した方法で作製した酸化セリウム粒子300gを添加し、さらに純水を650g添加して、内容積4Lのペイントコンデイショナー用ポットを使用して、ペイントコンデイショナーにより3時間分散した。なおこのポットには、直径1mmのジルコニアビーズを1kgを入れた。この分散処理により、個々の酸化セリウム粒子がエマルジョンン樹脂に均一に分散した分散液を得た。
〈電気泳動を利用した板状酸化セリウム粒子/高分子混合物の成形体の作製〉
上述した分散液を容積が約2Lの樹脂製の容器に移し替え、正極板として直径150mm、厚さ2mmの円形の黄銅板を使用した。負極としては、直径約1mmの黄銅棒を最外周の直径が約160mmになるようにらせん状に成形して、正極板と対向するように配置した。
この正極と負極間に直流低電圧電源を使用して10Vの電圧を印加した。このとき正極、負極間に流れる電流は約0.5〜3Aであった。この状態で正極板を回転させながら2時間電圧を印加し、正極板上にアクリル系エマルジョン樹脂で覆われた板状の酸化セリウム粒子を堆積させた。このときの堆積厚さは、約4mmであった。
〈固定砥粒研削研磨用工具の作製〉
次に分散液から正極板を取り出し、空気中約5時間自然乾燥させた後、ポーラス状のセラミックスの板で挟んで真空乾燥した。その後、セラミック板をはずしてから、さらに空気中、40℃で約1日間かけて乾燥した。最後にこの乾燥物の両面を研磨して平滑にした。使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。
〈硬度変化の評価〉
上記のように作製した成形体を室温で、水中に1時間浸漬し、浸漬前後の成形体の硬度変化を調べた。硬度は、Akashi社製のヌープ硬度計(HM−122)を用いて測定した。成形体の平面部分を、硬度計のプローブを一定の力で押し込んで菱形の傷を入れ、この傷の深さから硬度を相対的に評価した。この傷は、浅いものほど硬度が高いことを示す。表2に、本例で作製した成形体の初期状態での傷深さを1として、水に浸漬後の成形体の傷深さの相対値を示す。この値が小さいほど水浸漬による硬度変化が小さいことを示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子の作製において、沈殿物の懸濁液の水熱処理条件を200℃、2時間から180℃、1時間に変更し、かつ空気中での加熱処理条件を、800℃、1時間から600℃、1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、水酸化セリウムを含有する沈殿物を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理して、酸化セリウム粒子を作製した。
得られた酸化セリウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に蛍石構造の酸化セリウムに対応するスペクトルが観測された。また実施例1と同様の方法で透過電子顕微鏡で形状観察を行ったところ、平均粒子径は21nmで、板面方向におけるの最大長さと厚さの比は約5の板状粒子であることがわかった。
この酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同様の正負電極を使用し、実施例1と同様の方法で水溶性高分子を用いた分散液の作製し、さらに電気泳動を利用して板状酸化セリウム粒子とアクリル系エマルジョン樹脂からなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。さらにこの工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子の作製において、沈殿物の懸濁液の水熱処理を行わずに、かつ空気中での加熱処理条件を、800℃、1時間から300℃、1時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、水酸化セリウムを含有する沈殿物を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理して、酸化セリウム粒子を作製した。
得られた酸化セリウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に蛍石構造の酸化セリウムに対応するスペクトルが観測された。また実施例1と同様の方法で透過電子顕微鏡を使って形状観察したところ、平均粒子径は30nmの球状ないしは粒状の粒子であることがわかった。
この酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同様の正負電極を使用し、実施例1と同様の方法で分散液の作製し、さらに電気泳動を利用して球状ないしは粒状の形状を有する酸化セリウム粒子とアクリル系エマルジョン樹脂からなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。さらにこの工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子の作製において、沈殿物の懸濁液の水熱処理条件を200℃、2時間から150℃、1時間に変更し、かつ空気中での加熱処理条件を、600℃、1時間から900℃、4時間に変更した以外は、実施例1と同様にして、水酸化セリウムを含有する沈殿物を生成させ、水洗、ろ過、乾燥後、加熱処理して、酸化セリウム粒子を作製した。
得られた酸化セリウム粒子について、X線回折スペクトルを測定したところ、実施例1と同様に蛍石構造の酸化セリウムに対応するスペクトルが観測された。また実施例1と同様の方法で透過電子顕微鏡を使って形状観察したところ、平均粒子径は120nmで、板面方向におけるの最大長さと厚さの比は約10の板状粒子であることがわかった。
この酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同様の正負電極を使用し、実施例1と同様の方法で分散液の作製し、さらに電気泳動を利用して形状を有する酸化セリウム粒子とアクリル系エマルジョン樹脂からなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。さらにこの工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子混合物の成形体の作製方法において、電気泳動現象を利用することなく、以下の方法により、ゲル状態から成形体を作製した。実施例1と同様の方法で作製した分散液を、直径が150mmで深さが約15mmのテフロン製の円筒形の容器に移し替えた。この状態で、成形体が容器から取り出しても形状を保持できるまで、周囲の湿度を調整しながら室温で約1週間かけて徐々に乾燥した。その後、実施例1と同様に、ポーラス状のセラミックスの板で挟んで真空乾燥し、セラミック板をはずしてから、さらにこの成形体を、空気中、40℃で約1日間かけて乾燥した。最後にこの乾燥物の両面を研磨して平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製において、酸化セリウム粒子300gに替えて、同じ酸化セリウム粒子を210g、酸化珪素粒子を90gに変更した以外は、実施例1と同じアクリル系エマルジョン樹脂を使用し、実施例1と同様の方法で分散液を作製した。なお酸化珪素粒子としては、平均粒子径が20nmのほぼ球状の日産化学社製のスノーテックスを使用した。
この分散液を用いて、実施例1と同様の方法により電気泳動を利用して板状酸化セリウム粒子と球状の酸化珪素粒子とアクリル系エマルジョン樹脂からなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。さらにこの扁平状工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの水浸漬後の傷深さを相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製において、高分子として、アクリル系エマルジョン樹脂に替えてアルギン酸アンモニウム(キミカ社製キミカアルギン)を使用した。固形分の含有量が実施例1と同じになるようにアルギン酸アンモニウムを添加し、実施例1と同じ酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同じ方法で分散液を作製した。
この分散液を用いて、実施例1と同様の方法により電気泳動を利用して板状酸化セリウム粒子とアルギン酸アンモニウムからなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。次にこの工具を、空気中120℃で2時間加熱処理を行い、アンモニウムを加熱除去して水に対して不溶化させた。さらにこの扁平状工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製において、高分子として、アクリル系エマルジョン樹脂に替えてカルボキシメチルセルロース(ダイセル化学工業社製CMCダイセル)を使用した。固形分の含有量が実施例1と同じになるようにカルボキシメチルセルロースを添加し、実施例1と同じ酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同じ方法で分散液を作製した。
この分散液を用いて、実施例1と同様の方法により電気泳動を利用して板状酸化セリウム粒子とカルボキシメチルセルロースからなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。次にこの工具を、空気中120℃で2時間加熱硬化処理を行い、水に対して不溶化させた。さらにこの扁平状工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製において、高分子として、アクリル系エマルジョン樹脂に替えてウレタン系エマルジョン樹脂(三洋化成社製パーマリンUA−200)を使用した。固形分の含有量が実施例1と同じになるようにウレタン系エマルジョン樹脂を添加し、実施例1と同じ酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同じ方法で分散液を作製した。
ウレタン系エマルジョン樹脂は電荷を有さないため、固定砥粒研削研磨用工具の作製方法として電気泳動を利用する方法は適さない。そこで実施例5と同様に、ゲル状態から成形体を作製した。即ち分散液をテフロン製の円筒容器に移し替え、成形体が容器から取り出しても形状を保持できるまで40℃で約8時間乾燥させ、その後セラミックス板で挟んで真空乾燥し、セラミック板をはずしてから成形体の表面に切り込みを入れ、さらにこの成形体を、空気中、40℃で約1日間かけて乾燥した。さらにこの扁平状工具の両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。以上の方法により、板状酸化セリウム粒子とウレタン系エマルジョン樹脂からなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製において、高分子として、アクリル系エマルジョン樹脂に替えてアルギン酸ナトリウムとアクリル系エマルジョン樹脂が樹脂の重量比で50/50になるように添加した。樹脂の固形分の含有量は実施例1と同じになるようにした。実施例1と同じ酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同じ方法で分散液を作製した。
この分散液を用いて、実施例1と同様の方法により電気泳動を利用して板状酸化セリウム粒子とアルギン酸ナトリウムおよびアクリル系エマルジョン樹脂からなる成形体を作製し、さらに実施例1と同様の方法で乾燥させて固定砥粒研削研磨用工具を作製し、両面をダイヤモンド定盤を使って平滑にした。
使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
[比較例1]
実施例1における板状酸化セリウム粒子と高分子を用いた分散液の作製において、高分子として、アクリル系エマルジョン樹脂に替えてアルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)を使用した。固形分の含有量が実施例1と同じになるようにアルギン酸ナトリウムを添加し、実施例1と同じ酸化セリウム粒子を用いて、実施例1と同じ方法で分散液を作製した。
この分散液を用いて、実施例1と同様の方法により電気泳動を利用して板状酸化セリウム粒子とアルギン酸ナトリウムからなる固定砥粒研削研磨用工具を作製した。使用した砥粒の種類、平均粒子径、高分子の種類および成形体の作製方法を表1にまとめて示す。
さらに実施例1と同様の方法で硬度変化を評価した。表2に、初期硬度として、実施例1で作製した成形体の初期状態での傷深さを1としたときの傷深さで相対的に示す。
Figure 2006116617
Figure 2006116617
表2から明らかなように、実施例1〜10で得られた本発明の固定砥粒研削研磨用工具は、水に浸漬しても硬度の変化が少ないことがわかる。これは結合剤に水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶性化あるいは固化する高分子を、砥粒の結合剤として用いたためである。
また、この工具は、板状の酸化セリウム粒子を用いているため、粒子の板状であることによるエッジを利用した機械的研削性に、さらに水を添加することによる酸化セリウム粒子のメカノケミカル作用が発現するが、水を添加することによる工具の硬度が変化が小さいため、初期の研削研磨特性を良好に維持することができることがわかる。
一方、結合剤に水溶性の高分子のみを使用した比較例1の工具は、初期硬度は大きいが、水に浸漬すると高分子が膨潤し、硬度が著しく低下する。したがって研削研磨の初期特性は優れているが、メカノケミカル作用を発現させるために水を添加すると特性が低下している。

Claims (6)

  1. 被研磨体の研磨するための固定砥粒研削研磨用工具であって、
    砥粒としての酸化セリウム粒子が、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶性化あるいは固化する高分子を含有する結合剤により結合されていることを特徴とする固定砥粒研削研磨用工具。
  2. 前記高分子が、アルギン酸アンモニウム系、カルボキシメチルセルロース系、アクリル系エマルジョン樹脂およびウレタン系エマルジョン樹脂の中から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の固定砥粒研削研磨用工具。
  3. 前記酸化セリウム粒子は、平均粒子径が10nm〜200nmの範囲にある板状であり、該粒子の板面方向における最大長さと厚さの比が2〜20の範囲にあるものである請求項1又は2記載の固定砥粒研削研磨用工具。
  4. 固定砥粒研削研磨用工具中の砥粒および高分子のそれぞれの含有量が50〜99重量%および0.5〜30重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の固定砥粒研削研磨用工具。
  5. 砥粒としての酸化セリウム粒子を、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶性化あるいは固化する高分子を含有する結合剤により結合してなる、被研磨体の研磨するための固定砥粒研削研磨用工具の製造方法であって、
    前記高分子が溶解あるいは懸濁した溶液中に前記砥粒を投入して、該溶液中に該砥粒が分散された分散体を作製する工程と、
    前記分散体を用いて、前記砥粒を特定の形状に成形する工程とを含むことを特徴とする固定砥粒研削研磨用工具の製造方法。
  6. 砥粒としての酸化セリウム粒子を、水の存在下では溶解性あるいは懸濁性を示し、乾燥後水に不溶性化あるいは固化する高分子を含有する結合剤により結合してなる固定砥粒研削研磨用工具を用いた被研磨体の研磨方法であって、
    前記被研磨体に前記固定砥粒研削研磨用工具を押し当てながら、同時に適度の湿度あるいは水を付加しながら研削研磨することを特徴とする固定砥粒研削研磨用工具を用いた被研磨体の研磨方法。
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