JP2006112282A - ガスタービン及びその冷媒供給方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】起動途中のラビングを回避してガスタービンの信頼性を確保しつつ、定格負荷運転時の動翼先端間隙を小さくしてガスタービンの性能向上させる。
【解決手段】作動流体を圧縮する圧縮機2と、作動流体と燃料とを混合燃焼させる燃焼器7と、該燃焼器7からの燃焼ガスで回転駆動させるタービン1とを備え、該タービン1のケーシングに設けられた前記静翼30に冷媒を供給して冷却する冷却系統を備えるガスタービンの冷媒供給方法であって、前記冷媒の流通方向上流側で複数に分岐された前記冷却系統の一つは前記圧縮機2からの圧縮空気を前記静翼30に供給し、複数に分岐された前記冷却系統のうち、ガスタービン起動時に他の系統に対して温度が高い冷媒を前記静翼30に供給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスタービン及びその冷媒供給方法に関する。
発電プラントにおけるガスタービンの性能を向上させるには、タービン動翼とシュラウド間の先端間隙(以下、動翼先端間隙と称す)は極力小さいほうが望ましい。動翼先端間隙が大きいと、動翼先端部において漏れ損失が大きくなり、タービン性能に大きな影響を及ぼすためである。但し、この動翼先端隙間が小さすぎると動翼先端がシュラウドに接触(ラビング)して破壊の原因となる。したがって、一般にはラビングを起こさないように、ガスタービンの起動,定格,停止の各運転状態で、設計最小間隙値を下回らないように初期の動翼先端間隙が決定される。
そこで、特許文献1には、蒸気冷却ガスタービンを備えたガスタービン設備において、ガスタービンのロータ及び動翼に供給する冷却媒体を冷却し、冷却媒体の温度を制御することで、動翼のラビングを回避する技術が開示されている。
特開平8−270459号公報
特許文献1のガスタービン設備では、冷却空気を静止系(静翼とケーシング)と回転系(動翼)で分けず、共通の系統のものを使用している。但し、静翼とケーシングは動翼に比べ相対的に体積が大きく、熱膨張の応答性が遅い。そのため、静翼とケーシングは動翼の熱伸びに追従することが困難である。したがって、ガスタービンが停止から定格回転に至る過程において、静翼と動翼に同じ温度の冷却媒体を供給しても、回転系のロータ及び動翼の熱膨張と回転の遠心応力による伸びが支配的となり、ラビングが生じる可能性が高くなる。以上より、ガスタービン起動時のラビングを回避するには、初期の動翼先端間隙を事前に大きくする必要があった。
そこで本発明は、起動途中のラビングを回避してガスタービンの信頼性を確保しつつ、定格負荷運転時の動翼先端間隙を小さくしてガスタービンの性能向上を目的とする。
本発明は、冷媒の流通方向上流側で複数に分岐された冷却系統の一つは圧縮機からの圧縮空気を静翼に供給し、複数に分岐された冷却系統のうち、ガスタービン起動時に他の系統に対し温度が高い冷媒を静翼に供給することを特徴とする。
本発明によれば、起動途中のラビングを回避してガスタービンの信頼性を確保しつつ、定格負荷運転時の動翼先端間隙を小さくしてガスタービンの性能向上が可能となる。
従来一般に採用されているガスタービンは、圧縮機で圧縮した作動流体に燃料を加えて燃焼し、高温高圧の作動流体を得てタービンを駆動するように構成されている。駆動されたタービンの回転エネルギーは、通常、タービンに結合されている発電機により電気エネルギーに変換される。
近年、ガスタービン作動ガスに湿分を添加して高効率化を図る高湿分ガスタービン発電プラントが注目されている。図2に高湿分ガスタービン発電プラントの機器構成を示す。高湿分ガスタービン発電プラントの一つの特徴は、増湿塔5および吸気噴霧器14において燃焼ガスに水分を付加して増湿することでエネルギーポテンシャルを上げ、ガスタービンの出力を増加させることである。さらにもう一つの特徴は、再生器6および給水加熱器8において熱エネルギーを回収し、さらには水回収装置10において水分を回収することでプラント自体の発電効率を向上させることである。
ここで、このような発電プラントにおけるガスタービンのさらなる性能向上を考えた場合、タービン動翼先端間隙は、動翼先端漏れ損失となるため、タービン性能に及ぼす影響が大きく極力小さいほうが望ましい。一方、この隙間が小さすぎると動翼先端がシュラウドに接触(ラビング)して破壊の原因となるため、一般にはラビングを起こさないように起動,定格,停止の各運転状態で、設計最小間隙値を下回らないように初期の間隙が決定される。
しかしながら、このように初期間隙を決定する場合に、間隙が最小となるのは起動時であり(回転系のロータディスクと動翼がホット状態で、応答性の遅い静止系のケーシングがコールド状態となっている状態)、この状態でラビングを回避するように初期間隙を設計すると、定格負荷運転時にはケーシングがホット状態になり、間隙が広がりタービン性能低下の原因となっていた。
そこで、起動時のラビングを回避して、定格運転時のガスタービン動翼先端間隙を縮小するという目的を、少ない機器構成で実現した。
図2は、本実施例におけるガスタービン発電プラントの系統図を示す。図中の実線は気体の経路を示す。そして、本実施例では、気体の経路とこの経路に設置された機器とを合わせて空気系統と称する。また、図中の点線は水の経路を示す。そして、本実施例では、水の経路とこの経路に設置された機器とを合わせて増湿系統と称する。また、冷却媒体の経路を冷却空気系統と称する。
気体系統について説明する。図2に示す発電プラントは、タービン1と圧縮機2、及び発電機3が一軸に結合されている。圧縮機2が大気中の空気を取り込み圧縮し、定格負荷運転の状態において、温度約300℃,圧力約2MPaの高圧の圧縮空気を生成する。このとき、圧縮機2の入口には吸気噴霧器14が配置されており、空気に加湿する。空気冷却器4は圧縮空気を約100℃に冷却した後に増湿塔5に供給する。増湿塔5は、この圧縮空気に湿分を加えて約150℃の増湿空気にする。増湿塔5からの増湿空気は、再生器6で約550℃付近まで昇温され、燃焼器7で燃料と共に燃焼されて、温度1300℃以上,圧力約1.9MPa の高温高圧の燃焼ガスとなる。この燃焼ガスは、タービン1に供給され、発電機3を駆動する。このように、増湿空気を燃焼することにより、燃焼ガスは多量の水分を含み重量流量が増加する。また水蒸気の比熱は空気よりも大きく、内部により多くのエネルギーを保有できるため、通常の空気燃焼の場合よりも出力を増加させることができる。タービン1において膨張し低圧となった排ガスは約600℃であり、まだ十分に高温である。そのため、排ガスは、再生器6において増湿空気と熱交換され、更に給水加熱器8において水と熱交換し、排ガスの熱エネルギーを回収する。給水加熱器8を出た排ガスは、排ガス再生器9において冷却された後、水回収装置10に供給される。水回収装置10では、低温の水を排ガスに対して噴霧することで排ガスの温度を下げ、排ガス中の水分を凝縮させて水分を回収する。凝縮せずに一部の水分を含有する排ガスは、再び排ガス再生器9に導かれ、加熱されて煙突11より大気に放出される。
次に、増湿系統について説明する。増湿系統では、増湿塔5と吸気噴霧器14が空気に加湿し、水回収装置10が排ガスから水を回収する。増湿塔5は、空気冷却器4及び給水加熱器8において昇温された高温水が圧縮空気に直接噴霧されることで、圧縮空気を加湿する。増湿塔5で蒸発しなかった高温水は、再び空気冷却器4あるいは給水加熱器8に供給されるような循環系統を形成している。
一方、水回収装置10は、冷却器17により冷却された低温の水を排ガスに噴霧して、排ガスの温度を低下させ、排ガス中の湿分を水に凝縮させて、可能な限り水分を回収する。それでも回収できなかった一部の湿分は、煙突11により大気中に放出されて失われるが、損失相当分の水分(湿分)は冷却水供給タンク15より新たに補給される。このように回収及び補給された水は、ポンプ12によって昇圧された後、脱塩装置13で浄化されて、空気冷却器4や吸気噴霧器14に供給される。
次にタービン1の高温部の冷却空気系統について説明する。本実施例のガスタービン発電プラントの燃焼温度は1300℃以上であり、タービン1のガスパスを構成する部材の許容温度以上であるため、タービン冷却部の冷却が必要である。ここで、冷却が必要なタービン1の冷却部を冷却する系統は、圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21と、増湿塔5より分岐された増湿空気の系統28の主に2つの系統である。また、タービン1の後段の冷却には、圧縮機2の中間段より抽気された空気の系統29が用いられる。いずれの系統もタービン1の冷却部を冷却した後には、ガスパス中に放出される。そして、本実施例では、起動時など増湿条件が十分に整わない場合のために、増湿空気の系統28の上流側では、冷却器4からの空気の系統23と増湿塔5からの空気の系統24とに分岐されている。そして、2つの系統23と24の分岐点には、2系統の空気を混合させながら切り替える機能を有する切替装置27が配置されている。このように、増湿空気の系統28の上流側に冷却器4からの空気系統23と増湿塔5からの空気系統24とを備えることで、起動初期には、冷却器からの空気で増湿空気の系統28を暖機することができる。起動初期に増湿空気の系統28を暖機すれば、配管や動翼及びロータの冷却パスが冷えているために生じる増湿空気の湿分による配管内の凝縮や、流路閉塞及び腐食を抑制可能である。
図1は、ガスタービンの冷却システムについてさらに詳細に示した図である。図2と同じ番号がついた構成については、説明を省略する。図1において、ガスタービンのタービン1は静翼30と動翼31を備え、タービンケーシング50は静翼30を備え、タービンロータ51は動翼31を備えている。そして、タービン1において、静翼30とタービンケーシング50とが静止系を形成し、動翼31とタービンロータ51とが回転系を形成する。本実施例において、動翼31およびロータ51は増湿空気の系統28aの空気により冷却され、増湿空気の系統28aの上流側では、冷却器4からの空気系統23と増湿塔5からの空気系統24とに分岐されている。そのため、冷却器4からの空気系統23と増湿塔5からの空気系統24との分岐点には切替装置27が配置されている。静翼30は、圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21と増湿空気の系統28bの空気とを混合させながら切り替える切替装置60を介して、2系統の空気がケーシング50を経由して供給される。ここで、ガスタービン発電プラントの熱効率を考えた場合、冷却に用いる空気の量はできる限り少ないほうがよいため、ガスタービン定格運転時のタービン冷却部の冷却には、冷却効果の高い増湿空気を用いる。
このように構成されたガスタービンについて、起動から定格運転さらに停止に至るまでの動作について説明する。ここで、便宜上ガスタービンの運転状態を次の4つの過程に分ける。第1過程はガスタービンを起動し定格回転数無負荷運転までの状態、第2過程は定格回転状態で徐々に負荷をかけて定格負荷運転に至るまでの状態、第3過程は定格回転定格負荷運転の状態、第4過程は定格回転負荷運転状態から停止に至るまでの状態である。そして、図3はガスタービン起動時の切替装置60の切り替え状態と、動翼先端間隙の変化について本実施例と従来の場合とを比較して示す。横軸はガスタービンの運転状態、縦軸は静止系における2つの空気系統を切り替える切替装置60の状態と半径方向のシュラウド変位量、回転系である動翼先端の変位量、及び動翼先端間隙比である。ここで、縦軸の動翼先端間隙比は、従来の場合のタービン停止時の常温における値を1.0 とし、0は動翼先端間隙が0の場合であり、その2つを基準とした比で示す。横軸のガスタービン運転状態は、タービン回転数が0から100%に至るまでの領域すなわち第1過程と、タービン回転数が100%の状態すなわち定格回転数で負荷が0から100%に至るまでの領域すなわち第2過程から第3過程を示している。
第1過程において、切替装置27は冷却器4からの空気系統23の空気を系統28aに流すように設定され、切替装置60は圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21側に切り替わっている。そのため、回転系である動翼31及びロータ51には、冷却器4の空気が供給され、静止系である静翼30及びケーシング50には、圧縮機2が圧縮した圧縮空気が供給される。
第2過程において、増湿塔5が本格的に作動し、切替装置27は冷却器4からの空気系統23の空気から増湿塔5からの空気系統24へと徐々に切り替えていく。また切替装置60は、圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21より増湿空気系統28bへと徐々に切り替えられる。そのため、回転系である動翼31及びロータ51には、冷却器4からの空気より増湿塔5からの増湿空気へと徐々に切り替わりながら冷却空気が供給される。また、静翼30及びケーシング50には、圧縮空気より増湿空気へと切り替わりながら供給される。
第3過程において、切替装置27は増湿塔5からの空気系統24を供給するように設定され、切替装置60も増湿空気系統28b側となっている。そのため、回転系,静止系共に増湿空気にて冷却される。
第4過程において、切替装置27は増湿塔5からの空気系統24から冷却器4からの空気系統23の空気へと徐々に切り替えていく。また切替装置60は、増湿空気系統28bから圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21へと徐々に切り替えられる。そして、回転系である動翼31及びロータ51には、増湿塔5からの増湿空気より冷却器4からの空気へと徐々に切り替わりながら冷却空気が供給される。また静翼30及びケーシング50には、増湿空気に代わって圧縮空気が供給される。
ここで、動翼31の先端91とケーシング50のガスパス側に装着されたシュラウド
90との隙間は、動翼先端間隙92と称する。この動翼先端間隙92は、タービンの性能上できる限り小さいほうが望ましい。しかし、運転中に動翼先端91がシュラウド90に接触してしまうラビングを引き起こすと、動翼先端91とシュラウド90の双方が損傷を受ける。その損傷状態によっては動翼31全体の破損を引き起こし、運転を妨げる可能性がある。このため、一般に動翼先端間隙92は、起動から全ての運転状態において、マージンを見込んで設定された最小値を下回らないように設計される。そして、動翼先端間隙が最小となるのは、第1過程と第2過程の間の起動時である。
以上のように、本実施例のガスタービン発電プラントは、冷却器4と増湿塔5、及び再生器6を備えているため、冷却空気として、圧縮機からの圧縮空気,冷却器からの空気,増湿塔からの空気,再生器からの空気の主に4種類の温度の異なる冷却媒体を使用することができる。また、これらは主流空気として燃焼器入口に供給される系統のものであるため、供給圧力について条件を満たす。本実施例では、ガスタービンの運転状態にあわせて、これらの冷却媒体を有効に切り替えることにより動翼先端の間隙制御を行うものである。
具体的には、静翼に供給する冷媒の流通方向上流側で複数に分岐された冷却系統の一つは圧縮機からの圧縮空気を静翼に供給し、複数に分岐された冷却系統のうち、ガスタービン起動時に他の系統に対し温度が高い冷媒を静翼に供給するように構成する。
このように、ガスタービン起動時において、圧縮機からの圧縮空気,冷却器からの空気,増湿塔からの空気,再生器からの空気のうち他の系統に対し温度が高い冷媒である圧縮機からの圧縮空気をケーシングに供給することで、ケーシングを暖機して、その熱伸びを加速できる。このことにより第1過程における動翼先端間隙比の減少量を小さくすることができ、ラビング回避の最小値は同じでも停止時の間隙比すなわち初期間隙比を小さく設定することができる。
次に、ラビング回避の最小値を超えた後の第2過程において、圧縮機からの圧縮空気よりも温度の低い増湿空気をケーシングに供給することでケーシングの熱伸びを抑制するため、定格運転時すなわち第3過程でのシュラウドの変位量は最終的に従来の場合と同じとなり、初期間隙比を小さくできる分だけ定格運転時の間隙比を小さくすることが可能となる。
したがって、起動途中のラビングを回避してガスタービンの信頼性を確保しつつ、定格負荷運転時の動翼先端間隙を小さくしてガスタービンの性能向上が可能となる。
なお、本実施例で示した動翼先端間隙制御の効果は、静止系の冷却空気系統の切り替えのみでもある程度の効果があり、特に限定されるものではない。
本実施例において、回転系の冷却空気として、増湿塔5に供給する前後の空気である冷却器4からの空気と増湿塔5からの増湿空気を用いる理由は、両者の温度差が約50℃と比較的小さく、切り替え時の回転系への熱衝撃を緩和できるためである。冷却器4からの空気の代わりに圧縮機2からの圧縮空気も考えられるが、この場合温度差が約150℃あるため、切り替え時の回転系への熱衝撃が大きくなる。また、ガスタービン起動時に温度の高い圧縮空気により回転系が暖気され、熱伸び量が増えて初期間隙を拡大する必要があるためである。したがって、回転系の冷却空気として、冷却器4からの空気と増湿塔5からの増湿空気を用いることが望ましい。
実施例2におけるガスタービン冷却システムの詳細図を図4に示す。図4において、図1と同じ番号の構造については、その説明を省略する。本実施例では、動翼31およびロータ51は増湿空気の系統28aの空気により冷却される。また、静翼30には、圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21と再生器6からの系統70の空気とを混合させながら切替装置61により切り替え、かつ、前記のどちらか一系統の暖機用の空気と増湿空気の系統28bの空気とを混合させながら切替装置60bにより切り替えて冷却空気が供給される。
このように構成されているガスタービンについて、図3と同様に運転状態を4つに分けて説明する。図5は、図3と同様に、ガスタービン起動時の切替装置60bと切替装置
61の切り替え状態と、動翼先端間隙の変化について、実施例1及び従来の場合と比較して示す。なお、図5において動翼先端間隙比の定義は図3と同様である。
第1過程において、切替装置27は冷却器4からの空気系統23の空気を系統28aに流すように設定され、切替装置60bは圧縮機2が圧縮した圧縮空気の系統21あるいは再生器6の空気系統70が供給される暖機空気側に設定されている。具体的には、起動から初期の間は、切替装置61は再生器6の空気系統70を供給する側に設定され、その後圧縮機が圧縮した圧縮空気の系統21に混合割合を変えながら、徐々に切り替わる。そのため、回転系である動翼31及びロータ51には、冷却器4の空気が供給され、静止系である静翼30及びケーシング50には、起動から初期の間は再生器6からの空気が供給され、その後圧縮機2の圧縮空気が供給される。
第2過程において、増湿塔5が本格的に作動し、切替装置27は冷却器4からの空気系統23の空気から、増湿塔5からの空気系統24の空気へと徐々に切り替えていく。また切替装置60bは、圧縮空気の系統21から増湿空気系統28bへと徐々に切り替える。そのため、回転系である動翼31及びロータ51には、冷却器4からの空気より増湿塔5からの増湿空気へと徐々に切り替わりながら冷却空気が供給される。また、静翼30及びケーシング50には、圧縮空気に代わって増湿空気が供給される。
第3過程において、切替装置27は増湿塔5からの空気系統24より増湿空気が供給されるように設定し、切替装置60bも増湿空気系統28b側に設定する。そのため、回転系,静止系共に増湿空気にて冷却される。
第4過程において、切替装置27は増湿塔5からの空気系統24より冷却器4からの空気系統23の空気へと徐々に切り替えていく。また切替装置60bは、増湿空気系統28bから圧縮空気の系統21へと徐々に切り替える。そのため、回転系である動翼31及びロータ51には、増湿塔5からの増湿空気より冷却器4からの空気へと徐々に切り替わりながら冷却空気が供給される。また静翼30及びケーシング50には、増湿空気に代わって圧縮空気が供給される。
前記の実施例と基本的な効果は同様である。但し、ガスタービン起動時の初期状態において圧縮機の圧力比が十分に上昇せず、圧縮空気に比べ再生器6からの空気の温度の方が高いため、本実施例の方がケーシング50の暖気により有効である。すなわちこのような構成とすることで、起動時のケーシングの熱伸びをさらに加速することができるため、初期間隙をさらに縮小することができる。したがって、定格時の動翼先端間隙をさらに小さくすることができる。あるいは、初期間隙を実施例1と同じに設定するならば、ラビング回避の最小値に余裕を確保することができる。
また、ガスタービンの起動の種類において、運転停止から十分なクーリングの時間をとらないで再起動するホットリスタートがある。この場合、ケーシングは外気にさらされているので放熱により温度がある程度下がっているが、回転系の動翼及びロータはケーシングで覆われているため放熱が少なく、完全に冷えていない状態である。このような場合、動翼及びロータは既に熱伸びしているため、間隙がラビング回避の最小値を超えることが考えられる。しかしながら、本実施例の構成とすれば、再生器の余熱でケーシングの暖気が可能となるために、ケーシングの熱伸びを加速させることで、第1過程での動翼先端間隙の減少を緩和し、ラビング回避の最小値を超えないように制御することが可能となる。
尚、本実施例で示してきた動翼先端間隙制御は、動翼及びロータの冷却系統によらず効果があり、特に限定されるものではない。
実施例3におけるガスタービン冷却システムの詳細図を図6に示す。図6では、動翼
31およびロータ51を冷却する増湿空気の系統28aの上流側において、起動時の切り替え用空気として圧縮空気の系統21bを用いている。このような系統構成の場合、暖機時に冷却器の空気より温度の高い圧縮空気を用いることで、配管や動翼31及びロータ
51の冷却パスにおける暖機を促進し、起動時間を短縮することが出来る。また、本実施例では、静止系に再生器の空気系統70を用いることで暖機温度に余裕があるため、条件の選び方により動翼先端間隙を従来よりも小さくすることが可能である。
本実施例では、系統70を再生器6の出口の空気を用いて説明してきたが、温度条件によっては、再生器6の途中から抽気したものでもよく、取り出し位置は特に制限されるものではない。
また、本実施例では、ケーシング暖機用の空気として圧縮機2の圧縮空気と再生器6の空気とを混合させながら切り替えるようにしているため、前記2系統の温度間で、任意の温度を設定することができる。
さらに、本実施例は、高湿分ガスタービンプラントを例にとって説明してきたが、単なる再生型ガスタービンにおいても、起動時に再生器の空気を用いてケーシングを暖機することは可能である。そして、動翼先端間隙を制御する場合に効果があり、特に限定されるものではない。
いずれの場合においても、本発明を用いることにより、定格負荷運転時において動翼先端間隙を小さくすることができることで性能を向上し、かつ起動途中でのラビングの問題を解決して信頼性を確保したガスタービンを提供できる。
ガスタービン発電プラントの実施例を示すタービン冷却系統システム図である。(実施例1) 一実施形態による高湿分ガスタービン発電プラントの構成図である。(実施例1) ガスタービンにおける動翼先端間隙説明図である。(実施例1) ガスタービン発電プラントの他の実施例を示すタービン冷却系統システム図である。(実施例2) ガスタービンにおける動翼先端間隙説明図である。(実施例2) ガスタービン発電プラントの他の実施例の変形例を示すタービン冷却系統システム図である。(実施例2)
符号の説明
1…タービン、2…圧縮機、3…発電機、4…冷却器、5…増湿塔、6…再生器、7…燃焼器、8…給水加熱器、9…排ガス再生器、10…水回収装置、11…煙突、12,
16…ポンプ、13…脱塩装置、14…吸気噴霧器、15…冷却水供給タンク、17…冷却器、21…圧縮空気の系統、23…冷却器からの空気系統、24…増湿塔からの空気系統、27,60,60b,61…切替装置、29…圧縮機中間段からの抽気空気の系統、30…静翼、31…動翼、50…ケーシング、51…ロータ、70…再生器からの空気の系統、90…シュラウド、91…動翼先端、92…動翼先端間隙。

Claims (5)

  1. 作動流体を圧縮する圧縮機と、作動流体と燃料とを混合燃焼させる燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスで回転駆動させるタービンとを備え、該タービンのケーシングに設けられた前記静翼に冷媒を供給して冷却する冷却系統を備えるガスタービンの冷媒供給方法であって、
    前記冷媒の流通方向上流側で複数に分岐された前記冷却系統の一つは前記圧縮機からの圧縮空気を前記静翼に供給し、
    複数に分岐された前記冷却系統のうち、ガスタービン起動時に他の系統に対し温度が高い冷媒を前記静翼に供給することを特徴とするガスタービンの冷媒供給方法。
  2. 作動流体を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの圧縮空気を増湿する増湿塔と、該増湿塔からの作動流体と燃料とを混合燃焼させる燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスで回転駆動させるタービンとを備え、該タービンのケーシングに設けられた静翼及び該タービンに設けられた動翼に冷媒を供給して冷却する冷却系統を備えるガスタービンであって、
    前記静翼に供給する冷媒の流通方向上流側で分岐された前記冷却系統の一方は前記圧縮機からの圧縮空気を前記静翼に供給し、他方の前記冷却系統は前記増湿塔からの増湿空気を前記静翼に供給するよう前記冷却系統が構成され、
    前記静翼の冷却系統が前記圧縮機の吐出空気と前記増湿塔からの増湿空気とを切り替え可能なように形成されていることを特徴としたガスタービン。
  3. 作動流体を圧縮する圧縮機と、該圧縮機からの圧縮空気を増湿する増湿塔と、該増湿塔からの増湿空気を加熱する再生器と、該再生器からの作動流体と燃料とを混合燃焼させる燃焼器と、該燃焼器からの燃焼ガスで回転駆動させるタービンとを備え、該タービンのケーシングに設けられた静翼及び前記タービンに設けられた動翼に冷媒を供給して冷却する冷却系統を備えるガスタービンであって、
    前記静翼に供給する冷媒の流通方向上流側で分岐された前記冷却系統の一方は前記再生器からの空気を前記静翼に供給し、他方の前記冷却系統は前記増湿塔からの増湿空気を前記静翼に供給するよう前記冷却系統が構成され、
    前記静翼の冷却系統が前記再生器からの空気と前記増湿塔からの増湿空気とを切り替え可能なように形成されていることを特徴としたガスタービン。
  4. 請求項2及び3記載のガスタービンであって、
    前記動翼に供給する冷媒の流通方向上流側で分岐された前記冷却系統の一方は前記増湿塔に供給する前の空気を前記動翼に供給し、他方の前記冷却系統は前記増湿塔からの増湿空気を前記動翼に供給するよう前記冷却系統が構成され、
    前記動翼の冷却系統が前記増湿塔に供給前後の空気を供給するよう切り替え可能に形成されていることを特徴としたガスタービン。
  5. 作動流体を圧縮する圧縮機と、燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスを用い駆動し、静翼と動翼とを有するタービンとを有し、前記圧縮機の作動流体は再生器により昇温され前記燃焼器に供給されるように形成され少なくとも前記静翼と動翼とを冷却する系統を有するガスタービンであって、
    前記静翼の冷却系統は、前記圧縮機の吐出空気と前記再生器の任意の箇所から抽気した空気とを切り換えて用いるように形成されていることを特徴としたガスタービン。
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