JP2006111495A - 成形用金型、その製造方法及び成形方法 - Google Patents

成形用金型、その製造方法及び成形方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006111495A
JP2006111495A JP2004301753A JP2004301753A JP2006111495A JP 2006111495 A JP2006111495 A JP 2006111495A JP 2004301753 A JP2004301753 A JP 2004301753A JP 2004301753 A JP2004301753 A JP 2004301753A JP 2006111495 A JP2006111495 A JP 2006111495A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molding
oxide
double
nitride
molding die
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004301753A
Other languages
English (en)
Inventor
Ichiro Asano
一朗 浅野
Yasuo Tanno
康雄 丹野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Heavy Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Heavy Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Heavy Industries Ltd filed Critical Sumitomo Heavy Industries Ltd
Priority to JP2004301753A priority Critical patent/JP2006111495A/ja
Publication of JP2006111495A publication Critical patent/JP2006111495A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)

Abstract

【課題】離型性を確実に確保することができ、成形用金型の耐久性を高くすることができるようにする。
【解決手段】所定の形状に形成された母材23と、母材23の先端面s4に形成された離型膜24とを有する。そして、離型膜24の最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層が形成される。また、酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて、成形材料との反応性の低いものが選択される。この場合、離型膜24の最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層が形成され、酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて、成形材料との反応性の低いものが選択されるので、成形材料と離型膜24とが付着しない。したがって、離型性を確実に確保することができ、成形用金型10の耐久性を高くすることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形用金型、その製造方法及び成形方法に関するものである。
従来、成形品として、高精度の光学素子、例えば、非球面レンズ等のレンズを成形するためにプレス成形法が提供されている。該プレス成形法においては、レンズの形状を有する成形面を備えた下型及び上型、並びに胴型を備えた成形用金型が使用され、前記下型と上型との間に成形材料としてのガラスのプリフォームがセットされる。続いて、非酸化性ガスの雰囲気下で前記成形用金型をガラス屈伏点(At)付近まで加熱し、保持し、前記上型を下型に押し付け、プリフォームを圧縮することによって加圧成形し、その状態でプリフォームをガラス転移点まで徐冷した後、更に冷却すると、レンズが成形される。その後、上型を上方に移動させ、レンズを取り出すことができる。
前記プレス成形法において使用されるレンズ用のガラス屈伏点は、硝材、すなわち、ガラスの成分によって異なるが、約300〜700〔℃〕であり、比較的高温で成形が行われる。したがって、前記成形用金型において、下型、上型及び胴型について、表1に示されるような性能が要求される。
Figure 2006111495
すなわち、下型、上型及び胴型については、高温下における使用に耐えられるように高温強度、耐熱性及び耐酸化性が、所望の形状、寸法精度でレンズを成形することができるように加工性が、長期間の使用に耐えられるように耐久性が要求される。また、下型及び上型については、成型時において軟化したガラスと付着することがないように離型性が、光学特性を良好にするためのレンズの面精度及び粗さを加圧成形を行うだけで得られるように鏡面性が要求される。
そのために、前記下型及び上型において、母材として炭化珪(けい)素(SiC)、炭化タングステン(WC)等のセラミックスを使用し、前記母材の先端面をレンズの形状に加工し、鏡面研磨した後、離型性を確保するために、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等の単独の窒化物から成る窒化物膜、又はこれらを組み合わせた複窒化物から成る複窒化物膜を前記先端面に被覆し、成形面を形成するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平3−153533号公報
しかしながら、前記従来の成形用金型においては、ガラスの成分によってはガラスと窒化物膜又は複窒化物膜とが付着することがあり、離型性を確実に確保することができない。また、成形を繰り返すのに伴って、ガラスと窒化物膜又は複窒化物膜との付着が繰り返され、窒化物膜又は複窒化物膜が剥(はく)離してしまい、成形用金型の耐久性が低下してしまう。
本発明は、前記従来の成形用金型の問題点を解決して、離型性を確実に確保することができ、成形用金型の耐久性を高くすることができる成形用金型、その製造方法及び成形方法を提供することを目的とする。
そのために、本発明の成形用金型においては、所定の形状に形成された母材と、該母材の先端面に形成された離型膜とを有する。
そして、該離型膜の最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層が形成される。また、前記酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて、成形材料との反応性の低いものが選択される。
本発明によれば、成形用金型においては、所定の形状に形成された母材と、該母材の先端面に形成された離型膜とを有する。
そして、該離型膜の最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層が形成される。また、前記酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて、成形材料との反応性の低いものが選択される。
この場合、離型膜の最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層が形成され、前記酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて、成形材料との反応性の低いものが選択されるので、成形材料と離型膜とが付着しない。
したがって、離型性を確実に確保することができ、成形用金型の耐久性を高くすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形品として、高精度の光学素子、例えば、非球面レンズ等のレンズを成形するための成形用金型及びその製造方法について説明する。
図1は本発明の実施の形態における下型の断面図、図2は本発明の実施の形態におけるプレス成形法を示す第1の図、図3は本発明の実施の形態におけるプレス成形法を示す第2の図である。
図において、10は成形用金型、11は第1の成形型としての下型、12は第2の成形型としての上型、13は胴型である。前記下型11は、図示されない支持部材上に配設され、フランジ部15、及び該フランジ部15から上方に向けて延びる第1のコア部としての下コア16を備える。また、前記上型12は、図示されない型開閉装置によって上下方向に移動自在に支持され、フランジ部17、及び前記下コア16と対向させて、かつ、フランジ部17から下方に向けて延びる第2のコア部としての上コア18を備える。
そして、前記胴型13は、前記フランジ部15上に載置され、下コア16の全体、及び上コア18の一部を包囲するように配設され、下型11と上型12との心合せをするとともに、上型12を案内する。そのために、下コア16及び上コア18は円柱状の形状を有し、胴型13は下コア16及び上コア18を緊密に覆う円筒体から成り、下コア16及び上コア18の外周面と胴型13の内周面とは摺(しゅう)動させられる。
また、前記下コア16の上端には、第1の成形面としての下成形面s1が、上コア18の下端には、第2の成形面としての上成形面s2が形成される。
前記構成の成形用金型10においてレンズを製造する方法について説明する。
まず、装填(てん)工程において、型開閉装置は、上型12を上方に移動させ、図示されない装填装置は、前記下型11と上型12との間に成形材料としてのガラスから成るプリフォーム21をセットする。そして、非酸化性ガスの雰囲気下で図示されない加熱装置は、前記成形用金型10をガラス屈伏点付近まで加熱し、保持する。
続いて、加圧工程において、前記型開閉装置は上型12を下方に移動させて型閉じを行うとともに、上型12を下型11に押し付け、図3に示されるように、プリフォーム21を圧縮することによって加圧成形する。このとき、上型12と下型11とが当接させられ、プリフォーム21は前記下成形面s1及び上成形面s2の形状に合わせて変形させられる。そして、冷却工程において、プリフォーム21をガラス転移点まで徐冷した後、更に冷却すると、レンズが成形される。その後、取出工程において、前記型開閉装置は、上型12を上方に移動させて型開きを行い、レンズを取り出す。
ところで、下型11、上型12及び胴型13については、高温下における使用に耐えられるように高温強度、耐熱性及び耐酸化性が、所望の形状、寸法精度でレンズを成形することができるように加工性が、長期間の使用に耐えられるように耐久性が要求される。また、下型11及び上型12については、成型時において軟化したガラスと付着することがないように離型性が、光学特性を良好にするためのレンズの面精度及び粗さを加圧成形を行うだけで得られるように鏡面性が要求される。
そのために、前記下型11において、図1に示されるように、母材23として炭化珪素、炭化タングステン等のセラミックスを使用し、前記母材23の先端面s4をレンズの形状に加工し、鏡面研磨した後、離型性を確保するために、離型膜24を先端面s4に被覆し、前記下成形面s1を形成するようにしている。前記母材23として超硬合金を使用することもできる。なお、下型11及び上型12は同じ構造を有するので、下型11についてだけ説明し、上型12については説明を省略する。
ところで、例えば、前記離型膜24としてチタン、アルミニウム等の単独の窒化物である窒化チタン(TiN)、窒化アルミニウム(AlN)等から成る窒化物膜、又はチタン、アルミニウム等を組み合わせた複窒化物であるチタンアルミナイトライド(TiAlN)等から成る複窒化物膜を先端面s4に被覆すると、ガラスの成分によってはガラスと離型膜24とが付着することがあり、離型性を確実に確保することができない。
すなわち、窒化チタン、窒化アルミニウム、チタンアルミナイトライド等から成る離型膜24においては、非酸化性ガスの雰囲気下においてプレス成形を行っても、最も外側の表面、すなわち、最表面が酸化してしまう。
例えば、窒化チタン、窒化アルミニウム等から成る離型膜24の場合、成形温度を600〔℃〕としたときのギブズの自由エネルギー(Gibbs free energy)からみると、熱力学平衡論的に、窒化アルミニウムでは、酸素分圧を10-38 〔atm〕以下に、窒化チタンでは、酸素分圧を10-33 〔atm〕以下にしなければ酸化するのを防止することができず、周囲の酸素ポテンシャルに応じて最表面に酸化アルミニウム(Al2 3 )、酸化チタン(TiO2 )等が形成されてしまう。
また、チタンアルミナイトライド等から成る離型膜24の場合、アルミニウムが酸化しやすく、酸化アルミニウムが形成されやすく、該酸化アルミニウムは、残りの窒化物、すなわち、チタンアルミナイトライド、窒化アルミニウム等と反応して複酸窒化物に変化する。
ところで、前記酸化アルミニウムは、酸性酸化物及び塩基性酸化物のいずれとも反応する酸化物、すなわち、両性酸化物として機能するので、ガラスを構成する成分、主として酸化物によっては、ガラスと反応してしまう。
すなわち、酸化物は、イオン強度等によって、酸性の挙動を示す酸性酸化物、中性の挙動を示す中性酸化物、及び塩基性の挙動を示す塩基性酸化物に分類されるが、このうち、酸性酸化物、例えば、二酸化珪素(SiO2 )と塩基性酸化物、例えば、酸化カルシウム(CaO)を高温下に置くと、次の式のように、酸化カルシウムがCa2+(カルシウムイオン)とO2-(酸素イオン)とに解離し、該O2-が二酸化珪素に受容される。
CaO=Ca2++O2-
SiO2 +2O2-=SiO4 4-
このように、酸化物においては、酸性酸化物と塩基性酸化物との間で酸素イオンの授受反応が起こる。
表2に、各種の酸化物について、金属元素及び酸素の各イオン半径、並びにイオン強度を示す。
Figure 2006111495
表2において、上方のもの、すなわち、イオン強度の小さいものほど、O2-を供給しやすく塩基性の挙動を示し、下方のもの、すなわち、イオン強度の大きいものほど、O2-を受容しやすく酸性の挙動を示す。そして、酸化クロム(Cr2 3 )、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化チタン等は、酸性酸化物と塩基性酸化物との間に位置する中性酸化物であり、中性の挙動を示すが、酸性酸化物に対しては相対的に塩基性の挙動を示し、塩基性酸化物に対しては相対的に酸性の挙動を示し、両性酸化物として機能する。
すなわち、例えば、酸化アルミニウムの場合、塩基性の挙動を示す場合、次のような反応を起こす。
Al2 3 =2Al3++3O2-
また、酸性の挙動を示す場合、次のような反応を起こす。
Al2 3 +3O2-=2AlO3 3-
一方、ガラスを構成する成分は、酸性酸化物である酸化ホウ素(B2 3 )、二酸化珪素、酸化リン(P2 5 )等から成る網目構成酸化物、塩基性酸化物である酸化カリウム(K2 O)、酸化ナトリウム(Na2 O)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム、酸化亜鉛(ZnO)等から成る修飾酸化物、及び酸化ジルコニウム(ZrO2 )等から成る中性酸化物の各酸化物の混合体によって構成される。前記網目構成酸化物は、ガラスの主成分であり、網目を形成し、融点が高く、軟らかくならない特性を有し、修飾酸化物は、網目を切る作用を有し、ガラスの屈伏点を低くし、加工性がよく、プレス成形に適する特性を有する。
そして、ガラスにおける前記混合体における酸性酸化物の含有量qa(質量で表される。)に対する塩基性酸化物の含有量qb(質量で表される。)の比で表される塩基度γ
γ=qb/qa
は、前記混合体が酸性として挙動するか、又は塩基性として挙動するかを表し、塩基度γが1より高いほど塩基性として挙動しやすく、塩基度γが1より低いほど酸性として挙動しやすい。
ところで、前述されたように離型膜24に酸化アルミニウム等の中性酸化物が形成され、ガラスと接触すると、ガラスの塩基度γによって、前記中性酸化物は、酸性として挙動する場合、中性として挙動する場合、及び塩基性として挙動する場合がある。このうち、前記中性酸化物が、酸性又は塩基性として挙動する場合、ガラスに付着する。すなわち、例えば、前記中性酸化物は、塩基度γが0.3及び0.5程度のガラスに対しては、塩基性として挙動し、ガラスに付着するが、塩基度γが0.7程度のガラスに対しては、中性として挙動し、ガラスに付着しない。
このように、プレス成形用の成形用金型10においては、離型膜24における離型性は、離型膜24を構成する金属元素の酸化物と、ガラスを構成する酸化物とが反応するかどうかに依存する。
また、レンズの成形中に離型膜24の酸化が進むと、該離型膜24の体積が膨張するのに伴って膜応力が高くなり、離型膜24に微視的破壊が発生してしまう。
そこで、本実施の形態において、前記離型膜24は、複数の金属元素が酸化物の状態で混在する複酸化物によって形成され、該複酸化物は、離型性を保持するための酸化物、及び酸化を抑制するための酸化物から成り、複酸化物層を構成し、下成形面s1が複酸化物層によって構成される。そして、前記離型性を保持するための酸化物としては、ガラスの塩基度γと対応させて、ガラスとの反応性の低い酸化物が選択され、酸化を抑制するための酸化物としては、耐酸化性が良い緻密な酸化膜を形成する酸化物が選択される。
すなわち、塩基度γが1より小さいガラスの場合、離型性を保持するための酸化物として、イオン強度が大きい酸化物が選択され、塩基度γが1より大きいガラスの場合、離型性を保持するための酸化物として、イオン強度が小さい酸化物が選択される。例えば、塩基度γが0.75又は0.85である場合、酸化アルミニウム又は酸化チタンが、塩基度γが0.27である場合、酸化アルミニウム、酸化チタンのほかに、白金−イリジウム(Pr−Ir)、白金−レニウム(Pr−Rt)、レニウム−イリジウム(Rt−Ir)等の各酸化物が選択される。また、塩基度γが1.18又は1.24である場合、酸化クロムが選択される。
ところで、前記複酸化物層は、化学蒸着、物理蒸着等によって形成されるが、母材23との密着性が高い場合、母材23に直接被覆され、母材23との密着性が低い場合、先端面s4に、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム等の単独の窒化物から成る窒化物層、又はこれらを組み合わせた複窒化物から成る複窒化物層を一次処理膜として被覆し、続いて、該一次処理膜に対して適当な酸化処理を施すことができる。この場合、前記離型膜24の最表面に、酸化処理に伴う二次処理膜として複酸化物から成る複酸化物層が形成される。
その結果、離型膜24は、母材23の先端面s4に被覆された窒化物層又は複窒化物層、及び窒化物層又は複窒化物層上に形成された複酸化物層から成る2層構造になり、この場合、下成形面s1が複酸化物層によって構成される。
また、本実施の形態においては、プレス成形が行われるのに伴って、加熱及び冷却の繰返しによって下型11に熱履歴が加えられるので、母材23と離型膜24との熱膨張の差によって、離型膜24に絶えず応力が発生し、離型膜24が破損しやすくなる。そこで、前記離型膜24において、前述されたように、窒化物層又は複窒化物層を一次処理膜として被覆し、続いて、該一次処理膜に対して適当な酸化処理を施し、最表面に、酸化処理に伴う二次処理膜として前記複酸化物層を形成するとともに、該複酸化物層の内側、すなわち、複酸化物層と窒化物層又は複窒化物層との間に、中間層として、複酸化物の金属元素の窒化化合物及び酸素から成る酸素拡散層を形成することができる。
その結果、離型膜24は、先端面s4に被覆された窒化物層又は複窒化物層、該窒化物層又は複窒化物層上に形成された酸素拡散層、及び該酸素拡散層上に形成された複酸化物層から成る3層構造になり、この場合、下成形面s1が複酸化物層によって構成される。なお、前記酸素拡散層は、アルミニウム、チタン、酸素及び窒素の成分から成り、内側ほど、すなわち、前記複酸化物層から複窒化物層にかけて酸素の濃度が徐々に低くなる。また、前記窒化物層又は複窒化物層は、前記複酸化物の金属元素を含む窒化物又は複窒化物で形成される。本実施の形態においては、複酸化物の金属元素としてアルミニウム及びチタンが使用されるが、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及びクロム(Cr)のうちの二つの成分を使用することができる。
このように、複酸化物層が離型性を保持するための酸化物を含むので、離型性を確実に確保することができ、成形用金型の耐久性を高くすることができる。また、複酸化物層が酸化を抑制するための酸化物を含むので、レンズの成形中に、離型膜24の体積が膨張することがなく、離型膜24の膜応力が高くならず、離型膜24に微視的破壊が発生するのを防止することができる。
図4は本発明の実施の形態におけるチタンアルミナイトライドの酸化特性を示す図、図5は本発明の実施の形態における離型膜の成分の分析結果を示す図である。なお、図4において、横軸に温度を、縦軸に酸化に伴う重量増加を、図5において、横軸にスパッタリング時間を、縦軸に元素分率を採ってある。
炭化珪素から成る母材23(図1)を所望の形状に加工した後、レンズの形状になるように先端面s4を鏡面研磨し、該先端面s4にスパッタリング法によって200〔mm〕の厚さの複窒化物層であるチタンアルミナイトライド層を形成して被覆し、金型原型を形成した。次に、酸素濃度を10〜50〔ppm〕にして、残部が窒素から成る非酸化性ガスの雰囲気下において、前記金型原型を600〔℃〕の処理温度で1時間加熱した。その結果、最表面に厚さが約20〔nm〕の酸化アルミニウム及び酸化チタンから成る複酸化物層が、該複酸化物層の内側に厚さが約30〔nm〕の酸素拡散層が形成され、該酸素拡散層の内側に残りのチタンアルミナイトライド層が形成された。
なお、酸素濃度が10〔ppm〕より低いと、酸化アルミニウムとチタンアルミナイトライドとが混合した状態の膜が形成され、離型性を各種のガラスに対して確保することができなくなってしまう。したがって、酸素濃度を10〔ppm〕以上にするのが好ましい。また、図4に示されるように、処理温度が500〔℃〕より低いとチタンアルミナイトライドの酸化が行われず、800〔℃〕より高いと、チタンアルミナイトライドが急激に酸化され、下成形面s1にこぶ状の酸化物が形成されてしまうことがある。そこで、前述されたように、処理温度は500〜700〔℃〕の範囲に設定するのが好ましい。
前記離型膜24をオージェ電子分光分析法によって深さ方向に分析した結果、図5に示されるような分析結果を得ることができた。この場合、アルゴンイオンで離型膜24の表面をスパッタリングし、各スパッタリング時間ごとの各成分の量を元素分率で表してある。なお、分析時のスパッタリング速度は、二酸化珪素に換算して10.1〔nm/min〕にした。窒素の元素分率のラインと酸素の元素分率のラインとが交差するスパッタリング時間に基づいて前記複酸化物層の厚さを算出した。
次に、3種類のガラス1〜3を使用し、実施例及び比較例1〜3について離型膜24の離型性について評価した。表3にガラス1〜3の主成分(ガラス1においては二酸化珪素、酸化ホウ素、酸化カリウム、酸化バリウム及び酸化ナトリウム、ガラス2においては二酸化珪素、酸化ホウ素、酸化カリウム及び酸化バリウム、ガラス3においては二酸化珪素、酸化ニオブ(Nb2 3 )、酸化ホウ素、酸化カリウム、酸化ナトリウム及び酸化バリウム)、塩基度γ及び成形温度を、表4にガラス1〜3と実施例及び比較例1〜3の離型膜との付着の有無を、表5にガラス1〜3を使用して非酸化性ガスの雰囲気下で実際の成形を行ったときの実施例及び比較例1及び2の離型膜の耐久性をショット数で示す。いずれのガラス1〜3も塩基度γは1より小さく、酸性の挙動を示す。なお、前記金型原型の600〔℃〕の処理温度は、ガラス1〜3のうちの最も高いガラス2の成形温度に相当する。
Figure 2006111495
Figure 2006111495
Figure 2006111495
また、比較例1は、複酸化物層の形成されないチタンアルミナイトライド層だけからなる離型膜を備えた成形用金型を、比較例2は、実質的に酸化アルミニウムと複窒化物とが混合した状態の層から成る離型膜を備えた成形用金型を、比較例3は、最表面に酸化クロムの層が形成された窒化クロムの層から成る離型膜を備えた成形用金型を使用した。
なお、表4において付着の有無を判定するに当たり、前記各離型膜が形成された円板状のサンプルを使用した。そして、該サンプル上にガラス1〜3を置き、非酸化性ガスの雰囲気下でサンプル及びガラスを加熱した後、ガラス1〜3と離型膜との付着の有無をSEM(走査電子顕微鏡)で観察した。比較例1及び2においては、ガラス1及び2で付着が有り、比較例3においては、すべてのガラス1〜3で付着が有ったのに対して、実施例においては、すべてのガラス1〜3で付着が無く、離型性が良好であることが分かる。すなわち、実施例においては、最表面に酸化アルミニウム及び酸化チタンから成る複酸化物層が形成されるが、表2に示されるように、酸化アルミニウムより酸性側に位置する酸化チタンによって離型性が確保される。これに対して、比較例3においては、最表面に酸化アルミニウムより塩基性側に位置する酸化クロムの層が形成されるので、すべてのガラス1〜3と離型膜とが付着した。
また、表5に示されるように、実施例においては、すべてガラス1 〜3において、2000〔ショット〕以上の耐久性を確認することができた。
このように、実施例においては、離型性を保持するための酸化物として酸化チタンが、プレス成形が行われる際に発生する不要な酸化を抑制するための酸化物として酸化アルミニウが使用される。
なお、塩基度が1より大きいガラスを使用した場合、酸化アルミニウムより塩基性側の酸化物、例えば、酸化クロム、及び他の金属元素(例えば、アルミニウム又はチタン)の酸化物から成る複酸化物を使用することができる。その場合、離型性を保持するための酸化物として酸化クロムが、プレス成形が行われる際に発生する不要な酸化を抑制するための酸化物として酸化アルミニウム又は酸化チタンが使用される。
このように、複酸化物を構成する成分の組合せは、塩基度γ、酸化物のイオン強度及び耐酸化性等に基づいて選択される。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の実施の形態における下型の断面図である。 本発明の実施の形態におけるプレス成形法を示す第1の図である。 本発明の実施の形態におけるプレス成形法を示す第2の図である。 本発明の実施の形態におけるチタンアルミナイトライドの酸化特性を示す図である。 本発明の実施の形態における離型膜の成分の分析結果を示す図である。
符号の説明
10 成形用金型
23 母材
24 離型膜
s1 下成形面
s2 上成形面
s4 先端面

Claims (9)

  1. (a)所定の形状に形成された母材と、
    (b)該母材の先端面に形成された離型膜とを有するとともに、
    (c)該離型膜の最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層が形成され、
    (d)前記酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて、成形材料との反応性の低いものが選択されることを特徴とする成形用金型。
  2. 前記複酸化物層の内側に酸素拡散層が形成される請求項1に記載の成形用金型。
  3. 前記酸素拡散層は、前記複酸化物層の金属元素の窒化化合物及び酸素から成る請求項2に記載の成形用金型。
  4. 前記酸素拡散層の内側に複窒化物層が形成される請求項2又は3に記載の成形用金型。
  5. 前記複窒化物層は、複酸化物層の金属元素を含む複窒化物から成る請求項4に記載の成形用金型。
  6. 前記複酸化物層の金属元素は、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及びクロムのうちの二つである請求項1に記載の成形用金型。
  7. (a)前記複酸化物層の金属元素はアルミニウム及びチタンであり、
    (b)前記酸素拡散層はアルミニウム、チタン、窒素及び酸素の成分から成り、
    (c)前記酸素の濃度は、内側ほど低くされ、
    (d)前記複窒化物はチタンアルミナイトライドである請求項4〜6のいずれか1項に記載の成形用金型。
  8. (a)母材に複窒化物層を被覆し、
    (b)該複窒化物層を、所定の濃度の酸素、及び所定の濃度の非酸化性ガスから成る雰囲気下で加熱し、
    (c)最表面に、複数の金属元素の酸化物から成る複酸化物層を形成するとともに、
    (d)前記酸化物は、成形品の成形材料の塩基度に対応させて選択されることを特徴とする成形用金型の製造方法。
  9. (a)所定の塩基度を有する成形材料を、前記塩基度に対応させて選択され、成形材料との反応性が低い酸化物から成る複酸化物層が形成された成形用金型にセットし、
    (b)型開閉装置を作動させて前記成形用金型によって前記成形材料を圧縮し、
    (c)前記成形用金型において、成形材料をガラス転移点まで冷却して成形品を成形し、
    (d)前記成形用金型を開いて成形品を取り出すことを特徴とする成形方法。
JP2004301753A 2004-10-15 2004-10-15 成形用金型、その製造方法及び成形方法 Pending JP2006111495A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004301753A JP2006111495A (ja) 2004-10-15 2004-10-15 成形用金型、その製造方法及び成形方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004301753A JP2006111495A (ja) 2004-10-15 2004-10-15 成形用金型、その製造方法及び成形方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2006111495A true JP2006111495A (ja) 2006-04-27

Family

ID=36380318

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004301753A Pending JP2006111495A (ja) 2004-10-15 2004-10-15 成形用金型、その製造方法及び成形方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2006111495A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020514113A (ja) * 2016-12-22 2020-05-21 エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエスELKEM SILICONES France SAS タイヤの型成形/離型用のポリオルガノシロキサンをベースとする組成物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020514113A (ja) * 2016-12-22 2020-05-21 エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエスELKEM SILICONES France SAS タイヤの型成形/離型用のポリオルガノシロキサンをベースとする組成物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2006290700A (ja) ガラス光学素子用成形型およびガラス光学素子の製造方法
JP4471751B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JP2006111495A (ja) 成形用金型、その製造方法及び成形方法
TWI621594B (zh) Optical element and method of manufacturing the same
JPH021779B2 (ja)
CN107406306B (zh) 模压成型用玻璃坯料、玻璃光学元件及其制造方法
JP7125844B2 (ja) ガラス製成形型
JP2785888B2 (ja) 光学素子成形用型
JPH0688803B2 (ja) 光学ガラス素子の成形用型
JP4463656B2 (ja) 成形用金型の再生方法
JP3185299B2 (ja) ガラスレンズ成形用型およびガラスレンズ成形装置
JP2008105874A (ja) 光学素子の製造方法及び光学素子
JP3492005B2 (ja) ガラス光学素子の成形方法
AU2020283650B2 (en) Method for manufacturing plate glass
JPH09286624A (ja) 光学素子成形用型
JP5442420B2 (ja) 精密プレス成形用ガラス素材の肉厚決定方法および製造方法、ならびにガラス光学素子の製造方法
JP2505897B2 (ja) 光学素子成形用型
JPH021781B2 (ja)
JPH021778B2 (ja)
JP4256190B2 (ja) ガラス光学素子の製造方法
JPS61136929A (ja) ガラスプレス成形用型の製造方法
JP5603125B2 (ja) 成形型及びその製造方法、並びに、光学素子及び光学機器の製造方法
JP2012030987A (ja) 光学素子の成形方法
JP2007137724A (ja) ガラス製成形型
JPH0259450A (ja) 光学ガラス素子のプレス成形用型

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060809

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090514

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090616

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090806

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091013

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091214

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100216