JP2006110585A - 耐粒界応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マルテンサイト系ステンレス鋼管の端部同士を突き合わせ、円周方向に多層の溶接パスからなる溶接を施して円周溶接部を形成するに際し、P:0.010mass%以下に制限した組成とする。これにより、円周溶接部の溶接熱影響部における粒界応力腐食割れの発生を容易に防止できる。なお、使用するマルテンサイト系ステンレス鋼管は、C:0.015%以下、N:0.015%以下、Cr:10〜14%、Ni:3〜8%、およびSi、Mn、S、Alを適正範囲含み、さらにCu:1〜4%、Co:1〜4%、Mo:1〜4%、W:1〜4%のうちの1種又は2種以上、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下のうちの1種または2種以上、Ca、Mg、REM、Bのうちの1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成とすることが好ましい。
【選択図】図1
Description
(1)マルテンサイト系ステンレス鋼管の端部同士を突き合わせたのち、該端部に沿って円周方向に溶接を施して複数層からなる円周溶接部を形成しマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手を製造するに当たり、
前記マルテンサイト系ステンレス鋼管として、mass%で、P:0.010%以下に制限した組成のマルテンサイト系ステンレス鋼管を用いることを特徴とする耐粒界応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
(2)(1)において、前記組成が、さらに、mass%で、C:0.015%以下、N:0.015%以下、Cr:10〜14%、Ni:3〜8%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、S:0.010%以下、Al:0.10%以下を含み、さらにCu:1〜4%、Co:1〜4%、Mo:1〜4%、W:1〜4%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
(3)(2)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
(4)(2)または(3)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
(5)mass%で、C:0.015%以下、N:0.015%以下、Cr:10〜14%、Ni:3〜8%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、S:0.010%以下、P:0.010%以下、Al:0.10%以下を含み、さらにCu:1〜4%、Co:1〜4%、Mo:1〜4%、W:1〜4%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶接熱影響部の耐粒界応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管。
(6)(5)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管。
(7)(5)または(6)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼管。
Cは、鋼に固溶し、鋼の強度増加に寄与する元素であるが、多量の含有は、HAZを硬化させ、溶接割れを生じさせたり、溶接熱影響部靭性を劣化させるため、本発明では、できるだけ低減することが望ましい。本発明では、とくにHAZのIGSCCを防止するため、Cr炭化物として析出してCr欠乏層形成の原因となるCを、0.015%以下に限定することが好ましい。Cを0.015%を超えて含有すると、HAZのIGSCCを防止することが困難となる。なお、より好ましくは0.010%以下である。
Nは、Cと同様に、鋼に固溶し、鋼の強度増加に寄与する元素であり、多量の含有は、HAZを硬化させ、溶接割れを生じさせたり、溶接熱影響部靭性を劣化させる。また、Nは、Ti、Nb、Zr、V、Hf、Taと結合し窒化物を形成するため、炭化物を形成しCr炭化物の形成を防止できるTi、Nb、Zr、V、Hf、Ta量を実質的に低減することになり、これら元素のCr欠乏層形成を抑制しIGSCCを抑制する効果を低下させることになる。このため、Nはできるだけ低減することが望ましい。上記したNの悪影響は、0.015%以下であれば許容できるため、本発明では、Nは0.015%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.010%以下である。
Crは、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性等の耐食性を向上させるための基本元素であり、本発明では10%以上含有することが望ましい。一方、14%を超える含有は、フェライト相が形成しやすくなり、マルテンサイト組織を安定して確保するために多量の合金元素添加を必要とし材料コストの上昇を招く。このため、本発明ではCrは10〜14%の範囲に限定することが好ましい。
Niは、耐炭酸ガス腐食性を向上させるとともに、固溶して強度上昇に寄与し、また靭性を向上させる元素である。また、Niはオーステナイト形成元素であり、低炭素域でマルテンサイト組織を安定して確保するために有効に作用する。このような効果を得るためには、3%以上の含有を必要とする。一方、8%を超える含有は、変態点が低下しすぎて、所望の特性を確保するための焼戻し処理が長時間となるうえ、材料コストの高騰を招く。このため、Niは3〜8%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは4〜7%である。
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して強度増加に寄与する元素であり、本発明では0.1%以上含有することが望ましい。しかし、Siはフェライト生成元素でもあり、1.0%を超える多量の含有は母材およびHAZ靭性を劣化させる。このため、Siは1.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Mnは、固溶して鋼の強度上昇に寄与するとともに、オーステナイト生成元素であり、フェライト生成を抑制して母材および溶接熱影響部靭性を向上させる。このような効果を得るためには0.2%以上含有することが好ましい。一方、2.0%を超えて含有しても効果が飽和する。このため、Mnは2.0%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.2〜1.2%である。
Sは、MnS等の硫化物を形成し、加工性を低下させる元素であり、本発明ではできるだけ低減することが好ましいが、0.010%までは許容できる。このため、Sは0.010%以下に限定することが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用し、0.01%以上含有することが好ましいが、0.10%を超える含有は靭性を劣化させる。このため、Alは0.10%以下に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.01〜0.04%である。
Cu、Co、Mo、Wはいずれも、CO2を含有する天然ガスを輸送するラインパイプ用鋼管に要求される特性である耐炭酸ガス腐食性を向上させる元素であり、本発明では選択して1種又は2種以上をCr、Niとともに、含有することが好ましい。
Cuは、耐炭酸ガス腐食性を向上させるとともに、オーステナイト形成元素であり、低炭素域でマルテンサイト組織を安定して確保するために有効に作用する。このような効果を得るためには、1%以上含有することが好ましい。一方、4%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Cuは1〜4%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1.5〜2.5%である。
Coは、Cuと同様に、耐炭酸ガス腐食性を向上させるとともに、オーステナイト形成元素であり、低炭素域でマルテンサイト組織を安定して確保するために有効に作用する。このような効果を得るためには、1%以上含有することが好ましい。一方、4%を超えて含有しても、効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Coは1〜4%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1.5〜2.5%である。
Moは、耐応力腐食割れ性、さらには耐硫化物応力腐食割れ性、耐孔食性を向上させる元素であり、その効果を得るためには1%以上含有することが好ましい。一方、4%を超える含有は、フェライトを生成しやすくするとともに、耐硫化物応力腐食割れ性向上効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Moは1〜4%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1.5〜3.0%である。
Wは、Moと同様に、耐応力腐食割れ性、さらには耐硫化物応力腐食割れ性、耐孔食性を向上させる元素であり、その効果を得るためには1%以上含有することが好ましい。一方、4%を超える含有は、フェライトを生成しやすくするとともに、耐硫化物応力腐食割れ性向上効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり経済的に不利となる。このため、Wは1〜4%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは1.5〜3.0%である。
Ti、Nb、V、Zr、Hf、Taはいずれも、炭化物形成元素であり、1種または2種以上を選択して含有することが好ましい。Ti、Nb、V、Zr、Hf、Ta はいずれも、Crに比べて炭化物形成能が強く、溶接熱で固溶したCが、冷却時にCr炭化物として旧オーステナイト粒界に析出するのを抑制し、HAZの耐粒界応力腐食割れ性を向上させる効果を有する。また、Ti、Nb、V、Zr、Hf、Ta の炭化物は、溶接熱で高温に加熱されても溶解しにくく固溶Cの発生が抑制され、このことを介してCr炭化物の形成を抑制し、HAZの耐粒界応力腐食割れ性を向上させるという効果もある。このような効果を得るためには、Ti:0.03%以上、Nb:0.03%以上、V:0.02%以上、Zr:0.03%以上、Hf:0.03%以上、Ta:0.03%以上、をそれぞれ含有することが好ましい。一方、Ti:0.15%、Nb:0.10%、V:0.10%、Zr:0.10%、Hf:0.20%、Ta:0.20%を超える含有は、耐溶接割れ性、靭性を劣化させる。このため、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくは、Ti:0.03〜0.12%、Nb:0.03〜0.08%、V:0.02〜0.08%、Zr:0.03〜0.08%、Hf:0.10〜0.18%、Ta:0.10〜0.18%である。
Ca、Mg、REM、Bは、いずれも熱間加工性、連続鋳造における安定製造性の向上に有効に作用する元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0010%以上、REM:0.0010%以上、B:0.0005%以上、それぞれ含有することが好ましい。一方、Ca:0.010%、Mg:0.010%、REM:0.010%、B:0.010%を超えて含有すると粗大介在物として存在しやすくなるため耐食性の劣化、靭性の低下が著しくなる。このため、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下にそれぞれ限定することが好ましい。なお、Caは、鋼管の品質安定性が高く、製造コストも低く抑えることができ、品質安定性、経済性の観点から最も有効である。Caのより好ましい範囲は0.0005〜0.0030%である。
(1)引張試験
得られた継目無鋼管から、API 弧状引張試験片を採取し、引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求め、母材強度を評価した。
(2)シャルピー衝撃試験
得られた継目無鋼管から、JIS Z 2202の規定に準拠してVノッチ試験片(厚さ:5.0mm)を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、−40℃における吸収エネルギーvE−40(J)を求め、母材靭性を評価した。
(3)炭酸ガス腐食試験
得られた継目無鋼管から、厚さ3mm×幅25mm×長さ50mmの腐食試験片を機械加工によって採取し、腐食試験を実施し、耐炭酸ガス腐食性、耐孔食性を評価した。腐食試験は、オートクレーブ中に保持された3.0MPaの炭酸ガスを飽和させた150℃の20%NaCl水溶液中に腐食試験片を浸漬し、浸漬期間を30日間として実施した。腐食試験後の試験片について、重量を測定し、腐食試験前後の重量減から計算した腐食速度を求めた。また、試験後の腐食試験片について倍率:10倍のルーペを用いて試験片表面の孔食発生の有無を観察した。孔食が発生しなかった場合を○、発生した場合を×とした。
(4)硫化物応力腐食割れ試験
得られた継目無鋼管から、4点曲げ試験片(大きさ:厚さ4mm×幅15mm×長さ115mm)を採取し、EFC No.17に準拠した4点曲げ試験を実施し、耐硫化物応力腐食割れ性を評価した。使用した試験液は、5%NaCl+NaHCO3液(pH:4.5 )とし、10%H2S+CO2 混合ガスを流しながら試験を行った。付加応力はYSとし、試験期間は720時間とし、破断の有無を測定した。破断しなかった場合を○、破断したものを×とした。なお、YSは母材降伏強さである。
(5)U曲げ応力腐食割れ試験
得られた継目無鋼管から、厚さ4mm×幅15m×長さ15mmの試験用素材を採取した。ついで、採取した試験用素材の中央部に、溶接熱サイクルを付与した。
Claims (7)
- マルテンサイト系ステンレス鋼管の端部同士を突き合わせたのち、該端部に沿って円周方向に複数層の溶接パスからなる多層盛溶接を施して円周溶接部を形成しマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手を製造するに当たり、
前記マルテンサイト系ステンレス鋼管として、mass%で、P:0.010%以下に制限した組成のマルテンサイト系ステンレス鋼管を用いることを特徴とする耐粒界応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。 - 前記組成が、さらに、mass%で、
C:0.015%以下、 N:0.015%以下、
Cr:10〜14%、 Ni:3〜8%、
Si:1.0%以下、 Mn:2.0%以下、
S:0.010%以下、 Al:0.10%以下
を含み、さらにCu:1〜4%、Co:1〜4%、Mo:1〜4%、W:1〜4%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成であることを特徴とする請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。 - 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項2または3に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管円周溶接継手の製造方法。
- mass%で、
C:0.015%以下、 N:0.015%以下、
Cr:10〜14%、 Ni:3〜8%、
Si:1.0%以下、 Mn:2.0%以下、
S:0.010%以下、 P:0.010%以下、
Al:0.10%以下
を含み、さらにCu:1〜4%、Co:1〜4%、Mo:1〜4%、W:1〜4%のうちから選ばれた1種又は2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する溶接熱影響部の耐粒界応力腐食割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼管。 - 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.15%以下、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Hf:0.20%以下、Ta:0.20%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.010%以下、B:0.010%以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項5または6に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼管。
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