JP2006104730A - 集成材ラーメン構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】集成材からなる柱と梁によって構成される一方向ラーメン構面を組み合わせて躯体を構築する際の、コーナー部における好適な接合構造を提供する。
【解決手段】本発明の集成材ラーメン構造は、中断面集成材からなる柱2と梁3とを梁勝ち接合して構成される一方向ラーメン構面を、X方向及びY方向に配置したときに、一方のラーメン構面を構成する梁3yの側面に、他方のラーメン構面を構成する梁3xの端面を当接させてピン接合するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、住宅をはじめとする中小規模の木造建築物のための躯体構造に関し、より詳細には、柱及び梁に集成材を用いたラーメン構造に関する。
本出願人は、住宅をはじめとする中小規模の木造建築物に適した躯体構造として、中断面以下の集成材からなるラーメンフレームを組み合わせるた集成材ラーメン構造を開発し、特許文献1〜3等に開示している。
かかる躯体構造の基本的概念は、柱及び梁に中断面以下の集成材を採用し、それらの柱と梁とを、接合金物を介して、節点が剛節となるように接合するものである。この躯体構造によれば、天然製材を用いて構築されるラーメン構造よりも強度や剛性に優れる躯体を構築することができ、柱や耐力壁の配置等にも自由度が増す。
特開2003−239382号公報 特開2003−239456号公報 特開2003−328437号公報
本発明は、上記従来の集成材ラーメン構造について、その実用性や応用性をさらに高めるべくなされたもので、特に、躯体のコーナー部における接合構造を具体的に特定した集成材ラーメン構造を提供するものである。
上記した目的を達成するため、本発明の集成材ラーメン構造は、中断面集成材からなる柱と梁とを、柱に対して梁の連続性が優先するように梁勝ち接合するとともに、上記柱梁接合部を鋼製の接合金物を介して剛接合することにより、梁の材軸方向にのみ水平耐力を有する一方向ラーメン構面となし、このラーメン構面を組み合わせて躯体を構築する集成材ラーメン構造において、互いに直交するX方向のラーメン構面とY方向のラーメン構面とが、一方のラーメン構面を構成する梁の側面に、他方のラーメン構面を構成する梁の端面を当接させてピン接合することにより連結されたことを特徴とする。
この構成によると、X,Y各方向のラーメン構面同士が連結されるコーナー部や、T字、十字等の接合部において、各構面を構成する柱同士を直接、接合しなくとも、躯体全体での剛性を確保することができる。したがって、コーナー部等の近傍における柱の配置が自由になり、間取りや開口部の配置に関する設計自由度が大幅に向上する。躯体が2階建て以上である場合には、コーナー部等の近傍における柱配置を、各階層ごとに変位させることも可能になる。
上記集成材ラーメン構造において、梁同士をピン接合する接合金物は、一方の梁を上下方向に貫通するパイプ部と、当該一方の梁の側面に当てがわれる梁受金物とをボルトによって共締めし、上記梁受金物の梁受プレートを、他方の梁の端部に形成されたスリットに挿入して、当該他方の梁の側面から打込まれるピンまたはボルトによって固定するように構成されたものが好ましい。このような接合金物を採用することにより、梁同士の接合構造が簡略化され、施工性も向上する。
なお、集成材には構造用集成材と造作用集成材とがあるが、本発明の集成材ラーメン構造に用いられるのは構造用集成材である。構造用集成材の規格については、平成8年農林水産省告示第111号に「構造用集成材のJAS」として制定されている。この規格では、「大断面集成材」とは、断面の短辺が15cm以上、かつ断面積が300平方cm以上のものをいい、「中断面集成材」とは、断面の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上であって、大断面集成材以外のものをいう。また、「小断面集成材」とは、断面の短辺が7.5cm未満または長辺が15cm未満のものをいう。本発明は、この規格に基づいて構造用集成材の断面サイズを定義づける。
上述のように構成される本発明の集成材ラーメン構造によれば、X,Y各方向のラーメン構面同士が連結されるコーナー部や、T字、十字等の接合部において、各構面を構成する柱同士を直接、接合しなくとも、躯体全体での剛性を確保することができるので、コーナー部等の近傍における柱の配置が自由になり、間取りや開口部の配置に関する設計自由度が大幅に向上する。躯体が2階建て以上である場合には、コーナー部等の近傍における柱配置を、各階層ごとに変位させることも可能になる。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の集成材ラーメン構造を採用した木質構造躯体の一部を示す。
この躯体1は3階建てで、X方向及びY方向のそれぞれについて、各階層ごとに、柱2(2x,2y)と梁3(3x,3y)とが梁勝ち接合された一方向ラーメン構面が構築されている。柱2は、その材長が各階層ごとに分割され、1階の柱2の脚部は鉄筋コンクリート製の基礎梁4に接合されるとともに、1階の柱2の頭部、及び上層階の柱2の脚部及び頭部は、各階層間を水平方向に連続する梁3に接合されている。
柱2及び梁3には、それぞれ長矩形断面の中断面集成材が用いられている。柱2の標準的な断面寸法は、短辺120〜150mm×長辺330〜370mmであり、梁3の標準的な断面寸法は、幅120〜150mm×高さ330〜450mmである。柱2は、その長辺方向(強軸方向)を梁3の材軸方向と平行にして、梁3に接合されている。
例示の形態では、X方向の構面における1階部分と2、3階部分とでは、柱2xの位置が梁3xの材軸方向(X方向)に変位しており、また、Y方向の構面における1、2階部分と3階部分とでは、柱2yの位置が梁3yの材軸方向(Y方向)に変位している。このように、各階層ごとに柱2の位置を自由に変位させ得ることが本発明の特徴であり、これを可能にするのが、接合金物による柱2と梁3との接合構造である。以下、図1中に丸囲みで示した柱梁3接合部(Ja〜Jd)の詳細について、図2以下により説明する。
図2〜図3は、1階の柱2の脚部と基礎梁4との接合部Jaを示す。
この接合部Jaに用いられる柱脚接合金物5は、基礎梁4の天端から突出するアンカーボルト41にナット締結される底板51と、底板51の上方に、起立部52を介して水平に連結された柱脚受板53と、柱脚受板53の上方に垂直に立ち上げられた2枚の平行な連結プレート54とを有し、連結プレート54が、柱2の脚部に形成された2条のスリットに挿入されて、柱2の側方から打込まれるドリフトピン55またはボルトによって柱2に連結される。柱2のスリットは柱2の強軸方向に形成され、ドリフトピン55やボルトは柱2の弱軸方向に打込まれる。ドリフトピン55またはボルトを挿入するために連結プレート54及び柱2に形成される固定孔は、図示のように、柱2の側面から見て左右に6箇所程度ずつ、千鳥状に配置されている。このように、ドリフトピン55等を、柱2の強軸方向及び材軸方向にわたって偏りなく分布させると、柱2に作用する引き抜き力や曲げモーメントによって柱脚に割裂が生じるのを防ぐ効果が大きくなり、柱2の脚部と基礎梁4とが十分な強度をもって剛接合される。
図4〜図5は、柱2の頭部と梁3との接合部Jbを示す。
この接合部Jbに用いられる柱頭接合金物6は、特許文献3の図6に記載されたものと、ほぼ同一である。すなわち、複数個の固定孔が形成された1枚のプレート部61と、2本一組のパイプ部62とが一体化され、プレート部61は、柱2の頭部に形成される1条のスリットに挿入されて、柱2の側方から打込まれるドリフトピン63またはボルトにより柱2に連結されるとともに、パイプ部62は、梁3を上下方向に貫通するほぞ孔に挿入されて、梁3の側方から打込まれるドリフトピン63またはボルト64により梁3に連結される。この柱頭接合金物6を、柱2の強軸方向に沿う両端部近傍の2箇所に配置することにより、柱2の頭部と梁3とが十分な強度をもって剛接合される。
こうして、隣接する一対の柱2の頭部及び脚部が、それぞれ梁3(基礎梁4も梁と見做す。)に剛接合された、矩形のラーメン構面が構築される。このラーメン構面は、梁3の材軸方向にのみ水平耐力を有する一方向ラーメンとなる。このラーメン構面は、在来軸組構法によるピン節構面を筋交いや構造用合板等の面材で補強したものよりも、はるかに高水準の壁倍率性能を発揮する。
図6〜図8は、梁3を挟んで下層階の柱2と上層階の柱2とが同軸上に接合され、さらに、上記梁3に対して他の梁3がT字状に交差する接合部Jcを示す。
この接合部Jcにおいて、下層階の柱2の頭部と梁3とは、上記図4〜図5に示したのと同じ柱頭接合金物6を介して接合される。そして、そのパイプ部62の上端に雌ネジが形成され、そこに短ボルト65を介して、上層階の柱2を連結するための柱脚接合金物7が締結される。柱脚接合金物7は、底板71の両縁部から互いに平行な2枚の連結プレート72を垂直に立ち上げたもので、この連結プレート72が、上層階の柱2の脚部に形成された2条のスリットに挿入されて、柱2の側方から打込まれるドリフトピン73またはボルトによって柱2に連結される。この柱脚接合金物7における固定孔の配置は、上記した基礎用の柱脚接合金物5における固定孔の配置と同様である。
こうして、下層階の柱2の頭部と梁3とが、十分な強度をもって剛接合されるとともに、梁3と上層階の柱2の脚部とが、十分な強度をもって剛接合される。
X方向の梁3とY方向の梁3とを交差して接続させる梁受金物8は、背板81と、背板に直交して側方に張り出す2枚の平行な梁受プレート82とを有する。背板81には、パイプ部62とピッチを揃えて固定孔が形成されており、梁3の側面に当てがわれた背板81が、パイプ部62を固定するためのボルトにより共締めされて、梁3に固定される。そして、梁受プレートが、他方の梁3の端部に形成された2条のスリットに挿入され、梁3の側面から打込まれるドリフトピン83またはボルトによって梁3に連結される。この梁受金物による梁3同士の接合部は、構造的にはピン接合となる。
図9〜図10は、X方向のラーメン構面とY方向のラーメン構面とが直交接合されるコーナー部Jdを示す。コーナー部Jdにおいては、X方向の梁3xとY方向の梁3yとが、上記図6〜図8に示したのと同じ梁受金物8によってピン接合される。しかし、X方向のラーメン構面を構成するコーナー柱2xとY方向のラーメン構面を構成するコーナー柱2yとは、直接、接合されてはおらず、それぞれのコーナー柱2x,2yが、図4〜図5に示したのと同じ柱頭接合金物6によって、各方向の梁3x,3yと剛接合されるのみである。
このようなコーナー部Jdの接合構造によると、コーナー端の近傍に、X方向の構面を構成する柱2xとY方向の構面を構成する柱2yとが接近して立設されることになるが、各方向の柱2x,2yの位置は、他方向の柱2y,2xの位置とは関係なく、独自に決定することが可能になる。図1に示した形態では、Y方向の構面を構成する柱2yは、梁3同士が交差するコーナー端と合致するように配置され、X方向の構面を構成するコーナー柱2xは、コーナー端から若干離れた位置に配置されているが、図示のように、1階と2、3階とで柱2xの位置をずらすこともできる。また、X方向の柱2xだけでなく、Y方向の柱2yもコーナー端から離れた位置に移動することも可能になる。
このように、X方向のラーメン構面を構成する柱2xの位置と、Y方向のラーメン構面を構成する柱2yの位置とを、それぞれ独立して決定できるようにすれば、例えばコーナ端をまたぐ無柱の開口部を設けることも容易になる。また、各階層ごとにコーナー部近傍の柱配置を変えることができるので、設計自由度はさらに拡大する。
図11は、本発明の他の実施形態を示す。同図(a)〜(c)に示した躯体は、中断面集成材の柱2と梁3とからなるラーメン構面と、天然製材からなる柱20を用いたピン節構面とを混在させたものである。
本発明の集成材ラーメン構造は、少なくとも一つの階層において隣接する、中断面集成材からなる一対の柱2と、その柱2の頭部及び脚部に梁勝ちに接合される、中断面集成材からなる梁3とによって、各階層ごとに一方向ラーメン構面を構成する点に特徴を有している。したがって、例えば図示のように、複数階層のうちの一部の階層を、中断面集成材の柱2と梁3とからなるラーメン構面とし、他の階層には他の構法による構面を組み合わせることも可能である。また、特定の階層において、中断面集成材の柱2と梁3とからなるラーメン構面と、他の構法による構面とを、水平方向に連結することも可能である。
このように、本発明の集成材ラーメン構造は、中断面集成材からなる梁3と柱2とを利用して、各階層ごとに、また、X・Y各方向ごとに、高剛性の一方向ラーメン構面を構築する点に特徴があるので、上下階層間を貫く長大な通し柱は不要になり、各階層ごとに、また、X、Y各方向ごとに、順次、躯体を組み立てて連結してゆくことができ、施工性が大幅に向上する。
また、ラーメン構面を構成する柱2の位置は、各階層ごとに自由に決定することができるので、間取りや開口部の配置に関する設計自由度が大幅に拡大する。また、他の構法による構面を、上下方向や水平方向に連結することもできるので、各階層の間取りや利用目的に合わせて、開口部の大きさや壁面の仕上げ等を変化させたい場合でも、それに応じて部位ごとに適切な構法を選択し、組み合わせることが可能になる。
さらに、中断面集成材からなる柱2と梁3との接合部に用いられる接合金物は、パイプやプレート等の共通部品を利用して標準化することができる。それらの接合金物は、予め柱2や梁3にプリセットしておくことも容易なので、これによっても施工性が向上する。
本発明の集成材ラーメン構造を採用した木質構造躯体の一部を示す斜視図である。 図1の躯体における1階の柱と基礎梁との接合構造を一部破断して示す、弱軸方向の側面図である。 同じく、一部破断して示す、強軸方向の側面図である。 図1の躯体における柱の頭部と梁との接合構造を一部破断して示す、弱軸方向の側面図である。 同じく、一部破断して示す、強軸方向の側面図である。 図1の躯体における、梁と、上下階の柱と、交差する他の梁との接合構造を一部破断して示す、弱軸方向の側面図である。 同じく、一部破断して示す、強軸方向の側面図である。 同じく、一部破断して示す上面図である。 図1の躯体におけるコーナー部の接合構造を一部破断して示す側面図である。 同じく、一部破断して示す上面図である。 本発明の他の実施形態に係る木質構造躯体の部分側面図である。
符号の説明
1 躯体
2 柱
3 梁
62 パイプ部
64 ボルト
8 梁受金物
82 梁受プレート
83 ドリフトピン

Claims (2)

  1. 中断面集成材からなる柱と梁とを、柱に対して梁の連続性が優先するように梁勝ち接合するとともに、上記柱梁接合部を鋼製の接合金物を介して剛接合することにより、梁の材軸方向にのみ水平耐力を有する一方向ラーメン構面となし、このラーメン構面を組み合わせて躯体を構築する集成材ラーメン構造において、
    互いに直交するX方向のラーメン構面とY方向のラーメン構面とが、一方のラーメン構面を構成する梁の側面に、他方のラーメン構面を構成する梁の端面を当接させてピン接合することにより連結されたことを特徴とする集成材ラーメン構造。
  2. 請求項1記載の集成材ラーメン構造において、梁同士をピン接合する接合金物は、一方の梁を上下方向に貫通するパイプ部と、当該一方の梁の側面に当てがわれる梁受金物とをボルトによって共締めし、上記梁受金物の梁受プレートを、他方の梁の端部に形成されたスリットに挿入して、当該他方の梁の側面から打込まれるピンまたはボルトによって固定するように構成されたものである集成材ラーメン構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008223226A (ja) * 2007-03-08 2008-09-25 Asahi Kasei Homes Kk 軸組躯体構造及び軸組躯体の配置方法
JP2019039180A (ja) * 2017-08-23 2019-03-14 大成建設株式会社 門型架構およびその施工方法
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