JP2006101082A - 弾性表面波装置および通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 小型でかつ信頼性の高い弾性表面波装置を提供すること。
【解決手段】 基体70上に配置された圧電基板20と、圧電基板20上に形成されたアース電位となる電極と、圧電基板20上に形成された一対の櫛歯状電極からなるIDT電極(31,32)とを備えた弾性表面波装置1であって、IDT電極(31,32)のいずれか一方の櫛歯状電極と前記電極との間が、圧電基板20上に形成された半導体材料からなる抵抗体40によって接続されている弾性表面波装置とする。これにより、急激な温度変化等により焦電効果で発生した電荷が抵抗体40を介して移動し、一対の櫛歯状電極の間に放電破壊を引き起こすような大きな電位差が生じるのを防ぐため、IDT電極(31,32)の放電破壊を防止することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】 基体70上に配置された圧電基板20と、圧電基板20上に形成されたアース電位となる電極と、圧電基板20上に形成された一対の櫛歯状電極からなるIDT電極(31,32)とを備えた弾性表面波装置1であって、IDT電極(31,32)のいずれか一方の櫛歯状電極と前記電極との間が、圧電基板20上に形成された半導体材料からなる抵抗体40によって接続されている弾性表面波装置とする。これにより、急激な温度変化等により焦電効果で発生した電荷が抵抗体40を介して移動し、一対の櫛歯状電極の間に放電破壊を引き起こすような大きな電位差が生じるのを防ぐため、IDT電極(31,32)の放電破壊を防止することができる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、携帯電話機等の移動体通信機器,車載用機器,医療用機器等に用いられる弾性表面波装置およびそれをフィルタとして用いた通信装置に関し、詳しくは、IDT(Inter Digital Transducer)電極の放電破壊を防止する構造に特徴を有する弾性表面波装置および通信装置に関する。
弾性表面波共振器や弾性表面波フィルタ等の弾性表面波装置は、マイクロ波帯を利用する各種無線通信機器,車載用機器,医療用機器等に幅広く用いられている。
従来の弾性表面波装置においては、圧電基板の有する焦電性により、急激な温度変化が生じるとIDT電極において放電破壊が発生し、電気特性が劣化するという問題があった。このため、IDT電極の放電破壊を防止するために今日まで改良が加えられてきた。
放電破壊防止対策が施された弾性表面波装置としては、例えばIDT電極を形成する一対の櫛歯状電極を、薄膜抵抗体を介して接続する構造が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
IDT電極を形成する一対の櫛歯状電極どうしを静電的に短絡する薄膜抵抗体の材料には、Ta−SiO2やNb−SiO2などを混合焼結したものが用いられる。
この薄膜抵抗体によって、IDT電極上に誘起された電荷を薄膜抵抗体に流すことにより、対向する櫛歯状電極間で放電破壊が発生するのを防ぐことができる。
特開平9−260994号公報
しかしながら、上述した弾性表面波装置は、以下のような問題を有していた。
抵抗体を接続すると、弾性表面波装置の電気特性が劣化しやすい。この劣化を防止するためには、通常動作時に抵抗体を通って流れる電流を低く抑える必要がある。したがって、抵抗体の抵抗値は有る程度大きい方が望ましい。
前記Ta−SiO2やNb−SiO2などを混合焼結した物の抵抗率は200mΩ・cm以下と小さいため、大きな抵抗値を得るためにはある程度の長さが必要である。例えば1MΩの抵抗値を得るためには、抵抗体の厚みを0.5μmとし、その幅を100μmとすると25mmもの長さが必要となる。
近年のGHz帯で使用される弾性表面波フィルタ等に用いられる弾性表面波素子の大きさは縦横とも1mm程度であるが、上記抵抗体を形成するためにはその25倍程度の面積が必要になり、弾性表面波素子が著しく大型化してしまう。
抵抗体を小型化するためにその厚みと幅とを最大限に小さくし、例えば厚みを0.5μmとし、幅を1μmとすると、長さは250μmになり小型化は達成される。しかし、このような細長い形状の抵抗体では、電流が流れた時の発熱による温度上昇などにより断線しやすくなる。半田リフロー時など300℃ぐらいに加熱された時に、焦電効果により電荷が誘起されて抵抗体に大きな電流が流れると、発熱してさらに温度が上昇することになり、抵抗体自身が断線する可能性が高くなる。このような抵抗体の断線が起これば、焦電効果により誘起された電荷を逃がす手段が無くなるため、それ以後の温度変化によりIDT電極が放電破壊を起こすことを防止できなくなる。
また、薄膜抵抗体材料自身の耐熱性にも問題があり、温度が上昇すると、急激に酸化が進むなど、信頼性に問題があった。
本発明の目的は、小型でかつ信頼性の高い弾性表面波装置および通信装置を提供することにある。
本発明の弾性表面波装置は、1)基体上に配置された圧電基板と、該圧電基板上に形成されたアース電位となる電極と、前記圧電基板上に形成された一対の櫛歯状電極からなるIDT電極とを備えた弾性表面波装置であって、前記IDT電極のいずれか一方の櫛歯状電極と前記電極との間が、前記圧電基板上に形成された半導体材料からなる抵抗体によって接続されていることを特徴とする。
また、2)前記半導体材料が14族元素からなることを特徴とする。
また、3)前記14族元素がシリコンであり、そのドーパントがホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、ヒ素およびアンチモンの中から選ばれた1種以上の元素であることを特徴とする。
また、4)前記半導体材料が酸化物であることを特徴とする。
さらに、本発明の通信装置は、5)上記1)乃至4)のいずれかの弾性表面波装置をフィルタとして用いたことを特徴とする。
本発明によれば、前記IDT電極を構成する一方の櫛歯状電極と前記アース電位となる電極との間が、前記圧電基板上に形成された抵抗体によって接続され、前記抵抗体が半導体からなる。
これにより、急激な温度変化等により焦電効果で発生した電荷が抵抗体を介して移動し、一対の櫛歯状電極の間に放電破壊を引き起こすような大きな電位差が生じるのを防ぐため、IDT電極の放電破壊を防止することができる。
また、前記抵抗体が半導体材料からなるため、添加物の含有量または組成比によって抵抗率を任意にコントロールすることが可能となり、適切な抵抗率とすることができる。そのため、抵抗体の形状を小型でかつ細くないものとすることが可能である。これによって抵抗体の焼損などを防止でき、小型で信頼性の高い弾性表面波装置が実現される。
また、本発明によれば、前記半導体材料が14族元素の例えばシリコン(Si)とする。シリコン単体の抵抗率は常温で約3000Ω・mと充分に高いため、添加物の含有量の変化によって広い範囲の抵抗率を容易に得ることができる。また、シリコンは安定性が高く、圧電基板への接合性も優れているため、弾性表面波装置の信頼性を高めることができる。また、シリコン膜は蒸着やスパッタなどの方法により、精度良くかつ簡便に形成することができるため、信頼性の高い弾性表面波装置を低コストで製造することができる。
さらに、シリコンのドーパントとしてホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)、ヒ素(As)およびアンチモン(Sb)の中から選ばれた1種以上の元素を含むものとする。これらの元素は、シリコンに対する固溶限界が高いので多量にドープすることができる。また、これらのドーパントは4価のシリコンに対して3価もしくは5価であるため、ドープする添加物として好適に用いることができる。これによって広い範囲の抵抗率を容易に得ることができる。
また、前記半導体材料は酸化物半導体であってもよい。
また、本発明によれば、IDT電極の信号側電位となる櫛歯状電極と、アース電位となる電極との間の抵抗値が30MΩ以下に設定されることにより、放電破壊の発生を確実に防止できる。
さらに、本発明によれば、IDT電極の信号側電位となる櫛歯状電極と、アース電位となる電極との間の抵抗値が2kΩ以上に設定されることにより、弾性表面波装置の電気特性の悪化を許容できる範囲に抑えることができる。
そして、IDT電極の信号側電位となる櫛歯状電極と、アース電位となる電極との間の抵抗値を20kΩ以上にすれば、弾性表面波装置の電気特性を悪化させることなく、放電破壊の発生を確実に防止することができる。
さらに、前記弾性表面波装置を分波器のフィルタとして採用することにより、小型で信頼性の高い優れた通信機器等の通信装置を提供することができる。
図1は、本発明の弾性表面波装置に用いる弾性表面波素子を模式的に示す平面図である。図2は本発明の弾性表面波装置の断面構造を模式的に示すA−A断面図である。
図1,図2において、10は弾性表面波素子である。1は弾性表面波装置、70は基体であり回路基板である。
弾性表面波素子10は、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶または四ホウ酸リチウム単結晶などの圧電性の単結晶から成る圧電基板20と、圧電基板20の一方主面上に形成され、かつ弾性表面波を用いて機能する共振器301,302と、同じく圧電基板20の一方主面に形成される抵抗体40a〜40fとから構成されている。
共振器301,302を形成する電極はアルミニウム若しくはアルミニウムを主成分とする合金などからなる。
共振器301,302は、図1に示すように、弾性表面波を励振するIDT電極31,32、弾性表面波の伝搬方向に沿ってIDT電極31,32の両側に配置される反射器電極33,34、IDT電極31,32に電気的に接続される入力電極パッド35と出力電極パッド36、アース電位に接続される接地用環状電極37、さらに、各電極を接続する接続電極38などで形成される。
IDT電極31は、帯状の共通電極と、この共通電極に対し直交する方向に延びる複数の電極指とで形成されている櫛歯状電極31a,31bを、互いの電極指がかみ合うように対向配置してなる。
弾性表面波の伝搬方向に沿ったIDT電極31の両外側に、一対の反射器電極33a,33bが配置される。
この一対の反射器電極33a,33bと、その間に配置されたIDT電極31により、一端子対を備えた共振器301が形成される。
同様に、IDT電極32は、対向配置された一対の櫛歯状電極32a,32bより成る。弾性表面波の伝搬方向に沿ったIDT電極32の両外側に一対の反射器電極34a,34bが配置される。
一対の反射器電極34a,34bおよびその間に配置されたIDT電極32により、一端子対共振器302が形成される。
図1において、櫛歯状電極31aは入力電極パッド35に接続されており、櫛歯状電極31bは接続電極38を介して出力電極パッド36に接続されている。どちらの櫛歯状電極31a,31bも信号側電位となる。
櫛歯状電極31aは入力電極パッド35、接続電極38、抵抗体40a,40b,40cを介して接地用環状電極37に電気的に接続されている。
櫛歯状電極31bは接続電極38、出力電極パッド36、抵抗体40d,40e,40fを介して接地用環状電極37に電気的に接続されている。
よって、櫛歯状電極31aと櫛歯状電極31bとの間は、抵抗体40a,40b,40c,40d,40e,40fを介して電気的に接続されることとなる。
また、櫛歯状電極32aは接続電極38を介して出力電極パッド36と接続される。このため櫛歯状電極32aは信号電位となる。
櫛歯状電極32bは反射器電極34bと接続電極38を介して接地用環状電極37に接続されるためアース電位となる。
よって、櫛歯状電極32aは接続電極38、出力電極パッド36、抵抗体40d,40e,40fを介して接地用環状電極37に電気的に接続されているため、櫛歯状電極32aと櫛歯状電極32bとの間も、抵抗体40d,40e,40fを介して電気的に接続されることとなる。
図3は、この弾性表面波素子の電気的等価回路図である。この弾性表面波素子は、入力電極パッド35と出力電極パッド36の間に直列に接続された一端子対共振器301と、入出力間とGNDとの間に接続された一端子対共振器302とを備える。入力電極パッド35とアース電位との間に、抵抗体40a,40b,40cが並列に接続され、出力電極パッド36とアース電位との間に、抵抗体40d,40e,40fが並列に接続される。これにより、ラダー型フィルタを構成することができる。
前述したように、IDT電極の一対の櫛歯状電極同士が抵抗体を介して電気的に接続されているので、急激な温度変化等が生じた時に焦電効果によって発生する電荷が、電荷によって生じる電位差を打ち消すように抵抗体を介して移動する。これによって、一対の櫛歯状電極の間に放電破壊を引き起こすような大きな電位差が生じることが未然に防がれ、IDT電極の放電破壊を防止することができる。
また、本実施形態の弾性表面波素子においては、一対の櫛歯状電極間のみならず、反射器電極も含めた全ての電極の間が、直接もしくは抵抗体を介して、電気的に接続されている。よって、例えばIDT電極と反射器電極との間のような、あらゆる電極間の放電破壊を防止することができる。
さらに、弾性表面波装置の使用状態においては、接地用環状電極はアース電位に接続される。全ての電極は接地用環状電極を介して、または抵抗体を介してアース電位に接続されるため、焦電効果によって発生した電荷を速やかにアースへ逃がすことができ、温度変化に対して安定で信頼性の高い弾性表面波装置とすることができる。
本発明の実施形態においては、抵抗体40a〜40fは、14族元素からなる半導体材料、13族元素と15族元素との化合物からなる半導体材料または酸化物からなる半導体材料とする。半導体材料の結晶形は、単結晶、多結晶、非晶質などを問わない。これらの半導体材料に添加物を含有させて抵抗値を調整する。
例えば、シリコンやゲルマニウム(Ge)などの14族元素からなる半導体材料の場合は、ホウ素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),リン(P),ヒ素(As),アンチモン(Sb)等のいずれか1種または複数種の添加物を用いる。これらの添加物の含有率によって抵抗体の抵抗率を所望の値にコントロール可能となる。
接続電極38の間に抵抗体を設けることにより、抵抗体の形状を小型なものとすることができ、小型で信頼性の高い弾性表面波装置とすることができる。
また、半導体材料は温度が上昇すると抵抗率が小さくなる性質がある。よって急激な温度上昇が生じても、抵抗体の抵抗値が小さくなり、焦電効果により発生した電荷を速やかに移動させることができる。また、抵抗体に大きな電流が流れて抵抗体の温度がさらに上昇しても、抵抗体の抵抗値がさらに下がり発熱を抑えるため、抵抗体の過度の温度上昇を防ぎ、抵抗体の断線などの不具合発生を防止できる。
抵抗体の抵抗値は、高すぎるとIDT電極の放電破壊を防ぐ効果が低くなり、小さすぎると弾性表面波装置の電気特性が劣化してしまう。このため、抵抗体の抵抗値は、弾性表面波装置に要求される電気特性に応じて適切に設定する必要がある。
まず、放電破壊防止の観点からみると、IDT電極の一対の対向する櫛歯状電極間の抵抗値を30MΩ以下とすることによって、櫛歯状電極間の放電破壊を確実に防止することができる。
また、電気特性の観点から見ると、信号側電位となる電極とアース電位となる電極との間の抵抗値を2kΩ以上とすることによって、アース電位側に漏れる信号を許容範囲内に抑えることができ、電気特性の劣化を実用上問題ないレベルとすることができる。
さらに、信号側電位となる電極とアース電位となる電極との間の抵抗値を20kΩ以上とすることによって、アース電位側に漏れる信号を無視できるレベルに抑えることができ、電気特性の劣化を無くすことができる。
次に、図2を参照して、本発明の弾性表面波装置の断面構造を説明する。
図2において、圧電基板20の上に形成された、IDT電極31,32、反射器電極33,34、入出力電極パッド35,36、接地用環状電極37、接続電極38などの電極は、まとめて番号「30」で表示している。抵抗体40a〜40fは、まとめて番号「40」で表している。
電極30の、入出力電極パッド35、36と接地用環状電極37とが存在する部分の上には、図2に示すように導体膜50が形成されている。また、圧電基板20の一方主面には、保護膜60が形成されている。保護膜60は、圧電基板20や電極30をカバーしているが、前記導体膜50を露出させている。
以上のように構成した弾性表面波素子10の導体膜50と、回路基板70の実装面に形成された接続電極80とを、半田バンプ90を介して接続する。
これにより、弾性表面波素子10と回路基板70とを電気的かつ機械的に接続する。同時に、弾性表面波素子10の一方主面と、回路基板の実装面との間の間隙Sが気密封止される。
なお、図2では省略しているが、回路基板70の底面には外部端子電極が形成されており、外部端子電極と各接続電極80とは、回路基板70の表面や内部に形成された配線パターンを介して、通信機器を構成する各種素子と電気的に接続されている。
そして、弾性表面波素子10の他方主面および周囲面に樹脂100を形成し、弾性表面波素子10の損傷を防止している。なお、回路基板70の表面と共振器301,302の表面との間隙Sの高さは、弾性表面波素子10で発生する弾性表面波の波長以上の長さに設定され、振動空間が確保されている。
図4は本発明の、弾性表面波素子10の他の電極構造を模式的に示す平面図である。
この弾性表面波素子10には接地用環状電極が形成されていない。
前記実施形態の弾性表面波素子と同様に、IDT電極31と反射器電極33a,33bにより一端子対共振器301が形成され、IDT電極32と反射器電極34a,34bにより一端子対共振器302が形成され、この二つの一端子対共振器301,302によってラダー型フィルタが構成されている。
図4において、入力電極パッド35に接続されて信号側電位となる櫛歯状電極31aと、接続電極38を介して出力電極パッド36に接続されて信号側電位となる櫛歯状電極31bとは、接続電極38、反射器電極33a,33b、抵抗体40a,40b、入力電極パッド35を介して電気的に接続されている。
同様に、接続電極38を介して出力電極パッド36に接続されて信号側電位となる櫛歯状電極32aと、アース用電極パッド39に接続されてアース電位となる櫛歯状電極32bとは、接続電極38、出力電極パッド36、アース用電極パッド39、抵抗体40d,40eを介して電気的に接続されている。
このように、全ての電極が、直接あるいは抵抗体40を介して電気的に接続されており、全ての電極間の放電破壊が防止されている。
図5は本発明の弾性表面波素子10のさらに他の電極構造を模式的に示す平面図である。
この弾性表面波素子10においては、反射器電極33a,33bとその間に配置されたIDT電極により一端子対共振器301が形成され、反射器電極33c,33dとその間に配置された複数のIDT電極により二重モード弾性表面波フィルタ303が形成されている。そして、一端子対共振器301と二重モード弾性表面波フィルタ303とが、入力電極パッド35と出力電極パッド36との間にカスケード接続されている。
図5においても、対向する一対の櫛歯状電極の間が抵抗体40を介して電気的に接続されており、櫛歯状電極間の放電破壊が防止されている。さらに、反射器電極を含む全ての電極の間が、直接あるいは抵抗体40を介して電気的に接続されており、全ての電極間の放電破壊が防止されている。
上述した実施形態では、櫛歯状電極と櫛歯状電極との間は、接続電極38の間に設けられた抵抗体40を介して電気的に接続されていた。
しかし、対向する一対の櫛歯状電極の間に、直接、抵抗体を形成して電気的に接続することも可能である。
図6は、圧電基板20の上に形成された櫛歯状電極31a,31bの間に、半導体材料からなる薄膜抵抗体Rが形成されている状態を示す断面図である。
この抵抗体Rは、櫛歯状電極31a,31bなどを構成する電極30を成膜した後、電極30を所定パターンにエッチングする際に形成することができる。
半導体材料としては、上述した14族半導体材料、13−15族半導体材料、または酸化物半導体があげられる。半導体材料の結晶形は、単結晶、多結晶、非晶質などを問わない。これらの半導体材料に添加物を含有させて抵抗値を調整する。
例えば、シリコンなどの14族半導体の場合は、ホウ素(B),アンチモン(Sb),チタン(Ti),アルミニウム(Al)等のいずれか1種または複数種の添加物を用いる。これらの添加物の含有率によって抵抗体の抵抗率を所望の値にコントロール可能となる。
酸化物半導体としては、TiO2,CuO,Cu2O,CuAlO2,NiO,Nb2O3またはZnO等の1種または複数種を用いることができる。
特に、TiO2を用いる場合、アンチモン(Sb),フッ素(F),塩素(Cl),窒素(N),クロム(Cr),パラジウム(Pd),タンタル(Ta),ニッケル(Ni)または銅(Cu)等の1種または複数種を添加することができる。
次に、このような半導体を用いて、薄膜状抵抗体Rを形成する方法を説明する。
図7は、圧電基板20上に電極膜30を成膜した後、電極膜30を所定パターンにエッチングして電極を形成し、その上から保護膜を形成する各工程を示す工程図である。
まず、図7(a)に示すように、圧電基板20上にTi膜30aを形成し、その上にAl系合金膜30bを形成する。Ti膜30aはAl系合金30bの下地層であり、圧電基板20とAl系合金30bとの密着性を向上したり、Al系合金30b配向性を改善したりする働きがある。
次に、図7(b)に示すように、電極30の上にレジストパターンを形成する。
次に、プラズマ室内で、電極膜30をエッチングする。エッチングガスには、例えばBCl3とN2とCl2との混合ガスを用いる。エッチング時間は、Al系合金膜30bが完全にエッチングされる時間に、余分な時間を付加した時間とする。つまり、Alの発光が弱くなって、Al系合金膜30bがエッチングされた後も、しばらくエッチングを続ける。これにより、Al系合金膜30bの底のTi膜30aがわずかに残るようにすることができる(図7(c)を参照)。前記付加時間が長すぎると、Ti膜30aがすべてエッチングされてしまい、抵抗体は形成されない。
このエッチングの課程で、エッチングに使用したガスのClやNが、圧電基板20の表面に残って、Ti膜30aに拡散して入り込むことがある。これによってClやNが添加されたTi膜30aが形成される。
次に、プラズマ室内で、レジスト膜を除去する。使用するガスは、例えばCF4またはC2F6とO2との混合ガスである。このとき基板温度は155℃程度である。この工程において、Ti膜30aのTiはプラズマにより酸化され、TiO2膜30cが電極間に形成される(図7(d)を参照)。前記TiO2膜の結晶形態は、単結晶、多結晶、非晶質などを問わない。
このとき、エッチングガス中のFがTiO2膜に添加されることがある。塩素(Cl),窒素(N),フッ素(F)も、TiO2膜に添加される。これらの元素Cl,N,Fは、TiO2の酸素(O)と置換し、TiO2膜の抵抗率を下げる可能性がある。
TiO2膜に添加されることが予想されるのは、上に述べたCl,N,Fだけではない。大気中のNが工程中に基板に吸着し、フォトリソグラフィー等で加熱された時にTiO2膜に拡散し、抵抗率を下げる可能性がある。接続電極パッドに含まれるCrは、TiO2に入ると、バンドギャップを小さくし抵抗率を下げる。ワイヤーやパッドの材質である金(Au)にその硬度を上げるために添加されるパラジウム(Pd)や、半田の中に添加されるアンチモン(Sb)は、チタン(Ti)を置換してTiO2の抵抗率を下げる。また、圧電基板20のタンタル(Ta)、接続電極パッドの拡散防止膜として使用されるニッケル(Ni)や電極への添加物である銅(Cu)は、TiO2に入り込むとTiを置換してTiO2の抵抗率を下げる。また、圧電基板20にLiTaO3を使用している場合は、TaがTiO2へと拡散し、Tiと置換してTiO2の抵抗率を下げる可能性がある。
TiO2膜30cが形成された後は、シリコン(Si)またはSiO2からなる保護膜を成膜する(図7(e)を参照)。形成方法は、CVD、スパッタリング、電子ビーム蒸着など任意である。
電極間に形成されたTiO2膜30cは、酸化物半導体であり、前述したように、Cl,N,Fなどの元素が添加されている。添加物の濃度は、エッチングガスの組成比や基板温度を調整することによって適当な値に設定することができる。したがって、これらの添加物の含有率によって抵抗体の抵抗率を所望の値に調整可能となる。
半導体は、前述したように温度が上昇すると抵抗率が小さくなる性質があるので、抵抗体の温度上昇が生じても、抵抗体の抵抗値が小さくなり、焦電効果により発生した電荷を速やかに移動させることができる。
抵抗体の抵抗値は、前述したように、放電破壊防止の観点からみると、IDT電極の一対の対向する櫛歯状電極間の抵抗値を30MΩ以下とすることが好ましく、弾性表面波装置の電気特性の観点から見ると、2kΩ以上、好ましくは20kΩ以上とするのがよい。
図7を用いて、Ti/Al合金系電極30を所定パターンにエッチングする工程で、電極間に酸化物半導体TiO2からなる抵抗体を形成することができることを説明したが、電極間に抵抗体を形成できるのはTiO2に限られない。例えば、電極の下地層にはTiに代えてCuもよく用いられる。圧電基板20上の形成されたCu膜の上に、さらにAl合金膜を形成した、Cu/Al合金系電極の場合、Cu薄膜やAl−Cu合金薄膜がエッチング残渣として、圧電基板20の上に残る。このCu薄膜やAl−Cu合金薄膜が、プラズマ工程中で酸化して、酸化物半導体であるCuO、Cu2OまたはCuAlO2が形成される。このCuO、Cu2OまたはCuAlO2が、好ましい抵抗率を有するp型酸化物半導体となる。
また、圧電基板20上に下地層Cu膜を形成しないで、Cuを含むAl−Cu合金電極を用いることもある。この場合、電極エッチング時に電極中のCuやAl−Cuを基板20の上に残留させることができる。このCuやAl−Cu合金薄膜が、プラズマ工程中で酸化して、酸化物半導体であるCuO、Cu2OまたはCuAlO2が形成される。このCuO、Cu2OまたはCuAlO2が、好ましい抵抗率を有するp型半導体となる。
また、圧電基板20にLiNbO3を用いている場合は、エッチング工程で圧電基板20の表面からLiが抜けて、圧電基板20の表面にNb2O3膜が形成される。このNb2O3が好ましい抵抗率を有するn型半導体となって電極間の電気伝導を実現することができる。
上述したように、圧電基板20の表面に抵抗体が形成され、それが電極間の電気伝導を実現する例を挙げたが、電極の上に形成された保護膜に添加物が混入して、保護膜を介して電極間の電気伝導が実現されることがある。
図8は、弾性表面波素子10の断面図であり、圧電基板20の一方主面に電極30が形成され、その上に保護膜60が形成されている。保護膜60の材質はSiとする。
一部の電極30の上には、回路基板70の実装面に形成された接続電極80を、半田バンプ90を介して接続するための導体膜50が形成されている。導体膜50の材質は、例えばAuである。半田バンプ90の材質は、例えば高融点半田SnSbやSnAgCuである。
導体膜50の電極30との接触面には、電極30との密着性を向上させるためのTi膜50aが形成されている。
保護膜60は、CVD,スパッタリング,電子ビーム蒸着などの方法で形成され、この保護膜60の積層後に、前記Ti膜50aおよび導体膜50がリフトオフ法で形成される。
このTi膜50aの形成時に、Tiが保護膜60のSi中に拡散して、保護膜60は、Tiを不純物とするn型Siとなる。また、電極30のAlが保護膜60の中に拡散して、保護膜60は、Alを不純物とするp型Siとなる。
さらに、弾性表面波素子10を回路基板70に実装するときに、導体膜50と接続電極80とを半田バンプ90で接続するが、この半田バンプ90の接続時に半田の中のSbが保護膜60の中に拡散して、保護膜60は、Sbを不純物とするn型Siとなる。
以上のように、保護膜60のSiがp型あるいはn型のSiとなることにより、Siの抵抗率が低下して、電極30間の抵抗体として機能するようになる。よって、電極30間が電気的に接続されるようになり、電極間の放電破壊を防止することができる。
特に、半導体材料は温度が上昇すると抵抗率が小さくなる性質があるので急激な温度上昇が生じても、抵抗体の抵抗値が小さくなり、焦電効果により発生した電荷を速やかに移動させることができる。また、抵抗体に大きな電流が流れて抵抗体の温度がさらに上昇しても、抵抗体の抵抗値がさらに下がり発熱を抑えるため、抵抗体の過度の温度上昇を防ぎ、抵抗体の断線などの不具合発生を防止できる。
以上に説明した本発明の弾性表面波装置1を通信装置である通信機器に搭載した例を説明する。
図9に携帯電話の高周波回路のブロック図を示す。送信される高周波信号は、フィルタ1020によりその不要信号が除去され、パワーアンプ1021で増幅された後、アイソレータ1022と分波回路1014を通り、アンテナ1013から放射される。また、アンテナ1013で受信された高周波信号は、分波回路1014を通り、ローノイズアンプ1015で増幅され、フィルタ1016でその不要信号が除去された後、アンプ1017で再増幅され、ミキサ1018で低周波信号に変換される。
本発明の弾性表面波装置はフィルタ1020およびフィルタ1016に適用されるものである。さらに、CDMA(Code Division Multiple Access)等の送信と受信を周波数分離するシステムにおいては、分波回路(1014)はフィルタで構成される分波器となり、本発明の弾性表面波装置を用いたフィルタが適用できる。GSM(Global System for Mobile communication)等の送信と受信を時間分割するシステムにおいては、分波回路(1014)はスイッチで構成され、フィルタが不要であることが多い。
近年の携帯電話の小型化に伴い、搭載される部品の間隔も小さくなってきており、弾性表面波装置からなるフィルタ1020,フィルタ1016はパワーアンプ1021からの熱が伝わり電極が高温になっている。また、分波回路1014が弾性表面波フィルタである場合においては、パワーアンプ1021で増幅された入力信号による発熱により電極が高温になっている。その熱のため、弾性表面波フィルタを用いた分波器は、焦電気により放電破壊しやすい状況にあった。これら弾性表面波装置に本発明を適用することで、放電破壊のない弾性表面装置を実現することができ、信頼性の高い通信装置を提供できる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更・改良などが可能である。
例えば、上記実施形態では、シリコンにドープする添加物として有効なものとして、B,Al,Ga,In,P,As,Sb,Tiを例示したが、例えば、Bi,N,Li,Fe,Cu,Au,Ge,Sn,等の他の元素を用いても構わない。
また、上記実施形態では、平板上の回路基板に弾性表面波素子を実装する例を示したが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば、上面が開口した筺体状容器の内底面に弾性表面波素子を実装し、容器の上面を蓋体で気密封止しても構わない。
また、弾性表面波素子10は、回路基板にフェイスダウンでフリップチップ実装しても良いし、フェイスアップで回路基板に実装してワイヤボンディングを行なっても構わない。
さらに、上記実施形態以外にも、トランスバーサルフィルタ等の他の種類の弾性表面波フィルタや、共振器、デュプレクサ等の他の弾性表面波装置についても、IDT電極を有するものであれば、本発明を適用できることはいうまでもない。
かくして、本発明の弾性表面波装置は、基体上に配置された圧電基板と、該圧電基板上に形成されたアース電位となる電極と、前記圧電基板上に形成された一対の櫛歯状電極からなるIDT電極とを備えたものであり、前記IDT電極のいずれか一方の櫛歯状電極と前記電極との間が、前記圧電基板上に形成された半導体材料からなる抵抗体によって接続されている。これにより、急激な温度変化等により焦電効果で発生した電荷が抵抗体を介して移動し、一対の櫛歯状電極の間に放電破壊を引き起こすような大きな電位差が生じるのを防ぐため、IDT電極の放電破壊を防止することができる。
また、前記抵抗体が半導体材料からなるため、添加物の含有量または組成比によって抵抗率を任意にコントロールすることが可能となり、適切な抵抗率とすることができる。そのため、抵抗体の形状を小型でかつ細くないものとすることが可能である。これによって抵抗体の焼損などを防止でき、小型で信頼性の高い弾性表面波装置が実現される。
また、本発明によれば、前記半導体材料が14族元素の例えばシリコン(Si)とする。シリコン単体の抵抗率は常温で約3000Ω・mと充分に高いため、添加物の含有量の変化によって広い範囲の抵抗率を容易に得ることができる。また、シリコンは安定性が高く、圧電基板への接合性も優れているため、弾性表面波装置の信頼性を高めることができる。また、シリコン膜は蒸着やスパッタなどの方法により、精度良くかつ簡便に形成することができるため、信頼性の高い弾性表面波装置を低コストで製造することができる。
さらに、シリコンのドーパントとしてホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リン(P)、ヒ素(As)およびアンチモン(Sb)の中から選ばれた1種以上の元素を含むものとする。これらの元素は、シリコンに対する固溶限界が高いので多量にドープすることができる。また、これらのドーパントは4価のシリコンに対して3価もしくは5価であるため、ドープする添加物として好適に用いることができる。これによって広い範囲の抵抗率を容易に得ることができる。
また、前記半導体材料は酸化物半導体であってもよい。
また、本発明によれば、IDT電極の信号側電位となる櫛歯状電極と、アース電位となる電極との間の抵抗値が30MΩ以下に設定されることにより、放電破壊の発生を確実に防止できる。
さらに、本発明によれば、IDT電極の信号側電位となる櫛歯状電極と、アース電位となる電極との間の抵抗値が2kΩ以上に設定されることにより、弾性表面波装置の電気特性の悪化を許容できる範囲に抑えることができる。
そして、IDT電極の信号側電位となる櫛歯状電極と、アース電位となる電極との間の抵抗値を20kΩ以上にすれば、弾性表面波装置の電気特性を悪化させることなく、放電破壊の発生を確実に防止することができる。
さらに、前記弾性表面波装置を分波器のフィルタとして採用することにより、小型で信頼性の高い優れた通信機器等の通信装置を提供することができる。
次に、本発明に係る弾性表面波装置を作製した実施例について説明する。
弾性表面波素子の製造プロセスを図10を参照して説明する。なお、製造にはステッパー(縮小投影露光機)およびRIE(Reactive Ion Etching)装置を用いフォトリソグラフィーを行なった。
圧電基板20(タンタル酸リチウム単結晶の38.7°Yカット)にアセトン・IPA(イソプロピルアルコール)等を使用して超音波洗浄を施し、有機成分の除去を行なった。次に、クリーンオーブンによって充分に基板乾燥を行なった後、圧電基板20の一方主面に電極30の成膜を行なった。電極30の成膜にはスパッタリング装置を使用し、Al−Cu合金(Cuが1質量%)から成る電極30を成膜した。この電極膜厚は約2000Åとした。
また、圧電基板20の他方主面にも、同様に電極(図示せず)の成膜を行なった。
なお、この電極30のパターニングプロセスにおいて、前述したように、圧電基板20上に、酸化物半導体であるCuO,Cu2O,CuAlO2などからなる抵抗体を形成することができる。また、この例では圧電基板20にLiTaO3を使用したが、LiNbO3を用いることもできる。この場合、圧電基板20の表面からLiが抜けて、圧電基板表面20の表面にNb2O3が形成され、これらのNb2O3が抵抗体となることもある。この抵抗体が形成された場合は、この抵抗体によって電極30の間が、直接、電気的に接続される。
レジスト110を約0.6μmの厚みにスピンコート法により形成した。
ステッパーにより所望形状にパターン化して、現像装置にて不要部分のレジスト110をアルカリ現像液で溶解させ、所望レジストパターンを形成した。
RIE装置によりAl−Cu電極30のエッチングを行なった。
図10(a)に示すように、レジスト110を剥離し、Al−Cu電極30のパターニングを終了した。
図10(b)に示すように、SiO2から成る保護膜60をCVD装置にて200Åの厚みに成膜した。
この例では保護膜60としてSiO2を用いたが、Siを用いることもできる。この場合、前述したように、電極30の中のAlが保護膜60の中に拡散して、保護膜60は、Alを添加物とするp型Siとなり、保護膜60の抵抗率が低下して、電極30間の電気伝導を行なう抵抗体として機能する。
図10(c)に示すように、レジスト110を約8μm全面に再度塗布し、抵抗体40を形成する部分のレジスト110を感光させ削除した。
図10(d)に示すように、抵抗体40を形成する部分のSiO2保護膜60をCDE(Chemical Dry Etching)により除去した。
後に抵抗体40となるシリコン膜40を7500Åの厚さで形成した。成膜にはスパッタ装置を使用し、ターゲットにはBをドープしたシリコンを用いた。Bのドープ量は成膜後の抵抗体40の抵抗率が1〜100Ω・mとなるように決定した。
図10(e)に示すように、抵抗体40の形状は、小型で無理のない形状となるようにした。また、シリコン膜40の厚みを、各種電極30の厚みである2000Åよりも充分に大きい7500Åとすることにより、各種電極30と抵抗体40との電気的接続を確実なものとした。
図10(f)に示すように、レジスト110とともにレジスト上のシリコン膜40をリフトオフにより除去し、抵抗体40を形成した。
図10(g)に示すように、レジスト110を約8μmの厚さで全面に再度塗布し、入出力電極パッド35,36と接地用環状電極37の上の、導体膜50を形成する部分のレジスト110を感光させ削除した。
図10(h)に示すように、導体膜50を形成する部分のSiO2保護膜60をCDEにより除去した。
図10(i)に示すように、Cr,Ni,Auをこの順序でそれぞれ100Å,10000Å,2000Åの厚みにスパッタにて成膜し、導体膜50を形成した。
図10(j)に示すように、レジスト110とともにレジスト上の導体膜50をリフトオフにより除去し、導体膜50のパターンニングを完了した。
ウエハをダイシングラインに沿ってダイシングし、チップごとに分割して弾性表面波素子を完成させた。チップサイズは1.1×1.3mmとした。
次に回路基板70への実装について説明する。
図2に示すように、完成した弾性表面波素子10を、ガラスセラミックスから成る回路基板70にフェースダウン実装した。まず、回路基板70の、入出力電極パッド35,36および接地用環状電極37に対応する部分に形成された接続電極80上に半田バンプ90を形成し、その上に弾性表面波素子10をフェースダウンで搭載して超音波を加えて熱圧着し、その後240℃でリフローを行なって気密封止した。
この例では保護膜60としてSiO2を用いたが、Siを用いることもできる。この場合、前述したように、半田の中のSbが保護膜60の中に拡散して、保護膜60はSbを添加物とするn型Siとなり、抵抗率が低下して、電極30間の抵抗体として機能するようになることがある。
その後エポキシ系の樹脂を、真空印刷機を用いて印刷し、100℃1時間+150℃3時間の条件で硬化させた。最後に基板を各装置の形状にダイシングして各装置に分割して弾性表面波装置を完成させた。
このようにして得られる弾性表面波装置に対してヒートサイクル試験を行ない、IDT電極30aの放電破壊に対する効果を検証した。試験方法としては、低温側−40℃、高温側+85℃、キープ時間30分、遷移時間2分とし、10サイクル行なった。
抵抗体40の形状,数,接続方法を変えて対向する一対の櫛歯状電極間の抵抗値を変化させたサンプルを作成し、上記条件のヒートサイクル試験により放電破壊防止効果を検証した結果、対向する一対の櫛歯状電極間の抵抗値を30MΩ以下とすることにより、確実に放電破壊を防止できることが判った。
ちなみに、抵抗体の形状を図11に示すような形状とすることにより、一個の抵抗体で37MΩ程度の抵抗値が得られ、無理のない形状で適当な値の抵抗値を有する抵抗体を得ることができた。
次に、抵抗体40の形状、数、接続方法を変えて信号電位の電極とアース電位の電極との間の抵抗値を変化させ、弾性表面波装置(フィルタ)の電気特性(挿入損失)の変化を調べた。その結果を表1および図12に示す。なお、図12中の例えば、1.0E+02とは1.0×102であることを示し、他の表記も同様とする。
表1および図12から明らかなように、信号電位の電極とアース電位の電極との間の抵抗値を20kΩ以上とすれば、弾性表面波装置の電気特性が変化しないことが判った(20kΩで挿入損失が0.01dB変化しているが、これは測定誤差の範囲内であり、実質的には変化していないと考えられる)。また、信号電位の電極とアース電位の電極との間の抵抗値を2kΩ以上とすれば、挿入損失の劣化を0.2dB以内に抑えられることが明らかとなった。一般的に弾性表面波装置を使用するセットメーカーにおいては、挿入損失に0.2dBの差異があると、明らかに特性に差があると判断する。よって、信号電位の電極とアース電位の電極との間の抵抗値を2kΩ以上とすれば、弾性表面波装置の電気特性の変化を許容できるレベルに抑えることが出来る。
なお、本実施例では半導体材料にSiを使用したが、Siに限らず他の同族元素からなる半導体材料やZnOなどの酸化物半導体を使用しても同様な効果が期待できる。また、Siにドープする添加物としてBを使用したが、上述した他の元素を使用しても構わない。
また、回路基板70をガラスセラミックス基板としたが、アルミナなどの他のセラミックス基板、またはガラスエポキシ基板等の樹脂基板などの基体でもかまわない。また、電極をAl−Cu合金から成る電極としたが、NiやTi等他の材料を使用してもよいことはもちろんである。また、保護膜60は、酸化シリコンやシリコン以外に窒化シリコンなどの絶縁性材料を用いても良い。また、エポキシ樹脂の印刷を真空印刷機で行なったが、大気圧中で印刷を行ない、その後真空脱泡しても構わない。
1:弾性表面波装置
10:弾性表面波素子
20:圧電基板
31,32:IDT電極
31a,31b:櫛歯状電極
33,34:反射器電極
35:入力電極パッド
36:出力電極パッド
37:接地用環状電極
38:接続電極
39:アース用電極パッド
40:抵抗体
50:導体膜
60:保護膜
70:回路基板(基体)
80:接続電極
90:半田バンプ
301,302:共振器
1013:アンテナ
1014:分波回路
1015:ローノイズアンプ
1016,1020:フィルタ
1018:ミキサ
1021:パワーアンプ
1022:アイソレータ
10:弾性表面波素子
20:圧電基板
31,32:IDT電極
31a,31b:櫛歯状電極
33,34:反射器電極
35:入力電極パッド
36:出力電極パッド
37:接地用環状電極
38:接続電極
39:アース用電極パッド
40:抵抗体
50:導体膜
60:保護膜
70:回路基板(基体)
80:接続電極
90:半田バンプ
301,302:共振器
1013:アンテナ
1014:分波回路
1015:ローノイズアンプ
1016,1020:フィルタ
1018:ミキサ
1021:パワーアンプ
1022:アイソレータ
Claims (5)
- 基体上に配置された圧電基板と、該圧電基板上に形成されたアース電位となる電極と、前記圧電基板上に形成された一対の櫛歯状電極からなるIDT電極とを備えた弾性表面波装置であって、前記IDT電極のいずれか一方の櫛歯状電極と前記電極との間が、前記圧電基板上に形成された半導体材料からなる抵抗体によって接続されていることを特徴とする弾性表面波装置。
- 前記半導体材料が14族元素からなることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
- 前記14族元素がシリコンであり、そのドーパントがホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、リン、ヒ素およびアンチモンの中から選ばれた1種以上の元素であることを特徴とする請求項2記載の弾性表面波装置。
- 前記半導体材料が酸化物であることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波装置。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の弾性表面波装置をフィルタとして用いたことを特徴とする通信装置。
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-
2004
- 2004-09-29 JP JP2004283556A patent/JP2006101082A/ja active Pending
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