JP2006100110A - 蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 多数のバーリング孔が均等に配置された集電体を用いても溶接時に狭隙部が焼き切れることがないような構造にして、ショートの発生が防止でき、かつ極板から均等に集電できて信頼性が向上し、かつ高電圧で高エネルギー密度の蓄電池を提供する。
【解決手段】 本発明の蓄電池に用いられる集電体10は略円形状の本体部11を有し、その中心部に溶接電極挿入用の開口12が形成されているとともに、開口12の周囲から本体部11の外周部に向けて多数のバーリング孔13が形成されており、本体部11の上面に一対の溶接電極を配置して該一対の溶接電極に電圧が印加されて溶接電流が流れた際に該集電体上を流れる無効電流の最短の経路上の狭隙部にスリット16が形成されていることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明はニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、リチウム二次電池などに係り、特に、正極板と負極板がセパレータを介して渦巻状に巻回された電極群の両端部に一対の集電体が溶接された電極体を一方極の端子を兼ねる金属製外装缶内に備え、この外装缶の開口部が絶縁体を介して他方極の端子を兼ねる封口体により密封された蓄電池に関する。
近年、電気自動車、電動バイク、アシスト自転車あるいは電動工具等の大電流用途向けの電池として、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、リチウム二次電池などの密閉型蓄電池が用いられるようになった。この種の用途に用いられる密閉型蓄電池は、高出力特性、高エネルギー密度が要求される。高出力特性、高エネルギー密度を達成するためには集電部品の低抵抗化等が必要であり、特に、集電体と電極板端部の導電端縁との溶接強度を強くする必要がある。
この種の密閉型蓄電池は、通常、正極板と負極板とをセパレータを介して渦巻状に巻回して電極群とした後、この電極群の負極板の導電端縁を負極集電体に溶接するとともに、正極板の導電端縁を正極集電体に溶接する。ついで、この電極群を負極端子を兼ねる金属製外装缶に挿入し、負極集電体を金属製外装缶の底部に溶接するとともに、正極集電体より延出する集電リード部を正極端子を兼ねる封口体の底部に溶接した後、電解液を注液し、外装缶の開口部に絶縁ガスケットを介して封口体を装着して密閉することにより作製される。
ところで、上述したような大電流の用途に用いられる蓄電池にあっては、数十アンペア〜数百アンペアの大電流で充放電が行われるため、上述した溶接部での抵抗に起因する電圧降下により作動電圧が低下し、高電圧および高エネルギー密度が得られないという問題を生じた。このため、集電体に多数の開孔を備えるとともに、これらの開孔の端縁より垂直方向に突出する突縁を備え、これらの各突縁と電極群の極板の導電端縁とが溶接されるような集電体を用いることが、例えば、特許文献1〜特許文献3などで提案されるようになった。なお、このような端縁より垂直方向に突出する突縁を備えた開孔は、通常、バーリング孔といわれる。
このようなバーリング孔を備えた集電体を用いると、バーリング部(開口の端縁より垂直方向に突出する突縁)が電極群の極板の導電端縁に食い込むようにして溶接されるため、これらの溶接部での抵抗が減少するようになり、電圧降下に起因する作動電圧の低下が防止でき、高電圧で高エネルギー密度の蓄電池が得られるようになる。
実公昭61−34695号公報 特開2000−315490号公報 特開2000−331667号公報
ここで、集電体に高い集電効率を求める場合、集電体が電極群端部の極板の導電端縁に均等に溶接されていることが望ましい。このため、集電体上にできる限り多くのバーリング孔が均等に配置されていることが望ましいこととなる。しかしながら、集電体上にできる限り多くのバーリング孔を均等に配置するようにした場合、集電体の端部とバーリング孔との間に狭隙部が形成されることとなる。そして、端部とバーリング孔との間に狭隙部が形成された集電体を電極群端部の極板の導電端縁に抵抗溶接すると、この狭隙部に無効電流(集電体の表面を流れる溶接のためには無効となる電流のことを意味する)が流れて、狭隙部が焼き切れるという現象が生じるようになる。
この場合、無効電流が流れることにより狭隙部が焼き切れると、その爆火が飛び散って極板群内に入り込み、短絡発生の原因となることもあった。特に、その集電体が正極集電体の場合、図6(a)に示すように、正極集電体50は缶底溶接を行うために溶接電極挿入用の開口52が中央部に設けられている。このため、この溶接電極挿入用の開口52と、この開口52の周囲に形成されたバーリング孔53との間に狭隙部(X)が形成されやすくなる。このため、図6(b)に示すように、正極集電体50の上に一対の溶接電極R1,R2を配置し、これらに溶接電流を印加すると、狭隙部(X)に無効電流が流れて、該狭隙部(X)が焼き切れるという問題を生じた。
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、多くのバーリング孔が均等に配置された集電体を用いても溶接時に狭隙部が焼き切れることがないような構造にして、極板群でのショートの発生が防止でき、かつ極板から均等に集電できるようにして、信頼性が向上し、かつ高電圧で高エネルギー密度の蓄電池を提供できるようにすることを目的とするものである。
本発明の蓄電池は、正極板と負極板がセパレータを介して渦巻状に巻回された電極群の両端部に一対の集電体が溶接された電極体を一方極の端子を兼ねる金属製外装缶内に備え、この外装缶の開口部が絶縁体を介して他方極の端子を兼ねる封口体により密封されている。そして、上記課題を解決するため、前記集電体は略円形状で、その中心部に溶接電極挿入用の開口あるいは外装缶の缶底に接続される舌片が形成されているとともに、前記開口あるいは舌片の周囲から該集電体の外周部に向けて多数のバーリング孔が形成されており、集電体の上面に一対の溶接電極を配置して該一対の溶接電極に電圧が印加されて溶接電流が流れた際に該集電体上を流れる無効電流の最短の経路上の狭隙部にスリットが形成されていることを特徴とする。
このように、集電体上を流れる無効電流の最短の経路上の狭隙部にスリットが形成されていると、抵抗溶接時の無効電流がスリットにより遮断されるため、狭隙部に無効電流が流れることがなくなる。この結果、集電体の焼き切れの発生を抑制することが可能となって、焼き切れに起因する極板群でのショートの発生を防止することができるようになって、信頼性が向上する。また、極板から均等に集電できるようになるため、高電圧で高エネルギー密度の蓄電池が得られるようになる。
この場合、スリットは、溶接電極挿入用の開口と該開口に最近接するバーリング孔との間、舌片の近傍に形成された空隙部と該空隙部に最近接するバーリング孔との間、あるいは集電体の端縁近傍のバーリング孔と端縁との間に形成されていると、効率よく無効電流を遮断できるようになるので望ましい。
さらに、接電極挿入の開口の周囲に形成された一対のスリットに対して90°直交する位置に当該開口に開口する一対の略U字状バーリング孔が形成されていると、極板群の最内周側に配置された極板からの集電が可能となるので、さらに集電効率が向上するので望ましい。
以下に、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用した場合の一実施の形態を図1〜図6に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。なお、図1は実施例の正極集電体を示す平面図であり、図1(a)は正極集電体のみを示す平面図であり、図1(b)は正極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。図2は電極群の上部に図1に示す正極集電体を配置し、これに一対の溶接電極を配置して電極群に正極集電体を溶接して電極体とする状態を模式的に示す斜視図である。
また、図3は電極体を外装缶内に収納して完成されたニッケル−水素蓄電池を示す断面図である。図4は変形例の正極集電体を示す平面図であり、図4(a)は正極集電体のみを示す平面図であり、図4(b)は正極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。図5は変形例の負極集電体を示す平面図であり、図5(a)は負極集電体のみを示す平面図であり、図5(b)は負極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。図6は比較例(従来例)の正極集電体を示す平面図であり、図6(a)は正極集電体のみを示す平面図であり、図6(b)は正極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。
1.正極集電体
(1)実施例
この実施例の正極集電体10は、図1に示すように、略円形(最大で直径が30mm)の本体部11の中心部に溶接電極挿入用の中心開口(直径は10mm)12が形成されている。また、中心開口12の周囲から本体部11の端部に向けて多数のバーリング孔(例えば、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmのもの)13が形成されている。さらに、中心開口12の端縁の相対向する位置に、中心開口12に向けて開口する一対の略U字状バーリング孔14,14が形成されている。
そして、中心開口12の端縁から3〜5mmの位置で、一対の略U字状バーリング孔14,14に対して90°直交する位置に形成されたバーリング孔15,15と中心開口12とを連結するスリット16,16が形成されている。また、本体部11の端部から端縁に向けて開口する一対のスリット17,17が形成されている。このようなスリット16,17を設けることにより、無効な溶接電流を減少させ、有効な溶接電流を増大させることが可能となる。
この場合、厚みが0.3mmのニッケルメッキ鋼板(例えば、メッキの厚みは2μm)を最大で直径が30mmの略円形状になるように打抜型で打ち抜いて本体部11を形成するとともに、この本体部11の中心部に直径が10mmの円形孔を打ち抜いて溶接電極挿入用の中心開口12を形成する。また、中心開口12の周囲から本体部11の端部に向けて、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmとなるように多数のバーリング孔13を形成し、中心開口12の端縁の対向する位置に一対の略U字状バーリング孔14を形成する。
さらに、これらの一対の略U字状バーリング孔14に対して90°直交し、中心開口12の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔15と中心開口12とを連結するスリット16を形成する。また、本体部11の端部で中心開口12を介して対向する位置(略U字状バーリング孔14の直線状の位置)に一対のスリット17を形成することにより正極集電体10が得られる。
(2)比較例
比較例の正極集電体50は、図6に示すように、略円形(最大で直径が30mm)の本体部51の中心部に溶接電極挿入用の中心開口(直径は10mm)52が形成されている。また、中心開口52の周囲から本体部51の端部に向けて多数のバーリング孔(例えば、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmのもの)53が形成されており、中心開口52の端縁の相対向する位置に、中心開口52に向けて開口する一対の略U字状バーリング孔54が形成されている。さらに、本体部51の端部から端縁に向けて開口する一対のスリット55が形成されている。
この場合も、厚みが0.3mmのニッケルメッキ鋼板(例えば、メッキの厚みは2μm)を最大で直径が30mmの略円形状になるように打抜型で打ち抜いて本体部51を形成するとともに、この本体部51の中心部に直径が10mmの円形孔を打抜型で打ち抜いて溶接電極挿入用の中心開口52を形成する。また、中心開口52の周囲から本体部51の端部に向けて、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmとなるように多数のバーリング孔53を形成し、中心開口52の端縁の対向する位置に一対の略U字状バーリング孔54を形成する。さらに、本体部51の端部からの中心開口52を介して対向する位置に一対のスリット55を形成することにより正極集電体50が得られる。
2.電極群および電極体
まず、パンチングメタルからなる極板芯体の表面にニッケル焼結多孔体を形成した後、化学含浸法により水酸化ニッケルを主体とする活物質を同ニッケル焼結多孔体内に充填する。ついで、これを乾燥させた後、所定の厚み(例えば、0.6mm)になるまで圧延し、所定の寸法(例えば、長さが500mmで、幅が48mm)になるように切断してニッケル正極板21を作製した。
また、パンチングメタルからなる極板芯体の表面に水素吸蔵合金からなるペースト状負極活物質を充填し、乾燥させた後、所定の厚み(例えば、0.4mm)になるまで圧延し、所定の寸法(例えば、長さが550mmで、幅が48mm)になるように切断して水素吸蔵合金負極板22を作製した。
これらのニッケル正極板21と水素吸蔵合金負極板22との間に、ポリプロピレン製不織布からなるセパレータ(例えば、幅が50mmで、目付が80g/m2のもの)23を介在させて渦巻状に巻回して、直径が略30mmとなる渦巻状電極群20aを作製した。なお、このようにして作製された渦巻状電極群20aの上部にはニッケル正極板21の極板芯体が露出しており、その下部には水素吸蔵合金負極板22の極板芯体が露出している。
ついで、得られた渦巻状電極群20aの上端面に露出するニッケル正極板21の極板芯体の上に、上述のように作製された正極集電体10を載置し、この正極集電体10の上に平面形状が扇型(開き角度が90°のもの)である一対の溶接電極R1,R2を載置した。このとき、一対の溶接電極R1,R2は、図2および図1(b)に示すように、本体部11の中心部に形成された中心開口12に対して対角線方向になるように配置した。
ついで、一対の溶接電極R1,R2で正極集電体10を押圧することにより、各バーリング孔13,14は極板群より若干突出した正極板の極板芯体に食い込むこととなる。これにより、一対の溶接電極R1,R2間に1回目の溶接電流を流して抵抗溶接した。この後、これらの一対の溶接電極R1,R2を正極集電体10上でそれぞれ90°ずつ位置をずらして移動させた後、これらの一対の溶接電極R1,R2間に2回目の溶接電流を流して抵抗溶接した。
これにより、正極板の極板芯体(導電端縁)と各バーリング孔13,14の接触部は強固に溶接され、渦巻状電極群20aの上端面に正極集電体10が溶接されることとなる。これらの抵抗溶接時において、中心開口12の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔15と中心開口12とを連結してスリット16が形成されているので、このスリット16により無効電流が遮断されるので、バーリング孔15と中心開口12との間に無効電流が流れることはない。また、一対のスリット17により無効電流が遮断されるので、溶接のための有効電流を増大させることが可能となる。
一方、渦巻状電極群20aの下部に図示しない円板状の負極集電体を載置して、同様に一対の溶接電極を当接させて水素吸蔵合金負極板22の極板芯体(導電端縁)と負極集電体との接触部を抵抗溶接して渦巻状電極体を作製した。これを実施例の電極体Aとした。同様に、渦巻状電極群20aの上面に上述のように作製された正極集電体50を載置し、上述と同様に一対の溶接電極R1,R2を用いて、渦巻状電極群20aの上端面に正極集電体50を溶接するとともに、渦巻状電極群20aの下部に負極集電体を抵抗溶接して渦巻状電極体を作製した。これを比較例の電極体Xとした。
ついで、上述のようにして各電極体A,Xをそれぞれ3000個ずつ作製した後、溶接後の正極集電体10、50の外観検査と、ショートチェックを行い、外観不良とショートが発生した電極体の個数を求めると下記の表1に示すような結果が得られた。この場合、外観検査においては、正極集電体10、50が溶接により割れが発生したり、焼き切れが発生したものを外観不良と判定した。
Figure 2006100110
上記表1の結果から明らかなように、実施例の電極体Aにおいては外観不良が発生することがなく、ショートも発生することがなかったのに対して、比較例の電極体Xにおいては、3000個のうち437個に外観不良が発生し、54個にショートが発生していることが分かった。これは、電極体Xにおいては、図6に示すように、正極集電体50の中心開口52の近傍に形成されたバーリング孔53と中心開口52との間に狭隙部Xが存在する。このため、溶接時に、狭隙部Xに無効電流が流れることにより、この狭隙部Xが焼き切れて外観不良が発生し、狭隙部Xが焼き切れたことに起因して爆火が飛散してショートが発生したためである。
一方、電極体Aにおいては、中心開口12の近傍(端縁から3〜5mmの位置)に形成されたバーリング孔15と中心開口12との間には、これらを連結するスリット16が形成されている。このため、溶接時の無効電流はスリット16により遮断されるので、中心開口12近傍のバーリング孔15と中心開口12との間に無効電流が流れることはない。この結果、電極体Aにおいては外観不良が発生することがなく、かつショートも発生することがないこととなった。
3.ニッケル−水素蓄電池
ついで、上述のようにして作製された実施例の電極体Aを用いてニッケル−水素蓄電池を作製する例を図3(なお、図3においては、電極群20aの下部に負極集電体24が溶接されて電極体Aが形成されているものとする)に基づいて以下に説明する。まず、得られた電極体Aの正極集電体10の上部に円筒状の正極用リード26を溶接する。この場合、円筒状の正極用リード26には、正極集電体10の溶接電極挿入用の中心開口12に対応する位置にこの開口12に連通する開口26aが形成されている。ついで、電極体Aを鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装缶(底面の外面は負極外部端子となる)25内に収納した後、開口26aおよび中心開口12を通して図示しない溶接電極を挿入し、水素吸蔵合金負極板12に溶接された負極集電体24を外装缶25の内底面に溶接する。
ついで、外装缶25の上部内周側に防振リング27を挿入し、外装缶25の上部外周側に溝入れ加工を施して防振リング27の上端部に凹部25aを形成した。この後、外装缶25内に30質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液からなる電解液を注入する。ついで、この外装缶25の開口部の上部に、封口板28aの底面が正極用リード26の円筒部分に接触するように配置する。ここで、封口板28aの上部には正極キャップ(正極外部端子)28bが設けられており、この正極キャップ28b内には弁板28cとスプリング28dからなる弁体を備えており、封口板28aの中央にはガス抜き孔が形成されており、封口板28aと正極キャップ28bとで封口体28が形成される。
ついで、正極キャップ(正極外部端子)28bの上面に一方の溶接電極(図示せず)を配置するとともに、外装缶25の底面(負極外部端子)の下面に他方の溶接電極(図示せず)を配置する。この後、これらの一対の溶接電極間に所定の圧力を加えながら、これらの溶接電極間に電池の放電方向に所定の電圧を印加し、所定のパルス電流を流す通電処理を施した。この通電処理により、封口板28aの底面と正極用リード26の周側縁との接触部分が溶接されることとなる。
このように、一対の溶接電極間に所定の圧力を加えながら、これらの溶接電極間に電圧を印加して、通電処理を施すことにより、円筒状の正極用リード26の高さ寸法にばらつきがあっても、円筒状の正極用リード26の周側縁と封口板28aの底面との間に接触点を形成することが可能となる。これにより、溶接強度に優れた溶接部を形成することができるようになる。なお、封口板28aの下面に小突起部を設けるか、あるいは円筒状の正極用リード26の下面に接触する周側縁に小突起部を設けると、この小突起部に電流が集中するようになるため、一層溶接強度が大きい溶接部が形成されるようになる。
ついで、封口体28の封口板28aの周縁に絶縁ガスケット29を嵌着させ、プレス機を用いて封口体28に加圧力を加えて、絶縁ガスケット29の下端が外装缶25の上部外周に設けられた凹部25aの位置になるまで封口体28を外装缶25内に押し込む。この後、外装缶25の開口端縁25bを内方にかしめて電池を封口することによりニッケル−水素蓄電池が得られる。なお、この封口時の加圧力により、円筒状の正極用リード26は押しつぶされ、その断面形状は円形が押しつぶされた楕円形状となる。
4.集電体の変形例
上述した実施形態においては、一対の溶接電極R1,R2を中心開口12に対して対角線方向になるように配置して溶接するために、スリット17を設けて無効な溶接電流を減少させるための正極集電体の構造例を示したが、正極集電体としてはこれに限ることなく、一対の溶接電極R1,R2を隣接して配置して溶接するに適した構造の正極集電体とするなど種々の変形が可能である。また、上述した実施形態においては、円板状とした負極集電体を用いる例について説明したが、負極集電体についても種々の変形が可能である。以下に、これらの集電体の変形例の一例を説明する。
(1)第1変形例
この第1変形例の正極集電体30は、図4に示すように、略円形(最大で直径が30mm)の本体部31の中心部に溶接電極挿入用の中心開口(直径は10mm)32が形成されている。また、中心開口32の周囲から本体部31の端部に向けて多数のバーリング孔(例えば、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmのもの)33が形成されており、中心開口32の端縁の相対向する位置に一対の略U字状バーリング孔34が形成されている。そして、中心開口12の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔35と中心開口32とを連結するスリット36が形成されており、本体部31の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔37には端縁に向けて開口するスリット38が形成されている。このようにスリット36,38を設けることにより、無効な溶接電流を減少させ、有効な溶接電流を増大させることが可能となる。
この場合、厚みが0.3mmのニッケルメッキ鋼板(例えば、メッキの厚みは2μm)を最大で直径が30mmの略円形状になるように打抜型で打ち抜いて本体部31を形成するとともに、この本体部31の中心部に直径が10mmの円形孔を打ち抜いて溶接電極挿入用の中心開口32を形成する。また、中心開口32の周囲から本体部31の端部に向けて、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmとなるように多数のバーリング孔33を形成し、中心開口32の端縁の対向する位置に一対の略U字状バーリング孔34を形成する。さらに、中心開口32の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔35と中心開口32とを連結するスリット36を形成するとともに、本体部31の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔37に端縁に開口するスリット38を形成することにより、第1変形例の正極集電体30が得られる。
このように形成された正極集電体30を渦巻状電極群20aの上部に配置して、正極集電体30と渦巻状電極群20aのニッケル正極板21の極板芯体とを溶接するには、渦巻状電極群20aの上端面に露出するニッケル正極板21の極板芯体の上に正極集電体30を載置し、この正極集電体30の上に平面形状が扇型(開き角度が90°のもの)である一対の溶接電極R1,R2を、図4(b)に示すように、相隣接するようにして渦巻状電極群20aの上部の半分側に載置する。
ついで、一対の溶接電極R1,R2で正極集電体30を押圧して、各バーリング孔33,34、35,37を正極板の極板芯体に食い込ませるようにして、一対の溶接電極R1,R2間に1回目の溶接電流を流して渦巻状電極群20aの上部の半分側を抵抗溶接する。この後、これらの一対の溶接電極R1,R2を正極集電体30上で互いに反対方向にそれぞれ90°ずつずらして移動させ、即ち、前回溶接されなかった半分側に再配置した後、これらの一対の溶接電極R1,R2間に2回目の溶接電流を流して抵抗溶接することにより、渦巻状電極群20aの上端面に正極集電体30が溶接された電極体が得られる。
なお、これらの抵抗溶接時において、中心開口32の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔35と中心開口32とを連結するスリット36が形成されており、また、本体部31の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔37から端縁に開口するスリット38が形成されているので、これらのスリット36,38により無効電流が遮断されるので、バーリング孔35と中心開口32との間、バーリング孔37から端縁までの間に無効電流が流れることはない。
(2)第2変形例
この第2変形例の負極集電体40は、図5に示すように、略円形(最大で直径が30mm)の本体部41の中心部に外装缶の缶底に溶接される舌片42が形成されており、この舌片42の周囲には該舌片42に可撓性を付与するための溝部44が形成されている。また、舌片42の周囲から本体部41の端部に向けて多数のバーリング孔(例えば、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmのもの)43が形成されており、溝部44の近傍に形成されたバーリング孔45には溝部44に連通するスリット46が形成されている。また、本体部41の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔47には端縁に開口する一対のスリット48が形成されている。このようにスリット46,48を設けることにより、無効な溶接電流を減少させ、有効な溶接電流を増大させることが可能となる。
この場合、厚みが0.3mmのニッケルメッキ鋼板(例えば、メッキの厚みは2μm)を最大で直径が30mmの略円形状になるように打抜型で打ち抜いて本体部41を形成するとともに、この本体部41の中心部に溝部44を打ち抜いて舌片42を形成する。また、舌片42の周囲から本体部41の端部に向けて、直径が2mmで、バーリング高さが0.4mmで、バーリング厚みが0.1mmとなるように多数のバーリング孔43を形成する。さらに、溝部44の近傍に形成されたバーリング孔45に連通するスリット46を形成するとともに、本体部41の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔47に端縁に開口する一対のスリット48を形成することにより負極集電体40が得られる。
このように形成された負極集電体40を渦巻状電極群20aの下部に配置して、負極集電体40と渦巻状電極群20aの水素吸蔵合金負極22の極板芯体とを溶接するには、渦巻状電極群20aの下端面に露出する水素吸蔵合金負極22の極板芯体の上に負集電体40を載置する。ついで、この負極集電体40の上に平面形状が扇型(開き角度が90°のもの)である一対の溶接電極R1,R2を載置する。このとき、一対の溶接電極R1,R2は、図5(b)に示すように、本体部41の中心部に形成された舌片42に対して対角線方向になるように配置する。
ついで、一対の溶接電極R1,R2で負極集電体40を押圧することにより、各バーリング孔43,45,47は極板群より若干突出した正極板の極板芯体に食い込むこととなる。これにより、一対の溶接電極R1,R2間に1回目の溶接電流を流して抵抗溶接する。この後、これらの一対の溶接電極R1,R2を負極集電体40上でそれぞれ90°ずつ位置をずらして移動させた後、これらの一対の溶接電極R1,R2間に2回目の溶接電流を流して抵抗溶接することにより、渦巻状電極群20aの下端面に負極集電体40が溶接された電極体が得られる。
なお、これらの抵抗溶接時において、溝部44の近傍に形成されたバーリング孔45には溝部44に連通するスリット46が形成されており、また、本体部41の端縁から3〜5mmの位置に形成されたバーリング孔47に端縁に開口する一対のスリット48が形成されているので、これらのスリット46,48により無効電流が遮断されるので、バーリング孔45と溝部44との間、バーリング孔47から端縁までの間に無効電流が流れることはない。ついで、このようにして得られた電極体を外装缶25(図3参照)内に挿入し、正極集電体に形成された溶接電極挿入用の開口から溶接電極を挿入して抵抗溶接を行うと、負極集電体40の中心部に形成された舌片42が外装缶の缶底に溶接される。
以上に詳述したように、本発明においては、集電体上を流れる無効電流の最短の経路上の狭隙部にスリットが形成されていると、抵抗溶接時の無効電流がスリットにより遮断されるため、狭隙部に無効電流が流れることがなくなる。この結果、集電体の焼き切れの発生を抑制することが可能となって、焼き切れに起因する極板群でのショートの発生を防止することができるようになって、信頼性が向上する。また、極板から均等に集電できるようになるため、高電圧で高エネルギー密度の蓄電池が得られるようになる。
なお、スリットにもバーリング部を形成するようにすれば、バーリング孔と同様に、スリットにおいても電極群から集電できるようにすることもできる。この場合、スリットに形成したバーリング部の分だけ集電効率が向上し、出力特性を高めることができる。
また、上述した実施の形態においては、本発明をニッケル−水素蓄電池に適用する例について説明したが、本発明はニッケル−水素蓄電池以外にも、ニッケル−カドミウム蓄電池、リチウム二次電池などの密閉型蓄電池に適用しても同様の効果が得られることは明らかである。
本実施形態の正極集電体を示す平面図であり、図1(a)は正極集電体のみを示す平面図であり、図1(b)は正極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。 電極群の上部に図1に示す正極集電体を配置し、これに一対の溶接電極を配置して電極群に正極集電体を溶接して電極体とする状態を模式的に示す斜視図である。 電極体を外装缶内に収納して完成されたニッケル−水素蓄電池を示す断面図である。 変形例の正極集電体を示す平面図であり、図4(a)は正極集電体のみを示す平面図であり、図4(b)は正極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。 変形例の負極集電体を示す平面図であり、図5(a)は負極集電体のみを示す平面図であり、図5(b)は負極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。 従来例の正極集電体を示す平面図であり、図6(a)は正極集電体のみを示す平面図であり、図6(b)は正極集電体上に一対の溶接電極を配置した状態を示す平面図である。
符号の説明
10…正極集電体、11…本体部、12…中心開口、13…バーリング孔、14…略U字状バーリング孔、15…開口近傍のバーリング孔、16…スリット、17…スリット、20a…渦巻状電極群、21 ニッケル正極板、22…水素吸蔵合金負極板、24…負極集電体、25…外装缶、25a…凹部、25b…開口端縁(かしめ部)、26…正極用リード、26a…開口、27…防振リング、28…封口体、28a…封口板、28b…正極キャップ、28c…弁板、28d…スプリング、29…絶縁ガスケット、30…正極集電体、31…本体部、32…中心開口、33…バーリング孔、34…略U字状バーリング孔、35…開口近傍のバーリング孔、36…スリット、37…端部のバーリング孔、38…スリット、40…負極集電体、41…本体部、42…舌片、43…バーリング孔、44…溝部、45…舌片近傍のバーリング孔、46…スリット、47…端部のバーリング孔、48…スリット

Claims (3)

  1. 正極板と負極板がセパレータを介して渦巻状に巻回された電極群の両端部に一対の集電体が溶接された電極体を一方極の端子を兼ねる金属製外装缶内に備え、この外装缶の開口部が絶縁体を介して他方極の端子を兼ねる封口体により密封された蓄電池であって、
    前記集電体は略円形状で、その中心部に溶接電極挿入用の開口あるいは前記外装缶の缶底に接続される舌片が形成されているとともに、前記開口あるいは舌片の周囲から該集電体の外周部に向けて多数のバーリング孔が形成されており、
    前記集電体の上面に一対の溶接電極を配置して該一対の溶接電極に電圧が印加されて溶接電流が流れた際に該集電体上を流れる無効電流の最短の経路上の狭隙部にスリットが形成されていることを特徴とする蓄電池。
  2. 前記スリットは、前記溶接電極挿入用の開口と該開口に最近接するバーリング孔との間、前記舌片の近傍に形成された空隙部と該空隙部に最近接するバーリング孔との間、あるいは前記集電体の端縁近傍のバーリング孔と端縁との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池。
  3. 前記溶接電極挿入用の開口の周囲に形成された前記一対のスリットに対して90°直交する位置に当該開口に開口する一対の略U字状バーリング孔が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電池。
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