JP2006097098A - 強度及び加工性に優れた中炭素鋼熱処理鋼帯 - Google Patents

強度及び加工性に優れた中炭素鋼熱処理鋼帯 Download PDF

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Abstract

【課題】ばね材,ワッシャーをはじめ、自動車用部品,事務機器部品等の素材として使用される硬度等を調整された中炭素鋼帯の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.5〜0.8%,Si:0.1〜0.5%,Mn:0.5〜1.0%を含有し、残部Fe及び不純分からなる炭素鋼冷間圧延鋼帯を、恒温変態熱処理部(A)とその下流側の焼戻し処理部(B)とを備えた連続熱処理ラインに供給し、鋼帯の連続通板下に、恒温変態熱処理部において、鋼帯をオーステナイト単一相温度域から、溶融鉛浴(浴温:約350-480℃)に浸漬通板することによりベーナイト変態を生起させ、焼戻し処理部において、前記恒温変態熱処理鋼帯を、Ac1点〜400℃で焼戻して焼戻しベーナイト組織を形成する。焼戻しによりベーナイト組織の炭化物のミクロ的な形態制御の効果として、上記用途の素材として好適な硬さ及びプレス加工性等が確保される。
【選択図】図2

Description

自動車部品,電気機器部品,事務用機器,家庭用品・家具類,ばね類等の素材として使用される硬度及びプレス成形性等に優れた中炭素鋼熱処理鋼帯に関する。
自動車部品,電気機器部品,事務用機器,家庭用品・家具類,ばね類等の素材として、JIS
G 3311(みがき特殊帯鋼)に規定の各種炭素鋼鋼帯が使用され、プレスによる曲げ・打ち抜き加工等により製品形状に仕上げられている。該炭素鋼帯は、標準組織として、初析フェライト相と共析相であるパーライトとからなる「フェライト+パーライト」混合組織を有する亜共析鋼であり、鋼帯の具体的な用途・要求仕様に応じて設定される冷間圧延・調質熱処理等の製造条件により、制御された組織及び材料特性が付与される。
上記炭素鋼帯の材料特性の改良を目的としてこれまでにも種々の工夫がなされ、例えばクラッチ用皿ばね、事務機器用チェーン、その他の用途における冷間成形性及び靭性等の改良を目的として、C含有量0.15-0.40%で、B,Ti等の元素の一定量を添加するという鋼組成の工夫と、プレス等の成形加工後の水中又は油中焼入れにより均一なマルテンサイト組織を得るようにした炭素鋼帯の製造方法(特許文献1)、 フリクションプレート等の素材として、C含有量0.2-0.8mass%の炭素鋼組成をベースとし、化学組成(Caの添加等)及び鋼の清浄度(JIS G0555)の規定により、良好なプレス成形加工性と、Hv260以上の高硬度を備えた、フェライト−パーライト混合組織又はフェライト−球状化セメンタイト混合組織を有する炭素鋼帯(特許文献2)等が提案されている。 また、ばね、ワッシャー、リテーナー、フリクションプレート、カメラ部品等の素材であるS55CM等の炭素鋼帯として、オーステナイト温度域から冷却速度を制御した連続冷却変態熱処理により、微細なパーライト組織に調整したものが実用されており、このものはHv約280〜300の高硬度と良好なプレス成形性を備えている。
特開平5−98356号公報 特開2001−40448号公報
上記炭素鋼帯の製造工程では、鋼帯の調質熱処理として連続冷却変態が適用されているが、その熱処理はバッチ式であり、生産効率の点からこれを連続ラインで実施することが望まれる。しかし、連続ラインで実施する場合、バッチ方式と異なって、鋼帯サイズ(板厚・板幅)の影響を受け易く、鋼帯の全体に亘って加熱昇温および冷却降温を均一に行なわせることが困難で、組織分布のムラが生じ易い。殊に薄肉広幅サイズ(例えば板厚約0.3mm以下,板幅約120mm以上)の鋼帯では、図11に示すように、鋼帯の中央域(イ)は意図する組織(例えば微細パーライト組織)とすることができても、両側のエッジ域(ロ)はそれとは別種の組織(例えばベーナイト組織)となり易く、この組織ムラは製品鋼帯の均質性を損なうと共に製品歩留りを損なう原因となる。
本発明の第1の目的は、自動車部品,電気機器部品,事務用機器,家庭用品・家具類,ばね類等の素材として使用される上記炭素鋼帯の製造及び品質上の問題を解消することにある。更に本発明の第2の目的は、これらの各種用途の素材として、具体的仕様態様や多様な製品仕様に対応するすることができる改良された材料特性及びプレス成形加工性を備えた炭素鋼帯を提供することにある。
本発明の中炭素鋼熱処理鋼帯は、
質量%で、C:0.5〜0.8%,Si:0.1〜0.5%,Mn:0.5〜1.0%、残部Fe及び不純分からなる炭素鋼冷間圧延鋼帯を、恒温変態熱処理部とその下流側の焼戻し処理部とを備えた連続熱処理ラインに供給し、鋼帯の連続通板下に、恒温変態熱処理部において、鋼帯をオーステナイト単一相温度域から、浴温:350〜480℃に保持された溶融鉛浴中に浸漬通板することによりベーナイト変態を生起させ、ついで焼戻し処理部において、前記恒温変態熱処理鋼帯を、Ac1点直下〜400℃で焼き戻すことにより形成された焼戻しベーナイト組織を有するものである。
溶融鉛浴を冷却媒体として鋼帯を浸漬通板する恒温変態熱処理によれば、鋼帯サイズ(板厚・板幅)の影響を受けず、冷却変態熱処理におけるような加熱昇温・冷却降温のムラに起因する組織ムラが回避され、組織分布の均一なベーナイト組織が形成される。ベーナイト組織は、フェライト地中に微細に分散した炭化物(セメンタイト)で構成され、その組織に基づく材質的特徴として、フェライト-パーライト混合組織より高いレベルの硬さ・強度を有し、またマルテンサイト組織に比しはるかに良好な延靭性を有する。そして本発明はこのベーナイト組織に焼戻し処理を施すことにより、ベーナイトの特徴を活かしながら、適度に軟質化せしめプレス成形加工性をより良好なレベルに高めている。
溶融鉛浴による恒温変態熱処理(ベーナイト組織の形成)の後、焼戻し処理を行う点は、本発明の最も特徴とする事項である。本発明の対象鋼種である中炭素鋼(C:0.5-0.8mass%)のベーナイト変態温度域(Ar'〜Ar")は約550〜250℃であり、この温度域の比較的高温側でベーナイト変態を行えば、硬さ・強度を適度に抑制しつつ延靭性を高めプレス成形性の良好なベーナイトを形成することができる。しかし実機設備における溶融鉛浴の浴温は、作業環境衛生等の観点から約480℃程度が上限とされ、それより高温側(480-550℃)のベーナイト変態を利用することができず、このことはベーナイト変態を利用した材料特性の設計上の制約となることを意味している。恒温変態熱処理の後に行なう焼戻し処理は、このような材料設計上の制約を解消するものであり、フェライト地中に微細分散した炭化物の焼戻し処理によるミクロ的な形態制御の効果として、ベーナイトの組織的特徴を保持しながら程よく軟質化し、強度レベル及びプレス成形加工性等を、製品鋼帯の具体的用途に応じてバランス良く具備させることができる。
本発明における炭素鋼組成の限定理由は次のとおりである。元素含有量を示す%は全てmass%である。
基本成分であるCは、ベーナイト変態おける微細炭化物(セメンタイト)の析出生成に必要な元素であり、ばね,ワッシャー,リテーナー,チェーン部品,フリクションプレート等の用途に要求される十分な硬さ,強度等を得るために、0.5%以上であることを要する。しかし過度に増量すると、炭化物の過剰生成に伴なう延靭性の低下により、製品鋼帯のプレス成形性が損なわれるので、0.8%を上限とする。
Mnは、鋼の溶製工程における脱酸・脱硫元素として添加されるほか、鋼の焼入れ性を高め、恒温変態曲線(IT曲線)におけるパーライト/上部ベーナイトのノーズを長時間側にシフトさせる効果を有する。このノーズ位置のシフト効果は、鋼帯が比較的厚肉・広幅サイズの場合における恒温変態熱処理のムラを防ぎ、均質なベーナイト組織の形成を容易にする。この効果を得るために少なくとも0.5%を必要とする。過度に増量すると、鋼の溶製・鋳造工程における溶湯の流動性が低下し鋳造が困難となり、また製品鋼帯が不必要に硬質化しプレス成形加工が困難となるので、1.0%を上限とする。
Siは、鋼の溶製工程における脱酸剤として添加され、また溶湯の流動性を高め、鋳造性を良好にする。このため少なくとも0.1%を必要とするが、0.5%を越える多量の添加は、製品鋼帯の過度の硬質化をきたし、プレス成形性を損なうことになるので、これを上限とする。
なお、P,S等の不純分はこの種の鋼に通常付随する量の混在が許容され、例えPは0.03%以下,Sは0.035%以下である。
本発明の鋼組成の具体例について、例えば、ばね、ワッシャー材等に適用される中炭素鋼の好ましい組成として、C:0.52〜0.58%,Si:0.15〜0.35%,Mn:0.6〜0.9%,残部Fe及び不純物からなる、S55CM相当の鋼組成が挙げられる。
炭素鋼の熱間圧延及び冷間圧延は常法に従って行われる。すなわち熱間圧延は、熱延鋼帯の均質性及び熱延効率の点から、オーステナイト単一相域(Ar1点以上)で行なれ、熱延鋼帯の巻取りは、表面の酸化スケールの生成を抑制するためにAr1点以下の温度で行われる。冷間圧延は、目的とする板厚に応じて設定される圧延率のもとに実施される。冷延鋼帯の板サイズ(板厚・板幅)に本質的な制限はないが、鋼帯サイズが、過度に厚肉・広幅サイズになると、連続熱処理ラインで行われる冷延鋼帯の恒温変態熱処理及び焼戻し処理における均一な加熱昇温/冷却降温の制御が困難となり、形成される組織の均一性が損なわれる。このため、冷延鋼板の板サイズは、板厚約1.6mm以下,板幅は約350mm以下であるのが好ましい。
本発明の冷延鋼帯の恒温変態熱処理(ベーナイト変態)及び焼戻し処理(焼戻しベーナイト組織の形成)は連続ラインにおいて鋼帯の連続移送下に効率よく行われる。
図1に連続熱処理ラインの装置構成を示す。該熱処理ラインは、恒温変態熱処理部(A)とその下流側に設置された焼戻し熱処理部(B)とを備えている。恒温変態熱処理部(A)は、ライン上流側(図の右側)から、加熱帯(1)、急冷帯(2)及び保持帯(3)がこの順に連設され、それぞれ非酸化性の雰囲気(例えばNXガス等)に保たれている。加熱帯(1)は被処理鋼帯(S)をオーステナイト単一相温度域に加熱昇温する帯域であり、チューブヒーター等の加熱装置(図示省略)が設けられている。急冷帯(2)には、鋼帯の恒温変態を行うための冷却媒体として溶融鉛浴(2)が設置されている。なお、該急冷帯(2)は鉛蒸気の外部漏出(作業環境の汚染)を抑制緩和するために密閉状態に保たれている。保持帯(3)は、溶融鉛浴(2)から導出された鋼帯の恒温変態(ベーナイト変態)を完結させるための保温域であり、チューブヒーター等の加熱装置(図示省略)を備え、溶融鉛浴(2)の浴温と同じ雰囲気温度に保持されている。
ベーナイト変態は、鋼帯をオーステナイト単一相温度域に加熱したうえ、同温度から、Ar'点〜Ar"点(IT曲線図におけるノーズ温度〜マルテンサイト変態開始温度)の温度に保持された冷却媒体に浸漬して急冷し恒温保持することにより行われる。上記熱処理ラインにおいて、ライン上流端のコイル(C)から、所定の速度で巻出される冷延鋼帯(S)は、まず恒温変態熱処理部(A)の加熱帯(1)に導入され、そこを通過する間にオーステナイト単一相温度(例えば、Ac3点+10〜20℃)に加熱され、ついで急冷帯(2)の溶融鉛浴(2)に導入される。
溶融鉛浴(2)は加熱循環回路により常時、設定された一定の浴温に保持されている。溶融鉛浴(2)の実操業上制御可能な温度範囲は、約350〜480℃である。鉛浴の下限温度を約350℃とするのは、鉛浴(Pb融点:327.4℃)の流動状態を良好に維持するためであり、上限温度を約480℃とするのは、それを越える高温状態では、鉛蒸気の増加により作業環境の維持が困難となるからである。被処理鋼帯(S)は、鉛浴(2)の浴中を浸漬通板することにより、オーステナイト単一相温度域からベーナイト変態温度域に急冷されると共に恒温保持されてベーナイト変態を生起する。鉛浴(2)を通過して浴外に導出された鋼帯(S)は、保持帯(3)(鉛浴21と同温度に保持されている)を通過する間にベーナイト変態を完結する。鉛浴(2)中の浸漬通板により温度ムラのないベーナイト変態を行わせることができ、組織分布の均一なベーナイトが形成される。
恒温変態により形成されるベーナイトの硬さ・強度等は、その変態温度の高低によりある程度調節することができる。図3は、恒温変態温度によりベーナイトの硬さ(Hv)が変化する例を示している(供試材:55CM相当材)。図示にように、硬さ・強度を程良く抑え延靭性を具備させて良好なプレス成形加工性を得るには、ベーナイト変態を比較的高温側で行うことが必要である。本発明の対象とする中炭素鋼帯の場合、ベーナイト変態温度域(Ar'点〜Ar"点)は約250〜550℃であるが、前述のように溶融鉛浴(2)の浴温は約480℃が上限とされているため、硬さ・強度等の制御可能な範囲が制限される。S55CM炭素鋼帯の例では、溶融鉛浴(2)の上限温度(約480℃)で得ることができるベーナイトの硬さは、Hv約300前後であり、それより低い硬さレベル、例えばHv約280前後に抑制されたベーナイトを得ることができない。この制約は、ベーナイト変態処理につづく焼戻し処理により解消される。
焼戻し処理部(B)は、チューブヒーター等の適宜の加熱装置(図示省略)を備え、所定の雰囲気温度(雰囲気は大気であってよい)に保持されており、鋼帯(ベーナイト鋼帯)は、所定の通板速度でそこを通過する間に所定の焼戻し処理を施される。焼戻し処理はAc1点(約727℃)直下〜400℃の温度域で行なわれる。400℃に満たない低温域では、効率良く所要の焼戻し処理を達成することができず、他方Ac1点を超える高温域では、ベーナイト組織の変質をきたし、恒温変態熱処理を行なったことの意義が失われるからである。より好ましくはAc1点-30℃〜約450℃である。焼戻し温度からの冷却は放冷(自然空冷)としてよい。焼戻し処理部(B)を通過した鋼帯はライン終端のコイル(C)に巻き取られる。
図2は、IT曲線図に本発明の熱処理のヒートパターンを示している。本発明に従ってベーナイト変態の後、焼戻し処理が施されることにより、フェライト地中に微細分散した炭化物(セメンタイト)のミクロな形態制御の効果として、硬さ・強度が程よく抑制されると共に良好な延靭性を備えた焼戻しベーナイト組織が形成される。ベーナイト変態熱処理及び焼戻し処理の具体的条件は、鋼組成(主としてC含有量)や製品鋼帯の要求仕様に応じて設定される。
例えば、ばね,ワッシャー材の素材としてS55CM相当組成の炭素鋼冷延鋼帯(C:0.52-0.58%,Si:0.15-0.35%,Mn:0.60-0.90%,残部Fe及び不純物)を挙げると、恒温変態熱処理(ベーナイト変態)は、溶融鉛浴の浴温を450-480℃の範囲に設定し、恒温変態後の焼戻し処理は、510〜630℃の温度範囲に適当時間(例えば15-20sec)保持することにより好適に達成される。その焼戻しベーナイト鋼帯は、適度に軟質化されていることにより、ばね,ワッシャー材として好適な、硬さ(Hv)約280±20の強度レベルを有すると共に良好なプレス成形加工性を兼ね備え、強靭性も良好である。
次に恒温変態熱処理(ベーナイト変態熱処理)及び焼戻し処理を経由する中炭素鋼帯の製造及び材料特性について具体例を挙げて説明する。
(1)冷延鋼帯の製造
所定組成に調整された中炭素鋼スラブ(S55CM相当材)を熱間圧延して熱延鋼帯を得る(熱延温度:850℃,熱延巻取り温度:610℃)。熱延鋼帯を、酸洗処理の後、冷間圧延に付し供試冷延鋼帯を得る(冷延率:約50%)。供試冷延鋼帯の組成及び板サイズは次のとおりである。
(2)恒温変態熱処理及び焼戻し処理
供試冷延鋼帯を、図1に示した連続熱処理ラインに供給し、一定のライン速度で通板することによりベーナイト変態熱処理及び焼戻し処理を行う。
上記の連続熱処理ラインにおける熱処理条件を表2に示し、得られた熱処理鋼帯(A0)〜(A4)の材料特性を表3に示す。図4は、表3の各供試鋼帯の焼戻し温度と焼戻し後の硬さ(Hv)とを図示したものであり、図5〜図8は供試鋼帯の各金属組織を示している(図5:A0,図6:A2,図7:A3,図8:A4)。なお、供試鋼帯A0は恒温変態熱処理まま(焼戻し処理を省略)のベーナイト鋼帯である。
上記表2,表3において、供試鋼帯A4は、焼戻しによる組織変化が過度に進み、ベーナイトの組織的特徴が損なわれると共に、強度及び硬さ等の激減をきたし、恒温変態熱処理を行ったことの実質的意義が失われている。他方、供試鋼帯A1,A2及びA3のように、焼戻し処理温度・時間を調節することにより、ベーナイト地中の炭化物(セメンタイト)にミクロ的な形態変化が生じ、ベーナイトを適度に軟質化させ所要の硬さレベルる得ることができる。上記の例でみると、供試鋼帯A0(焼戻し処理なし)の硬さ(Hv)303に対し、供試鋼帯A1は510℃の焼戻し処理でHv296の硬さ、供試鋼帯A2は519℃の焼戻し処理でHv291の硬さ、供試鋼帯A3は625℃の焼戻し処理でHv263の硬さに調節されており、これはばね、ワッシャー材等の素材として好適である。
なお、上記の焼戻しベーナイト(供試鋼帯A1〜A3)を、下記の表6に示す連続冷却変態による「フェライト+パーライト」混合組織のもの(供試鋼帯B1)とを比較すると、同じ硬さレベルにおいて、焼戻しベーナイトは、相対的に高い強度(引張強さ,降伏点等)を有しており、このことは部材の安定性・耐用寿命等の向上に有利である。
[連続冷却変態熱処理]
次に比較例として「恒温変態熱処理-焼戻し処理」に代え、連続冷却変態熱処理を適用した場合の調質効果について述べる。
(1)冷延鋼帯の製造
所定組成に調整された中炭素鋼スラブ(S55CM相当材)の熱延鋼帯(熱延温度及び巻取り温度は前記と同じ)を、酸洗処理の後、冷間圧延(冷延率は前記と同じ)に付し供試冷延鋼帯を得る。供試鋼帯の組成及びサイズは次のとおりである。
(2)連続冷却変態熱処理
上記冷延鋼帯を、連続熱処理ラインに供給し、鋼帯の連続通板条件下に、連続冷却変態熱処理を施し、フェライト-パーライト混合組織を有する鋼帯を得る。連続熱処理条件を表5に示し、得られた熱処理鋼帯の材料特性を表6に示す。また、金属組織を図9及び図10示す(図9:供試鋼帯B1,図10:供試鋼帯B2)。図10(供試鋼帯B2)の金属組織は鋼帯中央面域(イ)の組織である。
供試鋼帯B1は、パーライト組織が粗大であり(図9)、硬さがHv243と著しく低く、ばね材、ワッシャー等の素材としての適性に欠ける。供試鋼帯B2は、鋼帯の中央面域(イ)とエッジ域(ロ)(図11参照)における組織が異なり、中央面域(イ)は微細なパーライト組織(図10)が形成されているが、エッジ域(ロ)はベーナイト組織となっており、組織分布が不均一で製品として採用することができない。
本発明の好ましい実施態様例を以下に示す。
(1)質量%で、C:0.5〜0.8%,Si:0.1〜0.5%,Mn:0.5〜1.0%、残部Fe及び不純分からなる炭素鋼冷間圧延鋼帯を、恒温変態熱処理部と焼戻し処理部とを備えた連続熱処理ラインに供給し、鋼帯の連続通板下に、恒温変態熱処理部において、鋼帯をオーステナイト単一相温度域から、浴温:350〜480℃の溶融鉛浴中に浸漬通板することによりベーナイト変態を生起させ、ついで焼戻し処理部で、Ac1点直下〜400℃で焼き戻すことにより、焼戻しベーナイト組織を有する中炭素鋼熱処理鋼帯を得る。
(2)質量%で、C:0.52〜0.58%,Si:0.15〜0.35%,Mn:0.6〜0.9%、残部Fe及び不純分からなる炭素鋼冷間圧延鋼帯を、恒温変態熱処理部と焼戻し処理部とを備えた連続熱処理ラインに供給し、鋼帯の連続通板下に、恒温変態熱処理部において、鋼帯をオーステナイト単一相温度域から、浴温:450〜480℃の溶融鉛浴中に浸漬通板することによりベーナイト変態を生起させ、焼戻し処理部で、前記恒温変態熱処理鋼帯を510〜530℃で焼き戻すことにより、焼戻しベーナイト組織を有する中炭素鋼熱処理鋼帯を得る。
(3)前記2項に記載の炭素鋼冷延鋼帯の恒温変態熱処理及び焼戻し処理により形成された焼戻しベーナイト組織を有する、硬さHv280±20の中炭素鋼熱処理鋼帯を得る。
(4)
ワッシャー材の素材として前記第3項の熱処理鋼帯を得る。
本発明によれば、連続熱処理ラインにおいて、組織分布の均一な焼戻しベーナイト組織を有する鋼帯を効率良く製造することができ、そのベーナイトの焼戻し熱処理効果として、ベーナイトを程よく軟質化し、各種用途、例えば、ばね,ワッシャー材をはじめ、自動車部品,電気機器,事務機器,その他の広範な用途を対象として、具体的部材及び使用態様等に応じて要求される強度レベル及びプレス成形性等をバランスよく兼備することができ、部材の安定性を高め、耐用寿命の向上等に資するものである。

本発明における恒温変態熱処理及び焼戻し処理が実施される連続熱処理ラインを示す図である。 恒温変態曲線及び本発明の熱処理のヒートパターンを示す図である。 ベーナイト変態温度とベーナイトの硬さとを示すグラフである。 焼戻し温度と焼戻しベーナイトの硬さを示すグラフである。 ベーナイト組織を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×400)である。 焼戻しベーナイト組織を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×400)である。 焼戻しベーナイト組織を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×400)である。 焼戻しベーナイト組織を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×400)である。 連続冷却変態によるフェライト-パーライト混合組織を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×400)である。 連続冷却変態によるフェライト-パーライト混合組織を示す図面代用顕微鏡写真(倍率×400)である。 熱処理された鋼帯の組織の不均一分布の説明図である。
符号の説明
A:恒温変態処理部
B:焼戻し処理部
1:加熱帯 2:急冷帯 2:溶融鉛浴 3:保持帯

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.5〜0.8%,Si:0.1〜0.5%,Mn:0.5〜1.0%、残部Fe及び不純分からなる炭素鋼冷間圧延鋼帯を、恒温変態熱処理部とその下流側の焼戻し処理部とを備えた連続熱処理ラインに供給し、鋼帯の連続通板下に、恒温変態熱処理部において、鋼帯をオーステナイト単一相温度域から、浴温:350〜480℃に保持された溶融鉛浴中に浸漬通板することによりベーナイト変態を生起させ、ついで焼戻し処理部において、前記恒温変態熱処理鋼帯を、Ac1点直下〜400℃で焼き戻すことにより形成された焼戻しベーナイト組織を有する強度及びプレス加工性に優れた中炭素鋼熱処理鋼帯。
  2. 炭素鋼冷間圧延鋼帯は、C:0.52〜0.58%,Si:0.15〜0.35%,Mn:0.6〜0.9%、残部Fe及び不純分からなり、恒温変態熱処理部の溶融鉛浴の浴温は450〜480℃であり、恒温変態熱処理鋼帯を510〜630℃の温度域で焼戻してなる請求項1に記載の中炭素鋼熱処理鋼帯。
  3. 焼戻しベーナイト組織を有する鋼帯の硬さが、Hv280±20である請求項2に記載の中炭素鋼熱処理鋼帯。
  4. ばね,ワッシャーの素材として使用される請求項3に記載の中炭素鋼熱処理鋼帯。
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