JP2006092864A - 安全弁装置および密閉型電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】密閉型電池が高温に晒されたときであっても弁機構を確実に作動させることのできる簡易な構造の、防曝安全性に優れた安全弁装置を提供する。
【解決手段】排気孔1を備えた封口板2と、溶接等により上記封口板に装着されて該封口板との間に弁室を形成した皿状端子キャップ3と、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔を閉塞する弾性弁体4とを具備した密閉型電池の安全弁装置であって、前記弾性弁体よりも高い硬度を有し、且つ前記密閉型電池の防曝管理温度で溶融する樹脂製押圧体10を前記弁室の上部に所定の空間を形成して前記弾性弁体と前記皿状端子キャップとの間に設けたことを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】排気孔1を備えた封口板2と、溶接等により上記封口板に装着されて該封口板との間に弁室を形成した皿状端子キャップ3と、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔を閉塞する弾性弁体4とを具備した密閉型電池の安全弁装置であって、前記弾性弁体よりも高い硬度を有し、且つ前記密閉型電池の防曝管理温度で溶融する樹脂製押圧体10を前記弁室の上部に所定の空間を形成して前記弾性弁体と前記皿状端子キャップとの間に設けたことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、防曝安全性に優れた密閉型電池の安全弁装置およびこの安全弁装置を備えた密閉型電池に関する。
ニッケルカドミウム(Ni-Cd)電池やニッケル水素(Ni-MH)電池等の二次電池、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池は、負極をなす有底筒状のケースの内部に電池本体を内蔵し、その開口端部を封口体と正極をなす皿状端子キャップとで密閉した密閉型構造をなす。しかし二次電池においては過充電により、また一次電池においては過放電や誤充電により電池内部にガスが異常発生することがあり、ガスの異常発生に伴って電池内部の圧力が異常に上昇して封口体を吹き飛ばす等の破裂事故を招く虞がある。そこでこの種の密閉型電池には、通常、ガスの発生による圧力上昇に応動して上記ガスを排出するための防爆用安全弁が組み込まれる。
ちなみに防爆用安全弁装置は、基本的には図4に示すように排気孔1を備えた封口板2と、この封口板2に溶接、或いはかしめにより装着されて該封口板2との間に弁室を形成した皿状端子キャップ3と、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔1を閉塞する弾性弁体4とを備えて構成される。尚、図中5は負極をなす有底筒状のケースであり、6は上記防爆用安全弁装置とケース5の開孔端部との間に介在させて設けられるガスケットである。
また前記弾性弁体4の上面と前記皿状端子キャップ3の内面との間に、軟化温度が100〜150℃の熱軟化性樹脂平板を介在させ、高温時に弾性弁体4の弾性率が低下した場合であっても上記熱軟化性樹脂平板の軟化を利用して弁作動圧を低下させ、これによって上述した構造の弁機構を確実に作動させることも提唱されている(例えば特許文献1を参照)。
特開平6−325742号公報
しかしながら上述した構造の安全弁装置においては、軟化した熱軟化性樹脂平板が弾性弁体4により押さえ込まれて流れ出し、皿状端子キャップ3に設けられた排気孔(図示せず)を塞いだり、弾性弁体4と皿状端子キャップ3との隙間に侵入して該弾性弁体4の変位を妨げたり、更には封口板2の排気孔1に流れ込む虞がある。即ち、軟化した樹脂によって弁機構が目詰まりを起こし、電池内部に発生した高圧のガスを排気することができなくなる虞がある。
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、密閉型電池が高温に晒されたときであっても弁機構を確実に作動させることのできる簡易な構造の、防曝安全性に優れた安全弁装置およびこの安全弁装置を備えた密閉型電池を提供することにある。
上述した目的を達成するべく本発明に係る密閉型電池の安全弁装置は、排気孔を備えた封口板と、溶接等により上記封口板に装着されて該封口板との間に弁室を形成した皿状端子キャップと、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔を閉塞する弾性弁体とを具備したものであって、
特に前記弾性弁体よりも高い硬度を有し、且つ前記密閉型電池の防曝管理温度で溶融する樹脂製押圧体を前記弁室の上部に所定の空間を形成して前記弾性弁体と前記皿状端子キャップとの間に設けたことを特徴としている。好ましくは請求項2に記載するように前記樹脂製押圧体は、前記皿状端子キャップの内径よりも小径で、溶融温度が90〜150℃の合成樹脂製の平板体からなる。
特に前記弾性弁体よりも高い硬度を有し、且つ前記密閉型電池の防曝管理温度で溶融する樹脂製押圧体を前記弁室の上部に所定の空間を形成して前記弾性弁体と前記皿状端子キャップとの間に設けたことを特徴としている。好ましくは請求項2に記載するように前記樹脂製押圧体は、前記皿状端子キャップの内径よりも小径で、溶融温度が90〜150℃の合成樹脂製の平板体からなる。
また本発明に係る密閉型電池は、負極をなす有底筒状のケースの開口端部に、上記構造の安全弁装置を正極として装着したことを特徴としている。
上記構造の安全弁装置によれば、弾性弁体と前記皿状端子キャップとの間に設けた樹脂製押圧体が、弾性弁体よりも高い硬度を有し、且つ密閉型電池の防曝管理温度で溶融する樹脂材からなり、しかも弁室の上部に所定の空間を形成して設けられている。これ故、密閉型電池が高温に晒されて溶融すると、その溶融した樹脂製押圧体(樹脂材)は上記弁室の上部に形成された空間に拡がるので、該樹脂製押圧体による前記弾性弁体の押圧力が失われる。すると弾性弁体は、圧縮状態から開放されて自らの弾性復元力により伸張して封口板に設けられた排気孔の閉塞を解除し、開放系を形成することになる。この結果、溶融した樹脂製押圧体(樹脂材)により妨げられることなく弁機構が確実に作動し、電池内部に発生した高圧のガスを排出することになる。
特に樹脂製押圧体が弾性弁体よりも高い硬度を有しているので、常温時には弾性弁体を圧縮状態に保ち、高温に晒されて溶融したときには上記弾性弁体の圧縮状態を開放するので温度変化に伴う前記弾性弁体の弾性率の変化に拘わることなく該弾性弁体による弁作用が確実に作用する。また溶融した樹脂製押圧体(樹脂材)が予め弁室の上部に形成された空間に拡がるだけなので、溶融した樹脂材によって弾性弁体の変位が妨げられたり、或いは排気孔に流れ込んで目詰まりを生じさせる等の不具合を生じることもない。故に、弁機構の確実な動作を保証し、その防曝安全性を高めることが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る密閉型電池の安全弁装置について説明する。尚、図4に示した従来装置と同一部分には同一の参照符号を付して説明する。
この実施形態に係る密閉型電池の安全弁装置は、基本的には従来構造と同様に、排気孔1を備えた封口板2と、この封口板2に溶接、或いはかしめにより装着されて該封口板2との間に弁室を形成した皿状端子キャップ3と、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔1を閉塞する弾性弁体4とを備えて構成される。封口板2は、金属製平板をプレス加工してその中心部に排気孔1を打ち抜き形成したものからなる。また皿状端子キャップ3は金属製平板をプレス加工して皿状の凹部を形成し、その周縁部に外側に突出するフランジ(鍔部)を形成したキャップ(ハット)形状のものからなる。この皿状端子キャップ3は前記封口板2の上面と皿状端子キャップ3の内側面との間に弁室をなす空間を形成して該封口板2上に同軸に重ね合わせられ、この状態でその周縁部(鍔部)をスポット溶接する等して前記封口板2に接合一体化される。尚、前記皿状端子キャップ3と封口板2との間に形成された弁室に装備される前記弾性弁体4は、例えば合成ゴムを圧縮形成したものからなる。
この実施形態に係る密閉型電池の安全弁装置は、基本的には従来構造と同様に、排気孔1を備えた封口板2と、この封口板2に溶接、或いはかしめにより装着されて該封口板2との間に弁室を形成した皿状端子キャップ3と、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔1を閉塞する弾性弁体4とを備えて構成される。封口板2は、金属製平板をプレス加工してその中心部に排気孔1を打ち抜き形成したものからなる。また皿状端子キャップ3は金属製平板をプレス加工して皿状の凹部を形成し、その周縁部に外側に突出するフランジ(鍔部)を形成したキャップ(ハット)形状のものからなる。この皿状端子キャップ3は前記封口板2の上面と皿状端子キャップ3の内側面との間に弁室をなす空間を形成して該封口板2上に同軸に重ね合わせられ、この状態でその周縁部(鍔部)をスポット溶接する等して前記封口板2に接合一体化される。尚、前記皿状端子キャップ3と封口板2との間に形成された弁室に装備される前記弾性弁体4は、例えば合成ゴムを圧縮形成したものからなる。
さて基本的には上述した如く構成される密閉型電池の安全弁装置においてこの発明が特徴とするところは、上述した弁室に装備される弾性弁体4の上面と前記皿状端子キャップ3の内側面との間に、該弁室の上部に所定の空間を形成した状態で前記樹脂製押圧体10を介挿した点にある。この樹脂製押圧体10は、常温にて前記弾性弁体4よりも高い硬度を有し、しかも密閉型電池の防曝安全温度として設定される90〜150℃で溶融する合成樹脂材、例えばPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)からなる。尚、上記防曝安全温度は、電池本体を構成する正極材と負極材とを絶縁分離するセパレータ(絶縁材)が溶融し、これによって上記正極材と負極材とがショート(短絡)する虞のある温度(150〜160℃)よりも低い温度として定められる。
また上記樹脂製押圧体10は、前記皿状端子キャップ3の内径よりも小さい径で、常温で前記弾性弁体4を十分に押圧して圧縮させ得る厚みの平板体として形成される。このように樹脂製押圧体10を皿状端子キャップ3の内径よりも小さい径としておくことで、該樹脂製押圧体10を皿状端子キャップ3に挿入した際、その周辺部に空間が形成される。そしてこの空間は樹脂製押圧体10が溶融したとき、溶融した樹脂材(樹脂製押圧体10)を押し広げながら溜める、いわゆる液溜め部として機能することになる。
このような樹脂製押圧体10を備えた安全弁装置の組み立ては、先ず皿状端子キャップ3の内側に上記樹脂製押圧体10を挿入し、この樹脂製押圧体10の上に弾性弁体4を乗せる。次いでこの弾性弁体4上に排気孔1が位置付けられるようにして前記封口板2を乗せ、封口板2を押さえつけることで前記弾性弁体4を高さ方向に圧縮する。そしてこの圧縮された弾性弁体4にて前記排気孔1が密閉された状態を維持しながら上記封口板2に皿状端子キャップ3をスポット溶接することによって安全弁装置が完成される。尚、スポット溶接に代えて、かしめにより封口板2と皿状端子キャップ3とを接合一体化しても良いことは言うまでもない。
このような構造の安全弁装置によれば、通常時には前記弾性弁体4は樹脂製押圧体10を介して封口板2に押し付けられ、圧縮された状態で排気孔1を閉塞する。この状態において電池内部のガス圧が高まり、上記弾性弁体4の封口板2への押し付け力を上回る力が生じた場合には上記ガス圧によって弾性弁体4が封口板2の上面から持ち上げられ、弾性弁体4と封口板2との間に生じた隙間を介して電池内部のガスが外部に排気される。そしてガスの放出に伴って電池内部のガス圧が低下すると、再び前記弾性弁体4によって排気孔1が閉塞される。このようにして上記弾性弁体4による弁機能が閉塞系を形成して作用し、電池内部のガス圧力が一定レベル以下に抑えられる。
これに対して密閉型電池が高温に晒されてその温度が高くなると、図2に示すように前述した樹脂製押圧体10が溶融する。そして溶融した樹脂材(樹脂製押圧体10)は、それまで前記皿状端子キャップ3の内側の該樹脂製押圧体10の周囲に形成された空間内に拡がっていく。すると樹脂製押圧体10による前記弾性弁体4の押圧力が失われるので該弾性弁体4はその弾性復元力により元の形状に戻り、封口体2の排気孔1に対する圧接力が消滅する。この結果、弾性弁体4は排気孔1を閉塞する力を失うので弁機構が開放されることになる。
尚、高温によって弾性弁体4の弾性率が低下し、該弾性弁体4が若干硬化した状態となっても前記樹脂製押圧体10の溶融に伴う該樹脂製押圧体10の横方向に拡がりによって弾性弁体4を押圧する力が失われるので、弾性弁体4によって排気孔1を閉塞する機能が失われることになる。この結果、弁機構に開放系が形成されて電池内部に生じたガス圧が排気孔1を介して逃がされることになる。従って前述した如く前記弾性弁体4の上面と前記皿状端子キャップ3の内側面との間に介挿した樹脂製押圧体10により、高温時における弁機構の確実な動作が保証されることになる。
ここで上記樹脂製押圧体10の大きさについて考察すると、例えば皿状端子キャップ3が形成する弁室の高さが2.35mmであり、排気孔1を閉塞する合成ゴム製の弾性弁体4の厚みが2.15mmであって、この弾性弁体4を1.60mmの厚みまで圧縮して弁室に装着する場合には、前記樹脂製押圧体10の厚みは0.75mmであれば良い。そして樹脂製押圧体10の溶融したときに前記弾性弁体4を弾性復帰し、この弾性弁体4が開放系(作動圧が0Paで弁が開放した状態)を形成し得るようにするには、溶融した樹脂材(樹脂製押圧体10)の厚みが0.20mmとなるようにしておけば良い。従って皿状端子キャップ3の内部断面積と上記厚み0.20mmとにより定まる容積に相当する体積を前記樹脂製押圧体10が有するように前述した樹脂製押圧体10の厚み0.75mmに応じて、その径を定めておけば良い。実際的には樹脂製押圧体10の径については、皿状端子キャップ3の内径よりも0.2mm程度小さく設定しておけば十分である。
次表は本発明に係る樹脂製押圧体10を備えた安全弁装置を組み付けた密閉型ニッケル水素電池と、図4に示した従来構造の安全弁装置を組み付けた密閉型ニッケル水素電池とを用いて弁の作動圧を調べた検査結果を対比して示したものである。尚、この検査は、常温時における密閉型ニッケル水素電池の初期作動圧と、この密閉型ニッケル水素電池を140℃の恒温槽中に30分間放置したときの作動圧とを調べたものである。
この実験結果から樹脂製押圧体10を設けた本発明の安全弁装置によれば、密閉型ニッケル水素電池が異常高温に晒された場合であっても、その作動圧が0.0MPaとなって破裂等の事故を効果的に避け得ることが確認できた。また密閉型ニッケル水素電池が火中に投入される異常時であっても、その安全性が従来品よりも保証されていることが確認できた。そして本発明によれば、或る一定温度以上において安全弁装置の作動圧を0.0MPaとし、弁機構そのものを開放系とすることで、密閉型電池を誤って使用した(取り扱った)場合においても、破裂等の事故を未然に防ぎ、その防曝安全性を十分に確保することができることが確認できた。
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば樹脂製押圧体10については、必ずしも皿状端子キャップ3の内径よりも小径な円板状である必要はなく、図3(a)に示すように皿状端子キャップ3の内径と同程度の円板体に複数の穴10aを穿いたものであっても良い。或いは図3(b)に示すように放射状に延びる複数のアーム部10bを備えたものであっても良い。要は通常の温度範囲において弾性弁体4よりも硬度が高く該弾性弁体4を十分に圧縮し得る形状を有し、高温に晒されて溶融したときにはその溶融物が横方向に拡がり得る空間を形成した形状のものであれば良い。
また弾性弁体4については前述した合成ゴムに限らず、例えば排気孔1に嵌合する弁体と、この弁体に装着したコイルばねとを備えたものであっても良い。この場合、前記樹脂製押圧体10にて上記コイルばねを押圧して圧縮するように弁機構を構成すれば良い。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
1 排気孔
2 封口板
3 皿状端子キャップ(正極)
4 弾性弁体
5 ケース(負極)
6 ガスケット
10 樹脂製押圧体
2 封口板
3 皿状端子キャップ(正極)
4 弾性弁体
5 ケース(負極)
6 ガスケット
10 樹脂製押圧体
Claims (3)
- 排気孔を備えた封口板と、この封口板に装着されて該封口板との間に弁室を形成した皿状端子キャップと、圧縮状態で上記弁室に設けられて前記排気孔を閉塞する弾性弁体とを具備した密閉型電池の安全弁装置であって、
前記弾性弁体よりも高い硬度を有し、且つ前記密閉型電池の防曝管理温度で溶融する樹脂製押圧体を前記弁室の上部に所定の空間を形成して前記弾性弁体と前記皿状端子キャップとの間に設けたことを特徴とする安全弁装置。 - 前記樹脂製押圧体は、前記皿状端子キャップの内径よりも小径で、溶融温度が90〜150℃の合成樹脂製の平板体からなる請求項1に記載の安全弁装置。
- 負極をなす有底筒状のケースの開口端部に、請求項1または2に記載の安全弁装置を正極として装着した密閉型電池。
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