JP2006089655A - 特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物、電荷輸送材料、及び電子写真感光体 - Google Patents

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Abstract

【課題】それ自身、成膜加工性に優れ、また電荷輸送材料として極めて高い電荷輸送能を有し、色素増感太陽電池などの光導電性材料に用いても優れた性能を発揮する他、電子写真感光体の材料として用いた場合、帯電電位が高く高感度で、繰返し使用しても諸特性が変化せず、安定した性能を発揮できる、優れた高分子化合物の提供。
【解決手段】特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、色素増感太陽電池(固体型)等の電子デバイスや、電子写真方式の感光体に用いられる有機光導電性材料として有用な新規の高分子化合物、及びこれを用いた電荷輸送材料、並びにこれを利用した電子写真感光体に関し、詳しくは、従来知られていなかった全く新しい、クラウンエーテル化合物を、構成ユニットとして用いて合成された、優れた物理物性と、高い電荷輸送能を有する新規の高分子化合物、及びこの高分子化合物を用いた電荷輸送材料、並びにこの化合物を利用した、高感度で高耐久性の電子写真感光体に関するものである。
低分子のトリフェニルアミン化合物、エナミン化合物、あるいはベンジジン化合物等の電荷輸送能を有する含窒素化合物は、以前より電子材料の分野では、代表的な電荷輸送材料として知られており、また広く用いられてきた。
特に近年では、これまで幅広く使われてきた、複写機やパソコン等の端末プリンターの感光体として主流を占めている有機電子写真感光体のみならず、色素増感太陽電池(固体型)や、有機EL素子等の電子デバイスの分野においても、これらの電荷輸送能を有する含窒素化合物は、電荷輸送材料として活発に利用されるようになってきた。
これら低分子の電荷輸送能を有する含窒素化合物は、電荷輸送材料として固体型太陽電池等の電子デバイスに用いられる際には、主に蒸着により膜形成がなされ、また有機電子写真感光体の構成材料として用いられる場合には、耐摩耗性や寸法安定性、さらには耐久性の点から、ポリカーボネート樹脂と混合して有機溶剤に溶かし、溶剤塗工して膜形成を行う方法がとられている。
しかしながら、これら低分子の電荷輸送能を有する含窒素化合物は、電子デバイス等に用いられる場合、溶剤塗工では結晶化しやすい等の物性的な問題を有しており、溶剤塗工による膜形成が難しいため、大面積のデバイスの作製には向いていないという欠点を有していた。
これらの欠点を改良するために、これらの電荷輸送能を有する含窒素化合物のユニットを高分子中に組み込んだ、いわゆる高分子電荷輸送材料が種々考案されており、トリフェニルアミン構造を側鎖に有するもの(特許文献1)や、その電子写真感光体への応用(特許文献2)、電子デバイス向けにベンジジン構造をポリエステル樹脂の主鎖に組み込んだもの(特許文献3)、あるいは主に電子写真感光体向けに、トリフェニルアミン〜スチルベン構造をポリカーボネート樹脂の主鎖あるいは側鎖に組み込んでバインダーレスの電荷輸送層を形成しうるタイプの高分子化合物が報告されている(特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。これらの材料の中には、電子写真感光体用として用いた場合に、機械的耐久性に優れた特性を有するものもあるが、重要なポイントとなる電気特性、特に電荷輸送性に関して従来の低分子タイプの材料をしのぐものはこれまで見出されていない。
また、これらの高分子電荷輸送材料は、おおむね非水溶剤への溶解度は比較的高いものの、含水系の溶剤に対しては、殆ど溶解性を示さない。このため電子デバイス系への応用を考えた場合、塗工による多層構造のデバイスを作製する際には、他の有機溶剤塗工層との溶融による混合が起こってしまい、塗工欠陥を発生させる要因となりやすい点も、この種の材料の欠点としてあげることができる。
特開平7−258399号公報 特開平7−325409号公報 特開平9−62019号公報 特開平9−87376号公報 特開平9−151248号公報 特開平9−157378号公報 特開2001−72756号公報
本発明は、これらの高分子電荷輸送材料が、溶剤塗工に適していることに着目し、これらの、含水系溶剤あるいはアルコール系溶剤に対する溶解性を改良して、溶剤塗工による多層構造の膜形成を可能とすること、および、これらの材料の電荷輸送能をより高めた、新規な高性能の高分子電荷輸送材料を得ることを目的としている。
本発明では、このタイプの高分子化合物の、含水系溶剤あるいはアルコール系溶剤に対する溶解性を改良するため、単量体ユニットである、電荷輸送能を有する含窒素化合物のユニットを、含水系溶剤あるいはアルコール系溶剤に対する溶解性に優れたサイクリックポリエーテル、通称「クラウンエーテル」のユニットと共重合させることにより、含水系溶剤あるいはアルコール系溶剤に対する溶解性に優れ、なおかつ、電荷輸送性にも優れた高分子電荷輸送材料を得るべく、鋭意合成検討を行った。
その結果、従来知られていなかった、新規のクラウンエーテルビスフォスフォネート化合物と、電荷輸送能を有する含窒素化合物のビスアルデヒド化合物を原料として用いて合成された、特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物が、極めて高い電荷輸送能と、含水系溶剤あるいはアルコール系溶剤に対する優れた溶解性を有することを見出し、本発明に至った。本発明の、特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物としては、以下の〔1〕〜〔4〕で示される特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物が挙げられる。
〔1〕下記一般式(1)で示される構成単位を含有する高分子化合物。
Figure 2006089655
一般式(1)において、Aは2価の電荷輸送性基を示し、m及びnは、それぞれ独立に0〜5の整数を示す。
〔2〕一般式(1)におけるAが、下記一般式(2)で示される高分子化合物。
Figure 2006089655
一般式(2)において、R1は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子を示す。
〔3〕一般式(1)におけるAが、下記一般式(3)で示される高分子化合物。
Figure 2006089655
一般式(3)において、R2及びR3は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよい複素環基を示す。
〔4〕一般式(1)におけるAが、下記一般式(4)で示される高分子化合物。
Figure 2006089655
一般式(4)において、R4及びR5は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子を示す。
〔5〕〔1〕、〔2〕、〔3〕、または〔4〕において、重量平均分子量が1,000〜1,000,000である高分子化合物。
また、本発明に用いられる、従来知られていなかった、クラウンエーテル誘導体としては、以下の〔5〕で示されるクラウンエーテル誘導体が挙げられる。
〔6〕下記一般式(5)で示されるクラウンエーテル誘導体。
Figure 2006089655
一般式(5)におけるR6は、低級アルキル基を示し、m及びnは、〔1〕のm及びnと同じである。
また、以下の〔7〕に示す高分子化合物も、本発明の化合物として挙げられる。
〔7〕〔1〕、〔2〕、〔3〕、または〔4〕において、〔5〕の一般式(5)で示される特定のクラウンエーテル誘導体を用いて合成されることを特徴とする高分子化合物。
また、本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物を用いることにより得られる、優れた電荷輸送材料としては、以下の〔8〕の電荷輸送材料が挙げられる。
〔8〕〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、または〔5〕のいずれかに記載の高分子化合物を含む電荷輸送材料。
また、本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物を用いることにより得られる、優れた電子写真感光体としては、以下の〔9〕の電子写真感光体が挙げられる。
〔9〕導電性支持体上に、〔8〕に記載の高分子化合物を含む感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
ここで、一般式(1)におけるAの具体例としては、上記一般式の(2)〜(4)または下記一般式(6)〜(8)に示す2価の電荷輸送性基を挙げることが出来る。
Figure 2006089655
Figure 2006089655
Figure 2006089655
一般式(6)において、R7及びR8は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または複素環基を示す。
一般式(7)において、R9及びR10は水素原子または置換基を有してもよいアルキル基
を示し、Zは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアルケニル基を示す。
一般式(8)において、pは、1〜4の整数を示す。
〔1〕の一般式(1)におけるm及びnは、それぞれ独立に0〜5の整数を示す。
一般式(2)におけるR1の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−クロロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、1−メチルプロピルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−プロピルオキシエトキシ基、4−エトキシブチルオキシ基、2−メトキシ−3−プロピルヘキシルオキシ基、2−クロロ−3−エトキシヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基などのアルコキシ基、またはフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
一般式(3)におけるR2及びR3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−クロロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などのアルキル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、3−フロロベンジル基、2−(4−クロロフェニル)エチル基などのアラルキル基、またはフェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フロロフェニル基、3−ジエチルアミノフェニル基、1−ナフチル基、1−ピレニル基などのアリール基、または2−ピリジル基、2−ピリジル基、2−チエニル基、3−フリル基、2−ピロリル基、2−インドリル基、2−キノリル基、2−カルバゾリル基などの複素環基を挙げることができる。
一般式(4)におけるR4及びR5の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−クロロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、1−メチルプロピルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−プロピルオキシエトキシ基、4−エトキシブチルオキシ基、2−メトキシ−3−プロピルヘキシルオキシ基、2−クロロ−3−エトキシヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基などのアルコキシ基、またはフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。
一般式(5)におけるR6の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基を挙げることができる。また、m及びnは、一般式(1)のm及びnと同じである。
一般式(6)におけるR7及びR8の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−クロロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などのアルキル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、3−フロロベンジル基、2−(4−クロロフェニル)エチル基などのアラルキル基、またはフェニル基、4−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フロロフェニル基、3−ジエチルアミノフェニル基、1−ナフチル基、1−ピレニル基などのアリール基、または2−ピリジル基、2−ピリジル基、2−チエニル基、3−フリル基、2−ピロリル基、2−インドリル基、2−キノリル基、2−カルバゾリル基などの複素環基を挙げることができる。
一般式(7)におけるR9及びR10の具体例としては、水素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−クロロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などのアルキル基を示し、またZの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−オクタデシル基、2−メトキシエチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−クロロヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基などのアルキル基、またはビニル基、プロペニル基、アリル基、メタリル基、クロチル基、2−ブテニル基、3−メトキシクロチル基、1−シクロヘキセニル基、4−メチル−2−シクロヘキセニル基などのアルケニル基を挙げることができる。
また、一般式(8)において、pは、1〜4の整数を示す。
一般式(1)で示される、本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物の、構成単位の好ましい具体例としては、以下に示す一般式(9)の構成単位で示される、表1〜表18の具体例(U−101)〜(U−639)に示す構成単位を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
Figure 2006089655
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本発明の、特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物を用いることにより、含水系溶剤あるいはアルコール系溶剤に対する溶解性に優れ、溶剤塗工性が改良されるとともに、電荷輸送能が飛躍的に向上した、実用的にも優れた特性を有する電荷輸送材料が得られる。また、この電荷輸送材料を電子写真感光体の電荷輸送物質として用いることにより、極めて高感度の、優れた電子写真感光体を得ることが出来る。
以下に本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物について詳細に説明する。本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物は、従来よりWittig反応として知られている、下記の合成法により容易に合成出来る。
すなわち、前記一般式(5)で示されるクラウンエーテル誘導体のビスフォスフォネートと、(5)に対し1.0モル当量の、下記一般式(10)で示される電荷輸送能を有する含窒素化合物のビスアルデヒド化合物を、N,N−ジメチルホルムアミドやN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、あるいはテトラヒドロフランやジオキソラン等の環状エーテル系溶媒等を用い、また場合によっては溶解度を上げるために補助溶剤としてトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等をこれに併用して、(5)に対し2.0モル当量〜3.0モル当量のカリウムt−ブトキシドやナトリウムメトキシド等の塩基を加え、反応の進みやすさに応じて、氷冷下、室温下、あるいは50〜100℃加温下、0.5〜8時間程度反応させることにより、容易に合成出来る。
Figure 2006089655
上記一般式(10)におけるAは、前記〔1〕における一般式(1)のAと同じである。
上記反応の合成原料となる一般式(10)のビスアルデヒドは、下記一般式(11)で示される電荷輸送能を有する含窒素化合物が有する、窒素原子についた2個のフェニル基の、窒素原子に対しパラの位置にある水素を、ヴィルスマイヤー反応等を用いてビスフォルミル化することにより、容易に得られる。
Figure 2006089655
上記一般式(11)におけるAは、前記〔1〕における一般式(1)のAと同じである。
また、一方の合成原料である一般式(5)のクラウンエーテル誘導体のビスホスホネート化合物については、相当する下記一般式(12)のビスハライドを、下記一般式(13)の亜リン酸トリアルキルとともに加熱して反応させ、蒸留精製または再結晶する事により容易に得られる。
Figure 2006089655
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上記一般式(12)におけるmおよびnは、前記〔1〕における一般式(1)のmおよびnと同じであり、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。また上記一般式(13)におけるR6は、先の一般式(5)におけるR6と同じである。
本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物は、前記一般式(1)で示される繰り返し単位からなる2成分重合体であり、分子量は、ポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000、好ましくは5000〜100000である。
以上のようにして得られる、本発明の特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物は、電荷輸送材料として非常に優れた特性を有し、センサー材料や有機EL素子等の電子デバイスや、また特に電子写真感光体の電荷輸送材料として好適に用いることが出来る。
次に本発明の電子写真感光体について説明する。本発明の電子写真感光体は、上記の請求項1〜5記載の、特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物を含む感光層を有するものである。
これらを含有する感光層を含む電子写真感光体の形態は、いずれのものでも用いることができる。例えば、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質、及びフィルム形成性結着剤樹脂からなる感光層を設けた、単層型の感光体や、導電性支持体上に、電荷発生物質と結着剤樹脂からなる電荷発生層と、電荷輸送物質と結着剤樹脂からなる電荷輸送層をこの順に設けた、機能分離型と呼ばれる積層型の感光体が知られているが、本発明の化合物はいずれの構成においても、これらの電荷輸送物質として極めて有用である。
本発明の化合物を用いて感光体を作製する支持体としては、金属製ドラム、金属板、導電性加工を施した紙やプラスチックフィルムのシート状、ドラム状あるいはベルト状の支持体などが使用される。
また、上記構成における電荷発生物質には無機系電荷発生物質と有機系電荷発生物質があり、前者の例としては例えばセレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、硫化カドミウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコンなどが挙げられる。後者の例としては、例えばメチルバイオレット、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレットなどのトリフェニルメタン系染料、メチレンブルーなどのチアジン染料、キニザリンなどのキノン染料、シアニン染料、アクリジン染料、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクエアリウム色素、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ペリノン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、等があるが、特に良く用いられるのは、金属含有あるいは無金属のフタロシアニン系顔料、またはビスアゾ顔料やトリスアゾ顔料等の、アゾ系顔料である。
フタロシアニン系顔料の例としては、無金属フタロシアニンは、特公昭49−4338号公報、特開昭58−182639号公報、或いはJ.Phys.Chem.72,3230(1968)に記載されているものを、チタニルオキシフタロシアニンは、特開昭61−217050号公報、特開昭62−67094号公報、特開昭63−365号公報、特開昭63−198067号公報、特開昭64−17066号公報、或いは特開平1−189200号公報に記載されているものを、銅フタロシアニンは、特公昭52−1667号公報、或いは特開昭51−108847号公報に記載されているものを、クロロアルミニウムフタロシアニンは、特開昭58−158649号公報に記載されているものを、クロロインジウムフタロシアニンは特開平7−13375号公報に記載されているものを、バナジルオキシフタロシアニンは、特開昭63−18361号公報、特開平1−204968号公報、特開平3−269063号公報、或いは特開平7−247442号公報に記載されているものを、ジフェノキシゲルマニウムフタロシアニンは、特開平4−360150号公報に記載されているものを、クロロガリウムフタロシアニンは、特開平5−194523号公報、或いは特開平7−102183号公報に記載されているものを、ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、特開平5−263007号公報、或いは特開平7−53892号公報に記載されているものを、それぞれ挙げることができる。
アゾ系顔料の例としては、特開昭47−37543号公報に記載のベンジジン型ビスアゾ顔料、特開昭56−116039号公報に記載のベンゾオキサゾール型ビスアゾ顔料、特開昭57−176055号公報に記載のオキサジアゾール型ビスアゾ顔料、特公昭60−45664号公報に記載のフルオレノン型ビスアゾ顔料、或いは特開平1−200267号公報や特開平1−202757号公報に記載のピラゾール型ビスアゾ顔料、などのようなビスアゾ顔料、または特開昭57−195767号公報に記載のトリフェニルアミン型トリスアゾ顔料のようなトリスアゾ顔料を挙げることができる。
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1)
化学式(U−173)を構成単位とする例示化合物の合成
1a)4−ヘキシルオキシアニリン−N,N−ビス(4−ベンズアルデヒド)(下記(14))の合成
N,N−ジメチルホルムアミド31mlを氷冷下撹拌している中にオキシ塩化リン24.7mlを40分かけて滴下し、更に氷冷下1時間撹拌してヴィルスマイヤー試薬を調製した。このヴィルスマイヤー試薬を氷冷下撹拌している中に、下記(15)の4−ヘキシルオキシトリフェニルアミン〔1−ブロム−4−ヘキシルオキシベンゼンとジフェニルアミンから、ウルマン反応により合成〕16.88gを加え、攪拌しながら80℃で70時間加熱した。反応液を500mlの水にあけ、55℃で1時間加熱、撹拌したのち、300mlの酢酸エチルで抽出、飽和食塩水で5回洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧で溶剤を留去してオイル状の粗生成物16.30gを得た。これをシリカゲルでクロマト処理して精製し、黄色オイル状の(14)12.86gを得た。収率は65.6%であった。
Figure 2006089655
Figure 2006089655
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、9.88(s,2H)、7.76(dd,4H)、7.17(dd,4H)、7.12(d,2H)、6.92(d,2H)、3.97(t,2H)、1.81(t,2H)、1.48(m,2H)、1.4〜1.3(m,4H)、0.92(t,3H)のピークを示している事から、その構造が確認された。
1b)クラウンエーテルビスホスホネート化合物(下記(16))の合成
4,4’−ジフォルミル−ジベンゾ−18−クラウン−6(Bull. Chem. Soc. Jpn. 53巻, 1473頁, 1980年、に従い合成)を水素化硼素ナトリウムでビスアルコール体に還元し、さらに塩化チオニルで塩素化して得られた4,4’−ジクロロメチル−ジベンゾ−18クラウン−6(下記(17))4.58g、及び亜リン酸トリエチル19.38gを撹拌しながら150℃で40分加熱したのち、さらに165℃で5時間加熱、環流する。反応後、減圧下で過剰の亜リン酸トリエチルを除去し、得られた固体をジエチルエーテルで分散洗浄し、さらにクロロホルムに溶かし、濾過して不溶物を除き、濾液を濃縮して、淡橙黄色オイル状の(16)5.61gを得た。収率は84.8%であった。
Figure 2006089655
Figure 2006089655
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、6.9〜6.7(m,6H)、4.14(t,8H)、4.00(t,8H)、4.1〜3.9(m,8H)、3.07(d,4H)、1.23(t,10H)のピークを示している事から、その構造が確認された。
1c)化学式(U−173)を構成単位とする例示化合物の合成
上記で得られた(14)1.35g及び(16)2.21gを溶かしたN,N−ジメチルホルムアミド110ml溶液に、水浴で冷却下撹拌しながら、カリウムt−ブトキシド1.03gを3分間かけて加えた。室温で一晩撹拌を続けた後、反応液を水300mlに注ぎ込んで反応を停止し、析出結晶を吸引濾過で濾取し、水で分散洗浄したのち、さらにメタノールで分散洗浄する。減圧下、40℃で加温、乾燥して、目的とする例示化合物1.43gを得た。収率は56.6%であった。
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、7.2〜6.7(m,22H)、4.16(m,4H)、4.05(m,4H)、3.97(m,2H)、1.45(m,2H)、1.34(m,4H)、0.91(m,3H)のピークを示している事から、その構造が確認された。
得られたこの特定のクラウンエーテルを構成単位に含む高分子化合物について、分子量をゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は以下の通りであった。
化学式(U−173)を構成単位とする例示化合物
数平均分子量:8500
重量平均分子量:15000
同様にして、以下の表19の(実施例2〜20)に示すような特定のクラウンエーテルを構成単位に含む高分子化合物を合成した。
Figure 2006089655
以上に示した本発明の化合物は、いずれも1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどのエーテル系溶剤のほか、メタノール、エタノール、ヘキシルアルコールなどのアルコール系溶剤にも高い溶解性を示し、さらに含水アルコール、含水THF等の含水系の有機溶剤にもある程度の溶解性を示した。すなわち、これら本発明の特定のクラウンエーテルを構成単位に含む高分子化合物は、アルコールや含水系の溶剤塗工による多層構造の膜形成が可能な、実用性のある新規な電荷輸送材料であることが理解出来る。
(実施例21)
電荷発生物質として、下記構造式のビスアゾ顔料(P−1)1重量部及びポリエステル樹脂(東洋紡績製バイロン200)1重量部をテトラヒドロフラン100重量部と混合し、ペイントコンディショナー装置でガラスビーズと共に2時間分散した。こうして得た分散液を、アプリケーターにてアルミ蒸着ポリエステル上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送物質として、本発明の化合物(U−173)を、テトラヒドロフランを溶媒として10重量%の溶液を作り、上記の電荷発生層の上にアプリケーターで塗布して膜厚約18μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 2006089655
この様にして作製した積層型感光体について、静電記録試験装置(川口電機製EPA−8200)を用いて電子写真特性の評価を行った。
測定条件:印加電圧−6kV、スタティックNo. 3(ターンテーブルの回転スピードモード:10m/min )。その結果、帯電電位(V0)が−710V、半減露光量(E1/2)が0.74ルックス・秒と高感度の値を示した。
更に同装置を用いて、帯電−除電(除電光:白色光で400ルックス×1秒照射)を1サイクルとする繰返し使用に対する特性評価を行った。5000回での繰返しによる帯電電位の変化を求めたところ、1回目の帯電電位(V0)−710Vに対し、5000回目の帯電電位(V0)は−700Vであり、繰返しによる電位の低下がほとんどなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)0.74ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.74ルックス・秒と変化がなく優れた特性を示した。
(実施例22〜48)
実施例1のビスアゾ顔料(P−1)及び、本発明の化学式(U−173)を構成単位とする例示化合物の代わりに、それぞれ下記構造式(P−1)〜(P−5)のビスアゾ顔料、及び表20に示す本発明の化合物を用いた他は、実施例21と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表20に示す。
Figure 2006089655
Figure 2006089655
Figure 2006089655
Figure 2006089655
Figure 2006089655
(実施例49)
電荷発生物質として、ビスアゾ顔料(P−1)の代わりにCuKα1.541ÅのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が、9.5°、9.7°、11.7°、15.0°、23.5°、24.1°、27.3°に主要なピークを示すX線回折スペクトルを有するチタニルオキシフタロシアニン(Y型チタニルオキシフタロシアニン)を用いた他は、実施例21と同様にして感光体を作製し、その特性を実施例21と同様に評価した。結果は、帯電電位(V0)が−520V、半減露光量(E1/2)が0.27ルックス・秒と高感度の値を示した。また、繰返し使用に対する特性評価でも、1回目の帯電電位(V0)−520Vに対し、5000回目の帯電電位(V0)は−510Vであり、繰返しによる電位の低下がほとんどなく安定した特性を示した。また、1回目の半減露光量(E1/2)0.27ルックス・秒に対して5000回目の半減露光量(E1/2)は0.27ルックス・秒と変化がなく優れた特性を示した。
(実施例50〜68)
実施例49の、本発明の化学式(U−173)を構成単位とする例示化合物の代わりに、表21に示す本発明の例示化合物を用いた他は、実施例49と同様にして感光体を作製してその特性を評価した。結果を表21に示す。
Figure 2006089655
本発明の、特定のクラウンエーテル誘導体を構成単位に含む高分子化合物は、前述のように、電荷輸送材料として、従来知られていたものと比較して、含水系溶剤やアルコール系溶剤に対しはるかに高い溶解性を示すため、溶剤塗工による多層構造の膜形成を可能としたのみならず、電荷輸送材料としても、極めて高い電荷輸送能を有することを見出した。本発明のこれらの材料は、電子写真感光体等の電荷輸送材料として、非常に有用である。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で示される構成単位を含有する高分子化合物。
    Figure 2006089655
    (一般式(1)において、Aは2価の電荷輸送性基を示し、m及びnは、それぞれ独立に0〜5の整数を示す。)
  2. 請求項1の一般式(1)におけるAが、下記一般式(2)で示される高分子化合物。
    Figure 2006089655
    (一般式(2)において、R1は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子を示す。)
  3. 請求項1の一般式(1)におけるAが、下記一般式(3)で示される高分子化合物。
    Figure 2006089655
    (一般式(3)において、R2及びR3は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよい複素環基を示す。)
  4. 請求項1の一般式(1)におけるAが、下記一般式(4)で示される高分子化合物。
    Figure 2006089655
    (一般式(4)において、R4及びR5は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、またはハロゲン原子を示す。)
  5. 請求項1、2、3、または4において、重量平均分子量が1,000〜1,000,000である高分子化合物。
  6. 下記一般式(5)で示されるクラウンエーテル誘導体。
    Figure 2006089655
    (一般式(5)におけるR6は、低級アルキル基を示し、m及びnは、請求項1のm及びnと同じ。)
  7. 請求項1、2、3、または4において、請求項6の一般式(5)で示されるクラウンエーテル誘導体を用いて合成されることを特徴とする高分子化合物。
  8. 請求項1、2、3、4、または5のいずれか1項に記載の高分子化合物を含む電荷輸送材料。
  9. 導電性支持体上に、請求項8に記載の高分子化合物を含む感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
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