JP2006087998A - 撹拌方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 槽内の全体に亘って十分な上下循環流動を形成することができて、好適な撹拌特性を発揮することができる撹拌機を提供する。
【解決手段】 本発明は、例えば300≦Reの範囲で撹拌を行う場合、撹拌槽1の直径に対する撹拌翼3の最外半径の比率(翼径比)を0.225〜0.325とし、且つ、上半分Uにおける撹拌翼3の実効面積と該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積の軸方向における積分値に対する下半分Dにおける撹拌翼3の実効面積と該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積の軸方向における積分値の比率(吐出流量比)が1.4以上とする。
【選択図】 図4

Description

本発明は、混合、溶解、晶析、反応等を目的とした撹拌処理用の撹拌機に関する。
従来、撹拌機の撹拌翼として、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼等の小型翼を多段で使用する例が多い。これらの撹拌翼を使用する撹拌機では、翼回転数を高くして翼から半径方向に吐出される液の流量を多くすることにより、液が槽壁に衝突して上方及び下方に回り、再び翼の所へ戻る循環流動を発生させ、槽内の混合を行う。
しかしながら、上記小型翼では、図10に示す如く、槽内の全体に亘って十分な上下循環流動が形成されにくく、上下間に複数の仕切ゾーンZ,…ができてしまう。そのため、撹拌特性が悪化し、ガス吸収反応では時間がかかり、固体分散においては不均一な状態となる等、製品品質の不均一や反応時間の増大を招いていた。
そこで、本発明は、槽内の全体に亘って十分な上下循環流動を形成することができて、好適な撹拌特性を発揮することができる撹拌機を提供することを課題とする。
本発明に係る撹拌機は、撹拌槽1内中心部に槽外から回転可能な撹拌軸2が配設され、該撹拌軸2に撹拌翼3が取り付けられてなる撹拌機において、該撹拌翼3が、(i)レイノルズ数Reが300≦Reの範囲で撹拌を行う場合、撹拌槽1の直径に対する撹拌翼3の最外半径の比率(翼径比)が0.225〜0.325であり、且つ、上半分Uにおける撹拌翼3の実効面積と該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積の軸方向における積分値に対する下半分Dにおける撹拌翼3の実効面積と該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積の軸方向における積分値の比率(吐出流量比)が1.4以上であり、(ii)レイノルズ数Reが30≦Re<300の範囲で撹拌を行う場合、前記翼径比が0.25〜0.325であり、且つ、前記吐出流量比が1.7以上であり、(iii)レイノルズ数ReがRe<30の範囲で撹拌を行う場合、前記翼径比が0.325〜0.375であり、且つ、前記吐出流量比が1.8以上である条件を備えることを特徴とする。
上記構成からなる撹拌機によれば、撹拌翼3の下半分Dから半径方向に吐出される撹拌対象物の吐出流量は、撹拌翼3の上半分Uから半径方向に吐出される撹拌対象物の吐出流量よりも多くなる。そのため、吐出の強い領域から吐出の弱い領域への上下循環流動、即ち、撹拌槽1の下部から上部へと連続した上下循環流動が形成されることとなる。その結果、仕切ゾーンができることなく、撹拌対象物が全体的に撹拌されることとなる。
即ち、本発明に係る撹拌機は、撹拌の運転条件に応じて翼径比及び吐出流量比の適正化を図ることにより、槽内の全体に亘って十分な上下循環流動を形成することができて、好適な撹拌特性を発揮することができる。
以下、本発明の実施形態に係る撹拌機について図1に基づき説明する。
1は、円筒形撹拌槽で、該槽1内中心部には、撹拌軸2が配設されている。撹拌軸2は、下端が槽底部に設けられた軸受(図示しない)を介して支持され、且つ上端が槽頂部上の駆動装置(図示しない)にカップリング(図示しない)を介して接続されている。
3は、撹拌翼で、また、この撹拌翼3のうちの4は、多段(本実施形態では3段)のタービン翼で、撹拌軸2に同心に取り付けられたディスク4aの外周等分位置に複数の羽根4b,…を取り付けたものである。各タービン翼4は、上位ほど羽根4bの形状が小さくなるように形成されている。
5は、ボトム翼で、撹拌軸2の下端部に取り付けられている。該ボトム翼5は、略矩形状を呈する平板状の翼であり、下端縁は、槽底部の曲面形状に沿うように曲線形状に形成されている。
6は、邪魔板で、撹拌槽1の側壁面であって、周方向に所定間隔を有して複数取り付けられている(図では、一つしか図示していない)。この邪魔板6は、撹拌槽1の側壁面下部から上部まで軸長方向に沿って連続しており、タービン翼4及びボトム翼5からなる撹拌翼3から吐出された撹拌対象物を撹拌槽1の上部まで上昇させる特性を備えている。
本実施形態に係る撹拌機は、以上の構成からなり、次に、本実施形態に係る撹拌機の撹拌特性について図2に基づき説明する。
翼から半径方向に吐出される撹拌対象物の吐出流量は、撹拌翼3の軸長方向における実効面積と、該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積に比例することが一般的に知られている。従って、本実施形態に係る撹拌翼3の如く、撹拌翼3の上半分Uにおける撹拌翼3の総実効面積が小さく、下半分Dにおける撹拌翼3の総実効面積が大きい場合、下半分Dにおける撹拌対象物の吐出流量(Q1+Q2)は、上半分Uにおける撹拌対象物の吐出流量(Q3+Q4)よりも多くなる。尚、「上半分」とは、撹拌翼3の最下端から最上端までの高さを半分で割ったときの上側をいい、「下半分」とは、その下側をいう。
そして、撹拌翼3の上半分Uと下半分Dとの吐出流量の違い、即ち、吐出強さの違いにより、吐出の強い領域から吐出の弱い領域への上下循環流動R1、即ち、撹拌槽1の下部から上部へと連続した上下循環流動R1が形成されることとなる。その結果、仕切ゾーンができることなく、撹拌対象物を全体的に撹拌することができるので、撹拌特性が良くなる。特に本実施形態においては、各段の撹拌翼3の実効面積は、下位から上位にかけて次第に小さくなっているため、ボトム翼5の吐出流量Q1>下位のタービン翼4の吐出流量Q2>中位のタービン翼4の吐出流量Q3>上位のタービン翼4の吐出流量Q4となり、より好適な上下循環流動が得られることとなる。
また、上下循環流動R1は、上部に達した後、撹拌槽1の側壁側から中心側へ移動し、撹拌軸2に沿って下方へと移動する上下循環流動R2となり、槽底部に戻るが、撹拌翼3が多段に設けられていることにより(即ち、撹拌翼3,3間に隙間が形成されることにより)、下降中の撹拌対象物がこれらによって剪断細分化され、より細かく撹拌されるようになっている。
尚、図2においては、理解を容易にするため、吐出流量(吐出流動)Q1,Q2,Q3,Q4及び上下循環流動R1,R2を片側一面にしか図示していないが、撹拌槽1の周方向全領域において同様の流動態様が生じていることは言うまでもない。
ここで、本発明者は、撹拌翼3を如何なるように設計するのがよいか各種の実験を行った。
図4は、以下の実験を行い、その実験結果(図3)をプロットし、境界線を引いたものである。
<実験条件>
・槽内径D(撹拌槽1の胴部の内径):310mm
・翼高B(槽底部の最下位置から撹拌翼3の最上端までの高さ):液深L(槽底部の最下位置から液面までの高さ)に合わせて調整し、液深Lより62mm低く設定
・槽底部形状:半楕円
・邪魔板:有り
・液量:23.8〜37.8リットル
・撹拌動力:0.5〜2.0kW/m3
・トレーサー:1mm角PS(ポリスチレン)ペレット(比重1.05)
<実験方法>
撹拌条件をレイノルズ数Re(液粘度)が300≦Reの範囲とし、着色トレーサー流体法を用いて、混合時間の定量的な判断ではなく、目視で上下循環流動が分断されていないかの判定を行った。因みに、「○」は、撹拌槽1の下部から吐出された流動がスムーズに上部に到達し、上下方向に連続した一つの上下循環流動が形成された場合に対する評価であり、「△」は、撹拌槽1の下部から吐出された流動がほとんど上部に到達しているが、一部途中で中心側への流動が見られた場合に対する評価であり、「×」は、明らかに上下循環流動が分断された場合に対する評価である。
図6は、撹拌条件をレイノルズ数Reが30≦Re<300の範囲に変えて実験を行い、その実験結果(図5)をプロットし、境界線を引いたものである。
図8は、撹拌条件をレイノルズ数ReがRe<30の範囲に変えて実験を行い、その実験結果(図7)をプロットし、境界線を引いたものである。
尚、Aは、各撹拌翼3の実効面積であり、rは、各撹拌翼3の最外半径であり、Dは、撹拌槽1の直径(槽内径)を示す。そして、A×r3(下)は、撹拌翼3の下半分Dにおける各撹拌翼3の(A×r3)の総和(下半分Dにおける撹拌翼3の実効面積と該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積を撹拌軸2の軸長方向に積分した値に同じ)を意味し、A×r3(上)は、撹拌翼3の上半分Uにおける各撹拌翼3の(A×r3)の総和(上半分Uにおける撹拌翼3の実効面積と該実効面積における撹拌翼3の最外半径の三乗との積を撹拌軸2の軸長方向に積分した値に同じ)を意味する。
図3及び図4から、乱流域(300≦レイノルズ数Re)の撹拌対象物に対しては、r/Dが0.225〜0.325であり、A×r3(下)/A×r3(上)が1.4以上であるならば、流動状態(混合特性)が良くなることがわかる。尚、r/Dを「翼径比」と呼び、A×r3(下)/A×r3(上)を「吐出流量比」と呼ぶ。
また、図5及び図6から、遷移流域(30≦レイノルズ数Re<300)の撹拌対象物に対しては、翼径比が0.25〜0.325であり、吐出流量比が1.7以上であるならば、流動状態(混合特性)が良くなることがわかる。
さらに、図7及び図8から、層流域(レイノルズ数Re<30)の撹拌対象物に対しては、翼径比が0.325〜0.375であり、吐出流量比が1.8以上であるならば、流動状態(混合特性)が良くなることがわかる。
尚、本発明に係る撹拌機は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、撹拌翼3がタービン翼4とボトム翼5との組み合わせからなるものであるが、図9(イ)に示す如く、羽根が上下に連続した形状の撹拌翼であってもよいし、図9(ロ)に示す如く、羽根を傾斜させたものであってもよく、さらには、パドル翼やプロペラ翼を多段に配置した撹拌翼、あるいは、アンカー翼からなる撹拌翼であってもよい。尚、図9(ロ)に示すような撹拌翼の場合、翼径比を求めるための撹拌翼3の最外半径rは平均値を用いることとする。
また、上記実施形態においては、撹拌軸2の下端が槽底部に支持されるようになっているが、該下端が槽底部から離間して支持されない態様であってもよい。
また、上記実施形態においては、撹拌軸2を槽外から回転駆動するための駆動装置を槽頂部側に設けているが、該駆動装置を槽底部側に設けてもよい。
また、上記実施形態においては、邪魔板6を設けているが、この邪魔板6は本発明においては、必須構成ではない。
また、槽内径D、翼高B、液深Lは、それぞれ特に限定されるものではないが、一般的には、翼高比B/D(翼高B/槽内径D)を50〜100%、液深比L/D(液深L/槽内径D)を10〜150%に設定すればよい。
また、乱流域(300≦レイノルズ数Re)の撹拌対象物に対しては、吐出流量比の上限として、1.7を設定してもよく、遷移流域(30≦レイノルズ数Re<300)の撹拌対象物に対しては、吐出流量比の上限として、1.9を設定してもよく、層流域(レイノルズ数Re<30)の撹拌対象物に対しては、吐出流量比の上限として、2.3を設定してもよい。
本実施形態に係る撹拌機の正面図を示す。 同実施形態に係る撹拌機の撹拌特性を説明するための概念図を示す。 300≦Reの範囲で撹拌を行った場合の吐出流量比と翼径比との関係における撹拌特性(混合特性)のデータ表を示す。 300≦Reの範囲で撹拌を行った場合の吐出流量比と翼径比との関係における撹拌特性(混合特性)の良否を表すグラフを示す。 30≦Re<300の範囲で撹拌を行った場合の吐出流量比と翼径比との関係における撹拌特性(混合特性)のデータ表を示す。 30≦Re<300の範囲で撹拌を行った場合の吐出流量比と翼径比との関係における撹拌特性(混合特性)の良否を表すグラフを示す。 Re<30の範囲で撹拌を行った場合の吐出流量比と翼径比との関係における撹拌特性(混合特性)のデータ表を示す。 Re<30の範囲で撹拌を行った場合の吐出流量比と翼径比との関係における撹拌特性(混合特性)の良否を表すグラフを示す。 他実施形態に係る撹拌機の正面図を示す。 従来の小型翼に係る撹拌機の撹拌特性を説明するための概念図を示す。
符号の説明
1…撹拌槽、2…撹拌軸、3…撹拌翼、4…タービン翼、5…ボトム翼、6…邪魔板、R1,R2…上下循環流動、Q1,Q2,Q3,Q4…吐出流量

Claims (1)

  1. 撹拌槽(1)内中心部に槽外から回転可能な撹拌軸(2)が配設され、該撹拌軸(2)に撹拌翼(3)が取り付けられてなる撹拌機において、該撹拌翼(3)が以下の条件を備えてなることを特徴とする撹拌機。
    (i)レイノルズ数Reが300≦Reの範囲で撹拌を行う場合、撹拌槽(1)の直径に対する撹拌翼(3)の最外半径の比率(翼径比)が0.225〜0.325であり、且つ、上半分(U)における撹拌翼(3)の実効面積と該実効面積における撹拌翼(3)の最外半径の三乗との積の軸方向における積分値に対する下半分(D)における撹拌翼(3)の実効面積と該実効面積における撹拌翼(3)の最外半径の三乗との積の軸方向における積分値の比率(吐出流量比)が1.4以上
    (ii)レイノルズ数Reが30≦Re<300の範囲で撹拌を行う場合、前記翼径比が0.25〜0.325であり、且つ、前記吐出流量比が1.7以上
    (iii)レイノルズ数ReがRe<30の範囲で撹拌を行う場合、前記翼径比が0.325〜0.375であり、且つ、前記吐出流量比が1.8以上
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