JP2006087276A - ブラシレスモータのロータ、ブラシレスモータ、及びパワーステアリング装置用モータ - Google Patents

ブラシレスモータのロータ、ブラシレスモータ、及びパワーステアリング装置用モータ Download PDF

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Abstract

【課題】熱変動する環境下で使用された場合に永久磁石の破損を防止し、永久磁石に過剰な固定荷重が加わることを防止すると共に一様な固定荷重を加え、製造コストを低減させることができるカバーを備えたブラシレスモータのロータを提供する。
【解決手段】ロータヨーク22は円柱状のロータヨーク本体31とロータヨーク本体31の一端部から径方向外側に延設された鍔部32とを備える。ロータヨーク本体31の外周には、永久磁石23が鍔部32との間に離間部36を有して配置されている。鍔部32と永久磁石23とはその外径が等しい。カバー24は、永久磁石23の外径と等しい内径を有する円筒部41と円筒部41の一端部から延設された折曲げ部43とを備える。カバー24は、折曲げ部43の全周が鍔部32の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられることにより永久磁石23をロータヨーク22に対して固定している。
【選択図】 図4

Description

本発明は、ブラシレスモータのロータ、ブラシレスモータ、及び車両に搭載される電動パワーステアリング装置に用いられるパワーステアリング装置用モータに関するものである。
従来、インナロータ型のブラシレスモータには、例えば、特許文献1及び特許文献2にて開示されているように、ロータヨークの外周に配置された永久磁石をカバーにて径方向外側から覆って固定する構造を有するロータが備えられている。
詳述すると、特許文献1にて開示されているロータは、略円柱状をなすロータヨークと、該ロータヨークの外周に配置された断面が弓状をなす複数個の永久磁石とを備えている。そして、複数個の永久磁石の外周には、両端が開口した非磁性金属パイプが焼き嵌めにて圧入されており、これにより永久磁石はロータヨークに対して固定されている。
また、特許文献2にて開示されているロータを構成するカバーは、有底円筒状をなし、その底部にクランプピンを挿通するための挿通孔が複数個形成されている。そして、カバーの内部には、鉄板を複数枚積層して形成されるロータヨークが収容されている。ロータヨークには、カバーの底部に形成された挿通孔と軸方向に連通する複数の貫通孔が形成されている。そして、カバーの内周面とロータヨークの外周面との間に複数の永久磁石が配置されている。カバー開口部側のロータヨークの端面と永久磁石の端面とは端板にて覆われている。端板には、前記連通孔及び前記貫通孔と軸方向に連通する挿入孔が形成されている。端板、ロータヨーク、及びカバーは、挿入孔、貫通孔、及び連通孔にそれぞれクランプピンが挿入されてかしめられることにより一体に固定される。これにより、永久磁石はカバーの内周面とロータヨークの外周面との間に固定される。
特許第2792083号公報 特許第2830570号公報
しかしながら、特許文献1にて開示されているロータの永久磁石は、非磁性金属パイプが焼き嵌めにて圧入されることによりロータヨークに対して固定されている。従って、焼き嵌めによって非磁性金属パイプから永久磁石に対して過剰な固定荷重が加わり、永久磁石が破損する恐れがある。逆に、焼き嵌めによる固定荷重が十分に得られかった場合には、非磁性金属パイプは両端が開口していることから、永久磁石が軸方向に脱落する恐れがある。また、一般的に、非磁性金属パイプ、ロータヨーク、及び永久磁石の熱膨張係数はそれぞれ異なるため、熱変動する環境下で特許文献1に記載のロータを備えたブラシレスモータが使用された場合に、非磁性金属パイプ及びロータヨークが熱膨張して永久磁石に過剰な荷重が加えられ、永久磁石が破損する恐れがある。
特許文献2にて開示されているロータでは、永久磁石の軸方向両端部が端板及びカバーの底部にて覆われているため、永久磁石がカバーから軸方向に脱落する恐れはない。しかしながら、端板、ロータヨーク、及びカバーは、複数箇所に形成された挿入孔、貫通孔、及び挿通孔にクランプピンを挿入してかしめることにより一体に固定されているため、クランプピン周辺部にはクランプピンから離れた部分よりも大きな固定荷重が加えられる。そのため、永久磁石は、クランプピンに近い部分とクランプピンから離れた部分とで加わる固定荷重に大きな差が生じる。このように、永久磁石に加えられる固定荷重が一様でないことは、永久磁石の破損を招きやすい。
また、このロータは、固定荷重が周方向位置によって異なるため、固定荷重が大きい部分ではロータが径方向外側に膨出し該ロータの真円度の低下を招く。ロータの真円度が低下すると、ステータの内周面とロータの外周面との隙間の径方向の幅が周方向位置によってばらつき、ブラシレスモータの駆動時に回転むらが生じて振動が発生される。例えば、このようなブラシレスモータが車両に搭載される電動パワーステアリング装置に用いられた場合、この振動はステアリングから運転者に伝達されてしまう。更に、クランプピンによる固定では、複数のクランプピンを必要とするため、部品点数が多く、それに伴って組付け工数が多くなり製造コストの増大に繋がる。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱変動する環境下で使用された場合に永久磁石の破損を防止し、永久磁石に過剰な固定荷重が加わることを防止すると共に一様な固定荷重を加え、製造コストを低減させることができるカバーを備えたブラシレスモータのロータを提供することにある。また、該ロータを備えたブラシレスモータ、及びパワーステアリング装置用モータを提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、円柱状をなすロータヨーク本体の軸方向端部から径方向外側に延設された円環状の鍔部を有するロータヨークと、前記ロータヨーク本体の外周面に沿った円弧状をなし前記鍔部との間に軸方向に広がる離間部を有して前記ロータヨークの外周に配置され、外径が前記鍔部の外径と等しく形成された永久磁石と、内径が前記永久磁石の外径と等しく形成され前記鍔部の外周面及び前記永久磁石の外周面を覆う円筒状のカバー本体、及び前記カバー本体の軸方向一端に形成された底部、及び前記カバー本体の軸方向他端から延設され全周が前記鍔部の反永久磁石側の端面に向けて径方向内側に折り曲げられた折曲げ部から構成されたカバーとを備え、前記カバーは、前記折曲げ部が前記鍔部の反永久磁石側の端面に向けて径方向内側に折り曲げられることにより、前記カバー本体の内周面が前記鍔部及び前記永久磁石の外周面に当接されて前記永久磁石を前記ロータヨークに対して固定していることを特徴とするブラシレスモータのロータとした。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブラシレスモータのロータにおいて、前記永久磁石は、前記ロータヨーク本体の外周面に弾性を有する接着剤にて固定されている。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のブラシレスモータのロータにおいて、前記カバーの底部には第1の係合部が形成されており、前記底部に当接する前記ロータヨーク本体の端面には、前記第1の係合部と係合し、前記カバーが前記ロータヨークに対して周方向に回転することを防止する第2の係合部が形成されている。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のブラシレスモータのロータが略円筒状をなすステータの内側に配置されてなることを特徴とするブラシレスモータとした。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のブラシレスモータのロータが略円筒状をなすステータの内側に配置され、ステアリングホイールの操舵力を補助することを特徴とするパワーステアリング装置用モータとした。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、カバーは、カバーの折曲げ部が鍔部の反永久磁石側の端面に向けて径方向内側に折り曲げられることにより、カバー本体の内周面が鍔部の外周面及び永久磁石の外周面に当接されて永久磁石をロータヨークに対して固定している。この時、鍔部の外径と永久磁石の外径とが等しく形成されると共に、永久磁石の外径とカバー本体の内径とが等しく形成されていることから、カバー本体から永久磁石に対して径方向に加えられる固定荷重が過剰となることが抑制される。
また、カバーは折曲げ部の全周が鍔部における反永久磁石側の端面に向けて折り曲げられることによりロータヨークに対固定されていると共に、カバー本体の内周面が永久磁石の外周面に当接していることから、永久磁石には一様な固定加重が加えられ、ロータの真円度が良好に維持される。
更に、永久磁石は、鍔部との間に軸方向に広がる離間部を有してロータヨーク本体の外周に配置されていることから、ロータヨークが熱によって変形した場合には、該ロータヨークと永久磁石との熱膨張量の差は離間部の幅が狭められることにより吸収される。従って、熱変動する環境下において、ロータヨーク及び永久磁石の熱膨張係数が異なるために生じた熱膨張量の差によりロータヨークから永久磁石に過剰な力が加わって該永久磁石が破損することが防止される。しかも、永久磁石と鍔部との間に離間部が設けられていることから、鍔部を介した永久磁石の磁気漏れが抑制される。
また更に、カバーは、折曲げ部が鍔部の反永久磁石側の端面に向けて径方向内側に折り曲げられることによりロータヨークに対して固定されるため、カバーをロータヨークに対して固定するために従来のロータのようにクランプピン等の部品を必要としない。よって、部品点数が低減されて組付け工数も削減される。これらのことから、熱変動する環境下で使用された場合に永久磁石の破損を防止し、永久磁石に過剰な固定荷重が加わることを防止すると共に一様な固定荷重を加え、製造コストを低減させることができる。
請求項2に記載の発明によれば、ロータヨークと永久磁石とは熱膨張係数が異なるために熱膨張量に差が生じることがあるが、その熱膨張量の差は弾性を有する接着剤にて吸収され、熱膨張量の差に起因する応力の発生が抑制される。
請求項3に記載の発明によれば、カバーの底部に形成された第1の係合部と、カバーの底部に当接するロータヨーク本体の端面に形成された第2の係合部とが係合して、カバーがロータヨークに対して周方向に回転することを防止する。従って、カバーがロータヨークに対して周方向に回転することを防止するために別途部品を設けなくてもよい。
請求項4に記載の発明によれば、鍔部の外径と永久磁石の外径とが等しく形成されると共に、永久磁石の外径とカバー本体の内径とが等しく形成されていることから、カバー本体から永久磁石に対して径方向に加えられる固定荷重が過剰となることが抑制されている。また、カバーは折曲げ部の全周が鍔部における反永久磁石側の端面に向けて折り曲げられることによりロータヨークに対して固定されていると共に、カバー本体の内周面が永久磁石の外周面に当接していることから、永久磁石には一様な固定荷重が加えられてロータの真円度が良好に維持される。従って、ステータの内周面とロータの外周面との間の隙間が一定の幅に保たれやすく、該隙間の幅がばらつくことに起因するロータの回転むらを抑制することができる。その結果、このようなロータを備えたブラシレスモータにおける振動の発生が抑制される。
請求項5に記載の発明によれば、鍔部の外径と永久磁石の外径とが等しく形成されると共に、永久磁石の外径とカバー本体の内径とが等しく形成されていることから、カバー本体から永久磁石に対して径方向に加えられる固定荷重が過剰となることが抑制されている。また、カバーは折曲げ部の全周が鍔部における反永久磁石側の端面に向けて折り曲げられることによりロータヨークに対して固定されていると共に、カバー本体の内周面が永久磁石の外周面に当接していることから、永久磁石には一様な固定荷重が加えられてロータの真円度が良好に維持される。従って、ステータの内周面とロータの外周面との間の隙間が一定の幅に保たれやすく、該隙間の幅がばらつくことに起因するロータの回転むらを抑制することができる。その結果、このようなロータを備えたパワーステアリング装置用モータにおける振動の発生が抑制され、運転者への振動伝達が抑制される。
本発明によれば、熱変動する環境下で使用された場合に永久磁石の破損を防止し、永久磁石に過剰な固定荷重が加わることを防止すると共に一様な固定荷重を加え、製造コストが低減されるカバーを備えたブラシレスモータのロータ、ブラシレスモータ、及びパワーステアリング装置用モータを提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は電動パワーステアリング装置の一部斜視図である。
パワーステアリング装置1においては、運転者により操舵されるステアリングホイール2の正逆回転がステアリングコラム3を介して出力軸4に伝達され、該出力軸4の正逆回転がラックアンドピニオン式ステアリング装置を介して転蛇輪(いずれも図示しない)に伝達されるようになっている。
ステアリングコラム3には電動パワーステアリング装置用モータ(EPSモータ)5(以下モータ5とする)が取着されている。モータ5は、ステアリングホイール2の操舵力と回転方向とに基づいて駆動され、このモータ5の回転力がステアリングコラム3に設けられた図示しないギヤによってステアリングホイール2の操舵力に加えられ、その合成力によって出力軸4及びラックアンドピニオン式ステアリング装置を介して転蛇輪が操舵される。
図2に示すように、モータ5は、有底円筒状をなすケース本体11aと該ケース本体の開口部を閉塞するエンドフレーム11bとから構成されたモータケース11、ケース本体11aの内周面に固定されたステータ12、ステータ12の内側に配置されたロータ20、レゾルバ51、及び図示しない制御回路を備えたブラシレスモータである。
ステータ12は、略円筒状をなし、ステータコア13及び巻線14を備えている。ステータコア13は、周方向に沿って配設された複数のティース部13a(2つのみ図示)を備え、これらのティース部13aは、ステータコア13の外周側で連結されて一体的に構成されている。各ティース部13aには、インシュレータ15を介して巻線14が巻回されている。巻線14は、前記制御装置に接続されている。
前記ロータ20は、ステータコア13の内周面との間に一定の隙間を有して配置されている。ロータ20は、回転軸21と、該回転軸21に固定されたロータヨーク22と、ロータヨーク22の外周に配置された永久磁石23と、ロータヨーク22及び永久磁石23を覆うカバー24とから構成されている。
回転軸21は、一端を前記ケース本体11aの底部中央に設けられた軸受26に支持され、他端側を前記エンドフレーム11bの中央に設けられた軸受27に支持されることにより回転可能に支持されている。
図3に示すように、ロータヨーク22は、ロータヨーク本体31と鍔部32とを有している。
ロータヨーク本体31は円柱状をなしている。図4に示すように、ロータヨーク本体31の外径は軸方向には一定となっている。図2に示すように、ロータヨーク22の軸方向の長さは、前記ステータコア13の軸方向の長さより長く形成されている。
また、ロータヨーク本体31の径方向中央には、軸方向に貫通した貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aにおいて前記エンドフレーム11b側の端部(図4において右側の端部)からロータヨーク本体31の軸方向中央までの部分は、その直径が前記回転軸21の外径と等しいか若干小さく形成された固定孔31bとなっている。また、貫通孔31aにおいてロータヨーク22の軸方向中央から前記ケース本体11aの底部側の端部(図4において左側の端部)までの部分は、その直径が回転軸21の外径よりも大きく形成された挿通穴31cとなっている。そして、ロータヨーク22は、貫通孔31aに嵌入された回転軸21に対して固定孔31bにて固定され、回転軸21と一体回転可能となっている。
図3に示すように、ロータヨーク本体31におけるケース本体11aの底部側の端面31dには、第2の係合部としての係合凸部33が形成されている。係合凸部33は、端面31dから軸方向に沿って突設されており、軸方向から見ると略円環状をなしている。詳しくは、係合凸部33の外周部には、複数(本実施形態では4つ)の扁平部33aが形成されている。各扁平部33aは回転軸中心(ロータヨーク22の軸線L)を通る直線と垂直な平面状をなしている。これらの扁平部33aは、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に配置され、180°ごとに配置された扁平部33a同士は互いに平行に形成されている。各扁平部33a間は径方向外側に向かって膨出する円弧部33bにて連結されている。各円弧部33bは等しい曲率に形成され、その曲率中心(本実施形態ではロータヨーク22の軸線L上に位置する)は一致している。
鍔部32は、ロータヨーク本体31の反係合凸部33側の軸方向端部から径方向外側に向かって延設され、円環状をなしている。図4に示すように、鍔部32の外径は、軸方向には一定となっている。尚、ロータ20は、図2に示すように、前記ステータ12の内周面と鍔部32の外周面32aとが対峙しない位置に配置されている。
図5に示すように、ロータヨーク本体31の外周には永久磁石23が配置されている。永久磁石23は、複数(本実施形態では14個)の界磁極部35から構成され、これらの界磁極部35により「円弧状」に形成されている。この「円弧状」とは、円弧が周方向に連続する状態を示し、例えば、円弧が周方向に360°連続する状態も含める。また、円弧が周方向に断続的に連続する状態も含める。
14個の界磁極部35はロータヨーク本体31を周方向に囲んで円筒状をなすように配置されている。軸方向から見ると、各界磁極部35の径方向内側の内側面35aは、ロータヨーク本体31の外周面31eに沿った円弧状をなしている。また、界磁極部35の径方向外側の外側面35bは、ロータヨーク本体31の外周面31eと同心円を形成するような円弧状に形成されている。詳しくは、各界磁極部35の外側面35bは、等しい曲率の円弧状をなし、その曲率中心Oがロータヨーク22の軸線L上に位置している。そして、各外側面35bを通って形成される円の直径、即ち14個の界磁極部35により構成された永久磁石23の外径Dは、前記鍔部32の外径と等しく形成されている。
図4に示すように、ロータヨーク22の軸方向に沿った各界磁極部35の長さは、ロータヨーク本体31の軸方向長さよりも短く形成されている。そして、各界磁極部35は、前記鍔部32との間に軸方向に広がる離間部36を有してロータヨーク本体31の外周面31e上に配置されている。詳しくは、離間部36は、鍔部32の永久磁石23側の端面32bと界磁極部35の鍔部32側の端面35cとを離間させることにより端面32bと端面35cとの間に形成された隙間である。本実施形態では、各界磁極部35は、鍔部32との間に離間部36を有してロータヨーク本体31の外周面31e上に配置されると共に、各界磁極部35の反鍔部32側の端面35dがロータヨーク本体31の反鍔部32側の端面31dと同一平面上に位置するように配置されている。これらの界磁極部35は、隣接する界磁極部35と互いに異極となるように着磁が施されている。尚、永久磁石23(界磁極部35)は、ロータヨーク22と熱膨張係数が異なる。
また、各界磁極部35は、ロータヨーク本体31の外周面31eに弾性を有する接着剤にて固定されている。接着剤には、例えばシリコン系の接着剤が使用される。この接着剤は、各界磁極部35の内側面35aとロータヨーク本体31の外周面31eとの間に介在している。
図3に示すように、カバー24は非磁性体よりなり、カバー本体としての円筒部41と、底部42と、折曲げ部43とから構成されている。
図4に示すように、円筒部41の軸方向の長さは、ロータヨーク22の軸方向の長さと等しく形成されている。従って、鍔部32の外周面32a及び永久磁石23の外周面23aは、円筒部41にて覆われている。ここで、永久磁石23の外周面23aとは、複数の界磁極部35の外側面35bにて構成されるものである。また、円筒部41の内径は、鍔部32の外径、及びロータヨーク本体31の外周に配置された永久磁石23の外径Dと等しく形成されている。
カバー24の底部42は、円筒部41の軸方向一端から径方向内側に向かって延設されており、ロータヨーク本体31の端面31dと当接する。そして、底部42の中央部には、前記係合凸部33と係合する第1の係合部としての係合孔44が形成されている。係合孔44は、軸方向から見ると、その内周が前記係合凸部33の外周と対応した形状となっている。詳しくは、係合孔44の内周面は、複数(本実施形態では4つ)の扁平面44aを有している。各扁平面44aは回転軸中心(ロータヨーク22の軸線L)を通る直線と垂直な平面状をなしている。これらの扁平面44aは、軸方向から見ると、周方向に等角度間隔(本実施形態では90°間隔)に配置され、180°ごとに配置された扁平面44a同士は互いに平行に形成されている。各扁平面44a間は径方向外側に向かって凹設された円弧面44bにて連結されている。各円弧面44bは等しい曲率に形成され、その曲率中心(本実施形態ではロータヨーク22の軸線L上に位置する)は一致している。
このように形成された係合孔44は、前記係合凸部33と係合してカバー24がロータヨーク22に対して周方向に回転することを防止している。詳しくは、係合孔44の扁平面44aと係合凸部33の扁平部33aとが当接すると共に、係合孔44の円弧面44bと係合凸部33の円弧部33bとが当接して、カバー24がロータヨーク22に対して周方向に回転することを防止している。
前記折曲げ部43は、前記円筒部41における底部42と逆側の軸方向一端から延設されている。詳しくは、折曲げ部43は、円筒部41における底部42と逆側の軸方向一端から全周にわたって延設され、周方向のいずれの場所でもその幅が一定に形成されている。
折曲げ部43は、ロータヨーク本体31の外周に永久磁石23が配置され、カバー24がロータヨーク22に装着された後に、その全周が鍔部32の反永久磁石23側の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられる。図3では、折り曲げられる前の状態の折曲げ部43を実線にて図示し、折り曲げられた状態の折曲げ部43を二点鎖線にて図示している。図4に示すように、折曲げ部43がこのように折り曲げられることにより、カバー24は、前記円筒部41の内周面41aが鍔部32の外周面32a及び永久磁石23の外周面23aに当接されて永久磁石23をロータヨーク22に対して固定する。これにより、ロータヨーク22と永久磁石23とは一体に回転可能となっている。この時、鍔部32の外径と永久磁石23の外径Dとが等しく形成されると共に、永久磁石23の外径Dと円筒部41の内径とが等しく形成されていることから、円筒部41から永久磁石23に対して径方向に加えられる固定荷重が過剰となることが抑制されている。
ここで、折曲げ部43の全周が鍔部32の反永久磁石23側の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられるとは、折曲げ部43が端面32cの外縁部32d(図4参照)の全周に当接して折り曲げられることを意味している。
図2に示すように、前記レゾルバ51は、レゾルバ用ロータ52とレゾルバ用ステータ53とから構成されている。このレゾルバ51は、ロータ20の回転位置を検出するためのものである。レゾルバ用ロータ52は、ロータ20の回転軸21において鍔部32との間に間隔を空けた位置に固定されている。そして、レゾルバ用ステータ53は、レゾルバ用ロータ52の外周側で該レゾルバ用ロータ52と対向するように前記エンドフレーム11bに固定されている。そして、前記制御回路は、レゾルバ51にて検出されたロータ20の回転位置に応じてステータ12に電圧を供給する。
上記のように構成されたモータ5(ロータ20)が熱変動する環境下で使用された場合、ロータ20を構成するロータヨーク22及び永久磁石23は熱膨張する。この時、ロータヨーク22と永久磁石23とは熱膨張係数が異なるために熱膨張量に差が生じる。この熱膨張量の差は、永久磁石23と鍔部32との間に設けられた離間部36の軸方向の幅を狭めることにより吸収される。
また、各界磁極部35は、ロータヨーク本体31の外周面31eに弾性を有する接着剤にて固定されていることから、ロータヨーク22と各界磁極部35との熱膨張量の差が接着剤にて吸収され、熱膨張量の差に起因する応力の発生が抑制される。
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)カバー24は、折曲げ部43が鍔部32の反永久磁石23側の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられることにより、円筒部41の内周面41aが鍔部32の外周面32a及び14個の界磁極部35から構成された永久磁石23の外周面23aに当接されて永久磁石23をロータヨーク22に対して固定している。この時、鍔部32の外径と永久磁石23の外径Dとが等しく形成されると共に、永久磁石23の外径と円筒部41の内径とが等しく形成されていることから、円筒部41から永久磁石23に対して径方向に加えられる固定荷重が過剰となることが抑制される。従って、カバー24から永久磁石23に対して過剰な固定荷重が加えられることにより該永久磁石23が破損することを防止することができる。
また、カバー24は折曲げ部43の全周が鍔部32の端面32cに向けて折り曲げられることによりロータヨーク22に対して固定されていると共に、円筒部41の内周面41aが永久磁石23の外周面23aに当接していることから、永久磁石23には一様な固定荷重が加えられてロータ20の真円度が良好に維持される。即ち、局所的に固定荷重が加えられることが抑制されるため、一部の界磁極部35がロータヨーク本体31の外周面31eから浮き上がったり、ロータヨーク22及び永久磁石23が変形したりすることが抑制され、真円度が悪化されることが抑制される。その結果、ステータ12の内周面とロータ20の外周面との隙間が一定の幅に保たれやすく、該隙間の幅がばらつくことに起因するロータ20の回転むらを抑制することができる。よって、このようなロータ20を備えたモータ5における振動の発生を抑制することができる。延いてはこのモータ5を備えたパワーステアリング装置1において、ステアリングホイール2を介して運転者に振動が伝達されることを抑制することができる。
更に、永久磁石23は、鍔部32との間に軸方向に広がる離間部36を有してロータヨーク本体31の外周に配置されていることから、ロータヨーク22が熱によって変形した場合には、該ロータヨーク22と永久磁石23との熱膨張量の差は離間部36の幅が狭められることにより吸収される。従って、熱変動する環境下において、ロータヨーク22及び永久磁石23の熱膨張係数が異なるために生じた熱膨張量の差によりロータヨーク22から永久磁石23に過剰な力が加わって永久磁石23が破損することを防止することができる。しかも、永久磁石23と鍔部32との間に離間部36が設けられていることから、鍔部32を介した各界磁極部35の磁気漏れを抑制することができる。
また更に、カバー24は、折曲げ部43が鍔部32の反永久磁石23側の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられることによりロータヨーク22に対して固定されているため、カバー24をロータヨーク22に対して固定するために従来のロータのようにクランプピン等の部品を必要としない。よって、部品点数が低減されて組付け工数も削減され、製造コストを低減させることができる。しかも、折曲げ部43を折り曲げるだけで、カバー24はロータヨーク22に対して固定されるため、従来のロータのように、クランプピンを挿入するために、端板、ロータヨーク、及びカバーに形成された孔を位置決めしなくてもよい。従って、ロータ20の組付けを容易に行うことができる。
(2)ロータヨーク22と永久磁石23(界磁極部35)とは熱膨張係数が異なるために熱膨張量に差が生じることがあるが、その熱膨張量の差は弾性を有する接着剤にて吸収され、熱膨張量の差に起因する応力の発生が抑制される。従って、永久磁石23の破損を更に抑制することができる共に、各界磁極部35の内側面35aとロータヨーク本体31の外周面31eとが剥離することを防止することができる。また、接着剤により界磁極部35をロータヨーク本体31の外周面31eに固定しているため、モータ5の駆動時に、回転軸21及びロータヨーク22が回転する前に永久磁石23が回転してしまうことを確実に防止することができる。
(3)カバー24の底部42に形成された係合孔44と、底部42に当接するロータヨーク本体31の端面31dに形成された係合凸部33とが係合して、カバー24がロータヨーク22に対して周方向に回転することを防止している。従って、カバー24がロータヨーク22に対して周方向に回転することを防止するために別途部品を設けなくてもよい。その結果、部品点数の増加を防いで、製造コストが増大することを抑制することができる。
(4)各界磁極部35は、カバー24にて覆われているため、万が一界磁極部35が破損してしまっても、界磁極部35の破片がロータ20の外部に飛散することを防止することができる。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、永久磁石23は複数の界磁極部35により円筒状をなすように形成されているが、円筒状でなくてもよい。例えば、永久磁石23は、ロータヨーク本体31の外周に周方向に間隔を有して部分的に配置される界磁極部35から構成されるものであってもよい。また、永久磁石23は複数の界磁極部35が周方向に連結されて一体に形成(円筒状に形成)されてもよい。
○上記実施形態では、係合凸部33は、4つの扁平部33aを備えており、各扁平部33a間は円弧部33bにて連結されている。また、係合凸部33と係合する係合孔44は、4つの扁平面44aを備えており、各扁平面44a間は円弧面44bにて連結されている。しかしながら、扁平部33a及び扁平面44aは、それぞれ4つに限らず、1つ以上形成されていればよい。更に、扁平面44a及び扁平面44aは、周方向に等角度間隔に配置されなくてもよい。また、係合凸部33及び係合孔44は、円弧部33bや円弧面44bが備えられず、複数の扁平部33a及び扁平面44aの両端がそれぞれ直接連結された多角形状に形成されるものであってもよい。
更に、上記実施形態では、係合凸部33は4つの扁平部33aが4つの円弧部33bによって連結された構成となっており、係合孔44は4つの扁平面44aがそれぞれ4つの円弧部33bによって連結された構成となっているが、これに限らない。例えば、第2の係合部としての係合凸部は、ロータヨーク本体31の端面31dにおいて、円柱状に形成され、その外周部の1箇所若しくは複数箇所に径方向外側に向かって延びる矩形状の凸部
を有する構成としてもよい。この時、第1の係合部としての係合孔は、カバー24の底部に係合凸部の外形と同様の形状をなすように形成される。即ち、係合孔は、円形状の孔を備え、その内周部の1箇所若しくは複数箇所に径方向外側に向かって凹設された矩形状の凹部を有するように形成される。このように形成された係合凸部と係合孔とは、それぞれ凸部と凹部とを係合させることにより、カバー24がロータヨーク22に対して周方向に回転することを防止する。この時、前記凸部及び前記凹部は矩形状以外に、半円状や、三角形等の多角形状に形成されてもよい。また、第2の係合部としての係合凸部は、ロータヨーク本体31の端面31dにおいて、円柱状に形成され、その外周部の1箇所若しくは複数箇所に径方向内側に向かって凹設された凹部を有する構成としてもよい。この時、第1の係合部としての係合孔は、カバー24の底部において円形状の孔を備え、その孔の内周部の1箇所若しくは複数箇所に径方向内側に向かって延設された凸部を備えた構成とする。このように構成しても、カバー24がロータヨーク22に対して周方向に回転することを防止することができる。
また更に、係合凸部は、ロータヨーク本体31の端面31dにおいて、該ロータヨーク本体31の軸線Lから径方向にオフセットした位置に軸線Lと同方向に突出するように形成されるものであってもよい。この時、係合孔は、カバー24の底部42にその係合凸部に対応する位置に該係合凸部の外形と等しい形状に形成される。また更に、カバー24の底部42に第1の係合部としての係合凸部が形成され、ロータヨーク本体31の端面31dに第2の係合部としての係合凹部が形成される構成であってもよい。
○上記実施形態では、折曲げ部43は、円筒部41の反底部42側の軸方向一端から全周にわたって延設され、周方向のいずれの場所でもその幅が一定に形成されているが、これに限らない。例えば、図6(a)(b)に示すような構成としてもよい。尚、図6(a)(b)において上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。図6(a)に示すように、カバー60は、円筒部41における底部42と逆側の軸方向一端に折曲げ部61を備えている。折曲げ部61は、円筒部41の反底部42側の軸方向一端から延設された複数の折曲げ片61aから構成されている。折曲げ片61aは、基端部から先端部に向かうに連れて徐々に周方向の幅が狭くなるように形成されている。そして、各折曲げ片61aは、その基端部においては隣接する折曲げ片61aとの間に隙間を有することがないように配置されている。図6(b)に示すように、折曲げ部61は、ロータヨーク本体31の外周に永久磁石23が配置され、カバー60がロータヨーク22に装着された後に、その全周が鍔部32の反永久磁石23側の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられる。即ち、折曲げ部61は、各折曲げ片61aが鍔部32の反永久磁石23側の端面32cに向けて径方向内側に折り曲げられると、各折曲げ片61aの基端部によって端面32cの外縁部32dの全周に当接する。カバー60は、折曲げ部61がこのように折り曲げられることにより、円筒部41の内周面41aが鍔部32の外周面32a及び永久磁石23の外周面23aに当接されて永久磁石23をロータヨーク22に対して固定している。このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を有する。また、図6(a)(b)に示す折曲げ片61aは台形状を成しているが、これに限らず、例えば、半円形状や三角形状をなしていてもよい。
○上記実施形態では、モータ5は電動パワーステアリング装置用モータ(EPSモータ)であるが、EPSモータ以外のブラシレスモータに本発明を実施してもよい。
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)請求項5に記載のパワーステアリング装置用モータを備え、該パワーステアリング装置用モータにてステアリングホイールの操舵力を補助するようにしたことを特徴とするパワーステアリング装置。
このように構成すると、鍔部の外径と永久磁石の外径とが等しく形成されると共に、永久磁石の外径とカバー本体の内径とが等しく形成されていることから、カバー本体から永久磁石に対して径方向に加えられる固定荷重が過剰となることが抑制されている。また、カバーは折曲げ部の全周が鍔部における反永久磁石側の端面に向けて折り曲げられることによりロータヨークに対して固定されていると共に、カバー本体の内周面が永久磁石の外周面に当接しているため、永久磁石には一様な固定荷重が加えられてロータの真円度が良好に維持される。従って、ステータの内周面とロータの外周面との間の隙間が一定の幅に保たれやすく、該隙間の幅がばらつくことに起因するロータの回転むらを抑制することができる。その結果、このようなロータを備えたパワーステアリング装置用モータを有するパワーステアリング装置における振動の発生が抑制され、ステアリングホイールを介して運転者に振動が伝達されることが抑制される。
電動パワーステアリング装置の一部斜視図。 モータの断面図。 回転軸を除いたロータの分解斜視図。 ロータの断面図。 図4におけるロータのA−A断面図。 (a)は別の形態のカバーを示す斜視図、(b)は別の形態のカバーを備えたロータの側面図。
符号の説明
2…ステアリングホイール、12…ステータ、20…ロータ、22…ロータヨーク、23…永久磁石、23a…永久磁石の外周面、24,60…カバー、31…ロータヨーク本体、31e…ロータヨーク本体の外周面、32…鍔部、32a…鍔部の外周面、32c…鍔部の反永久磁石側の端面、33…第2の係合部としての係合凸部、36…離間部、41…カバー本体としての円筒部、41a…円筒部(カバー本体)の内周面、42…底部、43,61…折曲げ部、44…第1の係合部としての係合孔、D…永久磁石の外径。

Claims (5)

  1. 円柱状をなすロータヨーク本体の軸方向端部から径方向外側に延設された円環状の鍔部を有するロータヨークと、
    前記ロータヨーク本体の外周面に沿った円弧状をなし前記鍔部との間に軸方向に広がる離間部を有して前記ロータヨークの外周に配置され、外径が前記鍔部の外径と等しく形成された永久磁石と、
    内径が前記永久磁石の外径と等しく形成され前記鍔部の外周面及び前記永久磁石の外周面を覆う円筒状のカバー本体、及び前記カバー本体の軸方向一端に形成された底部、及び前記カバー本体の軸方向他端から延設され全周が前記鍔部の反永久磁石側の端面に向けて径方向内側に折り曲げられた折曲げ部から構成されたカバーとを備え、
    前記カバーは、前記折曲げ部が前記鍔部の反永久磁石側の端面に向けて径方向内側に折り曲げられることにより、前記カバー本体の内周面が前記鍔部及び前記永久磁石の外周面に当接されて前記永久磁石を前記ロータヨークに対して固定していることを特徴とするブラシレスモータのロータ。
  2. 請求項1に記載のブラシレスモータのロータにおいて、
    前記永久磁石は、前記ロータヨーク本体の外周面に弾性を有する接着剤にて固定されていることを特徴とするブラシレスモータのロータ。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のブラシレスモータのロータにおいて、
    前記カバーの底部には第1の係合部が形成されており、
    前記底部に当接する前記ロータヨーク本体の端面には、前記第1の係合部と係合し、前記カバーが前記ロータヨークに対して周方向に回転することを防止する第2の係合部が形成されていることを特徴とするブラシレスモータのロータ。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のブラシレスモータのロータが略円筒状をなすステータの内側に配置されてなることを特徴とするブラシレスモータ。
  5. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のブラシレスモータのロータが略円筒状をなすステータの内側に配置され、ステアリングホイールの操舵力を補助することを特徴とするパワーステアリング装置用モータ。
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