JP2006086366A - 半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】素子の寿命を改善できる半導体レーザを提供する。
【解決手段】活性領域13は、p型半導体層15とn型半導体層17との間に設けられている。活性領域13は、一又は複数の障壁層19と、複数の井戸層21a、21bと、第1の光閉じ込め層23と、第2の光閉じ込め層25とを含む。障壁層19および井戸層21a、21bは、第1の光閉じ込め層23と第2の光閉じ込め層25との間に設けられている。井戸層21a、21bは、V族元素として窒素および砒素を少なくとも含むIII−V化合物半導体から成る。障壁層19、第1および第2の光閉じ込め層23、25は、GaAs半導体を基準にして負の歪みを有している。障壁層19、第1および第2の光閉じ込め層23、25は、製造上で生じるばらつきを超えて負の歪みを有している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体発光素子に関する。
特許文献1(特開2000−277867号公報)には、GaInNAs半導体レーザが記載されている。GaInNAs半導体レーザにおけるGaInNAs井戸層のN組成の最適値は、歪量と相分離のトレードオフの関係により、N組成の3%以下の領域である。しかしながら、この領域では、GaInNAs井戸層の歪量は大きい。これにより、長期的には、転位の発生、相分離の誘起等がおこり、GaInNAs半導体レーザの信頼性を確保することができない。この課題を解決するために、特許文献1のGaInNAs半導体レーザは、ガリウム砒素化合物半導体基板上に、第1のクラッド層と、発光活性層と、第2のクラッド層とを有する。活性層は、少なくとも一対の障壁層と井戸層を有する量子井戸構造を含む。井戸層が3%以下の窒素(N)含有量のGaInNAsから成り、障壁層はGaAsに対してマイナス(−)歪みを有するIII−V族化合物半導体材料から成る。更に、活性層に用いられる井戸層と障壁層とのエネルギー差が、伝導帯において4.8×10−20ジュール(300meV)以上、価電子帯において以上0.8×10−20ジュール(50meV)以上2.3×10−20ジュール(200meV)以下である。
特許文献2(特開2000−58964号公報)には、量子井戸構造を有する半導体レーザ素子が記載されている。光半導体素子の活性領域は、量子障壁層と、量子井戸層とを有する。量子井戸層は、窒素を含む2種類以上のV族元素とIII族元素とによって構成される材料から成る。量子障壁層は、窒素を含む2種類以上のV族元素とIII族元素とによって構成される材料から成る。この半導体レーザ素子によれば、スロープ効率の向上及び閾値の低下が得られる。
特許文献3(特開2001−358409号公報)には、半導体光デバイス装置が記載されている。半導体光デバイス装置は、InGa1−XAs1−Y(Xは0より大きく1以下、Yは0より大きく1以下)井戸層と、該井戸層の上下に隣接するGaNAs1−Z(Zは0より大きく1以下)バリア層とを含む量子井戸活性層を基板上に有する。半導体光デバイス装置によれば、発振光の波長制御が容易であり、かつ、安定した発振波長の得られる信頼性に優れた長波長用光源(1マイクロメートル帯)を有する半導体光デバイス装置が提供される。
特開2000−277867号公報 特開2000−58964号公報 特開2001−358409号公報
特許文献1では、平均歪みを
平均歪=SUM(各層の歪)×(各層の厚み)/SUM(各層の厚み)
(SUMは活性層全体にわたる和と示す)と規定し、障壁層にGaAsり小さい格子定数(マイナスの歪)をもつ層を用いて平均歪を低減、つまりゼロに近づけると特性向上に効果が得られると記載されている。平均歪の範囲は−0.5%〜+0.5%であり、障壁層にGaAsより小さい格子定数(マイナスの歪)をもつ層を用いて平均歪をゼロ(あるいはゼロの近傍)とする、すなわち「歪を補償する」ことにより、デバイス特性の向上させる技術が記載されている。
また、特許文献2の半導体レーザ素子では、量子井戸層および量子障壁層の歪み応力を互いに逆方向でその大きさが等しくしている。つまり、量子井戸の歪を補償している。
さらに、特許文献3では、圧縮歪みを有するGaInNAs井戸層と、引っ張り歪みを有するGaNAa障壁層を用いて量子井戸の歪を補償していると考えられる。
これらの文献では平均歪を小さくするまたはゼロ(あるいはゼロの近傍)とすることによって、すなわち「歪を補償する」ことによって、デバイス特性を向上させている。障壁層にGaAsより小さい格子定数(マイナスの歪)をもつ層(例えばGaNASなど)を用いるだけでは、長期信頼性は十分ではない。求められていることは、更なる長期信頼性の向上である。
そこで、本発明は、上記の事情を鑑みて為されたものであり、素子の寿命を改善できる半導体発光素子を提供することを目的とする。
本発明の一側面によれば、半導体発光素子は、(a)p型半導体層とn型半導体層との間に設けられており量子井戸構造を有する活性領域を備え、(a1)前記活性領域は、一又は複数の障壁層と、一又は複数の井戸層と、第1および第2の光閉じ込め層とを含み、(a2)前記障壁層および前記井戸層は、前記第1の光閉じ込め層と前記第2の光閉じ込め層との間に設けられており、(a3)前記井戸層は、V族元素として窒素および砒素を少なくとも含んでおりGaAsより大きい格子定数を有する第1のIII−V化合物半導体から成り、(a4)前記障壁層は、GaAsより小さい格子定数を有する第2のIII−V化合物半導体から成り、(a5)前記第1および第2の光閉じ込め層は、GaAsより小さい格子定数を有する第3のIII−V化合物半導体から成り、(a6)前記障壁層並びに前記第1および第2の光閉じ込め層の厚さの総和は、前記井戸層の厚さの総和の3倍より大きい。
この半導体発光素子によれば、活性領域に負の歪みが残る。負の歪みを有する活性領域を用いると、半導体発光素子の寿命が改善される。
本発明に係る半導体発光素子では、前記井戸層は、GaInNAs半導体およびGaInNAsSb半導体の少なくともいずれかから成ることが好ましい。
この半導体発光素子によれば、V族元素として窒素および砒素を少なくとも含むIII−V化合物半導体として、GaInNAs半導体およびGaInNAsSb半導体を用いることができる。
本発明に係る半導体発光素子では、前記障壁層の前記第2のIII−V化合物半導体は、GaNAs半導体、GaAsP半導体及びGaNAsP半導体の少なくともいずれかであり、前記第1および第2の光閉じ込め層は、GaNAs半導体、GaAsP半導体およびGaNAsP半導体の少なくともいずれかでから成ることが好ましい。
この半導体発光素子によれば、GaNAs半導体、GaAsP半導体及びGaNAsP半導体は、負の歪みを有する活性領域を実現できる。
本発明に係る半導体発光素子では、前記活性領域は第3および第4の光閉じ込め層をさらに含むことが好ましく、前記障壁層、前記井戸層、前記第1の光閉じ込め層および前記第2の光閉じ込め層は、前記第3の光閉じ込め層と前記第4の光閉じ込め層との間に設けられている。
この半導体発光素子によれば、第3および第4の光閉じ込め層が第1および第2の光閉じ込め層の外側に位置しているので、少なくとも2種類の光閉じ込め層を用いて、光ガイドと活性領域の歪み量との両方を調整できる。
本発明に係る半導体発光素子では、前記第3の光閉じ込め層と前記第4の光閉じ込め層はGaAs半導体からなることが好ましい。
第3及び第4の光閉じ込め層の材料として、基準となるGaAs半導体を用いるので、第1および第2の光閉じ込め層の厚さによって歪み量を調整できる。
本発明に係る半導体発光素子では、前記p型半導体層はIII族元素としてアルミニウムを含むIII−V化合物半導体から成り、前記n型半導体層はIII族元素としてアルミニウムを含むIII−V化合物半導体から成ることが好ましい。
この半導体発光素子によれば、負の歪みを有する活性領域にキャリアを閉じ込めることができる。
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の好適な実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。
以上説明したように、本発明によれば、素子の寿命を改善できる半導体発光素子が提供される。
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、半導体レーザといった半導体発光素子に係る本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
図1は、実施の形態に係る半導体レーザを示す図面である。半導体レーザ11は量子井戸構造を有する活性領域13を備え、活性領域13は、p型半導体層15とn型半導体層17との間に設けられている。活性領域13は、一又は複数の障壁層19と、複数の井戸層21a、21bと、第1の光閉じ込め層23と、第2の光閉じ込め層25とを含む。障壁層19および井戸層21a、21bは、第1の光閉じ込め層23と第2の光閉じ込め層25との間に設けられている。井戸層21a、21bは、V族元素として窒素および砒素を少なくとも含むIII−V化合物半導体から成り、また、GaAsより大きい格子定数を有しておりGaAs半導体を基準にして正の歪みを示す。障壁層19はIII−V化合物半導体から成る。第1および第2の光閉じ込め層23,25はIII−V化合物半導体から成る。障壁層19、第1および第2の光閉じ込め層23、25は、GaAsより小さい格子定数を有しておりGaAs半導体を基準にして負の歪みを示す。井戸層21a、21b、障壁層19、第1及び第2の光閉じ込め層23、25から成る活性領域13は、製造上で生じるばらつきを超えて負の平均歪みを有している。
この半導体レーザ11によれば、第1および第2の光閉じ込め層23、25の負の歪みの総和が井戸層21a、21bの正の歪みの総和より大きいので、活性領域に負の歪みが残る。負の歪みを有する活性領域13を用いると、半導体レーザ11の寿命が改善される。
半導体レーザ11では、井戸層21a、21bは、V族元素として窒素および砒素を少なくとも含むIII−V化合物半導体として、GaInNAs半導体およびGaInNAsSb半導体を用いることができる。
半導体レーザ11では、障壁層19のIII−V化合物半導体は、GaNAs半導体、GaAsP半導体及びGaNAsP半導体の少なくともいずれかであることが好ましい。GaNAs半導体、GaAsP半導体及びGaNAsP半導体は、負の歪みを有する活性領域を実現するために役立つ。また、第1および第2の光閉じ込め層23、25は、GaNAs半導体、GaAsP半導体およびGaNAsP半導体の少なくともいずれかでから成ることが好ましい。GaNAs半導体、GaAsP半導体及びGaNAsP半導体は、負の歪みを有する活性領域を実現するために役立つ。
図2は、量子井戸構造を含む半導体レーザの伝導バンドのダイアグラムを示す図面である。p型半導体層15およびn型半導体層17は、キャリアを活性領域13に閉じ込めるように働く。例えば、n型半導体層17の伝導バンドは、活性領域13内の半導体層の伝導バンドより高く、n型半導体層17は電子に対する障壁を提供する。図示されてないが、p型半導体層15の価電子バンドは、活性領域13内の半導体層の価電子バンドより大きく、p型半導体層15はホールに対する障壁を提供する。既に説明したように、障壁層19、第1および第2の光閉じ込め層23、25はGaAsを基準にして負の歪みを有している。つまり、歪みは各層の格子定数から得られる歪量であり、
歪み=((その層の格子定数)−(GaAsの格子定数))/(GaAsの格子定数)
と定義する。ここで、該当層の格子定数がガリウムヒ素の格子定数より大きい場合は歪みがプラスとなり、その層の格子定数がガリウムヒ素の格子定数より小さい場合は歪みがマイナスとなる。
活性領域に負の歪みが残すために、より具体的には、障壁層19並びに第1および第2の光閉じ込め層23、25の厚さの総和を、井戸層21a、21bの厚みの総和の3倍より大きくする。例示的に説明すれば、GaInNAs系半導体を用いる半導体レーザ(1.3−1.55マイクロメートル帯)では、井戸層の歪み(d−dGaAs)/dGaAsは、2パーセント前後になる(dは井戸層の格子定数を示し、dGaAsはGaAsの格子定数を示す)。例えば、Ga0.66In0.340.01As0.99半導体は約2.2パーセントの歪みを有するが、組成によって、1.8パーセント程度の歪みにもなる。一方、GaAsに対して負の歪みを有する層、例えば、GaNAs半導体、GaAsP半導体、GaNAsP半導体といった、インジウムを含まずガリウムおよびヒ素を少なくとも含むIII−V化合物半導体の歪み(d−dGaAs)/dGaAsは、大きくても−0.6パーセント程度である(dは障壁層および光閉じ込め層の格子定数を示す)。例えば、GaN0.011As0.989半導体の歪みは−0.22パーセントであり、GaP0.11As0.9半導体の歪みは−0.57パーセントである。活性領域における平均歪み
SUM(井戸層の半導体の歪み)×(井戸層の厚み)+SUM(負の歪みを有する半導体の歪み)×(負の歪みを有する半導体層の厚み)
を負にする。上記の歪み値を参照すると、負の歪みを有する半導体の歪みが相対的に大きく井戸層の半導体の歪みが相対的に小さい活性領域では
RATIO=SUM(負の歪みを持つ半導体層の厚みの総和)/SUM(井戸層の厚みの総和)
=1.8/0.6=3
となる。負の歪みを有する半導体層に歪みが小さい半導体材料を用いる場合、および/または井戸層に歪みが大きい半導体材料を用いる場合には、このRATIOは3より大きくなる。
図2を参照しながら具体的に説明すれば、和Dが障壁層19の厚みDと、第1の光閉じ込め層23の厚さD23と、第2の光閉じ込め層25の厚さD25との総和によって定義され、和Dが井戸層21a、21bの厚みDの総和によって定義される。比D/D>3である。この条件を満たす活性領域は負の歪みを有している。
図1を再び参照すると、半導体レーザ11は、活性領域13上に設けられたp型クラッド層27を含む。p型クラッド層27上にはp型キャップ層29が設けられている。一例では、キャップ層29は、ストライプ形状を有している。キャップ層29上には、アノード電極31が設けられている。半導体レーザ11は、活性領域13を搭載する基板33を含む。基板33の裏面には、カソード電極35が設けられている。基板33としては、例えば、n型GaAs基板を使用できる。
半導体レーザでは、p型半導体層15はIII族元素としてアルミニウムを含むIII−V化合物半導体から成り、n型半導体層17はIII族元素としてアルミニウムを含むIII−V化合物半導体から成ることが好ましい。これらの半導体としては、例えば、AlGaAs半導体、AlGaInAs半導体が使用される。この半導体レーザによれば、負の歪みを有する活性領域にキャリアを閉じ込めることができる。p型クラッド層27としては、例えば、AlGaAs半導体を使用できる。キャップ層29としては、例えば、GaAs半導体を使用できる。アノード電極31としては、例えば、チタン(Ti)と白金(Pt)と金(Au)の多層膜を使用できる。カソード電極35としては、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)とニッケル(Ni)の合金層を使用できる。
図3(A)、図3(B)および図3(C)は、実施の形態に係る半導体レーザの変形例である。これらの図面に示されるように、活性領域13a、13b、13cは、それぞれ、第3の光閉じ込め層37a、37b、37cおよび第4の光閉じ込め層39a、39b、39cをさらに含むことができる。変形例の半導体レーザでは、第1の光閉じ込め層23a、23b、23cおよび第2の光閉じ込め層25a、25b、25cは、それぞれ、第3の光閉じ込め層37a、37b、37cと第4の光閉じ込め層39a、39b、39cとの間に設けられていることが好ましい。この半導体レーザ11a、11b、11cによれば、第3の光閉じ込め層37a、37b、37cおよび第4の光閉じ込め層39a、39b、39cが、それぞれ、第1の光閉じ込め層23a、23b、23cおよび第2の光閉じ込め層25a、25b、25cの外側に位置しているので、少なくとも2種類の光閉じ込め層を用いて、光閉じ込めと活性領域の歪み量との両方を調整できる。好適な実施例では、第3の光閉じ込め層37a、37b、37cおよび第4の光閉じ込め層39a、39b、39cはGaAs半導体からなる。第3および第4の光閉じ込め層の材料として、基準となるGaAs半導体を用いるので、第1および第2の光閉じ込め層の厚さによって歪み量を調整できる。必要な場合には、光閉じ込め層の半導体材料は障壁層の半導体材料と異なるようにしてもよい。また、必要な場合には、第1の光閉じ込め層の半導体材料は第2の光閉じ込め層の半導体材料と異なるようにしてもよい。さらに、必要な場合には、第3および第4の光閉じ込め層の半導体材料はGaAs半導体と異なるようにしてもよい。
(実施例1)
この実施例の半導体レーザは、図3(A)に示された構造(第1および第2の光閉じ込め層の厚さが第3および第4の光閉じ込め層の厚さより厚い)を有する。第1および第2の光閉じ込め層の各々は、116nmの厚さを有するGaN0.0011As0.989半導体層であり、障壁層は8nmの厚さを有するGaN0.0011As0.989半導体層である。第3および第4の光閉じ込め層の各々は、24nmの厚さを有するGaAs半導体層である。
(実施例2)
この実施例の半導体レーザは、図3(B)に示された構造(第1および第2の光閉じ込め層の厚さが第3および第4の光閉じ込め層の厚さより厚い)を有する。第1および第2の光閉じ込め層の各々は、93nmの厚さを有するGaN0.0011As0.989半導体層であり、障壁層は8nmの厚さを有するGaN0.0011As0.989半導体層である。第3および第4の光閉じ込め層の各々は、47nmの厚さを有するGaAs半導体層である。
(実施例3)
この実施例の半導体レーザは、図3(C)に示された構造(第1および第2の光閉じ込め層の厚さが第3および第4の光閉じ込め層の厚さとほぼ同じ)を有する。第1および第2の光閉じ込め層の各々は、70nmの厚さを有するGaN0.0011As0.989半導体層であり、障壁層は8nmの厚さを有するGaN0.0011As0.989半導体層である。第3および第4の光閉じ込め層の各々は、70nmの厚さを有するGaAs半導体層である。
これらの実施例において、n型クラッド層は1.6マイクロメートル厚のAlGaAs半導体から成り、p型クラッド層は1.5マイクロメートル厚のAlGaAs半導体から成る。基板は、350マイクロメートル厚のGaAs製支持基体である。各井戸層は、7nmの厚さを有するGa0.66In0.340.004As0.989半導体層である。また、Ga0.66In0.340.004As0.989半導体の歪みは+2.3パーセントであり、一方、GaN0.0011As0.989半導体の歪みは−0.22パーセントである。
図4は、図3(A)〜図3(D)に示された半導体レーザの寿命を示すグラフである。横軸は、負の歪みを有する半導体層の総和を示し、縦軸は半導体レーザの寿命を相対値で示す。測定点P0は、図3(D)に示される構造を有する半導体レーザの寿命を示し、この構造は第1および第2の光閉じ込め層を含まず第3および第4のGaAs光閉じ込め層を有しており、この半導体レーザの寿命の相対値は1である。測定点P1は、148nm(70+70+8)の負の歪み層を含み、この半導体レーザの寿命の相対値は120である。測定点P2は、194nm(93+93+8)の負の歪み層を含み、この半導体レーザの寿命の相対値は1000である。測定点P3は、240(116+116+8)nmの負の歪み層を含み、この半導体レーザの寿命の相対値は2500である。この結果は示すように、負の歪み層が大きくなるにつれて、半導体レーザの寿命が大きくなる。
引き続いて、図5(A)〜図5(F)を参照しながら、GaInNAs井戸層を含む活性領域を有する端面発光型レーザダイオードをGaAs基板(Siドープ)51上に作製する。ガリウム(Ga)、インジウム(In)、窒素(N)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)原料として、それぞれ、有機金属材料のTEGa、TMIn、DMHy、TBAsおよびTMAlを用いることができる。
図5(A)に示されるように、GaAs基板51上に、MOVPE法により半導体膜を順に成長する。n型ドーパントを添加した200nm厚のGaAsバッファ膜53を成長する。その膜53上に、n型ドーパントを添加した1.5マイクロメートル厚のAlGaAsクラッド膜55を成長し、その膜55上に活性領域57を成長する。活性領域57は、アンドープGaAs光閉じ込め膜、アンドープGaNAs光閉じ込め膜、アンドープGaInNAs井戸膜、アンドープアンドープGaNAs障壁膜、アンドープGaInNAs井戸膜、アンドープGaNAs光閉じ込め膜から構成される。これらの半導体膜は、n型クラッド層55上に順に形成される。活性領域57の構造は、例えば、既に説明された構造を有することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。次いで、活性領域57の上にp型ドーパントを添加した1.5マイクロメートル厚のAlGaAsクラッド膜59を成長し、この膜59上にp型ドーパントを添加したGaAsキャップ膜61を成長する。図5(B)に示されるように、フォトリソグラフィ法を用いてGaAsキャップ膜61をストライプ状のGaAsコンタクト領域61aを形成する。
図5(C)に示されるように、このようにして得られたエピタキシャルウエハ上に酸化膜63を形成する。図5(D)に示されるように、この酸化膜に対してフォトエッチング工程により酸化膜の所望領域を除去して開口63aを形成する。この後に、図5(E)に示されるように、開口63aにp型電極65を形成する。続いて、図5(F)に示されるように、基板51の裏面にn型電極67を形成する。このようにして得られたウエハを壁開により切断して、共振器長600マイクロメートルの半導体レーザのチップを装置を得ることができる。半導体レーザの活性領域57の平均歪が正(プラス)の領域では十分な素子寿命が得られていないが、これに対して平均歪がゼロより小さくなって初めて寿命が大きくなる。また、実験結果によれば、平均歪の絶対値を負の領域で大きくすればするほど、寿命が大きくなることを示している。
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本実施の形態では、端面発光型の半導体レーザについて例示的に説明しているけれども、例えば、発光ダイオードおよび半導体光増幅素子等にも同様に使用できる。本発明は本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
図1は、実施の形態に係る半導体レーザを示す図面である。 図2は、量子井戸構造を含む半導体レーザの伝導バンドのダイアグラムを示す図面である。 図3(A)、図3(B)および図3(C)は、実施の形態に係る半導体レーザの変形例を示す図面である。図3(D)は、半導体レーザの一例を示す図面である。 図4は、図3(A)〜図3(D)に示された半導体レーザの寿命を示すグラフである。 図5(A)は、GaAsウエハ上にエピタキシャル膜を形成する工程を示す図面である。図5(B)は、ストライプ状のコンタクト領域を形成する工程を示す図面である。図5(C)は、酸化膜を形成する工程を示す図面である。図5(D)は、酸化膜に開口を形成する工程を示す図面である。図5(E)は、アノード電極を形成する工程を示す図面である。図5(F)は、カソード電極を形成する工程を示す図面である。
符号の説明
11、11a、11b、11c…半導体レーザ、13、13a、13b、13c…活性領域、15…p型半導体層、17…n型半導体層、19…障壁層、21a、21b…井戸層、23、23a、23b、23c…第1の光閉じ込め層、25、25a、25b、25c…第2の光閉じ込め層、27…p型クラッド層、29…キャップ層、31…アノード電極、33…基板、35…カソード電極、37a、37b、37c…第3の光閉じ込め層、39a、39b、39c…第4の光閉じ込め層

Claims (6)

  1. p型半導体層とn型半導体層との間に設けられており量子井戸構造を有する活性領域を備え、
    前記活性領域は、一又は複数の障壁層と、一又は複数の井戸層と、第1および第2の光閉じ込め層とを含み、
    前記障壁層および前記井戸層は、前記第1の光閉じ込め層と前記第2の光閉じ込め層との間に設けられており、
    前記井戸層は、V族元素として窒素および砒素を少なくとも含んでおりGaAsより大きい格子定数を有する第1のIII−V化合物半導体から成り、
    前記障壁層は、GaAsより小さい格子定数を有する第2のIII−V化合物半導体から成り、
    前記第1および第2の光閉じ込め層は、GaAsより小さい格子定数を有する第3のIII−V化合物半導体から成り、
    前記障壁層並びに前記第1および第2の光閉じ込め層の厚さの総和は、前記井戸層の厚さの総和の3倍より大きい、ことを特徴とする半導体発光素子。
  2. 前記井戸層の前記第1のIII−V化合物半導体は、GaInNAs半導体およびGaInNAsSb半導体の少なくともいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載された半導体発光素子。
  3. 前記障壁層の前記第2のIII−V化合物半導体は、GaNAs半導体、GaAsP半導体及びGaNAsP半導体の少なくともいずれかであり、
    前記第1および第2の光閉じ込め層の前記第3のIII−V化合物半導体は、GaNAs半導体、GaAsP半導体およびGaNAsP半導体の少なくともいずれかである、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された半導体発光素子。
  4. 前記活性領域は第3および第4の光閉じ込め層をさらに含み、
    前記障壁層、前記井戸層、前記第1の光閉じ込め層および前記第2の光閉じ込め層は、前記第3の光閉じ込め層と前記第4の光閉じ込め層との間に設けられている、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
  5. 前記第3の光閉じ込め層と前記第4の光閉じ込め層はGaAs半導体からなる、ことを特徴とする請求項4に記載された半導体発光素子。
  6. 前記p型半導体層はIII族元素としてアルミニウムを含むIII−V化合物半導体から成り、
    前記n型半導体層はIII族元素としてアルミニウムを含むIII−V化合物半導体から成る、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された半導体発光素子。
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