JP2006083176A - 骨成長促進ペプチドを含む歯科用製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】骨/歯の成長を促進するために投与することができる歯科用製品の提供。
【解決手段】骨成長を促進する化合物が溶解しているか、分散しているか、またはコーティングされていることによって改善されている。好ましい化合物は、開示された10〜50個のアミノ酸を含むペプチド配列である。この配列は、インテグリン結合モチーフ(例えば、RGD配列)および基質細胞外リン糖タンパク質のRGD配列に隣接している残りのアミノ酸を含むことを特徴とする。この配列を練り歯磨きまたは口内洗浄剤に分散するように製剤化し、骨/歯の成長を促進するために投与することができる。歯科用製品をある期間にわたって繰り返し使用すると、良好な歯の健康が向上する。
【選択図】図1

Description

本発明は、一般的に、歯科用製品の分野、より詳細には、骨格疾患の治療において有用となるように補われた歯科用製品に関する。
練り歯磨き、口内洗浄剤、およびデンタルフロスを含む広範囲の歯科用製品が用いられている。これらの製品は、一般的に、歯の疾患を減らすことを目的としている。しかしながら、骨格組織および無機質代謝の障害が非常に多くの重大な健康上の問題を引き起こし、歯の問題に特有のものである場合があることが明確に記録に残されている。
ヒトにおいて、最大骨量は15歳から40歳の間で生じ、「ピーク骨量」と呼ばれる。このようなピーク骨量年齢の後、骨量はだんだんと減少し始め、それに応じて骨の機械的強度は低下する。結果として、機械的強度があるレベルまで低下すると、骨折するリスクが高くなる。この自然に起こる出来事は、病気を起こすほどひどければ骨粗鬆症と呼ばれる。
骨喪失が起こる速さは、個体間で、特に性別に関して異なる。女性では、骨喪失の速さは、閉経直後に、利用可能なエストロゲン(健康な骨代謝の維持に重要な役割を果たすホルモン)が著しく減少するため加速する(図1を参照のこと)。閉経後骨粗鬆症は、かなりの数の女性を苦しめているので重要な臨床上の問題である。注目すべきことに、骨粗鬆症患者の女性対男性比は3:1である。
骨疾患の大部分は、骨無機質の喪失、骨の脆弱化、その結果として「病的骨折」と呼ばれる骨折の頻度および重篤度の増加を特徴とする。老齢者集団において、骨折した老齢者の多くは移動が困難であり、多くの場合、他の精神的および肉体的な機能の悪化につながり、痴呆、筋無力、および/または疲労をもたらすので、このことは重大な社会的問題も含んでいる。さらに、股関節骨折または骨盤骨折の結果として起こる肺塞栓症などの血栓性事象によって、罹患率および疼痛が著しく増加する。
米国のみで、2000年までに、5200万人の45歳を超える女性が骨粗鬆症に罹患していると言われている。現時点での全世界の骨粗鬆症人口は約2億人である。米国のみでの病的骨折の年間発生数は約150万件である。米国および世界における骨粗鬆症患者の年間医療費は、それぞれ140億ドルおよび600億ドルであると見積もられている。
腎不全もまた無機質代謝および骨格形成に関連する重大な健康上の問題であり、その患者の数は急速に増加している。これらの患者において、腎機能は数年から10年の期間にわたってだんだんと低下する。腎機能が健康なレベルの約1/4になると、患者は慢性腎不全に分類される。腎機能が健康なレベルの約1/6になると、患者は透析を始める必要があり、末期腎疾患(ESRD)と呼ばれる。慢性腎不全患者では、カルシウムおよびリン酸塩などの重要な無機質の血清中濃度は正常なホメオスタシスを失い、これは骨格奇形をもたらす。これは、腎不全からの続発性骨粗鬆症である腎性骨形成異常(ROD)と呼ばれる。RODもまた骨粗鬆症と同じように病的骨折を引き起こす。米国における末期腎疾患(ESRD)の有病率は急速に増加しており、2000年に30万人に達しようとしている。ESRDは慢性腎不全の一部であるので、非常に多くのROD患者がいるはずである。
パジェット病、くる病、大理石骨病、副甲状腺機能亢進症などの他のいくつかの骨格組織疾患および無機質代謝疾患が存在し、多くの患者がこれらの疾患に罹患している。
代謝的に、骨は、骨吸収および骨形成が絶えず起こっている(再構築している)非常に活発な器官である。骨吸収は、単球/マクロファージ系列の細胞から分化した破骨細胞によって促進される。破骨細胞は骨の表面に付着し、酸および酵素を分泌することによって骨組織を分解する。骨芽細胞は、分解された骨組織に付着し、主としてカルシウムおよびリン酸塩によって石灰化される骨基質タンパク質を分泌することによって骨形成を促進する。骨芽細胞は骨細胞(骨細胞(osteocyte))に分化し、骨組織の一部になる。
骨形成を促進するために、または骨吸収を減少させるために、非常に多くの実験アプローチが試みられている。例えば、BMP(骨形成タンパク質)、TGFβ(トランスフォーミング成長因子β)、IGF(インシュリン様成長因子)、線維芽細胞成長因子(FGF)などの成長因子は骨形成において強力な生物学的活性を有することが知られている。特に、BMPのいくつかのサブファミリー分子(例えば、BMP-2)は硬組織の最も強力な成長因子の1つであるとみなされている。しかしながら、これらの因子は全身性骨疾患の治療剤として開発されていない。それは、これらの中で選択的に骨に送達されるものは1つもなく、BMPなどのこれらの因子の一部は軟組織を硬組織に変換するからである。これは異所性石灰化と呼ばれ、因子が全身に用いられた時に重大な副作用がある。さらに、骨形成および骨吸収のプロセスにはかなり密接な関係があり、このために骨形成の選択的増加または骨再吸収の選択的阻害は極端に難しい。
現在、骨喪失の有効な治療法が必要とされている。エストロゲン、カルシトニン、ビタミンD、フッ化物、イプリフラボン、ビスホスホネートなどの治療剤、およびいくつかの他の治療剤は満足のいく治療手段を提供しなかった(ゲンナリ(Gennari)ら、Drug Saf.(1994)11(3):179-95)。
エストロゲンおよびその類似体は閉経後骨粗鬆症患者によく投与される。エストロゲン補充療法は閉経開始直前または閉経開始後のエストロゲン投与を伴う。しかしながら、ステロイドホルモンによくあるように、エストロゲンの長期使用には乳癌および他の婦人科学癌などの重大な副作用がある(シュネイダー(Schneider)ら、Int.J.Fertil.Menopausal Study(1995)40(1)40-53)。
甲状腺が産生する内因性ホルモンであるカルシトニンは、破骨細胞受容体を介して破骨細胞に選択的に結合し、破骨細胞を不活化する。破骨細胞は骨組織を溶解することができる唯一の細胞であるので、カルシトニン結合は、破骨細胞により引き起こされる骨の分解をブロックするか、遅くすることができる。しかしながら、破骨細胞はかなり急速にこの薬物に対して耐性になるので、この生物学的機構は長続きしない。従って、カルシトニンの使用は有効な治療の選択肢を提供しない。
フッ化物は、ヒトに投与されると骨量を増加させることが示されている。しかしながら、骨量は増加するが、機械的強度は増加しない。従って、明らかな骨量の増加にもかかわらず、骨折のリスクは依然としてある(フラツル(Fratzl)ら、J.Bone Mineral Res.(1994)9(10):1541-1549)。さらに、フッ化物投与には重大な健康上のリスクがある。
イプリフラボンは、世界の限られた地域において骨粗鬆症を治療するのに使用されている。しかしながら、この化合物の実際の効力には疑問の余地があり、骨疾患の有用な治療剤として広く受け入れられていない。
ビスホスホネートは、ピロホスフェートから誘導体化された化合物である。合成は、2つのリン原子の間に位置する酸素原子を炭素で置換し、この炭素を様々な置換基で修飾することを伴う。ビスホスホネートは骨吸収を抑制することが知られているが、骨形成にはほとんど効果がない。さらに、ビスホスホネートは骨表面に付着し、かなり長期間そこに残り、このため骨組織代謝回転が長期間低下する。骨組織は絶えず代謝回転する必要があるので、この代謝回転の低下は最終的に骨の劣化をもたらす(ルフキン(Lufkin)ら、Osteoporos.Int.(1994)4(6):320-322;チャパレル(Chapparel)ら、J.Bone Miner.Res.(1995)10(1):112-118)。
前記で述べた薬剤に関する別の重大な問題は、フッ化物およびイプリフラボンを除く薬剤が経口投与に適さず、従って、非経口投与しなければならないことである。骨障害は、多くの場合、慢性であり、長期間の治療を必要とするので、治療剤が経口投与に適していることが重要である。
要約すると、骨喪失を予防または治療することができる治療剤がかなり必要とされている。特に、骨吸収にも軟組織にも影響を及ぼすことなく骨形成および/または骨芽細胞数を選択的に増加することができる新薬が非常に望まれる。
骨格および無機質代謝に関連した別の主要な健康上の問題は歯に関する問題である。米国だけで、6700万人が歯周病に罹患しており、その年間治療費は2000年で約60億ドルであると見積もられている。全人口の90%が生涯でう蝕を経験すると言われている。う蝕を治療するための年間費用は米国のみで1年に500億ドルを超えている。
う蝕は普遍的な疾患であり、子供および成人がかかる。他方で、歯周病は、主として成人、特に老人がかかる。多くの場合において、患者の歯肉に炎症が起き、歯肉が破壊され、歯を支える歯槽骨が損なわれる。歯根の中心を構成するセメントも傷つけられ、その後に歯は抜け落ちる。歯喪失の最も一般的な治療法の1つは歯科用インプラントの使用を伴う。歯が失われた空間に人工インプラント(骨と一体化する歯科用インプラント)が配置される。重篤な症例では義歯全体をインプラントと取り替える。しかしながら、歯槽骨へのインプラントの固定が必ずしもうまくいくとは限らないので、インプラントは頻繁に緩むか、または抜け落ちる。これらの患者において歯槽骨はいくらか傷ついているので、インプラントは必ずしも歯槽骨によって十分に支えられているとは限らない。歯槽骨がひどく傷ついている場合、自家骨移植が行われる。この場合、硬組織が再生され、洞がもり上がるように、同じ患者の別の骨格組織から採取された骨移植片を傷ついている歯槽領域に移植する。これらの治療法は高価な生体適合材料および/または高度に熟練した技術を必要とするので、治療費は通常非常に高い。
う蝕は口腔内の酸性条件によって引き起こされると考えられている。例えば、糖は酸に変換され、歯の表面を溶解する。多くの場合、エナメル質および象牙質の一部だけが冒されるが、重篤な場合、損傷は歯髄腔に達することがあり、ひどい疼痛を引き起こす。最も一般的な治療法は、う蝕損傷に、金属または金属酸化物などの分解不可能な材料を詰めることである。う蝕の治療は、これらの材料および歯医者による技術によっておおかた決まり、多くの場合、高価である。
歯科分野において、いくつかの治療剤が開発および使用されているが、一般的に、これらは抗炎症薬、鎮痛薬、および抗生物質にすぎない。歯周硬組織を直接改善する広く有効な治療剤は開発されていない。明らかに、歯槽骨および/または歯の再生を促進し、歯組織の形成を助ける象牙芽細胞/骨芽細胞の数および活性を増加させる治療剤が非常に求められている。
発明の概要
練り歯磨き、口内洗浄剤、およびデンタルフロスを含む歯科用製品が開示される。この製品は骨成長を促進する化合物からなる。化合物は、骨格の喪失または弱さに関連する状態の治療または予防に有用な任意の化合物クラスである。化合物は、10〜50のモノマー(例えば、アミノ酸)単位を含むペプチドまたはその類似体である。アミノ酸配列はインテグリン結合モチーフ配列を含み、インテグリン結合モチーフ配列はD-コンフォメーションでもL-コンフォメーションでもよい。化合物における残りのモノマー単位(インテグリン結合モチーフ以外の配列)はアミノ酸類似体でもよいが、好ましくは、天然型タンパク質である基質細胞外リン糖タンパク質のRGD配列に隣接しているアミノ酸配列と実質的に同じ配列を有する天然型アミノ酸である(ローウェ(Rowe)ら、Genomics(2000)67:56-68)。
本発明の1つの局面は、一組のペプチドおよび/またはペプチド類似体である。
本発明の別の局面は、悪化した領域において歯および/または歯槽骨の成長を促進するのに十分な濃度の本発明の化合物を含む練り歯磨きを提供することである。
本発明のさらに別の局面は、悪化した領域において歯および/または歯槽骨の成長を促進するのに十分な濃度の本発明の化合物を含む口内洗浄剤を提供することである。
本発明のさらに別の局面は、歯および/または歯槽骨に繰り返し適用すると、悪化した領域において歯および/または歯槽骨の成長が促進されるような量で本発明の化合物がコーティングされているおよび/または埋め込まれているデンタルフロスである。
本発明の特徴は、本発明の化合物が、DコンフォメーションまたはLコンフォメーションのインテグリン結合モチーフ配列を含むことである。
本発明の利点は、本発明の化合物が骨格の成長を促進することである。
本発明の別の利点は、本発明の化合物が、新たな骨格成長の表面上で骨芽細胞の量、ことによると象牙芽細胞の量を増大させることである。
本発明の別の局面は、十分な濃度の本発明の化合物を含み、歯および/もしくは歯槽骨の損傷を妨げるか、または傷ついた歯および/もしくは歯槽骨において硬組織を再生するために歯髄、歯根と歯肉との間の空間、または歯槽骨に注射することができる、治療に使用するための製剤を提供することである。
本発明の目的は、本発明の任意の製剤/組成物を投与/適用することによって骨格の喪失を治療する方法を提供することである。
これらのおよび他の目的、局面、特徴、および利点は、本開示を読めば当業者に明らかになると思われる。
好ましい態様の詳細な説明
本発明の練り歯磨き、口内洗浄剤、デンタルフロス製品、ペプチド、類似体、製剤、および方法を説明する前に、本発明は、説明されるどの特定の態様にも限定されず、もちろん異なってもよいことが理解されるべきである。本明細書で用いられる専門用語は特定の態様だけを説明するのに用いられ、本発明の範囲を限定すると意図されないことも理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
値の範囲が定められている場合、その範囲の上限と下限との間の、間のそれぞれの値(特に文脈によってはっきりと規定されていない限り下限の単位の1/10まで)も詳細に開示されることが理解される。述べられた任意の値または述べられた範囲内の間の値と、他の述べられた任意の値または述べられた範囲内の間の値との間の、それぞれの狭い範囲が本発明に含まれる。これらの狭い範囲の上限および下限は、独立して、この範囲に含まれても、含まれなくてもよく、各範囲(ここで、限界のいずれかが狭い範囲に含まれるか、限界のいずれも狭い範囲に含まれないか、または両限界が狭い範囲に含まれる)もまた、述べられた範囲においてはっきり限定して排除される任意の限界に応じて本発明に含まれる。述べられた範囲が限界の一方または両方を含む場合、含まれる限界のいずれかまたは両方を排除する範囲も本発明に含まれる。
特に定義のない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書に記載のものと同様のまたは等価な任意の方法および材料を使用することができるが、今から好ましい方法および材料を説明する。本明細書で述べる全ての刊行物は、方法および/または材料を開示および説明するために参照として本明細書に組み入れられる。これらの刊行物は、方法および/または材料に関して引用される。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきりと規定されていない限り複数の指示物を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「1つのペプチド」への言及は複数のこのようなペプチドを含み、「その方法」への参照は1つまたはそれ以上の方法および当業者に周知のその等価物などへの言及を含む。
本明細書で議論される刊行物は、単に、本願の出願日前の刊行物を開示するために示される。本明細書には、先行発明に基づいて本発明がこのような刊行物に先行する権利がないと認められると解釈されるものは何もない。さらに、示された公開日は実際の公開日とは異なる場合があり、実際の公開日を別個に確認する必要がある場合がある。
定義
「歯科用製品」という用語は、口に用いられる全ての製品および任意の製品を意味する。好ましくは、製品は消費者によって定期的に用いられる(例えば、練り歯磨き、口内洗浄剤、およびデンタルフロス)。しかしながら、この用語は、口腔外科医および歯医者しか使用しない製品(例えば、窩洞に詰めるために用いられる歯科用インプラントおよび歯科材料)を含む。
「治療する(treat)」、「治療(treating)」、「治療(treatment)」などの用語は本明細書で同義に用いられ、所望の薬理学的な効果および/または生理学的な効果を得ることを意味する。この効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防する点で予防的なものでもよく、ならびに/または疾患および/もしくはその疾患による副作用を部分的もしくは完全に治す点で治療的なものでもよい(例えば、ビタミンDの効果を向上させる)。本明細書で使用する「治療」は、脊椎動物、詳細には哺乳動物、最も詳細にはヒトにおける疾患を治療することを含み、以下を含む:
(a)疾患の素因がある可能性があるが、疾患を有するとまだ診断されていない被検体において疾患が生じないようにすること;
(b)疾患を阻害すること(すなわち、発症をくいとめること);または
(c)疾患を軽減すること(すなわち、疾患を後退させること)。
本発明は、特に、骨喪失を経験したか、または骨喪失を経験すると予想される患者を治療することができるペプチドに関し、従って、特に、骨喪失の影響を予防、阻害、または軽減することに関する。様々な異なる基準に基づいて測定することができる治療的に検出可能かつ有益な効果(骨成長の増加、骨強度の増加、または骨に関する疾患の治療に関して望ましいと当業者に一般的に理解されている他の特徴を含む)を被検体が経験すれば、被検体は「治療」されている。
「抗体」という用語は、抗原に結合することができる免疫グロブリンタンパク質を意味する。本明細書で使用する「抗体」という用語は、関心対象の抗原または抗原断片に結合することができる抗体断片(例えば、F(ab')2、Fab'、およびFab)を含むことが意図される。
「特異的に結合する」という用語は、特定のペプチド(特に、本発明のペプチド)への抗体の高アビディティ結合および/または高親和性結合を意味する。特異的な標的エピトープへの抗体の結合は、そのペプチド上の他のエピトープまたは他のペプチド上の他のエピトープへの抗体の結合より強い。関心対象のペプチドに特異的に結合する抗体は、弱く依然として検出可能なレベル(例えば、関心対象のペプチドに対して示される結合の10%またはそれ以下)で他のペプチドに結合することができてもよい。このような弱い結合またはバックグラウンド結合は、例えば、適切な対照を使用することによって、関心対象のペプチドへの特異的な抗体結合と容易に区別することができる。
「骨格の喪失」という用語は、骨格の量、骨格の物質もしくは基質もしくは任意の成分(例えば、カルシウムおよびリン酸塩)が減少するか、または骨が(例えば、破壊耐性能力の点から見て)脆弱化する任意の状況を意味する。
「骨格」という用語は骨および歯を両方とも含む。同様に、「骨格の」という用語は骨および歯を両方とも意味する。
「骨粗鬆症」という用語は、骨喪失を伴う(すなわち、骨量の減少または任意の原因に起因する物質の量の減少を伴う)任意の状態を意味することが意図される。この用語は、特に、骨の無機質脱落、閉経後もしくは閉経周辺期のエストロゲン減少、または神経損傷に起因する骨喪失をもたらす。
「被検体」という用語は、任意の脊椎動物、詳細には任意の哺乳動物を意味し、最も詳細にはヒト被検体を含む。
発明全般
一般的に、本発明は、骨成長を促進する化合物を含む任意の歯科用製品を含む。この製品は、好ましくは、練り歯磨き、口内洗浄剤、またはデンタルフロスである。化合物は、好ましくは、10〜50個のアミノ酸を含むペプチドである。アミノ酸は、好ましくは、天然型の20種類のL-アミノ酸のうちの1つである。しかしながら、D-アミノ酸が存在してもよく、同様にアミノ酸類似体が存在してもよい。本発明の配列は、L型またはD型のどちらでもよいが、好ましくはL-コンフォメーションのインテグリン結合モチーフ(例えば、RGD配列)を含む。本発明のペプチドはC末端がアミド化されてもよく、アミド化されてなくてもよく、またはN末端がカルボキシル化されてもよく、カルボキシル化されてなくてもよい。本発明のペプチドは、L-異性体型またはD-異性体型のグリコサミノグリカン結合モチーフ(例えば、SGDG配列)を含んでもよく、含まなくてもよい。本発明の化合物は生物学的活性によってなおさらに特徴付けられ、すなわち、骨格の成長ならびに骨芽細胞もしくは象牙芽細胞の成長または新たな骨格成長の表面への骨芽細胞もしくは象牙芽細胞の動員を促進する。
具体的な歯科用製品
本発明は、全てのタイプの歯科用製品に広く適用することができ、特に、練り歯磨き、口内洗浄剤、およびデンタルフロスなどの消費者が定期的に使用する製品に関して有用である。
本発明の化合物が溶解、懸濁、または混合されていることによって改善することができる練り歯磨きの特定の例として、米国特許第6,045,780号;同第5,951,966号;同第5,932,193号;同第5,932,191号;および同第5,876,701号に開示および説明されている練り歯磨き組成物が挙げられる。これらの特許ならびにこれらの特許において引用されている特許および刊行物は、本発明と共に使用することができる様々な練り歯磨き組成物を開示および説明するために参照として本明細書に組み入れられる。
本発明の化合物はまた、全てのタイプの口内洗浄剤と共に使用することができる。本明細書で開示された特定のペプチドを含む様々な化合物は、米国特許第5,993,785号;同第5,817,295号;同第5,723,106号;同第5,707,610号;同第5,549,885号;同第5,470,561号;同第5,466,437号;同第5,455,023号;同第5,407,664号;同第5,328,682号;および同第5,256,401号(これらの全てが、本発明に関して有用な様々な口内洗浄剤組成物を開示および説明するために、そこに引用された特許および刊行物と共に参照として本明細書に組み入れられる)に開示および説明されている口内洗浄剤組成物を含む広範囲の様々な組成物に溶解または分散することができる。
本発明の化合物はまた、デンタルフロスとして用いられる様々なタイプの繊維材料にコーティングまたは吸収させることができる。本発明と共に使用することができるデンタルフロス材料の特定の例として、米国特許第6,102,050号;同第6,080,481号;同第6,027,592号;同第6,026,829号;同第6,016,816号;同第5,967,155号;同第5,937,874号;同第5,915,392号;同第5,904,152号;同第5,875,797号;および同第5,845,652号(これらの全てが、本発明と共に使用することができるデンタルフロス繊維材料を開示および説明するために、そこに引用された特許および刊行物と共に参照として本明細書に組み入れられる)に開示および説明されているものが挙げられる。
具体的なペプチド
本発明のペプチドの特定の例は、基質細胞外リン糖タンパク質の天然型の配列のRGD配列の両側にある7〜47のアミノ酸を含む。従って、本発明のペプチドの例は、以下の配列から得られ、太字で示したRGD配列を含む配列を含む。
Figure 2006083176
末端配列としてRGD配列を含む本発明のペプチドの特定の例として、以下が挙げられる:
Figure 2006083176
RGDを内部に含む本発明のペプチドの特定の例として、以下が挙げられる:
Figure 2006083176
前記配列におけるアミノ酸の全てがまたはどれでもD-コンフォメーションでもL-コンフォメーションでもよく、等価な類似体で置換することができる。好ましい態様は、L-コンフォメーションの天然型アミノ酸を含む。
前記配列の全てがまたはどれでもC末端でアミド化されてもよく、アミド化されてなくてもよく、N末端でカルボキシル化されてもよく、カルボキシル化されてなくてもよい。
基質細胞外リン糖タンパク質は、患者において骨軟化症を引き起こすヒト腫瘍からクローニングされ、特徴付けられた。この極端に稀なタイプの腫瘍は腫瘍形成性低リン酸塩血症性骨軟化症(OHO)腫瘍と呼ばれ、腎臓リン酸塩漏出、低リン酸塩血症(低血清中リン酸塩濃度)、低血清中カルシトリオール(1,25-ビタミンD3)、および骨格石灰化の異常(骨軟化症)を引き起こすことが知られている。OHO腫瘍患者において、腫瘍切除は前記の症状の全てを寛解し、OHO腫瘍から分泌される循環リン酸塩尿症因子が骨軟化症において役割を果たしていることが提唱されている。基質細胞外リン糖タンパク質は、このリン酸塩尿症因子であるリン糖タンパク質の候補として提唱された(ローウェら、Genomics(2000)67:56-68)。
リン酸塩は、細胞および骨格石灰化に必須の基本プロセスの多くにおいて中心的な役割を果たしている。特に、骨格石灰化は体内のリン酸塩およびカルシウムの調節によって左右され、リン酸塩-カルシウムホメオスタシスの混乱は骨の完全性に重大な影響をおよぼすことがある。腎臓において、リン酸塩は受動的に糸球体濾液に奪われ、ナトリウム(Na+)依存性リン酸塩共輸送体を介して能動的に再吸収される。腸において、リン酸塩は食物から吸収される。ナトリウム(Na+)依存性リン酸塩共輸送体は腸において発現することが見出され、最近、クローニングされた(ヒルフィカー(Hilfiker)、PNAS 95(24)(1998)、14564-14569)。肝臓、皮膚、および腎臓は、ビタミンD3からその活性代謝産物カルシトリオール(これは、リン酸塩の平衡および骨格石灰化の維持において活発な役割を果たす)への変換に関与している。
ビタミンD欠損は、子供ではくる病および成人では骨軟化症を引き起こす。両状態は、骨格基質である類骨が石灰化しないことによって特徴付けられる。
従って、基質細胞外リン糖タンパク質による体液性機能の全て(すなわち、腎臓リン酸塩漏出、低リン酸塩血症(低血清中リン酸塩濃度)、低血清中カルシトリオール(1,25-ビタミンD3))が健康な骨格形成に有害である。
基質細胞外リン糖タンパク質は、短いN末端シグナル配列と共に525のアミノ酸を有する大きなペプチドである。従って、この分子は産生細胞から体液および循環に分泌される可能性が高い。その525アミノ酸配列のうち、C末端にある23アミノ酸モチーフが、オステオポンチン(OPN)、象牙質シアロリンタンパク質(DSPP)、象牙質基質タンパク質1(DMP1)、および骨シアロプロテインII(IBSP)などの骨-歯無機質基質リン糖タンパク質のグループと高い類似性を示した。これらの骨-歯無機質基質リンタンパク質は骨格石灰化において重要な役割を果たしている可能性があることが提唱されている。
基質細胞外リン糖タンパク質に関する前記の観察にもかかわらず、アミノ酸配列の内部に位置し、他の骨-歯無機質基質リン糖タンパク質と高度の類似性を有するC末端配列から離れているインテグリン結合モチーフを含む小さなペプチド配列が非常に強力な骨格形成活性を示し、このような骨格形成表面上の骨芽細胞数を増加させた。このような活性の効力は線維芽細胞成長因子(FGF)と同等であった。骨格に対して破壊的な機能を有する大きなタンパク質の内部にある小さなモチーフが強力な骨形成活性を示し、このようなモチーフが、他の既知の骨-歯基質タンパク質と相同性を示す配列から離れて位置していたことは驚くべきことであった。
もう1つの驚くべき事実は、本発明の強力な骨格形成モチーフがインテグリン結合モチーフ、特にRGD配列を含むことであった。RGD配列を含む合成ペプチドが胎仔ラット骨格の石灰化器官培養系において骨形成および骨吸収を阻害することが報告されている(グロノヴィクツ(Gronowicz)ら、Journal of Bone and Mineral Research 9(2):193-201(1994))。この培養系は、本発明の主題を試験するのに用いられた非常によく似た実験法である。
さらに、本発明の小さなペプチドによってもたらされる骨格形成活性は、FGFなどの完全な状態の成長因子の骨格形成活性と同じくらい強力であった。
以下の実施例は、当業者に本発明を作成および使用する方法を完全に開示および説明するために示されるが、本発明者らが本発明と考えるものの範囲を制限すると意図されず、以下の実験が実施される全てのまたは唯一の実験であることを示すものであると意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を保証するように努力がなされたが、いくらかの実験誤差および偏差が占められるはずである。特に定めのない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるか、または大気圧に近い。
実施例1
D-00001などの合成
6つの異なるペプチドを9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)法によって手作業で合成し、C末端アミド形態で調製した。6つのペプチドは以下の通りである。
Figure 2006083176
アミノ酸誘導体および樹脂をベイケム(Bachem,Inc.)、Torrance、CA.およびノババイオケム(Novabiochem)、La Jolla、CA.から購入した。4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシ樹脂を用いて、各アミノ酸を段階的に手作業で縮合させた。合成中にN-メチルピロリドンを溶媒として使用した。縮合のためにジイソプロピルカルボジイミド/N-ヒドロキシベンゾトリアゾールを使用し、Nα-Fmoc基の脱保護のために、N-メチルピロリドンに溶解した20%ピペリジンを使用した。以下の側鎖保護基を使用した:AsnおよびGln、トリチル;Asp、Glu、Ser、およびThr、t-ブチル;Arg、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル;ならびにLys、t-ブトキシカルボニル。結果として生じた、保護されたペプチド樹脂を脱保護し、20℃で2時間、トリフルオロ酢酸-チオアニソール-m-クレゾール-エタンジチオール-H2O(80:5:5:5:5、v/v)を用いて樹脂から切断した。結果として生じた粗ペプチドを沈殿させ、エチルエーテルで洗浄し、次いで、(Vydac 5C18カラムおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含む水/アセトニトリルの勾配を用いた)逆相高速液体クロマトグラフィーによって精製した。全てのペプチドを(出発樹脂から)5〜20%収率で得た。ペプチドの純度は分析用高速液体クロマトグラフィーによって確かめた。ペプチドの同一性はサイエックス(Sciex)API IIIE三連四重極イオンスプレー質量分析計によって確かめた。
実施例2
胎仔マウス頭蓋冠アッセイ法
試薬
FGF-1をペプロテク(Peprotech Inc.)(Rocky Hill、NJ)から購入した。RGD-1、2、3、4、5、および6(本明細書ではD-00001、D-00002、D-00003、D-00004、D-00005、およびD-00006と呼ぶ)はノミズ博士(北海道大学、日本)から提供された。
マウス
妊娠ICRマウスを日本エスエルシー株式会社(SLC Japan Co.Ltd.)(静岡、日本)から購入した。
マウス頭蓋冠器官培養
マウス頭蓋冠器官培養を、マンディ(Mundy,G)ら、Science 286:1946-1949、1999およびトライアネデス(Traianedes,K)ら、Endocrinology 139:3178-3184、1998に記載のように行った。4日齢マウスから頭蓋冠を摘出し、矢状縫合に沿って半分に切断した。頭蓋冠の各半分を、12ウェル組織培養皿(アサヒガラステクノ(Asahi Glass Techno Corp.)、船橋、日本)に入れたステンレス鋼グリッドの上に置いた。各ウェルは、0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ(Sigma))および各化合物を添加したBGj培地(シグマ、St.Louis、MO)1.5mlを含んでいた。ムンディらにより述べられたようにFGF-1を陽性対照として使用した。1日目および4日目に培地を交換し、アッセイを7日目に終了した。
組織形態計測学的分析
頭蓋冠を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、4.13%EDTAで脱灰し、パラフィンに包埋した。4mm厚の切片を作成し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。新しい骨の領域をイメージ・プロ プラス(Image-Pro Plus)(メディアサイバネティクス(Media Cybernetics)、Silver Spring、MD)を用いて測定した。
実施例1の6つのペプチドを、骨成長を促進する能力について試験した。試験は実施例2の前記のように行った。RGD配列を含まないペプチドは陽性結果を示さなかった。他の4つのペプチドは陽性結果を示し、最も良い結果は、配列
Figure 2006083176
を用いて得られた。最も良い結果を図3(特に図3Cおよび3D)に示す。これらの結果からのデータを図4にグラフで示す。
本発明がその特定の態様に関して説明されたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正を加えることができ、等価物で置換できることが当業者に理解されるはずである。さらに、特定の状況、材料、物体の組成物、プロセス、1つまたはそれ以上のプロセス段階を本発明の目的、精神、および範囲に合うようにするために、多くの変更を加えることができる。このような全ての変更が、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
ヒトでの骨量と骨年齢の関係を示すグラフである。 基質細胞外リン糖タンパク質の模式図である。図中で、「A」と示された領域は本発明のペプチドに適合する配列を含み、「B」と示された領域は、オステオポンチン(OPN)、象牙質シアロリンタンパク質(DSPP)、象牙質基質タンパク質1(DMP1)、および骨シアロプロテインII(IBSP)などの骨-歯基質リン糖タンパク質のグループと高度に相同なモチーフである。 対照(図3A)、線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)(図3B)、ならびにD-00004およびD-00006と呼ぶ本発明の2つのペプチド(それぞれ図3Cおよび3D)の影響を示す(7日マウス頭蓋冠器官培養試験からの)骨横断面の実際の写真である。 頭蓋冠に及ぼす様々な化合物の影響を比較したグラフである。

Claims (15)

  1. 基材、および配列において約10〜約50個のアミノ酸を含む化合物を含む歯科用製品であって、配列がインテグリン結合モチーフを含み、かつ骨成長を促進する生物学的活性によってさらに特徴付けられ、アミノ酸がD-コンフォメーションでもL-コンフォメーションでもよい、歯科用製品。
  2. インテグリン結合モチーフがRGD配列である、請求項1記載の歯科用製品。
  3. アミノ酸配列が、天然型タンパク質である基質細胞外リン糖タンパク質のRGD配列に隣接している、請求項1記載の歯科用製品。
  4. 約15〜約35個のアミノ酸を含む、請求項1記載の歯科用製品。
  5. アミノ酸がL-コンフォメーションである、請求項1記載の歯科用製品。
  6. ペプチドが、以下:
    Figure 2006083176
    Figure 2006083176
    からなる群より選択される、請求項1記載の歯科用製品化合物。
  7. 配列
    Figure 2006083176
    を含む、請求項1記載の歯科用製品。
  8. 基材が練り歯磨きのペーストである、請求項1記載の歯科用製品。
  9. 基材が口内洗浄剤の液体である、請求項1記載の歯科用製品。
  10. 基材がデンタルフロスの繊維である、請求項1記載の歯科用製品。
  11. 基材を含み、以下を特徴とする歯科用製品:
    (a)10〜50個のアミノ酸;
    (b)RGD配列;
    (c)天然型基質細胞外リン糖タンパク質のRGD配列に隣接しているアミノ酸と実質的に同じアミノ酸;および
    (d)骨成長の促進において生物学的に活性であること。
  12. ペプチドが、以下:
    Figure 2006083176
    からなる群より選択される、請求項11記載の歯科用製品。
  13. 担体;および
    配列において約10〜約50個のアミノ酸を含む治療有効量のペプチド
    を含む製剤であって、
    配列がインテグリン結合モチーフを含み、かつ骨成長を促進する生物学的活性によってさらに特徴付けられ、アミノ酸がD-コンフォメーションでもL-コンフォメーションでもよい、製剤。
  14. 担体がペーストであり、製剤が練り歯磨きである、請求項13記載の製剤。
  15. 担体が、風味のついた水溶液であり、製剤が口内洗浄剤である、請求項13記載の製剤。
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