JP2008526871A - 歯周および歯の治療のためのペプチド製剤 - Google Patents

歯周および歯の治療のためのペプチド製剤 Download PDF

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Abstract

欠損部に隣接する髄細胞をアポトーシス細胞死および/または壊死性細胞死から保護することにより特徴づけられる、骨格組織の欠損を治療する方法を開示する。本方法は、骨形成因子などの単純な骨格形成または再生活性の適用に対して、髄組織における炎症および刺激を低減させ、新たな骨格組織形成の促進を支援するさらなる利点を提供する。本方法は、RGD配列などのインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、および/またはカルシウム結合モチーフの少なくとも1つを含むことにより特徴づけられる、配列中に約15〜約28アミノ酸を含む薬理学的活性ペプチド化合物の適用を含み得る。本配列は、注射、局所適用用に製剤化されるか、またはコラーゲンなどの基質もしくは歯科充填組成物もしくは歯肉パッチ中に分散され、歯/骨の成長を強化するため、または喪失を防ぐために投与される23アミノ酸配列であってよい。

Description

発明の分野
本発明は一般に骨および歯の治療の分野に関し、より詳細には骨および歯の治療のためのペプチド配列製剤に関する。
発明の背景
全人口の90%が生涯のうちに齲歯を経験し、米国では50%を超える成人がある特定段階の歯周病に罹患していると推定されている。歯科および歯周疾患を治療するための年間費用は、2001年には米国だけで約640億ドルであった。歯周病の治療の年間費用は、そのうちの約65億ドルであった(米国保健福祉省、医療財政局(Health Care Financing Administration, Department of Health and Human Services)。
齲歯は、口腔内の酸性条件によって起こると考えられている。例えば、糖類は酸に変換されて歯の表面を溶かす。多くの場合、エナメル質および象牙質の最外側領域のみが冒されるが、重症例では損傷は歯髄腔に達し得る。これは、著しい炎症および疼痛を引き起こし得る。象牙質は歯髄腔から象牙質層に伸びる多くの微細管を含み、これらの細管はまた歯髄象牙芽細胞からの突起を含むと考えられているため、歯髄に接近した齲歯もまた疼痛および炎症の可能性をもたらし得る。歯髄を保護するために最小限の象牙質層のみが残されている場合には、歯は温度に対して知覚過敏となり得る。「通常の」齲蝕病変(すなわち、歯の欠損)の最も典型的な治療法は、欠損部をきれいにした後に、金属、合金、またはポリマー樹脂などの非分解性材料を充填することである。しかしながら、金属および樹脂中の非重合残存単量体などのこれらの材料は、象牙質細管を介して歯髄に貫通するか、または露出した歯髄を直接冒して、炎症および疼痛を悪化させ得る場合が多い。
症例によっては、露出した歯髄上で象牙質を自然に再生させることが試みられる。歯髄上に新たに再生されたこのような象牙質は「象牙質橋」と称される。象牙質橋は、齲歯を非分解性材料で永久的に密封する前か、または齲歯を永久的に密封した後に形成され得る。
多くの場合、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]ペーストにより代表される特定のカルシウム塩製剤が、象牙質橋形成のために用いられる。この治療は「歯髄覆罩法」と称される。歯髄覆罩治療法では、カルシウム塩製剤を、露出した歯髄上にまたは歯髄を覆っている残った薄い象牙質層の上に配置する。カルシウム塩を使用する1つの理論的根拠は、これが非常に塩基性(pH約9.5またはそれ以上)であり、したがって歯髄内で局所刺激を生じ得ることにある。これによって次に、歯髄細胞がさらなる「反応性」象牙質を産生するようになる。カルシウム塩は歯の欠損部に留まるため、多くの場合その効果を発揮し続け、場合により歯髄腔が象牙質で満たされるようになり得る。この過剰な象牙質は疼痛を招き得る。
歯髄腔は歯の中核に位置し、神経、血管供給を含み、また歯髄細胞の貯蔵所として働く。歯髄細胞はいくぶん歯の髄細胞のようであり、それぞれ最終的に象牙質、エナメル質、およびセメント質を形成する象牙芽細胞、エナメル芽細胞、およびセメント芽細胞などの種々の歯細胞に分化し得る。現在の標準的治療法によって起こる炎症および刺激の結果としての歯髄細胞の壊死およびアポトーシスは、歯組織の再生に利用できる細胞数を減少させ、ひいては治癒過程を遅らせる。
歯髄が著しく損傷を受けるかまたは実質的に露出した場合には、「歯髄切断法」または「根管法」として知られる手順で歯髄を除去する場合が多い。また、歯髄腔は隣接した骨から達する抹消ニューロンを収容しているため、歯髄覆罩治療によって起こる歯髄炎は耐え難い疼痛をもたらす場合がある。そのような疼痛を治療するために、歯髄切断法が用いられる。しかしながら、ひとたび歯髄が除去されると、歯はその自己治癒力を永久に失い、その生物学的生存度が低下する。したがって歯科専門医は常に、できる限り歯髄切断法を回避するように試みる。
カルシウム塩による歯髄覆罩治療後に歯髄が生き残ったとしても、カルシウム塩によって新たに形成された象牙質橋は通常は正常な象牙質ほど硬くなく、骨様象牙質と称される。
要約すると、齲歯または歯の欠損の現在の標準的治療法は、齲蝕の種類および程度に依存する。歯髄覆罩法が必要とされる深い齲歯には、多くの場合、密封剤および/または水酸化カルシウムなどのカルシウム塩が用いられる。それらの成功には限界があり、そのような治療は多くの場合に歯髄腔の制御されないまたは不適切な密封を招き、これはしばしば疼痛、歯髄損傷、および歯の最終的喪失などのその後の問題を引き起こし得る。したがって、歯髄を損傷することなく歯の欠損を治療し、歯組織全体を生かし続けるための新たな方法の必要性が存在する。
齲歯および歯の欠損が小児および成人を広く冒すのに対して、歯周病は主に成人、特に高齢者を冒す。歯周病では、患者の歯肉は炎症を起こして破壊され、歯を支持する歯槽骨は変性する。歯根の中核を構成するセメント質もまた損傷を受け、その後、歯が抜け落ちる。
「ポケット」と称される歯と支持骨との間の拡大した空間には、歯の喪失を防ぐために、骨もしくは歯の基質分子またはβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)のようなミネラルなどの空間充填用または骨伝導性の生体適合性材料が充填され得る。BMP、FGF、または血小板由来増殖因子(PDGF)などの骨成長因子を空間充填材と共に用いて、ポケット内で新たな骨の再生を促進することも可能である。骨が周囲の骨によって不適切に支えられるようになると、歯は失われる。失われた場合、最も一般的な治療または修復法は歯科インプラントの設置である。人工インプラントを、歯が失われた歯槽に配置する。重症例では、義歯全体をインプラントで置換する。しかしながら、このような患者では歯槽骨はひどく変性しているため、インプラントは骨に必ずしも良好に固定されず、また不安定になり得る。インプラントをしっかりと設置し、機能的にするためには、失われた歯の領域を取り囲む骨を増大させることが必要である。インプラントを設置する前に、骨のポケットに充填するために(骨成長因子と共に、またはそれらを伴わずに)使用されるものと類似の生体適合性材料を用いて、歯槽に充填し得る。そのような歯槽骨が激しく損なわれている場合には、自己骨移植が行われる場合がある。この場合、骨移植片は、周囲の歯槽骨および/もしくは身体の別の部分の骨格組織から採取され得るか、または「一般的な」凍結乾燥同種脱灰骨材料が用いられ得る。しかしながら、この治療の費用は極めて高額であり、高度に熟練した歯周治療専門医および複雑な外科的手技を伴う。
生体適合性材料、骨成長因子、インプラント、および外科的手技を伴う歯周病の現在の治療法は、すべての臨床的必要性を満たしていない。したがって、既存の歯および/または歯科インプラントを適切に支持および維持し得る質の高い歯槽骨を再生させるための新たな方法に対する大きな需要が存在する。
発明の概要
薬学的に許容される担体中の23アミノ酸配列を含む製剤を開示する。担体は、β-TCP、HA、コラーゲン、PLA、および関連ポリマーなどの、特に歯および/または骨に適合した骨伝導性基質であってよい。
歯は、製剤を歯の表面および/または齲蝕を除去するために歯に開けた穴に配置することにより、治療することができる。歯を支持する歯槽骨は、製剤を骨および/または骨の周囲の組織に注射することにより、治療することができる。
製剤は繰り返し投与することができるが、本発明の局面は、本発明の製剤をその後適用することなく単回投与で所望の結果を得ている。
23アミノ酸配列は以下のモチーフを含む:インテグリン結合モチーフ配列;グルコサミノグリカン結合モチーフ;および/またはカルシウム結合モチーフ。アミノ酸はD-構造またはL-構造であってよい。化合物中の残りの単量体単位(上記のモチーフ以外の配列)は、アミノ酸類似体であってよい。残りの単量体単位は好ましくは、天然タンパク質である基質細胞外リン糖タンパク質(MEPE)中でRGD配列に隣接しているアミノ酸配列と実質的に同じ配列を有する天然アミノ酸である(Rowe et. al., Genomics (2000) 67:56-68)。
本発明の1つの局面は、骨格組織欠損を治療するための製剤、および以下の段階を含むそのような欠損を治療する方法である:
患者の骨格組織欠損の領域を同定する段階;および
歯の表面および/または齲蝕を除去するために歯に開けた穴であってよい骨格組織欠損の領域の炎症を低減させるのに十分な量のペプチド化合物であって、配列中に約18〜約28アミノ酸を含み、骨成長を強化するペプチド化合物であり、各アミノ酸がD-構造またはL-構造であってよく、配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、および/またはそれ自体が配列DNDISPFSGDGQ(配列番号:18)を有するかもしくはペプチドの半減期を改善するPEG、Fcなどの分子に結合しているカルシウム結合モチーフを含むペプチド化合物を患者に投与する段階。
本発明の別の局面は、骨格組織欠損を治療するための製剤、および以下の段階を含むそのような欠損を治療する方法である:
患者の骨格組織欠損部に隣接している骨髄細胞を同定する段階;および
歯槽骨および顎骨ならびに歯組織から選択され得る骨格組織の欠損部に隣接している同定された領域の骨髄細胞死を減少させるのに十分な量のペプチド化合物であって、ペプチドが骨伝導性基質中に分散されており、かつ配列中に約18〜約28アミノ酸を含み、骨成長を強化するペプチド化合物であり、各アミノ酸がD-構造またはL-構造であってよく、配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、および/またはカルシウム結合モチーフを含み、特にインテグリン結合モチーフがRGD配列であり、グリコサミノグリカンモチーフが配列SGDG(配列番号:14)を有するペプチド化合物を患者に投与する段階。
ペプチド成分を含む、歯周病を治療するため、具体的には歯の下にある顎骨領域などの骨成長を改善するための製剤であって、ペプチド化合物が配列中に約15〜約28アミノ酸を含み、骨成長を強化し、各アミノ酸がD-構造またはL-構造であってよく、配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、およびカルシウム結合モチーフから選択される結合モチーフを含む製剤を開示する。
ペプチド成分は、配列DXDXSXFXGXXQ(配列番号:17、配列中、Xは任意のアミノ酸である)を有するカルシウム結合モチーフを有し得る。具体的には、ペプチドは、配列DNDISPFGDGQ(配列番号:18)を有するカルシウム結合モチーフを有し得る。本発明のペプチド化合物は、ペプチド配列
Figure 2008526871
を有し得る。
ペプチド成分は、別の生体適合性生分解性ポリマーに結合され得るか、および/またはそのようなポリマー中に分散され得る。そのようなポリマーには、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(DL-ラクチド)(DL-PLA)、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(DL-PLG)、ポリ(L-ラクチド)(L-PLA)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(L-PLG)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、コポロオキサレート、およびポリカーボネートが含まれる。
製剤は、生体適合性ポリマーに結合しているペプチド配列を含み得るか、または配列を単独で含み得る。その他の生物活性化合物および生物不活性化合物をペプチド配列に結合させることも可能であり、またはそれらを、ペプチド配列と組みわせて用いられる単体と共に担体として用いることもできる。例えば、製剤は、β-リン酸三カルシウムであるβ-TCPまたはヒアルロン酸(HA)、種々の形態のコラーゲン、および様々な形態のポリ乳酸(PLA)を含み得る。β-TCP、HA、コラーゲン、またはPLAなどの成分は、ペプチド配列を分散させる担体として用いることができる。ペプチド配列をポリエチレングリコールなどの他のポリマーに結合させてペグ化タンパク質またはペグ化ペプチドを形成させる場合、そのような組み合わせはペプチドの半減期を延長し得る。
欠損部に隣接する髄細胞を炎症、壊死、およびアポトーシスから保護して、局所的硬組織の高い生物学的生存度を保持することを特徴とする、骨および/または歯の欠損を治療する方法を提示する。本方法は、髄細胞を炎症、壊死、またはアポトーシスから保護する活性を有する薬理学的活性成分の製剤の直接適用を含む。歯は、そのような製剤を歯の表面および/または齲蝕を除去するために歯に開けた穴に適用することにより、治療することができる。歯を支持する歯槽骨は、製剤を骨および/または骨の周囲の組織に注射することにより、治療することができる。他の骨組織は、製剤を欠損部近傍の組織に注射することにより、治療することができる。製剤は繰り返し投与することができるが、本発明の局面は、本発明の製剤をその後適用することなく単回投与で所望の結果を得ている。
本発明の1つの局面は、本発明の方法が歯および歯周の健康を強化することである。
本発明の別の局面は、本発明の方法が、髄組織中の生存骨芽細胞および/または象牙芽細胞の数を増加させることである。
本発明の1つの局面は、約15〜約28アミノ酸ペプチド配列および/またはその類似体を含む、本方法で用いられる製剤である。ペプチド配列は、以下の3つのモチーフのうちの1つまたは複数を含む:インテグリン結合モチーフ;グリコサミノグリカン結合モチーフ;および/またはカルシウム結合モチーフ。アミノ酸はD-構造またはL-構造であってよい。化合物中の残りの単量体単位(上記のモチーフ以外の配列)は、アミノ酸類似体であってよい。残りの単量体単位は好ましくは、合成ペプチドであるAC-100中でRGD配列に隣接しているアミノ酸配列(Hayashibara, et. al., Journal of Bone and Mineral Research 19:455-462, 2004)、または天然タンパク質である基質細胞外リン糖タンパク質(MEPE)中でRGD配列に隣接しているアミノ酸配列(Rowe et. al., Genomics 67:56-68, 2000)と実質的に同じ配列を有する天然アミノ酸である。
本発明の別の局面は、本発明の製剤が炎症を低減させることである。
本発明の別の局面は、本発明の製剤が髄細胞を壊死性細胞死またはアポトーシス細胞死から保護することである。
本発明の別の局面は、本発明の活性化合物の十分な濃度を含み、損傷した歯および/または歯槽骨の硬組織を再生させることに加えて歯および/または歯槽骨の損傷を防ぐために歯髄、歯根と歯肉との間の空間、または歯槽骨に投与することのできる、治療用途用の製剤を提供することである。
本発明の別の局面は、本発明の15〜28アミノ酸ペプチド配列の治療有効量をその中に有する担体としてのコラーゲン、合成ポリマー樹脂、カルシウム塩、ヒアルロン酸、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、生理食塩水、ヒドロキシアパタイトなどのセラミックス、もしくはβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)、または骨もしくは歯の欠損の充填に用いられる材料のいずれかであってよい製剤である。
本発明のこれらおよびその他の局面、目的、利点、および特徴は、以下に詳述する本発明の詳細を読むことにより、当業者に明らかになると考えられる。
発明の詳細な説明
本発明の方法、ペプチド、類似体、および製剤について説明する前に、本発明は記載する特定の態様に限定されず、当然のことながらそれ自体変わり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用する専門用語は特定の態様を説明する目的のためのみのものであって、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定する意図はないこともまた理解されるべきである。
ある値域が提供される場合、特記されない限り下限値の単位の10分の1まで、その範囲の上限値と下限値の間にある各媒介値もまた具体的に開示されることが理解される。規定範囲内の任意の規定値または媒介値とその規定範囲内の任意の他の規定値または媒介値との間のより小さな各範囲も、本発明に包含される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、独立的にその範囲内に含まれても範囲から除外されてもよく、より小さな範囲内にいずれかの限界値が含まれる、いずれの限界値も含まれない、または両限界値が含まれる各範囲もまた、具体的に除外される任意の限界値が規定範囲内にある限り本発明に包含される。規定範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それら含まれた限界値のいずれか一方または両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
特記されない限り、本明細書で使用する専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載したものと類似したまたは同等の任意の方法および材料を使用することもできるが、本明細書に記載した方法および材料が好ましい。本明細書で言及した出版物はすべて、その出版物の引用に関連する方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。本開示と参照により組み入れられる出版物との間に矛盾が存在する範囲では、本開示が優先する。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの」、「および」、および「その」とは、特記する場合を除き、その対象物の複数形も含むことに留意されたい。したがって、例えば「1つのペプチド」への言及は複数のそのようなペプチドを含み、「その方法」への言及は1つまたは複数の方法および当業者に公知のその同等物を含み、以下同様である。
本明細書で考察する出版物は、単に本出願の出願日以前にそれらが開示されたという理由で提供されている。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明のせいでそのような出版物を先行できないことを認めると解釈されるべきではない。さらに、提供する出版物の日付は実際の発行年月日と異なる可能性があり、独立して確認する必要がある場合がある。
定義
「ペプチド」および「ペプチド化合物」という用語は本明細書で互換的に用いられ、コードおよび非コードアミノ酸、化学的もしくは生化学的に修飾されたアミノ酸または誘導体化アミノ酸、L-アミノ酸またはD-アミノ酸、修飾ペプチド骨格を有するペプチド、ならびにアミノ酸類似体を含むペプチドを含み得る、約15〜約28アミノ酸の重合体型アミノ酸を指す。ペプチド化合物は:(a) 天然アミノ酸残基;(b) 非天然アミノ酸残基、例えばN-置換グリシン、アミノ酸置換物質など;または(c) 天然および非天然アミノ酸残基/置換物質のポリマーであってよい。言い換えると、本ペプチド化合物はペプチドまたはペプトイドであってよい。ペプトイド化合物およびその調製法はWO 91/19735に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。本発明のペプチド化合物は、23アミノ酸または15〜28アミノ酸または20〜26アミノ酸を含み得る。本発明の活性アミノ酸配列は、インテグリン結合モチーフ配列;グリコサミノグリカン結合モチーフ配列;および/またはカルシウム結合モチーフである重複し得る3つのモチーフの少なくとも1つを含む。
「治療する」、「治療すること」、「治療」などという用語は本明細書で互換的に用いられ、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防ぐという点で予防的であってもよく、ならびに/または疾患および/もしく疾患に起因する副作用を部分的にもしくは完全に治癒させるという点で治療的であってもよい。本明細書で使用する「治療すること」とは、脊椎動物、詳細には哺乳動物、最も詳細にはヒトの疾患を治療することを包含し、かつ:
(a) 疾患に罹患しやすい傾向があるが未だその疾患を有すると診断されていない対象において疾患の発症を予防すること;
(b) 疾患を抑制すること、すなわちその進行を抑止すること;または
(c) 疾患を軽減すること、すなわち疾患を消退させること
を含む。
本発明は特に、歯からの象牙質の喪失および/もしくは歯を支持する歯槽骨の喪失を経験したか、またはそのような喪失を経験することが予測される患者の治療を可能にするペプチド製剤ならびにその使用に関し、したがって特に、そのような喪失の影響を予防、抑制、または軽減することに関する。骨成長の増加、象牙質形成の増加、骨強度の増加、象牙質強度の増加、歯の生存度の増加、炎症の低減、刺激の低減、疼痛の低減、または骨に関連する疾患の治療に関して当業者によって望ましいと一般的に理解される他の特徴を含む多種多様な基準に基づいて測定可能な、治療的に検出可能でかつ有益な効果を対象が経験する場合に、対象は「治療」される。
「骨格欠損」という用語は、骨格の量、物質、もしくは基質、またはカルシウムおよびリン酸などの骨格の任意の成分が減少するか、または骨もしくは歯が失われる、損なわれる、もしくは例えば破壊に対する抵抗力の点で脆弱化する任意の状況を指す。
「骨格」という用語は、骨および歯の両方を含む。同様に、「骨格の」という用語も、骨および歯の両方を意味する。
「対象」、「個体」、「患者」、および「宿主」という用語は本明細書で互換的に用いられ、任意の脊椎動物、詳細には任意の哺乳動物を指し、最も詳細にはヒト対象、家畜、および哺乳動物ペットを含む。
「コラーゲン」という用語は本明細書において、これらに限定されないがI型、II型、III型、IV型、またはそれらの任意の組み合わせを含む任意の型を含むよう用いられる。アテロペプチドまたはテロペプチド含有コラーゲンのいずれもが使用可能であるが、ウシコラーゲンなどの異種供給源由来のコラーゲンを用いる場合には、テロペプチド含有コラーゲンと比較してその免疫原性が低いことからアテロペプチドコラーゲンが一般に好ましい。
熱、照射、または化学架橋剤などの方法によりあらかじめ架橋されていないコラーゲンが、本発明の組成物における使用に好ましいが、あらかじめ架橋されたコラーゲンを使用することも可能である。非架橋アテロペプチド繊維性コラーゲンは、カリフォルニア州、パロアルトのAngiotech Pharmaceuticals, Inc.から(2003年のCohesion Technologies, Inc.の買収による)、35 mg/mlおよび65 mg/mlのコラーゲン濃度で、それぞれZyderm(登録商標) I CollagenおよびZyderm II Collagenの商標で市販されている。グルタルアルデヒド架橋アテロペプチド繊維性コラーゲンは、Angiotech Pharmaceuticalsから、35 mg/mlのコラーゲン濃度でZyplast(登録商標) Collagenの商標で市販されている。
原型コラーゲンが好ましいが、一般にゼラチンとして知られている変性コラーゲンもまた、本発明の組成物において使用することができる。ゼラチンは、コラーゲンよりもより速く分解可能であるというさらなる利点を有し得る。
非繊維性コラーゲンは粘着性が一貫していることから一般的に、生体接着剤としての使用が意図される本発明の組成物における使用に好ましい。「非繊維性コラーゲン」という用語は、コラーゲンの水性懸濁液の光学的透明度によって示されるように、pH 7で実質的に非繊維性形態である任意の修飾または非修飾コラーゲン物質を指す。
既に非繊維性形態をしたコラーゲンを、本発明の組成物において使用することができる。本明細書で使用する「非繊維性コラーゲン」という用語は、天然型で非繊維性であるコラーゲン型、および中性pHまたはその付近で非繊維性形態となるように化学修飾されたコラーゲンを包含することが意図される。天然型で非繊維性(または微小繊維性)であるコラーゲン型には、IV型、VI型、およびVII型が含まれる。
中性pHで非繊維性形態である化学修飾されたコラーゲンには、スクシニル化コラーゲンおよびメチル化コラーゲンが含まれ、これらはいずれも、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、1979年8月14日に公表されたMiyataらの米国特許第4,164,559号に記載されている方法に従って調製され得る。共同して所有される米国特許第5,614,587号において開示されているように、その固有の粘着性により、メチル化コラーゲンが生体接着組成物における使用に特に好ましい。
ヒアルロン酸(以下、「HA」という)は本明細書において、N-アセチル-D-グルコサミンおよびD-グルクロン酸を含む反復単位が直線状に反復して結合して構成された生体高分子物質を示すよう用いられ、この高分子は硝子体液、滑液、結合組織などに多く存在する。「HA」という用語は、ヒアルロン酸およびそのヒアルロン酸塩のいずれかを意味する。ヒアルロン酸塩には、これらに限定されないが、ヒアルロン酸ナトリウムおよびヒアルロン酸カリウムなどの無機塩、ならびにヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩が含まれる。本発明によるHAのヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウムである。ヒアルロン酸は、皮膚を含む結合組織の天然成分である。ヒアルロン酸は、水分を保持することにより皮膚に体積を提供する上で重要な役割を果たす。滑液、硝子体液、軟骨、血管、皮膚、および臍帯のプロテオグリカンの潤滑化に見出されるのはグリコサミノグリカンである。
HA誘導体は、外科手術後の癒着防止、顔のしわの補正、皮膚の増大、組織工学、骨関節炎粘性補給などの多様な用途において開発されている。HA誘導体は、水に対する溶解度によって水溶性誘導体と不水溶性誘導体とに大きく分類され得る。不水溶性誘導体の場合、その製造方法は主として2つの方法で考えられ得る:1つは、官能基を1つ有する化合物とHAを反応させてこの化合物をHAの直鎖と結合させるものであり、もう1つは、官能基を2つまたはそれ以上有する化合物とHAを反応させて架橋HAを生成するものである。
ジビニルスルホン、ビスエポキシド、ビスハライド、ホルムアルデヒドなどの官能基を2つ有する化合物を使用して架橋された多くの不水溶性HA誘導体を合成した種々の例がいくつかの文献に報告されている。
米国特許第4,582,865号にはHAを架橋するためにジビニルスルホンを使用したものが報告されており、米国特許第4,713,448号にはホルムアルデヒドを使用して架橋反応を行ったものが報告されている。またWO86/00912には、カルボキシル基を含む種々の多糖類を架橋するために、エポキシ基を含む化合物を使用した例が報告されている。
HAのカルボキシル基を、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド)を使用して水溶液中で活性化した後、アミン基を1つ含む化合物と反応させてアミド結合を形成させると、HA誘導体の水溶性が減少するという報告がある(米国特許第4,937,270号を参照されたい)。また、EDCを使用してHAを種々の多価陰イオン性多糖類と架橋した例も存在する(米国特許第5,017,229号を参照されたい)。
トランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)は本明細書において、細胞から分泌され、細胞表面に局在する種々の受容体の一群との特異的結合相互作用を介して働く増殖因子および免疫調節性サイトカインを示すために用いられる。TGF-β1は、3つの哺乳動物TGF-βアイソフォーム(TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3)、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、およびミュラー管抑制物質(MIS)を含む分泌ポリペプチドの大きなファミリーの原型である。このタンパク質ファミリーのより遠縁のメンバーには、マウスのノダル遺伝子産物、ショウジョウバエのデカペンタプレジック複合体遺伝子産物、およびツメガエル由来のVg1が含まれる。
一般に、TGF-βファミリータンパク質はホモ二量体であり、個々の機能性タンパク質複合体は同一の会合した単量体サブユニットを2個含む。TGF-β1ホモ二量体の結晶構造は公知である(Hinck et al., Biochem., 35:8517-8534, 1996;Qian et al., J. Biol. Chem., 271:30656-30662, 1996)。TGF-βは非常に緻密なタンパク質であり、各サブユニット内に4つの分子内ジスルフィド架橋を有し、さらに分子間ジスルフィド架橋を1つ有する。
このタンパク質の各単量体は、長い(約278残基)N末端プロ領域とより短い(112残基、12.5 kDa)C末端活性ドメイン(成熟領域)を有する大きな(約55 kDa)前駆体分子として合成される。成熟過程中に2つの前駆体分子が相互に会合するが、プロ領域は、活性ドメイン単量体の適切な折りたたみ、および2つの活性ドメイン単量体間の適切な会合に重要である。各単量体のプロ領域は、会合した活性ドメインからタンパク質分解によって切断されるが、多くの場合、プロ領域は成熟TGF-β断片と会合したままである。切断されたプロ領域は、「潜在性関連ペプチド」(LAP)と称される。LAPはTGF-βホモ二量体の正確な折りたたみの阻止に関与し、その結果、このTGF-βホモ二量体はその受容体と相互作用できない。TGF-βの合成に関する優れた考察については、Khalil, Micro. Infect., 1:1255-1263, 1999を参照されたい。
TGF-βおよびその受容体は本質的にすべての組織で発現され、多くの細胞過程において重要であることが判明している。これらの過程には、細胞の増殖および分化、免疫抑制、炎症、ならびに細胞外基質タンパク質の発現が含まれる。一例として、TGF-βが、関節リウマチ、多発性硬化症、創傷治癒、気管支喘息、および炎症性腸疾患を含む様々な疾患および障害と関連する症状を緩和することが動物モデルで示されており、創傷治癒を促すために臨床設定で用いられている。
TGF-β1はTGF-βファミリーの最初に同定されたメンバーであり、20年以上にわたり活発に研究が続けられている。いくつかのTGF-β1抗体が利用できるが、少なくとも一部に、抗体が他のTGF-βファミリータンパク質に対してある程度の交差反応性を示す場合が多いことが理由で、臨床設定における抗体の有用性は限定されている(例えば、米国特許第5,571,714号を参照されたい)。多くの実験において、TGF-βは、研究者がこのタンパク質を追跡できるように125Iでヨウ素化される。放射性ヨウ素化は高価であり、かつ危険な工程であるため、例えば臨床試験におけるインビボ実験に125I標識タンパク質を使用することは通常は不適切である。
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は多機能性サイトカインであると考えられており(Sporn and Roberts, Nature (London), 332: 217-219, 1988)、細胞の増殖、分化、および細胞外基質タンパク質合成において調節的な役割を担っている(Madri et al., J Cell Biology, 106: 1375-1384, 1988)。TGF-βは、インビトロで上皮細胞および破骨細胞様細胞の増殖を阻害するが(Chenu et al., Proc Natl Acad Sci, 85: 5683-5687, 1988)、インビボでは軟骨内骨形成および最終的には骨形成を促進する(Critchlow et al., Bone, 521-527, 1995;Lind et al., A Orthop Scand, 64(5): 553-556, 1993;およびMatsumoto et al., In vivo, 8: 215-220, 1994)。TGF-β誘導性骨形成は骨膜下の多能性細胞を刺激することにより媒介され、その細胞は最終的に軟骨形成細胞へと分化する(Joyce et al., J Cell Biology, 110: 2195-2207, 1990;およびMiettinen et al., J Cell Biology, 127-6: 2021-2036, 1994)。
整形外科におけるTGF-βの生物学的効果が報告されている(Andrew et al., Calcif Tissue In. 52: 74-78, 1993;Borque et al., Int J Dev Biol., 37:573-579, 1993;Carrington et al., J Cell Biology, 107:1969-1975, 1988;Lind et al., A Orthop Scand. 64(5):553-556, 1993;Matsumoto et al., In vivo, 8:215-220, 1994)。マウス胚における染色から、TGF-βが結合組織、軟骨、および骨などの間充織由来の組織と密接に関連していることが示されている。発生学的知見に加えて、TGF-βは骨形成および軟骨形成の部位に存在している。TGF-βはまた、ウサギ頸骨の骨折治癒を強化し得る。近年、TGF-βの治療的価値が報告がされているが(Critchlow et al., Bone, 521-527, 1995;およびLind et al., A Orthop Scand, 64(5): 553-556, 1993)、その効果が短期であることおよび費用が高価であることが広汎な臨床用途を制限している。
発明全般
18〜28アミノ酸を含むペプチド配列を開示する。この配列は、RGD配列などのインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、および/またはカルシウム結合モチーフ、ならびに基質細胞外リン糖タンパク質中でRGD配列に隣接している残りのアミノ酸を含むことを特徴とする。配列は、注射用に製剤化されるか、またはコラーゲンなどの基質もしくは歯科充填組成物もしくは歯肉パッチ中に分散され、骨/歯の成長を強化するため、または喪失を防ぐために投与される23アミノ酸配列であってよい。
本発明の方法による治療に適した個体には、これらに限定されないが、齲歯、骨粗鬆症、パジェット病、腎でのリン酸塩漏出、腎性骨異栄養症、骨軟化症、他の原因による骨異栄養症、癌による骨溶解、骨折、および副甲状腺機能亢進症を含む、骨喪失、または骨喪失に起因する疾患、または続発症が骨喪失を含む疾患のリスクがあると考えられる個体が含まれる。このような個体には、高齢者個体、閉経後女性、腎移植患者、および前述の疾患のいずれかを有するかまたはそのリスクがある個体が含まれる。
本発明の方法の有用性を実証するため、生理食塩水製剤中の、本明細書においてAC-100と称する配列番号:13を有する23アミノ酸ペプチドを、歯および歯槽骨の欠損に適用した。AC-100は骨形成細胞の増殖および分化を促進することが知られているが、AC-100がまた歯髄細胞などの髄細胞をアポトーシス細胞死および壊死性細胞死から保護することが初めて判明した。同様に、AC-100が、髄を含む組織の炎症を低減させることも初めて実証された。歯の欠損を治療するために広く用いられており、歯髄細胞に炎症を起こしかつ刺激して、種々の増殖因子およびサイトカインを放出させ、硬組織再生を促進することが知られている水酸化カルシウムと比較して、AC-100は、罹患部位の炎症反応を起こさないか、またはさらに低減させつつ硬組織再生を促進することが実証された。また、AC-100は、抜歯された歯槽骨の歯槽において健常な線維骨を形成させることが実証された。AC-100および他の化合物を含むこれらの比較実験を考え併せると、骨髄細胞または歯髄細胞などの髄細胞を保護することにより、骨および象牙質などの新たな骨格組織の再生にさらなる利点が提供されると結論づけられた。実施例から、既知の骨格組織形成活性に対する、炎症、壊死、および/またはアポトーシスからの髄細胞保護のさらなる利点が示され、アポトーシス細胞死または壊死性細胞死から髄細胞を保護することを特徴とする治療法全般の有用性が示唆される。
治療法
本発明は、欠損部に隣接する髄細胞を壊死性細胞死またはアポトーシス細胞死から保護して、局所的硬組織の高い生物学的生存度を保持することを特徴とする、骨および歯などの骨格組織における欠損を治療する方法を提供する。
本方法の直接的効果は、関心対象の骨格欠損に隣接する髄細胞が壊死性細胞死および/またはアポトーシス細胞死から保護されることである。本方法の二次効果または利点の1つは、骨格欠損の治癒が促進されることである。これは一部に、髄細胞集団内の骨および歯組織の前駆細胞が健常なまま残存し、新たな硬組織に分化するおよび新たな硬組織を再生する可能性を有する細胞の十分に大きな貯蔵所が保持され得るためである。関心対象の硬組織の種類に応じた別の理由は、骨および歯組織形成のためのそのような前駆細胞が、修復過程が進行中の組織の細胞により放出されるサイトカインによって起こる炎症または刺激から保護されるためである。そのような炎症または刺激は多くの場合、欠損を薬物、樹脂、および金属などの化学物質で治療した場合に、これらが炎症因子または刺激因子を放出するよう細胞を刺激するために悪化する。
本発明の実施例のデータにより、直接的骨格組織形成に加えられた髄細胞保護が硬組織欠損のより優れた治癒をもたらすことが明らかに実証されたが、それは硬組織形成のみのグループと比較して、より大きな体積の新たな硬組織が再生され、そのように再生された硬組織の質がより高かったことからである。特に先のグループは、炎症のほぼ完全な低減、および治癒過程に関連した炎症事象によって起こる髄細胞のアポトーシス細胞死または壊死性細胞死の保護を示すと同時に、優れた硬組織再生を実証した。組織治癒過程は通常、組織を修復するための因子を放出するよう細胞を刺激する、組織におけるある種の炎症事象を含むため、これは驚くべき知見であった。
本発明の方法によって保護される髄細胞は骨髄細胞または歯髄細胞のいずれであってもよく、必ずしもそれらに限定されない。骨格組織形成細胞に分化し得る前駆細胞の亜集団を含む任意の髄細胞、髄細胞の貯蔵所、または局所的に集合した髄細胞は、硬組織欠損を治療するのに用いるためにそのような欠損に十分近接して位置する限りは本発明の範囲内である。骨格組織形成細胞とは、骨芽細胞、前骨芽細胞、間質細胞、線維芽細胞、象牙芽細胞、前象牙芽細胞、エナメル芽細胞、前エナメル芽細胞、セメント芽細胞、前セメント芽細胞、歯髄細胞、軟骨細胞、前軟骨細胞、ならびに内部または外部刺激および細胞への影響に応じて硬組織に分化する能力を有するそれらの関連細胞を意味する。
幹細胞、間質細胞、線維芽細胞、前骨芽細胞、および/または骨芽細胞などの骨髄細胞が本発明の方法によって保護される場合、治療される欠損は骨における欠損である。歯髄細胞が本発明の方法によって保護される場合、治療される欠損は歯組織における欠損である。より具体的には、典型的に歯髄内に存在する前象牙芽細胞および/または象牙芽細胞が保護される場合、治療される欠損は象牙質における欠損である。前エナメル芽細胞および/またはエナメル芽細胞が保護される場合、治療される欠損はエナメル質における欠損である。前セメント芽細胞および/またはセメント芽細胞が保護される場合、治療される欠損は歯根上の硬い表面組織であるセメント質における欠損である。前軟骨細胞および/または軟骨細胞が保護される場合、治療される欠損は軟骨における欠損である。髄細胞は、様々な系譜の様々な細胞の混合集団である。したがって、様々な系譜の様々な細胞種の2つ以上の亜集団が、本発明の方法の標的となり得る。
本方法は、髄細胞を炎症、壊死、またはアポトーシスから保護する活性を有する薬理学的活性化合物を含む製剤の、治療しようとする硬組織欠損への直接適用を含み得る。歯は、そのような製剤を歯の表面および/または齲蝕を除去するために歯に開けた穴に適用することにより、治療することができる。歯を支持する歯槽骨などの局所骨組織は、製剤を骨および/または骨の周囲の組織に注射することにより、治療することができる。他の骨組織は、製剤を骨または欠損部近傍の組織に注射することにより、局所的に治療することができる。製剤は繰り返し投与することができるが、本発明の局面は、本発明の製剤をその後適用することなく単回投与で所望の結果を得ている。
ペプチド化合物
本発明の好ましい態様において、製剤は有効量のペプチド化合物を含む。
本発明のペプチド化合物は、約15〜約28アミノ酸を含むペプチドである。アミノ酸は好ましくは、20種の天然L-アミノ酸の1つである。しかしながら、D-アミノ酸が存在してもよく、同様にアミノ酸類似体が存在してもよい。本発明のペプチドは、3つの以下のアミノ酸配列モチーフのうちの1つを含む:RGD配列などのインテグリン結合モチーフ;グリコサミノグリカン結合モチーフ;および/またはカルシウム結合モチーフ。個々のアミノ酸はLまたはDアイソフォームとしてペプチド内に存在し得るが、好ましくはL型である。本発明のペプチドは、そのC末端がアミド化されてもアミド化されなくてもよく、またはそのN末端がカルボキシル化されてもカルボキシル化されなくてもよい。本発明のペプチドは、L-異性体型またはD-異性体型の、SGDG(配列番号:14)配列などのグリコサミノグリカン結合モチーフを含む。本発明の化合物は生物学的活性によりさらに特徴付けられ、すなわち治癒過程における欠損組織の炎症を低減させ、そのような治癒過程に典型的であるアポトーシス細胞死または壊死性細胞死を保護する。
末端配列としてRGD配列を含む本発明のペプチドの具体例には、以下のものが含まれる:
Figure 2008526871
内部にRGDを含む本発明のペプチドの具体例には、以下のものが含まれる:
Figure 2008526871
本発明のペプチドは、グリコサミノグリカン結合モチーフを含む。グリコサミノグリカン結合モチーフは、共通配列SGXG(配列番号:15、配列中、Xは任意のアミノ酸である)を有する。いくつかの態様では、グリコサミノグリカン結合モチーフは配列SGDG(配列番号:14)を有する。
本発明のペプチドはまた、カルシウム結合モチーフを含む。いくつかの態様では、カルシウム結合モチーフは配列DNDISPFSGDGQ(配列番号:16)を有する。「カルシウム結合モチーフ」という用語には、配列番号:16と1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列も含まれる。多くの態様において特に対象となるのは、配列番号:16のアミノ酸1位、3位、5位、7位、9位、および12位が保存されたモチーフである。したがっていくつかの態様において、本発明のペプチドは、カルシウム結合モチーフとして配列DXDXSXFXGXXQ(配列番号:17、配列中、Xは任意のアミノ酸またはアミノ酸類似体である)を含む。
他の態様において、カルシウム結合モチーフは配列
DX1X2X3X4X5X6X7X8X9X10X11X12
配列中、X1は任意のアミノ酸であり;
X2はD、N、またはSであり;
X3はI、L、V、F、Y、またはWであり;
X4はD、E、N、S、T、またはGであり;
X5はD、N、Q、G、H、R、またはKであり;
X6はGまたはPであり;
X7はL、I、V、M、Cであり;
X8はD、E、N、Q、S、T、A、G、またはCであり;
X9およびX10はそれぞれ独立して任意のアミノ酸であり;
X11はDまたはEであり;かつ
X12はL、I、V、M、F、Y、またはWである
を有する。
他の態様において、カルシウム結合モチーフは配列
Figure 2008526871
配列中、X1、X3、およびX4はそれぞれ独立してD、E、Q、またはNであり;
X2、X5、X6、X7、X9、X10、X11、X12、およびX14はそれぞれ独立して任意のアミノ酸であり;
nは3〜14であり;
mは3〜7であり;
X8はDまたはNであり;かつ
X13はFまたはYである
を有する。
他の態様において、カルシウム結合モチーフは配列
Figure 2008526871
配列中、X1およびX2はそれぞれ独立してL、I、V、M、F、Y、またはWであり;
X3、X4、X6、X7、X8、X10、X11、X12、X15、X18、およびX19はそれぞれ独立して任意のアミノ酸であり;
X5はLまたはKであり;
X9はDまたはNであり;
X13はD、N、S、またはGであり;
X14はFまたはYであり;
X16はEまたはSであり;
X17はF、Y、V、またはCであり;
X20はL、I、V、M、F、またはSであり;
かつX21はL、I、V、M、またはFである
を有する。
他の態様において、カルシウム結合モチーフは配列
Figure 2008526871
配列中、X1、X3、X4、X5、X6、X7、X8、X10、X11、X12、およびX13はそれぞれ独立して任意のアミノ酸であり;かつ
X2およびX9はそれぞれ独立してLまたはIである
を有する。
カルシウム結合モチーフは当技術分野で公知であり、十分に記載されている。例えば、Springer et al. (2000) Cell 102:275-277;Kawasaki and Kretsinger (1995) Protein Prof. 2:305-490;Moncrief et al. (1990 J. Mol. Evol. 30-522-562;Chauvaux et al. (1990) Biochem. J. 265:261-265;Bairoch and Cox (1990) FEBS Lett. 269:454-456;Davis (1990) New Biol. 2:410-419;Schaefer et al. (1995) Genomics 25:638-643;およびEconomou et al. (1990) EMBO J. 9 :349-354を参照されたい。任意の公知のカルシウム結合モチーフを、本発明のペプチド化合物に含めることができる。
本発明のペプチドは、インテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、および/またはカルシウム結合モチーフの少なくとも1つを含む。これらのモチーフは、ペプチド内で相互に任意の順序で存在し得る。モチーフは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10アミノ酸、またはそれ以上のアミノ酸により相互に分離されてよい。さらに、モチーフは1つまたは複数の他のモチーフと重複してもよい。1つの非限定的な例として、配列
Figure 2008526871
を有するペプチドは、相互に重複する3つのすべてのモチーフを含む。このペプチドを本明細書ではAC-100と称する。
上記配列のすべてまたは任意のアミノ酸はD-構造またはL-構造であってよく、また等価な類似体で置換され得る。好ましい態様は、L-構造の天然アミノ酸を含む。
すべてまたは任意の上記配列は、そのC末端がアミド化されても、アミド化されなくても、もしくは別の方法で修飾されてもよく、またはそのN末端がカルボキシル化されても、カルボキシル化されなくても、もしくは別の方法で修飾されてもよい。
さらに、前記ペプチドのいずれもの多量体を提供する。多量体には、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体などが含まれる。したがって、約10〜約50アミノ酸の長さを有する本発明のペプチドは、本ペプチドが2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、またはそれ以上直列に並んで存在するように、任意に介在性リンカーにより多量体化され得る。さらに、本発明の2つまたはそれ以上の異なるペプチドは相互に多量体化して、「ヘテロ多量体」を形成し得る。したがって例えば、多量体は、任意にグリシン残基1〜10個のようなリンカー分子によって、ペプチド結合により共に連結された第1ペプチドおよび第2ペプチドを含み得る。
本発明のペプチド化合物は、例えば当業者に公知の技法である固相ペプチド合成技法を含む任意の公知の方法を用いて得ることができる。ペプチドを合成する方法は当技術分野で周知であり、例えば、「The Practice of Peptide Synthesis」 M. Bodanszky and A. Bodanszky, eds. (1994) Springer-Verlag;およびJones, The Chemical Synthesis of Peptides (Clarendon Press, Oxford)(1994)を含む多くの出版物に十分に記載されている。一般にこのような方法では、ペプチドは、成長しつつあるペプチド鎖が結合されている固相に、活性化した単量体単位を順次付加していくことにより生成される。その開示が参照により本明細書に組み入れられるWO 94/06451に記載されているように、固相合成におけるサブモノマーの使用も対象となる。
固相合成の代わりに、ペプチド化合物をコードするポリヌクレオチドを含む発現系を発現させることにより、本発明の本ペプチド化合物を調製することも可能である。任意の簡便な方法を使用することができ、使用し得る方法は典型的に、本ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の調製、コード領域の発現用ベクターへの導入、宿主細胞のベクターによる形質転換、ならびに産物の発現および回収を含む。上記の各段階を達成する手順は、当技術分野において周知である。Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, Inc.)(1989)を参照されたい。
本明細書において配列番号:13として示される23アミノ酸直鎖状ペプチド、AC-100は、もとは基質細胞外リン糖タンパク質(MEPE)と命名された525アミノ酸の大きな分子内の特異的骨形成モチーフとして見出された(AC-100についてはPCT特許出願PCT/US01/25542を参照されたい;MEPEについては、Rowe, et. al., Genomics 67:56-68, 2000、米国特許第6,818,745号、および米国特許第6,673,900号を参照されたい)。AC-100はこれまでに、BMPおよびIGF-1などのいくつかの増殖因子に匹敵する、骨芽細胞の増殖および分化に対する強力な活性が実証されている(Nagel, et. al., Journal of Cellular Biochemistry 93:1107-1114, 2004)。AC-100はまた、ヒト歯髄細胞の増殖に対する強力な活性も実証されているが、その分化に対する活性は示されていない(Liu, et. al., Journal of Dental Research 83:496-499, 2004)。AC-100およびその類似体ペプチドのいくつかはさらに、線維芽細胞増殖因子(FGF)の同様の活性に匹敵する、マウスにおけるインビトロおよびインビボ骨形成活性が示されている(Hayashibara et. al., Journal of Bone and Mineral Research 19:455-462, 2004)。一方、MEPEは、従来仮定されていた、リン酸の血漿レベルを制御するフォスファトニン活性が実証されている(Rowe, et. al., Bone 2004)。MEPE、AC-100、またはこれらのオルソログもしくは類似体に関連したこれらの先行技術はいずれも、AC-100またはその関連分子が任意の細胞に対する保護活性を有することを示唆していない。当技術分野におけるいかなるものも、これらの分子の抗炎症活性を示唆していない。AC-100は特に、インテグリン結合モチーフおよびグリコサミノグリカン結合モチーフなどのいくつかの特徴的なモチーフにより特徴付けられていたが、その骨形成活性との関連しか判明していなかった(Hayashibara, et. al., Journal of Bone and Mineral Research 19:455-462, 2004)。AC-100のようなペプチドが、細胞に対するアポトーシス細胞死および壊死性細胞死からの保護活性、ならびに炎症の低減を有することは驚くべきことであった。
別の驚くべき事実は、インテグリン結合モチーフ、特にRGD配列を有するペプチドが細胞保護活性を示したことであった。RGD配列を含む合成ペプチドが、ラット胎児骨格の石灰化器官培養系において骨形成および再吸収を阻害することが報告されている(Gronowicz et. al. Journal of Bone and Mineral Research 9(2):193-201 (1994))。
本発明で使用する本発明のペプチド化合物の「有効量」とは、適切な対照と比較した場合に少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、もしくは少なくとも約60%、またはそれ以上、炎症を低減させる、および/または細胞をアポトーシス細胞死もしくは壊死性細胞死から保護する量である。実験動物の場合の適切な対照は、ペプチドで処置していない動物、例えば媒体で処置するかまたは無関係のペプチドで処置した動物である;ヒト対象の場合には、偽薬で処置したヒト対象、または本発明のペプチドで処置する前のヒト対象である。
いくつかの態様では、本発明のペプチド化合物の有効量は、適切な対照と比較した場合に少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、もしくは少なくとも約60%、またはそれ以上、治癒過程に関与する組織およびその周囲の組織の炎症反応を低減させる、したがって壊死またはアポトーシスによって死滅する細胞の数を減少させる量である。
別の態様では、本発明のペプチド化合物の有効量は、適切な対照と比較した場合に少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、もしくは少なくとも約60%、またはそれ以上、治癒過程にある組織またはその近傍の疼痛を低減させる量である。
所与のペプチドが個体において炎症および/または壊死性細胞死および/またはアポトーシス細胞死を低減させるかどうかは、リンホカインまたはサイトカインなどの生物学的炎症性化合物の産生の減少、適切な臨床的疼痛スコアによる疼痛の低減、骨および/または歯の生存度の増加などの任意の1つまたは複数に関連する任意の公知のパラメータを測定する任意の公知のアッセイ法を用いて決定することができる。そのような方法は当技術分野で標準的である。
本発明の方法による治療に適した個体には、これらに限定されないが、齲歯、歯周病、抜歯、歯の喪失、歯科インプラントの喪失または緩み、骨粗鬆症、パジェット病、腎性骨異栄養症、骨軟化症、他の原因による、癌による骨溶解、骨折、副甲状腺機能亢進症、および齲蝕を含む、骨および歯などの骨格組織の欠損を有する個体である。このような個体には、高齢者個体、閉経後女性、腎移植患者、および前述の疾患のいずれかを有するかまたはそのリスクがある個体が含まれる。
適用方法
本発明のペプチド化合物は、インビボ法およびエクスビボ法を含む、薬物送達に適した任意の利用可能な局所投与の方法および経路を用いて個体に投与される。
従来の薬学的に許容される局所適用方法には、筋肉内、皮下、皮内、局所適用、およびその他の非経口または局所投与方法が含まれる。本発明のペプチド化合物は、単回用量または複数回用量で投与され得る。
本発明のペプチド化合物は、従来の薬物の送達に適した任意の利用可能な従来の方法および経路を用いて対象に局所投与され得る。
局所投与の非経口経路には、必ずしもこれらに限定されないが、局所、経粘膜、経皮、皮下、筋肉内、関節内、脊髄内、および胸骨内経路が含まれる。非経口適用は、本発明のペプチドの局所送達が達成されるように行われるべきである。
典型的に、本発明のペプチド化合物は、これを必要とする個体に送達するための薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化される。
皮膚または粘膜を介する本発明のペプチド化合物の投与方法には、必ずしもこれらに限定されないが、適切な薬学的調製物の局所適用、経皮伝達、注射、および表皮からの投与が含まれる。本発明のペプチド化合物の送達には、本発明のペプチド化合物を含むパッチもまた意図される。パッチは、皮膚、または歯肉組織などの他の組織に適用することができる。経口送達系に適した任意の公知のパッチ送達系が使用され得る。例えば米国特許第6,146,655号を参照されたい。
本発明の特定の態様の1つとして、欠損を任意の種類の非分解性密封剤で密封する前に、AC-100の生理食塩水製剤を歯の欠損部の露出した歯髄の表面に直接適用することができる。欠損が歯髄に到達するほど深くない事象においても、欠損を密封する前に、AC-100の生理食塩水製剤を欠損部の象牙質の表面に直接適用することができる。本発明の実施例において立証されるように、齲歯の現在の標準的な治療手順にこの簡単な段階を加えることで、歯の欠損に典型的であり、密封剤に由来する化学物質によって悪化する場合の多い炎症から歯髄組織が十分に保護され、それにより、欠損を密封してから数時間または数日以内に対象が通常経験する刺激および疼痛が低減される。さらに、そのような方法でのAC-100製剤の適用は、アポトーシス細胞死または壊死性細胞死から歯髄細胞を保護し、歯の高い生存度を保持し、歯髄を覆いかつ保護する新たな象牙質の再生を補助する。先行技術に記載されているように、AC-100は、インビトロにおいて歯髄細胞の増殖を促進することが既に知られている。したがって、露出した歯髄にAC-100を適用することが象牙質形成を助け得ることが予想され得、このことは本発明の実施例において実際に立証された。しかしながら、本発明において、AC-100生理食塩水製剤の簡単な適用が歯髄および歯髄細胞を保護し、歯の欠損を治療する上で著しい臨床的有益性を提供することが驚くべきことに実証された。本方法は、これらに限定されないが、生物材料、ポリマー樹脂、金属、合金、カルシウム塩などを含む任意の歯科密封剤と組み合わせることができる。そのような歯科密封剤の例としては、象牙質切片、綿、コラーゲンスポンジ(Sulzer Dentalなど)、Vitrebond(3M/ESPE)、Single Bond(3M/ESPE)、Clearfil(Kuraray)、Tetric(Vivadent)、およびFiltek Z250(3M/ESPE)が、本明細書に記載の方法に関してAC-100と組み合わせて、またはAC-100の担体材料として使用可能なことが示された。
本発明のペプチドはまた、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を個体に投与することにより、個体に送達することもできる。「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」という用語は本明細書において互換的に用いられ、任意の長さの重合体型ヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはこれらの類似体を含み得る。発現には、発現カセットを使用し得る。発現ベクターは、誘導性または構成的であってよい転写および翻訳開始領域、ならびに転写および翻訳終結領域を提供し、コード領域は転写開始領域の転写調節下で機能的に連結される。これらの調節領域は、本ペプチドをコードする遺伝子にとって天然のものであってもよいし、または外因性供給源に由来してもよい。
発現ベクターは一般に、プロモーター配列の近傍に位置する利便な制限部位を有し、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供する。発現宿主において作動する選択マーカーが存在してもよい。発現ベクターは融合タンパク質の生成に使用することができ、この場合、外因性融合ペプチドは付加的な機能性、すなわちタンパク質合成の増加、安定性、規定の抗血清との反応性、酵素マーカー(例えば、β-ガラクトシダーゼ)などを提供する。
発現カセットは、転写開始領域、遺伝子またはその断片、および転写終結領域を含めて調製し得る。ベクターには、これらに限定されないが、プラスミド;コスミド;ウイルスベクター;人工染色体(YAC、BACなど);ミニ染色体などが含まれる。ベクターは、例えばShort Protocols in Molecular Biology, (1999) F. Ausubel, et al., eds., Wiley & Sonsを含む、当技術分野で周知の数多くの出版物に十分に記載されている。
発現ベクターを使用して、本ペプチドをコードする核酸分子を個体の細胞に導入することができる。このようなベクターは一般に、プロモーター配列の近傍に位置する利便な制限部位を有し、核酸配列の挿入を提供する。転写カセットは、転写開始領域、標的遺伝子またはその断片、および転写終結領域を含めて調製し得る。転写カセットは、例えばプラスミド;レトロウイルス(例えば、レンチウイルス);アデノウイルスなどの様々なベクターに導入することができ、この場合、ベクターは細胞内に一過的にまたは安定して、通常は少なくとも約1日、より一般的には少なくとも約数日〜数週間維持され得る。
本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、ウイルス感染、マイクロインジェクション、または小胞融合を含む多くの経路で組織または宿主細胞に導入することができる。Furth et al. (1992), Anal Biochem 205:365-368に記載されているように、ジェット式注射を筋肉内投与に使用することもできる。金微小粒子を発現ベクターで被覆した後に皮膚細胞に照射する手順に関する文献(例えば、Tang et al. (1992), Nature 356:152-154)に記載されているように、発現ベクターを金微粒子に被覆して、微粒子銃装置すなわち「遺伝子銃」により皮内に送達することができる。
用量
使用する用量は達成すべき臨床目標に応じて変動するが、適切な用量範囲は、最大約1μg、約1,000μg、約10,000μg、約25,000μg、または約50,000μgまでの本発明のペプチドを提供する範囲である。本発明のペプチドは、単回用量で、または長期にわたる複数回のより少ない用量で投与することができる。1つの態様にでは、製剤は一度だけ投与され、再度投与されることはない。
炎症の低減、疼痛の低減、壊死細胞数の減少、アポトーシス細胞数の減少、または他のパラメータに及ぼす効果は、用量依存的であり得る。したがって、効力を2倍に増強するには、各単回用量の濃度を2倍にする。所望の治療目標を達成するためには、用量増加が必要な場合もある。したがって本発明は、骨喪失、骨強度、または他のパラメータに及ぼす効果を提供および維持するための、複数回用量の投与を意図する。複数回用量を投与する場合には、次の用量を前回用量の約16週、約12週、約8週、約6週、約4週、約2週、約1週、約5日、約72時間、約48時間、約24時間、約12時間、約8時間、約4時間、もしくは約2時間以内、またはそれ未満の期間内に投与する。
本開示によって提供される教示を考慮して、臨床分野の当業者は、本発明によるペプチドの投与の適切なパラメータを熟知するようになるか、またはこれを容易に確認することができる。
製剤
一般にペプチド化合物は、宿主に送達するための薬学的に許容される組成物中に調製される。本発明のペプチド化合物との使用に好ましい薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれ得る。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または生理食塩水および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または不揮発性油が含まれる。本発明のペプチド化合物を含む組成物は、当技術分野で周知の手段により凍結乾燥した後に、再構成して本発明に従って使用することもできる。また、リポソーム送達用の製剤、およびマイクロカプセル化されたペプチド化合物を含む製剤も対象となる。さらに、本発明のペプチド化合物は、齲歯、歯と歯槽骨との間のポケット、歯が抜け落ちた後または抜歯した後の歯槽、劣化した歯槽骨、顎骨、または副鼻腔骨などの、硬組織内または硬組織間の欠損空間に充填するための適切な担体材料と共に製剤化することができ、担体は、コラーゲン、ヒアルロン酸、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(特に、β-リン酸三カルシウム)、および骨格組織の欠損に充填する際に用いられる樹脂コンポジットからなる群より選択される。
一般に、薬学的組成物は、懸濁液、軟膏、ローションなどの様々な形状で調製され得る。いくつかの態様においては、本発明のペプチド化合物の送達が経口組織に対するものである場合、本発明のペプチド化合物は、練り歯磨き、口内洗浄剤に製剤化することができ、またはデンタルフロスもしくは歯ブラシに被覆するかもしくは含浸させることができる。経口および局所使用に適した製薬等級の有機または無機担体および/または希釈剤を使用して、治療活性化合物を含む組成物を作製することができる。当技術分野で公知の希釈剤には、水性媒体、植物性および動物性油脂が含まれる。安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させるための塩類、または適切なpH値を保つための緩衝液、および皮膚浸透促進剤を助剤として用いることができる。例えば抗病原体剤(例えば、抗菌剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤など)、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなどの保存剤およびその他の添加物も存在してよい。
本発明のペプチド化合物は、硬組織形成を促進するか、または硬組織の喪失を妨ぐ任意の他の公知の薬剤と共に投与することができる。したがって、併用療法が意図される。本発明のペプチドと共に投与され得る他の薬剤には、これらに限定されないが、BMP、TGF、FGF、PDGF、およびIGFのファミリー分子などの骨格成長因子、ならびに水酸化カルシウムおよび硫酸カルシウムなどの種々のカルシウム塩を含む歯髄被覆剤が含まれる。本発明のペプチド化合物は、骨喪失を減少させる別の薬剤と同時に(例えば、混合して、または別個の製剤として)投与することができ;または骨喪失を減少させる別の薬剤の約15分、約30分、約60分、約2時間、約5時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約4日、約7日以内、またはそれ以上の期間内に投与することができる。さらに、本発明の2種またはそれ以上のペプチド化合物を同時に、または相互に約15分、約30分、約60分、約2時間、約5時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約4日、約7日以内、またはそれ以上の期間内に投与することができる。特定の態様においては、AC-100は一度だけ投与され、再度投与されることはない。
実施例
以下の実施例は、当業者に本発明の製造法および使用法の完全な開示および説明を提供するために提示するものであり、本発明者らが自身の発明と見なす範囲を制限することを意図するものではなく、下記の実験が実施した実験のすべて、または実施した実験のみを示していることを意図するものでもない。使用した数字(例えば、量、温度など)に関しては正確性を期すよう努力したが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。特記しない限り、割合は重量割合であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏、圧力は大気圧またはその近傍である。
実施例1
イヌの臼歯の深い欠損を、AC-100と称する本発明のペプチドを含む製剤で処置した。AC-100は初代ヒト歯髄細胞の増殖を促進するインビトロ活性を有することが知られていることから、本発明の主目的は欠損部の新たな象牙質再生の程度を評価することにあった。歯科医により歯髄覆罩法に広く用いられている「Dycal」という水酸化カルシウム製剤を、陽性対照として使用した。Dycalで処置した歯は、欠損部における新たな象牙質の中程度の再生を示し、また歯髄腔における重篤な炎症反応ならびに多くのアポトーシス細胞死および壊死性細胞死を示した。一方、AC-100製剤で処置した歯は、歯髄腔における炎症反応およびアポトーシス細胞死または壊死性細胞死のほぼ完全な低減を示し、それと同時に齲歯における新たな象牙質組織の優れた再生を示した。本試験から、歯髄組織(歯の髄組織である)を保護することが、欠損を治癒するためのさらなる効果を硬組織再生に提供することが明らかに実証された。
試験手順の概要
10ヶ月齢ビーグル犬の上顎歯8本(イヌ1頭の口腔のそれぞれの側の小臼歯2本および臼歯1本)の頬(口唇)側に、歯髄腔に貫通することなく深度Vの調製物を作製した。X線写真を撮り、歯髄腔の位置を確認した。歯軸(歯髄腔)と垂直に窩洞(欠損)を穿孔した。欠損を確認した後、処置グループ1の左側の歯を、様々なAC-100用量(2 uLの0.1 mg/mL;1 mg/mL;10 mg/mLおよび100 mg/mL溶液)で処置した。乾燥した窩洞中に溶液を2分間置いた後、窩洞の底部をVitrebondで被覆し、歯をコンポジットで密封した。処置グループ1の右側の歯は、Scotchbond Etchant(Single Bond接着剤系)で15秒間処置し、水で洗浄し、エアーで乾燥させ、それぞれ様々なAC-100用量(2 uLの0.1 mg/mL;1 mg/mL;10 mg/mLおよび100 mg/mL溶液)で処置した。乾燥した窩洞中に溶液を2分間置いた後、窩洞の底部をSingle Bondで被覆し、光硬化させ、歯をコンポジットで密封した。
処置グループ2の歯を、それぞれ様々なAC-100用量(2 uLの0.1 mg/mL;1 mg/mL;10 mg/mLおよび100 mg/mL溶液)で処置した。乾燥した窩洞中に溶液を2分間置いた後、窩洞に綿を充填し、Cavitで密封した。処置グループ2のイヌは、1週間(左側の歯)または2週間(右側の歯)にわたり、週に3回再処置した。各再処置に際しては、一次的なCavit充填剤を除去し、歯を様々なAC-100用量で再処置した。乾燥した窩洞中に溶液を2分間置いた後、窩洞に綿を充填し、Cavitで密封した。
処置グループ3の歯は、陰性対照(生理食塩水)または陽性対照(Dycal)として使用した。動物1頭当たり、陰性対照として使用した4本の歯のうち2本を、生理食塩水2 uLで処置した。乾燥した窩洞中に溶液を2分間置いた後、窩洞の底部をVitrebondで被覆し、歯をコンポジットで密封した。陰性対照として使用した残りの歯2本は、Scotchbond Etchant(Single Bond接着剤系)で15秒間処置し、水で洗浄し、エアーで乾燥させ、生理食塩水2 uLで処置した。乾燥した窩洞中に溶液を2分間置いた後、窩洞の底部をSingle Bondで被覆し、光硬化させ、歯をコンポジットで密封した。陽性対照として使用した処置グループ3の動物1頭当たり2本の歯は、標準的な施術手順を用いてDycalで処置し、コンポジットで密封した。試験手順を図1に示す。
処置
それぞれの処置グループの歯は以下の投与計画に従って処置し、これを図2に示す。
A. Vitrebondおよびコンポジット
1. 上弓のX線写真を撮る。
2. 8ラウンドバーで窩洞を穿孔し;インバーテッドコーン(#34)で窩洞の下を切り取り;エアーで窩洞を乾燥させる。
3. 窩洞に2μlのAC-100または生理食塩水(陰性対照)を添加し、2分間置き;エアーで穏やかに乾燥させる。
4. Vitrebond(登録商標)で密封し(糊状剤のように塗る、加圧しない);30秒間光硬化させる。
5. Single Bond(登録商標) Etchantを用いて15秒間エッチング処理し;水で10秒間勢いよくすすぎ;窩洞をエアーで乾燥させる。
6. Single Bond(登録商標)を添加し;10秒間光硬化させる。
7. Tetric Flow(登録商標)を添加し、20秒間光硬化させ;修復部を滑らかにする。
B. Single Bondおよびコンポジット
1. 上弓のX線写真を撮る。
2. 8ラウンドバーで窩洞を穿孔し;インバーテッドコーン(#34)で窩洞の下を切り取り;エアーで窩洞を乾燥させる。
3. Scotch Bond(登録商標) Etchantを15秒間適用し;水で10秒間勢いよくすすぎ;窩洞をエアーで乾燥させる。
4. 窩洞に2μlのAC-100または生理食塩水(陰性対照)を添加し、2分間置き;エアーで穏やかに乾燥させる。
5. Single Bond(登録商標)を添加し;10秒間光硬化させる。
6. Tetric Flow(登録商標)を添加し;20秒間光硬化させ;修復部を滑らかにする。
C. Dycal
1. 上弓のX線写真を撮る。
2. 8ラウンドバーで窩洞を穿孔し;インバーテッドコーン(#34)で窩洞の下を切り取り;エアーで窩洞を乾燥させる。
3. Dycal(登録商標)で底部を被覆し、2分間置く。
4. Single Bond(登録商標)を添加し;10秒間光硬化させる。
5. Tetric Flow(登録商標)を添加し、20秒間光硬化させ;修復部を滑らかにする。
D. 多重処置‐Cavit
1. 上弓のX線写真を撮る。
2. 8ラウンドバーで窩洞を穿孔し;インバーテッドコーン(#34)で窩洞の下を切り取り;エアーで窩洞を乾燥させる。
3. 窩洞に2μlのAC-100または生理食塩水(陰性対照)を添加し、2分間置き;エアーで穏やかに乾燥させる。
4. 綿玉を詰め;Cavit(登録商標)で密封し;一次的修復部を滑らかにする。
組織学
検体を得た後、検体を処理し、脱灰し、パラフィンに包埋した。新たな象牙質形成を評価するために、上顎骨検体をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。免疫組織化学的評価のため、アポトーシスの評価に関してはTUNELアッセイ法で(スコア0〜4)、および炎症評価に関してはCD45抗体で染色した。
組織病理学
染色した切片の病理組織学的評価は、処置グループの認識なしで行った。質的観察は、被験材料製剤と接触した可能性のある、任意の軟組織を含めた歯および下層の骨の解析を含んだ。修復部位および軟組織における細胞浸潤(スコア0〜16)および炎症反応(スコア0〜4)もまた評価した。
組織形態計測
OsteoMeasure(登録商標)画像解析システムおよび関連ソフトウェア(バージョン4.00c)を用いて、トルイジンブルー染色液で染色した切片で静的組織形態計測解析を行い、試料内に存在する成長過程の象牙質のパーセント領域を決定した。成長過程の象牙質は、0〜4の範囲の象牙質形成スコアにより評価した。
結果
1. 外科処置後28日目に、生理食塩水およびSingle bond+コンポジットまたはVitrebond+コンポジットのいずれかを用いて密封した歯は、最小限の新たな象牙質形成を示した。これらの条件下において、陽性対照であるDycalは、新たな象牙質形成の限界促進を示した。AC-100の適用は、単回適用および複数回適用スケジュールのいずれにおいても、陰性対照を上回る新たな象牙質形成の用量依存的促進を示し、AC-100の最も高い2用量(20 ugおよび200 ug)では、適用スケジュールに応じてDycalに匹敵するかまたはそれよりも良好な結果を示した(図3)。
2. 単回適用スケジュールでは、使用したAC-100のほぼすべての用量において、Single Bond+コンポジットによる密封(最長24時間までいくらかの持続放出を示した)がVitrebond+コンポジットによる密封よりも著しく良好に機能した(図3A)。
3. 複数回適用スケジュールは、単回適用スケジュールよりも著しく良好に機能した。使用した最高用量のAC-100(200 ug)では、1週間にわたる週3回の適用スケジュールで、本研究で認められる新たな象牙質形成の最大限の促進を達成するのに十分であり、これはDycalよりも2.8倍高く、生理食塩水よりも8倍高かった(図3B)。
適用した最高用量のAC-100(最良の結果を示した)のみを見てみると、特に単回適用が、現時点での標準処置であるDycalに匹敵するものの限界活性を示したことから、AC-100の持続放出がその活性に非常に有益であることが実証された。さらに、単回適用スケジュールでは、使用したAC-100のほぼすべての用量において、Single Bond+コンポジットによる歯の密封(最長24時間までいくらかの持続放出を示した)がVitrebond+コンポジットによる密封よりも著しく良好に機能した。さらに、使用した最高用量のAC-100(200 ug)では、1週間にわたる週3回の適用スケジュールで、本研究で認められる新たな象牙質形成の最大限の促進を達成するのに十分であり、これはDycalよりも28倍高く、生理食塩水よりも8倍高かった(図4)。
外科処置後3日目に、生理食塩水およびSingle bond+コンポジットで密封した歯は、炎症および線維化反応の両方からなる、処置に対する歯髄組織の反応を示した。これらの条件下において、生理食塩水およびVitrebond+コンポジットまたはDycalで処置した歯は、処置に対する組織反応の増加を示した。AC-100の適用は、Single BondおよびVitrebondによって起こる組織反応の用量依存的阻害を示し、最高用量のAC-100(200 ug)は歯髄反応を完全に消失させた。
外科処置後28日目では、歯髄組織反応はすべての処置において最小限にとどまり、主な反応は繊維化であった(図5)。
外科処置後3日目に、生理食塩水およびSingle bond+コンポジットを用いて密封した歯は、歯髄組織の炎症反応を示した。これらの条件下において、生理食塩水およびVitrebond+コンポジットまたはDycalで処置した歯は、炎症の増加を示した。AC-100の適用は、適用したほぼすべての用量において歯髄炎症を完全に消失させた。
外科処置後28日目では、歯髄炎症はすべての処置において最小限にとどまった(図6)。
外科処置後3日目および28日目のいずれにおいても、AC-100の適用は、適用したほぼすべての用量において、歯髄のアポトーシス細胞数を用量依存的に減少させた(図7)。
外科処置後3日目のAC-100による歯髄組織反応、アポトーシス細胞数、および炎症の用量依存的低減により、AC-100がこれらの条件下において有益な組織保護特性を有することが実証される。
結論として、AC-100は、イヌでの間接的歯髄覆罩研究において、用量および適用法依存的様式で新たな象牙質形成を促進した。1週間にわたる週3回の200 ug AC-100の適用は、本研究で認められる新たな象牙質形成の最大限の促進を達成し、これはDycalよりも2.8倍高く、生理食塩水よりも8倍高かった。興味深いことには、AC-100の作用機序は、現在のところ臨床用途に使用できる象牙質刺激剤の作用機序とは著しく異なる。現在認可されている薬剤は、歯髄組織の非生理的刺激を介して新たな象牙質形成を促進するもので、局所的壊死をもたらし、そこから炎症を、そして後に修復反応をもたらし、これが新たな象牙質の沈着を促進するのに対して、AC-100は、象牙質を産生するよう既存の歯髄細胞を刺激することにより、炎症およびアポトーシス反応を低減させ、組織保護的なより生理的様式でその活性を達成する。
実施例2
イヌの抜歯後の歯槽を、AC-100と称する本発明のペプチドを含む製剤で処置した。AC-100の同化作用が初代間葉系幹細胞培養においてインビトロで示されていることから、本研究の目的は欠損部の新たな骨再生を評価することにあった。具体的には、AC-100は、細胞の増殖および細胞の骨芽細胞への分化を用量依存的に誘導することが示されている。これは、新生仔マウス頭蓋冠の器官培養およびマウスの頭蓋冠へのインビボ注射で示されている。AC-100はまた、骨折部位近傍での局所注射により、ラットの骨折治癒を促進することも実証されている(Lazarov, et. al., ASBMR 2004)。これらの先行研究の結果と本明細書の実施例1によって示される象牙質形成活性を考え併せ、AC-100が、イヌの抜歯後の歯槽骨の歯槽に骨橋を再構築する有益な活性を有するか否かを評価することを意図した。
試験手順の概要
片側につき1本の下顎小臼歯を抜去した。抜歯窩の歯槽内中隔を除去し、創縁を適合させた。100μLの生理食塩水、10 mg/mL AC-100溶液、または100μLの100 mg/mL AC-100溶液に浸漬したコラーゲンスポンジを、抜歯窩に挿入した。結節縫合により閉鎖した。抜歯から歯槽の充填までのこの手順を、図8に模式的に示す。時系列および歯の番号付けを図9に示す。複数回処置グループに関しては、100μLの10 mg/mlまたは100 mg/ml AC-100をさらに注射した。
1. 処置グループI(イヌ10頭‐3日目および28日目の各時点につき5頭):
a. 右側:#407の周囲に歯肉弁を形成し;#407を抜去し(70ILで切開);55ILで歯槽内中隔を除去し;X線写真を撮り;歯槽の深さを測定し;コラーゲンスポンジを100μLの100 mg/ml AC-100に浸漬し;コラーゲンスポンジを歯槽に挿入し;歯槽弁を4-0 Maxonで閉鎖する。
b. 左側:#307の周囲に歯肉弁を形成し;#307を抜去し(701Lで切開);551Lで歯槽内中隔を除去し;X線写真を撮り;歯槽の深さを測定し;コラーゲンスポンジを100μlの10 mg/ml AC-100に浸漬し;コラーゲンスポンジを歯槽に挿入し;歯槽弁を4-0 Maxonで閉鎖する。
2. 処置グループ2(イヌ10頭‐3日目および28日目の各時点につき5頭):
a. 右側:#407の周囲に歯肉弁を形成し;#407を抜去し(70ILで切開);55ILで歯槽内中隔を除去し;X線写真を撮り;歯槽の深さを測定し;コラーゲンスポンジを100μLの100 mg/ml AC-100に浸漬し;コラーゲンスポンジを歯槽に挿入し;歯槽弁を4-0 Maxonで閉鎖する。これらのイヌは週に3回沈静させて、100μLの100 mg/ml AC-100を、最初の歯槽測定により決定した歯槽の最深部の1/3の位置に注射した。
b. 左側:#307の周囲に歯肉弁を形成し;#307を抜去し(70ILで切開);55ILで歯槽内中隔を除去し;X線写真を撮り;歯槽の深さを測定し;コラーゲンスポンジを100μLの10 mg/ml AC-100に浸漬し;コラーゲンスポンジを歯槽に挿入し;歯槽弁を4-0 Maxonで閉鎖する。これらのイヌは週に3回沈静させて、100μLの10 mg/ml AC-100を、最初の歯槽測定により決定した歯槽の最深部の1/3の位置に注射した。
3. 処置グループ3(イヌ6頭‐3日目および28日目の各時点につき3頭):
a. 右側:#407の周囲に歯肉弁を形成し;#407を抜去し(701lで切開);551lで歯槽内中隔を除去し;X線写真を撮り;歯槽の深さを測定し;コラーゲンスポンジをBMP2に浸漬し;コラーゲンスポンジを歯槽に挿入し;歯槽弁を4-0 maxonで閉鎖する。
b.左側:#307の周囲に歯肉弁を形成し;#307を抜去し(701lで切開);551lで歯槽内中隔を除去し;X線写真を撮り;歯槽の深さを測定し;コラーゲンスポンジを100μlの生理食塩水に浸漬し;コラーゲンスポンジを歯槽に挿入し;歯槽弁を4-0 maxonで閉鎖する。
組織学
検体を得た後、検体を処理し、脱灰し、パラフィンに包埋した。骨芽細胞を評価するために、下顎骨検体をトルイジンブルーで染色した。
組織病理学
染色した切片の病理組織学的評価は、処置グループの認識なしで行った。質的観察には、被験材料製剤と接触した可能性のある、任意の軟組織を含めた下層の骨の解析を含んだ。修復部位および軟組織における線維組織被包、細胞浸潤、および炎症反応もまた評価した。
組織形態計測
OsteoMeasure(登録商標)画像解析システムおよび関連ソフトウェア(バージョン4.00c)を用いて、トルイジンブルー染色液で染色した切片で静的組織形態計測解析を行い、試料内に存在する骨成長のパーセント領域を決定した。新たに形成された骨の量および質をそれぞれ0〜4にスコア化し、まとめて評価した。炎症および線維組織の存在などの組織反応もまた、それぞれのスコア化システムを用いて評価した。
結果
1. 外科処置時の単回適用は、コラーゲンスポンジ上の1 mgおよび10 mg AC-100のいずれも、骨成長の促進をもたらした。結果のグラフを図10に示す。
2. 抜歯窩に直接AC-100を複数回再適用しても、骨成長には単回適用療法ほど効果的ではなかった。
骨成長指標は、独立してアッセイした2つのパラメータ‐欠損部を架橋する新生骨の量および新生骨の質(層板骨 対 線維骨)からなる。2つのパラメータを分離すると、AC-100が、欠損部に形成される新生骨の質を用量依存的に向上させ、それと同時にこのペプチドが、欠損部が新生骨で満たされる速度を用量依存的に減少させることが認められた。
デントニンAC-100によって起こる、欠損部に形成される新生骨の質の用量依存的向上はいくつかの要因に起因すると考えられ、そのうち最も顕著なものは以下のものである:
1. 新たに形成される骨の再構築の速度の増加であり、これは骨質の向上および欠損部架橋の速度の減少の原因となり得る。
2. 抜歯後の治癒速度の増加であり、これによってより早く骨形成が開始され、そのため骨再構築により多くの時間が与えられる。結果のグラフを図11に示す。
抜歯後、抜去部位の歯槽骨の再構築および再吸収が、創傷治癒を特徴付ける。抜歯窩の治癒は、凝塊の形成、ならびに(i) 仮の結合組織基質、(ii) 線維骨、および(iii) 層板骨、ならびに骨髄によるその置換を含む一連の事象を含む。治癒過程では、硬組織架橋‐皮質骨‐が形成され、これが歯槽を「閉鎖する」。したがって、抜歯窩の治癒は、長骨の骨折における新たな組織形成を特徴付ける事象と共通する多くの特徴を有するようである。
イヌでのこれらの治癒過程の時系列は、およそ以下の通りである。治癒の最初の3日間で、血塊が抜去部位の大部分を占有するのが認められる。7日後、この血塊は一部、仮の基質(PM)によって置き換えられる。14日目には、歯槽の組織は、PMおよび線維骨(粗い波状の混交した、ランダムに配向したコラーゲン線維束およびランダムに分布した骨細胞窩を有する高度に血管新生化した骨組織であり、胚および胎児骨ならびに骨折仮骨に見出され、通常、再構築されて層板骨で置き換えられる)からなる。30日目には、石灰化した線維骨が歯槽容積の88%を占有する。この組織は180日目には14%にまで減少し、層板骨(数ミクロン厚の層板のシートに組織化され、その中で平行に配向している微細なコラーゲン線維を有する緻密骨)で置き換えられる。30日目の検体では骨髄(BM)によって占有されている部分は約0%であるが、180日目には85%にまで増加する。
28日目にアッセイした2つの骨成長パラメータは、以下の事項を示す:
1. 新生骨の質:新生骨がこの時点で到達した成熟段階を表す(未熟段階である線維骨、ならびに成熟段階である層板骨および骨髄)。
2. 新生骨による欠損架橋:形成された硬組織架橋が歯槽を「閉鎖する」程度を表す。
本発明者らが先に考察したように、AC-100によって起こる、欠損部に形成される新生骨の質の用量依存的向上は一部に、抜歯後の治癒速度の増加に起因すると考えられ、これによってより早く骨形成が開始され、そのため骨再構築により多くの時間が与えられる。この仮説を確認するため、AC-100が、早い時点‐3日目で創傷治癒に及ぼす効果を観察した。
抜去後3日目に、AC-100で処置した抜歯窩における組織反応の用量依存的増加が認められた(図12)。これは主に、欠損部に存在する結合組織の増加に起因し、創傷における炎症反応の増加に起因するものではなかった。治癒の最初の3日間では、血塊が抜去部位の大部分を占有すると考えられ(生理食塩水対照の場合と同様に)、仮の基質(PM)によるその置き換えは7日目まで予期されないことから、欠損部を架橋する結合組織およびPM形成の用量依存的増加は、欠損治癒の早期における創傷治癒速度の増加の徴候である。
欠損部における結合組織および仮基質の増加の運命をさらに追跡するため、これが骨にまで成熟するか(プラスの効果)または線維性瘢痕組織(マイナスの効果)を形成するかを確認することを所望した。そのため、AC-100または生理食塩水対照で処置した欠損部における線維組織の存在を、3日目および28日目に比較した(図13を参照されたい)。抜去後3日目に、AC-100で処置した欠損部における結合組織および仮基質の用量依存的増加を認めた。しかしながら、28日目までには、AC-100で処置した欠損部と生理食塩水で処置した欠損部における結合組織の割合は匹敵し、したがってAC-100が、結合組織および仮基質の成熟を誘導して、線維性瘢痕組織でなく新生骨を形成させることが示唆される。
したがって、AC-100が抜歯後の治癒速度の増加を促進し、このためにより早い骨形成および再構築を促進するという知見から、AC-100で処置した欠損部に形成される新生骨の質の用量依存的向上を説明することができる。図14を参照されたい。しかしながら、これによって、新たに形成される骨の再構築速度の増加が、歯槽骨再生に及ぼすAC-100の効果において同様に役割を果たし得る可能性が排除されるわけではない。
3日目および29日目のいずれにおいても、AC-100または生理食塩水対照で処置した損傷間に炎症反応の顕著な相違はなかった(図15を参照されたい)。
本発明をその特定の態様に関して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができかつ等価物を代用できることが当業者に理解されねばならない。さらに、特定の状況、物質、対象組成物、工程、工程段階、または段階を本発明の目的、精神、および範囲に適合化させるために、多くの修正がなされ得る。そのような修正はすべて、本明細書に添付する特許請求の範囲内であることが意図される。
本発明は、添付の図面と併せて詳細な説明を読むことにより最も理解される。一般的な習慣に従い、図面の様々な特徴は一定の縮尺でないことを明記しておく。一方、様々な特徴の寸法は、明瞭さのために任意に拡大または縮小してある。図面には以下の図が含まれる:
本明細書に記載の実施例1の種々のグループの時系列を示す。 本明細書に記載の実施例1に記載する処置手順の略図である。 それぞれ実施例1におけるAC-100の単回適用または複数回適用による28日目の象牙質形成を示す。 実施例1における種々の治療計画による28日目の象牙質形成を要約する。 5Aおよび5Bを含み、実施例1における種々の治療計画の最初の処置後3日目(5A)および28日目(5B)の組織反応を示す。 6Aおよび6Bを含み、実施例1における齲歯の密封後3日目(6A)および28日目(6B)の歯髄における炎症の程度を示す。 7Aおよび7Bを含み、実施例1における齲歯の密封後3日目(7A)および28日目(7B)のアポトーシス細胞数を示す。 本明細書に記載の実施例2に記載する研究手順の略図である。 実施例2の種々のグループの時系列を示し、また歯の番号付け方式を示す。 実施例2の歯槽再生研究における、28日後の骨成長を示す棒グラフである。 実施例2の歯槽再生研究での28日目における、新生骨の質および新生骨による欠損架橋、ならびにこれら2つの混合データを示す3つの棒グラフを示す。 3日目の組織反応の結果を示す3つの棒グラフを示す。 3日目および28日目の線維組織の存在を示す2つの棒グラフを示す。 それぞれ歯槽再生研究において3日目および28日目に得られた結果を示す棒グラフである。 それぞれ3日目および28日目の歯槽再生研究における炎症に関する結果を示す棒グラフである。

Claims (24)

  1. 以下を含む製剤:
    骨伝導性担体;および
    骨成長を強化する、配列中の15〜28アミノ酸からなるペプチド化合物であって、各アミノ酸がD-構造またはL-構造であってよく、配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、およびカルシウム結合モチーフから選択される結合モチーフを含むペプチド化合物。
  2. ペプチドが生体適合性ポリマーに結合している、請求項1記載の製剤。
  3. 生体適合性ポリマーが、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(DL-ラクチド)(DL-PLA)、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(DL-PLG)、ポリ(L-ラクチド)(L-PLA)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(L-PLG)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、コポリオキサレート、およびポリカーボネートから選択される、請求項2記載の製剤。
  4. ペプチドが配列
    Figure 2008526871
    を有するペプチドである、請求項1記載の製剤。
  5. 担体がコラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、およびβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)から選択される、請求項4記載の製剤。
  6. 以下を含む、患者の同定された骨格組織欠損領域の炎症を低減させる製剤:
    薬学的に許容される担体;および
    同定された骨格組織欠損領域の炎症を低減させるのに十分な量のペプチド化合物であって、配列中に約15〜約28アミノ酸を含み、骨成長を強化するペプチド化合物であり、各アミノ酸がD-構造またはL-構造であってよく、配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、およびカルシウム結合モチーフから選択される結合モチーフを含むペプチド化合物。
  7. 製剤配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、およびカルシウム結合モチーフのそれぞれを含む、請求項6記載の製剤。
  8. インテグリン結合モチーフがRGD配列であり、グリコサミノグリカンモチーフが配列SGDG(配列番号:14)を有する、請求項6記載の製剤。
  9. カルシウム結合モチーフが、配列DXDXSXFXGXXQ(配列番号:17)を有し、配列中Xが任意のアミノ酸である、請求項6記載の製剤。
  10. カルシウム結合モチーフが配列DNDISPFSGDGQ(配列番号:18)を有する、請求項9記載の製剤。
  11. ペプチド化合物が配列
    Figure 2008526871
    を有するペプチドである、請求項6記載の製剤。
  12. ペプチドが多量体型である、請求項11記載の製剤。
  13. 多量体が、配列
    Figure 2008526871
    を有するペプチドの2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのコピーを直列に配列したものである、請求項12記載の製剤。
  14. 歯と周囲の骨との間にペプチド化合物を注射することにより、歯を取り囲む骨組織の骨格欠損を治療するための、請求項6記載の製剤。
  15. ペプチドが少なくとも15アミノ酸かつ28アミノ酸以下からなる、請求項6記載の製剤。
  16. ペプチドが生体適合性ポリマーに結合している、請求項15記載の製剤。
  17. 生体適合性ポリマーが、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(DL-ラクチド)(DL-PLA)、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(DL-PLG)、ポリ(L-ラクチド)(L-PLA)、ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(L-PLG)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリジオキサノン、ポリエステルアミド、コポリオキサレート、およびポリカーボネートから選択される、請求項16記載の製剤。
  18. 担体が骨伝導性担体である、請求項6記載の製剤。
  19. 担体がコラーゲン、ヒアルロン酸(HA)、およびβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)から選択される、請求項18記載の製剤。
  20. 齲歯、歯周病、骨粗鬆症、パジェット病、骨軟化症、腎性骨異栄養症、他の原因による骨異栄養症、癌による骨溶解、骨折、および副甲状腺機能亢進症から選択される疾患に罹患している患者のための、請求項6記載の製剤。
  21. 骨格組織に直接投与されるように設計された、歯槽骨および顎骨から選択される骨格組織の欠損領域の炎症を治療するための、請求項6記載の製剤。
  22. エナメル質および象牙質から選択される骨格組織の欠損領域の炎症を治療するための、請求項6記載の製剤。
  23. 以下を含む、歯槽顎骨、歯のエナメル質および象牙質から選択される骨格組織欠損を治療するための製剤:
    骨伝導性担体;および
    骨格組織欠損部に隣接する同定された領域の骨髄細胞死を減少させるのに十分な量のペプチド化合物であって、配列中の15〜28アミノ酸からなり、骨成長を強化するペプチド化合物であり、各アミノ酸がD-構造またはL-構造であってよく、配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、およびカルシウム結合モチーフから選択される結合モチーフを含むペプチド化合物。
  24. 配列がインテグリン結合モチーフ、グリコサミノグリカン結合モチーフ、およびカルシウム結合モチーフのそれぞれを含む、抜去歯に隣接する骨格欠損を治療するための、請求項23記載の製剤。
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