JP2006082135A - 鋼板の検査方法、製造方法、及び熱延鋼板の製造設備 - Google Patents

鋼板の検査方法、製造方法、及び熱延鋼板の製造設備 Download PDF

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Abstract

【課題】熱延鋼板を製造する際に、鋼板欠陥に対する対策が立てやすく且つ早期に板欠陥に対する応答が可能な鋼板の検査や製造等を提供することを課題としている。
【解決手段】熱間圧延後の酸洗工程における酸洗槽8の入側に、超音波探傷設備20を設けて、搬送中の熱延鋼板の欠陥について連続的に探傷を行い、その探傷による探傷情報に基づき、当該探傷位置よりも上流側の鋳造条件等の工程条件を修正する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱延鋼板の製造に係り、特に、当該鋼板の欠陥の探傷及びその探傷情報の利用に特徴を有する鋼板の検査方法、製造方法、及び熱延鋼板の処理設備に関するものである。
従来、冷延鋼板についての欠陥探傷は、冷間圧延後の処理ライン,例えば精整工程で巻き戻した鋼帯を連続に搬送(通板)しながら行われていた。冷間圧延後の処理ラインで行われている理由は、製品出荷の直前に検査することで出荷判定が行える、つまり最終製品の品質保証に重点があったためと、冷延工程等で発生する表面欠陥等の検出も可能とするためである。
しかしながら、冷間圧延後は、めっき法などによって製造工程の流れが分かれるため、対応するライン毎に、探傷装置を設置する必要が生じて、コストアップとなる。
また、欠陥が検出されても、下流側での検出では冷延鋼板の転用先が限定され、例えば,製品寸法に精整された後に発見された場合には、検査後の板の向け先の変更を行うことができずにスクラップ材となり、歩留りの低下が大きく不経済であった。
また、欠陥の発生要因を上流工程にフィードバックさせることは、非常に手間と時間が掛かる作業となる。すなわち、従来にあっては、欠陥の発見・指摘が有った後に欠陥サンプルを取り寄せて原因を解明することになるが、検査位置から欠陥発生要因となる処理までの工程数が多くなるうえに、数多くのラインを介在し且つ各ラインでの処理タイミングに応じて仕掛かり品の順番が前後するなどによって、原因特定が困難であったりして煩雑な作業となる。また、欠陥に対する応答(対策)も遅くなってしまう
また、各処理ラインに分かれる前の冷間圧延機出側に探傷装置を設置することも考えられるが、板の搬送速度が速すぎて探傷装置による検出反応が追いつかず、実現困難である。
一方、熱間圧延の製造における欠陥探傷は、品質保証のために製品熱延板から抜き取り調査的に行うことで従来十分とされ、冷延鋼板において成されているような全幅・全長の欠陥調査を行う必要性や利点はとくに指摘されていなかった(これは、熱延鋼板における高精度の全幅・全長高速検査を可能とするような探傷手段がごく近年まで提供されていなかったことも一因を成している)。しかし、熱延鋼板においても需要家における、より高能率でトラブルの無い操業の要請が高まりつつあることから、蓋然的な保証でなく全量検査による品質保証が望ましいものと考えられる。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、鋼板欠陥に対する対策が立てやすく且つ早期に鋼板欠陥に対する応答が可能な鋼板の検査や製造等を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、熱延鋼板を製造する際に、熱間圧延後に、搬送中の鋼板の欠陥について連続的に探傷を行うことを特徴とする熱延鋼板の検査方法を提供するものである。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、熱間圧延後に酸洗工程を備えた設備において、上記探傷を、酸洗工程で行うことを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記探傷を行う前に鋼板の形状を平坦に矯正することを特徴とするものである。
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された構成に対し、上記探傷は、超音波探傷装置によって行うことを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、熱延鋼板を製造する際に、熱間圧延後に、搬送中の鋼板の欠陥について連続的に探傷を行い、その探傷による探傷情報に基づき、当該探傷位置よりも上流側の工程条件を修正することを特徴とする熱延鋼板の製造方法を提供するものである。
次に、請求項6に記載した発明は、請求項5に記載した構成に対し、上記探傷は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載した熱延鋼板の検査方法で行うことを特徴とするものである。
次に、請求項7に記載した発明は、熱間圧延された熱延鋼板の処理設備に、搬送される熱延鋼板の欠陥を連続的に探傷する探傷装置を配設したことを特徴とする熱延鋼板の処理設備を提供するものである。
次に、請求項8に記載した発明は、請求項7に記載した構成に対し、上記探傷装置の上流に形状矯正手段を配置したことを特徴とするものである。
次に、請求項9に記載した発明は、請求項7または請求項8に記載した構成に対し、上記探傷装置の上流および下流に張力付与手段を配置したことを特徴とするものである。
次に、請求項10に記載した発明は、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載した構成に対し、上記探傷装置は酸洗工程に配置されることを特徴とするものである。
次に、請求項11に記載した発明は、請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載した構成に対し、上記探傷装置は、超音波探傷装置であることを特徴とするものである。
ここに、熱延鋼板の処理設備とは、文字通り、熱延鋼板を処理する設備であり、冷延鋼板を製造する設備においては、熱間圧延後から冷間圧延前に配置される設備であり、熱延鋼板を製造する設備にあっては、熱間圧延後から熱延製品出荷前までの設備を指す。
なお、鋼板の欠陥は多種存在するが、熱間圧延終了後に発生する外因性の欠陥は、擦り疵、押疵、塵等の噛込み、変色などの表面欠陥に限られ、冷延(焼鈍)後の表面検査等により検出し得るものばかりである。したがって、熱延鋼板における鋼板の、欠陥探傷検査は、冷延後の探傷に充分代替できるものである。
なお、本発明が対象とする欠陥とは、介在物等による内部欠陥や、スリバ、ヘゲ、スケール疵、ガウジ等の、介在物に起因した、あるいは介在物(酸化鉄も含む)を巻き込むなどして含む表面欠陥を指す。本発明の方法によりこれらの欠陥はすべて検出可能であるが、特定の欠陥に限定して検査を行つても良いことは言うまでもない。
このような知見に基づき、本発明は、冷間圧延前である,熱間圧延と冷間圧延との間で鋼帯の欠陥を検出するものである。これによって、一か所での集中した探傷によって、ほとんどの内部欠陥や表面欠陥を検出することができる。
また、熱間圧延工程と冷間圧延工程との間には、通常,熱延鋼板の酸洗工程があり、この酸洗工程での鋼板の搬送速度は、熱間圧延工程や冷間圧延工程での搬送速度よりも遅く、しかも比較的に搬送速度の自由度が大きいことに鑑み、探傷装置の設置位置としては、酸洗工程が好適である。さらに、探傷装置が水浸漬法つまり水中で探傷を行う構成であれば、水に浸漬した鋼板の乾燥が不要な点で酸洗槽の入側が好適となる。
また、探傷に先立ち鋼板の形状を平坦に矯正することで、平坦な状態の鋼板に対して連続的に探傷が行われるので、全幅にわたる検出精度が向上する。また、熱延鋼帯の脆い最表面のスケ一ルや付着物がテンションレベラなどの強制手段で通常脱落するため、探傷を行う水槽への異物の堆積が発生しにくくなるという効果も奏する。さらに、張力を付与した状態で探傷を行うと、更に探傷する際の鋼板の平坦度が向上し、また、パスラインの変動も起きにくくなるため、更に検出精度が向上する。
また、巻き戻されて連続的に搬送される鋼板(鋼帯)を全幅にわたり連続的に探傷できる探傷装置としては、漏洩磁束法による探傷装置と、超音波を利用した探傷装置とが考えられる。
しかし、熱延鋼板は冷延板に比べて板厚が厚いにも拘わらず、漏洩磁束法では、鋼板が厚くなると、(欠陥断面積/鋼板断面積)の比が小さくなり、磁束が表面に漏洩しにくくなるために板厚が略0.5mm以上の検査は不可能である。しかも、漏洩磁束は、鋼板表面からの距離に反比例して急激に減衰するために、鋼板のパスラインの上下変動を±0.1mm以内に制御する必要が有ると共に検出部と鋼板表面との隙間を0.5mm以内に管理する必要があり、搬送中の鋼板、特に搬送速度が速い状態での連続的な探傷の適用には困難である。さらに、ノイズ要因が多いという問題もある。これらの検出精度の問題の他に、漏洩磁束法では、検出した欠陥の形状についての情報がほとんど得られないという欠点も存在する。
このため、熱延鋼板に対する探傷としては、板厚が厚くても構わず、且つ、非接触式の場合には鋼板表面と検出部との隙間を漏洩磁束法よりも広くとれる、超音波探傷装置が好適である。
ここで、超音波探傷装置としては、板波UT法,集束ビームUT法,透過型配置での反射型探傷法(以下、超音波ラインセンサとも称する)が考えられる。
板波UT法は、タイヤ型音響プローブ(検出部)を鋼板表面に転がり接触して探傷を行うものであるが、板厚方向での不感帯を有すると共に、接触式であるので、鋼板表面へのタイヤの接触圧を調整する必要があったりタイヤがバウンドしたりするなど、鋼板の搬送速度が著しく低い範囲に限定され、連続的に熱延鋼帯の広い範囲を探傷するのは、事実上不可能である。また、タイヤがバーストする心配が有る。
この点、集束ビームUT法や超音波ラインセンサは、非接触で検査が行われるために、上記問題はなく、つまり、鋼板の搬送の際のパスライン変動による影響が小さく有利である。
ここで、集束ビームUT法は、厚板や溶接部の欠陥探傷に使われており理論も確立している。しかし、超音波ラインセンサと比較して、超音波ビームを点状に収束(例えば,1mmφ)させるので、探傷面積に応じた数のプローブ(検出部)が要求され、探傷のための部品点数が多くなると共に探傷効率が悪くなる。また、鋼板表面直下に不感帯ができるという欠点もある。
このようなことから、超音波探傷装置のうち、検出部を、非接触で且つ透過型配置(鋼板を挟んで送信部及び受信部を配置)での反射型探傷を行う超音波ラインセンサを利用したものが好適である。
ここで、超音波ラインセンサの構成や原理は、本発明者らが、特開平7−253414号公報や特願平9−240932号等で開示したもので、送信部から、一方向に集束した帯状の超音波ビームを送信し、そのビームを帯状体幅方向に配列した複数個の短冊型超音波振動子からなる受信部で受信するものである。すなわち、搬送される鋼帯を挟んでラインフォーカス型送信アレイプローブ(送信部)とラインフォーカス型受信アレイプローブ(受信部)とを対向配列(配列の方向は被検材の板幅方向)させて配置し、送信アレイプローブから送信された超音波によって生起された内部欠陥からの反射波を送信アレイプローブと対向配置した受信アレイプローブによって受信することにより、被検材の内部欠陥を表裏面直下の不感帯なしに検出するものである(図3及び図4参照)。その透過型配置での反射型探傷は、送信アレイプローブから送信され、被検材を0.5往復して受信アレイプローブに到達する0.5往復透過波T1と被検材を略1.5往復して受信アレイプローブに到達する1.5往復透過波との間にあらわれる欠陥からの反射波F1,F2をゲート回路によって抽出し、所定レベル以上である場合には、欠陥反射波があるとして内部欠陥を検出するというものである(図5参照)。
また、このラインセンサは、1つの検出部で探傷できる範囲が広いので、搬送中の鋼板の検出に好ましい。
なお、超音波探傷装置による探傷は、超音波プローブと鋼板との良好な音響結合を維持するため、つまり検出精度を上げるために、液体中で行うことが好ましい。
また、本発明は、上工程でしかも製造工程が分かれる前である、熱間圧延後から冷間圧延前(熱延鋼板を製造する場合には熱間圧延後)の工程で欠陥の検出を行う。このため、欠陥を、早期に且つその欠陥の原因発生位置に近い位置で検出するために、その原因是正の対策が取りやすく且つ早期に対応できる。
また、各冷延鋼板が分流する冷間圧延前に欠陥の探傷を行うことで、その探傷情報に基づき、鋼板毎に下流の工程条件を変えて欠陥に応じた冷延鋼板の処理が行えたり、冷延後に振り分ける冷延鋼板の処理ラインを、欠陥状況に応じて適正に選択可能となる。
以上説明してきたように、本発明を採用すると、熱延鋼板の欠陥を精度良く検出可能となる。
また、欠陥の原因特定が容易となると共に早期に欠陥に対する対応を図ることができて、熱延鋼板の歩留りが向上すると共に鋼板の品質向上も図られる。
なお、この方式は、他の金属板、例えばAlやCuの帯状体を作る工程で採用しても同様の効果が発揮された。
(第1実施形態)
次に、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、冷延鋼板の製造設備に係るものである。その設備は、上流側から、高炉−転炉−(脱ガス処理設備)−連続鋳造設備−(スラブ保管)−熱間圧延−熱延鋼板の酸洗工程−冷間圧延工程−連続焼鈍工程−(2次冷間圧延や箱焼鈍工程−)調質圧延工程−精整工程からなり、冷延後の処理ライン(連続焼鈍工程−調質圧延工程−精整工程)が、最終製品に応じて複数の処理ラインに分かれる。なお、上記冷間圧延工程後の処理ラインは一例であり、冷延鋼板の鋼種によっては、例えば,めっき処理工程等の工程がある場合もある。
上記熱延鋼板の酸洗工程は、例えば図1に示すように、上流側から、ペイオフリール1、シャー2、溶接機3、入側ルーパ4、入側ブライドルロール5、テンションレベラ6、出側ブライドルロール7、酸洗槽8、リンス槽9、乾燥装置10、出側ルーパ11、トリマー12、シャー13、コイラー14の順番に各設備が配置され、熱間圧延された熱延鋼板を巻き戻して酸洗処理が行われる。
そして、本実施形態では、酸洗槽8の入側における、テンションレベラ6と出側ブライドルロール7との間に、図2に示すように、超音波探傷装置20が配設されている。
ここで、上記テンションレベラ6は、熱延鋼板15表面のスケールにクラックを入れて酸洗槽8での酸による洗浄を促進させる働きを持つと共に、探傷前に板の形状を矯正して平坦にする働きを持って、探傷のための形状矯正手段を兼ねる。また、探傷装置20の前後にあるブライドルロール5,7は、探傷位置において板に長手方向の引張力を付与する働きを持つ。すなわち、上記テンションレベラ6及びブライドルロール5,7は、超音波探傷装置20と共に探傷設備の一部を成す。
その探傷設備の構成を説明すると、上流側から下流側に向けて、上流側ブライドルロール5、テンションレベラ6、水22が収容された液槽21、及び下流側ブライドルロール7が配置されている。なお、上記液槽21中の水22には、熱延鋼板15の錆を防止するための防錆剤等が添加されている。
液槽21の入側には、第1の搬送ロール22が配置され、その第1の搬送ロール22と水中に全没の第2の搬送ロール23によって熱延鋼板15の搬送路が垂直下方に変更され液槽21内の水内に誘導される。水中に浸漬された熱延鋼板15は、水中に全没の第2及び第3の搬送ロール23,24によって、水平方向に搬送方向が曲げられ、続いて第3の搬送ロール24及び水面上方に位置する第3の搬送ロール24によって、垂直方向に搬送方向が曲げられて水中,つまり液槽21から出る。続けて、熱延鋼板15は、第4の搬送ロール25によって下流側ブライドルロール7側、つまり酸洗槽8側に誘導される。ここで、第1及び第4の搬送ロール22,25をそれぞれ2本のロールで構成されているのは、一旦,熱延鋼板15の搬送路の高さを高くして液槽21内に誘導可能とするものであり、必ずしも二つ必要なわけではない。
また、第2の搬送ロール23と第3の搬送ロール24との間に超音波探傷装置20の検出部である超音波ラインセンサ26が配置されている。この超音波ラインセンサ26の探傷方式は、特開平7−253414号公報等に記載されている原理に基づくもので、概念図である図3に示すように、それぞれ一次元アレイ型プローブからなる送信部26aと受信部26bが、熱延鋼板15を挟んで当該熱延鋼板15の板厚方向で対向配置されるものである。図3中、符号27はラインフォーカスビームを、符号28は受信ビームを示す。
上記のような構成の超音波ラインセンサ26が、図4に示すように、熱延鋼板15の幅方向に沿って複数個,鋼板幅より大きく連続して配置され、配列した送信部26a及び受信部26bが、コ字状の枠体30に支持されている。これによって、少ない検出部によって搬送される熱延鋼板15の全幅の欠陥検出が可能となる。ここで、各送信部26a及び受信部26bをそれぞれ千鳥状に配置しているのは、隣り合うセンサ26間での不要な干渉を避けつつ熱延鋼板15の幅方向全面の検査を可能とするためである。なお、上側に受信部26bが配置され、下側に送信部26aが配置されても良く、また、適宜上下入れ違いに配置してもよい。
各センサ26は探傷装置本体31に接続されている。探傷装置本体31では、送信部26aから送信され、熱延鋼板15を板厚方向に0.5往復して受信部26bに到達する0.5往復透過波T1と熱延鋼板15を板厚方向に1.5往復して受信部26bに到達する1.5往復透過波との間にあらわれる欠陥からの反射波F1,F2をゲート回路によって抽出し、所定レベル以上である場合には、欠陥反射波があるとして内部欠陥を検出する。検出した内部欠陥情報は、例えば,上工程や下工程の操作部や制御部に供給される。
また、第3の搬送ロール24と第4の搬送ロール25との間には、水面に近い位置に、鋼板15に付着した水を絞るための液絞り手段であるリンガーロール32が配置されると共に、当該リンガーロール32と水面との間に、熱延鋼板15から落下する液を受けて当該液が直接水面に衝突することを防止する液受け33が配置されている。液受け33は、水面22aより上方にあっても良いし、液槽21中の水22に接触していても良い。また、液受け33に受けた水は、静かに液槽21中の水22内に戻しても良いし、液槽21に排出しても良い。また、図2中では、液受け33として容器状のものを図示しているが、遮蔽板のような平板部材等であっても良い。
上記のような冷延鋼板の製造設備では、熱間圧延後の熱延鋼板15が、酸洗処理を行う際に、当該酸洗の前において搬送されながら連続的に探傷される。つまり、熱延後酸洗前の熱延鋼板15が、上流側ブライドルロール5及び下流側ブライドルロール7によって長手方向の張力を付与された状態で搬送され、液槽21中の水22に浸漬する前に、テンションレベラ6で連続的に平坦に矯正される。続いて、熱延鋼板15は、搬送ロール22〜25によって液槽21内の水に浸漬され、水中を水平に移動中に透過型超音波探傷装置20のラインセンサ26で連続的に内部欠陥の検査が行われる。
しかも、1か所で集中して欠陥の探傷を行っているにも拘わらず、対象とする欠陥を殆ど検出することができる。
ここで、本実施形態では、気泡による検出精度の劣化を防止するため、熱延鋼板15を、水面に対し垂直に水中に進入し、熱延鋼板15が浸漬する際の気泡の発生を最低限に抑え、また、水から出た熱延鋼板15に付着した水を、水面近傍でリンガーロール32で絞り確実にリンガーロール32設置高さから液を落下させて、液受け33で受けて、落下した液が水面に直接衝突することを回避して、水面上方の熱延鋼板15部分から落下する液による気泡発生を防止する(図5参照)。なお、落下する液は、液受け33で受けるので、必ずしもリンガーロール32は必要ではないが、熱延鋼板15と共に水が下流工程へ搬送されることを防止するためと、液の落下高さを低くすることで、液受け33に衝突した液の跳ね上がりを小さくする効果を持つ。
また、本実施形態の超音波を利用した探傷では、超音波探傷装置20の検出部26として、非接触且つ透過型配置の反射型探傷方式を採用しているので、表面直下の不感帯を無くして、所定速度で搬送中の熱延鋼板15の欠陥を所定の検出精度を確保しつつ検出でき、また、ラインセンサ26を使用することで、熱延鋼板15の幅方向全幅を検査対象としても検出部(センサ26)の数が少なくて済む。
さらに、探傷を水中で行うことで検出精度が向上すると共に、熱延鋼板15が水中に進入する際及び水面から上方に移動する際に起因する気泡発生が最小限となって、気泡による誤検出が防止され、更に検出精度が向上する。なお、水に触れている搬送ロールは、全て水に全没しているので、当該搬送ロールの回転による気泡の巻き込みも低減している。ここで、探傷装置20の検出部の配置は、上下方向に限定されないので、熱延鋼板15の水中における探傷位置の搬送路は、水平でなくても構わない。但し、気泡による悪影響防止という観点からは、水面から一番離れた位置で探傷することが好ましい。
さらに、検査前に熱延鋼板15の矯正が行われると共に張力が付与された状態で検査されるので、熱延鋼板15がより平坦となって、これによっても当該熱延鋼板15の欠陥の探傷が更に精度良く行われる。
ここで、必ずしもテンションレベラ6やブライドルロール5,7が必要なわけではないが、テンションレベラ6等が無いと、その分だけ探傷位置での熱延鋼板15の平坦度が劣化して検出精度が低下する。また形状矯正手段はテンションレベラ6に限定されず、たとえば調質圧延機等を使用してもよい。またブライドルロール5,7も張力付与手設であれば他の公知の手段を使用しても良い。
また、本実施形態では、探傷の検出精度を上げるために熱延鋼板15を水22に浸漬させているが、酸洗槽8の入側であるので、探傷後の熱延鋼板15を特に乾燥させる手段等は必要ない。また、探傷装置20を酸洗槽8の入側に配置すると、上述のように酸洗槽8の入側には通常,酸洗効果をテンションレベラ6が配置されているので、別途,探傷のための形状矯正手段を設ける必要がない。さらに、酸洗工程の中でも、酸洗槽8の入側が一番,搬送速度が安定しているので、この点からも好適な場所である。
このような探傷設備を採用することで、搬送速度300〜1000m/分程度の高速通板下であっても全幅連続探傷が可能となる。
なお、上記実施形態では、検出精度を上げるため、ロールを全没させた水槽による水浸漬法を採用しているが、このような探傷方式に限定されるものではない。例えば、図8に示すような、鋼帯を搬送しつつ水(液体)をシールする2組のぺアーロール23'および24'を用いた、異なる水浸潰法を用いてもよい。また、浸潰しない大気中や雰囲気中での探傷方式も採用可能である。
また、ラインセンサ26に代えて集束ビームUT法による超音波探傷装置を採用しても良い。但し、プローブ(検出部)の数が多くなり、装置構成が煩雑化すると共に検出精度が落ちるおそれがある。
また、上記実施形態では、酸洗工程に探傷設備を設けた例で説明しているが、熱間圧延と冷間圧延との間であれば、トリマーや冷間圧延の入側設備等の他の位置に上記探傷設備を設けてもよい。例えば、タンデム式冷間圧延機の入側設備である図6において、溶接機40の出側である符号K部分に上記探傷設備を介装すればよい(探傷設備は不図示)。なお、図6中、符号41がペイオフリール、符号42がルーパ、符号43が冷間圧延機を表す。
また、本実施形態の設備は、冷延鋼板の製造設備であるが、冷間圧延前の熱延鋼板15を製品として出荷する場合であっても、上述のように、当該熱延鋼板15の品質管理が行われることとなり、別途,熱延鋼板用の欠陥探傷設備を設ける必要がない。
なお、冷延後の擦り疵の有無等の確認は、従来通り必要に応じて製品出荷前に行う。熱延鋼板15として出荷する場合も同様である。
(実施例)
上記冷延鋼板の製造設備において、1トン当たり0.3個(1平方m当たり0.005個)の介在物を含む鋼板を上記探傷設備で検査した結果、認識率ほぼ100%の割合で欠陥介在物が検出できたことを確認した。
ここで、上記ブライドルロール5,7による張力付与を行わない状態で探傷した場合には、認識率が99.5%程度に低下し、さらに、テンションレベラ6も利用しない場合は、認識率が99.0%程度に低下した。
比較のために、上記酸洗工程に探傷設備を配設することなく、従来のように、1トン当たり0.3個の介在物を含む鋼板について、製品出荷前である精整工程において漏洩磁束式探傷装置20で欠陥を探傷したところ、電気的ノイズとの分別ができない等の理由によって、欠陥の認識率が80〜98%程度となっていた。
このように、本発明に基づき欠陥の探傷を行うと、高精度に欠陥を検出できることが分かる。しかも1箇所で集中して、しかも早期に検出できる。
(第2実施形態)
次に、本願発明に関する第2の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の設備・装置等は、同一の符号を付してその詳細説明は省略する。
この第2の実施形態は、熱延鋼板15の製造設備であって、酸洗工程までは、第1の実施形態と同様な装置構成となっているが、酸洗工程の下流に精整工程が配置されている。すなわち、高炉−転炉−(脱ガス処理設備)−連続鋳造設備−(スラブ保管)−熱間圧延−熱延鋼板の酸洗工程−精整工程の設備例から構成される。
他の構成及び作用・効果は、上記第1の実施形態と同様である。
すなわち、熱延鋼板15を製品として出荷する場合であっても、鋼板の欠陥が精度良く検出でき、高精度で品質管理を可能となる。
なお、探傷設備の設置は、酸洗工程に限定されず、酸洗工程と精整工程との間に別途設けるなどしても良い。
(第3実施形態)
次に、第3の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の設備・装置等は、同一の符号を付してその詳細説明は省略する。
本実施形態は、冷延鋼板の製造設備についてのもので、上記第1の実施形態と同じ設備構成となって、酸洗工程や冷間圧延の入側設備など、熱間圧延と冷間圧延との間で、探傷設備により上述のように精度よく熱延鋼板15での欠陥を検出する。
そして、例えば、前もって、探傷により検出した(非金属)介在物による欠陥について、その形状・寸法・量等を調査し、調査結果(探傷情報)に基づき介在物の形態毎に原因を特定しておき、現在発生している欠陥がどの欠陥形態かを判別し、対応する欠陥形態を低減若しくは無くなるように特定した製鋼条件(とくに鋳造条件)を修正する。鋳造条件とは、例えば、スラブ鋳込み位置、鋳込み速度、鋳込み温度、使用フラックス等であり、また、その他の製鋼条件としては鋼中酸素、脱ガス時間等がある。一例として、介在物を主として形状に基づき複数の形態に分類しておき、現在の欠陥がどの形態に属するか判別し、それぞれに応じた対策を連続鋳造設備(および脱ガス設備)の操業条件に反映させる。これによって、欠陥検出以降における熱延鋼板15及び冷延鋼板において、同一欠陥のコイルの連続発生率が、早期に且つほぼ無くなる。
ここで、本実施形態では、鋼板が各ラインに分流する前に探傷を行うので、効率良く欠陥を検出できると共に、欠陥の発生箇所である鋳造工程等に近い工程で検出するために、早期に検出して対策が図られると共に欠陥原因の特定が容易であるので、上述のような探傷情報に基づく対策が容易に行うことができる。
例えば、缶用鋼板の製造設備を考えた場合、従来にあっては、介在物による内部欠陥等の本発明が対象とする欠陥の発見は、下工程であるめっき原板の検査や表面処理鋼板での検査、さらには製缶工程で製缶加工を行って初めて発見・指摘を受けていた。この結果、発見や指摘を受けても、その対策を講じるためには欠陥サンプルを取り寄せ、原因を推定した後、その不良品の製造工程履歴を見直し、不具合条件を見つけて対策を講じることになるので、原因解明及びその対策決定までに時間と手間が掛かり、その間に製造した多くの鋼板は、格下げ転用し、その補充を行うためには、当初の工程生産計画を組み直し、再生産を行わざるを得ず、その経済的打撃は非常に大きかった。
これに対し、本実施形態では、缶用鋼板等の冷延鋼板の製造工程としては上工程である板厚の厚い熱延鋼板15の段階で検査する方式であるため、早期に所定欠陥の発生している鋼板が混入していることを発見でき、早期に、つまり欠陥のある板が少ない状態で上工程の製鋼・熱間圧延工程に探傷情報を流し、原因・対策を即座に講じることができる。
また、原因となる工程条件と探傷位置が近いことから、原因の特定も容易である。
しかも、本実施形態で採用したラインセンサ26による超音波探傷装置20は、欠陥の発生位置及び、欠陥の形状・寸法等に関する詳細な情報も得られるので即座に原因・対策を講じることができる。
(実施例)
上記超音波探傷装置20を利用し、その探傷情報を上工程にフィードバックするにあたり、先ず、以下の調査・確定を行った。なお、下記説明は、冷延鋼板として缶用鋼板を想定したものであるが、缶用鋼板に限定されるものではない。
まず、超音波探傷装置20が指示した熱延鋼板15の位置からサンプルを採取し、圧延方向断面と幅方向断面を顕微鏡で観察し、欠陥の種類及び発生工程により、次の3種類に分類し、発生工程に遡り、その3種類の分類について、原因と対策を結び付けた。
すなわち、(1)熱間圧延時に発生したスケールきず(Scale;ISIJ TR009−1980社団法人日本鉄鋼協会)、及びへげ(Scab)、(2)熱間仕上圧延機以後に生成するガウジ(Gouge)、(3)製鋼−連続鋳造で発生するスリバ(Sliver)、及びスキンインクルージョン(Skin Inclusion)を含む非全属介在物に大別した。この結果と探傷情報、すなわち、欠陥の熱延鋼板15の幅方向及び長さ幅方向での混入位置、形状、寸法とを対比し、工程基準とした。
なお、以下の説明では製鋼−連続鋳造で発生する介在物欠陥を対象とする場合で説明する。
製缶工程における缶用鋼板素材に起因する不良缶の許容は下記表1に示すように非常に厳しく、従来であれば不良缶発生率は1000ppm程度が下限であったが、最近では更に不良率を小さく抑える必要があり、不良缶を製缶ラインから除去するために、ラインを停止して、直接に人間が手を加えて復旧したとしても、不良缶発生率は100ppm程度が下限であった。
Figure 2006082135
更なる不良率の低下の要求に対応するために、漏洩磁束方式等の従来の探傷装置では欠陥として検出・分類の難しかった非金属介在物について、上記ラインセンサ式の超音波探傷装置20の特性を活かし、研究を進めた結果、下記のように介在物を検出・分類でき、また早期に検出することで、大量の不具合の発生を防ぐことができるようになった。
ここで、缶用鋼板は、自動車用鋼板等に比較して非常に厳しく、製缶速度、充填速度とも1000缶/分以上と、生産性も高く、また、収容物が食品のためもあって、上述のように、不良缶の発生管理は非常に厳しく、従来から研究・改善が進められている。
そして、不良缶発生を抑えるべく、次の操業条件を設定した。
すなわち、缶用鋼板に使われる低炭素Alキルド鋼(C<0.10wt%、Al<0.15wt%)用の連続鋳造鋳片を製造するにあたって、230t底吹き転炉により、強攪拌で炉内反応を均―にし、炉内反応時間を短くして、スラグ中の酸化鉄(T,Fe)を少なく、鋼中の酸素量も少なくなるように仕上げる吹錬・溶製を行い、C;0.03%となして出鋼した。出鋼においては、スラグ検知機でスラグ流出を検知し、スラグストッパーでスラグ流出量を最小限に抑えるようにした。転炉スラグの代わりに保温等のため合成スラグを溶鋼湯面に添加した。
続いて、必要に応じて真空脱ガス処理を施してC量の調整及び溶鋼の高清浄度化を図るとともにAlを添加し、続いて必要に応じて炭化物形成元素、窒化物形成元素を添加したものも作った。これらをそれぞれ非金属介在物の除去に有利な大容量70トンのタンディッシュを有する垂直曲げ型連続鋳造機を用い、さらに、介在物の浮上分離を促進するために、タンディッシュには堰を設け、取鍋から鋳型に到達するまでの時間を長くして、介在物の合体粗大・浮上分離を図った。
これは、品質上、問題になる非金属介在物は100μmφとしても、浮上速度は0.3m/分と小さいため、堰を設けない通常の方法では、取鍋からの注入流の多くが、タンディッシュ底部に沿って短時間で鋳型に到達し、合体粗大・浮上分離に十分な時間がないためである。
介在物の合体粗大・浮上分離を促進するため、溶鋼温度は1500℃以上の高温を確保した。このとき、30μmφ程度の極微小のものは、そのままでは浮上分離に期待できないので、溶鋼温度を高温にして、合体粗大化することが重要になる。40μmφ程度以上のものであれば、浮上時間の確保により浮上分離が期待される。
さらに、タンディッシュ内雰囲気の酸素濃度は大気酸化を防止する目的で注入開始時からアルゴンガスで置換し、0.5%以下で操業を続けた。なお、溶鋼は取鍋からタンデッシュヘ、そして、鋳型へ流れ、凝固して仕上がるが、大気酸化を防止するためには各々のつなぎ部は、大気酸化を防止する目的でアルゴンガスで置換しながら操業を続けるとともに、耐火物のノズルを使い、さらにノズル内で介在物の詰まりを防止する目的で溶鋼中にアルゴンガスを吹き込むことも行ってきた。
また、鋳型内では、湯面変動を小さく抑えるために粘性が大きく且つ介在物吸収能に優れた鋳型パウダーを使った。介在物吸収能が悪いと、溶鋼の流れとともに溶鋼面に浮上してくるAl2 3 が鋳型パウダーに吸収されないで残り、メニスカス部から鋳片の側面に沿って流れ、凝固前面に捕捉される。そのため、パウダー成分の適切化とともに、溶鋼温度を1560℃以上の高温を確保し、Al2 3 の吸収能を高めておくことも行った。
また、浸漬ノズルの吐出形状により、例えば、ノズルからの噴流流速のバランスが悪く、鋳型内への流速が強いと介在物が一緒に運ばれて凝固層に捕捉されたり、湯面への高温溶鋼の流れが少なくなって、湯面温度が下がり、介在物が捕捉される。逆に、湯面への高温溶鋼の流れが強いと、湯面変動が大きくなり、その変動で下向きの流れに介在物が持ち込まれる。また、浸漬ノズルからの噴流流速が大きいと、吐出口直上湯面が負圧になり、Al2 3 を吸収したパウダーが下に持ち込まれ、捕捉される。
以上の制約条件を満足できる浸漬ノズルを設計し、水モデル実験で確認した。また、操業においては渦流式鋳型湯面制御装置を使い、湯面変動を最大20mmに管理しながら鋳込めるように、鋳型内の溶鋼流動を正常にして、凝固層に介在物が捕捉されないように吐出形状を適切化した浸漬ノズルを使った。その上、溶鋼流が深く侵入するのを防ぐために電磁ブレーキを有効に活用し、鋳片厚みが260mmもの大断面で1300mm幅のものを、鋳込み速度を1.0m/分以上の鋳造で、無欠陥仕様で鋳片を製造した。
以上のように、極力,介在物による欠陥が生じないように鋳造条件を制御して製造した缶用鋼板用連続鋳造鋳片について、熱間圧延を行い、2mmtの板厚に仕上げた後、上述のように、塩酸酸洗槽8の入側に配置した水浸式超音波探傷で検査を行い、鋼板の波形部からサンプルを採取して、断面顕微鏡観察で非金属介在物の存在位置(深さ)、形状及び大きさを確認後、EPMA分析を行い、非金属介在物の組成を確認するとともに、連続鋳造の鋳込み条件と照らし合わせて、原因を明確にした。
また、その原因に対する適切な対策を講じて、再度、上記探傷装置20で検査を行ない、原因解明と対策が適切であることが確認できたものについて、探傷情報(欠陥の熱延鋼板15の幅方向及び長さ幅方向での混入位置、形状、寸法)との関係を整理した。このような研究を必要に応じて、数百例以上に渡って繰り返し、整理した結果、図7に示すように、介在物による欠陥形態を3つに分類でき、各分類毎にスラブ時の形状を対応付けることができた。
このように、2ピース缶用鋼板用として、連続鋳造の鋳込み条件を厳しく管理したにも拘わらず板に非金属介在物が混入されているが、その介在物欠陥が熱延後に検出されると共に、その非金属介在物の成分組成や大きさから、図3に示すように3種類に大別でき、その製造履歴との対応等から発生原因との関係及び発生頻度も明らかにすることができた。
ここで、非金属介在物の分類Aは、混入頻度も約70%と一番多く、しかも超硬質のため、熱間圧延、冷間圧延、調質圧延、そして、製缶加工におけるしごき加工やストレッチドロー成形やストレッチアイアニング成形を行っても、破壊されることなく、展伸もしないため、鋳片で混入した形状を保っているので、高強度・極薄鋼板及び製缶加工で40〜60μm程度までに加工される過程でピンホール欠陥やネックイン加工部での微小割れ欠陥になり、その頻度も多く、対策を望まれていた。なお、この分類Aの介在物は、熱間圧延後には、直径(X,Y)が30〜50μmmφ程度の球状体として検出される(図7参照)。
このAl2 3 系介在物は、転炉で精錬の終わった溶鋼組成をAlキルド鋼にするために、転炉からの出鋼時あるいは、引き続き行われる真空脱ガス処理で金属Alを添加して鋼中の酸素を脱酸するとともに、缶用鋼板として必要な機械的性質を得るために、鋼中にAlを0.01wt%以上,残存させる必要があり、それに対応した量を添加することで低炭素Alキルド鋼として仕上がる。この脱酸処理によって生ずる脱酸生成物がAl2 3 系介在物の主な原因であり、さらに、連続鋳造で凝固させるまでに鋼中にAlを0.01wt%以上,残存させているので、鋼中,及び鋼表面に酸化物が供給されたり反応される限り、Al2 3 系介在物は増加する。例えば、(1)転炉中の溶鋼を取鍋に出鋼する際に、スラグストッパーを使っても、微量の転炉スラグは、取鍋内に流出する。微量と言えども、そのままにして鋳片を製造すれば前述のような頻度の不艮缶発生になる。特に、低炭素Alキルド鋼は転炉中で低炭素域まで吹錬するためには鋼浴中に純酸素を多く供給して、鋼炭素をCOとして脱炭する必要があり、その結果、鋼中酸素も多く残存するとともに(2)同様に、スラグ中の酸化鉄(T、Fe)が多くなり、流動性が良く、出鋼時にスラグが取鍋内に流出しやすくなる。スラグ自体が残存すると後述の分類Bの欠陥になると共に、この酸化鉄との再酸化でも介在物は増加する。(3)また、連続鋳造工程では、大気を遮断しているが、それでも漏れて供給される事態を認識できずに操業を続けていると、やはり再酸化を受けて増加する。(4)Al2 3 系介在物は、生成時は数μmφ程度と小さく、そのままの大きさであれば大きな害を及ぼさないが、溶鋼温度は1500℃以上と高温であるため、Al2 3 粒が凝集合体・肥大化する。その機構は、介在物同士の合体の他に、浸漬ノズル内壁に付着し凝集合体・肥大化し、製缶工程で害を及ぼす大きさである30〜50μmφになる。浸漬ノズル内壁にAl2 3 粒が付着しないようにArガスを流しながら操業はしているが、微量の付着は避けられない。その結果、缶用鋼板として問題となる。
以上の研究結果から、分類Aの非金属介在物が検出された場合は、出鋼時の鋼中酸素量を少なくして、脱酸生成物の量を少なくするように鋳造条件を修正する。その確認は、溶鋼に添加した金属Al重量に対するソルブルAl量の比が25%以上になっていることで行うことができる。ソルブルAlとして残らなかったインソルブルAlは、Al2 3 系介在物になっている。また、大気が流入していないかは装置を直接点検し、また、スラグ混入量が多くなってないか、スラグ検知機の成績を厳しく管理することで可能になった。
なお、Alキルド鋼以外にSiキルド、T1キルド、あるいはこれらの組み合せによる鋼も近年用いられている。この場合、AのタイプのAl2 3 系介在物は減少するが、B型,C型等の比率が増加する。
また、非金属介在物の分類Bは、混入頻度も約20%と少ないが、硬質のため、熱間圧延、冷間圧延、調質圧延、そして、製缶加工におけるしごき加工やストレッチドロー成形やストレッチアイアニング成形を行っても、分断されることなく、展伸するため、高強度・極薄鋼板及び製缶加工で100μm程度までに加工される過程でフランジ割れ欠陥になり、その頻度も多く、対策を望まれていた。なお、分類Bに属する介在物は、熱間圧延後にあっては、長径Yが100〜300μmm,短径Xが50〜150μmm程度の偏平な略楕円形状として検出される(図7参照)。
このCaO−Al2 3 系介在物の起源は、転炉スラグが溶鋼中に微細に懸濁したもの、あるいはタンディッシュフラックスが同様に懸濁したものが、溶鋼中のAlによって、還元されながら脱酸生成物のAl2 3 と凝集合体したものである。
以上の研究結果から、分類Bの非金属介在物が検出された場合は、分類Aの改善及び、タンディッシュフラックスが懸濁しないように、取鍋からタンディッシュに溶鋼を注入するための耐火物ノズルがタンディッシュの底面近くに設定されているかを確認、その後は深か目に設定するという鋳造条件の変更を行うことで改善が図れる。
非金属介在物の分類Cは、混入頻度も約10%と少ないが、軟質のため、熱間圧延、冷間圧延、調質圧延、そして、製缶加工におけるしごき加工やストレッチドロー成形やストレッチアイアニング成形を行うと、破壊・分断され、展伸するため、高強度・極薄鋼板及び製缶加工までに、板厚が100μm程度までに加工される過程で胴壁が割れる欠陥になり、その頻度が少なくても、その不良缶を除去しないと、製缶作業が続けられないことから、製缶ラインを停止せざるを得なくなるものなので、対策を望まれていた。なお、分類Cに属する介在物は、熱間圧延後にあっては、全体として長径Yが300μmm以上,短径Xが150μmm以上の略楕円形状の偏平な板状の形状を残して,内部に隙間があるような形状として検出される(図7参照)。
このCaO−SiO2 −Al2 3 −Na2 O系介在物の起源は、鋳型フラックスが鋼中に微細に懸濁したものが脱酸生成物のAl2 3 と凝集合体したものである。
以上の研究結果から、分類Cの非金属介在物が検出された場合は、分類Aと同様の改善及び、渦流式鋳型湯面制御装置の測定値を確認し、湯面変動を小さくするといった鋳造条件の変更を行うことで解決できる。
以上のように、酸洗工程に配設した探傷装置20で検出された探傷情報に基づいて、現在の欠陥がA〜Cのいずれかに分類されるか、どの程度発生しているかによって、各分類対応の上記対応をとって工程条件を修正することで、早期に欠陥に対する適切な対応が図られ、製品コイルにおける同じ欠陥コイルの発生が早期且つ大幅に低減して、歩留りの向上、不良率の大幅な低減が図られた。
ここで、上記実施例では、鋳造条件によって発生する欠陥である介在物を対象とし、その探傷情報に基づいて、探傷位置よりも上流の鋳造工程における工程条件を修正して、早期対応を図っているが、これに限定されるものではない。
例えば、上述と同様に熱延条件(加熱・冷却条件や圧延条件等)と、検出する介在物・割れ欠陥(スケール疵,へげ,ガウジ等)の形態との関係を、予め調査して欠陥を形態に基づき分類しておいて、上述のように冷間圧延の入側設備に、上記探傷設備を介装して熱延鋼板15の欠陥の探傷を行い、スケール疵、ヘゲ疵等の熱延起因欠陥の探傷情報に基づき、熱延ラインや酸洗ラインの工程条件にフィードバックして熱延条件等を修正することで、欠陥に対する早期対応を図っても良い。ここで、冷間圧延の入側設備で探傷すると、冷間圧延入側のペイオフリール付近で発生する欠陥(ガウジ欠陥など)も検出できて早期対応可能となる。
(第4実施形態)
次に、本願発明に関する第4実施形態について説明する。なお、上記第3の実施形態と同様の設備・装置等は、同一の符号を付してその詳細説明は省略する。
この第4の実施形態は、熱延鋼板15の製造設備であって、酸洗工程までは、第3の実施形態と同様な装置構成となっているが、酸洗工程の下流に精整工程が配置されている。すなわち、高炉−転炉−(脱ガス処理設備)−連続鋳造設備−(スラブ保管)−熱間圧延−熱延鋼板の酸洗工程−精整工程の設備例から構成される。
他の構成及び作用・効果は、上記第3の実施形態と同様である。
すなわち、熱延鋼板15を製品として出荷する場合であっても、早期に鋼板欠陥の対応が行われて、同じ欠陥を有するホットコイルの連続発生率がほぼ無くなり、熱延鋼板15の製造における歩留り向上、品質向上が図られる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、上記各実施形態と同様の設備・装置等は、同一の符号を付してその詳細説明は省略する。
本実施形態は、上記第1の実施形態と同じ設備を持った冷延鋼板の製造設備に係るものであり、対象とする冷延鋼板として品質が厳しい缶用鋼板を製造するものである。
本実施形態では、上述のように、鋼板が各ラインに分流する前の熱延鋼板15の酸洗工程等で探傷した探傷情報、例えば,介在物の寸法,量等を検出し、その探傷情報によって、冷間圧延後の冷延処理ラインを選別したり、冷延条件等を決定・変更する。
これによって、鋼板の欠陥状況に応じた適正な向け先が、前もって決定できると共に、各鋼板に応じた適正な冷延条件で冷間圧延が行え、この結果、冷延鋼板の品質向上、及び歩留りが向上する。
たとえば、所定以上の介在物混入の危険が有るために、従来にあっては充当困難であった連鋳の開始・終了付近のスラブ(非定常スラブ)についても、冷延直後の適正な向け先(鋼種に応じた冷延処理ライン)を判定可能となるため、缶用鋼板への適用が可能になる。
(実施例)
酸洗工程で検出した、平方メートル当たりの介在物の平均個数に基づき、鋼板を表2のように欠陥の程度により、鋼板を1〜6のランクに分類し、各ランク対応に、冷延処理ラインの充当先を変更して処理を行った。
また、製品仕様に応じて、1次冷間圧延の圧下率,焼鈍温度,調質圧延(又は2次冷延)の圧下率等を決定した。なお、DR材は、焼鈍後,調質圧延(1%程度の軽圧下による硬度調整及び形状調整)に代えて、2次冷延(数%〜数十%の圧下により減厚及び硬度確保)を行い硬度を上げたものである。硬度を上げるには、焼鈍温度の低下や調質圧延(又は2次冷間圧延)の圧下率の増加で一応可能であるが、等級(硬度)別に成分が異なる場合もあり、同一等級内での転用が便利である。
以下に転用例を示す。
転用例1:ランク3のT4級(板厚0.20mm)、の缶用鋼板に充当予定の熱延鋼板を、酸洗ラインにて探傷検査したところ、平均0.025個/m2 の介在物が検出された。そこで、オーダー状況等を参考に、ランク4のT3級(板厚0.20mm)に転用することとした。冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の処理ラインや、冷間圧下率の変更は行わなかったが、硬さ等級の変更に伴い、焼鈍温度を30℃上げ、調質圧延の伸び率を0.3%下げた。
転用例2:ランク1のT5級(板厚0,25mm)、の缶用鋼板に充当予定の熱延鋼板を、酸洗ラインにて探傷検査したところ、平均0.003個/m2 の介在物が検出された。そこで、オーダー状況等を参考に、ランク2のDR9級(板厚0.16mm)に転用することとし、焼鈍予定ラインを連続焼鈍炉−調質圧延機一貫ラインからの連続焼純炉−DR圧延機一貫ラインヘと変更し、冷延圧下率、焼純温度等も目標材に合わせて変更した。
Figure 2006082135
ここで、表2中、2ピース缶は、出荷後に製缶メーカーでドロー(絞り,深絞り)成形等の加工が行われ、缶厚0.1mm程度となる鋼板である。また、3ピース缶は、そのまま円筒成形・溶接等により缶となるため、缶厚は製品缶厚と略同じとなる鋼板である。また、陽圧缶は、収容物が炭酸飲料など,内圧が高い状態で使用されるものであるので缶厚が薄い。陰圧缶は、真空封入後、レトルト殺菌処理(後述)等が行われて、内圧が大気圧以下で使用されるものであるので缶厚が多少厚めのものである。また、製品等級としてT1〜T6,DR8〜DR10があり、番号が大きいほど硬度が高い。
上記表2に基づき、冷延前に探傷した探傷情報に基づき、欠陥の度合に応じて、各鋼板の冷延処理ライン,及び冷延以降の処理条件を適切に変更したところ、各鋼種での歩留りが向上して、全体として製品となる鋼板が20%以上拡大した。
本発明の実施の形態に係る酸洗工程の設備を示す構成図である。 本発明の実施の形態に係る探傷設備を示す図である。 本発明の実施の形態に係るラインセンサの説明図である。 本発明の実施の形態に係るラインセンサの配列に係る図である。 ラインセンサの原理を説明する図である。 冷間圧延機入側設備を例示する図である。 非金属介在物の分類を示す図である。 探傷方式についての水浸漬法の別の例を説明する図である。
符号の説明
5 入側ブライドルロール
6 テンションレベラ
7 出側ブライドルロール
15 熱延鋼板
20 探傷装置
21 液槽
22 水
22〜25 搬送ロール
26 ラインセンサ(検出部)
31 探傷装置本体

Claims (11)

  1. 熱延鋼板を製造する際に、熱間圧延後に、搬送中の鋼板の欠陥について連続的に探傷を行うことを特徴とする熱延鋼板の検査方法。
  2. 熱間圧延後に酸洗工程を備えた設備において、上記探傷を、酸洗工程で行うことを特徴とする請求項1に記載した熱延鋼板の検査方法。
  3. 上記探傷を行う前に鋼板の形状を平坦に矯正することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した熱延鋼板の検査方法。
  4. 上記探傷は、超音波探傷装置によって行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された熱延鋼板の検査方法。
  5. 熱延鋼板を製造する際に、熱間圧延後に、搬送中の鋼板の欠陥について連続的に探傷を行い、その探傷による探傷情報に基づき、当該探傷位置よりも上流側の工程条件を修正することを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
  6. 上記探傷は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載した熱延鋼板の検査方法で行うことを特徴とする請求項5に記載した熱延鋼板の製造方法。
  7. 熱間圧延された熱延鋼板の処理設備に、搬送される熱延鋼板の欠陥を連続的に探傷する探傷装置を配設したことを特徴とする熱延鋼板の処理設備。
  8. 上記探傷装置の上流に形状矯正手段を配置したことを特徴とする請求項7に記載した熱延鋼板の処理設備。
  9. 上記探傷装置の上流および下流に張力付与手段を配置したことを特徴とする請求項7または請求項8に記載した熱延鋼板の処理設備。
  10. 上記探傷装置は酸洗工程に配置されることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載した熱延鋼板の処理設備。
  11. 上記探傷装置は、超音波探傷装置であることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載した熱延鋼板の処理設備。
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