JP2006080242A - 抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法、抵抗体ペーストの製造方法、抵抗体の製造方法及び電子部品の製造方法 - Google Patents

抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法、抵抗体ペーストの製造方法、抵抗体の製造方法及び電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 信頼性の高い抵抗体を実現する。
【解決手段】 原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法であって、原料混合粉末がASiO又はABの少なくとも一方を含有する。または、原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B、SiO及び第4の酸化物成分を含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法であって、原料混合粉末がASiO、AB、第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有する。AはCa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、AO、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法に関するものであり、さらにはこれを適用した抵抗体ペーストの製造方法、抵抗体の製造方法及び電子部品の製造方法に関する。
例えば抵抗体ペーストは、一般に、抵抗値の調節及び結合性を与えるためのガラス材料と、導電性材料と、有機ビヒクルとを主たる成分として構成されており、これを基板上に印刷した後、焼成することによって、厚さ5〜20μm程度の厚膜抵抗体が形成される。そして、この種の抵抗体ペースト(厚膜抵抗体)においては、通常、導電性材料として酸化ルテニウム(RuO)や鉛ルテニウム酸化物等が用いられ、ガラスとして酸化鉛(PbO)系ガラス等が用いられている。
近年、環境問題が盛んに議論されてきており、鉛等の有害物質の電子部品からの排除が進められている。前記抵抗体ペーストや厚膜抵抗体も例外ではなく、鉛フリーとするための研究が行われている。
抵抗体ペースト用の鉛フリーのガラス組成物としては、B及びSiOとともにカルシウムをCaOとして含有するカルシウムほうけい酸系ガラスが知られている。カルシウムほうけい酸系ガラスは、通常、所望の組成が得られるように各種酸化物を混合し加熱及び冷却することにより作製されるが、Ca源としては一般にCaCOが用いられている(例えば非特許文献1等参照。)。
作花ほか編集、「ガラスハンドブック」、朝倉書店、P.282
しかしながら、抵抗体ペーストのガラス組成物を前述のカルシウムほうけい酸系ガラス等の鉛フリーの組成にした場合、これを用いて作製された抵抗体の信頼性の低下、例えば高温高湿環境で長期保存したときの抵抗値の変化等が問題となる。ガラスそのものの安定性の低下やガラスを起因とする気泡のような構造的な欠陥の発生等がその要因として挙げられているが、この問題に対する解決策は現状では見つかっていない。
そこで本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、信頼性の高い抵抗体を実現することが可能な抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、信頼性の高い抵抗体を実現する抵抗体ペーストの製造方法、この抵抗体ペーストの製造方法を適用した抵抗体の製造方法及び電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の課題を解決するために長期にわたり研究を行った結果、カルシウムほうけい酸系ガラス組成物の原料として用いられるCaCOやこれから生じるCO 2−がガラス組成物中に残存し、これを用いて作製された抵抗体の信頼性を低下させるとの知見を得た。そこで、カルシウムほうけい酸系ガラス組成物を含む抵抗体の信頼性を向上させるためには、Ca源として用いるCaCOを炭酸を含まない他の化合物で置換することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法は、原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法であって、前記原料混合粉末がASiO又はABの少なくとも一方を含有することを特徴とする。本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法は、原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B、SiO及び第4の酸化物成分を含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法であって、前記原料混合粉末がASiO、AB、前記第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。また、本発明に係る抵抗体ペーストの製造方法は、原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を得、当該抵抗体ペースト用ガラス組成物及び導電性材料を有機ビヒクルと混合する抵抗体ペーストの製造方法であって、前記原料混合粉末がASiO又はABの少なくとも一方を含有することを特徴とする。また、本発明に係る抵抗体ペーストの製造方法は、原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B、SiO及び第4の酸化物成分を含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を得、当該抵抗体ペースト用ガラス組成物及び導電性材料を有機ビヒクルと混合する抵抗体ペーストの製造方法であって、前記原料混合粉末がASiO、AB、前記第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。また、本発明に係る抵抗体の製造方法は、前記方法で抵抗体ペーストを形成し、この抵抗体ペーストを基板上に塗布し、焼成することにより抵抗体を形成することを特徴とする。さらに、本発明に係る電子部品の製造方法は、前記方法で抵抗体ペーストを形成し、この抵抗体ペーストを基板上に塗布し、焼成することにより抵抗体を形成することを特徴とする。
抵抗体ペースト用ガラス組成物中のアルカリ土類金属元素A源の少なくとも一部としてASiO又はABの少なくとも一方を用いることにより、アルカリ土類金属炭酸塩(ACO)の使用量が相対的に減少するか、又はゼロとなるため、ACOの残存量が極めて少ないガラス組成物が得られる。また、抵抗体ペースト用ガラス組成物が第4の酸化物成分を含有する場合、A源の少なくとも一部としてASiO、AB、第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、アルカリ土類金属炭酸塩(ACO)の使用量が相対的に減少するか、又はゼロとなるため、ACOの残存量が極めて少ないガラス組成物が得られる。したがって、このような抵抗体ペースト用ガラス組成物を抵抗体ペーストに用いることにより、CO 2−に起因する悪影響が小さく、信頼性の良好な抵抗体及び電子部品が実現される。
本発明によれば、例えば抵抗値の経時変化の小さい、信頼性の高い抵抗体を実現可能な抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法を提供することが可能である。したがって、本発明により製造された抵抗体ペースト用ガラス組成物を用いることにより信頼性に優れた抵抗体ペーストを製造することが可能であり、この抵抗体ペーストを用いることにより信頼性に優れた抵抗体、及びこの抵抗体を有する電子部品を製造することが可能である。
以下、本発明に係る抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法、抵抗体ペーストの製造方法、抵抗体の製造方法及び電子部品の製造方法について説明する。
先ず、対象となる抵抗体ペースト用ガラス組成物について説明する。抵抗体ペースト用ガラス組成物は、第1の酸化物成分としてAO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、第2の酸化物成分としてB、及び第3の酸化物成分としてSiOを含有するものである。アルカリ土類金属元素Aは、Ca、Sr又はBaである。すなわち、第1の酸化物成分AOとしては、アルカリ土類金属酸化物、具体的にはCaO、SrO、BaO等が挙げられ、これらを単独又は複数で用いることができる。
また、本発明により製造される抵抗体ペースト用ガラス組成物は、第1〜第3の酸化物成分に加え、第4の酸化物成分を含有することが好ましい。第4の酸化物成分とは、アルカリ土類金属、Si及びB以外の元素の酸化物である。第4の酸化物成分の酸素以外の構成元素としては例えばZr、Al、Mn等が挙げられる。第4の酸化物成分としては、具体的にはZrO、Al、MnO、MnO等が挙げられ、これらを単独又は複数で用いることができる。
さらに、本発明により製造される抵抗体ペースト用ガラス組成物は、任意の酸化物成分を含有していてもよい。任意の酸化物成分としては、例えばMgO、TiO、SnO、KO、NaO、LiO、CuO、NiO、ZnO、CoO、Fe、Cr、Y、V等が挙げられる。
抵抗体ペースト用ガラス組成物は、環境保全上、鉛を実質的に含まない鉛フリーのガラス組成物であることが好ましい。なお、本発明において、「鉛を実質的に含まない」とは、不純物レベルとは言えない量を越える鉛を含まないことを意味し、不純物レベルの量(例えば、ガラス組成物中の含有量が0.05重量%以下程度)であれば含有されていてもよい趣旨である。鉛は、不可避不純物として極微量程度に含有されることがある。
本発明で製造される抵抗体ペースト用ガラス組成物の各成分の含有量は特に限定されないが、例えば、第1の酸化物成分であるAOは、ガラス組成物中に12モル%〜44モル%含有されることが好ましい。AOの含有量が前記範囲を下回る場合、導電性材料との反応性が低下し、TCR、STOL特性を劣化させるおそれがある。逆に、AOの含有量が前記範囲を越える場合、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性、信頼性を劣化させるおそれがある。
また、第2の酸化物成分であるB及び第3の酸化物成分であるSiOは、例えばガラス組成物中に合計で36モル%〜79モル%含有されることが好ましい。B及びSiOの合計含有量が少ない場合、組成物のガラス化が困難となるため、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、B及びSiOの合計含有量が多すぎる場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。また、ガラス組成物の軟化点が高くなり、所定の焼成温度にて抵抗体を形成した場合、抵抗体の焼結が不十分となり、信頼性を著しく低下させるおそれもある。
第4の酸化物成分は、ガラス組成物中に例えば2モル%〜11モル%含有されることが好ましい。第4の酸化物成分の含有量が前記範囲を下回る場合、ガラス組成物の耐水性が低下するため、抵抗体としたときの信頼性を著しく低下させるおそれがある。逆に、第4の酸化物成分の含有量が前記範囲を越える場合、抵抗体を形成した時に、過剰な金属酸化物の析出が起こり、特性、信頼性を劣化させるおそれがある。
任意の酸化物成分のガラス組成物中の含有量は、例えば22モル%以下とされることが好ましい。含有量が多い場合、添加酸化物によって効果は異なるが、特性を劣化させることが好ましい。
次に、本発明を適用した抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法について説明する。以上のようなAO、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する際には、例えば、先ず、原料となる粉末を所定量秤量し、混合する。この原料混合粉末をるつぼに入れ、溶融温度まで昇温し、一定時間この溶融温度に保つ。次に、るつぼ内の溶融物を水中に投入するか、冷却ロール上に滴下する等して溶融物を急冷してガラス化することにより、抵抗体ペースト用ガラス組成物が得られる。
このとき、従来の製造方法では、原料となる粉末として、基本的にはSiO、B等の酸化物を用いるが、アルカリ土類金属酸化物AOのA源に関しては、例えばアルカリ土類金属酸化物AOがCaOである場合、酸化物であるCaOの代わりにCaの炭酸塩(CaCO)を用いている。CaOは取り扱いが難しいこと等の問題があるためである。
しかしながら、CaCO等のアルカリ土類金属炭酸塩をA源として用いると、得られた抵抗体ペースト用ガラス組成物中にアルカリ土類金属炭酸塩が残存し、残存した炭酸塩や炭酸塩から生じる炭酸イオン(CO 2−)が、このガラス組成物を用いた抵抗体ペーストから形成された抵抗体の信頼性に悪影響を及ぼす原因となる。
そこで本発明では、A源の少なくとも一部として、アルカリ土類金属とSiとの複合酸化物であるASiO、アルカリ土類金属とBとの複合酸化物であるABを用いる。ASiO及びABは、それぞれ単独で用いても、これらを組み合わせて用いてもよい。ASiOは、具体的にはCaSiO、SrSiO、BaSiOであり、ABは、具体的にはCaB、SrB、BaBである。これらの複合酸化物は化学量論組成からずれていてもよい。原料粉末として従来使用されるアルカリ土類金属炭酸塩を、ASiO又はABの少なくとも一方で置換することにより、抵抗体ペースト用ガラス組成物中に残存するアルカリ土類金属炭酸塩や炭酸イオン(CO 2−)量を低減できる。したがって、本発明の製造方法により作製された抵抗体ペースト用ガラス組成物は、抵抗体ペーストに用いられて抵抗体を形成したとき、信頼性の高い抵抗体や電子部品を実現できる。また、本発明の製造方法により作製された抵抗体ペースト用ガラス組成物を用いることにより、従来の製造方法により製造された鉛フリーのガラス組成物を用いる場合に比べ、温度特性(TCR)及び耐電圧特性(STOL)の両方に優れた抵抗体や電子部品を実現できる。
また、対象となる抵抗体ペースト用ガラス組成物が、AO、B及びSiOの他、第4の酸化物成分を含有するものである場合、原料粉末として、ASiO、AB、第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物を用いる。ASiO、AB、第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物は、それぞれ単独で用いても、これらを組み合わせて用いてもよい。第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物は、具体的には、AZrO、AAl、AMnO等であり、より具体的にはCaZrO、CaAl、CaMnO、SrZrO、SrAl、SrMnO、BaZrO、BaAl、BaMnO等である。これらの複合酸化物は化学量論組成からずれていてもよい。
抵抗体ペーストを製造するには、前述の方法で抵抗体ペースト用ガラス組成物を作製した後、これを導電性材料及び必要に応じて添加物とともに有機ビヒクルと混合すればよい。ここで、導電性材料は、絶縁体であるガラス中に分散されることで、構造物である抵抗体に導電性を付与する役割を持つ。導電性材料は、特に限定されないが、環境保全上、やはり鉛を実質的に含まない導電性材料を用いることが好ましい。具体的な鉛を実質的に含まない導電性材料としては、ルテニウム酸化物の他、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金、TaN、WC、LaB、MoSiO、TaSiO、及び金属(Ag、Au、Pt、Cu、Ni、W、Mo等)が挙げられる。これらの物質は、それぞれ単独で使用しても良いし、2種類以上組み合わせても良い。この中でも、ルテニウム酸化物が好ましい。ルテニウム酸化物としては、酸化ルテニウム(RuO、RuO等)の他、ルテニウム系パイロクロア(BiRu、TlRu等)やルテニウム複合酸化物(SrRuO、BaRuO、CaRuO、LaRuO等)なども含まれる。中でもRuO、CaRuO、SrRuO、BaRuO、BiRuが好ましい。
抵抗体ペースト中の導電性材料の含有量は、導電性材料、ガラス組成物、添加物の合計の重量を100重量%とした時に、例えば7重量%〜60重量%とするのが好ましい。含有量が少ない場合、抵抗値が高くなりすぎてしまい、抵抗体ペーストとしての使用に適さなくなるおそれがある。逆に、導電性材料の含有量が前記範囲を越えると、ガラス組成物による導電性材料の結着が不十分になり、信頼性が低下するおそれがある。
抵抗体ペーストには、前述のガラス組成物、導電性材料の他、特性の調整等を目的として、添加物が含まれていてもよい。抵抗体ペーストにおける添加物の含有量は、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物の合計重量を100重量%とした場合に、0〜28.0重量%とするのが好ましい。添加物の含有量が少ない場合、十分な特性の調整が困難となるおそれがあり、逆に添加物の含有量が多すぎる場合、導電性材料、添加物の結着が不十分となり、信頼性が著しく低下するおそれがある。
添加物としては、任意の金属酸化物を用いることができる。具体的にはCaTiO、SrTiO、BaTiO、MgO、TiO、SnO、ZnO、CoO、CuO、NiO、MnO、Mn、Fe、Cr、Y、V等が挙げられる。中でもCaTiO、BaTiO、CuO、NiO、MgOが好ましい。それぞれの添加物の含有量が多すぎる場合、STOL特性が劣化するおそれがある。
有機ビヒクルは、ガラス組成物、導電性材料と添加物とを混練しペースト化させる役割を有し、この種の抵抗体ペーストに用いられるものがいずれも使用可能である。有機ビヒクルは、バインダを有機溶剤中に溶解することによって調製されるものである。バインダとしては、特に限定されず、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等、各種バインダから適宜選択すればよい。有機溶剤も限定されず、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等、各種有機溶剤から適宜選択すればよい。さらに、抵抗体ペーストの物性を調節するために、分散剤等の各種添加剤を加えてもよい。
前記有機ビヒクルの配合比率であるが、ガラス組成物、導電性材料、及び添加物を合計した合計重量(W1)と、有機ビヒクルの重量(W2)の比率(W2/W1)が、0.25〜4(W2:W1=1:0.25〜1:4)であることが好ましい。より好ましくは、前記比率(W2/W1)が0.5〜2である。前記比率を外れると、抵抗体を例えば基板上に形成するのに適した粘度の抵抗体ペーストを得ることができなくなるおそれがある。
抵抗体を形成するには、前述の成分を含む抵抗体ペーストを例えば基板上にスクリーン印刷等の手法で印刷(塗布)し、850℃程度の温度で焼成すればよい。基板としては、Al基板やBaTiO基板の誘電体基板や、低温焼成セラミック基板、AlN基板等を用いることができる。基板形態としては、単層基板、複合基板、多層基板のいずれであってもよい。多層基板の場合、抵抗体は、表面に形成してもよいし、内部に形成してもよい。
抵抗体の形成に際しては、通常、基板に電極となる導電パターンを形成するが、この導電パターンは、例えば、AgやPt等の良導電材料を含む導電ペーストを印刷することにより形成することができる。また、形成した抵抗体の表面に、ガラス膜等の保護膜を形成してもよい。
本発明の抵抗体を適用可能な電子部品としては特に限定されないが、例えば単層または多層の回路基板、チップ抵抗器等の抵抗器、アイソレータ素子、C−R複合素子、モジュール素子の他、積層チップコンデンサ等のコンデンサやインダクタ等が挙げられ、コンデンサやインダクタ等の電極部分にも適用することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
実験1
<ガラス組成物の作製>
先ず、基準となる組成がCaO:34、B:36、SiO:25、ZrO:5(モル%)であるガラス組成物を、以下のような製造方法により作製した。
CaCO、B、SiO及びZrOを所定量(CaCO:34、B:36、SiO:25、ZrO:5(モル%))秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末をPtるつぼに入れ、空気中、5℃/分の速度で1300℃まで昇温し、その温度に1時間保持した後、水中に投入することによって急冷し、ガラス化した。得られたガラス化物をボールミルで粉砕し、前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(1)とした。
原料としてCaCO、CaSiO、B及びZrOを所定量(CaCO:9、CaSiO:25、B:36、ZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(2)とした。
原料としてCaSiO、CaB、B及びZrOを所定量(CaSiO:25、CaB:9、B:27、ZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(3)とした。
原料としてCaSiO、CaB、B及びCaZrOを所定量(CaSiO:25、CaB:4、B:32、CaZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(4)とした。
<導電性材料、添加物>
導電性材料としては、CaRuOを用いた。CaRuOは以下のように作製した。すなわち、CaCO粉末とRuO粉末とを所定量秤量し、ボールミルにて混合した後、乾燥した。得られた粉末を5℃/分の速度で1200℃まで昇温し、その温度に5時間保持した後、5℃/分の速度で室温まで冷却することによって、CaRuOの粉末を得た。得られた粉末は、ボールミルにて粉砕した。添加物としては、CuO、NiO、MgOを用いた。
<有機ビヒクルの作製>
バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤としてテルピネオールを用い、有機溶剤を加熱撹拌しながらバインダを溶かして、有機ビヒクルを作製した。
<抵抗体ペーストの作製>
前述のガラス組成物粉末、導電性材料粉末、添加物、及び有機ビヒクルを各組成となるように秤量し、3本ロールミルで混練し、抵抗体ペーストを得た。なお、導電性材料粉末、ガラス組成物粉末及び添加物粉末の合計重量と有機ビヒクルの重量の比は、得られた抵抗体ペーストがスクリーン印刷に適した粘度となるように、重量比で1:0.25〜1:4の範囲で調合し、抵抗体ペーストを作製した。導電性材料、ガラス組成物及び添加物の合計重量を100としたときの抵抗体ペーストの各成分の重量比率は以下のとおりである。
導電性材料:CaRuO(19.8重量%)
ガラス組成物:CaO−B−SiO−ZrO(55.0重量%)
添加物:NiO(16.7重量%)、MgO(5.0重量%)、CuO(3.5重量%)
<抵抗体の作製>
96%のアルミナ基板上に、Ag−Pt導体ペーストを所定形状にスクリーン印刷して乾燥させた。Ag−Pt導体ペーストにおけるAgの割合は95重量%、Ptの割合は5重量%とした。このアルミナ基板をベルト炉に入れ、投入から排出まで1時間のパターンで焼き付けを行った。この時の焼き付け温度は850℃、その温度での保持時間は10分間とした。
このようにして導体が形成されたアルミナ基板上に、先に作製した抵抗体ペーストをスクリーン印刷法にて所定の形状(1mm×1mmの方形状)のパターンで塗布し、乾燥した。その後、導体焼き付けと同じ条件で抵抗体ペーストを焼き付け、厚膜抵抗体を得た。
<抵抗体の特性評価>
(1)抵抗値
Agilent Technologies 社製の製品番号 34401Aにより測定。試料数24個の平均値を求めた。
(2)TCR
室温25℃を基準として、−55℃、125℃へ温度を変えた時の抵抗値変化率を求めた。試料数10個の平均値である。−55℃、25℃、125℃の抵抗値をR-55、R25、R125(Ω/□)とおき、以下の2つの式のうち数値の大きい方をTCR値とした。
TCR(ppm/℃)=((R-55-R125)/R25/80)×1000000、
TCR(ppm/℃)=((R125-R25)/R25/100)×1000000
(3)STOL(耐電圧特性)
抵抗体に試験電圧を5秒間印加し、その前後における抵抗値の変化率を求めた。試料数10個の平均値である。試験電圧=2.5×定格電圧であり、定格電圧=√(R/8)、Rは抵抗値(Ω/□)である。計算した試験電圧が200Vを越える抵抗値を持つ抵抗体については、試験電圧を200Vにて行った。
(4)経時変化
抵抗体の信頼性試験の一つである。温度85℃、相対湿度85%の環境下に抵抗体を1000時間放置し、その前後における抵抗値の変化率ΔR(%)を求めた。経時変化でのΔR(%)≦±1.0%が特性の基準となる。
(5)ヒートサイクル試験
抵抗体の信頼性試験の一つである。抵抗体を−55℃と125℃にそれぞれ30分間さらすことを1サイクルとし、合計1000サイクル繰り返したときの抵抗値の変動率ΔR(%)を求めた。ヒートサイクル試験でのΔR(%)≦±1.0%であることが好ましい。
ガラス(1)〜ガラス(4)のいずれかのガラス組成物を用いた抵抗体ペーストで抵抗体を作製し、抵抗体の特性(抵抗値、TCR、STOL及びヒートサイクル試験)を評価した。ガラス組成物の原料及び抵抗体の特性の評価結果を表1に示す。なお、以下の表も同様であるが、本発明で比較例に相当するガラスには*印を付した。
Figure 2006080242
表1に示すように、CaCOの一部をCaSiOで置き換えたガラス(2)を用いた抵抗体では、ガラス(1)を用いた場合に比べて経時変化及びヒートサイクル試験のいずれにおいても大幅に改善され、良好な信頼性を示した。また、CaCOの全部をCaSiO及びCaBで置き換えたガラス(3)を用いた抵抗体ではさらに信頼性が改善され、また、CaSiO及びCaBとともにCaZrOを併用したガラス(4)を用いた場合も良好な結果であった。また、ガラス(2)〜ガラス(4)のいずれにおいても、TCR特性及びSTOL特性の両方で優れた結果を示した。
実験2
<ガラス組成物の作製>
実験2では、基準となる組成がSrO:34、B:36、SiO:25、ZrO:5(モル%)であるガラス組成物を、以下のような製造方法により作製した。
SrCO、B、SiO、ZrOを所定量(SrCO:34、B:36、SiO:25、ZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(5)とした。
原料としてSrCO、B、SrSiO、SrZrOを所定量(SrCO:4、B:36、SrSiO:25、SrZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(6)とした。
<抵抗体ペーストの作製>
前記ガラス(5)又はガラス(6)、並びに実験1と同様の導電性材料、添加物及び有機ビヒクルを用い、実験1と同様の方法により抵抗体ペーストを作製した。導電性材料、ガラス組成物及び添加物の合計重量を100としたときの抵抗体ペーストの各成分の重量比率は以下のとおりである。
導電性材料:CaRuO(19.8重量%)
ガラス組成物:SrO−B−SiO−ZrO(55.0重量%)
添加物:NiO(16.7重量%)、MgO(5.0重量%)、CuO(3.5重量%)
<抵抗体の作製・評価>
前記抵抗体ペーストを用いて実験1と同様にして抵抗体を作製し、各抵抗体の特性を評価した。ガラス組成物の原料及び抵抗体の特性の評価結果を表2に示す。
Figure 2006080242
表2に示すように、SrCOの一部をSrSiO及びSrZrOで置き換えたガラス(6)を用いた抵抗体では、Sr源が全てSrCOであるガラス(5)を用いた場合に比べて経時変化及びヒートサイクル試験のいずれにおいても大幅に改善され、良好な信頼性を示した。
実験3
<ガラス組成物の作製>
実験3では、基準となる組成がBaO:28、B:36、SiO:31、ZrO:5(モル%)であるガラス組成物を、以下のような製造方法により作製した。
BaCO、B、SiO、ZrOを所定量(BaCO:28、B:36、SiO:31、ZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(7)とした。
原料としてBaCO、B、BaSiO、SiO、BaZrOを所定量(BaCO:8、B:36、BaSiO:15、SiO:16、BaZrO:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(8)とした。
<抵抗体ペーストの作製>
前記ガラス(7)又はガラス(8)、並びに実験1と同様の導電性材料、添加物及び有機ビヒクルを用い、実験1と同様の方法により抵抗体ペーストを作製した。導電性材料、ガラス組成物及び添加物の合計重量を100としたときの抵抗体ペーストの各成分の重量比率は以下のとおりである。
導電性材料:CaRuO(19.8重量%)
ガラス組成物:BaO−B−SiO−ZrO(55.0重量%)
添加物:NiO(13.3重量%)、MgO(8.4重量%)、CuO(3.5重量%)
<抵抗体の作製・評価>
前記抵抗体ペーストを用いて実験1と同様にして抵抗体を作製し、各抵抗体の特性を評価した。ガラス組成物の原料及び抵抗体の特性の評価結果を表3に示す。
Figure 2006080242
表3に示すように、BaCOの一部をBaSiO及びBaZrOで置き換えたガラス(8)を用いた抵抗体では、Ba源が全てBaCOであるガラス(7)を用いた場合に比べて経時変化及びヒートサイクル試験のいずれにおいても大幅に改善され、良好な信頼性を示した。
実験4
<ガラス組成物の作製>
実験4では、基準となる組成がCaO:34、B:36、SiO:25、Al:5(モル%)であるガラス組成物を、以下のような製造方法により作製した。
CaCO、B、SiO、Alを所定量(CaCO:34、B:36、SiO:25、Al:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(9)とした。
原料としてCaSiO、B、CaB、CaAlを所定量(CaSiO:25、B:32、CaB:4、CaAl:5(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(10)とした。
<抵抗体ペーストの作製>
前記ガラス(9)又はガラス(10)、並びに実験1と同様の導電性材料、添加物及び有機ビヒクルを用い、実験1と同様の方法により抵抗体ペーストを作製した。導電性材料、ガラス組成物及び添加物の合計重量を100としたときの抵抗体ペーストの各成分の重量比率は以下のとおりである。
導電性材料:CaRuO(16.8重量%)
ガラス組成物:CaO−B−SiO−Al(59.2重量%)
添加物:NiO(14.2重量%)、MgO(6.3重量%)、CuO(3.5重量%)
<抵抗体の作製・評価>
前記抵抗体ペーストを用いて実験1と同様にして抵抗体を作製し、各抵抗体の特性を評価した。ガラス組成物の原料及び抵抗体の特性の評価結果を表4に示す。
Figure 2006080242
表4に示すように、CaCOをCaSiO、CaB及びCaAlで置き換えた場合(ガラス(10))も、Ca源が全てCaCOであるガラス(9)を用いた場合に比べて良好な信頼性を示していた。
実験5
<ガラス組成物の作製>
実験5では、基準となる組成がCaO:32、B:30、SiO:28、MnO:10(モル%)であるガラス組成物を、以下のような製造方法により作製した。
CaCO、B、SiO、MnOを所定量(CaCO:32、B:30、SiO:28、MnO:10(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(11)とした。
原料としてCaSiO:22、B:30、SiO:6、CaMnO:10(モル%))秤量し、ガラス(1)と同様の方法により前記組成のガラス組成物粉末を得た。これをガラス(12)とした。
<抵抗体ペーストの作製>
前記ガラス(11)又はガラス(12)、導電性材料としてRuO粉末、添加物としてNiO、Mn、CuO、BaTiO、並びに有機ビヒクルを用い、実験1と同様の方法により抵抗体ペーストを作製した。導電性材料、ガラス組成物及び添加物の合計重量を100としたときの抵抗体ペーストの各成分の重量比率は以下のとおりである。
導電性材料:RuO(40.5重量%)
ガラス組成物:CaO−B−SiO−MnO(46.8重量%)
添加物:NiO(2.1重量%)、Mn(5.0重量%)、CuO(3.5重量%)、BaTiO(2.1重量%)
<抵抗体の作製・評価>
前記抵抗体ペーストを用いて実験1と同様にして抵抗体を作製し、各抵抗体の特性を評価した。ガラス組成物の原料及び抵抗体の特性の評価結果を表5に示す。
Figure 2006080242
表5に示すように、CaCOをCaSiO及びCaMnOで置き換えた場合も(ガラス(12))、Ca源が全てCaCOであるガラス(11)を用いた場合に比べて経時変化及びヒートサイクル試験が改善され、良好な信頼性を示していた。

Claims (12)

  1. 原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法であって、
    前記原料混合粉末がASiO又はABの少なくとも一方を含有することを特徴とする抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法。
  2. 前記AはCa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法。
  3. 原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B、SiO及び第4の酸化物成分を含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を製造する抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法であって、
    前記原料混合粉末がASiO、AB、前記第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法。
  4. 前記第4の酸化物成分は、ZrO、Al、MnOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法。
  5. 前記AはCa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3又は4記載の抵抗体ペースト用ガラス組成物の製造方法。
  6. 原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B及びSiOを含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を得、当該抵抗体ペースト用ガラス組成物及び導電性材料を有機ビヒクルと混合する抵抗体ペーストの製造方法であって、
    前記原料混合粉末がASiO又はABの少なくとも一方を含有することを特徴とする抵抗体ペーストの製造方法。
  7. 前記AはCa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載の抵抗体ペーストの製造方法。
  8. 原料混合粉末を溶融した後急冷することにより、AO(Aはアルカリ土類金属元素を表す。)、B、SiO及び第4の酸化物成分を含有する抵抗体ペースト用ガラス組成物を得、当該抵抗体ペースト用ガラス組成物及び導電性材料を有機ビヒクルと混合する抵抗体ペーストの製造方法であって、
    前記原料混合粉末がASiO、AB、前記第4の酸化物成分を構成する酸素以外の元素とAとの複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抵抗体ペーストの製造方法。
  9. 前記AはCa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載の抵抗体ペーストの製造方法。
  10. 前記第4の酸化物成分は、ZrO、Al、MnOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8又は9記載の抵抗体ペーストの製造方法。
  11. 請求項6〜請求項10のいずれか1項記載の方法で抵抗体ペーストを形成し、この抵抗体ペーストを基板上に塗布し、焼成することにより抵抗体を形成することを特徴とする抵抗体の製造方法。
  12. 請求項6〜請求項10のいずれか1項記載の方法で抵抗体ペーストを形成し、この抵抗体ペーストを基板上に塗布し、焼成することにより抵抗体を形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
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