JP2006078604A - 人体患部実体モデル及びその製造方法 - Google Patents

人体患部実体モデル及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 価格の高い光硬化性樹脂の使用量を低減し、かつ実際の患部に対応して物性を変化させることができる人体患部の実体モデルを提供する。
【解決手段】 患者本人のMRI又はCTスキャンで得た断層データに基づく光造形法により形成された光硬化性樹脂硬化体からなる外殻部分と、その内部空洞部分に充填された流動化可能な固体からなる心材部分とを有する人体患部実体モデルとする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、患者本人の磁気共鳴映像法(MRI)やコンピューター断層撮影(CT)スキャンで得られた断層データからの情報を用いて、光造形法により形成される新規な構造の人体患部実体モデル及びその製造方法に関するものである。
液状光硬化性樹脂を用いた三次元光造形法(ステレオリソグラフィー)は、IT技術の台頭と三次元CAD(Computer Aided Design)システムの普及とともに各産業分野において急速に応用が進んでいる。
この光造形法は、例えば所定の物体についてコンピューター上でCADシステムにより立体モデルを設計し、これをコンピューター上で一定の間隔でスライスしてその断面のデータを作成し、この断面データに基づき、容器に収容した液状光硬化性樹脂の液面の所定の域に活性線照射して硬化させ、断面データに対応する樹脂硬化層を形成させたのち、その硬化部分を沈下させて、新しく生じた液面の次の断面データに対応する域に活性線照射を行うという操作を順次繰り返して樹脂硬化層を次々と積層することにより、設計したとおりの三次元立体モデルを形成させる方法である(例えば特許文献1、2参照)。
この方法は、MRIやCTスキャンで得られた患者の患部のモデルを作成するのに利用すれば、医者は三次元的に人体内の患部を再現しうるので、外部からの診察では発見できない腫瘍や骨の異常を容易に見出すことができ、それに基づいて難しい手術の除去部分の検討や手術のシミュレーションを行うことができることから、最近では医療分野において注目されるようになった。
そして、このような光造形法を用いた人体患部モデル、その製造方法又は製造装置として、これまでに内臓又は器官類の断層形状測定装置により得られた二次元断層画像データに基づいて、光硬化性樹脂中にレーザー光を照射して各断層形状に合致する硬化層を形成し、これらを順次積層して立体モデルを形成させる方法(特許文献3参照)、被検体について多断層の断層像を収集する断層撮影装置と、それにより得られる各断層像間を補間する手段と、前記断層像を二値化して二値画像を作成する手段と、この二値画像から三次元画像を作成する手段と、この三次元画像の孤立部分にサポート部材を追加する手段と、このサポート部材を追加した三次元画像からモデル作成用データを生成する手段と、このデータから層状のモデルを作成し、積層することにより立体モデルを造形する造形装置を備えた立体モデル作成装置(特許文献4参照)、ヘリカルCTスキャナ画像又はMRIスキャナで撮影されたスライス画像を正確に並べて積層して、三次元データとして組み立てたのち、所定の領域をスレッショルド値を指定して切り出し、対象となる画像領域を抽出し、この抽出された領域をブロックごとに分離し、上記のスレッショルド値に基づいて抽出された領域の三次元連続性を確認してマスク領域を切り出し、スライス画像上で切り出したマスク領域を積層して三次元モデルを作成し、この三次元モデルのスライス画像を単位厚さに敷設された粉末材料上にレーザー描画し、このレーザー描画された粉末材料を固化して順次積層した医療用立体モデル(特許文献5参照)などが提案されている。
他方、上記のようにスライス層を積層する光造形方法において、内部を網目構造でサポートした光造形物の立体構造データを作成し、これに基づいて射出成形用金型のマスターモデルを製造することも知られている。
しかしながら、一般に光硬化性樹脂は、価格が高く、各人ごとに製作しなければならない実体モデル全体に光硬化性樹脂を用いれば、患者個人の負担が大きくなるのを免れない上に、光硬化性樹脂として用いられる高分子化合物の種類には限りがあり、その物性も制限があるので、手術シミュレーション用として用いる場合、実際の患部の物性とはかけ離れたものを取り扱わなければならないという欠点がある。
また、これまで用いられている光硬化性樹脂は、歯科の技工や整形外科の手術、特に人工関節置換術の場合、オシレーターを用いた骨切り、ハンマーを用いたピンの打ち付け操作を行うと、モデル自体がその操作により破壊され、現実に即したリハーサルを行うことができない。
他方、内部を網目構造に形成した実体モデルでは、強度が不足して手術シミュレーションには不適であるし、骨切りやピン止めを必要とする場合には使用できないという欠点がある。
特開昭56−144478号公報(特許請求の範囲その他) 特開2001−79855号公報(特許請求の範囲その他) 特開平5−11689号公報(特許請求の範囲その他) 特開平6−98897号公報(特許請求の範囲その他) 特開2002−40928号公報(特許請求の範囲その他)
本発明は、このような事情のもとで、価格の高い光硬化性樹脂の使用量を低減し、かつ実際の患部に対応して物性を変化させることができる人体患部の実体モデルを提供することを目的としてなされたものである。
本発明者らは、光硬化性樹脂の使用量を低減し、かつ患部の状態に対応して物性を変化させうる人体患部実体モデルを実現するために種々研究を重ねた結果、外郭部のみを光硬化性樹脂で形成し、内側の空洞部に患部の物性に対応した所望の物性を有する材料からなる心材を充填することにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、患者本人のMRI又はCTスキャンで得た断層データに基づく光造形法により形成された光硬化性樹脂硬化体からなる外殻部分と、その内部空洞部分に充填された流動化可能な固体からなる心材部分とを有することを特徴とする人体患部実体モデル、及び患部をMRI又はCTスキャンして、患部全体にわたる多数の二次元断層画像データを得、次いでこの画像データに基づき、液体光硬化性樹脂中、各二次元断層画像の輪郭部に相当する帯域のみに活性線を照射して各断層画像の輪郭部形状に合致する硬化層を形成し、得られた各硬化層を順次積層して、三次元光造形して外殻部分を作成し、次いでこの外郭部分内部に形成された空洞部分に流動化した固体物質を注入充填したのち、これを固体化し、心材部分を形成させることを特徴とする人体患部実体モデルの製造方法を提供するものである。
次に、本発明の人体患部実体モデルを添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明の人体患部実体モデルの1例を示す断面図であり、このものは、三次元光造形により作成された外殻部分1と、その内側の空洞に充填された心材部分2とから構成されている。この心材部分2は、流動化された固体物質を、心材注入口3から導入したのち、固体化することによって形成されている。
この外殻部分1は、光硬化性樹脂の硬化体によって形成されている。この本発明で用いられる光硬化性樹脂には、ラジカル重合反応タイプとカチオン重合反応タイプの2種類があり、前者の代表的なものとしては、ウレタンアクリレート系硬化性樹脂が、また、後者の代表的なものとしては、エポキシ系光硬化性樹脂がある。
上記のウレタンアクリレート系光硬化性樹脂の例としては、エチレングリコールとアジピン酸とのエステルにトリレンジイソシアナートを反応させて得られるプレポリマーと、2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、ポリエチレングリコールとトリレンジイソシアナートを反応させて得られるプレポリマーと2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレートとキシレンジイソシアナートとの縮合物と2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、1,2‐ポリブチジエングリコールとトリレンジイソシアナートとの縮合物と2‐ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物、トリメチロールプロパン−プロピレングリコールとトリレンジイソシアナートの縮合物と2‐ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物などがある。この種のウレタンアクリレート系光硬化剤は、例えばTSR−1938M(帝人製機製)として市販されている。
また、エポキシ系光硬化性樹脂の例としては、ビスフェノールAのエピクロロヒドリン付加物とアクリル酸との反応生成物、フェノールノボラック樹脂のエピクロロヒドリン付加物とアクリル酸との反応生成物などがある。この種のエポキシ系光硬化性樹脂は、旭電化工業株式会社から「HS−681」として、ジェイ・エス・アール(JSR)社から「SCR−8100」シリーズとして、バンチコ(Vantico)社から「SL−7540」として、それぞれ市販されている。
これらの光硬化性樹脂は、紫外線、電子線、i線、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーなどの活性線を照射することにより容易に硬化して、自己支持性の外殻部分を構成することができる。
本発明の人体患部実体モデルの外殻部分の厚さは、要求される強度がモデルの大きさにより変わるので、それに対応して増減させる必要があるが、通常1〜20mm、好ましくは3〜10mmの範囲内で選択される。
次に、この外殻部分の内側に形成される空洞部分に充填される心材部分の材料としては、充填時に流動化状態となり得る固体物質が用いられる。このような固体物質としては、加熱すると流動状態になり冷却すると固化する物質、充填時は流体であるが、充填した後で硬化剤を反応させれば硬化する物質などの中から任意に選んで用いることができる。
このような物質の例としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ホットメルト系接着剤、固体状界面活性剤、石油ワックス類、セッコウ、モルタル類などを挙げることができる。
上記の熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素ゴム系樹脂、ポリアクリロ系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ケイ素系樹脂、ウレタンエラストマー、アクリルニトリルゴム、シリコーンゴム、天然ゴムなどがある。
また、上記の熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール系樹脂、フラン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂などがあるが、アクリルポリオール又はポリエステルウレタン系樹脂、ポリプロピレン変性アクリルポリオールウレタン系樹脂、アクリル−キレート硬化型樹脂、エポキシペンダントアクリル系樹脂、ウレタン化油系樹脂のような100℃以下で硬化反応が進行するものが好ましい。
次に、上記のホットメルト系接着剤としては、例えばオレフィン系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤、湿気硬化型ホットメルト接着剤、UV、EB硬化型ホットメルト接着剤などがある。
さらに、上記の固体状界面活性剤としては、例えばα‐オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、メチルタウリン酸塩、アラニネート及びその塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、硫酸化油、エーテルカルボン酸塩などがある。
そのほか、高級アルコール、ポリオキシアルキレングリコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸ポリエチレンオキシド、高級アルキルメラミン、高級アルキルジアミン系、エチレンオキシド付加脂肪酸メチルエステル、高級アミドエチレンオキシド付加体、高級アルキルアミンオキシド、高級アルキルアンモニウムハライド、エチレンオキシド付加型第四アンモニウムハライド、ベタイン型界面活性剤、カチオン性セルロース誘導体などがある。
そのほか、石油ワックス類としては、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロタムなどが用いられる。
これらの心材部分には、木粉、殻繊維、木綿、芳香族ポリアミド繊維のような有機質フィラーや、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、軽石粉、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、ガラス繊維、ウイスカー、鉄粉、鉛粉、アルミニウム粉などの無機質フィラーを配合することができるし、また着色剤、防腐剤、難燃剤などの添加剤を配合することもできる。
さらに、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p´‐オクシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p‐トルエンスルホニルヒドラジドのような発泡剤を加えて発泡させ、多孔質樹脂とすることもできる。
本発明の人体患部実体モデルは、例えば次の図2に示す手順に従って行う三次元光造形法によって製造することができる。
すなわち、人体患部をMRI又はCTスキャンして得たデータをCADに入力して立体モデルを設計し、この立体モデルデータを立体造形用データフォーマットに変換し、次いで光造形装置内での配置や積層方向のような処理条件を決定したのち、所定の間隔にスライスしてその断面のデータを作成する。
次いで、この断面データに基づき、図2(イ)に示すように容器4に光硬化性樹脂5を収容し、各断面画像の輪郭部に相当する帯域の光硬化性樹脂の表面を活性線例えばレーザ光で走査し、被照射部分の樹脂を硬化させて、断面データの輪郭部に対応する樹脂硬化層6を支持台7の上に形成させる。
次に支持台7を上記スライスの間隔に対応する距離まで沈下させ、同じ操作を行い、最初の樹脂硬化層6の上に2段目の樹脂硬化層6´を成形させる(ロ)。この際の活性線の照射は、機械シャッター、光変調器、光学レンズを通し、X方向、Y方向の2個のスキャナミラーで照射位置を制御しながら支持台7上に行う。
上記の活性線光源、光変調器、スキャナミラーは、コンピューターでコントロールし、それと同期して支持台7が制御される。
このようにして、各断面データの輪郭部全体に対応する硬化層8を形成させることにより(ハ)、人体患部実体モデルの外殻部分1が得られる。
次に、このようにして得た外郭部分1の開口部分から、流動状態の固体形成物質を流し込み、加熱反応、硬化反応、水硬反応などにより固体化させ、心材部分2を形成させる。
本発明によると、価格の高い光硬化性樹脂の使用量を少なくして、低コストとすることができる上に、使用目的に応じた要求物性をもつ実体モデルを任意に提供しうる。
次に実施例により、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
光造形システム(シーメット社製、製品名「Rapid Meister6000S」)を用い、光硬化性樹脂(帝人製機社製、製品名「TSR820」)を外殻材料として円筒(径25mm、長さ200mm、厚さ2mm)を作製した。
次いで、この円筒内にパラフィン(和光純薬社製、融点68〜70℃)、ホットメルト接着剤A(東洋紡社製、製品名「GT1200」)及びホットメルト接着剤B(城端ブレード社製)を心材として、3種の骨サンプルを製造した。
次に、これらの骨サンプルについて、オシレーターを用いた骨切りのシミュレーションを行ったところ、パラフィンを心材としたものは外郭部にひびを生じた。また、ホットメルト接着剤Aを心材としたものは、骨切りの際、摩擦熱により心材が溶融したが、切り出し面は平坦であったのに対し、ホットメルト接着剤Bを心材としたものは、摩擦熱により心材が溶融した上、切り出し面は粗面化した。
なお、外殻材料として、光硬化性樹脂(帝人製機社製、製品名「TSR821」)を用いた場合も全く同様の結果が得られた。
比較例1
実施例1における外殻部分のみを用い、心材を充填せずに作製した骨サンプルについて、実施例1と同様にオシレーターを用いて骨切りのシミュレーションを行ったところ、著しくひび割れを生じ、モデル実験は不可能であった。
光造形システム(ディーメック社製、製品名「SCS−8000」)を用い、光硬化性樹脂I(ジェイ・エス・アール社製、製品名「SCR11120」)及び光硬化性樹脂II(ジェイ・エス・アール社製、製品名「SCR735」)を心材とした以外は、実施例1と同様にして3種の骨サンプルを製造した。このようにして得た骨サンプルについて、オシレーターによる骨切りのシミュレーションを行ったところ、光硬化性樹脂Iを外郭材料とし、パラフィンを心材としたものは、良好な手ごたえを示したが、光硬化性樹脂IIを外殻材料とし、パラフィンを心材としたものは、外郭部分に縦方向のひびを生じ割れてしまい、モデル実験はできなかった。
また、ホットメルト接着剤Aを心材としたものは、いずれの外殻材料の場合も、骨切りの際、摩擦熱により心材は溶融したが、切り出し面は平坦であった。
一方、ホットメルト接着剤Bを心材としたものは、骨切りの際、摩擦熱により充填した心材は溶融し、かつ切り出し面は粗面化した。
比較例2
実施例2における2種の外殻部分のみを用い、心材を充填せずに作製した骨サンプルについて、実施例2と同様にオシレーターを用いて骨切りのシミュレーションを行ったところ、いずれもひび割れを生じ、破片が飛散した。
光造形システム(ディーメック社製、製品名「SCS−8000」)を用い、光硬化性樹脂I(ジェイ・エス・アール社製、製品名「SCR11120」)により、上顎劣成長、下顎過成長の患者の上顎下顎部のCTから光造形実体モデルの外郭部分を作製した。
次いで着色したパラフィン(融点68〜70℃)を融解して、この内側空洞部分に注入したところ、従来抽出できなかった下顎管(下歯槽神経)部をはっきりと描出することができた。
このサンプルを用いてシミュレーションを行ったところ、上下顎移動手術(形成術)に有用であることが分った。特に、上顎骨から蝶形骨に至る後方部での難しい部位での骨切りに対する術前シミュレーションは、術中の所見と同じであり、出血量も抑制することができたことから、手術を順調に実施することができた。
このように、歯科口腔外科の手術シミュレーションでは、これまでの術前診査として,パノラマX線写真、多断面構築CT画像デンタススキャン、3DCTなどが用いられ、平面画像であるため、神経までの距離や位置などはわかるとしても、これを用いて術前のシミュレーションはできなかった。この3DCTは非常に有効ではあるが、手術経験が豊富でないと、イメージを作りにくいという欠点があるし、石膏模型による診査は、歯肉の厚みには個人差があり、正確な顎堤を再現することはできなかった。
これに対し、患者本人のCT・MRIデータから、紫外線レーザーにより液状の光硬化性樹脂を一層ずつ硬化させ、重ね合わせていく光造形法では実際の顎骨を再現できるため、他の工法よりもインプラント埋入のシミュレーションには最適である。そして、このような医療用実体モデルの作製のためには、光造形装置の導入が不可欠であるが、従来の光造形実体モデルでは神経の部分が描出されない欠点があった。
しかし、本発明では硬組織を光造形で作製し、神経の部分に着色した充填物を注入することにより、明確に神経部を描出することができる。
光造形システムとして前記の「SCS−8000」を、また光硬化性樹脂として、前記の「SCR11120」を用い、78歳の高度外反膝症の女性患者のCT画像から下肢の外郭部を光造形し、内部空洞に実施例1で用いたのと同じホットメルト接着剤Aを充填して実体モデルを作製し、術前手術シミュレーションを行ったところ、十分に手術可能な結果が得られた。
本例は15年前に行われた同側の人工股関節置換術の設置位置が悪く外反膝となった例であり、本来なら股関節の再置換を行った後に膝関節置換を施行すべき例であるが、患者の全身状態の問題もあり膝関節置換のみで下肢長軸のアライメントを整える必要のあった難治例である。このような例の術前シミュレーションにも光造形実体モデルは有用であった。
本発明は、患者の手術のシミュレーション用実体モデルとして、手術前の患部検査及び手術の予行を行うのに好適である。
本発明の人体患部実体モデルの例の断面図。 本発明の人体患部実体モデルの製造手順を示す説明図。
符号の説明
1 外殻部分
2 心材部分
3 心材注入口
4 製造用容器
5 光硬化性樹脂
6,6´光硬化性樹脂硬化体
7 支持台

Claims (13)

  1. 患者本人のMRI又はCTスキャンで得た断層データに基づく光造形法により形成された光硬化性樹脂硬化体からなる外殻部分と、その内部空洞部分に充填された流動化可能な固体からなる心材部分とを有することを特徴とする人体患部実体モデル。
  2. 外殻部分の厚さが1〜20mmである請求項1記載の人体患部実体モデル。
  3. 光硬化性樹脂硬化体がウレタンアクリレート系樹脂硬化体である請求項1又は2記載の人体患部実体モデル。
  4. 光硬化性樹脂硬化体がエポキシ系樹脂硬化体である請求項1又は2記載の人体患部実体モデル。
  5. 流動化可能な固体が熱可塑性樹脂の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の人体患部実体モデル。

  6. 流動化可能な固体が熱硬化性樹脂の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の人体患部実体モデル。
  7. 流動化可能な固体がホットメルト系接着剤の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の人体患部実体モデル。
  8. 流動化可能な固体が固体状界面活性剤の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の人体患部実体モデル。
  9. 流動化可能な固体が石油ワックス類の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の人体患部実体モデル。
  10. 心材部分が多孔質である請求項1又は2記載の人体患部実体モデル。
  11. 心材部分が複合材料である請求項1又は2記載の人体患部実体モデル。
  12. 心材部分が着色している請求項1、2、10又は11記載の人体患部実体モデル。
  13. 患部をMRI又はCTスキャンして、患部全体にわたる多数の二次元断層画像データを得、次いでこの画像データに基づき、液体光硬化性樹脂中、各二次元断層画像の輪郭部に相当する帯域のみに活性線を照射して各断層画像の輪郭部形状に合致する硬化層を形成し、得られた各硬化層を順次積層して、三次元光造形して外殻部分を作成し、次いでこの外郭部分内部に形成された空洞部分に流動化した固体物質を注入充填したのち、これを固体化し、心材部分を形成させることを特徴とする人体患部実体モデルの製造方法。
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