JP2006077283A - 樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板は、Siを0.1〜0.5質量%、Feを0.2〜0.7質量%、Mnを0.5〜1.5質量%、Mgを0.5〜2.0質量%、およびCuを0.1〜0.4質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板であって、アルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向での算術平均粗さRaを0.30〜0.55μm、アルミニウム合金板の圧延方向に平行な方向でのろ波中心線うねりWCAを0.2〜0.8μm、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度を70個/mm2以下、アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚を25nm以下とした。
【選択図】 なし
Description
そして、このようなアルミニウム合金板に絞り加工やしごき加工(以下、「DI(Drawing and Ironing)加工」という)等を施して形成された包装容器用アルミニウム缶のニーズが増大しており、種々の形状を有するアルミニウム缶が研究、開発されている。
(1)従来の塗膜には、環境ホルモン(外因性内分泌撹乱物質)の疑いのあるビスフェノールA等が含まれるため、これが充填物中に溶け出す虞がある。
(2)DI加工時には、成形時の潤滑性を高めるためプレス油(潤滑油)が使われるが、これを取り除くために脱脂設備や排水処理設備等が必要となり、これらを維持管理するためには莫大な費用を要する。
また、成形時に使用する潤滑油は熱処理により揮発させるため、脱脂設備や排水処理設備が不要となるので、維持管理のための費用も不要となる。
このような状況下では、アルミニウム合金板が引き延ばされると同時に樹脂フィルムも引き延ばされて剥離し易くなるので、アルミニウム合金板と樹脂フィルムの密着性を向上させることは非常に重要な課題であるといえる。
また、本発明者らは、かかるアルミニウム合金板の製造方法において、熱間圧延を開始するときの温度条件、および最終冷間圧延で用いる圧延用ワークロール胴部表面のロール軸方向での算術平均粗さRaを特定の範囲に規制すると好適に樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明によれば、樹脂フィルムの密着性に優れた表面形態を有する樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板を好適に製造することができる。
本発明者らは、樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板として樹脂フィルムの剥離の難易およびERVに注目し、これらとアルミニウム合金板の特性や成分について種々実験研究した。
その結果、アルミニウム合金板の組成を、Si:0.1乃至0.5質量%、Fe:0.2乃至0.7質量%、Mn:0.5乃至1.5質量%、Mg:0.5乃至2.0質量%、およびCu:0.1乃至0.4質量%、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金となるよう規制し、かかるアルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向での算術平均粗さRaを0.30乃至0.55μm、アルミニウム合金板の圧延方向に平行な方向でのろ波中心線うねりWCAを0.2乃至0.8μm、最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度を70個/mm2以下、アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚を25nm以下に規制することで、樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板として必要な強度(座屈強度)や成形性(しごき成形性)を有し、かつ、樹脂フィルムを留める高いアンカー効果を得ることができた。
以下に、樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の各種成分の含有量を限定した理由および板材としての性状を特定した理由について説明する。
Siは、均質化熱処理においてAl−Mn−Fe系の金属間化合物と結び付き、高硬度なAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成する。Siの含有量が0.1質量%未満であると、樹脂フィルムとの密着性向上に必要である、最大長が10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の形成が充分ではなく、樹脂フィルムとの密着性が不足する。一方、Siの含有量が0.5質量%を超えると、材料強度或いは再結晶挙動に影響を及ぼし、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の個数密度が多くなりすぎ、また、成形性も悪化する。したがって、本発明におけるSiの含有量は0.1乃至0.5質量%とする。
Feは、Mnと同じくAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成する。Feの含有量が0.2質量%未満であると、樹脂フィルムとの密着性向上に必要である、最大長が10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の形成が充分ではなく、樹脂フィルムとの密着性が不足する。一方、Feの含有量が0.7質量%を超えると、最大長が20μmを超えるような巨大なAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物が多数生成し、成形性を悪化させる。したがって、本発明におけるFeの含有量は0.2乃至0.7質量%とする。
Mnは、材料強度に寄与すると共に、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を形成し、樹脂フィルムとの密着性向上に寄与する元素である。Mnの含有量が0.5質量%未満であると最大長が10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の形成が充分ではなく、樹脂フィルムとの密着性が不足するとともに強度も不足する。一方、Mnの含有量が1.5質量%を超えると強度が高まり、成形性が悪化する。したがって、本発明におけるMnの含有量は0.5乃至1.5質量%とする。
Mgは、前記のCuと同じく材料強度に寄与する元素である。Mgの含有量が0.5質量%未満であると、必要とする強度が得られ難い。一方、Mgの含有量が2.0質量%を超えると加工硬化が大きくなり、成形性が低下する。したがって、本発明におけるMgの含有量は0.5乃至2.0質量%とする。
Cuは、材料強度に寄与する元素である。また、均質化熱処理後によって、Cuはアルミニウム合金中に固溶した状態となる。このため、樹脂フィルムをラミネートした後のリメルト処理工程で析出硬化性が付与される。この場合、Cuの含有量が0.1質量%未満であると充分な材料強度を得ることができない。一方、Cuの含有量が0.4質量%を超えると強度が高くなりすぎ、成形性が低下する。したがって、本発明におけるCuの含有量は0.1乃至0.4質量%とする。
本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板においては、不可避的不純物として例えば、Cr:0.1質量%以下、Zn:0.5質量%以下、Ti:0.1質量%以下、Zr:0.1質量%以下、B:0.1質量%以下に制限してこれらを含有することは、本発明の効果を妨げるものではないので、このような不可避的不純物の含有は許容される。
通常の圧延では、圧延方向に平行な方向にアルミニウム合金板の表面に圧延目が形成される。このため、本発明では、この圧延目に直角な方向での表面粗さRaを規定している。
本発明においては、アルミニウム合金板の表面における圧延方向に直角な方向に測定した算術平均粗さRaが0.30μm未満であると、アルミニウム合金板の表面に形成された微小な凹凸に樹脂フィルムが入り込んで固定する効果、いわゆるアンカー効果が低く、高しごき率下において樹脂フィルムの密着性を確保できない。
一方、算術平均粗さRaが0.55μmを超えると、ラミネート時にアルミニウム合金板と樹脂フィルムの間に気泡が生じ易くなる。このようにして生じた気泡は、リメルト処理の熱によって膨張し、アルミニウム合金板と樹脂フィルムにおける密着領域(接触面積)が減少してしまい、樹脂フィルムの密着性が大幅に低下することとなる。
したがって、本発明におけるアルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向に測定した算術平均粗さRaは0.30乃至0.55μmとする。
圧延方向に平行な方向でのろ波中心線うねりWCAは、前記したアルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向での算術平均粗さRaと比較して、より長波長のうねり成分である。このため、アルミニウム合金板表面上の凹凸による樹脂フィルムを固定するアンカー効果は、前記したアルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向での算術平均粗さRaより高いものとなる。
本発明においては、アルミニウム合金板の表面における圧延方向に平行な方向でのろ波中心線うねりWCAが0.2μm未満であると、アルミニウム合金板の表面凹凸が小さくなるので、かかるアンカー効果を得ることができない。
一方、ろ波中心線うねりWCAが0.8μmを超えた状態では、前記と同様に、ラミネート時にアルミニウム合金板と樹脂フィルムの間に気泡が生じ易くなるので、樹脂フィルムの密着性が低下する。
したがって、本発明におけるアルミニウム合金板の圧延方向に平行な方向に測定したろ波中心線うねりWCAは0.2乃至0.8μmとする。
このように、アルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向でのアンカー効果と圧延方向に平行な方向でのアンカー効果を適切に制御することによって、部分的な樹脂フィルムの膨れの発生防止や、高しごき率下における樹脂フィルムの剥離を防止することができる。したがって、前記算術平均粗さRaおよびろ波中心線うねりWCAを同時に満足する必要がある。
樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板に含まれるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物は、硬度が非常に高く、ラミネートされた樹脂フィルムを強固に固定する役割を担う。
この場合、最大長が10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の個数密度が70個/mm2を超えると、DI加工後、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物周辺で樹脂フィルムとアルミニウム合金板の間に微小間隙が多数形成され、樹脂フィルムの密着性が低下する。
したがって、本発明における最大長10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の個数密度は70個/mm2以下とする。
なお、均質化熱処理を行う際に行う鋳塊の面削量を多くすると、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の大きさや単位面積当たりの個数密度を減らすことができるので、他の製造条件(コスト等)を勘案した上で適宜に面削量を設定するとよい。
本発明においては、アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜は、主にAl2O3で構成される。
この場合、酸化皮膜の平均膜厚が25nmを超えると、例えば、耐食性皮膜として一般的なリン酸クロメート皮膜を形成させた後にも、アルミニウム合金板とリン酸クロメート皮膜との間に脆い酸化皮膜が残存することとなり、高しごき率で成形した場合において、樹脂フィルムが剥離し易くなる。
したがって、本発明におけるアルミニウム合金板表面に形成された酸化皮膜の平均膜厚は25nm以下とする。
なお、後記するように酸化皮膜の膜厚は、熱間圧延の開始温度を高くすることで厚くすることができ、熱間圧延の開始温度を低くすることで薄くすることができる。
また、本発明者らは、DI加工によっても樹脂フィルムが剥離しない樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の製造方法における製造条件に着目して種々実験研究を行った。
その結果、前記所定の組成、すなわち、Siを0.1乃至0.5質量%、Feを0.2乃至0.7質量%、Mnを0.5乃至1.5質量%、Mgを0.5乃至2.0質量%、およびCuを0.1乃至0.4質量%含有するよう規制し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金を溶解・鋳造して鋳塊を作製した後に、この鋳塊を均質化熱処理し、開始温度条件を450乃至550℃とする熱間圧延を行う。そして、その後の冷間圧延における最終冷間圧延を、ロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRaが0.4乃至0.8μmである圧延用ワークロールを用いて行うことで、本発明が所望するところの樹脂被覆包装容器用のアルミニウム合金板を製造することができることを見出した。
以下、本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の製造方法において、熱間圧延の開始温度および圧延用ワークロール胴部表面のロール軸方向での算術平均粗さRaを規制した理由について説明する。
熱間圧延の開始温度を調節することで樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の表面に形成する酸化皮膜の膜厚の調節を行う。
熱間圧延の開始温度が450℃未満であると、圧延荷重が過大となり、樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板を製作することが困難となる。
一方、熱間圧延の開始温度が550℃を超えると、形成される酸化皮膜の成長が大きくなりすぎる。
したがって、本発明における熱間圧延の開始温度は450乃至550℃とする。
このワークロール胴部表面の算術平均粗さRaは、圧延されるアルミニウム合金板の算術平均粗さRaおよびろ波中心線うねりWCAに大きな影響を与えるものである。本発明者らが行った実験の結果、この圧延用ワークロールのロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRaを0.4乃至0.8μmに規制することで圧延されたアルミニウム合金板の算術平均粗さRaおよびろ波中心線うねりWCAが本発明で規制した範囲に制御できることが分かった。
最終冷間圧延における圧延用ワークロールのロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRaが0.4μm未満の場合、得られたアルミニウム合金板の表面は鏡面に近い状態となってしまうので、本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板が所望する算術平均粗さRa、および、ろ波中心線うねりWCAを得ることができない。
一方、圧延用ワークロールのロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRaが0.8μmを超えると、アルミニウム合金板の表面が粗面化するので、ラミネート時にアルミニウム合金板と樹脂フィルムの間に気泡が生じ易くなり、結果として、樹脂フィルムの密着性を低下させ、本発明で所望するところの樹脂フィルムの密着性を確保できなくなる。また、本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板が所望する算術平均粗さRa、および、ろ波中心線うねりWCAを得ることができない。
したがって、最終冷間圧延における圧延ロールの算術平均粗さRaは0.4乃至0.8μmとする。
以下、本発明に係る樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の発明例を、本発明の必要条件を満たさない比較例と対比させて具体的に説明する。
まず、表1に示すような組成からなるアルミニウム合金の鋳塊を用いて同一の製造条件、すなわち、鋳造処理、均質化熱処理、および熱間圧延処理(開始温度:540℃)の順で各処理を行った後、冷間圧延処理(最終冷間圧延)を行い、0.32mm(圧延率85%)の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板を得た。なお、この冷間圧延処理においては、鋳鍛鋼製圧延用ワークロール(ロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRa:0.54μm)を使用して、本発明の必要条件を満たす発明例No.1〜6の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板と、本発明の必要条件を満たさない比較例No.1〜10の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板をそれぞれ製造した。
なお、表1中の下線は本発明で規制する数値範囲を満たしていないことを示す。
Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物のサイズおよび単位面積当たりの個数密度の測定は、次の手順で行った。
(1)発明例No.1〜6および比較例No.1〜10の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の表層を、機械研磨により5μm除去して鏡面とした。
(2)樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の表面を走査型電子顕微鏡(日本電子製、JSM−T330)の成分画像にて、倍率500倍で観察し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物を抽出し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の分布を表すイメージマップを作成した。
(3)これに画像解析処理(高速画像処理装置、東芝製、TOSPIX−II)を施した組織写真を用いて、前記画像を20視野測定し、Al−Mn−Fe−Si系金属間化合物の最大部の長さ(最大長)および単位面積当たりの数を統計的にカウントし、最大長が10μm以上のAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の個数密度を求めた。
酸化皮膜の平均膜厚の測定は、前記各アルミニウム合金板に対して、オージェ電子分析装置(VG SCIENTIFIC社製、型式310D)を用いて、アルミニウム合金板の表面から深さ方向の酸素濃度を測定し、相対的な酸素濃度が20%になる深さを測定し、その深さを酸化皮膜の厚さとみなした。これを、各アルミニウム合金板に対して場所を変えて5箇所で行い、平均したものを酸化皮膜の平均膜厚とした。
表面粗さの測定は、前記各アルミニウム合金板に対して、表面粗さ測定機(小坂研究所製、サーフコーダSE−30D)を用いて、圧延方向に直角な方向に走査し、算術平均粗さRa(JIS B 0601−1994)を求めることで行った。
なお、算術平均粗さRaの測定は、触針径=2μm、規準長さ=8.00mm、走査速度=0.5mm/秒、カットオフ値λc=0.8mmの条件で行った。
ろ波中心線うねり(JIS B 0610−1987)の測定は、前記各アルミニウム合金板に対して、表面粗さ測定機(小坂研究所製、サーフコーダSE−30D)を用いて、圧延方向に平行な方向に走査することで行った。
なお、ろ波中心線うねりWCAの測定は、触針径=2μm、規準長さ=8.00mm、走査速度=0.5mm/秒、低域カットオフ値fh=0.8mm、高域カットオフ値fl=8mmの条件で行った。
このようにして求めた各特性値の結果を表2に示す。なお、表2中の下線は本発明で規制する数値範囲を満たしていないことを示す。
すなわち、比較例No.1および比較例No.2はSiの含有量に関して、それぞれ本発明で規定する数値範囲の下限値または上限値から外れているものである。特に、比較例No.2は最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度も本発明で規制する数値範囲の上限値から外れているものである。
また、比較例No.9および比較例No.10は、Cuの含有量に関して、それぞれ本発明で規定する数値範囲の下限値または上限値から外れているものである。
そして、この樹脂フィルムを被覆したアルミニウム合金板を用いて、以下の方法によりDI缶21(図2参照)を作製した。
(1)カップ成形加工を施すことでブランク径φ140mm、カップ径φ90mmの缶体を作製した。
(2)次に、前記缶体に再絞り加工を施した。
(3)更に、しごき成形加工として前記缶体に対して3回しごきを施し、しごき率65%で薄肉部厚さ105μm、胴径D3がφ66mm、高さHが123mmのDI缶21を作製した。
前記各樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板から成形されたDI缶の胴体部について、缶体の内外表面を目視観察し、樹脂フィルムの密着性を評価した。
樹脂フィルムの剥離や部分的な膨れも見られないものを、問題なしと評価し(「○」)、または、完全にアルミニウム合金板から樹脂フィルムが剥離したものを問題ありと評価した(「×」)。
ERV(Enamel Rate Value)は、各DI缶内に、1%食塩水と0.02%界面活性剤からなる溶液を満たした後、溶液と缶の外表面の間に6.2Voltの直流電圧を4秒間印加したときの電流値を電流計により測定し、20缶の平均値を求めた。
ERVが10mA未満であれば、樹脂フィルムの微小な剥離(ピンホール)はないものと考えられることから、10mA未満を良好と評価し(「○」)、また、10mA以上を不良と評価した(「×」)。
しごき成形性は、前記したDI缶を連続成形で10000缶製缶したときに破断が発生した個数により評価を行った。破断した個数が0〜3個であるものを良好と評価し(「○」)、4個以上発生したものを不良と評価した(「×」)。
座屈強度は、DI缶の軸方向に圧縮荷重を負荷し、缶胴部が座屈したときの荷重を測定してその平均値を求めた。座屈強度が1.5kN以上であるものを良好と評価し(「○」)、1.5kN未満であるものを好ましくないと評価した(「×」)。
これらの評価結果を表2に示す。なお、表2中の下線は、本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板として好ましくない結果であることを示す。
また、ERVについても、比較例No.1〜6の電流値が10mA以上となり、不良(「×」)という結果となった。
そして、しごき成形性については、比較例No.2,4,6,8,10において、不良(「×」)という結果を得た。
さらに、座屈強度については、比較例No.5,7,9において、好ましくない評価となった(「×」)。
次に、本発明の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板を製造するのに好適な条件についての検討を行った。
まず、表4に示すように、本発明で規定する組成を有する発明例No.1および比較例No.11〜17のアルミニウム合金の鋳塊を用いて、鋳造処理、均質化熱処理、熱間圧延処理の順で処理を行った後、冷間圧延処理を行い、0.32mm(圧延率85%)の板厚の樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板を製造した。
ここで、樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の製造条件として、熱間圧延を開始するときの温度条件(表4において、「熱間圧延の開始温度」と表記する)、および冷間圧延処理の最終冷間圧延に用いる鋳鍛鋼製圧延用ワークロールのロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRa(表4において、「圧延用ワークロールの算術平均粗さRa」と表記する)は、表4に示すように調整した。なお、表4には、本発明で規制する数値範囲を満たす発明例No.1も示している。また、表4中の下線は本発明で規制する数値範囲を満たさないものを示す。
また、比較例No.11,12,15,16,17は、樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の算術平均粗さRaが本発明で規制する数値範囲の上限値または下限値から外れているものである。特に、比較例No.15,16,17はろ波中心線うねりWCAも本発明で規制する数値範囲の上限値または下限値から外れている。
12 胴体部
13 ネック部
14 開口部
15 ネジ部
21 DI缶
22 胴体部
23 ネック部
24 開口部
Claims (2)
- Siを0.1乃至0.5質量%、Feを0.2乃至0.7質量%、Mnを0.5乃至1.5質量%、Mgを0.5乃至2.0質量%、およびCuを0.1乃至0.4質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板であって、
前記アルミニウム合金板の圧延方向に直角な方向での算術平均粗さRaを0.30乃至0.55μmの範囲とし、
前記アルミニウム合金板の圧延方向に平行な方向でのろ波中心線うねりWCAを0.2乃至0.8μmの範囲とし、
最大長が10μm以上であるAl−Mn−Fe−Si系金属間化合物の単位面積当たりの個数密度を70個/mm2以下とし、かつ、
前記アルミニウム合金板の表面に形成される酸化皮膜の平均膜厚を25nm以下としたことを特徴とする樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板。 - Siを0.1乃至0.5質量%、Feを0.2乃至0.7質量%、Mnを0.5乃至1.5質量%、Mgを0.5乃至2.0質量%、およびCuを0.1乃至0.4質量%含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金を溶解・鋳造して鋳塊を作製する第一工程、第一工程後に均質化熱処理する第二工程、第二工程後に熱間圧延する第三工程、及び第三工程後に冷間圧延する第四工程、を順に行うことで樹脂被覆包装容器用のアルミニウム合金板を製造する方法であって、
前記第三工程の熱間圧延の開始温度を450乃至550℃の温度条件下で行い、かつ、
前記第四工程の冷間圧延における最終冷間圧延を、ロール軸方向におけるワークロール胴部表面の算術平均粗さRaが0.4乃至0.8μmである圧延用ワークロールを用いて行うことを特徴とする樹脂被覆包装容器用アルミニウム合金板の製造方法。
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