JP2006069399A - 航空機用ラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】航空機用ラジアルタイヤを軽量化すると共に耐カット耐久性を向上する。
【解決手段】航空機用ラジアルタイヤ10において、内部にタイヤ赤道面に対して実質的に直行する多数本のコードが埋設された少なくとも1枚のカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側にベルト層20を備え、前記ベルト層20はほぼ周方向にスパイラル巻きで、巻き始めから巻き終わりまで連続して巻かれる。ベルト層20はセンター部の厚さG0からベルト端に向かって厚さを漸減させ、且ベルト端近傍に増大させた厚さgを備えた補強部分を有するように構成する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、航空機用ラジアルタイヤに関する。
航空機用タイヤが滑走路を走行中に異物を踏んでバースト或いはピールオフに至り、そのタイヤの破片が機体にダメージを与えると極めて危険であり大きな問題となる。そのため、異物に対する耐カット(耐久)性は、航空機用ラジアルタイヤの重要な要求性能の一つであり、航空機用タイヤにおいて耐カット(耐久)性を向上させることは非常に重要な技術的課題となっている。
また、航空機の燃料排出量低減のため、機体を極限まで軽量化することが近年の機体メーカーの命題になっており、それに伴ってタイヤメーカーに対するタイヤ質量逓減要求も厳しくなっている。
このような状況のなかで、従来から航空機タイヤの軽量化を図りながらベルトの総強力を向上させるための開発がなされており、例えば、ベルトプライ端においてジグザグに折れ曲がりながら周方向に延びるコードを埋設したベルトプライを用いたものが知られている(特許文献1参照)。
更に、このようなベルトプライを用いるとタイヤにスリップ角が付与されたとき、タイヤ回転軸方向に発生するサイドフォースが大スリップ角領域で低下するという問題があるため、この問題を解決するため、タイヤの接地端近傍でのタイヤ外面形状及びタイヤの厚み分布勾配を規定してこれらの問題の解決を図ったものも知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、これらの文献に記載されたものでは、タイヤの軽量化についてある程度の改善は図れるものの、これら公知の技術では同時にタイヤの耐カット耐久の向上まで解決することはできない。
ところで、耐カット(耐久)性については、設計上、タイヤの径成長がタイヤの耐カット性向上に大きい影響を与えること、つまり径成長を抑制できれば耐カット(耐久)性が向上し、航空機タイヤの安全性を向上させることができることが知られている。
他方、現在のタイヤの軽量化についての要求は、従来技術で開発したタイヤでの対応ではもはや困難な段階にきており、これに応えるための新技術として、材料面では、航空機用タイヤでこれまで主流であったナイロン(登録商標)コードを用いずに、より高強力なアラミド(芳香族ポリアミド繊維)(ケブラー:登録商標)コードを用いて、径成長を抑制しつつベルト枚数を少なくして軽量化を図ったタイヤが出てきている。
また、構造面では、径成長を抑制し、かつ軽量化を実現できる新技術として、コンベック構造を用いることが有効であることが分かってきた。この構造は、ベルトのゲージ分布が、センター部分からベルト端部に向かって少しずつ小さくなるようにした構造であるが、この構造は、径成長を抑制するのに十分なベルト枚数を持ち、かつショルダー部の厚みを減らすことで質量を軽量化することができるという利点がある。
しかしながら、このコンベックス構造は、ベルトのゲージ分布が一定な通常の構造と比較して、高速走行時のスタンディングウェーブ発生速度が下がり、ベルト端部の厚みが小さいため高速耐久性が低下するという問題があることが分かった。
特開昭48−96259号公報 特許第3342912号公報
そこで、本発明は前記コンベックス構造に伴う上記問題を解決すべくなされたものであって、その目的は、航空機用ラジアルタイヤを軽量化しつつ高速走行時におけるスタンディングウェーブの発生速度を上げるか或いはそもそもスタンディングウェーブが発生しないようにし、かつ高速耐久性を向上させることである。
請求項1の発明は、内部にタイヤ赤道面に対して実質的に直行する多数本のコードが埋設された少なくとも1枚のカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側にベルト層を備えた航空機用タイヤにおいて、前記ベルト層はほぼ周方向にスパイラル巻きで、巻き始めから巻き終わりまで連続して巻かれ、センター部からベルト端に向かって厚さを漸減させ、且ベルト端近傍で厚さを増加させた補強部分を有することを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
前記ベルト層の赤道面での厚さをG0、ベルト幅の3/4の幅位置での厚さをG1、補強部分の最大厚さをgとしたとき、0.2≦G1/G0≦0.8、g≧1.5G1であることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、前記ベルト端近傍の厚さを増大させた補強部分のベルトコード本数が前記厚さを増大させない場合の140%以上であることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層が引張破断強力が6.3cN/dtex以上の高弾性有機繊維コードで構成されていることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項5の発明は、請求項4に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
前記ベルト層のコードの打ち込み本数が30〜40本/50mmであることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層の半径方向外側に2〜5mmの厚さの離間ゴムを挟んで少なくとも1枚の保護層を配置したことを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項7の発明は、請求項6に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
前記保護層が引張破断強力が6.3cN/dtex以上の高弾性有機繊維波形撚りコードの配列により構成されていることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、前記保護層がリボンのスパイラル巻きで形成されていることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤである。
(作用)
コンベックス構造のラジアルタイヤのショルダーベルト端部の補強を行うことで、補強部に十分な強度を持たせることができ径成長を抑制し、スタンディングウェーブ発生速度を十分に高くした。
本発明によれば、コンベックス構造の航空機用ラジアルタイヤの主ベルトに高弾性有機繊維コードを用い、かつベルト端部に補強部を設けかつベルト補強部のコード量を140%以上に規定したため、従来品に対しタイヤ質量を軽量化し、高速耐久性能を低下させずに径成長を抑制することができる。とくに、保護層を設けたことにより径成長を一層抑制することができ耐カット性能を向上させたことにより、走行中に異物を踏んでバースト或いはピールオフに至る危険を大幅に減少させることができる。
本発明を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の1実施形態に係るコンベックス構造のラジアルタイヤを説明するための断面図である。
図示のラジアルタイヤ10は航空機に装着して使用されるものであって、一対のビードコア14が埋設されたビード部27と、このビード部27から半径方向外側に配置されたサイドウォール部25、両サイドウォール部25間に延在するトレッド部26からなり、両ビードコア14間には内部にタイヤ赤道面に対して実質上直行する少なくも1枚のカーカス層16が延在しており、このカーカス層16の半径方向上方には、補強ベルト層20が配置されている。
補強ベルト層20は、主ベルト層22と保護層24とから成っており、ここで、主ベルト層22のベルトプライ22aは、1本以上の高弾性有機繊維のコード、例えばアラミドコード(引張破断強力が6.3cN/dtex以上、伸張方向に0.3cN/dtex荷重時の伸び率が0.2〜2.0%、伸張方向に2.1cN/dtex荷重時の伸び率が1.5〜7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2〜9.3%)をゴム被覆して構成した線状体を、主ベルト層の単位巾当たりのコードの打ち込みを30〜40本/50mmで、スパイラル巻きでほぼ0゜、即ちタイヤ回転方向に巻き始めから巻き終わりまで連続して複数回密に巻き付ける。その際、主ベルト層22のゲージ分布をベルトのセンター部(位置P0)から端部に向けて少しずつ小さくなるようにする。
図2は、本発明に係る航空機用ラジアルタイヤ10の主ベルト層22の断面形状を示した図であって、既に述べたように、この主ベルト層22のゲージ分布がベルトのセンター部P0から端部に向けて少しずつ小さくなる様子を示している。また、本実施形態では、図示のように、ベルトの中心P0を基準に最大ベルト幅の3/4幅の位置P2より外側の部分に、ベルトゲージが前記P2位置におけるゲージG1よりも大きい部分つまり所定幅Wの補強部Sが設けられている。
ここで、センター部つまり赤道面でのベルトゲージ(ベルト層の厚み)をG0として、最大ベルト幅の3/4の幅位置P2でのベルトコードの厚みをG1としたときに、0.2≦G1/G0≦0.8であることが望ましい。G1/G0が0.2より小さいとショルダー部での強度が不足し、かつ0.8よりも大きいとタイヤ重量が増すためである。
ベルト端部の補強部Sのゲージg(航空機用ラジアルタイヤサイズ:1400×530R23で最大ベルト幅位置からセンター部へ10mmの位置でのベルトゲージ)は、g>1.5G1であることが好ましい。補強部の厚みがこれよりも小さいと十分な補強ができないからである。また、この補強部Sにおけるアラミドコードの本数分布は、補強幅Wの範囲において通常の本数に対して140%以上であることが好ましい。140%以上でないと高速耐久性が十分に得られないからである(表1参照)。
次に、保護層24について説明する。
保護層24は、主ベルト層の上にゲージ2〜5mmの離間ゴムを挟んで配置された少なくとも一枚の保護層で形成されている。この保護層24は、前記主ベルト層のベルトプライ22aと少なくとも同等以上の引張破断強力つまり6.3cN/dtex以上の引張破断強力の高弾性有機繊維コード、特にアラミドコードが好ましく、ウェービー構造のリボン状帯をバンド巻きでなく、スパイラル巻きにして構成している。
本発明の実施品
航空機用ラジアルタイヤサイズとして1400X530R23の規格のものを用いて比較実験を行った。
実験は、ベルト端部のゲージについては、最大ベルト幅位置からセンター部へ10mmの位置でベルトゲージを測定した。
補強部コード層は、そのコードを増加させている幅の範囲において、補強した本数と補強部のない通常の本数との比(%)を採った。
高速耐久試験は、正規内圧、荷重条件で、速度380km/hまで約1分で加速させる試験を数十回繰り返す試験とした。
S/W(スタンディグウェーブ)発生速度は、高速耐久試験時にスタンディングウェーブが発生したときの速度を指数化したものを使用した。
本発明の実施品としては、上述のように主ベルトコードにアラミドコードを使用してスパイラル巻きしたコンベックス構造とし、主ベルトの幅を390mm、前記ゲージ比G1/G0を0.25、ベルト端部ゲージg(mm)を6mm、補強コード量(%)を140%とした。
これに対し、比較例(1)、(2)、(3)を用意した。
比較例の主ベルトの種別、ベルト成型方法、ベルト構造、主ベルト幅、ゲージ比G1/G0は実施品と共通とし、ベルト端部ゲージ、及び補強部コード量(%)のみ変えたものとした。即ち、比較例(1)及び(2)では、ベルト端部ゲージを実施品と同じ6mmとし、その補強部量(%)のみを変え、比較例(1)では130%、比較例(2)では115(%)とした。また、比較例(3)ではベルト端部ゲージgを3mmとし、補強部は設けないものとした。
その結果は、表1に示すとおり、径成長は1.5%でいずれも同じであるが、高速耐久試験完走回数をみると、実施品では50回全て完走したが、比較例(1)
では45回、比較例(2)では40回、比較例(3)では5回止まりであった。
また、S/W発生速度は実施品では指数で103であるのに対し、比較例(1)では93、比較例(2)では92、比較例(3)では82と大幅にダウンした。
タイヤ質量は、比数でみたとき実施品の90に対し、比較例(1)では89、比較例(2)では88、比較例(3)では87で、実施品の質量が一番大きいが、その差は僅かである。
次に、実施品と従来のタイヤとの比較では、従来例(1)では、主ベルトコードにアラミドコードを用い、従来例(2)ではナイロン(登録商標)コードを用いた。ベルト成型方法は、従来例(1)では実施品と同様にスパイラルとし、従来例(2)では、エンドレスに形成した。ベルト構造はいずれもコンベックスでない従来のものとした。従って、G1/G0はいずれも1.0であり、補強部は設けていない。また、ベルト端部ゲージg(mm)は従来例(1)では6mm、従来例(2)では10mmとした。
その結果、高速耐久試験ではそれぞれ50回完走し、S/W発生速度はそれぞれ102、100と実施品と大差のない結果が得られたが、径成長をみると、実施品の1.5%に対し、従来例(1)では3.5%、従来例(2)では7.0%
であり、耐カット性が大幅に向上していること、及びタイヤ質量でも、従来例(1)では96、従来例(2)では100であるから、実施品の90に対し、それぞれ6.7%、11.1%重いこと、つまり本実施品が軽量であることが分かる。
その結果をまとめて以下の表1に示す。
Figure 2006069399
表1に示すように、本発明の実施品は質量比で以上のように軽減できたことに加え、従来例と比較して径成長が大幅に抑制されており耐カット性が大幅に向上していること、及び他の性能も同等以上であることが判明した。
本発明の航空機用ラジアルタイヤの構造を説明するための断面図である。 図1のラジアルタイヤの特徴を説明するため主ベルトの概略的な断面形状を示した図である。
符号の説明
10・・・ラジアルタイヤ、14・・・ビードコア、16・・・カーカス層、20・・・補強ベルト層、22・・・主ベルト層、22a・・・ベルトプライ、24・・・保護層、25・・・サイドウォール部、26・・・トレッド部、27・・・ビード部。

Claims (8)

  1. 内部にタイヤ赤道面に対して実質的に直行する多数本のコードが埋設された少なくとも1枚のカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側にベルト層を備えた航空機用タイヤにおいて、
    前記ベルト層はほぼ周方向にスパイラル巻きで、巻き始めから巻き終わりまで連続して巻かれ、センター部からベルト端に向かって厚さを漸減させ、且ベルト端近傍で厚さを増加させた補強部分を有することを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  2. 請求項1に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト層の赤道面での厚さをG0、ベルト幅の3/4の幅位置での厚さをG1、補強部分の最大厚さをgとしたとき、0.2≦G1/G0≦0.8、g≧1.5G1であることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  3. 請求項1又は2に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト端近傍の厚さを増大させた補強部分のベルトコード本数が前記厚さを増大させない場合の140%以上であることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  4. 請求項1又は2に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト層の引張破断強力が6.3cN/dtex以上の高弾性有機繊維コードで構成されていることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  5. 請求項4に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト層のコードの打ち込み本数が30〜40本/50mmであることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記ベルト層の半径方向外側に2〜5mmの厚さの離間ゴムを挟んで少なくとも1枚の保護層を配置したことを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  7. 請求項6に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記保護層が引張破断強力が6.3cN/dtex以上の高弾性有機繊維波形撚りコードの配列により構成されていることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
  8. 請求項6又は7に記載された航空機用ラジアルタイヤにおいて、
    前記保護層がリボンのスパイラル巻きで形成されていることを特徴とする航空機用ラジアルタイヤ。
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