JP2006069156A - 印刷装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 機密保持キーを押し忘れたような場合には、機密保持モードに設定されないことにより、発熱部材が版胴外周面に巻装されたマスタから離間されたままで発熱駆動されないから、版胴上のマスタに形成された機密情報が漏洩してしまうという問題点を解決する。
【解決手段】 マスタ溶解装置60は、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触してこれを化学的に溶かすための有機溶剤を含浸可能な塗布ローラ61と、塗布ローラ61に有機溶剤を供給し含浸させる有機溶剤供給手段79と、塗布ローラ61を、当接位置離間位置との間で変位させる変位手段67と、所定の印刷終了後に、有機溶剤供給手段79を作動して塗布ローラ61に有機溶剤を含浸させた後、塗布ローラ61が当接位置を占めるように変位手段67を制御すると共に、版胴9が回転するようにメインモータ112を制御する制御手段68とを具備する。
【選択図】図2

Description

本発明は、孔版印刷装置等を含む印刷装置に関し、さらに詳しくは、主として版胴上の製版みのマスタの機密性を保持するための印刷装置に関する。
従来、多孔性の支持円筒体からなる版胴と熱可塑性樹脂フィルムに多孔性支持体を貼り合わせたラミネート構造のマスタとを用い、マスタの熱可塑性樹脂フィルム面を画像情報に応じてサーマルヘッド等の製版手段で加熱溶融穿孔製版した後で版胴に巻装し、版胴内部に設けられたインキ供給手段により版胴内周面に適量のインキを供給して、プレスローラあるいは圧胴等の押圧手段によって用紙を版胴外周面に押圧することで、版胴開孔部およびマスタ穿孔部から滲み出たインキを用紙に転移・転写させて印刷を行うデジタル式感熱孔版印刷装置が知られている。
版胴は、印刷ドラムとも呼ばれ、その支持円筒体の外周面にはインキ保持部材としてのメッシュスクリーンを単層または複数層巻着した構成のものが大半を占める。以下、この明細書および特許請求の範囲等では、その外周部に版胴を備えた印刷ドラムのことも、単に「版胴」と呼ぶこととする。
このように、孔版印刷装置では上述したように版としてマスタを用い、このマスタを画像情報に応じて製版して製版画像が形成された製版済みのマスタを作成し、これを版胴の外周面に巻き付けて所定枚数の印刷を行う。所定枚数の印刷が完了した後、版胴外周面上の乾燥を防止してインキの流動性を確保するため、使用済みのマスタは版胴の外周面上に巻き付けられたままとなる。
次に新しいマスタに製版を行って印刷を行う場合、例えば新しい原稿やパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)等のコンピュータからの画像情報に応じて上述したように製版・印刷を行う場合、先ず排版部が作動することにより、版胴上に巻装されている使用済みのマスタが剥離・搬送されてこれを排版ユニットの排版ボックス内に収納・廃棄される。その排版動作後に、またはこれと一部並行して製版部が作動することにより、新しいマスタが製版されてこれが版胴に巻装されるようになっている。
このように孔版印刷装置では、版胴上に巻き付けられた製版済みのマスタや排版ボックス内に廃棄された使用済みのマスタに形成されている製版画像を第三者が見たり確認したりすることが可能であり、場合によって直接視認できないようなときでも転写材としての用紙等に写し取って見たり確認したりすることも可能である。従って、版胴上に巻き付けられた製版済みのマスタおよび排版ボックス内に廃棄された使用済みのマスタに形成されている製版画像が機密性を要する場合にはその機密が漏洩してしまう虞がある。取り分け最近の孔版印刷装置では、用紙やマスタのジャム処理容易化のため、あるいはインキの色替えのために、ユニット化された版胴ユニットが孔版印刷装置本体に対して着脱自在に構成されているものが多くなってきていることから、上記機密の漏洩の機会も高くなってきている現状にあり、いわゆる機密保持モードや機密モードを設定して機密保持を図れる技術が提案されている(例えば、特許文献1ないし4参照)。
ちなみに、特開平9−142001号公報(特許文献3)では、版胴外周面に対して接離自在に支持された発熱部材と、この発熱部材を版胴外周面に対して接離させる発熱部材駆動手段と、機密保持モードが選択され、かつ、孔版印刷装置が印刷終了となった時に、版胴に巻装されているマスタに発熱部材を当接させるべく発熱部移動手段を駆動させると共に、版胴を回転駆動させる制御手段とを具備した孔版印刷装置が提案されている。そして、上記孔版印刷装置において機密保持モードが設定されると、版胴に巻装されたマスタが発熱部材で溶融・溶解されることで、その製版画像が判読不可となり機密保持を確実に行えることが開示されている。
特開2002−86882号公報(特許文献4)では、版胴の外周面に巻き付けられているマスタを剥がすマスタ剥がし機構と、版胴の外周面から剥がされたマスタが収納される収納ボックスと、収納ボックス内に収納されたマスタを過熱して収縮させるマスタ加熱機構とを有する排版装置および孔版印刷装置が開示されている。
特開平8−183238号公報 特開平9−71029号公報 特開平9−142001号公報 特開2002−86882号公報
しかしながら、特開平9−142001号公報記載の技術では、同公報の図18および図19に示されているように、例えば人為的なミスによって機密保持キー(85)を押し忘れたような場合には、機密保持モードに設定されないことにより、発熱部材(201)が版胴(7)外周面に巻装されたマスタ(34)から離間されたままで発熱駆動されないから、版胴(7)上のマスタ(34)に形成された機密情報が漏洩してしまうという問題点がある。
このように、人為的なミスによって機密保持キーを押し忘れた場合に、版胴上のマスタに形成された機密情報が漏洩してしまうという問題点は、特開平8−183238号公報、特開平9−71029号公報および特開2002−86882号公報記載の技術でも同様に存在する。
従って、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、孔版印刷装置を含む印刷装置において、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、たとえ機密保持モードキーや機密保持キーあるいは機密保持モードボタン(機密保持モード設定手段)を押し忘れた場合の印刷終了後でも、版胴上のマスタ(版)の機密情報を見たり転写したりすることができなくすることにより、マスタ上の機密情報の外部流出を防止できる印刷装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、上記第1の目的に加えてまたは独自の目的の下に、孔版印刷装置を含む印刷装置において、版胴上の製版済みのマスタまたは使用済みのマスタ(以下、単に「版胴上のマスタ」というときがある)を電気的に加熱溶融する発熱部材とは別の手段、すなわち版胴上のマスタに形成された少なくとも製版画像形成部におけるマスタの熱可塑性樹脂フィルムを含む樹脂フィルム部分を化学的に溶かす有機溶剤を用いた溶解手段によって、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、版胴上のマスタ(版)の機密情報を見たり転写したりすることができなくすることにより、マスタ上の機密情報の外部流出を防止できる印刷装置を提供することを第2の目的とする。
また、本発明は、上記第1の目的に加えてまたは独自の目的の下に、孔版印刷装置を含む印刷装置において、排版ボックス等に収容・廃棄された使用済みのマスタを電気的に加熱溶融するマスタ加熱機構のヒータ等とは別の手段、すなわち排版動作時に、版胴上の使用済みのマスタに形成された少なくとも製版画像形成部におけるマスタの熱可塑性樹脂フィルムを含む樹脂フィルム部分を化学的に溶かす有機溶剤を用いた溶解手段によって、排版ボックス等に収容・廃棄された使用済みのマスタ(版)の機密情報を見たり転写したりすることができなくすることにより、マスタ上の機密情報の外部流出を防止できる印刷装置を提供することを第3の目的とする。
上述した課題を解決すると共に上述した目的を達成するために、各請求項ごとの発明では、以下のような特徴ある手段・構成を採っている。
請求項1記載の発明は、製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴を具備した印刷装置において、印刷終了後に、上記版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする。
ここで、「版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段」における「版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に」とは、「版胴上の製版済みのマスタに形成された製版画像を読めなくする程度に、かつ、版胴上の製版済みのマスタに形成された製版画像の転写を行うことでその製版画像を読み取ることができなくする程度に」を意味する。すなわち、版胴上の製版済みのマスタまたは使用済みのマスタに形成された機密を保持すべき製版画像は、通常の視力を有する者がそれを視認することによって読み取ることができない程度に溶かされ壊されていれば、このレベルで機密を保持することはできるが、例えば製版画像形成部が溶かされ壊されていることで読み取ることができない程度であっても、製版画像形成部に用紙等のシート状記録媒体を押し付けることでその製版画像を読み取ることができる場合もあるからである(以下、同様)。
また、「製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段」における「少なくとも製版画像形成部」とは、熱可塑性樹脂フィルムを含む樹脂フィルムに製版画像が形成される面の領域(面積)の他に、少なくとも樹脂フィルムの厚みを含む部分を指し、場合によっては多孔性支持体の厚みの一部分(例えば接着層等)を含むことを意味する(以下、同様)。
請求項2記載の発明は、製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴を具備し、機密保持モードが設定可能な印刷装置において、上記機密保持モードが設定されている場合であって印刷終了後に、上記版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴を具備し、機密保持モードが設定可能な印刷装置において、上記機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段と、上記機密保持モード設定手段により上記機密保持モードが設定されたとき、上記版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段とを有することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴と、該版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版する排版動作を行う排版手段とを具備した印刷装置において、上記排版動作時に、上記版胴上の使用済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に、かつ、上記排版手段によって上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版することができる程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1ないし3の何れか一つに記載の印刷装置において、上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版する排版手段を有し、上記溶解手段は、上記排版手段によって上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版することができる程度に上記少なくとも製版画像形成部を溶かすことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一つに記載の印刷装置において、上記版胴は、上記製版済みのマスタが巻装されるインキ保持部材を有し、上記溶解手段は、上記インキ保持部材およびインキに影響を与えない有機溶剤を用いることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6の何れか一つに記載の印刷装置において、上記溶解手段は、上記少なくとも製版画像形成部に接触してこれを溶かすための有機溶剤を塗布する塗布ローラであることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項7記載の印刷装置において、上記塗布ローラは、回転する上記版胴に対して従動回転可能であり、上記塗布ローラの上記従動回転に対して制動力を付与することにより、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布部分に損傷を与える制動手段を有することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1ないし6の何れか一つに記載の印刷装置において、上記溶解手段は、上記少なくとも製版画像形成部に接触してこれを溶かすための有機溶剤を塗布する塗布ヘッドであることを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項7、8または9記載の印刷装置において、上記塗布ローラまたは上記塗布ヘッドの上記少なくとも製版画像形成部に接触する部位が、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布による溶解部分を破壊する程度の粗さを備えていることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項1ないし10の何れか一つに記載の印刷装置において、上記溶解手段を、上記少なくとも製版画像形成部に接触させる当接位置とこの当接位置から離間させる離間位置との間で変位させる変位手段を有することを特徴とする。
変位手段の具体例としては、後述する実施形態のように揺動部材としてのアーム、付勢手段としてのばねおよび駆動手段としてのプル式のソレノイドを具備する最も簡単な構成例に限らず、例えばソレノイドに代えたロータリソレノイドであってもよく、また揺動部材としてのアーム、カム、付勢手段としてのばね、および駆動手段としての電動モータを具備する構成例等であってもよく、公知の全ての変位手段を応用できる。
請求項12記載の発明は、請求項1ないし6の何れか一つに記載の印刷装置において、上記溶解手段は、上記版胴上の上記製版済みのマスタに形成された上記少なくとも製版画像形成部に有機溶剤を噴射する噴射手段であることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の印刷装置において、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布部分に損傷を与える損傷部材と、上記損傷部材を、上記少なくとも製版画像形成部に接触させる当接位置とこの当接位置から離間させる離間位置との間で変位させる変位手段とを有することを特徴とする。
請求項14記載の発明は、請求項13記載の印刷装置において、上記損傷部材は、回転する上記版胴に対して従動回転可能な損傷ローラであり、上記損傷ローラの上記従動回転に対して制動力を付与することにより、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与える制動手段を有することを特徴とする。
請求項15記載の発明は、請求項6ないし9の何れか一つ、12、13または14記載の印刷装置において、上記有機溶剤は、上記樹脂フィルムを溶解するジクロロエタンまたはブタノンを含むことを特徴とする。
請求項16記載の発明は、請求項3記載の印刷装置において、上記機密保持モード設定手段は、原稿の画像を読み取る原稿読取手段と、該原稿の特定領域に形成された読み取り可能な標識と、上記原稿読取手段からの上記標識の読み取りに係る信号に基づいて、上記機密保持モードを自動的に設定する制御手段とを有することを特徴とする。
製版済みの版を版胴上に残したまま放置される虞のある印刷装置としては、孔版印刷装置に限らず、例えばオフセット印刷機や直刷り印刷機にも、マスタに代えた版を用いる印刷装置として応用可能である。
従って、請求項1ないし4は、上位概念的には次のようにも表現可能である。
上位概念的に表現した請求項1記載の発明は、製版済みの版を巻装する版胴を具備した印刷装置において、印刷終了後に、上記版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像を読めなくする程度に上記製版済みの版の少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする印刷装置である。
ここで、「版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像を読めなくする程度に上記製版済みの版の少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段」における「版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像を読めなくする程度に」とは、「版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像を読めなくする程度に、かつ、版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像の転写を行うことでその製版画像を読み取ることができなくする程度に」を意味する。すなわち、版胴上の製版済みの版に形成された機密を保持すべき製版画像は、通常の視力を有する者がそれを視認することによって読み取ることができない程度に溶かされ壊されていれば、このレベルで機密を保持することはできるが、例えば製版画像形成部が溶かされ壊されていることで読み取ることができない程度であっても、製版画像形成部に用紙等のシート状記録媒体を押し付けることでその製版画像を読み取ることができる場合もあるからである(上位概念的に表現した請求項2ないし5でも同様)。
また、「製版済みの版の少なくとも製版画像形成部」とは、製版画像が形成される版の面の領域(面積)の他に、版の厚みを含む部分をも含むことを意味する(以下、同様)。
上位概念的に表現した請求項2記載の発明は、製版済みの版を巻装する版胴を具備し、機密保持モードが設定可能な印刷装置において、上記機密保持モードが設定されている場合であって印刷終了後に、上記版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像を読めなくする程度に上記製版済みの版の少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする印刷装置である。
上位概念的に表現した請求項3記載の発明は、製版済みの版を巻装する版胴を具備し、機密保持モードが設定可能な印刷装置において、上記機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段と、上記機密保持モード設定手段により上記機密保持モードが設定されたとき、上記版胴上の上記製版済みの版に形成された製版画像を読めなくする程度に上記製版済みの版の少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段とを有することを特徴とする印刷装置である。
上位概念的に表現した請求項4記載の発明は、製版済みの版を巻装する版胴と、該版胴上の使用済みの版を剥離・排版する排版動作を行う排版手段とを具備した印刷装置において、上記排版動作時に、上記版胴上の使用済みの版に形成された上記製版画像を読めなくする程度に、かつ、上記排版手段によって上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版することができる程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする印刷装置である。
そして、上位概念的に表現した請求項1ないし4の何れか一つに記載の印刷装置において、上記版は、製版画像が形成される樹脂フィルムを有するマスタであり、上記溶解手段は、上記樹脂フィルムに形成された製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かすことを特徴とする印刷装置である。
本発明によれば、上述したような従来技術の有する問題点を解決して新規な印刷装置を提供することができる。主な請求項ごとの効果を挙げれば次のとおりである。
本発明によれば、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、版胴上の製版済みのマスタの機密の要否に拘わらず、たとえユーザが機密保持モードに設定することを忘れた場合でも、排版ボックス内に収容・廃棄された使用済みのマスタは元より、版胴上に巻装された製版済みまたは使用済みのマスタの機密保持が確実に行える(請求項1)。
また、本発明によれば、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、排版ボックス内に収容・廃棄された使用済みのマスタは元より、版胴上に巻装された製版済みまたは使用済みのマスタの機密保持が確実に行える(請求項2、3)。
また、本発明によれば、排版ボックス内に収容・廃棄された使用済みのマスタの機密保持が確実に行えると共に、印刷終了後の適宜の時期に版胴上の製版済みのマスタを用いて追加印刷を行うこともできる(請求項4)。
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態および実施例を含む本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という)を説明する。実施形態や変形例等に亘り、同一の機能および形状等を有する部材や構成部品等、あるいは材料等の構成要素については、同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。図および説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がないものは適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、発明が解決しようとする課題欄に記載した従来の技術を含めその符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
(第1の実施形態)
まず、図1〜図5を参照して、本発明を適用した第1の実施形態に係る印刷装置の一例としての孔版印刷装置1の全体構成について説明する。同図において、符号8は、孔版印刷装置1の骨組みをなす装置本体を示す。装置本体8の上部にある、符号7で示す部分は画像読取部を、その下方の符号3で示す部分は製版部を、その左側に符号2で示す部分は印刷部を、その左側の符号5で示す部分は排版部を、製版部3の下方の符号4で示す部分は給紙部を、印刷部2の左方の符号6で示す部分は排紙部を、それぞれ示している。
印刷部2は、装置本体8のほぼ中央に配設されており、製版画像が形成された製版済みのマスタ21を外周面に巻装する版胴9と、版胴9上の製版済みのマスタ21に用紙Pを押し付ける押圧手段としてのプレスローラ10とを具備している。印刷部2は、回転駆動される版胴9上の製版済みのマスタ21に給紙部4から給送されてくる用紙Pをプレスローラ10で押し付けて印刷する機能・構成を有する。
版胴9は、インキ供給パイプを兼ねた図1に示す支軸11に回転自在に支持された図4に示す一対の端板9c、9dと、図3に拡大・誇張して示すように各端板の外周面に巻着された多孔性支持板9aと、この多孔性支持板9aの外周面に巻装されたメッシュスクリーン9bとから主に構成されている。
多孔性支持板9aは、例えばステンレススチール製の薄板をエッチング加工したもの、あるいはニッケル電鋳で形成された薄板のものが円筒状に形成されていて、インキ通過性の孔を多数穿設されている。多孔性支持板9aは、多孔性の支持円筒体あるいは単に版胴と呼ばれることもある。
メッシュスクリーン9bは、後述する本実施形態に特有のマスタ溶解装置60で使用される有機溶剤によって溶けたり膨潤したりあるいは腐食したりせずにその構成要素の素材や材料等(ここではメッシュスクリーン9bの材料を指す)の本来の機能を損なわせない性質(以下、「耐有機溶剤性」という)を有する、換言すれば悪影響を与えられない性質を有する、例えばステンレススチール等の金属製の細線で織り込まれたメッシュ番数♯100〜400程度のものから形成されている。メッシュスクリーン9bは、多孔性支持板9aの上記多数の孔から滲み出すインキを拡散、保持し、押圧によりインキを吐出するインキ保持部材としての機能を有しており、1層ないしは複数層(通常1〜3層程度)設けられる。
本実施形態で使用されるインキも、耐有機溶剤性を有する、例えばW/O型のエマルションインキを用いている。
版胴9は、例えば特開平9−142001号公報の図6に示され、段落「0012」、「0016」〜「0020」に記載されている版胴(7)の駆動機構と同様の駆動機構によって、図1中矢印方向(時計回り)に回転駆動される。図1において、符号112は、上記版胴(7)の駆動機構を構成しているモータ(12)に代えた版胴駆動手段としてのメインモータを示す。メインモータ112は、例えば制御用の正逆転可能なDCモータからなる。
また、版胴9およびメインモータ112の周りには、上記特開平9−142001号公報の図6および図9に示され、段落「0016」〜「0020」に記載されているエンコーダー(22)、パルス検出センサ(23)、ホームポジションセンサ(26)と同様の、版胴9の回転位置(回転角度)および回転速度(印刷速度)を検出し制御する構成要素が配設されている。本実施形態では、説明の簡明化を図るため、上記各構成要素の符号に数値「100」を加えた符号をもって、その主なものを図2に簡略的に示した。すなわち、図2において、符号123は、メインモータ112の出力軸に取り付け固定された光学式のロータリエンコーダ(図示せず)の外周部を挟む態様で装置本体8に固設されたパルス検出センサを、符号126は、版胴9のホームポジションを検出するためのホームポジションセンサを、それぞれ示す。
版胴9の紙面奥側の端板9dの外周縁部寄りの所定部位には、該端板9dからさらに奥側に突出して配置された上記特開平9−142001号公報の図6に示されているドグ(25)と同様の、図示しない遮光板が取り付け固定されている。上記遮光板は、版胴9のホームポジションを検出するために版胴9の上記所定部位に配置されている。
版胴9の外周面には、版胴9上にマスタ21を保持するための開閉自在なクランパ12が設けられている。クランパ12は、製版部3から搬送・給版されるマスタ21の先端部を受け取ることが可能となる図1に示す給版位置と、版胴9上から使用済みのマスタ21を剥離することが可能となる図示を省略した排版位置とを版胴9が選択的に占めたとき、装置本体8側に配設された周知の開閉手段によって開閉される。版胴9の内部にはインキローラ13およびドクターローラ14を有する周知のインキ供給手段15が配設されている。
版胴9のホームポジションは、クランパ12の回転中心軸が図1のほぼ真上に位置する版胴9の回転位置に予め設定されている。本実施形態では、上記特開平9−142001号公報の図6に示されている版胴(7)と同様に、版胴9はインキ供給手段15等と共に装置本体8に対して着脱自在な版胴ユニットを構成していて、版胴9がホームポジションを占めたときにのみ、図示しないギヤ同士の係脱関係を介して装置本体8に対して着脱可能に構成されている。しかし、本実施形態では後述する本発明に特有の構成によって、上記特開平9−142001号公報の図6に示されている機密モード位置センサ(27)は必須の構成ではなく、無くても構わない。
版胴9の下方には、インキローラ13に対向する状態でプレスローラ10が配設されている。プレスローラ10はその両端を一対のプレスローラアーム16、16間に回転自在に支持されており、図示しないプレスローラ揺動手段により各プレスローラアーム16が揺動されることにより版胴9の外周面に対して接離される。プレスローラ10は、上記プレスローラ揺動手段の作動によって版胴9の外周面に圧接する図1に二点鎖線で示す印刷位置と、版胴9の回転に伴って移動するクランパ12等の障害物と干渉しない上記印刷位置から離間した図1に実線で示す非印刷位置とを選択的に占める。プレスローラアーム16の周りには、プレスローラ10を非印刷位置に保持する周知の係止手段も配設されている。
製版部3は、マスタ21を製版しその製版済みのマスタ21を版胴9の外周面に搬送・給版する機能・構成を有する。製版部3は、マスタロール支持部材17、プラテンローラ18、製版手段としてのサーマルヘッド19、切断手段20等を具備している。
マスタロール支持部材17は、マスタ21を芯部21Aの周りにロール状に巻いて形成したマスタロールを、芯部21Aを介して回転自在かつ着脱自在に支持する。
マスタ21は、図3に拡大・誇張して示すように、樹脂フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム21bと多孔性支持体21aとを貼り合わせたラミネート構造をなす。一般的な孔版印刷装置と同様に、版胴9の外周面に巻装された製版済みまたは使用済みのマスタ21の熱可塑性樹脂フィルム21b面が、版胴9外周面の最も外側に向くように、かつ、多孔性支持体21a面が版胴9上のメッシュスクリーン9bと接触する側となるように、マスタロールの巻き方と製版部3から版胴9に製版済みのマスタ21を給版する仕方とが設定されている。
本実施形態で使用されるマスタとしては、上記構成のものに限らず、特開平10−147075号公報で提案され既に実用化されている感熱孔版マスタ、すなわちその厚みが従来のものと比べて比較的薄く、かつ、比較的低強度であってその曲げ剛度が5mN以上である特性を有するマスタを用いてもよい。
上記特開平10−147075号公報で提案されたマスタは、製版部3に配設されているサーマルヘッド19の図示しない保護膜を介してその発熱素子に対向・接触する側からこの順に、スティック防止層、熱可塑性樹脂フィルム、多孔性樹脂膜、多孔性繊維層の4層からなる積層構造をなしている。熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜とは、多孔性樹脂液を熱可塑性樹脂フィルムに塗工することにより実質一体的に固着されている。上記多孔性繊維層は、その多孔性樹脂膜に対向・接触する端部に適宜の接着剤が塗布されて多孔性樹脂膜表面上に接着・固着されている。このマスタは、図3を借りてその機能から大まかに表現すると、加熱溶融穿孔される熱可塑性樹脂フィルム21bと、これを強度的に保持して腰を持たせるための多孔性支持体21aとしての上記多孔性繊維層および上記多孔性樹脂膜とから構成されているとみなすことができる。
熱可塑性樹脂フィルム21bは、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンまたはその共重合体など従来公知のものが用いられるが、穿孔感度の点からポリエステルフィルムが特に好ましく用いられる。ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとして好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体等を挙げることができる。穿孔感度を向上するために特に好ましくは、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体等を挙げることができる。
熱可塑性樹脂フィルム21bには、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤あるいはポリシロキサン等の消泡剤等を配合することができる。さらには、必要に応じて易滑性を付与することもできる。
熱可塑性樹脂フィルム21bの厚みとしては、実施例的には1〜2.5μmのポリエステルフィルムを用いるものとして説明する。
プラテンローラ18は、ステッピングモータ22によって回転駆動される。サーマルヘッド19は、多数の発熱素子を有し、図示しない接離手段によってプラテンローラ18に接離自在に構成されており、製版時にはプラテンローラ18に圧接される。サーマルヘッド19は、図示しない製版制御部およびサーマルヘッド駆動回路を介して送信されてくる画像情報としての画像データ信号に基づいて、マスタ21の熱可塑性樹脂フィルム21bの表面に接触しつつ各発熱素子を選択的に発熱させて、マスタ21の熱可塑性樹脂フィルム21b部分に対して熱溶融穿孔製版を行い、画像データ信号に応じた製版画像を形成する。
上記画像情報としては、画像読取部7の画像センサ44により読み取られた原稿69の画像情報の他、孔版印刷装置1とネットワーク等を介して通信可能に接続されている場合には、パソコン等のコンピュータ(外部画像情報入力手段)から送信されてくる画像情報も含まれる。
切断手段20は、可動刃と固定刃とを有しており、固定刃に対して可動刃が上下動あるいは回転移動することによりマスタ21を切断する。切断手段20よりもマスタ21の搬送方向下流側には、マスタ21の搬送を行う2組のマスタ搬送ローラ対およびその搬送をガイドするマスタガイド板が配設されている。
給紙部4は、給紙台としての給紙トレイ23、給紙ローラ24、分離ローラ25、分離ころ26、レジストローラ対27等を有している。給紙トレイ23は、その上面に多数の用紙Pを積載して装置本体8に上下動自在に支持されており、図示しない昇降手段によって上下動される。給紙ローラ24および分離ローラ25は、表面にそれぞれ高摩擦抵抗部材を有しており、給紙トレイ23上の用紙Pと所定の圧力で圧接して共通のステッピングモータ28によってそれぞれ同期して回転駆動される。分離ころ26は、分離ローラ25に圧接されており、分離ローラ25と同方向に間欠回転される。レジストローラ対27は、駆動ローラと従動ローラとからなり、版胴9の回転と同期して回転駆動され、用紙Pを所定のタイミングで印刷部2に向けて給送する。
排版部5は、版胴9の外周面に巻装された使用済みのマスタ21を剥離・排版する排版動作を行う排版手段としての機能・構成を有する。排版部5は、排版搬送手段29、排版ボックス30、圧縮板31等を具備している。なお、ここで示す排版ボックス30および圧縮板31としては、本願出願人が特開平10−226147号公報で開示した排版装置(6)と同様の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
排版搬送手段29は、剥離ローラ32、排版搬送ローラ対33を有している。剥離ローラ32は、ニトリルゴムあるいはクロロプレンゴム等の高摩擦抵抗、かつ、耐インキ腐食性(耐油性)を有する部材からなり車輪形状をなす支軸にその中心部を固着されており、マスタ幅方向に複数配設されている。上記支軸は、図示しない剥離ローラ駆動モータによって回転駆動され、これにより各剥離ローラ32が図1において時計回りに一体的に回転駆動される。
排版搬送ローラ対33は、図1において下側に配置された駆動ローラと上側に配置された従動ローラとを有しており、それぞれ対をなしてマスタ幅方向に複数配設されている。各駆動ローラおよび各従動ローラは、各支軸に中心部をそれぞれ固着されており、駆動ローラ側の支軸は、図示しない排版搬送モータによって回転駆動され、これにより各駆動ローラが図1において反時計回りに、各従動ローラは図1において時計回りに回転駆動される。駆動ローラ側の支軸には、図示しない付勢手段としてのばねが取り付けられており、各従動ローラはそれぞれ対応する駆動ローラに圧接されている。図示しない排版搬送モータの回転速度は、各駆動ローラの回転周速度が排版時における版胴9の回転周速度を上回るように制御される。
排紙部6は、印刷部2で印刷された用紙Pを版胴9の外周面から剥離し排紙台としての排紙トレイ39に排出する機能・構成を有する。排紙部6は、剥離爪37、排紙搬送ユニット38、上記排紙トレイ39等を具備している。
剥離爪37は、版胴9の外周面より印刷済みの用紙Pを剥離する機能を有し、装置本体8に揺動自在に支持されており、図示しない爪揺動手段の作動によってその先端が版胴9の外周面に近接する位置と、その先端が版胴9の回転に伴って移動するクランパ12等の障害物と干渉しない位置とを選択的に占める。
排紙搬送ユニット38は、駆動ローラ、従動ローラ、多数の空気吸引用の孔が形成された無端ベルト、吸引ファン等を有しており、剥離爪37によって版胴9の外周面上から剥離された用紙Pを無端ベルト上に吸引しつつ、図1に矢印で示す方向に搬送する。排紙トレイ39は、排紙搬送ユニット38によって搬送される用紙Pをその上面に積載するものであり、用紙幅方向に移動自在な一対のサイドフェンスと用紙搬送方向に移動自在な1つのエンドフェンスとを有している。
画像読取部7は、原稿69の画像を読み取る機能・構成を有する。画像読取部7は、原稿69を載置するコンタクトガラス40、圧板41、原稿69を走査して読み取る走査ユニット42、走査された画像を集束するレンズ43、集束された画像を処理するCCD(電荷結合素子)等の画像センサ44等を具備しており、圧板41の上部には原稿69を自動的に原稿読取部に搬送するADFユニット45が配設されている。
図5は、孔版印刷装置1の操作パネル46を示している。操作パネル46は、装置本体8の上部前面に設けられており、その上面に製版スタートキー47、印刷スタートキー48、試し刷りキー49、連続キー50、クリア/ストップキー51、テンキー52、エンターキー53、プログラムキー54、モードクリアキー55、印刷速度設定キー56、4方向キー57、7セグメントLED(発光ダイオード)からなる表示装置58、LCD(液晶表示装置)からなる表示装置59等の周知の構成を有している。本実施形態では、機密保持モードを設定するための機密保持モード設定手段としての機密モードキーが配設されていない操作パネル46であることも一つの特徴となっている。
次に、本実施形態に特有の構成である溶解手段としてのマスタ溶解装置60について説明する。
排版搬送ローラ対33配置部と剥離爪37配置部との間の版胴9の外周面近傍には、印刷終了後に、版胴9上の製版済みまたは使用済みのマスタ21(以下、単に「版胴9上のマスタ21」というときがある)に形成された製版画像を読めなくする程度に同マスタ21の製版画像形成部35(図4に破線のハッチングを施して示す領域部)を化学的に溶かす溶解手段としての、有機溶剤を塗布する塗布ローラ61等を具備したマスタ溶解装置60が配置されている。
マスタ溶解装置60は、図2および図4に詳しく示すように、版胴9上の製版済みのマスタ21(以下、単に「版胴9上のマスタ21」というときがある)の製版画像形成部35に接触してこれを化学的に溶かすための有機溶剤を含浸可能な構成を外周部に備えた回転自在な塗布ローラ61と、塗布ローラ61に有機溶剤を供給し含浸させる有機溶剤供給手段79と、塗布ローラ61を、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触させる図2および図4に二点鎖線で示す当接位置とこの当接位置から離間させる図2および図4に実線で示す離間位置との間で変位させる変位手段67と、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した印刷終了後に、有機溶剤供給手段79を作動して塗布ローラ61に有機溶剤を含浸させた後、塗布ローラ61が当接位置を占めるように変位手段67を制御すると共に、版胴9が回転するようにメインモータ112を制御する制御手段68とから主に構成されている。
塗布ローラ61は、変位手段67によって版胴9上のマスタ21に接離自在に構成されている。塗布ローラ61は、耐有機溶剤性を有する、例えばゴムで形成されていて、耐有機溶剤性の金属製のローラ軸61bに一体的に固着されている。塗布ローラ61は、その外周部をエチレンプロピレンゴム(EPDM)で構成したことにより有機溶剤を含浸可能になっていると共に、版胴9上のマスタの製版画像形成部35に接触する部位である外周表面が、少なくとも製版画像形成部35への上記有機溶剤の塗布による溶解部分を破壊する程度の粗さ(実施例的には、JIS B 0601の中心線平均粗さRa=50〜100程度)および硬さを備えている。
換言すれば、塗布ローラ61の外周部の構成、硬さ、外周表面の粗さおよび版胴9上のマスタ21に対する塗布ローラ61の押し付け力(後述するソレノイド対65の押し付け力)が次の要求性能を満足するように詳細設計がなされる。
すなわち、有機溶剤を含浸した塗布ローラ61の要求性能としては、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に溶かす製版画像による転写をすることができなくする程度に溶かすと共に破壊する(機密保持要求性能)と共に、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に溶かし(排版品質要求性能)、かつ、メッシュスクリーン9bを溶解したり損傷しない程度であって、メッシュスクリーン9bに保持されているインキを劣化させたり分解等させたりしない程度、換言すればメッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように(印刷品質要求性能)が挙げられる。
塗布ローラ61の用紙幅方向Y(マスタ幅方向Yでもある)に沿う幅寸法Wbは、版胴9の外周面に巻装された製版済みのマスタ21の用紙幅方向Yに沿う幅寸法よりも短く、かつ、製版済みのマスタ21に形成された製版画像形成部35領域の用紙幅方向Yに沿う幅寸法Waよりも長く形成・設定されている。
変位手段67は、揺動部材としての一対のアーム64、64(以下、「アーム対64」という)、支軸62、付勢手段としての一対の引張ばね63、63(以下、「引張ばね対63」という)および駆動手段としての一対のソレノイド65、65(以下、「ソレノイド対65」という)から主に構成されている。図4において、符号34a、34bは、装置本体8の印刷部2に固設された一対の側板を示す。
各アーム64は、板状をなし、その一端部(図2の上端部)にはローラ軸61bが回転自在に支持され、他端部(図2の下端部)にはソレノイド65のプランジャ65aがピン66を介して緩く連結されている。アーム対64における上下方向のほぼ中央部には、その両端部が図4に示す側板対34a、34bに所定角度回動自在に支持された支軸62が固着されている。アーム対64におけるローラ軸61bの各支持部と支軸62の各固着部との間には、塗布ローラ61を常に離間位置を占める向きに付勢する引張ばね63の一端部がそれぞれ係止されている。引張ばね対63の他端部は、側板対34a、34bに固着された図示しない不動部材に係止されている。図2においては、側板対34a、34bの図示を省略している。図2および図4において、符号70は、各引張ばね63の付勢力による各アーム64の反時計回りの揺動を規制してを塗布ローラ61を離間位置に保持するためのストッパー部材を示す。
上記のとおり、ローラ軸61bの両端部がアーム対64の一端部にそれぞれ設けられた図示しない各軸受に支持されていることにより、塗布ローラ61は、図2で説明すると、当接位置を占めたとき、同図中矢印方向(時計回り)に回転する版胴9上のマスタ21に形成された製版画像形成部35に接触して同図中二点鎖線で示す矢印方向(反時計回り)に従動回転可能に構成されている。
ソレノイド対65は、同一の仕様(使用電力、形状寸法等)かつプル型のものを用いている。同じく、引張ばね対63も同一の仕様(ばね荷重、形状寸法等)のものを用いている。
なお、駆動手段としてのソレノイド対65および付勢手段としての引張ばね対63は、これに限らず、例えばマスタ溶解装置のコストダウンを優先し、版胴9の用紙幅方向Yに沿う版胴9の両端部位置での塗布ローラ61との均一な当接状態をそれほど望まなくてもよいような場合には、ソレノイド65は側板34aまたは34bの一方にのみ配置しても構わない。
有機溶剤供給手段79は、塗布ローラ61を受け入れるべく上部が開口され有機溶剤を受け止める溶剤トレイ72と、溶剤トレイ72内において離間位置を占めている塗布ローラ61に接触可能に、かつ、図中矢印方向(時計回り)に回転自在に支持され有機溶剤を塗布ローラ61に受け渡す溶剤含有ローラ71と、溶剤含有ローラ71を回転駆動する駆動手段としての図2に模式的に示したローラ駆動モータ74および溶剤含有ローラ71にローラ駆動モータ74の駆動力を伝達する駆動力伝達手段を備えたローラ駆動機構と、溶剤含有ローラ71に有機溶剤を供給・搬送する溶剤パイプ73と、溶剤パイプ73に連通され有機溶剤を貯蔵する図示しない有機溶剤ボトルと、この有機溶剤ボトル内の有機溶剤を汲み出し溶剤パイプ73を介して溶剤含有ローラ71に圧送する図2に模式的に示すポンプ75と、このポンプ75を駆動する図2に模式的に示すポンプモータ76とから主に構成されている。
溶剤トレイ72は、耐有機溶剤性の金属あるいは樹脂で一体的に形成されている。溶剤トレイ72は、用紙幅方向Yの長さが側板対34a,34b間の寸法よりも短く形成されていて、側板対34a,34bに固着され塗布ローラ61の離間位置近傍に配設された不動部材に取り付け・固定されている。
溶剤含有ローラ71は、耐有機溶剤性でかつ有機溶剤吸収性を有する、例えばポリプロピレン製のフェルトで形成されていて、耐有機溶剤性の金属製の軸71aに一体的に形成されている。溶剤含有ローラ71は、溶剤トレイ72の紙面の手前側および奥側の両側壁において軸71aを回転自在に支持されていることにより、時計回りに回転自在になっている。溶剤含有ローラ71の用紙幅方向Yに沿う幅寸法は、塗布ローラ61の幅寸法Wbよりも少なくとも長く形成されていて、溶剤含有ローラ71が含浸した有機溶剤を塗布ローラ61に効率よく受け渡すようになっている。
溶剤パイプ73は、溶剤含有ローラ71の軸71aのほぼ中央部に1箇所配置されているが、これに限らず、有機溶剤を効率よく溶剤含有ローラ71に含浸させるために溶剤含有ローラ71の両端部に追加して分配配置し、ポンプ75に至る下流側の箇所で1本に集合させるような配管構成でも構わない。
ポンプ75は、例えば特開2001−246732号公報の図1に示されているピストンロッド(8)等を具備したインキポンプ(6)と基本的な構成が同様の往復ポンプからなる。ポンプ75は、そのピストンロッド(8)が上下方向に往復動することにより、上記有機溶剤ボトル内の有機溶剤を吸引して汲み出し、溶剤パイプ73を通して溶剤含有ローラ71へ有機溶剤を送り出すように構成されている。ポンプモータ76は、例えばDCモータからなり、上記ピストンロッド(8)を往復動させるポンプ駆動手段としての機能を有する。
ポンプ駆動手段は、往復ポンプからなるポンプ75に限らず、例えば再生ポンプや歯車ポンプ等の回転ポンプを用いてもよい。
上記ローラ駆動機構は、紙面奥側の側板34bに固着された上記ローラ駆動モータ74と、ローラ駆動モータ74の出力軸に固着された図示しない駆動ギヤと、溶剤含有ローラ71の紙面奥側の軸71a端部に固着され上記駆動ギヤと噛み合う図示しない従動ギヤとから主に構成される。上記駆動ギヤおよび上記従動ギヤは、上記駆動力伝達手段を構成している。駆動力伝達手段としては、上述のギヤ列に限らず、例えば複数のプーリと、各プーリ間に掛け渡された無端ベルトとから構成されたもの、あるいはギヤと上記プーリおよび無端ベルトとを組み合わせたもの等であってもよい。
溶剤パイプ73、上記有機溶剤ボトルおよびポンプ75は、耐有機溶剤性の材料、耐有機溶剤性の構成部品、耐有機溶剤性の表面処理等を施されて形成ないしは組み立てられている。
マスタ溶解装置60で用いる有機溶剤としては、上述した熱可塑性樹脂フィルム21bの材質がポリエステルフィルムで形成されていることに対応して、これを化学的に溶解する性質を有する、化1の化学式で表されるジクロロエタン:CCl(ClCHCHCl)、または化2の化学式で表されるブタノン(別名メチルエチルケトン):CHCOC(CHCOCHCH)が好ましい。
Figure 2006069156
Figure 2006069156
ジクロロエタンは、塩ビモノマー原料、有機溶剤等としての用途があり、揮発しやすく、室温で引火する特性を有するので、このような点を考慮して上記有機溶剤ボトルへのジクロロエタンの貯蔵方法、塗布ローラ61へのジクロロエタンの供給方法、塗布ローラ61へのジクロロエタンの含浸・塗布量等について適法となるように細部の設計を行う。
ブタノンは、合成樹脂原料、印刷インキ用溶剤等としての用途があり、毒劇法で定められた処分方法があり、揮発性が大きく、引火しやすい特性を有するので、このような点を考慮して上記有機溶剤ボトルへのブタノンの貯蔵方法、塗布ローラ61へのブタノンの供給方法、塗布ローラ61へのブタノンの含浸・塗布量等について適法となるように細部の設計を行う。なお、ジクロロエタンおよびブタノンは、共に、孔版印刷装置での使用を法的に禁止されているものでないことを付記しておく(後述する実施形態や変形例でも同様であるため、以下省略)。
有機溶剤としては、上記ジクロロエタンやブタノンに限らず、例えばアセトン:(CHCO、イソプロピルアルコール:(CHCHCHOH、酢酸エチル:CHCOまたはテトラヒドラフラン等でもよい。
制御手段68は、例えば図示しないCPU、記憶手段としての図示しないROM、RAMから構成されている。上記CPUには、パルス検出センサ123で検出され、共に図示しないパルスカウンタおよび比較器を通過して送信されるメインモータ112の回転位置信号(角度信号)、ホームポジションセンサ126、印刷枚数カウンタ128および操作パネル46の各種キーからの出力信号がそれぞれ入力される。印刷枚数カウンタ128は、排紙搬送ユニット38に設けられた上記無端ベルトの上下間に配設されている反射型フォトセンサを含むセンサ入力回路からなり、後述する版付け印刷以外の印刷された用紙Pの先端および後端を検出することにより、正規の印刷枚数を計数する機能を有する。
入力された上記各信号は、上記ROMに予め記憶された後述する動作プログラムに基づいて演算処理され、図示しないモータ駆動回路を介してメインモータ112に、図示しないモータ駆動回路を介してローラ駆動モータ74に、図示しないモータ駆動回路を介してポンプモータ76に、図示しないソレノイド駆動回路を介してソレノイド対65に、それぞれ図示しない発光ダイオード駆動回路および液晶駆動回路を介して表示装置58および59に、それぞれ動作・指令信号として出力されるようになっている。
制御手段68は、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、ローラ駆動モータ74をオン駆動・制御すると共に、ポンプモータ76をオン駆動・制御し、その後、塗布ローラ61が当接位置を占めるように、すなわち上記有機溶剤を含浸した塗布ローラ61の外周部表面が版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して有機溶剤を塗布・供給することで熱可塑性樹脂フィルム21b部分を溶かしながら破壊するように変位手段67のソレノイド対65をオン駆動・制御し、塗布ローラ61が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように、かつ、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外の部位に接触しないように変位手段67のソレノイド対65をオフ駆動・制御する機能を有する。
上記RAMには、上記CPUに入力された上記センサや上記各種キー等からの各種信号や上記CPUの計算結果、あるいは上記CPUによって上記ROMより呼び出された動作プログラムが一時的に書き込まれる。上記ROMには、版胴9のホームポジション情報や上記動作プログラムを実行する上での必要な関係データ等が記憶されている(後述する各実施形態および変形例等の制御手段においても同様であるため、以下、この説明を省略する)。
上述の構成に基づき、孔版印刷装置1の動作を下記する。
ユーザは画像読取部7に印刷すべき原稿69をセットし、操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下する。
製版スタートキー47が押下されると、先ず、排版部5において前回の印刷で使用された版胴9の外周面上から使用済みのマスタ21を剥離・排版する排版動作が行われる。本実施形態では、排版動作により版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21の少なくとも製版画像形成部35は、後で詳述するようにマスタ溶解装置60の作動によって、既に、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように上記有機溶剤により溶かされ破壊されている。
なお、後述するように所定の印刷枚数の正規の印刷終了後になるまで、制御手段68からの指令によってソレノイド対65には通電されずソレノイド対65は非励磁状態でオフされており、引張ばね対63の付勢力によって、アーム対64の一端部に支持されている塗布ローラ61は図2に実線で示すように離間位置を占めて同位置に保持されたままである。
既に上記のとおり有機溶剤によって化学的に溶かされている使用済みのマスタ21を外周面に巻装している版胴9は、メインモータ112が起動されることにより、マスタ21の先端部(クランパ12によって挟持されている部分)が剥離ローラ32と対応する位置である排版位置に達するまで回転駆動される。版胴9が排版位置に達すると、メインモータ112の駆動が停止されることで版胴9の回転が停止され、クランパ12が上記開閉手段の作動によりほぼ180度開放される。その後、図示しない剥離ローラ駆動モータと図示しない排版部揺動手段とが作動して各剥離ローラ32が回転しつつ剥離位置を占め、マスタ21の先端部が各剥離ローラ32によって版胴9の外周面上からすくい上げられる。
図示しない剥離ローラ駆動モータの作動とほぼ同時に図示しない排版搬送モータが作動され、各排版搬送ローラ対33が図1に矢印で示す方向に回転駆動される。版胴9の外周面上からすくい上げられたマスタ21の先端部は、各剥離ローラ32の回転によって各排版搬送ローラ対33へと送られ、排版ボックス30の内部へと搬送される。そして、マスタ21の先端部が図示しない排版センサによって検知されると、図示しない剥離ローラ駆動モータの作動が停止されると共に、図示しない排版部揺動手段が作動し、各剥離ローラ32が停止されると共に待機位置を占める。
また、上記排版センサによってマスタ21の先端部が検知されると、版胴9も低速で図1において時計回りへの回転を開始する。このとき、各駆動ローラ33aの回転周速度が版胴9の回転周速度を上回るように図示しない排版搬送モータの回転速度が制御される。そして、版胴9上に巻装されているマスタ21は、版胴9の回転および各排版搬送ローラ対33の回転によって両者間において張力を付与されつつ、版胴9の外周面上より剥離されて排版ボックス30の内部に収容される。
版胴9が所定位置を占め、版胴9上より全てのマスタ21が剥離されて排版ボックス30内に収容されたと判断されると、各排版搬送ローラ対33および版胴9の回転が停止される。その後、圧縮板31が所定角度回動してマスタ21を排版ボックス30の内部に押し込めると共に版胴9が回転駆動され、版胴9が図1に示す給版位置へ到達して、上記開閉手段の作動によってクランパ12が二点鎖線に示すように開放されると排版動作が完了する。
排版動作が完了すると、画像読取部7において原稿69の読取動作が行われる。読み取られた画像はレンズ43で集束された後、画像センサ44に入力され光電変換される。画像センサ44は、入力された画像データを図示しないA/D変換器および製版制御部に送る。
読取動作と並行して、製版部3ではプラテンローラ18とサーマルヘッド19とが作動して、画像データに基づくマスタ21への製版動作が行われて製版画像が形成される。製版済みのマスタ21はクランパ12へと送られ、ステッピングモータ22のステップ数よりマスタ21の先端がクランパ12まで達したと判断されると、上記開閉手段の作動によってクランパ12が閉じられる。その後、版胴9が製版済みのマスタ21の搬送速度と同じ回転周速度で図1において時計回りに回転駆動され、製版済みのマスタ21の版胴9への巻装動作が行われる。そして、画像読取部7からの画像データ信号が途絶えるとサーマルヘッド19の作動が停止し、その後、ステッピングモータ22のステップ数より1版分のマスタ21が製版搬送されたと判断されると、製版済みのマスタ21の搬送が停止されると共に、切断手段20が作動してマスタ21が切断される。切断されたマスタ21は版胴9の回転によって製版部3より引き出され、版胴9がホームポジションで停止して給版動作が完了する。
給版動作に引き続き版付け動作が行われる。版胴9がホームポジションに到達し、図示しないドグ(遮光板)がホームポジションセンサ126に検知されると、ホームポジションセンサ126から上記CPU(以下、「制御手段68」というときがある)に信号が出力される。制御手段68は、ホームポジションセンサ126からの信号を受けてメインモータ112を制御してメインモータ112の回転を停止させる。メインモータ112の停止により版胴9がホームポジションで停止した後、版胴9が低速で回転駆動されると共に給紙ローラ24、分離ローラ25、排紙搬送ユニット38がそれぞれ駆動され、給紙トレイ23より最上位に位置する用紙Pが1枚だけ分離給送され、その先端をレジストローラ対27のニップ部に当接されることで、用紙Pの先端部に所定の湾曲した撓みが形成される。レジストローラ対27は、版胴9に巻装された製版済みのマスタ21の版胴回転方向における画像領域先端部がプレスローラ10と対応する位置に到達する所定のタイミングで用紙Pを版胴9とプレスローラ10との間に向けて給送する。また、これとほぼ同時に、図3に示したように、プレスローラ10が揺動し、その周面が版胴9の外周面に所定の圧接力で圧接される。以下、メインモータ112の起動・停止等に係る細部説明は、版胴9の回転駆動・停止によって自明であるため省略する。
用紙Pはプレスローラ10によって版胴9に巻装された製版済みのマスタ21に押圧され、これによりプレスローラ10と用紙Pと製版済みのマスタ21と版胴9とが圧接し、インキ供給手段15によって版胴9の内周面に供給されたインキが版胴9の多孔性支持板9aの開孔部およびメッシュスクリーン9bの網目部より滲出し、版胴9の外周面と製版済みのマスタ21の多孔性支持体21aとの空隙部に充填された後に熱可塑性樹脂フィルム21bの穿孔部分を介して用紙Pに転写され、いわゆる版付けが行われる。インキを転写された用紙Pは、剥離爪37の先端で版胴9の外周面より剥離されて下方へと落下し、排紙搬送ユニット38によって左方へと吸引搬送されて排紙トレイ39上に排出される。その後、版胴9が再びホームポジションを占めて停止し、版付け動作が完了して孔版印刷装置1は印刷待機状態となる。なお、版付け動作によって印刷された用紙Pは、正規の印刷枚数として印刷枚数カウンタ128によって計数されないようになされている。
孔版印刷装置1が印刷待機状態となった後に、試し刷りキー49が押下されると、版付け時と同様に給紙トレイ23上の最上位の用紙Pが1枚だけ分離給送されてレジストローラ対27に挟持されると共に、版胴9が版付け時よりも高速で回転駆動される。レジストローラ対27は高速回転している版胴9とプレスローラ10との間に上述と同様に所定のタイミングで用紙Pを給送し、給送された用紙Pはプレスローラ10によって版胴9に巻装されたマスタ21に圧接されてインキを転写された後、上述したと同様に排紙トレイ39上に排出される。版胴9はその後に再びホームポジションに戻されて試し刷り動作が完了する。
この試し刷りによって印刷画像の濃度や印刷画像位置を確認し、これらを操作パネル46上の各種キーで適宜調整して再度試し刷りを行った後、テンキー52で印刷枚数を表示装置58に置数し、印刷速度設定キー56で所望の印刷速度を設定して印刷スタートキー48を押下することにより、給紙部4より用紙Pが連続的に給送されて印刷動作が行われる。
設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となる。この際、制御手段68はテンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行い、その残印刷枚数を表示装置58に表示する。そして、制御手段68は所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置がホームポジションを占めたと認識した後、メインモータ112を起動させることにより、版胴9は例えば版付け時と同様の低速ないしはそれよりもさらに遅い回転周速度で時計回りに回転し始める。
制御手段68は上記メインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9のクランパ12配置部がプレスローラ10と対向する位置を通り過ぎる頃の版胴9の回転位置において、ローラ駆動モータ74をオン駆動すると共に、ポンプモータ76をオン駆動する。
これにより、ポンプ75が作動して上記有機溶剤ボトルに貯蔵された上記有機溶剤が汲み出され、溶剤パイプ73を通って図2において時計回りに回転している溶剤含有ローラ71に圧送・供給され、さらに溶剤含有ローラ71に圧接して反時計回りに従動回転している塗布ローラ61の外周部に供給され含浸されていく。その後、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の先端部分に当接するタイミングにて、変位手段67のソレノイド対65に通電すべくこれをオン駆動する。ソレノイド対65が通電・オンされると、アーム対64の他端部に連結されているプランジャ65aが図2において左方に引き込まれる(図4では上方に引き込まれる)ことにより、アーム対64の一端部に支持されている塗布ローラ61が図2において支軸62を中心として時計回りに引張ばね対63の付勢力に抗して揺動・変位されて当接位置を占めることとなる。
塗布ローラ61が当接位置を占めると、塗布ローラ61が図2において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して図2中二点鎖線で示す反時計回りに従動回転しながら、塗布ローラ61の外周表面が製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面に上記有機溶剤を塗布することにより、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされると共に、その溶解部分(溶解されつつある未溶解部分も含む)が塗布ローラ61の外周部の粗い表面によってあたかも削られるように損傷・破壊されていくので、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように化学的に溶解されることとなる。
版胴9がさらに回転して、版胴9のクランパ12配置部が塗布ローラ61に近づく頃の版胴9の回転位置に至ると、塗布ローラ61が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように変位手段67のソレノイド対65がオフ駆動・制御され、引張ばね対63の付勢力によって塗布ローラ61が離間位置を占める。
制御手段68は上記メインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9が所定回数回転駆動されて製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分への上記有機溶剤の塗布による溶解および破壊が終了したと判断すると、ポンプモータ76をオフした後、ローラ駆動モータ74をオフすることで、ポンプ75および溶剤含有ローラ71が共に停止する。その後、ソレノイド対65への通電をオフすることにより、引張ばね対63の付勢力によって塗布ローラ61が離間位置を占めることとなる。
ここで、塗布ローラ61を版胴9上の使用済みのマスタ21の製版画像形成部35に押し付ける回数、換言すれば版胴9を複数回回転させて塗布ローラ61を版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に当接・押し付ける回数は、ユーザの所望により任意に設定することができる。すなわち、上記ROMの動作プログラム内容によっては、または上記ROMに代えたPROM(プログラム可能な読み出し専用記憶装置)等を用いることによって、版胴9の複数回転に亘ってマスタ溶解装置60が作動するように設定される場合があるが、この際には、制御手段68はパルス検出センサ123で検出され上記パルスカウンタおよび比較器を通過して送信されるメインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9のクランパ12配置部が塗布ローラ61に対向する位置を通り過ぎる前の版胴9の回転位置において、ソレノイド対65への通電をオフすることにより、引張ばね対63の付勢力によって塗布ローラ61が離間位置を占めることとなり、塗布ローラ61とクランパ12配置部との干渉が避けられる。
このように、版胴9の複数回転に亘ってマスタ溶解装置60が作動する場合、版胴9の1回転のみマスタ溶解装置60が作動する場合と比べて、塗布ローラ61によって版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分を上記有機溶剤で溶かす際の面密度、溶解量および破壊程度も上がることで十分に溶解破壊されることとなって、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像がより確実に読めなくなると共に製版画像による転写もより確実にすることができなくなるので、版胴9上に巻装された製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持がより確実に行えるようになる。
なお、塗布ローラ61の外周表面の粗さおよび硬さを熱可塑性樹脂フィルム21b表面部分に傷をつけることができように構成すると共に、上記印刷終了後に行われるメインモータ112、ローラ駆動モータ74、ポンプモータ76およびソレノイド対65の動作順序を次のように変更してもよい。すなわち、上記印刷終了後に、先ずメインモータ112を回転駆動することにより版胴9を時計回りに回転させながらソレノイド対65をオン駆動することにより、塗布ローラ61をして当接位置を占めさせて製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分に傷をつけた後に、その製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分に上記有機溶剤を塗布・供給すべくローラ駆動モータ74およびポンプモータ76をオン駆動させるように作動させてもよい。
この場合、塗布ローラ61の外周部の粗い表面が製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面に適度の傷をつけ荒らしながら上記有機溶剤を塗布することで、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b傷部分への該有機溶剤の浸透が促進されるので、熱可塑性樹脂フィルム21b部分の溶解効率(溶解量)が向上し、その溶解部分(溶解されつつある未溶解部分も含む)が塗布ローラ61の外周部の粗い表面によってさらに削られるように破壊されることとなる(後述する第2および第3の実施形態ならびに変形例2および3等でも同様であるため、以下、この説明を省略する。但し、第3の実施形態および変形例3では、上記「印刷終了後に」に代えた「排版動作時に」となる)。
上記各有機溶剤による熱可塑性樹脂フィルム21bの溶解量は、該有機溶剤の濃度が一定であれば、一般的に温度によって変化する。すなわち、温度が高いときには上記溶解量が増加し、温度が低いときには上記溶解量が減少する傾向にあるので、このような点も考慮して、例えば製版画像形成部35における熱可塑性樹脂フィルム21bの溶解量に対応した版胴9の回転数と温度との関係を予め実験等により取得しておき、そのデータテーブルを上記ROMに予め記憶させておく。そして、制御手段68が上記ROMのデータテーブルから例えば孔版印刷装置1の適宜の部位(例えば印刷部2または製版部3)に配設された温度を検出する図示しない温度検出手段としてのサーミスタから送信される温度データに基づき、上記データテーブルの温度データに対応する版胴9の回転数を抽出してメインモータ112を制御するようにしてもよい(後述する第2および第3の実施形態ならびに変形例1ないし3等でも同様であるため、以下、この説明を省略する)。
塗布ローラ61が当接位置を占めていて上記有機溶剤を版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に塗布・供給している時、ポンプモータ76およびローラ駆動モータ74を一時的にオフ駆動制御することにより、ポンプ75の駆動を停止させると共に上記有機溶剤の溶剤含有ローラ71への供給および同ローラ71の回転を停止させて、同ローラ71から有機溶剤が溢れたり、有機溶剤が溶剤トレイ72に溜まったりするのを防止するようにしてもよい(後述する第2および第3の実施形態ならびに変形例2および3でも同様であるため、以下、この説明を省略する)。
版胴9は、これに限らず、メッシュスクリーン9bを有していない場合もある。このように、実質的に多孔性支持板9aからのみなる版胴にあっては、マスタ溶解装置60の特に塗布ローラ61が備えるべき印刷品質要求性能、すなわち「メッシュスクリーン9bに悪影響を与えないように」という性能は不要となる(後述する実施形態ならびに変形例でも同様であるため、以下、この説明を省略する)。
また、塗布ローラ61の外周部表面に付与された、「少なくとも製版画像形成部35への上記有機溶剤の塗布による溶解部分を破壊する程度の粗さ」は、その利点を望まなくてもよいのであれば不要としてもよい。また、「版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面部位(厚み方向)に傷をつけて上記有機溶剤の浸透による溶解を促進するための、あるいは溶解された熱可塑性樹脂フィルム21b部分をさらに破壊するための損傷ローラまたは突起状ないしはヤスリ状部分を備えた損傷部材を、塗布ローラ61とは別体的に設けてもよい(後述する第2および第3の実施形態ならびに変形例2および3等でも同様であるため、以下、これらの説明を省略する)。
従って、第1の実施形態によれば、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、製版済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21は元より、マスタ21上の機密情報の外部流出を防止することができ、版胴9上の製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持が確実に行える利点がある。
(変形例1)
この変形例1は、第1の実施形態と比較して、塗布ローラ61の上記反時計回りの従動回転に対して、所定の制動力(ブレーキ力)を付与することにより、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35への上記有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与えるための制動手段を有する点のみ相違する。この点以外は、第1の実施形態と同様である。
ここで、所定の制動力とは、塗布ローラ61が版胴9上のマスタ21に形成された製版画像形成部35に接触して図2中二点鎖線で示す反時計回りに引きずられるように従動回転しながら、塗布ローラ61の外周部の粗い表面が有機溶剤によって溶解過程にある製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分に引きずり損傷を与えて破壊するような制動力を意味する。
制動手段としては、例えばローラ軸61bの両端部に板ばねを圧接することで制動力を付与したり、ローラ軸61bの両端部を回転自在に支持する側板34a、34bの支持部に電磁的に制動力を付与する電磁ブレーキ等が挙げられる。
変形例1によれば、制動力を付与された塗布ローラ61が版胴9上のマスタ21に形成された製版画像形成部35に接触して図2中二点鎖線で示す反時計回りに引きずられるように従動回転しながら、塗布ローラ61の外周表面が製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面に上記有機溶剤を塗布することにより、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされると共に、その溶解部分(溶解されつつある未溶解部分も含む)が塗布ローラ61の外周部の粗い表面によって、引っ掻くように破壊されていき、さらにその過程で引っ掻き状態の傷(凹部)の内部に上記有機溶剤の浸透が促進されるので、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分をより速く十分に効率的に溶かすことができ、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像がより確実に読めなくなると共に製版画像による転写もより確実にできなくなるため、第1の実施形態によるよりも版胴9上に巻装された製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持がより一層確実に行える利点がある。また、版胴9の回転数を減らすことも可能となる。
第1の実施形態ならびに変形例1では、版胴9の軸線方向に沿って幅寸法Wbで塗布ローラ61を長く形成したため、版胴9の軸線方向に沿う版胴9外周面の平行度が確保できないような場合が想定される。このような場合には、版胴9上のマスタ21の版胴9の軸線方向に沿う平行度も確保できなくなるから、版胴9上のマスタ21の幅方向において部分的にその製版画像が判読可能になる虞がある。
そこでこのような場合には、塗布ローラ61の材質および形状を工夫すればよい。すなわち、例えば塗布ローラ61の材質にある程度の適度な弾性を与えるべく樹脂やゴム等の弾性材料で形成するようにしてもよい。また、版胴9外周面の用紙幅方向Y位置による平行度の精度に傾向性がある場合(例えば中央部が凹傾向)には、その傾向に合わせた塗布ローラ61の断面形状(例えばその中央部を凸傾向)にしたり、突起61aの長さを用紙幅方向Y位置の傾向に合わせて調整したりしてもよい。
さらには、上記特開平9−142001号公報の段落「0092」〜「0122」に記載され図18および図19に示されているように、発熱部材(201)と同様に塗布ローラ61の用紙幅方向Yの長さを短く形成すると共に、上記公報と同様のねじ機構によって用紙幅方向Yに移動自在に構成して、版胴9上のマスタ21の幅方向において製版画像形成部35が確実に損傷・溶解されるように同方向にラップ代を確保するようにしても構わない(後述する第2および第3の実施形態ならびに変形例2および3でも同様であるため、以下、この説明を省略する)。
(第2の実施形態)
図1〜図4および図6に、第2の実施形態を示す。
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較して、機密保持モードが設定可能な孔版印刷装置1であって、マスタ溶解装置60に代えたマスタ溶解装置60Aを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置60Aは、第1の実施形態のマスタ溶解装置60と比較して、操作パネル46に代えた図6に示す操作パネル46Aを有する点、制御手段68に代えた図2に示す制御手段68Aを有する点が主に相違する。この他の構成は、第1の実施形態と同様である。
操作パネル46Aは、操作パネル46と比較して、孔版印刷装置1の機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段としての機密モードキー36を有する点のみが相違する。機密モードキー36を1回押下すると、機密保持モード設定に係る信号が生成され、もう1回押下すると、機密保持モード設定解除に係る信号が生成される。
制御手段68Aは、機密モードキー36の押下により生成される機密保持モード設定に係る信号、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断したときに、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、ローラ駆動モータ74をオン駆動・制御すると共に、ポンプモータ76をオン駆動・制御し、その後、塗布ローラ61が当接位置を占めるように、すなわち上記有機溶剤を含浸した塗布ローラ61の外周部表面が版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して有機溶剤を塗布・供給することで熱可塑性樹脂フィルム21b部分を溶かしながら破壊するように変位手段67のソレノイド対65をオン駆動・制御し、塗布ローラ61が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように、かつ、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外の部位に接触しないように変位手段67のソレノイド対65をオフ駆動・制御する機能を有する。
上述の構成に基づき、第2の実施形態の動作について、第1の実施形態のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに実行される排版動作が、前回の印刷終了時にユーザが機密モードキー36を押下せずに機密保持モードが設定されていない場合、マスタ溶解装置60Aが非作動状態(ローラ駆動モータ74およびポンプモータ76がオフ駆動状態で、かつ、ソレノイド対65がオフ駆動状態で塗布ローラ61が離間位置を占めたままの状態)にあって、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21については製版画像を読めると共に製版画像による転写をすることができるようになっている点である。
第2の相違点は、第1の実施形態と同様に、設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となった時に、ユーザが機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合に、制御手段68Aからの指令によって、始めてマスタ溶解装置60Aが第1の実施形態と同様に作動する点にある。
従って、第2の実施形態によれば、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21は元より、マスタ21上の機密情報の外部流出を防止することができ、版胴9上の製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持が確実に行える利点がある。しかも、ユーザによって製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密の要否が判断されて、機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合にマスタ溶解装置60Aが第1の実施形態と同様に作動することにより、例えば連続して機密保持が不要な印刷を行う場合、すなわち排版から印刷・排紙工程に至る一連の動作を連続して行うような場合には、マスタ溶解装置60Aが非作動状態のままであるからトータルの印刷時間を第1の実施形態よりも短縮することができる。
また、第2の実施形態でも、変形例1と同様に適度の制動力を付与された状態で塗布ローラ61を作動させることにより、変形例1と同様の要部動作を介して同様の利点が得られる(以下、「変形例2」という)。
(第3の実施形態)
図1〜図5に、第3の実施形態を示す。
第3の実施形態は、第1の実施形態と比較して、マスタ溶解装置60に代えたマスタ溶解装置60Bを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置60Bは、第1の実施形態のマスタ溶解装置60と比較して、制御手段68に代えた制御手段68Bを有する点が主に相違する。この他の構成は、第1の実施形態と同様である。
制御手段68Bは、図2に示すように、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷終了後に変位手段67のソレノイド対65を作動させるのに代えて、排版動作時に、すなわち製版スタートキー47からの排版動作起動に係る信号、およびパルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、ローラ駆動モータ74をオン駆動・制御すると共に、ポンプモータ76をオン駆動・制御し、その後、塗布ローラ61が当接位置を占めるように、すなわち上記有機溶剤を含浸した塗布ローラ61の外周部表面が版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して有機溶剤を塗布・供給することで熱可塑性樹脂フィルム21b部分を溶かしながら破壊するようにソレノイド対65をオン駆動・制御し、塗布ローラ61が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないようにソレノイド対65をオフ駆動・制御する機能を有する。
ここで、「排版動作時に」とは、「排版動作が行われる直前に」、あるいは「排版動作の起動と並行して」の両方を含むことを意味する(後述する第6および第9の実施形態等でも同様であるため、以下、この説明を省略する)。
上述の構成に基づき、第3の実施形態の動作について、第1の実施形態のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、制御手段68Bからの指令によってメインモータ112、ローラ駆動モータ74およびポンプモータ76の起動、変位手段67(ソレノイド対65)による塗布ローラ61の変位・作動が行われずに、機密保持状態にない点にある。すなわち、版胴ユニットを装置本体8から離脱させて、版胴9上のマスタ21の製版画像に係る機密情報を視認によりあるいは用紙への転写によって読み取ることが可能である。
第2の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに生成された排版動作起動に係る信号に基づいて、制御手段68Bは次のような制御動作を実行する点である。すなわち、使用済みのマスタ21を外周面に巻装していてホームポジションを占めている版胴9は、メインモータ112が起動されることにより、例えば版付け時と同様の低速ないしはそれよりもさらに遅い回転周速度で時計回りに回転し始め、版胴9のクランパ12配置部が塗布ローラ61に対向する位置を通り過ぎる頃の版胴9の回転位置、すなわち版胴9上の使用済みのマスタ21の先端部が塗布ローラ61にほぼ対向する位置の版胴9の回転位置において、ローラ駆動モータ74をオン駆動すると共に、ポンプモータ76をオン駆動する。
これにより、第1の実施形態と同様の動作、すなわちポンプ75の作動によって上記有機溶剤ボトルに貯蔵された上記有機溶剤が汲み出され、溶剤パイプ73を通って図2において時計回りに回転しているローラ駆動モータ74に圧送・供給され、さらに溶剤含有ローラ71に圧接して反時計回りに従動回転している塗布ローラ61の外周部に供給され含浸されていく。その後、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の先端部分に当接するタイミングにて、変位手段67のソレノイド対65に通電すべくこれをオン駆動することにより、塗布ローラ61が当接位置を占め、塗布ローラ61が図2において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して図2中二点鎖線で示す反時計回りに従動回転しながら、塗布ローラ61の外周部の粗い表面が製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面に適度の傷をつけ荒らしながら上記有機溶剤を塗布することで、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21bの傷部分への該有機溶剤の浸透が促進され、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21bが上記有機溶剤によって溶かされるので、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように化学的に溶解され始めることとなる。そして、第1の実施形態と同様の排版動作(但し、版胴9上のマスタ21における製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分は、上記のとおり、上記有機溶剤の塗布・浸透によって溶解され始めている)が行われる。
ここで、上記排版動作を行う直前に、塗布ローラ61を版胴9上の使用済みのマスタ21の製版画像形成部35に押し付ける回数は、第1の実施形態と同様、ユーザの所望により、あるいは上述した温度等を考慮して任意に設定することができる。
従って、第3の実施形態によれば、使用済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21の機密保持が確実に行える利点がある。加えて、第3の実施形態では所定の印刷終了後においては、未だ版胴9上のマスタ21が溶解・損傷されていないから、このマスタ21を用いての追加印刷が可能となる利点もある。
また、第3の実施形態でも、変形例1と同様に適度の制動力を付与された状態で塗布ローラ61を作動させることにより、変形例1と同様の要部動作を介して同様の利点が得られる(以下、「変形例3」という)。
上述したとおり、第3の実施形態および変形例3では、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、版胴ユニットを装置本体8から離脱させて、版胴9上のマスタ21の製版画像に係る機密情報を視認によりあるいは用紙への転写によって読み取ることが可能であるから、従来と同様に、例えば特開平9−142001号公報の図4に示されている版胴ロック機構および図6に示されている版胴駆動機構におけるギヤ同士の係脱機構ならびに第2の実施形態で用いた操作パネル46A(機密モードキー36)を採用して、版胴ユニットを装置本体8から離脱不能にすることにより機密保持を図るようにすることが望ましい。
第1ないし第3の実施形態および変形例1ないし3のマスタ溶解装置60,60A,60Bは、これらに限らず、例えば下記例のように構成し動作させたり、あるいはこれらを適宜組み合わせ構成し動作させたりしてもよく、当業者であれば下記例以外にも種々の変形例を容易に創作し実施することができる。
すなわち、第1の例は、マスタ溶解装置60,60A,60Bの何れか一つと比較して、塗布ローラ61の離間位置近傍に固設されている有機溶剤供給手段79に代えて、有機溶剤供給手段79を塗布ローラ61と共に変位手段67によって変位可能に構成し動作させる点、有機溶剤供給手段79のローラ駆動モータ74およびその駆動伝達手段を除去すると共に、溶剤含有ローラ71を常に塗布ローラ61に圧接して設けることによって塗布ローラ61の反時計回りの従動回転時に従動回転可能に構成し動作させる点、溶剤パイプ73を伸縮かつ変位可能なフレキシブルチューブに変更・構成して動作させる点が主に相違する例である。
第1の例では、第1の実施形態と比べて、溶剤含有ローラ71は塗布ローラ61の反時計回りの従動回転時に従動回転しつつ塗布ローラ61の外周部に有機溶剤を供給することとなるので、ローラ駆動モータ74を不要とすることで部品点数を減らして有機溶剤供給手段を簡素化できるという利点がある。
第2の例は、第1の例に加えてまたは独立して、ポンプモータ76を除去して、これに代えてポンプ75がメインモータ112の回転駆動力、すなわち版胴9の時計回りの回転駆動力によって作動するように構成すると共に、ポンプ75の駆動を断接する電磁クラッチを設けて動作させる例である。
第3の例は、マスタ溶解装置60,60A,60Bの何れか一つと比較して、有機溶剤供給手段79の溶剤含有ローラ71を除去しこれに代えて、塗布ローラ61の外周部へ直接的に有機溶剤を噴射して供給するジェットノズルを配設した点が主に相違する例である。上記ジェットノズルから有機溶剤を噴射するための駆動手段としては、往復ポンプからなるポンプモータ76に代えて、圧縮ポンプを駆動するポンプモータを採用すればよい。
第4の例は、マスタ溶解装置60,60A,60Bの何れか一つと比較して、有機溶剤供給手段79の溶剤含有ローラ71、溶剤パイプ73およびローラ駆動モータ74を除去しこれらに代えて、溶剤パイプ73を伸縮かつ変位可能なフレキシブルチューブに変更すると共に、塗布ローラ61のローラ軸61aの一部に有機溶剤を通過させる孔を開け、かつ、これに連通する状態で塗布ローラ61の内部から外周部に向かう放射状の孔を開けて塗布ローラ61の外周部に有機溶剤を圧送・供給するように構成して動作させる点が主に相違する例である。
(第4の実施形態)
図5および図7に、第4の実施形態を示す。
第4の実施形態は、第1の実施形態と比較して、マスタ溶解装置60に代えたマスタ溶解装置80を有することが相違し、その他の構成は第1の実施形態と同様である。マスタ溶解装置80は、排版搬送ローラ対33配置部と剥離爪37配置部との間の版胴9の外周面近傍に配設されていて、印刷終了後に、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度に版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35を化学的に溶かす溶解手段としての有機溶剤を塗布する塗布ヘッド81等を具備している。
マスタ溶解装置80は、マスタ溶解装置60と比較して、図7に示すように、塗布ローラ61に代えた塗布ヘッド81を有する点、変位手段67に代えた変位手段87を有する点、有機溶剤供給手段79に代えた有機溶剤供給手段92を有する点、および制御手段68に代えた制御手段88を有する点が主に相違する。
すなわち、マスタ溶解装置80は、図7に示すように、版胴9上のマスタ21に接離自在に構成されその製版画像形成部35に接触してこれを化学的に溶かすための上記有機溶剤を含浸可能な溶剤含浸部材81bを先端部(図において上端部)に備えた塗布ヘッド81と、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bに有機溶剤を供給し含浸させる有機溶剤供給手段92と、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bを、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触させる図7に二点鎖線で示す当接位置とこの当接位置から離間させる同図に実線で示す離間位置との間で変位させる変位手段87と、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した印刷終了後に、ポンプ75が作動するようにポンプモータ76を制御し、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bが当接位置を占めるように変位手段87を制御すると共に、版胴9が回転するようにメインモータ112を制御する制御手段88とから主に構成されている。
塗布ヘッド81は、上記溶剤含浸部材81bとこれを着脱自在に保持する含浸保持部材81aとからなる。塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bは、変位手段87によって版胴9上のマスタ21に接離自在に構成されている。含浸保持部材81aは、耐有機溶剤性を有する、例えばステンレススチールやアルミニウム等の金属または樹脂等で形成されていて、少なくとも版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の幅寸法Wa(図4参照)よりも長く延在し、第1の実施形態のアーム対64間の幅寸法と同一の一対のアーム84、84の一端部(図において上端部)間に固着されている。
溶剤含浸部材81bは、耐有機溶剤性および有機溶剤吸収保持性を有する、例えばポリプロピレンのフェルトで形成されている。溶剤含浸部材81bの用紙幅方向Yに沿う幅寸法は、図4に示した塗布ローラ61の幅寸法Wbと同一に形成されている。溶剤含浸部材81bは、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35に接触する部位である図における右端表面が、少なくとも製版画像形成部35への有機溶剤の塗布による溶解部分を破壊する程度の粗さ(実施例的には、JIS B 0601の中心線平均粗さRa=50〜100程度)および硬さを備えて形成されている。
換言すれば、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bの硬さ、外周表面の粗さおよび版胴9上のマスタ21に対する塗布ヘッド81の押し付け力(後述するソレノイド対85の押し付け力)が次の要求性能を満足するように詳細設計がなされる。
すなわち、有機溶剤を含浸した塗布ヘッド81の要求性能としては、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に溶かす製版画像による転写をすることができなくする程度に溶かすと共に破壊する(機密保持要求性能)と共に、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に溶かし(排版品質要求性能)、かつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように(印刷品質要求性能)が挙げられる。
有機溶剤供給手段92は、図2に示した有機溶剤供給手段79と比較して、溶剤トレイ72、溶剤含有ローラ71、ローラ駆動モータ74および上記ローラ駆動機構を除去した点、溶剤パイプ73に代えて、溶剤含浸部材81bに有機溶剤を供給・搬送する可撓性および伸縮性を有する溶剤チューブ91(フレキシブルチューブ)を有する点が主に相違する。
有機溶剤供給手段92のその他の構成は、図2に示した有機溶剤供給手段79と同様であり、すなわち溶剤チューブ91に連通され有機溶剤を貯蔵する図示しない有機溶剤ボトルと、この有機溶剤ボトル内の有機溶剤を汲み出し溶剤チューブ91を介して塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bに圧送する図7に模式的に示すポンプ75と、このポンプ75を駆動する図7に模式的に示すポンプモータ76とから主に構成されている。
溶剤チューブ91は、耐有機溶剤性の材料で形成されていて、溶剤含浸部材81bの紙面の手前側および奥側に延びた長さ方向に亘って有機溶剤が均一に供給・含浸されるように、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bのほぼ中央部およびその両端部の計3箇所に分配配置されていて、ポンプ75に至る箇所で1本に集合した配管構成となっている。また、溶剤チューブ91は、ポンプ75で圧送された有機溶剤が同チューブ91内および塗布ヘッド81の部分に残留しないように図において左上がりの傾斜をもって配置されている。
変位手段87は、第1の実施形態の変位手段67と比較して、その変位量、塗布ヘッド81の支持の仕方および各構成要素の配置状態が若干相違するだけであり、その構成要素はほぼ同様であるため、図2の変位手段67の各構成要素の符号に数値「20」を加えたことをもって、その説明をできるだけ省略する。変位手段87は、揺動部材としてのアーム対84、支軸82、付勢手段としての引張ばね対83、駆動手段としてのソレノイド対85から主に構成されている。
各アーム84は、板状をなし、その一端部(図7の上端部)には塗布ヘッド81の含浸保持部材81aが固着され、他端部(図7の下端部)には各ソレノイド85のプランジャ85aがピン86を介して緩く連結されている。アーム対84における上下方向のほぼ中央部には、その両端部が図4を借りて説明すると側板対34a、34bに所定角度回動自在に支持された支軸82が固着されている。各アーム84における塗布ヘッド81の各固着部と支軸82の各固着部との間には、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bを常に離間位置を占める向きに付勢する引張ばね83の一端部がそれぞれ係止されている。引張ばね対83の他端部は、図4を借りて説明すると側板対34a、34bに固着された図示しない不動部材に係止されている。図7においては、側板対34a、34bの図示を省略している。
ソレノイド対85は、同一の仕様(使用電力、形状寸法等)かつプル型のものを用いている(後述する第5および第6の実施形態等におけるソレノイド対85でも同様のため、以下、この説明を省略する)。同じく、引張ばね対83も同一の仕様(ばね荷重、形状寸法等)のものを用いている(後述する第5および第6の実施形態等における引張ばね対83でも同様のため、以下、この説明を省略する)。
なお、駆動手段としてのソレノイド対85および付勢手段としての引張ばね対83は、これに限らず、例えばマスタ溶解装置のコストダウンを優先し、版胴9の用紙幅方向Yに沿う版胴9の両端部位置での塗布ヘッド81との均一な当接状態をそれほど望まなくてもよいような場合には、ソレノイド85は側板34aまたは34bの一方にのみ配置しても構わない(第5および第6の実施形態におけるソレノイド85および引張ばね83でも同様のため、以下、この説明を省略する)。
制御手段88は、第1の実施形態の制御手段68と同様に、例えば図示しないCPU、記憶手段としての図示しないROM、RAMから構成されている。制御手段88の入力構成も第1の実施形態と同様である。
制御手段88の上記CPUに入力された第1の実施形態と同様の各信号は、上記ROMに記憶された後述する動作プログラムに基づいて演算処理され、図示しないモータ駆動回路を介してメインモータ112に、図示しないモータ駆動回路を介してポンプモータ76に、図示しないソレノイド駆動回路を介してソレノイド対85に、それぞれ図示しない発光ダイオード駆動回路および液晶駆動回路を介して表示装置58および59に、それぞれ動作・指令信号として出力されるようになっている。
制御手段88は、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、ポンプモータ76をオン駆動・制御すると共に、塗布ヘッド81が当接位置を占めるように、すなわち塗布ヘッド81の上記有機溶剤を含浸した溶剤含浸部材81bが版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して有機溶剤を塗布・供給することで熱可塑性樹脂フィルム21b部分を溶かしながら破壊するように変位手段87のソレノイド対85をオン駆動・制御し、塗布ヘッド81が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように、かつ、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外の部位に接触しないように変位手段87のソレノイド対85をオフ駆動・制御する機能を有する。
上述の構成に基づき、第4の実施形態の動作を第1の実施形態のそれと相違する点を中心に下記する。
ユーザは画像読取部7に印刷すべき原稿69をセットし、操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下する。
製版スタートキー47が押下されると、先ず、排版部5において前回の印刷で使用された版胴9の外周面上から使用済みのマスタ21を剥離・排版する排版動作が行われる。本実施形態では、排版動作により版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21の少なくとも製版画像形成部35は、後で詳述するようにマスタ溶解装置80の作動によって、既に、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように上記有機溶剤により溶かされている。
なお、後述するように所定の印刷枚数の正規の印刷終了後になるまで、制御手段88からの指令によってソレノイド対85には通電されずソレノイド対85は非励磁状態でオフされており、引張ばね対83の付勢力によって、アーム対84の一端部に支持されている塗布ヘッド81は図7に実線で示すように離間位置を占めて同位置に保持されたままである。
既に上記のとおり有機溶剤によって化学的に溶かされている使用済みのマスタ21を外周面に巻装している版胴9は、メインモータ112が起動されることにより、マスタ21の先端部が剥離ローラ32と対応する位置である排版位置に達するまで回転駆動されて、第1の実施形態と同様の排版動作、画像読取部7での原稿69の読取動作、製版動作、給版動作、版付け動作、適宜実行される試し刷り動作、正規の印刷動作が行われる。
正規の印刷動作によって、設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となる。この際、制御手段88はテンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行い、その残印刷枚数を表示装置58に表示する。そして、制御手段88は所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置がホームポジションを占めたと認識した後、メインモータ112を起動させることにより、版胴9は例えば版付け時と同様の低速ないしはそれよりもさらに遅い回転周速度で時計回りに回転し始める。
制御手段88は上記メインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9のクランパ12配置部が塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bに対向する位置を通り過ぎる頃の版胴9の回転位置において、ポンプモータ76をオン駆動する。
これにより、上記有機溶剤ボトルに貯蔵された上記有機溶剤が汲み出され、溶剤チューブ91を通って塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bに圧送・供給され、溶剤含浸部材81bに含浸される。その後、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の先端部分に当接するタイミングにて、変位手段87のソレノイド対85に通電すべくこれをオン駆動する。ソレノイド対85が通電・オンされると、アーム対84の他端部に連結されているプランジャ85aが図7において左方に引き込まれることにより、アーム対84の一端部に支持されている塗布ヘッド81が図7において支軸82を中心として時計回りに引張ばね対83の付勢力に抗して揺動・変位されて当接位置を占めることとなる。
塗布ヘッド81が当接位置を占めると、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bの粗い表面が図7において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触してその熱可塑性樹脂フィルム21b表面に上記有機溶剤を塗布することにより、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされると共に、その溶解部分(溶解されつつある未溶解部分も含む)が溶剤含浸部材81bの粗い表面によってあたかも削られ引きずられるように引きずり損傷・破壊されていくので、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上のマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように化学的に溶解されることとなる。
版胴9がさらに回転して、版胴9のクランパ12配置部が塗布ヘッド81に近づく頃の版胴9の回転位置に至ると、塗布ヘッド81が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように変位手段87のソレノイド対85がオフ駆動・制御され、引張ばね対83の付勢力によって塗布ローラ61が離間位置を占める。
版胴9が所定回数回転駆動されて製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21bへの上記有機溶剤の塗布および上記引きずり損傷・破壊動作が終了すると、ポンプモータ76をオフすることによりポンプ75の駆動を停止させた後、制御手段88は上記メインモータ112の回転位置信号を参照し、ソレノイド対85への通電をオフすることにより、引張ばね対83の付勢力によって塗布ヘッド81が離間位置を占めることとなる。
ここで、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bを版胴9上の使用済みのマスタ21の製版画像形成部35に押し付ける回数、換言すれば版胴9を複数回回転させて塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bを版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に当接・押し付ける回数は、第1の実施形態で説明したと同様にユーザの所望により任意に設定することができる。すなわち、上記ROMの動作プログラム内容によっては、または上記ROMに代えたPROMを用いることによって、版胴9の複数回転に亘ってマスタ溶解装置80が作動するように設定される場合があるが、この際には、制御手段88は上記メインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9のクランパ12配置部が塗布ヘッド81に対向する位置を通り過ぎる前の版胴9の回転位置において、ソレノイド対85への通電をオフすることにより、引張ばね対83の付勢力によって塗布ヘッド81が離間位置を占めることとなり、塗布ヘッド81とクランパ12配置部との干渉が避けられる。このように、版胴9の複数回転に亘ってマスタ溶解装置80が作動する場合、版胴9の1回転のみマスタ溶解装置80が作動する場合と比べて、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bによって版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分を上記有機溶剤で溶かす際の面密度、溶解量および破壊程度も上がることで十分に溶解破壊されることとなって、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像がより確実に読めなくなると共に製版画像による転写もより確実にすることができなくなるので、版胴9上に巻装された製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持がより確実に行えるようになる。
従って、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の利点が得られると共に、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bが着脱・交換可能に構成されているので、マスタ21の熱可塑性樹脂フィルム21bの厚みに応じた表面粗さの変更や、溶剤含浸部材81b磨耗時の交換、当接面の形状変更等容易に実施できるから使い勝手・作業性が向上する。
第4の実施形態でも、版胴9の軸線方向に沿って第1の実施形態の塗布ローラ61の幅寸法Wbと同様に塗布ヘッド81を長く形成したため、版胴9の軸線方向に沿う版胴9外周面の平行度が確保できないような場合が想定される。このような場合には、版胴9上のマスタ21の版胴9の軸線方向に沿う平行度も確保できなくなるから、版胴9上のマスタ21の幅方向において部分的にその製版画像が判読可能になる虞がある。
そこでこのような場合には、溶剤含浸部材81bの材質および形状を工夫すればよい。また、版胴9外周面の用紙幅方向Y位置による平行度の精度に傾向性がある場合(例えば中央部が凹傾向)には、その傾向に合わせた溶剤含浸部材81bの断面形状(例えばその中央部を凸傾向)にしたり、溶剤含浸部材81bの長さを用紙幅方向Y位置の傾向に合わせて調整したりしてもよい。
さらには、上記特開平9−142001号公報の段落「0092」〜「0122」に記載され図18および図19に示されているように、発熱部材(201)と同様に塗布ヘッド81の用紙幅方向Yの長さを短く形成すると共に、上記公報と同様のねじ機構によって用紙幅方向Yに移動自在に構成して、版胴9上のマスタ21の幅方向において製版画像形成部35を確実に化学的に溶解できるように同方向にラップ代を確保しながら上記有機溶剤を製版画像形成部35に塗布すると共に、さらに製版画像形成部35の上記有機溶剤の塗布溶解部分に引きずり損傷を与え破壊するようにしても構わない(後述する第5および第6の実施形態でも同様であるため、以下、この説明を省略する)。
なお、溶剤含浸部材81bの表面の粗さおよび硬さを熱可塑性樹脂フィルム21b表面部分に傷をつけることができように構成すると共に、上記印刷終了後に行われるメインモータ112、ポンプモータ76およびソレノイド対85の動作順序を次のように変更してもよい。すなわち、上記印刷終了後に、先ずメインモータ112を回転駆動することにより版胴9を時計回りに回転させながら、上記回転位置でソレノイド対85をオン駆動することにより、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bをして当接位置を占めさせて製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分に傷をつけた後に、その製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分に上記有機溶剤を塗布・供給すべくポンプモータ76をオン駆動させるように作動させてもよい。
この場合、溶剤含浸部材81bの粗い表面が製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面に適度の傷をつけ荒らしながら上記有機溶剤を塗布することで、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b傷部分への該有機溶剤の浸透が促進されるので、熱可塑性樹脂フィルム21b部分の溶解効率(溶解量)が向上し、その溶解部分(溶解されつつある未溶解部分も含む)が溶剤含浸部材81bの粗い表面によってさらに削られるように破壊されることとなる(後述する第5および第6の実施形態等でも同様であるため、以下、この説明を省略する。但し、第6の実施形態では、上記「印刷終了後に」に代えた「排版動作時に」となる)。
また、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bの表面に付与された、「少なくとも製版画像形成部35への上記有機溶剤の塗布による溶解部分を破壊する程度の粗さ」は、その利点を望まなくてもよいのであれば不要としてもよい。また、「版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面部位(厚み方向)に傷をつけて上記有機溶剤の浸透による溶解を促進するための、あるいは溶解された熱可塑性樹脂フィルム21b部分をさらに破壊するための損傷ローラまたは突起状ないしはヤスリ状部分を備えた損傷部材を、塗布ヘッド81とは別体的に設けてもよい(後述する第5および第6の実施形態等でも同様であるため、以下、これらの説明を省略する)。
(第5の実施形態)
図6および図7に、第5の実施形態を示す。
第5の実施形態は、第4の実施形態と比較して、機密保持モードが設定可能な孔版印刷装置1であって、マスタ溶解装置80に代えたマスタ溶解装置80Aを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置80Aは、第4の実施形態のマスタ溶解装置80と比較して、操作パネル46に代えた図6に示す操作パネル46Aを有する点、制御手段88に代えた図7に示す制御手段88Aを有する点が主に相違する。この他の構成は、第4の実施形態と同様である。
制御手段88Aは、制御手段88と比較して、機密モードキー36の押下により生成される機密保持モード設定に係る信号、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、ポンプモータ76をオン駆動・制御すると共に、塗布ヘッド81が当接位置を占めるように、すなわち塗布ヘッド81の上記有機溶剤を含浸した溶剤含浸部材81bが版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して有機溶剤を塗布・供給することで熱可塑性樹脂フィルム21b部分を溶かしながら破壊するように変位手段87のソレノイド対85をオン駆動・制御し、塗布ヘッド81が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように、かつ、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外の部位に接触しないように変位手段87のソレノイド対85をオフ駆動・制御する機能を有する。
上述の構成に基づき、第5の実施形態の動作について、第4の実施形態のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに実行される排版動作が、前回の印刷終了時にユーザが機密モードキー36を押下せずに機密保持モードが設定されていない場合、マスタ溶解装置80Aが非作動状態(塗布ヘッド81が離間位置を占めたままの状態)にあって、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21については製版画像を読めると共に製版画像による転写をすることができるようになっている点である。
第2の相違点は、第4の実施形態と同様に、設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となった時に、ユーザが機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合に、制御手段88Aからの指令によって、第4の実施形態と同様に始めてマスタ溶解装置80Aの各構成要素が作動する点にある。
従って、第5の実施形態によれば、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21は元より、マスタ21上の機密情報の外部流出を防止することができ、版胴9上の製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持が確実に行える利点がある。しかも、ユーザによって製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密の要否が判断されて、機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合にマスタ溶解装置80Aが第4の実施形態と同様に作動することにより、例えば連続して機密保持が不要な印刷を行う場合、すなわち排版から印刷・排紙工程に至る一連の動作を連続して行うような場合には、マスタ溶解装置80Aが非作動状態のままであるからトータルの印刷時間を第4の実施形態よりも短縮することができる。
(第6の実施形態)
図5および図7に、第6の実施形態を示す。
第6の実施形態は、第4の実施形態と比較して、マスタ溶解装置80に代えたマスタ溶解装置80Bを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置80Bは、第4の実施形態のマスタ溶解装置80と比較して、制御手段88に代えた制御手段88Bを有する点が主に相違する。この他の構成は、第4の実施形態と同様である。
制御手段88Bは、制御手段88と比較して、図7に示すように、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷終了後に変位手段87のソレノイド対85を作動させるのに代えて、排版動作時に、すなわち製版スタートキー47からの排版動作起動に係る信号に基づいて、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、ポンプモータ76をオン駆動・制御すると共に、塗布ヘッド81が当接位置を占めるように、すなわち塗布ヘッド81の上記有機溶剤を含浸した溶剤含浸部材81bが版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して有機溶剤を塗布・供給することで熱可塑性樹脂フィルム21b部分を溶かしながら破壊するように変位手段87のソレノイド対85をオン駆動・制御し、塗布ヘッド81が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように、かつ、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外の部位に接触しないように変位手段87のソレノイド対85をオフ駆動・制御する機能を有する点が主に相違する。
上述の構成に基づき、第6の実施形態の動作について、第4の実施形態のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、制御手段88Bからの指令によってメインモータ112およびポンプモータ76の起動、変位手段87(ソレノイド対85)による塗布ヘッド81の作動が行われずに、機密保持状態にない点にある。すなわち、版胴ユニットを装置本体8から離脱させて、版胴9上のマスタ21の製版画像に係る機密情報を視認によりあるいは用紙への転写によって読み取ることが可能である。
第2の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに生成された排版動作起動に係る信号に基づいて、制御手段88Bは次のような動作を実行させる点である。すなわち、使用済みのマスタ21を外周面に巻装していてホームポジションを占めている版胴9は、メインモータ112が起動されることにより、例えば版付け時と同様の低速ないしはそれよりもさらに遅い回転周速度で時計回りに回転し始め、版胴9のクランパ12配置部が塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bに対向する位置を通り過ぎる頃の版胴9の回転位置において、ポンプモータ76をオン駆動する。
これにより、上記有機溶剤ボトルに貯蔵された上記有機溶剤が汲み出され、溶剤チューブ91を通って塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bに圧送・供給され、溶剤含浸部材81bに含浸される。その後、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35の先端部分に当接するタイミングにて、変位手段87のソレノイド対85をオン駆動することにより、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bが当接位置を占め、溶剤含浸部材81bの粗い表面が図7において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触してその熱可塑性樹脂フィルム21b表面に上記有機溶剤を塗布することにより、製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされると共に、その溶解部分(溶解されつつある未溶解部分も含む)が溶剤含浸部材81bの粗い表面によってあたかも削られ引きずられるように引きずり損傷・破壊されていくので、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上のマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように化学的に溶解されることとなる。
そして、第1の実施形態と同様の排版動作(但し、版胴9上のマスタ21における製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b部分は、上記のとおり、上記有機溶剤の塗布・損傷によって溶解されかつ引きずり損傷・破壊されている)が行われる。
版胴9がさらに回転して、版胴9のクランパ12配置部が塗布ヘッド81に近づく頃の版胴9の回転位置に至ると、塗布ヘッド81が版胴9のクランパ12配置部と干渉しないように変位手段87のソレノイド対85がオフ駆動・制御され、引張ばね対83の付勢力によって塗布ローラ61が離間位置を占める。
版胴9が所定回数回転駆動されて製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21bへの上記有機溶剤の塗布および上記引きずり損傷・破壊動作が終了すると、ポンプモータ76をオフすることによりポンプ75の駆動を停止させた後、制御手段88は上記メインモータ112の回転位置信号を参照し、ソレノイド対85への通電をオフすることにより、引張ばね対83の付勢力によって塗布ヘッド81が離間位置を占めることとなる。
ここで、上記排版動作を行う直前に、塗布ヘッド81の溶剤含浸部材81bを版胴9上の使用済みのマスタ21の製版画像形成部35に押し付ける回数は、第1の実施形態と同様、ユーザの所望により、あるいは上述した温度等を考慮して任意に設定することができる。
従って、第6の実施形態によれば、使用済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21の機密保持が確実に行える利点がある。加えて、第6の実施形態では所定の印刷終了後においては、未だ版胴9上のマスタ21が損傷・溶解されていないから、このマスタ21を用いての追加印刷が可能となる利点もある。
上述したとおり、第6の実施形態では、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、版胴ユニットを装置本体8から離脱させて、版胴9上のマスタ21の製版画像に係る機密情報を視認によりあるいは用紙への転写によって読み取ることが可能であるから、従来と同様に、例えば特開平9−142001号公報の図4に示されている版胴ロック機構および図6に示されている版胴駆動機構におけるギヤ同士の係脱機構ならびに第5の実施形態で用いた操作パネル46A(機密モードキー36)を採用して、版胴ユニットを装置本体8から離脱不能にすることにより機密保持を図るようにすることが望ましい。
塗布ヘッド81が当接位置を占めたとき、溶剤含浸部材81bが版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に押し当たる角度は、図7に二点鎖線で示した例に限らず、いわゆるカウンタ角度で強く当たるように構成したり、逆に弱い当たりの角度に構成したりすることもできる。
塗布ヘッド81は、これに限らず、着脱自在な溶剤含浸部材81bの上記利点を望まなくてもよいのであれば、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に当接する塗布ヘッドの部分に有機溶剤が滲み出る小さな孔を開けた簡素な構成のものであっても構わない。
各マスタ溶解装置60、60A、60B、80、80A、80Bは、排版搬送ローラ対33配置部と剥離爪37配置部との間の版胴9の外周面近傍に配設したが、これに限らず、版胴9の外周面近傍であってスペース的に余裕のある適宜の部位に配設しても勿論構わない。
(第7の実施形態)
図8に、第7の実施形態を示す。
第7の実施形態は、第1の実施形態と比較して、マスタ溶解装置60に代えて、マスタ溶解装置95を有することが主に相違し、その他の構成は第1の実施形態と同様である。
マスタ溶解装置95は、所定枚数の用紙Pへの印刷終了後に、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度に版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35を化学的に溶かす溶解手段として、版胴上9のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35(図13参照)に有機溶剤を噴射する噴射手段としてのスプレーガン96等を具備している。
マスタ溶解装置95は、排版搬送ローラ対33配置部と剥離爪37配置部との間の版胴9の外周面近傍に配設されている。なお、マスタ溶解装置95は、上記配設位置に限らず、例えば製版部3とレジストローラ対27との間の版胴9の外周面近傍に配設したり、版胴9の上方の外周面近傍に配設したりしても構わない。
マスタ溶解装置95は、マスタ溶解装置60と比較して、塗布ローラ61、変位手段67および有機溶剤供給手段79を除去してこれに代えて、上記スプレーガン96およびスプレーガン96に有機溶剤を圧送・供給して霧化するように駆動する圧縮ポンプモータを内蔵した圧縮ポンプ97を有する点、制御手段68に代えた制御手段98を有する点が主に相違する。以下、説明の簡明化のため上記圧縮ポンプモータを圧縮ポンプ97というときがある。
スプレーガン96は、図8および図9に示すように、有機溶剤を噴射・噴霧するノズル孔96aを版胴9の軸線方向に沿って複数(多数)並べて構成されている。スプレーガン96は、圧縮ポンプ31に連通されている。圧縮ポンプ97は、有機溶剤を貯蔵した図示しない有機溶剤ボトルから送られてくる有機溶剤を高圧化した状態でノズル孔96aへ圧送するポンプであり、例えば往復ポンプや歯車ポンプからなる。
スプレーガン96は、圧縮ポンプ97の作動によって適度に霧化した有機溶剤を版胴上9のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35に噴射・吹き付ける機構として最も簡素な機構となっている。上記各有機溶剤は、その粘度が低い傾向にあるから適度に霧化するための動粘度の範囲として特別の調整を行う必要がない。
スプレーガン96のノズル孔96aの配置形態としては、図8に示すように、版胴上9のマスタ21の製版画像形成部35の表面にある距離を置いて、すなわち少なくともクランパ12配置部と干渉しない程度に、かつ、ノズル孔96aから噴射した有機溶剤が製版画像形成部35以外の部位へ広がって付着しないように版胴9の外周突出部分から離間させて配置し、噴射するとよい。このように、本実施形態では、第1ないし第6の実施形態のような変位手段67、87は不要である。
スプレーガン96は、図9に示した先端部形状に限らず、図10に示すような、個別のノズル15bを複数(多数)並べて形成したものでもよい。有機溶剤を噴射・吹き付ける方向は、版胴上9のマスタ21の製版画像形成部35に対して上からでも下からでもよいが、ノズル孔96aおよびノズル15bの中心と版胴9の支軸11中心とを結ぶ半直線上にノズル孔96aおよびノズル15bの中心を配置することが望ましい。また、スプレーガン96と圧縮ポンプ97との組み合わせに代えて、インキジェット記録装置やインキジェットプリンタ等に採用されていると同様のインキジェットヘッドを応用してそのインキジェットノズルから上記有機溶剤を噴射するように構成することも勿論可能である。
制御手段98は、第1の実施形態の制御手段68と同様に、例えば図示しないCPU、記憶手段としての図示しないROM、RAMから構成されていて、その入力構成も第1の実施形態と同様である(但し、図8では図2に示されていると同様の入力構成、すなわち操作パネル46、パルス検出センサ123、ホームポジションセンサ126および印刷枚数カウンタ128を省略している)。
制御手段98の上記CPUに入力された第1の実施形態と同様の各信号は、上記ROMに記憶された後述する動作プログラムに基づいて演算処理され、図示しないモータ駆動回路を介してメインモータ112に、図示しない圧縮ポンプモータ駆動回路を介して圧縮ポンプ97に、それぞれ図示しない発光ダイオード駆動回路および液晶駆動回路を介して表示装置58および59に、それぞれ動作・指令信号として出力されるようになっている。
制御手段98は、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、スプレーガン96を作動すべく圧縮ポンプ97をオン駆動・制御し、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)にスプレーガン96の作動を停止すべく圧縮ポンプ97をオフ駆動・制御する機能を有する。
マスタ溶解装置95の要求性能としては、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に溶かす(機密保持要求性能)と共に、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に溶かし(排版品質要求性能)、かつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように(印刷品質要求性能)が挙げられる(第8および第9の実施形態におけるマスタ溶解装置95Aおよび95B、ならびに変形例4ないし6におけるマスタ溶解装置100、100Aおよび100Bでも同様であるため、以下このような説明を省略する)。
上述の構成に基づき、第7の実施形態の動作を第1の実施形態のそれと相違する点を中心に下記する。
ユーザは画像読取部7に印刷すべき原稿69をセットし、操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下する。
製版スタートキー47が押下されると、先ず、排版部5において前回の印刷で使用された版胴9の外周面上から使用済みのマスタ21を剥離・排版する排版動作が行われる。本実施形態では、排版動作により版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21の少なくとも製版画像形成部35は、後で詳述するようにマスタ溶解装置95の作動によって、既に、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように上記有機溶剤によって溶かされている。
なお、後述するように所定の印刷枚数の正規の印刷終了後になるまで、制御手段98からの指令によって圧縮ポンプ97は駆動されず圧縮ポンプ97は非駆動状態となったままである。
既に上記のとおり上記有機溶剤によって化学的に溶かされている使用済みのマスタ21を外周面に巻装している版胴9は、メインモータ112が起動されることにより、マスタ21の先端部が上記排版位置に達するまで回転駆動されて、第1の実施形態と同様の排版動作、画像読取部7での原稿69の読取動作、製版動作、給版動作、版付け動作、適宜実行される試し刷り動作、正規の印刷動作が行われる。
正規の印刷動作によって、設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となる。この際、制御手段98はテンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行い、その残印刷枚数を表示装置58に表示する。そして、制御手段98は所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置がホームポジションを占めたと認識した後、メインモータ112を起動させることにより、版胴9は例えば版付け時と同様の回転周速度ないしそれよりも遅い回転周速度で時計回りに回転し始める。
制御手段98はパルス検出センサ123で検出され上記パルスカウンタおよび比較器を通過して送信されるメインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9上のマスタ21の先端部がスプレーガン96のノズル孔96aにほぼ対向する版胴9の回転位置において、圧縮ポンプ97をオン駆動する。
圧縮ポンプ97が駆動されて、図8において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21に形成された製版画像形成部35にスプレーガン96のノズル孔96aから有機溶剤が霧化状態で噴射されることにより、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に上記有機溶剤が付着してその熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされるので、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように化学的に溶解されることとなる。
版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)においては、制御手段98からの指令によって圧縮ポンプ97がオフ駆動・制御されることにより、スプレーガン96の作動が停止されるので、製版画像形成部35以外のマスタ21およびクランパ12配置部近傍に有機溶剤が噴射されて付着するような不具合は発生しない。
ここで、版胴9を複数回回転させることにより、スプレーガン96のノズル孔96aからの霧化された有機溶剤により版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35を十分に溶解させることも勿論可能である。従って、第7の実施形態でも、第1の実施形態と同様の利点を得ることができる。
(第8の実施形態)
図8に、第8の実施形態を示す。
第8の実施形態は、第7の実施形態と比較して、機密保持モードが設定可能な孔版印刷装置1であって、マスタ溶解装置95に代えたマスタ溶解装置95Aを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置95Aは、第7の実施形態のマスタ溶解装置95と比較して、操作パネル46に代えた図6に示す操作パネル46Aを有する点、制御手段98に代えた図8に示す制御手段98Aを有する点が主に相違する。この他の構成は、第7の実施形態と同様である。
制御手段98Aは、機密モードキー36の押下により生成される機密保持モード設定に係る信号、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、スプレーガン96を作動すべく圧縮ポンプ97をオン駆動・制御し、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)にスプレーガン96の作動を停止すべく圧縮ポンプ97をオフ駆動・制御する機能を有する。
上述の構成に基づき、第8の実施形態の動作について、第7の実施形態のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに実行される排版動作が、前回の印刷終了時にユーザが機密モードキー36を押下せずに機密保持モードが設定されていない場合、マスタ溶解装置95Aが非作動状態(圧縮ポンプ97がオフのままの状態)にあって、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21については製版画像を読めると共に製版画像による転写をすることができるようになっている点である。
第2の相違点は、第7の実施形態と同様に、設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となった時に、ユーザが機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合に、制御手段98Aからの指令によって、第7の実施形態と同様に始めて圧縮ポンプ97が作動する点にある。
従って、第8の実施形態によれば、第7の実施形態と同様の利点(但し、「製版済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず」という利点を除く)がある。しかも、ユーザによって製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密の要否が判断されて、機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合に、マスタ溶解装置95Aが第7の実施形態と同様に作動することにより、例えば連続して機密保持が不要な印刷を行う場合、すなわち排版から印刷・排紙工程に至る一連の動作を連続して行うような場合には、マスタ溶解装置95Aが非作動状態のままであるからトータルの印刷時間を第7の実施形態よりも短縮することができる。
(第9の実施形態)
図8に、第9の実施形態を示す。
第9の実施形態は、第7の実施形態と比較して、マスタ溶解装置95に代えたマスタ溶解装置95Bを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置95Bは、第7の実施形態のマスタ溶解装置95と比較して、制御手段98に代えた制御手段98Bを有する点が主に相違する。この他の構成は、第7の実施形態と同様である。
制御手段98Bは、制御手段98と比較して、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷終了後に圧縮ポンプ97をオン駆動させるのに代えて、排版動作時に、すなわち製版スタートキー47からの排版動作起動に係る信号に基づいて、圧縮ポンプ97が作動するように上記圧縮ポンプモータをオン駆動・制御すると共に、版胴9が回転するようにメインモータ112を制御する機能を有する点が主に相違する。
上述の構成に基づき、第9の実施形態の動作について、第7の実施形態のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、制御手段98Bからの指令によってメインモータ112が非起動(オフ)、圧縮ポンプ97が非駆動(オフ)のままの状態にあって、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21については製版画像を読めると共に製版画像による転写をすることができるようになっていて機密保持状態にない点にある。
第2の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに生成された排版動作起動に係る信号に基づいて、制御手段98Bは次のような制御動作を実行する点である。すなわち、版胴9上の使用済みのマスタ21の先端部(製版画像形成部35の先端部)がスプレーガン96のノズル孔96aにほぼ対向する版胴9の回転位置において、圧縮ポンプ97をオン駆動する。
以下、第7の実施形態の動作と同様に圧縮ポンプ97が駆動されて、図8において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21に形成された製版画像形成部35にスプレーガン96のノズル孔96aから有機溶剤が霧化状態で噴射されることにより、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に上記有機溶剤が付着してその熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされるので、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように化学的に溶解されることとなる。
版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)においては、制御手段98Bからの指令によって圧縮ポンプ97がオフ駆動・制御されることにより、スプレーガン96の作動が停止されるので、製版画像形成部35以外のマスタ21およびクランパ12配置部近傍に有機溶剤が噴射されて付着するような不具合は発生しない。
従って、第9の実施形態によれば、第6の実施形態と同様の利点がある。
(変形例4)
図11ないし図13に、変形例4を示す。
変形例4は、第7の実施形態と比較して、マスタ溶解装置95に代えて、マスタ溶解装置100を有することが主に相違し、その他の構成は第7の実施形態と同様である。
マスタ溶解装置100は、第7の実施形態のマスタ溶解装置95と比較して、図11に示すように、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35への上記有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与える損傷部材としての損傷ローラ161を付加した点、損傷ローラ161を、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35に接触させる図12に二点鎖線で示す当接位置とこの当接位置から離間させる図12に実線で示す離間位置との間で変位させる変位手段167を付加した点、および第7の実施形態の制御手段98に代えた制御手段101を有する点が主に相違する。
損傷ローラ161は、剥離ローラ32と剥離爪37配置部との間の版胴9の外周面近傍、すなわち剥離爪37配置部よりも版胴9の回転方向の下流側に配置されている。損傷ローラ161は、図12および図13に詳しく示すように、版胴9上のマスタ21に接離自在に構成され同マスタ21の製版画像形成部35に接触してこれを損傷させるための多数の突起161aを外周部に備えていて、回転自在に構成されている。
損傷ローラ161は、例えばステンレススチール等の金属でローラ軸161bと実質一体的に形成されている。損傷ローラ161は、外周部に形成された多数の鋭利な突起161aの面密度、突起161aの形状(損傷ローラ161における突起161a形成基部からの突起61aの長さ(高さ)およびテーパ度合いを含む)および版胴9上のマスタ21に対する損傷ローラ161の押し付け力(後述するソレノイド対165の押し付け力)が次の要求性能を満足するように詳細設計がなされる。
すなわち、損傷ローラ161の要求性能としては、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、有機溶剤が付着し溶解されつつある製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21bに引きずり損傷を与え(機密保持要求性能)、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に(排版品質要求性能)、なおかつ、メッシュスクリーン9bを損傷させない程度に(印刷品質要求性能)が挙げられる。
図13において、損傷ローラ161の用紙幅方向Yに沿う幅寸法Wbは、版胴9の外周面に巻装された製版済みのマスタ21の用紙幅方向Yに沿う幅寸法よりも短く、かつ、製版済みのマスタ21に形成された製版画像形成部35領域の用紙幅方向Yに沿う幅寸法Waよりも長く形成・設定されている。
変位手段167は、揺動部材としての一対のアーム164、164(以下、「アーム対164」という)、支軸162、付勢手段としての一対の引張ばね163、163(以下、「引張ばね対163」という)、駆動手段としての一対のソレノイド165、165(以下、「ソレノイド対165」という)から主に構成されている。
アーム164は、板状をなし、その一端部(図12の上端部)にはローラ軸161bが回転自在に支持され、他端部(図12の下端部)にはソレノイド165のプランジャ165aがピン166を介して緩く連結されている。アーム対164における上下方向のほぼ中央部には、その両端部が図4に示す側板対34a、34bに所定角度回動自在に支持された支軸162が固着されている。アーム対164におけるローラ軸161bの各支持部と支軸162の各固着部との間には、損傷ローラ161を常に離間位置を占める向きに付勢する引張ばね63の一端部がそれぞれ係止されている。引張ばね対163の他端部は、側板対34a、34bに固着された図示しない不動部材に係止されている。図12においては、側板対34a、34bの図示を省略している。図12および図13において、符号169は、各引張ばね163の付勢力による各アーム164の反時計回りの揺動を規制して損傷ローラ161を離間位置に保持するためのストッパー部材を示す。
上記のとおり、ローラ軸161bの両端部がアーム対164の一端部にそれぞれ設けられた図示しない各軸受に支持されていることにより、損傷ローラ161は、図12で説明すると、同図中矢印方向(時計回り)に回転する版胴9上の製版済みのマスタ21に形成された製版画像形成部35に接触して同図中二点鎖線で示す矢印方向(反時計回り)に従動回転可能に構成されている。
ソレノイド対165は、同一の仕様(使用電力、形状寸法等)かつプル型のものを用いている。同じく、引張ばね対163も同一の仕様(ばね荷重、形状寸法等)のものを用いている。
損傷ローラ161には、上記反時計回りの従動回転に対して、図示しない制動手段によって所定の制動力(ブレーキ力)が付与されていることにより、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35への上記有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与えるように構成されている。
ここで、所定の制動力とは、損傷ローラ161が版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に接触して図12中二点鎖線で示す反時計回りに引きずられるように従動回転しながら、損傷ローラ161の外周部の突起161aが製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面に引っ掻き傷状態の引きずり損傷を与えるような制動力を意味する。
上記制動手段としては、例えばローラ軸161bの両端部に板ばねを圧接することで制動力を付与したり、ローラ軸161bの両端部を回転自在に支持する側板34a、34bの支持部に電磁的に制動力を付与する電磁ブレーキ等が挙げられる。
なお、駆動手段としてのソレノイド対165および付勢手段としての引張ばね対163は、これに限らず、例えばマスタ溶解装置のコストダウンを優先し、版胴9の用紙幅方向Yに沿う版胴9の両端部位置での損傷ローラ161との均一な当接状態をそれほど望まなくてもよいような場合には、ソレノイド165は側板34aまたは34bの一方にのみ配置しても構わない。
制御手段101は、第7の実施形態の制御手段98と同様に、例えば図示しないCPU、記憶手段としての図示しないROM、RAMから構成されている。制御手段101の入力構成は、図12では省略しているが、図12に示すように図2に示した第1の実施形態および第7の実施形態と同様である。
制御手段101の上記CPUに入力された第1の上記各信号は、上記ROMに記憶された後述する動作プログラムに基づいて演算処理され、図示しないモータ駆動回路を介してメインモータ112に、図示しないモータ駆動回路を介して上記圧縮ポンプモータに、図示しないソレノイド駆動回路を介してソレノイド対165に、それぞれ図示しない発光ダイオード駆動回路および液晶駆動回路を介して表示装置58および59に、それぞれ動作・指令信号として出力されるようになっている。
制御手段101は、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、スプレーガン96を作動すべく圧縮ポンプ97をオン駆動・制御し、その後、損傷ローラ161が当接位置を占めるように、すなわち損傷ローラ161の突起161aが版胴9上の製版済みのマスタ21の製版画像形成部35への上記有機溶剤の付着・溶解部分に接触して傷をつけるように変位手段167のソレノイド対165をオン駆動・制御し、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)にスプレーガン96の作動を停止すべく圧縮ポンプ97をオフ駆動・制御すると共に、損傷ローラ161が離間位置を占めるように変位手段167のソレノイド対165をオフ駆動・制御する機能を有する。
上述の構成に基づき、変形例4における孔版印刷装置1の動作について第7の実施形態のそれと相違する点を下記する。これら相違点以外の動作は、第7の実施形態のそれと同様である。
第1の相違点は、製版スタートキー47の押下によって行われる排版動作の際、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21の少なくとも製版画像形成部35が、後で詳述するようにマスタ溶解装置100の作動によって、既に、版胴9上のマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように、上記有機溶剤によって溶かされていると共にその溶解した熱可塑性樹脂フィルム21b部分がさらに引きずり損傷を与えられ破壊されている点にある。
第2の相違点は次のようである。すなわち、制御手段101が所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123で検出され上記パルスカウンタおよび比較器を通過して送信されるメインモータ112の回転位置信号を参照し、版胴9上のマスタ21の先端部(製版画像形成部35の先端部)がスプレーガン96のノズル孔96aにほぼ対向する版胴9の回転位置において、圧縮ポンプ97が駆動されて、図12において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21に形成された製版画像形成部35にスプレーガン96のノズル孔96aから有機溶剤が霧化状態で噴射されることにより、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35に上記有機溶剤が付着してその熱可塑性樹脂フィルム21b部分が上記有機溶剤によって溶かされはじめる。
これと並行して、版胴9のクランパ12配置部が損傷ローラ161に対向する位置を通り過ぎた版胴9の回転位置、すなわち版胴9上の使用済みのマスタ21の先端部(製版画像形成部35の先端部)が損傷ローラ161にほぼ対向する位置の版胴9の回転位置において、変位手段167のソレノイド対165に通電すべくこれをオン駆動する。ソレノイド対165が通電・オンされると、アーム対164の他端部に連結されているプランジャ165aが図12において左方に引き込まれる(図13では上方に引き込まれる)ことにより、アーム対164の一端部に支持されている損傷ローラ161が図2において支軸162を中心として時計回りに引張ばね対163の付勢力に抗して揺動・変位されて当接位置を占めることとなる。
損傷ローラ161が当接位置を占めると、損傷ローラ161が図12において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21の溶解され始めた製版画像形成部35に接触して図12中二点鎖線で示す反時計回りに引きずられるように従動回転しながら、多数の突起161aが溶解され始めた製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面部分に引きずり損傷を与えさらに破壊していく。それ故に、版胴9上の製版済みのマスタ21に形成された製版画像を読めなくする程度であって、製版画像による転写をすることができなくする程度に、かつ、排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に、なおかつ、メッシュスクリーン9bおよびインキに悪影響を与えないように、上記有機溶剤の付着によって化学的に溶解した熱可塑性樹脂フィルム21b部分がさらに引きずり損傷を与えられので、上記有機溶剤が熱可塑性樹脂フィルム21bの厚み方向により一層浸透してさらに十分に溶解されて破壊されることとなる。
版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)においては、制御手段101からの指令によって圧縮ポンプ97がオフ駆動・制御されると共に、ソレノイド対165がオフ駆動・制御されることにより、スプレーガン96からの有機溶剤の噴射が停止されると共に、引張ばね対163の付勢力によって損傷ローラ161が離間位置を占めることとなる点にある。
ここで、版胴9を複数回回転させることにより、スプレーガン96のノズル孔96aからの霧化された有機溶剤により版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35を十分に溶解させると共に、損傷ローラ161によってその溶解された製版画像形成部35にさらに引きずり損傷をあたえることでより十分に破壊することも勿論可能である。
従って、変形例4によれば、新しい未製版のマスタを版胴に巻装することが元でマスタおよびインキを無駄にしないことは勿論のこと、製版済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21は元より、マスタ21上の機密情報の外部流出をより確実に防止することができ、版胴9上の製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密保持がより確実に行える利点がある。
変形例4ほどの顕著な利点を望まなくてもよいのであれば、製版画像形成部35への有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与えるような制動力を損傷ローラ161から除去してもよく、この場合、損傷ローラ161が図12において時計回りに回転する版胴9上のマスタ21の溶解され始めた製版画像形成部35に接触して図12中二点鎖線で示す反時計回りに従動回転しながら、多数の突起161aが製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面部分に微小なほぼドット状ないしは楕円状の傷をつけることとなる(後述する変形例5および6でも同様であり、以下、この説明を省略する)。
ここで、損傷ローラ161を版胴9上の使用済みのマスタ21の製版画像形成部35に押し付ける回数、換言すれば版胴9を複数回回転させて損傷ローラ161を版胴9上の製版済みのマスタ21の製版画像形成部35に当接・押し付ける回数は、ユーザの所望により任意に設定することができる。すなわち、上記ROMの動作プログラム内容によっては、または上記ROMに代えたPROM(プログラム可能な読み出し専用記憶装置)を用いることによって設定すればよい。
なお、損傷部材は、損傷ローラ161に限らず、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21b表面部に傷をつけることが可能な部材、例えばヤスリ状の当接面を備えた部材や、鋸歯状の当接面を備えた部材を、版胴9上のマスタ21の少なくとも製版画像形成部35に接離自在に適宜配設してもよい(後述する変形例5および6でも同様であり、以下、この説明を省略する)。
(変形例5)
図11ないし図13に、変形例5を示す。
変形例5は、変形例4と比較して、機密保持モードが設定可能な孔版印刷装置1であって、マスタ溶解装置100に代えたマスタ溶解装置100Aを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置100Aは、変形例4のマスタ溶解装置100と比較して、操作パネル46に代えた図6に示す操作パネル46Aを有する点、制御手段101に代えた図11および図12に示す制御手段101Aを有する点が主に相違する。この他の構成は、変形例4と同様である。
制御手段101Aは、機密モードキー36の押下により生成される機密保持モード設定に係る信号、テンキー52により設定された所定の印刷枚数設定信号と印刷枚数カウンタ128からの印刷した印刷枚数に係る信号とに基づいて、残印刷枚数に係る計算を行った結果、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了したと判断した時に、パルス検出センサ123とホームポジションセンサ126とからの版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、版胴9の回転位置を認識し、版胴9が予め上記ROMによって記憶されている所定の回転数回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御し、かつ、この際、上記版胴9の回転位置に係る信号に基づいて、スプレーガン96を作動すべく圧縮ポンプ97をオン駆動・制御し、その後、損傷ローラ161が当接位置を占めるように、すなわち損傷ローラ161の突起161aが版胴9上の製版済みのマスタ21の製版画像形成部35への上記有機溶剤の付着・溶解部分に接触して傷をつけるように変位手段167のソレノイド対165をオン駆動・制御し、版胴9上のマスタ21の製版画像形成部35以外のマスタ21および版胴9の部位(クランパ12配置部を含む)がスプレーガン96と対向する版胴9の回転位置および版胴9の所定の回転終了後(マスタ溶解後)にスプレーガン96の作動を停止すべく圧縮ポンプ97をオフ駆動・制御すると共に、損傷ローラ161が離間位置を占めるように変位手段167のソレノイド対165をオフ駆動・制御する機能を有する。
上述の構成に基づき、変形例5の動作について、変形例4のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに実行される排版動作が、前回の印刷終了時にユーザが機密モードキー36を押下せずに機密保持モードが設定されていない場合、マスタ溶解装置100Aが非作動状態(圧縮ポンプ97およびソレノイド対165がオフのままの状態)にあって、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21については製版画像を読めると共に製版画像による転写をすることができるようになっている点である。
第2の相違点は、変形例4と同様に、設定された印刷枚数が消化されると版胴9は再びホームポジションに戻って停止し、印刷動作が完了して孔版印刷装置1は再び製版待機状態となった時に、ユーザが機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合に、制御手段101Aからの指令によって、変形例4と同様に始めて圧縮ポンプ97およびソレノイド対165が作動する点にある。
従って、変形例5によれば、変形例4と同様の利点(但し、「製版済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず」という利点を除く)がある。しかも、ユーザによって製版済みまたは使用済みのマスタ21の機密の要否が判断されて、機密モードキー36を押下することにより機密保持モードが設定された場合に、マスタ溶解装置100Aが変形例4と同様に作動することにより、例えば連続して機密保持が不要な印刷を行う場合、すなわち排版から印刷・排紙工程に至る一連の動作を連続して行うような場合には、マスタ溶解装置100Aが非作動状態のままであるからトータルの印刷時間を変形例4よりも短縮することができる。
(変形例6)
図11ないし図13に、変形例6を示す。
変形例6は、変形例4と比較して、マスタ溶解装置100に代えたマスタ溶解装置100Bを有する点が主に相違する。
マスタ溶解装置100Bは、変形例4のマスタ溶解装置100と比較して、制御手段101に代えた図11および図12に示す制御手段101Bを有する点が主に相違する。この他の構成は、変形例4と同様である。
制御手段101Bは、制御手段101と比較して、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷終了後に圧縮ポンプ97をオン駆動させるのに代えて、排版動作時に、すなわち製版スタートキー47からの排版動作起動に係る信号に基づいて、圧縮ポンプ97が作動するように上記圧縮ポンプモータをオン駆動・制御すると共に、版胴9が回転するようにメインモータ112をオン駆動・制御する機能を有する点が主に相違する。
上述の構成に基づき、変形例6の動作について、変形例4のそれと相違する点を中心に説明する。
第1の相違点は、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、制御手段101Bからの指令によってメインモータ112が非起動(オフ)、圧縮ポンプ97およびソレノイド対165が非駆動(オフ)のままの状態にあって、版胴9の外周面上から剥離・排版される使用済みのマスタ21については製版画像を読めると共に製版画像による転写をすることができるようになっていて機密保持状態にない点にある。
第2の相違点は、ユーザが操作パネル46上の各種キーによって製版条件を設定した後に製版スタートキー47を押下したときに生成された排版動作起動に係る信号に基づいて、制御手段101Bからの指令によって、変形例4と同様に始めて圧縮ポンプ97およびソレノイド対165が作動する点にある。
従って、変形例6によれば、使用済みのマスタ21の機密の要否に拘わらず、排版ボックス30内に収容・廃棄された使用済みのマスタ21の機密保持がより確実に行える利点がある。加えて、変形例6では所定の印刷終了後においては、未だ版胴9上のマスタ21が損傷・溶解されていないから、このマスタ21を用いての追加印刷が可能となる利点もある。
上述したとおり、変形例6では、所定の印刷枚数の用紙Pへの印刷が終了した時には、版胴ユニットを装置本体8から離脱させて、版胴9上のマスタ21の製版画像に係る機密情報を視認によりあるいは用紙への転写によって読み取ることが可能であるから、従来と同様に、例えば特開平9−142001号公報の図4に示されている版胴ロック機構および図6に示されている版胴駆動機構におけるギヤ同士の係脱機構ならびに変形例5で用いた操作パネル46A(機密モードキー36)を採用して、版胴ユニットを装置本体8から離脱不能にすることにより機密保持を図るようにすることが望ましい。
図14に、機密モードキー36に代えた機密保持モード設定手段の変形例を示す。図14に示す機密保持モード設定手段は、原稿69の画像を読み取る原稿読取手段としての画像センサ44と、原稿69の画像面側の特定領域である例えば図14における原稿69の右上余白部146(破線で示す)に形成された読み取り可能な標識としての例えば黒色の輪環マーク147と、画像センサ44からの輪環マーク147の読み取りに係る信号に基づいて、機密保持モードを自動的に設定する制御手段68A、88A、98A、101A(以下、第2の実施形態の制御手段68Aで代表する)とから主に構成される。
図14において、符号X1は、用紙搬送方向Xと平行な原稿搬送方向を、符号Y1は、用紙幅方向Yと平行な原稿幅方向をそれぞれ示す。
標識は、黒色の輪環マーク147に限らず、画像センサ44で読み取り可能なものおよび範囲のものであれば、黒色以外の赤等の有色の輪環マーク147であってもよく、また形状は矩形状等でもよく、また丸付きの「秘」や「機密」文字、「シークレット」文字、丸付きの「S」文字、あるいはバーコード等でも構わない。
制御手段68Aには、上述したように機密保持モードを自動的に設定するという基本的な制御機能の他に、次の制御機能を付与するとよい。すなわち、輪環マーク147を含む原稿69の画像の読み取りは製版動作と並行してもしくは製版動作よりも少し前に行われるから、機密保持モードは製版スタートキー47等の押下による製版条件の設定後に設定される。従って、機密を保持すべき版付け印刷物を含む機密を保持すべき正規の印刷物を得るためには、輪環マーク147を含む原稿69の画像の読み取りによって機密保持モードが設定されても、版付けを含む印刷条件の設定を可能として設定された印刷枚数の印刷を行えるようにする必要がある。このような点に着目して、制御手段68Aは、画像センサ44からの輪環マーク147の読み取りに係る信号に基づいて、機密保持モードを自動的に設定した後、印刷条件の設定を可能とするようにテンキー52、印刷スタートキー48からの信号に基づいて、所定の印刷を実行するように孔版印刷装置1の各部の制御対象駆動手段(主としてメインモータ112や給紙モータ等のアクチュエータを指す)を制御する制御機能を付与すればよい。以下の動作は、上記各実施形態と同様に行われる。
図14に示した機密保持モード設定手段によれば、機密が漏れては困る第三者に対して、視認できる機密モードキー36を除去することが可能となるから、機密保持機能をさらに高めることができると共に、ユーザが機密を要する所定の印刷終了後に機密モードキー36を押すのを忘れてしまって機密保持モード解除(通常モード)となってしまうことで、上記した機密情報の漏洩をさらに確実に防止することができる。図14に示した機密保持モード設定手段は、機密モードキー36と併用して配設し、適宜切り替えて使い分けるようにしてもよい。
孔版印刷装置1に配設される排版部5(排版装置)は、これに限らず、例えば特許第3061936号公報(特開平5−286223号公報)記載の自動排版装置等の周知の構成のものを配設しても勿論構わない。
また、孔版印刷装置1のように排版手段としての排版部5を具備していない印刷装置、例えばオフセット印刷機や直刷り印刷機のように、熱可塑性樹脂フィルムを備えたマスタに代えて、金属や樹脂製の版を用いる印刷機に準用する場合にあっては、使用済みの版を自動的に版胴から剥離・排版しない構成のものもある。このような排版手段としての排版部5を具備していない印刷装置にあっては、マスタ溶解装置60B、80B、95B、100Bに要求される排版品質要求性能、すなわち「排版部5によって版胴9上の使用済みのマスタ21を剥離・排版することができる程度に」は不要である。
上述した実施形態および変形例等から、当業者であれば次のようなことも容易に想定し実施可能である。すなわち、版胴9上の製版済みまたは使用済みのマスタ21における製版画像形成部35に有機溶剤を塗布ないしは噴射することなどにより、図4に示した製版画像形成部35の熱可塑性樹脂フィルム21bを化学的に溶かすのに代えて、例えば、周知の液体や半液体状物を用いて熱可塑性樹脂フィルム21bを化学的に変性させること(例えば化学反応的にクラックを生じさせたりすることで破壊する)なども本願発明の開示する範囲に過ぎない。
本発明に係る印刷装置は、孔版印刷装置1に限らず、例えば、特開平7−17013号公報(特許第2790963号公報)に開示されているような版胴(印刷ドラム)の外側からインキを供給する構成のもの、つまり版胴上のマスタにインキを供給して、印刷画像を用紙上に形成するいわば凹版印刷装置とも呼べるような構成の印刷装置にも適用できる。すなわち、所定の印刷終了後に版胴上に機密保持を要する製版済みの版や使用済みの版を残しておく虞のある印刷装置であればどのようなタイプの装置にも適用ないしは準用可能である。
以上述べたとおり、本発明を特定の実施形態や実施例等について説明したが、本発明の構成は、上述した各実施形態や各変形例等に限定されるものではなく、これらを適宜組み合わせて構成してもよく、本発明の範囲内において、その必要性および目的・用途等に応じて種々の実施形態や変形例あるいは実施例を構成し得ることは当業者ならば明らかである。
製版済みの版を版胴上に残したまま放置される虞のある印刷装置、例えばオフセット印刷機や直刷り印刷機にも、マスタに代えた版(特に樹脂製の版)を用いる印刷機にも応用可能である。
本発明の第1ないし第3の実施形態を示す孔版印刷装置全体の正面図である。 本発明の第1ないし第3の実施形態の制御構成およびマスタ溶解装置周りを示す一部断面正面図である。 図1における孔版印刷装置の印刷部の要部を拡大して示す一部断面図である。 本発明の第1ないし第3の実施形態のマスタ溶解装置周りの部分平面図である。 本発明の第1、第3、第4、第6、第7、第9の実施形態および変形例1、34、6に用いられる操作パネルの平面図である。 本発明の第2、第5、第8の実施形態および変形例5に用いられる操作パネルの平面図である。 本発明の第4ないし第6の実施形態の制御構成およびマスタ溶解装置周りを示す一部断面正面図である。 本発明の第7ないし第9の実施形態の簡略的な制御構成およびマスタ溶解装置周りを示す一部断面正面図である。 スプレーガンのノズル形状を示す斜視図である。 図9とは別のスプレーガンのノズル形状を示す斜視図である。 変形例4ないし6の簡略的な制御構成およびマスタ溶解装置周りを示す一部断面正面図である。 図11に示したマスタ溶解装置の損傷ローラ、変位手段および制御構成を含む要部の正面図である。 図11に示したマスタ溶解装置周りの部分平面図である。 機密保持モード設定手段の変形例に係る原稿の輪環マークを説明する平面図である。
符号の説明
1 印刷装置の一例としての孔版印刷装置
5 排版手段としての排版部
9 版胴
9a 多孔性支持板
9b インキ保持部材としてのメッシュスクリーン
10 押圧手段としてのプレスローラ
21 マスタ(版)
21a 多孔性支持体
21b 樹脂フィルムとしての熱可塑性樹脂フィルム
35 製版画像形成部
36 機密保持モード設定手段としての機密モードキー
44 原稿読取手段としての画像センサ
46,46A 操作パネル
60、60A、60B、80、80A、80B、95、95A、95B、100、100A、100B マスタ溶解装置
61 溶解手段としての塗布ローラ
67、87、167 変位手段
65、85、165 変位手段を構成する駆動手段としてのソレノイド
68、68A、68B、88、88A、88B、98、98A、98B、101、101A、101B 制御手段
69 原稿
75 有機溶剤供給手段を構成するポンプ
76 有機溶剤供給手段を構成するポンプモータ
79 マスタ溶解装置を構成する有機溶剤供給手段
81 溶解手段としての塗布ヘッド
96 溶解手段、噴射手段としてのスプレーガン
146 特定領域としての右上余白部
147 標識としての輪環マーク
161 損傷部材としての損傷ローラ

Claims (16)

  1. 製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴を具備した印刷装置において、
    印刷終了後に、上記版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする印刷装置。
  2. 製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴を具備し、機密保持モードが設定可能な印刷装置において、
    上記機密保持モードが設定されている場合であって印刷終了後に、上記版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする印刷装置。
  3. 製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴を具備し、機密保持モードが設定可能な印刷装置において、
    上記機密保持モードを設定する機密保持モード設定手段と、
    上記機密保持モード設定手段により上記機密保持モードが設定されたとき、上記版胴上の製版済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段とを有することを特徴とする印刷装置。
  4. 製版画像が形成される樹脂フィルムを備えたマスタを巻装する版胴と、該版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版する排版動作を行う排版手段とを具備した印刷装置において、
    上記排版動作時に、上記版胴上の使用済みのマスタに形成された上記製版画像を読めなくする程度に、かつ、上記排版手段によって上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版することができる程度に上記製版済みのマスタの少なくとも製版画像形成部を化学的に溶かす溶解手段を有することを特徴とする印刷装置。
  5. 請求項1ないし3の何れか一つに記載の印刷装置において、
    上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版する排版手段を有し、
    上記溶解手段は、上記排版手段によって上記版胴上の使用済みのマスタを剥離・排版することができる程度に上記少なくとも製版画像形成部を溶かすことを特徴とする印刷装置。
  6. 請求項1ないし5の何れか一つに記載の印刷装置において、
    上記版胴は、上記製版済みのマスタが巻装されるインキ保持部材を有し、
    上記溶解手段は、上記インキ保持部材およびインキに影響を与えない有機溶剤を用いることを特徴とする印刷装置。
  7. 請求項1ないし6の何れか一つに記載の印刷装置において、
    上記溶解手段は、上記少なくとも製版画像形成部に接触してこれを溶かすための有機溶剤を塗布する塗布ローラであることを特徴とする印刷装置。
  8. 請求項7記載の印刷装置において、
    上記塗布ローラは、回転する上記版胴に対して従動回転可能であり、
    上記塗布ローラの上記従動回転に対して制動力を付与することにより、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与える制動手段を有することを特徴とする印刷装置。
  9. 請求項1ないし6の何れか一つに記載の印刷装置において、
    上記溶解手段は、上記少なくとも製版画像形成部に接触してこれを溶かすための有機溶剤を塗布する塗布ヘッドであることを特徴とする印刷装置。
  10. 請求項7、8または9記載の印刷装置において、
    上記塗布ローラまたは上記塗布ヘッドの上記少なくとも製版画像形成部に接触する部位が、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布による溶解部分を破壊する程度の粗さを備えていることを特徴とする印刷装置。
  11. 請求項1ないし10の何れか一つに記載の印刷装置において、
    上記溶解手段を、上記少なくとも製版画像形成部に接触させる当接位置とこの当接位置から離間させる離間位置との間で変位させる変位手段を有することを特徴とする印刷装置。
  12. 請求項1ないし6の何れか一つに記載の印刷装置において、
    上記溶解手段は、上記版胴上の上記製版済みのマスタに形成された上記少なくとも製版画像形成部に有機溶剤を噴射する噴射手段であることを特徴とする印刷装置。
  13. 請求項12記載の印刷装置において、
    上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布部分に損傷を与える損傷部材と、
    上記損傷部材を、上記少なくとも製版画像形成部に接触させる当接位置とこの当接位置から離間させる離間位置との間で変位させる変位手段とを有することを特徴とする印刷装置。
  14. 請求項13記載の印刷装置において、
    上記損傷部材は、回転する上記版胴に対して従動回転可能な損傷ローラであり、
    上記損傷ローラの上記従動回転に対して制動力を付与することにより、上記少なくとも製版画像形成部への上記有機溶剤の塗布部分に引きずり損傷を与える制動手段を有することを特徴とする印刷装置。
  15. 請求項6ないし9の何れか一つ、12、13または14記載の印刷装置において、
    上記有機溶剤は、上記樹脂フィルムを溶解するジクロロエタンまたはブタノンを含むことを特徴とする印刷装置。
  16. 請求項3記載の印刷装置において、
    上記機密保持モード設定手段は、原稿の画像を読み取る原稿読取手段と、該原稿の特定領域に形成された読み取り可能な標識と、上記原稿読取手段からの上記標識の読み取りに係る信号に基づいて、上記機密保持モードを自動的に設定する制御手段とを有することを特徴とする印刷装置。
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