JP2006068876A - ダブルマージンドリル - Google Patents
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Abstract
【課題】 切れ刃チップのロー付け強度を損なうことなくマージンの溶着を抑制して耐久性を向上させる。
【解決手段】 マージン18、20の表面にDLC被膜32が設けられているため、そのマージン18、20に対する溶着が抑制される一方、DLCコーティングの処理温度は230℃程度で、ロー付け温度(700〜800℃)よりも十分に低いため、切れ刃チップ24のロー付け強度が損なわれる恐れがなく、実質的に工具寿命が向上する。また、切れ刃チップ24の表面にもDLC被膜32が設けられているため、ワイヤカット放電加工で切断したりグラインダで研削したりした切れ刃チップ24の切れ刃30や逃げ面の微細な凹凸がDLC被膜32で被覆されて滑らかになる一方、DLC被膜32の摩擦係数が小さいことから逃げ面やマージン18、20の溶着が軽減されることで、加工面のむしれが抑制され、加工面粗さが一層向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】 マージン18、20の表面にDLC被膜32が設けられているため、そのマージン18、20に対する溶着が抑制される一方、DLCコーティングの処理温度は230℃程度で、ロー付け温度(700〜800℃)よりも十分に低いため、切れ刃チップ24のロー付け強度が損なわれる恐れがなく、実質的に工具寿命が向上する。また、切れ刃チップ24の表面にもDLC被膜32が設けられているため、ワイヤカット放電加工で切断したりグラインダで研削したりした切れ刃チップ24の切れ刃30や逃げ面の微細な凹凸がDLC被膜32で被覆されて滑らかになる一方、DLC被膜32の摩擦係数が小さいことから逃げ面やマージン18、20の溶着が軽減されることで、加工面のむしれが抑制され、加工面粗さが一層向上する。
【選択図】 図1
Description
本発明はダブルマージンドリルに係り、特に、高硬度焼結体の切れ刃が設けられた切れ刃チップがロー付けされているダブルマージンドリルの改良に関するものである。
(a) ランドが設けられたドリル本体と、(b) 高硬度焼結体の切れ刃が設けられて前記ドリル本体にロー付けされた切れ刃チップと、を有し、(c) 前記ランドのリーディングエッジ側およびヒール側の両方にマージンが設けられているダブルマージンドリルが知られている。特許文献1に記載のドリルはその一例で、高硬度焼結体としてダイヤモンド焼結体やCBN(立方晶窒化硼素)焼結体が用いられている。そして、このようなダブルマージンドリルによれば、ランドの前後に設けられたマージンと加工穴の内径面との係合で芯振れが抑制されるとともにバニシング作用が得られ、アルミニウムや銅或いはそれ等を主成分とする合金等の軟質金属に対しても高い加工精度で穴明け加工を行うことができる。
特開2002−66820号公報
しかしながら、このようなダブルマージンドリルは、マージンを加工穴の内径面に擦り付けながら穴明け加工を行うため、加工条件によってはマージンに溶着が生じ易く、その溶着により内径面の面粗さや径寸法が損なわれて必ずしも十分な耐久性が得られない場合があった。
これに対し、表面にダイヤモンドやTiAlNをコーティングすることが考えられるが、これ等のコーティング処理温度は比較的高いため、切れ刃チップのロー付け強度が損なわれて、却って耐久性が損なわれる可能性がある。すなわち、ロー付け温度は一般に700〜800℃程度であるのに対し、ダイヤモンドコーティングの処理温度は1000〜1200℃程度、TiAlNの処理温度は600〜700℃程度で、ロー付け温度より高いか同程度であるため、ロー付け強度が低下して切れ刃チップが剥離する恐れがあるのである。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、切れ刃チップのロー付け強度を損なうことなくマージンの溶着を抑制して耐久性を向上させることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) ランドが設けられたドリル本体と、(b) 高硬度焼結体の切れ刃が設けられて前記ドリル本体にロー付けされた切れ刃チップと、を有し、(c) 前記ランドに複数のマージンが設けられているダブルマージンドリルにおいて、(d) 前記切れ刃チップが前記ドリル本体にロー付けされた後にDLCのコーティング処理が施され、前記マージンの表面にDLC被膜が設けられていることを特徴とする。
ここで、DLCは、ダイヤモンド状カーボン(Diamond Like Carbon )のことで、緻密なアモルファス構造を有し、結晶学的にはダイヤモンドと異なるが、高硬度で優れた耐摩耗性を備えている。また、表面が滑らかで摩擦係数μが0.05〜0.1程度と小さく、優れた耐溶着性が得られる。
ここで、DLCは、ダイヤモンド状カーボン(Diamond Like Carbon )のことで、緻密なアモルファス構造を有し、結晶学的にはダイヤモンドと異なるが、高硬度で優れた耐摩耗性を備えている。また、表面が滑らかで摩擦係数μが0.05〜0.1程度と小さく、優れた耐溶着性が得られる。
第2発明は、第1発明のダブルマージンドリルにおいて、前記DLC被膜の膜厚が0.05μm〜2μmの範囲内であることを特徴とする。
このようなダブルマージンドリルにおいては、マージンの表面にDLC被膜が設けられているため、そのマージンに対する溶着が抑制される一方、DLCコーティングの処理温度は一般に200〜270℃程度で、ロー付け温度よりも十分に低いため、切れ刃チップのロー付け強度が損なわれる恐れがなく、実質的に工具寿命が向上する。これにより、例えばアルミニウムや銅或いはそれ等の合金等の軟質金属に穴明け加工を行う場合でも、マージンのバニシング作用により加工穴の内径面の面粗さや径寸法などに関して優れた加工精度が長期間に亘って得られるようになる。
また、切れ刃チップの表面にもDLC被膜が設けられるため、その切れ刃チップをワイヤカット放電加工などで切断したりグラインダで研削したりすることによって形成される切れ刃や逃げ面の微細な凹凸がDLC被膜で被覆されて滑らかになる一方、DLC被膜の摩擦係数が小さいことから逃げ面やマージンの溶着が軽減されることで、加工面のむしれが抑制され、加工面粗さが一層向上する。
本発明のダブルマージンドリルは、アルミニウムや銅或いはそれ等を主成分とする合金等の軟質金属などの軟質材の穴明け加工に好適に用いられるが、その他の被削材の穴明け加工にも使用できる。ドリル本体の材質としては、超硬合金が好適に用いられるが、高速度工具鋼や合金工具鋼などのスチール材を採用することもできる。
ドリル本体のランドを形成する切り屑排出用の溝は1本でも良いし複数でも良く、軸心まわりに捩じれたねじれ溝でも軸心と平行なストレート溝であっても良い。一般には、2本の溝が設けられるとともに、その溝の先端開口部にそれぞれ切れ刃が設けられる。
切れ刃チップは、少なくとも切れ刃が形成された高硬度焼結体を含んで構成される。高硬度焼結体としては、ダイヤモンド焼結体またはCBN焼結体が好適に用いられ、例えば超硬合金等の基台と一体的に焼結されることによって、その基台に高硬度焼結体が一体的に固着された切れ刃チップが構成される。切れ刃チップをドリル本体にロー付けするロー付け温度は、例えば700〜800℃程度である。
複数のマージンは、例えばランドの前後すなわちリーディングエッジ側およびヒール側に一対設けられるが、それ等の中間位置等に設けることもできる。このマージンは、ドリルの姿勢を安定させる上で軸方向においてランドの全長に亘って設けることが望ましいが、切れ刃側(軸方向の先端側)の一部などに部分的に設けるだけでも良い。
マージンの径寸法は、例えばドリル径(切れ刃の外径寸法)Dと同じ寸法とされるが、そのドリル径Dよりも多少大きくしたり小さくしたりすることもできる。リーディングエッジ側およびヒール側などに設けられる複数のマージンの径寸法を互いに相違させることも可能である。
DLC被膜のコーティング法としては、プラズマCVD法が好適に用いられ、その処理温度は200〜270℃程度の範囲内で、例えば230℃程度でコーティングすることができる。DLC被膜の膜厚は0.05〜2μmの範囲内が適当で、0.2〜0.5μm程度が望ましい。膜厚が0.05μmよりも薄いと、耐溶着性や耐摩耗性の効果が十分に得られない一方、2μmよりも厚いと切れ刃の刃先が丸くなって切れ味が悪くなる。なお、イオンビーム蒸着法やCO2 レーザ誘起放電法などの他の成膜法でDLC被膜をコーティングすることもできる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である軟質材用のダブルマージンドリル10を説明する図で、(a) は先端部分の正面図、(b) は(a) の右側面図で先端側から見た底面図、(c) は表層部の断面図である。このダブルマージンドリル10は、超硬合金製のドリル本体12を主体として構成されており、切り屑排出用の溝としてストレート溝14が2本形成されることにより、一対のランド16が軸心に対して対称的に設けられており、それ等のランド16には、それぞれそのリーディングエッジ側およびヒール側にマージン18、20が設けられている。マージン18、20は、何れもドリル径Dと同じ径寸法を備えているとともに、ドリル軸方向においてランド16の全長に亘って設けられている。
図1は、本発明の一実施例である軟質材用のダブルマージンドリル10を説明する図で、(a) は先端部分の正面図、(b) は(a) の右側面図で先端側から見た底面図、(c) は表層部の断面図である。このダブルマージンドリル10は、超硬合金製のドリル本体12を主体として構成されており、切り屑排出用の溝としてストレート溝14が2本形成されることにより、一対のランド16が軸心に対して対称的に設けられており、それ等のランド16には、それぞれそのリーディングエッジ側およびヒール側にマージン18、20が設けられている。マージン18、20は、何れもドリル径Dと同じ径寸法を備えているとともに、ドリル軸方向においてランド16の全長に亘って設けられている。
上記ストレート溝14のドリル先端側の開口部には、それぞれ凹形状のチップ取付座22が設けられ、切れ刃チップ24がロー付けにより一体的に固着されている。切れ刃チップ24は、高硬度焼結体としてのダイヤモンド焼結体26が超硬合金の基台28と一体的に焼結されたもので、その基台28がチップ取付座22にロー付けされているとともに、焼結により基台28上に一体的に固着されたダイヤモンド焼結体26には切れ刃30が設けられている。また、ドリル本体12の先端中央にはN型シンニングが施されているとともに、ドリル本体12および切れ刃チップ24の表面にはDLC被膜32が0.2〜0.5μm程度の膜厚で設けられている。なお、このダブルマージンドリル10のドリル径Dは8.6mm(φ8.6)で、心厚は0.23D、ドリル先端角は120°であり、切れ刃チップ24の基台28の板厚は約0.9mm、ダイヤモンド焼結体26の厚さは約0.7mmである。
図2は、このようなダブルマージンドリル10の製造工程を示す図で、先ず、ストレート溝14やランド16が設けられた超硬合金の棒状素材にチップ取付座22等を研削加工などにより形成してドリル本体12を用意する。次に、そのチップ取付座22に切れ刃チップ24をロー付けするとともに、その切れ刃チップ24を含むドリル先端部を目的形状に整形加工する。切れ刃チップ24のロー付けは、700〜800℃の範囲内の所定温度で行われ、ドリル先端部の整形加工は、ワイヤカット放電加工で切断したりグラインダで研削したりして行われる。そして、最後にプラズマCVD法により230℃程度の処理温度でDLCのコーティング処理を行い、ドリル本体12および切れ刃チップ24の表面をDLC被膜32で被覆する。
このような本実施例のダブルマージンドリル10においては、マージン18、20の表面にDLC被膜32が設けられているため、そのマージン18、20に対する溶着が抑制される一方、DLCコーティングの処理温度は230℃程度で、ロー付け温度(700〜800℃)よりも十分に低いため、切れ刃チップ24のロー付け強度が損なわれる恐れがなく、実質的に工具寿命が向上する。これにより、例えばアルミニウムや銅或いはそれ等の合金等の軟質金属に穴明け加工を行う場合でも、マージン18、20のバニシング作用により加工穴の内径面の面粗さや径寸法などに関して優れた加工精度が長期間に亘って得られるようになる。
また、切れ刃チップ24の表面にもDLC被膜32が設けられているため、ワイヤカット放電加工で切断したりグラインダで研削したりした切れ刃チップ24の切れ刃30や逃げ面の微細な凹凸がDLC被膜32で被覆されて滑らかになる一方、DLC被膜32の摩擦係数が小さいことから逃げ面やマージン18、20の溶着が軽減されることで、加工面のむしれが抑制され、加工面粗さが一層向上する。
次に、本発明者等が行った耐久性試験の結果を説明する。図3の(a) は、試験に用いた本発明品および比較品のスペックで、本発明品は前記実施例のダブルマージンドリル10と同じものであり、比較品は、本発明品に比べてDLC被膜32を備えていない点が相違するだけである。そして、縦型マシニングセンタを用いて工具突出寸法50mm、植物性油のMQL(Minimum Quantity Lubrication;最少量潤滑、エア圧0.5MPa)給油で、図3の(b) に示す2種類の加工条件1、加工条件2でADC12(アルミニウム合金ダイカスト)に対して穴明け加工を行った。
図4の(a) の切削テスト1は、加工条件1で1000穴の連続穴明け加工を行った場合で、本発明品、比較品共に、1000穴以上の穴明け加工が可能であった。なお、DLC被膜32を有する本発明品は、試験後においてもマージン18、20に溶着は全く認められなかったが、ノンコートの比較品はアルミの擦った跡が白く残っており、僅かに溶着が認められた。
図4の(b) の切削テスト2は、加工条件2で5000穴の連続穴明け加工を行った場合で、本発明品は5000穴以上の穴明け加工が可能であったが、比較品は、初期からマージン18、20に溶着が発生し、加工穴の内径面がむしれて面粗さが悪かった。
図4の(c) は、切削テスト1、2における加工穴の内径面の面粗さおよび最終穴の穴径を調べた結果で、本発明品は、最終穴の面粗さだけでなく1穴目についても比較品より優れた面粗さが得られた。これは、ワイヤカット放電加工で切断したりグラインダで研削したりした切れ刃チップ24の切れ刃30や逃げ面の微細な凹凸が、DLC被膜32で被覆されて滑らかになる一方、DLC被膜32の摩擦係数が小さいことから逃げ面やマージン18、20の溶着が軽減されることで、加工面のむしれが抑制されるためと考えられる。なお、穴径については、殆ど差がなかった。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:ダブルマージンドリル 12:ドリル本体 16:ランド 18、20:マージン 24:切れ刃チップ 26:ダイヤモンド焼結体(高硬度焼結体) 30:切れ刃 32:DLC被膜
Claims (2)
- ランドが設けられたドリル本体と、
高硬度焼結体の切れ刃が設けられて前記ドリル本体にロー付けされた切れ刃チップと、
を有し、前記ランドに複数のマージンが設けられているダブルマージンドリルにおいて、
前記切れ刃チップが前記ドリル本体にロー付けされた後にDLCのコーティング処理が施され、前記マージンの表面にDLC被膜が設けられている
ことを特徴とするダブルマージンドリル。 - 前記DLC被膜の膜厚が0.05μm〜2μmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載のダブルマージンドリル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004257968A JP2006068876A (ja) | 2004-09-06 | 2004-09-06 | ダブルマージンドリル |
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Publication Number | Publication Date |
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Family
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JP2004257968A Pending JP2006068876A (ja) | 2004-09-06 | 2004-09-06 | ダブルマージンドリル |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013214355A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-17 | Equos Research Co Ltd | リチウムイオン電池用正極 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002066820A (ja) * | 2000-08-28 | 2002-03-05 | Dijet Ind Co Ltd | バニシングドリル |
JP2003062708A (ja) * | 2001-06-13 | 2003-03-05 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 非晶質カーボン被覆工具およびその製造方法 |
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2004
- 2004-09-06 JP JP2004257968A patent/JP2006068876A/ja active Pending
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