JP2006068401A - 人工血管 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多孔質管状構造体の少なくとも内表面に、(1)ポリアミノ酸ウレタン共重合体、(2)コラーゲン又はゼラチン、(3)コラーゲン結合活性を有する内皮細胞増殖促進剤を、順次積層し固定化して成る人工血管が提供される。内皮細胞増殖促進剤としては、コラーゲン結合活性を有するポリペプチドと血管新生因子、特にHGFとの融合蛋白質が好ましい例である。
【選択図】図1
Description
vitroでの評価が多く、生体での効果としては、いずれも不十分な段階にある。親水性ポリマー、例えば、親水性のポリウレタンで処理した人工血管等も提案されているが(特許文献2参照)、生体での効果としては、未だ十分なものではない。
この考え方に基づく方法論の一つは、人工血管基材の内面に、予め内皮細胞を播種して内膜を形成させた後に移植することである。しかしながら、この方法では、細胞の採取、培養などの工程が必要なことから即時的に使えるものではない。また細胞の採取は患者に負担を強いる方法であるという望ましくない点がある。
Linら、J.Biomater. Sci. Polymer Edn, 3, 217-227; 1992年 Linら、J. Biomed.Mater.Res 28, 329-342;1994年 Tiwariら、FASB J. 16,791-796; 2002年
Artif. Organ 14,41-45; 1990年
が特に望ましい。
Polymer Chemistry 37, 383-389 (1999年; Polymer41,473-480 (2000年))によって開示された方法、あるいは、本発明者らの一人が公表している方法(特開2001−136960号公報)で合成することができる。このポリマーのジメチルホルムアミド(DMF)の懸濁液を、適当な濃度(樹脂濃度として、1〜3%)に、ジクロロ酢酸で希釈し、得られた溶液にePTFEチューブを浸漬する。PAUのコートに要する時間は15時間程度で十分であるが、PAU濃度により適宜変更することが可能である。PAUに浸漬したチューブは、大量の蒸留水で十分に洗浄、風乾し、ついで、120度で5分間加熱し、PAUを乾固する。これによってPAUコートチューブ(PAU(+)チューブ)が作製される。PAUのコート量は、多孔質管状構造体に対して0.1〜3%の範囲が適当である。
Biochem, 129, 627-633, 2001年)。このFNCBDをプローブとしてコラーゲンコート表面に結合させ、次いで、抗FNCBD抗体で検出し、長期間コラーゲンが残存していることが確認できる。以上のように、PAUをコートした表面は、コラーゲンを強固に結合された状態を維持できるので、更に、コラーゲン結合性活性を持つ内皮細胞増殖促進剤、例えば、血管新生因子を固定化することが可能となる。
no.1555、1987年)を採用した。融合蛋白の設計においては、そのアミノ酸末端側に、昆虫細胞から分泌されやすいようにするため、シグナルペプチド配列を付加したものとする。例えば、蜂毒素メリチンなどの、昆虫の分泌蛋白質のシグナルペプチドが挙げられる。これにより、「シグナルペプチド−FNCBD-HGF成熟蛋白質配列」という構造の融合蛋白質をコードする遺伝子が設計され、これを組み込んだベクターのDNAと、野生型バキュロウイルスのDNAとをco-transfectionすることにより、昆虫細胞内に、組み換えウイルスが生成される。組み換えウイルスに組み込まれたHGF融合蛋白質をコードする融合遺伝子から、HGF融合蛋白質(Fn-HGF)が翻訳され、昆虫細胞の培養上清に分泌され回収することが可能である。この融合蛋白質の配列の例は、配列表配列番号2及び4に示されている。
Chem, 267, 20114-20119、1992年)。本発明のHGF融合蛋白質も、血清(2〜10%)と混合して保温することにより、ヘテロダイマーとすることができる(図2)。ヘテロダイマーとしたHGF融合蛋白質は、天然型のHGFと同等の内皮増殖活性を持ち(図3)、また、強固なコラーゲン結合性を持つこと(図4)が確認される。しかも結合性と増殖活性は長期に安定であることから、PAUとコラーゲン又はゼラチンがコートされた人工血管基材上に固定化するには好適な特性を備えている。
確認の手段としては、移植後一定期間の後に摘出された人工血管を、フォルマリンなどで固定し、パラフィン切片を作成して染色する。通常のヘマトキシリン・エオシン染色で、扁平な内皮細胞が、人工血管の表面に接着しているのが確認される(図7)。このような細胞が、更にシート状に連なって内皮層が形成される。内皮細胞であることは、特異的な抗体である抗CD31抗体や、抗von Willebrand Factor抗体で染色することにより検証できる。あるいは、摘出した血管を、そのまま銀染色に供するか、グルタールアルデヒドで固定して、走査型電子顕微鏡で表面観察をしても良い。これらの方法を用いることで、HGF融合蛋白質が固定化された人工血管では、ほぼ全域にわたって内皮細胞の存在が確認されたが、対照の人工血管では、中央部では内皮細胞が認められず、血管の吻合部付近だけに内皮細胞があることが確認される。即ち、内皮細胞の進展がHGF融合蛋白質によって促進されることが示される(図8)。この様にして、HGF融合蛋白を固定化した人工血管は、内皮化促進機能をもつ人工血管であることを明らかにすることができる。以下、実施例を示して、具体的に説明する。
A)HGF融合蛋白質の設計
1)HGF遺伝子配列
HGF遺伝子の配列は、特開平6−9691号公報に開示されているものを用いた。この配列は、ヒト卵巣腫瘍より樹立された細胞株(HUOCA-2型及び3型)が生産する、血管新生活性を示す蛋白質をコードする遺伝子としてクローニングされたもので、その塩基配列を決定したところ、Miyazawaら(BBRC.
169, 967-973 (1989))が報告したHGFの配列と同一であった。この配列を鋳型として、PCR法によりHGF成熟ポリペプチドをコードする配列を取得した。PCRプライマーには、エンテロキナーゼが認識するアミノ酸配列DDDK(D=アスパラギン酸、K=リジン)をコードする配列を付加してあり、これによって、HGF成熟配列のアミノ末端側に、エンテロキナーゼ認識配列が連結した蛋白質をコードする遺伝子が取得された。得られた遺伝子配列は、制限酵素SalIとBamHIで消化し、同じ2つの酵素で切断されたpBlueScript
II SK(-)(Stratagene社)に連結してプラスミドpHH2を得た。
ヒトフィブロネクチン(Fn)のcDNA配列は既に報告されている(Kornblihttら、EMBO J. 4, 1755 (1985)、データベースではGenbank
X02761, Swiss P02751)。この配列をもとにPCR用プライマーを作成し、Fnの部分配列を増幅した。即ち、Ishikawaら(J.Biochem.,129,627-633)に基づき、先ずヒト腎臓由来のRNAを抽出し、逆転写によってcDNAに変換した後、PCRで2種類の配列範囲のDNAを増幅した。1つは、Fnの成熟蛋白質としてのアミノ酸番号260番から484番目までの配列であり、もう一つは、260番から599番目までの配列である。それぞれを制限酵素で切断、回収し、上記のプラスミドpHH2に、Fnの配列がHGFのアミノ末端側に連結されるように挿入した。これによりプラスミドpHH3SとpHH3Lを得た。前者にはFnの260から484番目までのアミノ酸配列をコードするDNAが挿入されており、後者は260から599番目に対応するDNAが挿入された。
pHH3Sを制限酵素MstIとBamHIで消化し、2.85KbのBamHI消化断片を単離した。この断片を、pAcYM1-Mel(Tomitaら、Biochem.
J. 312, 847-853 (1995))のBamHI部位に挿入して、トランスファーベクターpHH7を得た。このベクターにおいては、蜂毒素蛋白質メリチンのシグナル配列、ヒトFnの配列(Ala260からArg484)、エンテロキナーゼ認識配列DDDDK(D=アスパラギン酸、K=リジン)、そしてHGFの成熟配列のそれぞれをコードする、DNA配列が読みとり枠のずれがないように順次連結されている。この融合遺伝子の配列は、配列表配列番号1に示されている。なお、メリチンのシグナル配列は、この融合蛋白質を細胞外に分泌するために付加されものであり、分泌に際して切断除去されるものである。分泌された後の融合蛋白質、即ち、HGF融合蛋白質(Fn-HGF)のアミノ酸配列は、配列表配列番号2に示されている。
1)組み換えウイルスの作成
(1)先ず昆虫細胞Sf9の1x106 個を10% 牛胎児血清(FCS)を添加したGrace's Medium(Gibco、Invitrogen社)に懸濁し、径35mm
の培養皿に入れた。30分静置した後、培地を除去し、無血清培地Sf-900II(Gibco、Invitrogen社)で培養皿を更に3回洗浄した。
(2)トランスファーベクターpHH7のDNA2μgをエタノール沈殿し、乾燥後3.5μlのTE(10mM Tris・HCl,PH8/1mM EDTA) に溶かした。これにBaculovirus
linear DNA(Baculogold, Pharmingen社)の0.1μg(1μl)を混合し、さらに滅菌蒸留水(DW)を加えて全量で8μlとした。この混合液に、2倍希釈したlipofectin(Gibco、Invitrogen社))の8μlを加えて16μlとした。混合15分後に、その5μl(あるいは11μl)を1mlのSf-900IIと共に、培地を除去した上記1)の培養皿に添加した。
(3)28℃で終夜培養した後、液を除き、1mlのGrace培地(10%血清添加)を加えて更に3日培養した。この培養上清をウイルス液として回収保存した。
あらかじめ、1x106 個をのSf9細胞をφ35mm 培養皿に播種し、30分間静置後、培地を200μl程度残して、吸引除去した。上記(3)の保存培養上清(ウイルス液)を、Grace培地で100,1000,10000倍に希釈したものを100μl培養皿に加え、細胞に感染させた。15分ごとに液を攪拌し、これを4回行った後(1時間後)、液を吸引除去した。あらかじめオートクレーブしておいた3%低融点アガロースを、Grace培地(10%血清含む)で3倍希釈し37℃に加温しておき、その2mlをウイルス液を除去した上記の培養皿の細胞上に添加した。30分間室温で静置し固化させた後、1mlのGrace培地(10%血清を含む)を添加し、これを28℃で5日培養した。培養後1mlのNeutral
red(0.1mg/ml)を添加し、4時間以上静置した。これにより、感染した部位の細胞が溶解してできるプラークを判別することができる。単一のプラーク部分のアガロースを、パスツールピペットで打ち抜いて、500μlのGrace培地(10%血清含む)に懸濁してウイルスを遊離させ、4℃で保存した。得られたウイルス液を用いて上記の操作を繰り返し、単一のウイルスクローン(AcHH7)となるまで純化した。また回収液量あたりの感染性ウイルスの数(力価)も、上記のようなプラーク形成法により計測することができる。純化されウイルスが得られた所で、徐々に培養スケールを大きくしながら感染を繰り返して、多量のウイルス液を得た。
Sf9細胞1x106
個をφ35mm dishに播種した後、AcHH7ウイルスをm.o.i5ないし10で感染させた。感染後4日間培養し、培養上清を回収した。HGF融合蛋白質が、AcHH7感染細胞から培養上清中に分泌されていることを、以下のようにイムノブロット(ウェスタンブロット)法によって確認した。即ち、先ず培養上清を、Laemmliの方法に準じてSDSポリアクリルアミド(7.5%)電気泳動(SDS-PAGE)を行った。その際、サンプルバッファーにはmercaptoethanolを添加しない非還元条件で泳動した。泳動後、Tris-glycine緩衝液を用い、セミドライ法にてPVDF膜に転写した(2mA/cm2の電流で90分)。転写されたPVDF膜をPBSで2回洗浄し、25%
Block Ace(大日本製薬社) / PBSで60分間ブロッキングした。洗浄液(0.05% Tween-20/PBS)で1回洗浄後、抗ヒトHGF抗体(T-7701、特殊免疫研究所、1:1000
に5% Block Aceで希釈)で60分反応させた。洗浄液で3回洗浄後、ビオチン標識抗マウス抗体(DAKO E0464、1:500希釈)で30分反応した。洗浄液で3回洗浄した後POD標識ストレプトアビジン(DAKO
P0397、1:700希釈)で30分反応した。洗浄液で3回洗浄した後、HGFのバンドをECL Western blotting detection
reagent(Amersham Bioscience)にて検出したところ、培養上清中に、抗体反応性のバンドが認められた。このバンドはまた、抗フィブロネクチン抗体とも反応したことから、HGF融合蛋白質(Fn-HGF)が、細胞上清中に分泌されていることが確認された。
始めに、10%血清(FCS)を含むSf-900II 培地に、Sf9細胞を3-5x106 個/ ml で三角フラスコ(ポリカーボン製三角フラスコヘ゛ントタイプ:コーニング)を用いて培養開始した。28℃で旋回培養器にのせ、120
rpm旋回で培養した。初めの培養サイズは250mlフラスコに50ml培養液で、2-3日間培養し、継代した。継代後は、1000mlフラスコに250mlの培養液とした。更にこれを継代していく過程で、血清濃度を10,
5, 2, 1,%と順次低下させて培養し、最終的に無血清の培地(Sf-900II)で培養した。以上の無血清状態に馴化した細胞を、細胞密度=2x106cells/mlに調整して培養(Sf-900II
, 無血清、旋回培養)した。これを遠心分離して回収し、m.o.i=5から10で組み換えウイルスAcHH7を感染させた(室温で1時間)。この間適宜攪拌した後、再び、遠心前の液量になるよう無血清培地を加えて旋回培養に戻した。3日間培養した後、培養上清を回収した。回収された上清を保存する場合は−80℃の凍結保存とした。
(1)上記実施例において取得された培養上清に、最終濃度0.03 %となるようCHAPS溶液を添加し、0.45μmフィルターでろ過した。
(2)FPLCを使用して以下のように精製した。ヘパリンカラム(Hitrap Heparin HP, 1ml 、Amersham Bioscience:17-0406-01)を、あらかじめ、10ml以上のbufferを用いて流速0.5ml/minで流し平衡化した。緩衝液の組成は10mM
リン酸緩衝液(PB)、 0.15M NaCl, 0.03% CHAPS (pH7.2)であった。
(3)上記(1)で処理されたサンプル溶液を、流速0.5ml/minにてカラムに添加した。次いで、20ml以上の緩衝液を流速0.5ml/minで流してカラムを洗浄した。
(4)溶出は、以下の緩衝液を流速0.5ml/minで流すことによって行った。
溶出緩衝液:A液 0.15M Nacl, 10mM PB, 0.03% CHAPS (pH7.2)
:B液 2M NaCl, 10mM PB, 0.03% CHAPS (pH7.2)
以下のNaCl濃度となる様にA液とB液を混合して使用した。
0.15M NaClにて5分間洗浄。
0.4M NaClにて40分間溶出。
0.7M NaClにて40分間溶出。
フラクションサイズ=2min
2M NaClにて20分間洗浄。
(6)Fn-HGFを含むことが確認されたフラクションをプールして、10mM PB, 0.15M NaCl, 0.03% CHAPS
(pH7.2)に対して一昼夜透析した。これをHGF融合蛋白質の精製標品とした。分注後、−80℃に保存した。
(7)定量
ELISA法により、精製標品の濃度を、イムニス
HGF ELISA(特殊免疫研究所:CODE 1EH1)にて定量した。即ち、標品の濃度はHGF量として表される。
(8)ヘテロダイマー化
生産されたFn-HGFは、無血清条件下で培養・回収・精製したものであるため、1本鎖の状態と考えられる。ここに、牛胎児血清(FCS)を10%となるように加えて、37℃で15分間インキュベートした。上記2)の方法に従い、ヒトHGF(hHGF、天然型)(レーン1)、血清処理前の融合蛋白質(レーン2)、処理後の蛋白質(レーン3)、及び、組み換えウイルス非感染のSf9細胞培養上清(レーン4)を、それぞれ電気泳動後、ウエスタンブロットを行った(図2)。血清処理により、移動度が変化することより、Fn-HGFがヘテロダイマーに変変換されたことが示された。
1)コラーゲン結合活性
始めに1型コラーゲン(ウシ)10μg/ml PBS溶液(高研、CELLGEN)を氷冷下、100μlづつELISA用96 wellフ゜レート(Nunc
Polysorp 96well immuno module)に分注し、4℃で一昼夜インキュベートした。ウェルを洗浄液(0.05% Tween-20/PBS)で3回洗浄後、50% Block Ace/PBS液
250μlを分注し、室温で60分間インキュベートした。3回洗浄後、各種濃度のFn-HGF溶液を100μl分注し、37℃で120分間インキュベートした。ウェルを5回洗浄後、抗ヒトHGF抗体(1:1000
希釈)を120分間インキュベートした。5回洗浄後、POD標識抗マウス抗体(DAKO P0260、1:1000 希釈)で60分間インキュベートした。5回洗浄後、酵素基質(OPD、Sigma)溶液100μlを分注し、室温で30分間インキュベートした。各ウェルに2N硫酸
50μlを添加して反応を停止し、吸光度(492nm-620nm)を測定した。
同様の検討を行ったところ、1型以外にも2型、3型、4型いずれにも高い結合活性を示した。
(1)溶液中でのHGF融合蛋白質の活性
ヒト冠状動脈血管内皮細胞(ACBRI、大日本製薬社)を、培養液(基本培地=EBM-2、 Clonetics社、添加試薬=IGF-I、 2% FCS)に浮遊させ、24穴培養プレート(Falcon
24well plate)に1穴あたり1x104個/500μlを播種した。細胞接着確認後、Fn-HGF溶液5μlを添加し、37℃、 5%
CO2、 100%湿度で培養した。3日後、WST-1試験液(Dojindo)を50μl/well分注し、4時間後の吸光度(450-620nm)を測定した。その結果、HGF濃度換算で0〜100
ng/mlの範囲内で、濃度依存的な血管内皮細胞増殖効果を示した。しかも、HGFそのものが示す活性を上回る値であった。従って、本発明のHGF融合蛋白質においては、融合蛋白質としての設計によって、その本来の増殖活性が失われていないばかりでなく、むしろ、効果の安定性も実現されている可能性が考えられる(図3)。
24穴培養プレートに、ウシ1型コラーゲン
10μg/ml PBS溶液(氷冷)500μlを分注し、4℃で一昼夜インキュベートした。PBSで5回洗浄後、Fn-HGF溶液500μlを分注し、37℃で2時間インキュベートした。PBSで5回洗浄後、37℃でPBS中に保管した。保管直後、1日後、3日後、7日後に、それぞれ別のウェルに、ヒト冠状動脈血管内皮細胞(HCAEC)1x104個/500μlを培養液(基本培地=EBM-2,
添加試薬=IGF-I, 2% FCS、Clonetics社)を用いて播種した。以下、上記(1)と同様にWST-1法にて細胞増殖活性を検討した。その結果、1日後では約60%の活性に低下するが、以後は、1週後まで安定に活性を維持した(図5)。
特開2001−136960の実施例1に記載された方法に準じて、PAUを合成した。即ち、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(OH価57.35)980gと、トリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネートと、2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、2,4−トリレンジイソシアネート80重量%)174gを70℃で5時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(NCO当量、1165)を得た。このウレタンプレポリマー58.2gとγ−メチル−L−グルタメート−N−カルボン酸無水物58.2gとをジメチルホルムアミド(DMF)394.3gに溶解し、これにヒドラジンヒドラート1.375gをDMF20gに溶解した溶液を滴下、反応させ、粘度18500cp/25℃のポリアミノ酸ウレタン共重合体(PAU)溶液(濃度20重量%DMF溶液)を得た。アミノ酸鎖の平均重合度について、1級アミンとイソシアネートの反応性および1級アミンによるN−カルボン酸無水物の重合機構(Murray
Goodman and John Hutchison.J.Am.Chem.Soc.,88,3627(1966))に基づいて算出すると約62であった。
上記で得られたPAUを用いて、人工血管基材のコーティングを次のように行った。初めに、PAUの溶液をジクロロ酢酸で希釈して、PAU濃度を2%とした。人工血管用ePTFEチューブ(内径3mmのものを、長さ約35mm)は予め、エタノールに漬けて、気泡を除いておき、上記のPAU液に、直ちに浸漬した。4℃で15時間おいた後、500mlの蒸留水に投じ、更に蒸留水を三回交換した後、24時間、蒸留水中に室温で保持した(常時攪拌)。その後、500mlの蒸留水で3回洗浄した。洗浄されたチューブは風乾後、120℃のオーブンに移し、5分間加熱し、PAUコートチューブ(PAU(+)チューブ)とした。コート前後の重量の差から、ePTFEの重量に対して0.5%に相当する重量のPAUがコートされていた。
上記PAU(+)チューブを、メタノールで洗浄し、次いで70%メタノールで3回洗浄した後、蒸留水で洗浄を3回行った。次に0.2%の酸性溶液(高研製、I-PCコラーゲン0.5%を蒸留水で希釈)に入れ、4℃で15時間処理した。処理後、PBSで洗浄を3回行い、PAUの上にコラーゲンが積層・コートされたコラーゲンコートチューブ(コラーゲン(+)チューブ)が作製された。
コラーゲン(+)チューブを、PBSで洗浄した後、40μg/ml(1μM)のFNCBD溶液に漬けた。FNCBDの製造法は、特開2001−190280号公報の記載に従った。37℃で2時間反応させた後、PBSで3回洗浄した。洗浄されたチューブは、長さ4cmのポリプロピレンチューブにいれ、PBSが流れる環境下に置いた。このチューブは上流端が内径5mmで、下流端内径が2.5mmと徐々に細くなった形状をしているものである。これにより、挿入されるePTFEチューブがPBSで流されない様になっている。このポリプロピレンチューブを、ロータリポンプにセットされたシリコンチューブに連結して、PBSを流速100ml/minで循環させた。時間をおいて、コラーゲン(+)チューブを、PBS循環路にいれ、12日後に全てを取り出した。即ち、流路に1、2、6、12日間さらされたコラーゲン(+)チューブを回収した。これらを同時に、抗FNCBD抗体による染色性で検討した。抗FNCBDモノクローナル抗体(TaKaRa、FC4-4)を1:1000で希釈し、1時間室温で反応させた。次にPBSで3回洗浄し、結合した抗体をABC法で検出した(Vectorstain、マウスABC-POキット、Vector社)。即ち、ビオチン化抗マウスIgG抗体、及びABC-complexを、Vector社マニュアルに倣って、順次反応させた。反応後、PBSで6回洗浄した後、クロロナフトール・H2O2で発色反応を行った。その結果、コラーゲンコート後、12日まで、ほぼ変化無くコラーゲンが残存していることが確認された。このことから、PAUはコラーゲンを固着する上で非常に有効な材料であることが示された。
初めに、コラーゲン(+)チューブに、どの程度のHGF融合蛋白質が結合可能かを見るため、以下のように検討した。コラーゲン(+)チューブから、4mm径のディスクに打ち抜いたものを複数作成した。96ウェルプレートのウェルに、種々の濃度のHGF融合蛋白質溶液あるいは、PBSを添加した。同一濃度のウェルを4ウェルづつ用意し、そのうち2つに、上記のディスクを入れ、残り2つのウェルはディスクを入れずにおいた。37℃で2時間後、それぞれの溶液をウェルから回収し、HGF濃度をHGF
ELISAキット(Quantikine
HGF,R&D社)を用いて測定した。ディスクを入れなかったウェルのHGF濃度から、ディスクを入れたウェルのHGFを減じて、結合されたHGF融合蛋白質の濃度とした。その結果を図6に示した。図6から明らかなように、HGF融合蛋白質は、ヘテロダイマーとした場合、添加量に依存して結合が増加した。最大濃度64μg/mlでは、添加量の約半分が結合していた。一方、一本鎖の分子は、低い濃度で結合が飽和した。
実施例2で作成されたHGF融合蛋白を固定化した人工血管(添加濃度64μg/ml)を、ビーグル犬の下肢大腿動脈に置換移植した。動脈の長さ3cmを切除した後、3cmの長さの人工血管を縫合移植した。移植後1,2,4週で摘出し、フォルマリン固定し、パラフィンに包埋した。パラフィンブロックを、人工血管の長軸に沿って10等分し、そのそれぞれからパラフィン切片を作成し、ヘマトキシリン&エオシンで染色した結果、1週後では、人工血管の内面には、内皮細胞は認められなかった。2週経過後のものでは、生体血管との吻合部(上流側)から約3mmの部位まで、内皮細胞を認めることができたが、それより下流には内皮細胞は認められなかった。
実施例2において作製されたコラーゲン(+)チューブに、コラーゲン結合性VEGFを添加して固定化した。添加濃度は、HGF融合蛋白と同じく0.8μM(80μg/m)とした。このコラーゲン結合性VEGFとは、本発明者らが既に開示したVEGFの融合蛋白質である(特開2002−60400号公報参照)。
実施例2で作成されたPAU(+)チューブを、上記実施例3と同様に移植した。、
実施例2で作成されたコラーゲン(+)チューブを、上記実施例3と同様に移植した。
以上のことから、HGFあるいはVEGFを固定化したことで、人工血管の内皮化が早まったと考えられる。その効果は、VEGFよりもHGFの方がより優れていた。
2 多孔質管状構造体
3 ポリアミノ酸ウレタン共重合体層
4 コラーゲン又はゼラチン層
5 内皮細胞増殖促進剤
人工配列の説明:HGF融合蛋白質をコードするDNA配列。
塩基番号1から62はメリチンシグナル配列をコードする塩基配列(pAcYM1-Melに由来)、
塩基番号70から744はFnのアミノ酸番号260から484をコードする配列、
塩基番号748から762はエンテロキナーゼの認識配列をコードする配列、
塩基番号763から2856は、HGFの成熟ポリペプチドをコードする配列、
である。
人工配列の説明:HGF融合蛋白質
アミノ酸番号3から227はFnのアミノ酸番号260から484までのアミノ酸配列、
アミノ酸番号229から233は エンテロキナーゼ認識配列、
アミノ酸番号234から930は HGF成熟ポリペプチドのアミノ酸配列、
である。
人工配列の説明:HGF融合蛋白質をコードするDNA配列。
塩基番号1から62はメリチンシグナル配列をコードする塩基配列(pAcYM1-Melに由来)、
塩基番号70から1089はFnのアミノ酸番号260から599をコードする配列、
塩基番号1093から1107はエンテロキナーゼの認識配列をコードする配列、
塩基番号11087から3201は、HGFの成熟ポリペプチドをコードする配列、
である。
人工配列の説明:HGF融合蛋白質
アミノ酸番号3から342はFnのアミノ酸番号260から599までのアミノ酸配列、
アミノ酸番号344から348は エンテロキナーゼ認識配列、
アミノ酸番号349から1045は HGF成熟ポリペプチドのアミノ酸配列、
である。
Claims (7)
- 多孔質管状構造体の少なくとも内表面に、(1)ポリアミノ酸ウレタン共重合体、(2)コラーゲン又はゼラチン、(3)コラーゲン結合活性を有する内皮細胞増殖促進剤を、順次積層し固定化して成る人工血管。
- 多孔質管状構造体が、延伸ポリテトラフルオロエチレンからなるものである請求項1記載の人工血管。
- ポリアミノ酸ウレタン共重合体が、アミノ酸ユニット平均4以上が連続して結合されたポリアミノ酸とウレタンとの共重合体であって、(a)α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物、(b)イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、(c)水、ヒドラジン及び有機アミンから選ばれる少なくとも1種、を反応させて得られるものである請求項1又は2記載の人工血管。
- 内皮細胞増殖促進剤が、コラーゲン結合活性を有するポリペプチドと血管新生因子との融合蛋白質である請求項1〜3記載の人工血管。
- 融合蛋白質が、コラーゲン結合活性を有するポリペプチドとHGFとの融合蛋白質である請求項4記載の人工血管。
- 融合蛋白質が、配列表配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列、あるいはこれと相同なアミノ酸配列を持つHGF融合蛋白質である請求項5記載の人工血管。
- コラーゲン結合活性を有するポリペプチドが、フィブロネクチン由来のポリペプチドである請求項4〜6記載の人工血管。
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