JP2006062639A - ブレーキ装置、このブレーキ装置を用いたシートベルトリトラクタおよびこれを備えているシートベルト装置 - Google Patents

ブレーキ装置、このブレーキ装置を用いたシートベルトリトラクタおよびこれを備えているシートベルト装置 Download PDF

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Abstract

【課題】小型コンパクトに形成できるブレーキ装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ装置の駆動部材43が非作動時には、作動制御部材41が非作動位置に保持される。この状態では、作動制御部材41の回転阻止部41c,41dがエネルギ吸収部材支持部材47平面47c,47dに対向する位置に保持され、エネルギ吸収部材支持部材47は作動制御部材41によってブレーキがかけられて、その回転が阻止される。駆動部材43が作動すると、作動制御部材41が下方へ移動し、作動制御部材41の回転許容部74eがエネルギ吸収部材支持部材47の円筒状部47bに位置する。すると、エネルギ吸収部材支持部材47にかけられていたブレーキが解除され、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が可能となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回転部材の回転を制御するブレーキ装置の技術分野、シートベルトを巻取引出し可能に巻き取り、シートベルト装着状態で衝突時等の車両に大きな車両減速度が作用した場合のような緊急時にシートベルトの引出しを阻止する際、トーションバーがねじれ変形してこのシートベルトにかかる荷重を制限して乗員の衝撃エネルギを吸収緩和するエネルギ吸収機構(以下、EA機構ともいう)を備えているシートベルトリトラクタの技術分野およびこのシートベルトリトラクタを備えているシートベルト装置の技術分野に属するものである。
従来から自動車等の車両に装備されているシートベルト装置は、前述の緊急時に、シートベルトで乗員を拘束することにより乗員のシートからの飛び出しを阻止し、乗員を保護している。
このようなシートベルト装置においては、シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタを備えている。このシートベルトリトラクタでは、シートベルトは非装着時にスプールに巻き取られているが、装着時には引き出されて乗員に装着される。そして、前述のような緊急時にシートベルトリトラクタのロック機構が作動してスプールのベルト引出方向の回転を阻止することにより、シートベルトの引出しが阻止される。これにより、緊急時にシートベルトは乗員を確実に拘束し、保護するようになる。
ところで、この従来のシートベルト装置のシートベルトリトラクタにおいては、車両衝突等の緊急時にシートベルトが乗員を拘束保護するとき、大きな車両減速度が生じるため、乗員が大きな慣性により前方へ移動しようとする。このため、シートベルトには大きな荷重が加えられるとともに、乗員はこのシートベルトから大きな衝撃力を受けるようになる。乗員に対してこの衝撃力は特に問題ではないが、できれば制限される方が望ましい。
そこで、シートベルトリトラクタにおいては、従来、トーションバーを設けて、シートベルト装着状態での緊急時に、このシートベルトにかかる荷重を制限して衝撃エネルギを吸収緩和するようにしたものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
図21は、この特許文献1に開示されたシートベルトリトラクタの一例を示す縦断面図である。図中、1はシートベルトリトラクタ、2はコ字状のフレーム、3はシートベルト、4はコ字状のフレーム2の両側壁間に回転可能に支持され、シートベルト3を巻き取るスプール、5は前述の緊急時に発生する大きな車両減速度を感知して作動する減速度感知手段、6は減速度感知手段5によって作動して少なくともスプール4のベルト引出方向の回転を阻止するロック機構、7はこのスプール4の中心に軸方向に遊嵌、貫通され、かつスプール4とロック機構6とを回転的に連結するトーションバー、8はスパイラルスプリング9のばね力によりブッシュ10を介してスプール4を常時ベルト巻取方向に付勢するスプリング手段、11は前述の緊急時に作動してベルト巻取トルクを発生するプリテンショナー、12はプリテンショナー11のシートベルト巻取トルクをスプール4に伝達するブッシュである。
ロック機構6は、トーションバー7の第1トルク伝達軸17に一体回転可能でありかつパウル13を揺動可能に保持するロッキングベース(本発明のロッキング部材に相当)14を備えているとともに、トーションバー7に通常時はこのトーションバー7と一体回転し緊急時に減速度感知手段5の作動で停止してトーションバー7との間に相対回転差を発生させてパウル13をフレーム2の側壁の内歯19に係合させてロッキングベース14のシートベルト引出方向の回転を阻止するロックギヤ6aを備えている。ロッキングベース14には雄ねじ軸部15が形成されており、この雄ねじ軸部15には、スプール4と一体に回転するナット状のストッパ部材16が螺合されている。
また、トーションバー7には、ロッキングベース14と相対回転不能に係合する第1トルク伝達部17が形成されているとともに、スプール4と相対回転不能に係合する第2トルク伝達部18が形成されている。
そして、スプリング手段8のばね力により、スプール4はブッシュ10、トーションバー7、トーションバー7の第2トルク伝達部18およびブッシュ12を介して常時シートベルト巻取方向に付勢されている。また、プリテンショナー11の作動時、プリテンショナー11で発生したベルト巻取トルクがブッシュ12を介してスプール4に伝達され、これによりスプール4はシートベルト3を所定量巻き取るようになっている。
このように構成された従来のシートベルトリトラクタ1においては、シートベルト非装着時には、スプリング手段8の付勢力で、シートベルト3が完全に巻き取られている。そして、装着のためシートベルト3を通常の速度で引き出すと、スプール4がシートベルト引出方向に回転し、シートベルト3はスムーズに引き出される。シートベルト3に摺動自在に設けられた図示しないタングを車体に固定された図示しないバックルに挿入係止した後、余分に引き出されたシートベルト3がスプリング手段8の付勢力でスプール4に巻き取られ、シートベルト3は乗員に圧迫感を与えない程度にフィットされる。
前述の緊急時にはプリテンショナー11が発生したシートベルト巻取トルクはスプール4に伝達され、スプール4はシートベルト3を所定量巻き取り、乗員を堅固に拘束する。一方、緊急時に発生する大きな車両減速度で減速度感知手段5が作動してロック機構6が作動する。すなわち、減速度感知手段5の作動により、ロックギヤ6aのシートベルト引出方向の回転が阻止され、ロック機構6のパウル13が回動して、フレーム2の側壁の内歯19に係合する。すると、ロッキングベース14のシートベルト引出方向の回転が阻止されるので、トーションバー7がねじられ、スプール4のみがシートベルト引出方向にロッキングベース14に対して相対回転する。これ以後、スプール4がトーションバー7をねじりつつシートベルト引出方向に回転することになり、このトーションバー7のねじりトルクによってシートベルト3に加えられる荷重が制限されて、乗員に加えられる衝撃が吸収緩和される。
スプール4がロッキングベース14に対して相対回転することで、スプール4と一体回転するストッパ部材16が、螺合している雄ねじ軸部15に対して相対回転するため、ロッキングベース14の方へ移動する。そして、ストッパ部材16がロッキングベース14に当接すると、ストッパ部材16のそれ以上の回転が阻止されるので、スプール4の回転も阻止されて、トーションバー7のねじりが停止する。このようにして、シートベルト3の引出が阻止されて乗員がシートベルト3により確実に拘束されるとともに、トーションバー7の最大ねじりが制限され、トーションバー7のねじりによる切断が防止される。
また、この従来のシートベルトリトラクタ1は、シートベルトの急激な引出時にも、ロック機構6のロッキングベース14がロックギヤ6aに対してシートベルト引出方向に相対回転するようになっている。そして、これにより前述と同様にロック機構6のパウル13がフレーム2の側壁の内歯19に係合して、ロッキングベース14の回転が阻止されるため、トーションバー7を介してスプール4のベルト引出方向の回転が阻止され、シートベルトの引出が阻止される。
更に、特許文献1には、制限荷重(FL荷重)が切り替えられるようになっているシートベルトリトラクタ1が開示されている。すなわち、図22に示すように、通常時EA荷重切替機構20のロックピン21でロック部材22がシリンダ部材23からの飛び出しを阻止されている。プリテンショナーが作動する大きな衝突時にロッキングベースのベルト引出方向の回転が阻止されると、このロッキングベースに設けられたギヤ24の同方向の回転も阻止される。このため、ギヤ24に常時噛合するギヤ25の回転も阻止される。また、乗員の慣性でシートベルト3が引き出されようとするため、スプール4がなおもベルト引出方向に回転する。このため、スプール4に一体回転可能に設けられたギヤ26も同方向に回転するとともに、ギヤ26に常時噛合するギヤ27も回転する。
一方、この大衝突後の初期段階においては、プリテンショナーからの排出ガスでロックピン21が突き飛ばされることで、ロック部材22がスプリング28のばね力でシリンダ部材23から飛び出す。すると、ロック車29のラチェット爪29aがロック部材22に係合し、ロック車29はベルト引出方向の回転が阻止される。このため、第2トーションバー30はその全長θより短い長さηの部分でねじれる。こうして、第1トーションバー7のねじれと第2トーションバー30のη部分のねじれとによって、EA機構によるEA作動が開始され、このときのFL荷重F1は、図23に示すように比較的大きい。また、この初期段階続く後続段階においては、第2トーションバー30のη部分が所定量ねじれて破断し、この第2トーションバー30の破断後は、第1トーションバー7のみがねじれることでEA作動が行われるようになる。このときのFL荷重F2は、図23に示すように初期段階より比較的小さい。このようにして、FL荷重が切り替えられ、シートベルトにかかる制限荷重を、例えばエアバッグ等による緊急時の乗員の拘束状況に応じて柔軟に種々設定することができる。
特開2001−58559号公報。
ところで、特許文献1に開示のシートベルトリトラクタ1においては、前述のように
衝突後の初期段階にスプリング28のばね力でシリンダ部材23から飛び出したロック部材22にロック車29のラチェット爪29aが係合することにより、ロック車29のベルト引出方向の回転が阻止される。つまり、シリンダ部材23、ロック部材22、スプリング28、およびラチェット爪29aにより、ロック車29の回転を阻止するブレーキ装置が構成されている。
しかしながら、このようなブレーキ装置では、ラチェット爪29aがロック部材22に係合する際、ロック部材22に比較的大きな力が加えられる。このため、ロック部材22の強度を高くする必要があり、必然的にシリンダ部材23およびロック部材22を大きくするとともにスプリング28のばね力も大きくしなければならず、ブレーキ全体が大型にならざるを得ないという問題がある。
しかも、ロック部材22を回転しているロック車29に向かって突出させて、このロック部材22にロック車29のラチェット爪29aを係合させるため、この係合時にロック部材22がラチェット爪29aから比較的大きな衝撃力を受けるようになる。これによっても、シリンダ部材23およびロック部材22を大きくせざるを得ないものとなっている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、小型コンパクトに形成できるブレーキ装置を提供することである。
また、本発明の他の目的は、本発明のブレーキ装置を用いてシートベルトにかかる制限荷重を緊急時の状況に応じてより一層柔軟に種々設定することができるシートベルトリトラクタおよびこれを備えているシートベルト装置を提供することである。
前述の課題を解決するために、請求項1の発明のブレーキ装置は、外周面に少なくとも1つの平面を有する回転部材と、この回転部材の回転を制御する作動制御部材と、この作動制御部材を作動する駆動部材とを備え、前記作動制御部材が、前記回転部材に位置してこの回転部材の平面に当接することで前記回転部材の回転を阻止する回転阻止部と、この回転阻止部に隣接して設けられ前記回転部材に位置して前記回転部材の回転を許容する回転許容部とを有していることを特徴としている。
また、請求項2の発明のブレーキ装置は、前記回転阻止部が前記回転部材の平面が対向して位置したときこの回転部材の平面に当接して前記回転部材の回転を阻止する平面からなり、前記回転許容部は前記回転部材に位置したときこの回転部材を回転可能にする円弧状に形成されていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明のブレーキ装置は、前記回転部材は円柱状または円筒状に形成されているとともに、前記回転部材の外周面に前記回転部材の平面が1つまたは2つ形成されていることを特徴としている。
更に、請求項4の発明のブレーキ装置は、前記回転部材が角柱状または角筒状に形成されているとともに、前記回転部材の外周面の少なくとも1つが前記回転部材の平面であることを特徴としている。
更に、請求項5の発明のブレーキ装置は、前記作動制御部材はその非作動時に前記回転阻止部で前記回転部材の回転を阻止するとともに、その作動時に前記回転許容部で前記回転部材の回転を許容するようになっていることを特徴としている。
更に、請求項6の発明のシートベルトリトラクタは、シートベルトを巻き取るスプールと、緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されるロッキング部材を有するロック機構と、前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールが前記ロッキング部材に対してシートベルト引出方向に相対回転するとき、前記シートベルトにかかる荷重を制限する第1および第2のシートベルト荷重制限機構とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、前記第1のシートベルト荷重制限機構が、前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられかつ前記回転伝達軸を構成するトーションバーをねじり変形させる荷重制限機構、前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた線材を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた係合ピンでしごく荷重制限機構、一端が前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた帯状板を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられたガイド溝で強制的に変形する荷重制限機構、前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた筒状部材を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた係止部で塑性変形させる荷重制限機構、一端が前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられかつ他端が前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に係合されたU字状の平板素材またはU字状の線材を変形させる荷重制限機構、前記スプールとロッキング部材との間に設けられたシェアピンをせん断破壊させる荷重制限機構、前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた被切削部位を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた切削刃で切削するEA機構、および前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた板状のエネルギ吸収部材を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた切り裂き用突起で切り裂く荷重制限機構のいずれか1つであり、緊急時に前記スプールの回転が伝達されて回転する回転軸が設けられており、この回転軸に前記第2のシートベルト荷重制限機構が設けられ、前記第2のシートベルト荷重制限機構が、前記シートベルトに対して制限荷重を設定する制限荷重設定手段と、緊急時のシートベルトの制限荷重を緊急時の状況に基づいて変更するように前記制限荷重設定手段を制御する制限荷重制御手段とを備え、前記制限荷重設定手段が、前記回転軸に一体回転可能に設けられた第1エネルギ吸収部材固定支持部材と、前記回転軸に相対回転可能に設けられた第2エネルギ吸収部材固定支持部材と、これらの第1および第2エネルギ吸収部材固定支持部材の間に設けられ、第1および第2エネルギ吸収部材固定支持部材の相対回転時にエネルギを吸収するエネルギ吸収部材、前記第2エネルギ吸収部材固定支持部材の回転を制御するブレーキ装置とからなり、前記ブレーキ装置が請求項1ないし5のいずれか1記載のブレーキ装置であるとともに、前記第2エネルギ吸収部材固定支持部材が前記回転部材であることを特徴としている。
更に、請求項7の発明のシートベルトリトラクタは、前記制限荷重設定手段が、制限荷重の異なる2つの第1および第2制限荷重設定手段からなることを特徴としている。
更に、請求項8の発明のシートベルトリトラクタは、前記駆動部材が、前記作動制御部材を作動するためのガスジェネレータを備えていることを特徴としている。
更に、請求項9の発明のシートベルトリトラクタは、前記制限荷重設定手段が、制限荷重の異なる2つの第1および第2制限荷重設定手段からなり、前記第1および第2制限荷重設定手段のいずれか一方の制限荷重設定手段が緊急時に常時作動可能にされていることを特徴としている。
更に、請求項10の発明のシートベルトリトラクタは、前記第1および第2制限荷重設定手段のいずれか他方の制限荷重設定手段の前記駆動部材が、前記作動制御部材を作動するためのガスジェネレータを備えていることを特徴としている。
更に、請求項11の発明のシートベルト装置は、請求項6ないし10のいずれか1記載のシートベルトリトラクタを備えていることを特徴としている。
このような構成をした本発明のブレーキ装置によれば、作動制御部材の回転阻止部が回転部材に位置して回転部材の平面に当接することで回転部材の回転を阻止し、また、作動制御部材の回転許容部が回転部材に位置することで回転部材の回転を許容するようにしているので、比較的簡単な構成で作動制御部材に加えられる力を小さくできる。したがって、作動制御部材の強度を比較的小さくでき、ブレーキ装置を小型コンパクトに形成できる。
特に、請求項5の発明によれば、作動制御部材の非作動時に回転阻止部で回転部材の回転を阻止するとともに、作動制御部材の作動時に回転許容部で回転部材の回転を許容するようにしているので、回転部材から作動制御部材に大きな衝撃力は加えられない。これによっても、作動制御部材の強度を比較的小さくできるとともに、作動制御部材を小さくすることができる。
また、本発明のシートベルトリトラクタおよびシートベルト装置によれば、シートベルトリトラクタが搭載される車両に応じて第2のシートベルト荷重制限機構を適宜数設け、衝突前にわかる情報(例えば、乗員の体重の情報、シートスライド位置の情報等)、衝突の厳しさ(例えば、衝突速度、衝突の仕方等)等の緊急時の状況に基づいて当該第2のシートベルト荷重制限機構の作動を制御することにより、衝突時のシートベルトの制限荷重を衝突時の状況および乗員の体格の大きさに応じてより一層柔軟に種々設定することができる。これにより、衝突時に乗員をより効果的にかつより適切に拘束保護することができるようになる。特に、請求項7の発明によれば、制限荷重設定手段を、制限荷重の異なる2つの第1および第2制限荷重設定手段から構成しているので、4種類のEA作動パターンを設定することができる。これらの4種類のEA作動パターンにより、衝突時のシートベルトの制限荷重を、衝突時の状況および乗員の体格の大きさに応じて効率よくかつより簡単に設定することができる。
また、請求項8および10の発明によれば、ガスジェネレータのガス圧による比較的大きな力で作動制御部材を作動するので、制限荷重設定手段の作動切換を確実に行うことができる。
更に、請求項9の発明によれば、第1および第2制限荷重設定手段のいずれか一方の制限荷重設定手段を緊急時には常時作動するようにしているので、一方の制限荷重設定手段を作動するための駆動部材を不要にできる。これにより、部品点数を削減できるとともに構成を簡単にでき、コストを低減できる。
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明にかかるブレーキ装置の実施の形態の一例を用いたシートベルトリトラクタの一例を模式的にかつ一部断面を取って示す正面図である。なお、以下の実施の形態の各例の説明において、その例よりも前の例と同じ構成要素および前述の図21に示す従来例のシートベルトリトラクタ1の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
図1に示すように、この例のシートベルトリトラクタ1は、図21に示す従来例のシートベルトリトラクタ1と同様に、コ字状のフレーム2、シートベルト3、シートベルト3を巻き取るスプール4、およびトーションバー(本発明の第1のシートベルト荷重制限機構に相当)7を有している。また、詳細に図示しないが、この例のシートベルトリトラクタ1は、図21に示す従来例のシートベルトリトラクタ1と同様に、減速度感知手段5、ロック機構6、およびスプリング手段8を備えているとともに、図示しないが、前述のプリテンショナ−11と同様のプリテンショナー、このプリテンショナーのシートベルト巻取トルクをスプール4に伝達する前述ブッシュ12と同様のブッシュを備えている。
更に、この例のシートベルトリトラクタ1はプログラマブルフォースリミッタ(以下、PFLともいう)31を備えており、このPFL31はスプール4の上方に配置されてフレーム2に固定されている。
PFL31は、衝突前にわかる情報(例えば、乗員の体重の情報、シートスライド位置の情報等)、衝突の厳しさ(例えば、衝突速度、衝突の仕方等)等の衝突時(緊急時)の状況に基づいて、衝突時のシートベルトの制限荷重(FL荷重)を変更することで、このFL荷重を緊急時の状況に応じてより一層柔軟に種々設定するものである。
この例のPFL31は、コ字状のフレーム2の両側壁2a,2b間にスプール4およびトーションバー7と平行にかつ回転可能に架設支持された回転軸32を備えている。この回転軸32はスプール4と歯車動力伝達機構33を介して回転連結可能とされている。歯車動力伝達機構33は、スプール4にこれと相対回転可能にかつ同軸に設けられたスプール側歯車34と、回転軸32にこれと一体回転可能にかつ同軸に設けられた、スプール側歯車34より小径のPFL側歯車35と、スプール4とスプール側歯車34とを緊急時に回転連結するクラッチ機構36とを有している。
図2および図3に詳細に示すように、スプール側歯車34は、外歯34aおよび内歯34bを有するリング状に形成されている。その場合、内歯34bは、ベルト引出方向に係合可能なラチェット歯に形成されている。このスプール側歯車34はスプール4のロッキングベース14側の端面に突設された支持軸部4aに内歯34bが当接するようにして、スプール4と相対回転可能に支持されている。
また、クラッチ機構36は、円弧状に形成されかつ一端にスプール側歯車34の内歯34bに係合可能な所定数の係止爪37aを有するクラッチパウル37を備えている。このクラッチパウル37は、支持軸部4aに所定形状に湾曲して形成された支持面4bに摺動可能に支持されている。更に、クラッチパウル37は、ロック機構6のパウル13の回転軸13aに一体にかつ同軸に設けられたシェアピン38に一体回転可能に設けられている。そして、緊急時にパウル13が回動してロッキングベース14のベルト引出方向の回転が阻止されたとき、このパウル13の回動とともに回動してクラッチパウル37の係止爪37aが内歯34bに係合するようになっている。
そして、前述のように減速度感知手段5の作動した緊急時にパウル13が回転してフレーム2の側壁2bの内歯19に係合する際に、クラッチパウル37はパウル13の回転と連動して回転することで、図3に二点鎖線で示すようにその係止爪37aがスプール側歯車34の内歯34bに係合し、クラッチ機構36が接続されるようになっている。このクラッチ機構36の接続により、スプール4とスプール側歯車34とが少なくともベルト引出方向に回転連結される。また、パウル13がフレーム2の内歯19に係合するとロッキングベース14のベルト引出方向の回転がロックされるのに対して、乗員の慣性でシートベルト3が引き出されようとしてスプール4がなおもベルト引出方向に回転するので、シェアピン38が大きなせん断荷重を加えられて破断するようになる。
すなわち、緊急時にパウル13がフレーム2の内歯19に係合しかつクラッチパウル37の係止爪37aが内歯34bに係合したとき、シェアピン38がせん断破壊するようになっている。シェアピン38がせん断破壊すると、図3に点線で示すようにクラッチパウル37は、係止爪37aが内歯34bに係合したまま、スプール4のベルト引出方向の回転の上流側にスプール4に対して相対的に移動する。そして、クラッチパウル37はスプール4の支持軸部4aの支持面4bとスプール側歯車34との間に食い込まれることにより、スプール4に対する相対移動が停止する。これにより、スプール4とスプール側歯車34とのベルト引出方向の回転連結が堅固に保持される。したがって、図3に矢印で示すようにスプール4のベルト引出方向の回転がクラッチパウル37を介してスプール側歯車34に伝達され、スプール側歯車34が矢印で示すようにベルト引出方向に回転するようになる。
図1に示すようにスプール側歯車34の外歯34aはPFL側歯車35の外歯35aに常時噛合している。したがって、クラッチパウル37の係止爪37aが内歯34bに係合しないクラッチ機構36の遮断時には、スプール4がベルト引出方向に回転しても、この回転はスプール側歯車34に伝達されず、スプール側歯車34、PFL側歯車35および回転軸32は回転しない。また、クラッチパウル37の係止爪37aが内歯34bに係合したクラッチ機構36の接続しかつシェアピン38がせん断破壊をしたときには、スプール4がベルト引出方向に回転すると、この回転はスプール側歯車34に伝達され、スプール側歯車34がスプール4と同方向に回転するとともに、PFL側歯車35および回転軸32がスプール4と逆方向に回転するようになる。
図1に示すように、PFL31は、回転軸32に設けられた2つの第1および第2EA機構39,40、これらの第1および第2EA機構39,40のEA作動をそれぞれ制御する第1および第2作動制御部材41,42、フレーム2に固定されてこれらの第1および第2作動制御部材41,42を駆動する第1および第2駆動部材43,44を備えている。第1および第2EA機構39,40は、本発明の制限荷重の異なる第1および第2制限荷重設定手段を構成している。
第1および第2EA機構39,40は互いに同じ構成を有しており、以下に第1EA機構39について説明する。図4(a)ないし(d)に示すように、第1EA機構39は、エネルギ吸収部材45と、回転軸32に一体回転可能に設けられたエネルギ吸収部材固定支持リング(本発明の第1エネルギ吸収部材固定支持部材に相当)46と、回転軸32に相対回転可能に設けられたエネルギ吸収部材支持部材(本発明の第2エネルギ吸収部材固定支持部材に相当)47とを有している。
図5(a)および(b)に示すように、エネルギ吸収部材45は厚みt1で幅w1の帯状平板からなり、全体がほぼC字状に形成されている。このエネルギ吸収部材45の一端部はエネルギ吸収部材固定支持リング46に固定支持される第1支持部45aとされ、またエネルギ吸収部材45の他端部はエネルギ吸収部材支持部材47に摺動可能に支持される第2支持部45bとされている。更に、第1支持部45aの近傍には、折り返されたU字状部45cが形成されている。
図6(a)および(b)に示すように、エネルギ吸収部材支持部材47は、一側に形成され、内部にエネルギ吸収部材固定支持リング46が配設される有底円筒状部47aと、他側に有底円筒状部47aと一体に形成された円筒状部47bとからなっている。円筒状部47bの外周面には、互いに平行でかつ同じ幅の一対の平面47c,47dが形成されている。
そして、図4(b)および(c)に示すように、エネルギ吸収部材固定支持リング46が回転軸32に固定されるとともに、エネルギ吸収部材支持部材47が回転軸32に左方から相対回動可能に嵌合される。エネルギ吸収部材固定支持リング46が有底円筒状部47a内に配設された状態で、エネルギ吸収部材支持部材47が回転軸32に軸方向に位置決めされる。エネルギ吸収部材固定支持リング46にエネルギ吸収部材45の第1支持部45aが固定支持されるとともに、エネルギ吸収部材45の第2支持部45bがエネルギ吸収部材支持部材47の有底円筒状部47aの円筒部を摺動可能に貫通支持されている。
第2EA機構40も第1EA機構39と同じ構成、つまりエネルギ吸収部材45′と、エネルギ吸収部材固定支持リング46′と、回転軸32に相対回転可能に支持されたエネルギ吸収部材支持部材47′とを有している(45′は図5(c)に図示、また47′は図1に図示。46′はいずれの図にも図示されないが、説明の便宜上、第1EA機構39のエネルギ吸収部材固定支持リング46と対応させてこの符号46に「′」を付して用いる。以下、同様に第2EA機構40に関し、いずれの図にも図示されない構成要素についても、説明の便宜上第1EA機構39の対応する構成要素の符号に「′」を付して用いる。)。
エネルギ吸収部材45′、エネルギ吸収部材固定支持リング46′、およびエネルギ吸収部材支持部材47′は、第1EA機構39のそれらと左右対称にしてこの第1EA機構39と同じようにして回転軸32に設けられる。また、図5(c)に示すようにエネルギ吸収部材45′は、その厚みが第1EA機構39のエネルギ吸収部材45の厚みt1と同じ厚みに設定されているが、その幅w2が第1EA機構39のエネルギ吸収部材45の幅w1より小さく設定されている(w2<w1)。したがって、第2EA機構40のエネルギ吸収量は第1EA機構39より小さく、第2EA機構40における前述の荷重の制限量(FL荷重)は第1EA機構39より小さい。すなわち、図14(a)ないし(c)に示すように、第1EA機構39のEA作動によるFL荷重F5は比較的大きく、第2EA機構40のEA作動によるFL荷重F6は比較的小さくなる。
なお、異なるFL荷重を得るために、図5(d)に示すように、エネルギ吸収部材45,45′の厚みt2を厚みt1と異ならせることもできるし(図示例の場合には、t2>t1であるが、その逆でもよいことは言うまでもない)、幅wを連続的に異ならせてもよい。更に、エネルギ吸収部材45,45′の形状は他の形状でもよい。以下の説明では、図5(a)ないし(c)に示すエネルギ吸収部材45,45′を用いるものとする。
第1および第2作動制御部材41,42は互いに同じ構成を有しており、以下に同じ図7を用いて説明する。図7に示すように、第1および第2作動制御部材41,42は、第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bを有するU字状に形成されている。第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの先端側(図において下端側)の対向面は互いに平行な平面からなる一対の回転阻止部41c,41d;42c,42dが形成されている。これらの回転阻止部41c,41d;42c,42d間の距離は、エネルギ吸収部材支持部材47,47′における円筒状部47b,47b′の一対の平面47c,47d;47c′,47d′間の距離より若干大きく設定されている。また、第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの回転阻止部41c,41d;42c,42dの上方にこれらの回転阻止部41c,41d;42c,42dに隣接しかつ連続して円弧状からなる回転許容部41e,42eが形成されている。各回転許容部41e,42eの直径は円筒状部47b,47b′の外周面(平面47c,47d;47c′,47d′以外の部分)の直径より若干大きく設定されている。
そして、図4(a)および(b)に示すように、例えば、第1EA機構39および第1作動制御部材41においては、第1および第2アーム部41a,41bの回転阻止部41c,41dが円筒状部47bの平面47c,47dに対向する位置(つまり、回転阻止部41c,41dが平面47c,47dを挟む位置)にあるとき、つまり第1作動制御部材41の非作動時は、これらの回転阻止部41c,41dが円筒状部47bの平面47c,47dに当接することにより、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が阻止されるようになる。また、後述する図11および図12に示すように、第1および第2アーム部41a,41bの回転許容部41eが円筒状部47bに位置するとき、つまり第1作動制御部材41の作動時は、は、この回転許容部41eにより、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が許容されるようになる。
このようにして、第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの回転阻止部41c,41d;42c,42dおよび回転許容部41e,42eと、円筒状部47b,47b′の平面47c,47d;47c′,47d′と、第1および駆動部材43,44とにより、エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転を制御するブレーキ装置が構成されている。
図4(a)ないし(c)に示すように、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が回転阻止部41c,41dによって阻止されている状態で、回転軸32が図4(c)において時計方向に回転すると、エネルギ吸収部材固定支持リング46も一緒に時計方向に回転する。すると、エネルギ吸収部材45の第1支持部45aも一緒に時計方向に回転するので、U字部45cが終端の第2支持部45bに向かって連続的に時計方向に移動していく。つまり、エネルギ吸収部材45が連続的に曲げ変形する。このエネルギ吸収部材45の変形により衝撃エネルギが吸収され、エネルギ吸収部材45のEA作動が行われる。このエネルギ吸収部材45のEA作動により、シートベルト3に加えられる荷重が制限される。そして、最終的には、図4(d)に示すようにU字状の折り返し部45cが消滅するとともに、第2支持部45bが有底円筒状部47aの円筒部から離脱し、エネルギ吸収部材45のEA作動が終了する。このように帯状平板のエネルギ吸収部材45を連続的に曲げ変形させることで、EA作動が摩擦に依存しないので、安定したFL荷重を得ることができる。
図8(a)ないし(c)に示すように、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が回転許容部41eによって許容されている状態で、回転軸32が図8(c)において時計方向に回転すると、エネルギ吸収部材固定支持リング46も一緒に時計方向に回転する。このとき、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が許容されているため、エネルギ吸収部材支持部材47もエネルギ吸収部材45を介して一緒に時計方向に回転する。このため、エネルギ吸収部材45は変形しなく初期状態が保持されてEA作動を行わず、衝撃エネルギを吸収しない。エネルギ吸収部材45のEA作動が行われないことから、エネルギ吸収部材45によっては、シートベルト3に加えられる荷重は制限されない。
第2EA機構40および第2作動制御部材42においても、第1EA機構39および第1作動制御部材41と同様の作動が行われる。
第1および第2駆動部材43,44は互いに同じ構成を有しており、以下に同じ図7を用いて説明する。図7に示すように、第1および第2駆動部材43,44は、シリンダ43a,44a内に配設されたガスジェネレータ43b,44b、同じくシリンダ43a,44a内に配設されたピストン43c,44c、および各ピストン43c,44cと第1および第2作動制御部材41,42とを連結するピストンロッド43d,44dを備えている。
そして、ガスジェネレータ43b,44bが作動して発生するガスで、ピストン43c,44cが図7において下方に移動し、これらのピストン43c,44cの移動で各ピストンロッド43d,44dがシリンダ43a,44aから延び出して第1および第2作動制御部材41,42を下方に移動させるようになっている。
その場合、回転阻止部41c,41d;42c,42dと平面47c,47d;47c′,47d′との間に摩擦が生じていても、ガスジェネレータ43b,44bのガス圧による比較的大きな力で第1および第2作動制御部材41,42が下方に押圧されるので、回転阻止から回転許容への切換が確実に行うことができる。
この例のPFL31においては、第1および第2EA機構39,40の作動あるいは非作動により、4種類のEA作動パターンが設定される。
第1のEA作動パターンは、第1および第2EA機構39,40のいずれものブレーキ装置が両エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転を阻止していて、これらの第1および第2EA機構39,40がともにEA作動を行うパターンである。すなわち、この第1のEA作動パターンでは、図9に示すように第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの回転阻止部41c,41d;42c,42dが円筒状部47b,47b′の平面47c,47d;47c′,47d′に対向する位置に設定されて、第1および第2作動制御部材41,42により両エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転が阻止される。第1のEA作動パターンでのFL荷重は、図14(a)に示すようにトーションバー7のFL荷重F2、第1EA機構39のFL荷重F5、および第2EA機構40のFL荷重F6をすべて加えた荷重となる。この第1のEA作動パターンは通常時に設定され、衝突速度等にも関係するが主として、例えば平均的な体重より比較的重い体重の乗員に対して設定される。
第2のEA作動パターンは、第1EA機構39のブレーキ装置がエネルギ吸収部材支持部材47の回転を阻止しているとともに、第2EA機構40のブレーキ装置がエネルギ吸収部材支持部材47′の回転を許容していて、第1EA機構39がEA作動を行い、第2EA機構40がEA作動を行わないパターンである。すなわち、この第2のEA作動パターンでは、図10に示すように第1アーム部41a,41bの回転阻止部41c,41dが円筒状部47bの平面47c,47dに対向する位置に設定され、また第2作動制御部材42の回転許容部42eが円筒状部47b′に対向する位置に設定されて、第1作動制御部材41によりエネルギ吸収部材支持部材47の回転のみが阻止され、エネルギ吸収部材支持部材47′の回転が許容される。第2のEA作動パターンでのFL荷重は、図14(b)に示すようにトーションバー7のFL荷重F2および第1EA機構39のFL荷重F5を加えた荷重となる。この第2のEA作動パターンは、衝突速度等にも関係するが主として、例えば平均的な体重の乗員に対して設定される。
第3のEA作動パターンは、第1EA機構39のブレーキ装置がエネルギ吸収部材支持部材47の回転を許容しているとともに、第2EA機構40のブレーキ装置がエネルギ吸収部材支持部材47′の回転を阻止していて、第1EA機構39がEA作動を行わず、第2EA機構40がEA作動を行うパターンである。すなわち、この第3のEA作動パターンでは、図11に示すように第2アーム部42a,42bの回転阻止部42c,42dが円筒状部47b′の平面47c′,47d′に対向する位置に設定され、また第1作動制御部材41の回転許容部41eが円筒状部47bに対向する位置に設定されて、第2作動制御部材42によりエネルギ吸収部材支持部材47′の回転のみが阻止され、エネルギ吸収部材支持部材47の回転が許容される。第3のEA作動パターンでのFL荷重は、図14(c)に示すようにトーションバー7のFL荷重F2および第2EA機構40のFL荷重F6を加えた荷重となる。この第3のEA作動パターンは、衝突速度等にも関係するが主として、例えば平均的な体重より比較的軽い体重の乗員に対して設定される。
第4のEA作動パターンは、第1および第2EA機構39,40のいずれものブレーキ装置が両エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転を許容していて、これらの第1および第2EA機構39,40がともにEA作動を行わないパターンである。すなわち、この第4のEA作動パターンでは、図12に示すように第1および第2作動制御部材41,42の回転許容部41e,42eが円筒状部47b,47b′に対向する位置に設定されて、両エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転が許容される。第4のEA作動パターンでのFL荷重は、図示しないがトーションバー7のFL荷重F2のみの荷重となる。この第4のEA作動パターンは、第3のEA作動パターンで対象とする乗員の体重が比較的軽くかつ衝突速度が比較的低いときに設定されている。
このようにして、4種類のEA作動パターンを設定することができるので、これらの4種類のEA作動パターンにより、衝突時のシートベルト3の制限荷重を、衝突時の状況および乗員の体格の大きさに応じて効率よくかつより簡単に設定することができる。
そして、PFL31を緊急時の状況に応じてこれらの第1ないし第4のEA作動パターンのいずれかに設定するために、図13に示すように、各ガスジェネレータ43b,44bの作動を制御する中央処理装置(以下、CPUともいう;本発明の制限荷重制御手段に相当)50が設けられている。このCPU50には、PFL31の作動条件が予め決められて格納されている。そして、CPU50は、衝突前にわかる情報(例えば、乗員の体重の情報、シートスライド位置の情報等)でPFL31の作動条件を設定し、衝突時のFL荷重を変えるようにしている。
このために、CPU50には、車両シートのシート荷重つまり乗員の体重を検出するシートウェイトセンサ51、車両シートのスライド位置を検出するシートスライド位置検出センサ52、車両の加減速度を検出する加速度センサ53、車両前部における左右の衝突の仕方を検出するフロントサテライトセンサ54、およびタングがバックルに係止されたときにオンするバックルスイッチ55、およびリトラクタ1のシートベルト3の伸び出し量を検出するベルト伸び出し量センサ56がそれぞれ接続されている。
そして、CPU50は、これらのシートウェイトセンサ51、シートスライド位置検出センサ52、加速度センサ53、フロントサテライトセンサ54、バックルスイッチ55、およびベルト伸び出し量センサ56からの検出信号による衝突前にわかる情報に基づいて、各ガスジェネレータ43b,44bの各オン(作動)、オフ(非作動)をPFL31の作動条件にしたがって制御することで、このPFL31を緊急時の状況に応じて作動制御している。
このPFL31の作動条件について具体的に説明する。
まず、この例のシートベルトリトラクタ1では、バックルスイッチ55のオン、オフで、PFL31の作動許可あるいは作動不可を決定している。すなわち、CPU50は、バックルスイッチ55からのオン、オフ信号に基づいて、タングがバックルに係合されたときに、PFL31を作動可能に設定し、またタングがバックルに係合されないときに、PFL31を作動不能に設定している。
また、この例のシートベルトリトラクタ1では、衝突の厳しさでPFL31の動作を変更している。すなわち、CPU50は、シートウェイトセンサ51またはシートスライド位置検出センサ52またはベルト伸び出し量センサ56からの検出信号に基づいて、乗員が小柄であるか大柄(中背も含む)であるかを判断するとともに、加速度センサ53からの検出信号に基づいて、衝突が低速衝突(例えば、一例として20〜30km/h程度、これに限定されない)であるか中高速衝突(例えば、一例として30km/h以上、これに限定されない)であるかを判断する。
そして、CPU31は、このような衝突速度を考慮することにより、例えば子供のようにかなり軽い体重の乗員の場合には、低速衝突ではPFL31を第4のEA作動パターンに設定するとともに、中高速衝突ではPFL31を第3のEA作動パターンに設定し、また、子供より大きいが比較的小柄の乗員の場合には、低速衝突では第3のEA作動パターンに設定するとともに、中高速衝突ではPFL31を第2のEA作動パターンに設定し、更に、普通の平均的な体重の乗員の場合には、低速衝突では第2のEA作動パターンに設定するとともに、中高速衝突ではPFL31を第1のEA作動パターンに設定し、更に、平均的な乗員より大柄の乗員の場合には、低速衝突および中高速衝突のいずれにおいてもPFL31を第1のEA作動パターンに設定する。
更に、この例のシートベルトリトラクタ1では、衝突の厳しさでPFL31の動作タイミングを変更している。すなわち、CPU50は、加速度センサ53からの検出信号に基づいて、衝突が低速衝突(例えば、一例として20〜30km/h程度、これに限定されない)であるか、中速衝突(例えば、一例として30〜40km/h、これに限定されない)であるか、高速衝突(例えば、一例として40km/h以上、これに限定されない)であるかを判断する。そして、CPU31は、低速衝突である場合には、PFL31の動作開始を遅くし(例えば、一例として衝突後35msec、これに限定されない)、また中速衝突である場合には、PFL31の動作開始を比較的遅くし(低速衝突より早い;例えば、一例として衝突後25msec、これに限定されない)、更に高速衝突である場合には、PFL31の動作開始を比較的早くする(例えば、一例として衝突後15msec、これに限定されない)。
なお、衝突後、車両のクラッシュシビアリティに応じてPFL31の動作開始タイミングを変更することもできる。また、プリテンショナー11の動作タイミングに連動して、プリテンショナー11の点火後の固定遅延時間でPFL31の動作開始タイミングを変更することもできる。
更に、この例のシートベルトリトラクタ1では、衝突の厳しさおよび衝突の仕方でPFL31の動作を変更している。すなわち、CPU50は、加速度センサ53からの検出信号およびフロントサテライトセンサ54からの検出信号に基づいて、右側オフセット衝突であるか左側オフセット衝突であるかを判断する。そして、CPU50は、右側オフセット衝突(車両右側に偏った衝突)である場合には、右側シートに付設された右側のシートベルト装置のリトラクタにおけるPFL31の動作開始を早くし、かつ左側シートに付設された左側のシートベルト装置のリトラクタにおけるPFL31の動作開始を遅らせる。また、逆に、左側オフセット衝突(車両左側に偏った衝突)である場合には、左側シートに付設された左側のシートベルト装置のリトラクタにおけるPFL31の動作開始を早くし、かつ右側シートに付設された右側のシートベルト装置のリトラクタにおけるPFL31の動作開始を遅らせる。
また、CPU50は、同様に加速度センサ53からの検出信号およびフロントサテライトセンサ54からの検出信号に基づいて、右側斜め衝突であるか左側斜め衝突であるかを判断する。そして、CPU31は、右側斜め衝突である場合には、右側のPFL31の動作開始を早くし、かつ左側のPFL31の動作開始を遅らせる。また、逆に、左側斜め衝突である場合には、左側のPFL31の動作開始を早くし、かつ右側のPFL31の動作開始を遅らせる。
このようにして、PFL31とCPU50とにより、本発明の第2のシートベルト荷重制限機構が構成されている。
このように構成されたこの例のシートベルトリトラクタ1の作動について説明する。
車両衝突時等の大きな減速度が車両に作用しない通常時は、CPU50はガスジェネレータ43b,44bを作動しなく、PFL31が図9に示す第4のEA作動パターンに設定される。このとき、ガスジェネレータ43b,44bが作動しないので、第1および第2作動制御部材41,42はともに移動しなく、非作動位置に保持される。したがって、各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの回転阻止部41c,41d;42c,42dが各エネルギ吸収部材支持部材47,47′の平面47c,47d;47c′,47d′に対向する位置に保持され、これらの第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bによって各エネルギ吸収部材支持部材47,47′にブレーキがかけられて、それらの回転が阻止されている。
一方、車両減速度5が大きな減速度を感知しないのでロック手段6が作動されず、ロック手段6のパウル13が回動しない。このため、クラッチパウル37も回動しなく、クラッチ機構36はスプール4とスプール側歯車34とを回転連結しない状態に設定される。したがって、シートベルト3の引出し時あるいは巻取り時にスプール4が回転しても、スプール4の回転は回転軸32に伝達されず、回転軸32は回転しない。これにより、シートベルト3は、従来の一般的なシートベルトリトラクタと同様に自由に軽く引出し可能となっているとともに、スプリング手段8により巻取り可能となっている。したがって、乗員はシートベルト3の装着操作および装着解除操作を簡単に行うことができる。
車両衝突時等の緊急時には、車両減速度5が大きな減速度を感知してロック機構6を作動する。すると、ロック機構6のパウル13が回動してフレーム2の側壁2bの内歯19に係合するので、ロッキングベース14のベルト引出方向の回転が阻止される。このとき、パウル13の回動に連動して、クラッチパウル37も回動しその係止爪37aがスプール側歯車34の内歯34bに係合する。すなわち、クラッチ機構36が作動してスプール4とスプール側歯車34とがベルト引出方向に回転連結される。このとき、乗員の慣性でスプール4が更にベルト引出方向に回転しようとするので、シェアピン38に大きなせん断力が加えられ、シェアピン38が破断する。すると、スプール4とスプール側歯車34とがベルト引出方向に回転するので、このスプール4の回転がスプール側歯車34およびPFL側歯車35を介して回転軸32に伝達され、回転軸32が逆方向に回転する。
一方、同時にCPU50が緊急時の状況に応じて前述の第1ないし第4のEA作動パターンのいずれか1つのEA作動パターンを設定し、設定したEA作動パターンに対応するガスジェネレータ43b,44bの作動を制御する。そして、第1および第2駆動部材43,44の少なくとも1つが作動すると、第1および第2作動制御部材41,42のうち、作動したガスジェネレータに対応する作動制御部材が下方へ移動し、移動した作動制御部材の第1および第2アーム部の回転許容部がエネルギ吸収部材支持部材の円筒状部に位置する。すると、そのエネルギ吸収部材支持部材にかけられていたブレーキが解除され、エネルギ吸収部材支持部材の回転が可能となる。
したがって、回転軸32が回転すると、第1および第2作動制御部材41,42のうち、ブレーキが解除されたエネルギ吸収部材支持部材がエネルギ吸収部材固定支持リング46およびエネルギ吸収部材45を介して回転するようになる。これにより、第1および第2EA機構39,40のうち、作動したガスジェネレータに対応するEA機構によるEA作動が行われず、作動しないガスジェネレータに対応するEA機構によるEA作動とトーションバー7によるEA作動が行われる。
この例のブレーキ装置によれば、回転部材である各エネルギ吸収部材支持部材47,47′の円筒状部47b,47b′の平面47c,47d;47c′,47d′をそれぞれ第1および第2作動制御部材41,42の各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの平面状の回転阻止部41c,41d;42c,42dで挟むことで、各エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転を阻止し、また、第1および第2作動制御部材41,42の各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの円弧状の回転許容部41e,41e′をそれぞれ円筒状部47b,47b′に位置させることで、各エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転を可能にしているので、各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの回転阻止部41c,41d;42c,42dに加えられる力が図22に示す従来のシートベルトリトラクタに比べて小さくなる。したがって、第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの強度を比較的小さくでき、ブレーキ装置を小型コンパクトに形成できる。
しかも、各エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転が停止している状態で、各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bでそれぞれ各エネルギ吸収部材支持部材47,47′の回転を阻止しているので、各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bに各エネルギ吸収部材支持部材47,47′から大きな衝撃力は加えられない。これによっても、各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bの強度を比較的小さくできるとともに、各第1および第2アーム部41a,41b;42a,42bを小さくすることができる。
また、この例のシートベルトリトラクタ1によれば、2つの第1および第2のEA機構39,40の簡単な構成で、衝突前にわかる情報(例えば、乗員の体重の情報、シートスライド位置の情報等)、衝突の厳しさ(例えば、衝突速度、衝突の仕方等)等の緊急時の状況に基づいて第1および第2のEA機構39,40の作動を制御することにより、衝突時のシートベルト3の制限荷重を衝突時の状況および乗員の体格の大きさに応じてより一層柔軟に種々設定することができる。これにより、衝突時に乗員をより効果的にかつより適切に拘束保護することができるようになる。
特に、ガスジェネレータ43b,44bのガス圧による比較的大きな力で第1および第2作動制御部材41,42を作動するので、第1および第2作動制御部材41,42の作動切換を確実に行うことができる。
この例のシートベルトリトラクタ1の他の構成および作用効果は、前述の従来例および前述の本発明の実施の形態の例と同じである。
図15は、本発明にかかるブレーキ装置の実施の形態の他の例を模式的に示し、(a)はガスジェネレータ非作動時の(b)におけるXVA−XVA線に沿う断面図、(b)はガスジェネレータ非作動時の正面図、(c)はガスジェネレータ作動時の(d)におけるXVC−XVC線に沿う断面図、(d)はガスジェネレータ作動時の正面図である。
図15(a)ないし(d)に示すように、この例のPFL31は、2つの第1および第2EA機構39,40がともに図1に示す例と逆向きにされて回転軸32に設けられている。また、第1および第2EA機構39,40のEA作動をそれぞれ制御する作動制御部材が第1および第2EA機構39,40に共通の1つの作動制御部材57として設けられている。したがって、この例では、作動制御部材が図1に示す例に比べて1つ削減されている。
図16(a)および(b)に示すように、この作動制御部材57は、第1および第2アーム部57a,57bの一側には、エネルギ吸収部材支持部材47の円筒状部47bに対応して回転阻止部41c,41dと回転許容部41eとが形成され、また第1および第2アーム部57a,57bの他側には、エネルギ吸収部材支持部材47′の円筒状部47b′に対応して回転阻止部42c,42dと回転許容部42eとが形成されている。その場合、回転阻止部42c,42dと回転許容部42eとは前述の例と上下同じように形成され、また、回転阻止部41c,41dと回転許容部41eとは前述の例と上下逆に形成されている。
すなわち、図15(a)および(b)に示すように回転許容部41eで一方のエネルギ吸収部材支持部材47の回転が許容されるときは、回転阻止部42c,42dで他方のエネルギ吸収部材支持部材47′の回転が阻止されるようになっている。また、図15(c)および(d)に示すように回転阻止部41c,41dで一方のエネルギ吸収部材支持部材47の回転が阻止されるときは、回転許容部42eで他方のエネルギ吸収部材支持部材47′の回転が許容されるようになっている。
また、作動制御部材57が1つだけ設けられることから、駆動部材も第1および第2EA機構39,40に共通の1つの駆動部材58として設けられている。したがって、この例では、駆動部材も図1に示す例に比べて1つ削減されている。この駆動部材58の構成は、図7に示す前述の第1および第2駆動部材43,44と同じであり、ガスジェネレータ、ピストン、およびピストンロッドを有している。
この例のシートベルトリトラクタ1の他の構成は、前述の図1に示す例と同じである。
そして、この例のPFL31では、EA作動パターンは、前述の例の第2および第3のEA作動パターンと同様の2つのEA作動パターンとなる。すなわち、ガスジェネレータが作動しないときは、図15(a)および(b)に示す他方のエネルギ吸収部材支持部材47′の回転のみが阻止可能に設定される。したがって、このときは第2EA機構40のEA作動のみが可能となり、第2EA機構40のみがEA作動したときのFL荷重は、前述と同様に図14(c)に示すようになる。また、ガスジェネレータが作動したときは、図15(c)および(d)に示す一方のエネルギ吸収部材支持部材47の回転のみが阻止可能に設定される。したがって、このときは第1EA機構39のEA作動のみを可能となり、第1EA機構39のみがEA作動したときのFL荷重は、前述と同様に図14(b)に示すようになる。
このように、この例のPFL31では、EA作動パターンが2種類しか設定できないが、作動制御部材とガスジェネレータを含む駆動部材58とがともに1つしか設けられないので、前述の図1に示す例に比べて、構成が簡単になるとともに、コストを低減することができる。
この例のシートベルトリトラクタ1の他の作用効果は、前述の図1に示す例と同じである。
図18は、本発明にかかるブレーキ装置を備えたシートベルトリトラクタの実施の形態の更に他の例における第1EA機構のガスジェネレータ非作動時の状態を模式的にかつ部分的に示す図、図19は、この例のシートベルトリトラクタにおける第1EA機構のガスジェネレータ作動時の状態を模式的にかつ部分的に示す図である。
前述の図1に示す例のブレーキ装置を備えたシートベルトリトラクタ1では、第1および第2EA機構39,40の各EA作動が、それぞれ対応する第1および第2駆動部材43,44の非作動時に行われるとともに第1および第2駆動部材43,44の作動時に行われないように、第1および第2EA機構39,40が、いずれも対応する第1および第2駆動部材43,44によって作動制御されるようになっているが、図18および図19に示すように、この例のシートベルトリトラクタ3は、第1および第2駆動部材43,44のうち、第2駆動部材44を備えておらず、第2作動制御部材42が直接フレーム2に固定されている。
その場合、第2作動制御部材42の第2アーム部42a,42bは回転阻止部42c,42dを有しているが、円弧状の回転許容部42eは有していない。また、第2アーム部42a,42bの回転阻止部42c,42dがエネルギ吸収部材支持部材47′における円筒状部47b′の平面47c′,47d′に対向する位置に常時設定されて、第2作動制御部材42によりエネルギ吸収部材支持部材47′の回転が常時阻止されている。このように、第2EA機構40が最初から作動状態にプリセットされかつこの作動状態に保持されることで、第2EA機構40によるEA作動が常時行われるようになっている。更に、第2EA機構40における帯状平板からなるエネルギ吸収部材45の長さは予め所定値に設定されていて、EA作動におけるストロークがこの所定値に基づいて一定にされている。
そして、第1および第2EA機構39,40のEA作動パターンは、2つの作動パターンが設定される。すなわち、第1の作動パターンは、図18に示すように第1駆動部材43が作動しなく、前述の各例と同様に第1作動制御部材41の回転阻止部41c,41dによりエネルギ吸収部材支持部材47の回転が阻止されて、第1EA機構39によるEA作動が行われるとともに、第2EA機構40によるEA作動が行われる作動パターンである。この第1の作動パターンでのFL荷重は、図20(a)に示すようにトーションバー7のFL荷重F2、第1EA機構39のFL荷重F5、および第2EA機構40のFL荷重F6をすべて加えた荷重となり、前述の図1に示す例における図14(a)に示すFL荷重と実質的に同じになる。したがって、前述と同様にこの第1の作動パターンは通常時に設定され、衝突速度等にも関係するが主として、例えば平均的な体重より比較的重い体重の乗員に対して設定される。
また、第2の作動パターンは、図19に示すように第1駆動部材43が作動し、前述の各例と同様に第1作動制御部材41の回転許容部41eによりエネルギ吸収部材支持部材47の回転が許容されて、第1EA機構39によるEA作動が行われないが、第2EA機構40によるEA作動が行われる作動パターンである。この第2の作動パターンでのFL荷重は、図20(b)に示すようにトーションバー7のFL荷重F2、および第2EA機構40のFL荷重F6を加えた荷重となり、前述の図1に示す例における図14(c)に示すFL荷重と実質的に同じになる。したがって、前述と同様にこの第2の作動パターンは、衝突速度等にも関係するが主として、例えば平均的な体重より比較的軽い体重の乗員に対して設定される。
なお、第1EA機構39によるEA作動が開始されてから、第1駆動部材43が作動するまでの時間を適宜制御することで、第1EA機構39のEA作動におけるストロークが、例えば図20(a)に点線で示すように短く調整するか、あるいは長く調整することができる。このストローク調整は、前述の各例においても、それぞれの第1および第2駆動部材43,44、駆動部材58が作動するまでの時間を適宜制御することで、それぞれ可能である。
この例のシートベルトリトラクタ1によれば、第2駆動部材44を備えていないので、部品点数を削減できるとともに構成を簡単にでき、コストを低減できる。
この例のブレーキ装置およびシートベルトリトラクタ1の他の構成および他の作用効果は、前述の図1に示す例と同じである。
この例においては第2駆動部材44を備えていないが、第1および第2駆動部材43,44のうち、第1駆動部材43を備えず、第1作動制御部材41を直接フレーム2に固定することもできる。この場合には、FL荷重は、図14(a)および(b)に示すFL荷重と実質的に同じになる。
なお、前述の例では、本発明のブレーキ装置をシートベルトリトラクタ1に適用するものとしているが、本発明はこれに限定されることはなく、他の回転部材の回転を制御するブレーキ装置にも適用することができる。
また、前述の例では、回転部材である円筒状部47bの外周面に一対の平面47c,47dを設けているが、平面は1つ以上任意の数だけ設けることができる。
更に、前述の例では、回転部材として円筒状部47bとしているが、本発明のブレーキ装置は外周面に少なくとも1つの平面を有する円柱状の回転部材にも適用することができる。更に、本発明のブレーキ装置は、回転部材として横断面三角形や横断面四角形を始め、横断面多角形の角柱状あるいは角筒状の回転部材にも適用することができる。その場合には、角柱状あるいは角筒状の回転部材の外周平面を本発明の回転部材の平面として利用することができる。
更に、前述の各例では、エネルギ吸収部材45の第2支持部45bを折り曲げてエネルギ吸収部材支持部材47の有底円筒状部47aの円筒部に摺動可能に貫通支持させているが、本発明はこれに限定されることはなく、図17に示すように有底円筒状部47aの内周面に突起47eを設け、この突起47eに折曲されない第2支持部45bの端を支持させるようにすることもできる。また、第2EA機構40のエネルギ吸収部材支持部材47′にも、その有底円筒状部の内周面に、第1EA機構39の突起47eと同様の突起を設けることは言うまでもない。
更に、前述の各例では、EA機構、作動制御部材、および駆動部材がそれぞれ2つずつ設けられているが、これらは1つずつ、あるいは3つ以上ずつ設けることもできる。
更に、例えば作動制御部材57を事前に作動させる場合等には、ガスジェネレータに代えて安価なソレノイドを使用することもできる。
更に、前述の例では、第1のシートベルト荷重制限機構としてトーションバー7を用いているが、このトーションバー7に代えて、例えば、特開2002−53007号公報に開示されているロッキングベース側に設けられた線材をスプール側に設けられた係合ピンでしごくEA機構、特開2000−85527号公報に開示されている一端がスプール側に設けられた帯状板をロッキングベース側に設けたガイド溝で強制的に変形するEA機構、特開2002−53008号公報に開示されているスプールに設けた筒状部材をロッキングベースに設けた係止部で塑性変形させるEA機構、特開平10−258702号公報に開示されている一端をロッキングベース側に設けかつ他端をスプール側に係合させたU字状の平板素材を変形させるEA機構、特開2001−106025号公報に開示されているスプールとロッキングベースとの間に設けられたシェアピンを緊急時のロッキングベースの回転ロック時にせん断破壊させるEA機構、同じく特開2001−106025号公報に開示されているスプール側に設けられた被切削部位を、ロッキングベース側に設けられた切削刃で切削するEA機構、本出願人が先に特許出願している、ロッキングベース側に設けた板状のエネルギ吸収部材を、スプール側に設けた切り裂き用突起で切り裂くEA機構(特願2003−206807号)等を用いることもできる。これらのEA機構についてはそれぞれの公開公報を参照すれば容易に理解できるので、その説明は省略する。
本発明のブレーキ装置は、回転部材の回転を制御するためのブレーキ装置に好適に利用することができる。
また、本発明のシートベルトリトラクタおよびシートベルト装置は、自動車等の車両に付設されたシートベルト装置に用いられ、衝突時等の緊急時にシートベルトにかかる荷重を制限して乗員の衝撃エネルギを吸収緩和しつつシートベルトの引出しを阻止するシートベルトリトラクタおよびシートベルト装置に好適に利用することができる。
本発明にかかるブレーキ装置の実施の形態の一例を用いたシートベルトリトラクタの一例を模式的にかつ一部断面を取って示す正面図である。 図1に示す例のクラッチ機構を示す部分拡大断面図である。 図1に示す例のスプール側歯車およびクラッチ機構を示す部分拡大断面図である。 ガスジェネレータの非作動時におけるEA機構、作動制御部材、および駆動部材を模式的に示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は非作動時のEA機構の右側面図、(d)はEA作動が終了した状態のEA機構の右側面図である。 エネルギ吸収部材を示し、(a)正面図、(b)は一方のエネルギ吸収部材の平面図、(c)は他方のエネルギ吸収部材の平面図、(d)はエネルギ吸収部材の変形例の平面図である。 エネルギ吸収部材支持部材を示し、(a)は側面図、(b)は一部を切り換えて示す正面図である。 作動制御部材および駆動部材を模式的に示す図である。 ガスジェネレータの作動時におけるEA機構、作動制御部材、および駆動部材を模式的に示し、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は非作動時のEA機構の右側面図である。 第1のEA作動パターンを示す図である。 第2のEA作動パターンを示す図である。 第3のEA作動パターンを示す図である。 第4のEA作動パターンを示す図である。 図1に示す例のPFLを制御するためのブロック図である。 (a)は2つのEA機構が作動した時のFL荷重を示す図、(b)は一方のEA機構が作動した時のFL荷重を示す図、(c)は他方のEA機構が作動した時のFL荷重を示す図である。ある。 本発明にかかるブレーキ装置の実施の形態の他の例を模式的に示し、(a)はガスジェネレータ非作動時の(b)におけるXVA−XVA線に沿う断面図、(b)はガスジェネレータ非作動時の正面図、(c)はガスジェネレータ作動時の(d)におけるXVC−XVC線に沿う断面図、(d)はガスジェネレータ作動時の正面図である。 図15に示す例の作動制御部材および駆動部材を模式的に示し、(a)は側面図、(b)は(a)におけるXVIB−XVIB線に沿う断面図である。 エネルギ吸収部材およびエネルギ吸収部材支持部材の他の例を示す図で 本発明にかかるブレーキ装置を備えたシートベルトリトラクタの実施の形態の更に他の例における第1EA機構のガスジェネレータ非作動時の状態を模式的にかつ部分的に示す図である。 図18に示す例のシートベルトリトラクタにおける第1EA機構のガスジェネレータ作動時の状態を模式的にかつ部分的に示す図である。 図18に示す例における第1EA機構のガスジェネレータ非作動時のFL荷重を示す図、(b)は第1EA機構のガスジェネレータ作動時のFL荷重を示す図である。 従来のトーションバーを備えたシートベルトリトラクタの一例を示す縦断面図である。 従来のトーションバーを備えたシートベルトリトラクタの他の例を模式的に示す図である。 図22に示す従来例のFL荷重の特性を示す図である。
符号の説明
1…シートベルトリトラクタ、2…フレーム、2a,2b…側壁、3…シートベルト、4…スプール、4a…支持軸部、4b…支持面、5…減速度感知機構、6…ロック機構、7…トーションバー、8…スプリング手段、13…パウル、13a…回転軸、14…ロッキングベース、19…内歯、31…プログラマブルフォースリミッタ(PFL)、32…回転軸、33…歯車動力伝達機構、34…スプール側歯車、34a…外歯、34b…内歯、35…PFL側歯車、35a…外歯、36…クラッチ機構、37…クラッチパウル、37a…係止爪、38…シェアピン、39…第1EA機構、40…第2EA機構、41…第1作動制御部材、41c,41d…回転阻止部、41e…回転許容部、42…第2作動制御部材、42c,42d…回転阻止部、42e…回転許容部、43…第1駆動部材、44…第2駆動部材、45,45′…エネルギ吸収部材、46,46′…エネルギ吸収部材固定支持リング、47,47′…エネルギ吸収部材支持部材、47b,47b′…円筒状部、47c,47d;47c′,47d′…平面、50…中央処理装置(CPU)、51…シートウェイトセンサ、52…シートスライド位置検出センサ、53…加速度センサ、54…フロントサテライトセンサ、55…バックルスイッチ、56…ベルト伸び出し量センサ、57…作動制御部材、58…駆動部材

Claims (11)

  1. 外周面に少なくとも1つの平面を有する回転部材と、この回転部材の回転を制御する作動制御部材と、この作動制御部材を作動する駆動部材とを備え、
    前記作動制御部材は、前記回転部材に位置してこの回転部材の平面に当接することで前記回転部材の回転を阻止する回転阻止部と、この回転阻止部に隣接して設けられ前記回転部材に位置して前記回転部材の回転を許容する回転許容部とを有していることを特徴とするブレーキ装置。
  2. 前記回転阻止部は前記回転部材の平面が対向して位置したときこの回転部材の平面に当接して前記回転部材の回転を阻止する平面からなり、前記回転許容部は前記回転部材に位置したときこの回転部材を回転可能にする円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ装置。
  3. 前記回転部材は円柱状または円筒状に形成されているとともに、前記回転部材の外周面に前記回転部材の平面が1つまたは2つ形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ装置。
  4. 前記回転部材は角柱状または角筒状に形成されているとともに、前記回転部材の外周面の少なくとも1つが前記回転部材の平面であることを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ装置。
  5. 前記作動制御部材はその非作動時に前記回転阻止部で前記回転部材の回転を阻止するとともに、その作動時に前記回転許容部で前記回転部材の回転を許容するようになっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載のブレーキ装置。
  6. シートベルトを巻き取るスプールと、通常時前記スプールの回転が回転伝達軸を介して伝達されてこのスプールとともに回転し、緊急時にシートベルト引出し方向の回転が阻止されるロッキング部材を有するロック機構と、前記ロッキング部材のシートベルト引出し方向の回転が阻止されて前記スプールが前記ロッキング部材に対してシートベルト引出方向に相対回転するとき、前記シートベルトにかかる荷重を制限する第1および第2のシートベルト荷重制限機構とを少なくとも備えているシートベルトリトラクタにおいて、
    前記第1のシートベルト荷重制限機構は、前記スプールと前記ロッキング部材との間に設けられかつ前記回転伝達軸を構成するトーションバーをねじり変形させる荷重制限機構、前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた線材を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた係合ピンでしごく荷重制限機構、一端が前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた帯状板を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられたガイド溝で強制的に変形する荷重制限機構、前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた筒状部材を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた係止部で塑性変形させる荷重制限機構、一端が前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられかつ他端が前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に係合されたU字状の平板素材またはU字状の線材を変形させる荷重制限機構、前記スプールとロッキング部材との間に設けられたシェアピンをせん断破壊させる荷重制限機構、前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた被切削部位を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた切削刃で切削するEA機構、および前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか一方に設けられた板状のエネルギ吸収部材を前記スプール側および前記ロッキング部材側のいずれか他方に設けられた切り裂き用突起で切り裂く荷重制限機構のいずれか1つであり、
    緊急時に前記スプールの回転が伝達されて回転する回転軸が設けられており、この回転軸に前記第2のシートベルト荷重制限機構が設けられ、
    前記第2のシートベルト荷重制限機構は、前記シートベルトに対して制限荷重を設定する制限荷重設定手段と、緊急時のシートベルトの制限荷重を緊急時の状況に基づいて変更するように前記制限荷重設定手段を制御する制限荷重制御手段とを備え、
    前記制限荷重設定手段は、前記回転軸に一体回転可能に設けられた第1エネルギ吸収部材固定支持部材と、前記回転軸に相対回転可能に設けられた第2エネルギ吸収部材固定支持部材と、これらの第1および第2エネルギ吸収部材固定支持部材の間に設けられ、第1および第2エネルギ吸収部材固定支持部材の相対回転時にエネルギを吸収するエネルギ吸収部材、前記第2エネルギ吸収部材固定支持部材の回転を制御するブレーキ装置とからなり、
    前記ブレーキ装置は請求項1ないし5のいずれか1記載のブレーキ装置であるとともに、前記第2エネルギ吸収部材固定支持部材が前記回転部材であることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
  7. 前記制限荷重設定手段は、制限荷重の異なる2つの第1および第2制限荷重設定手段からなることを特徴とする請求項6記載のシートベルトリトラクタ。
  8. 前記駆動部材は、前記作動制御部材を作動するためのガスジェネレータを備えていることを特徴とする請求項6または7記載のシートベルトリトラクタ。
  9. 前記制限荷重設定手段は、制限荷重の異なる2つの第1および第2制限荷重設定手段からなり、前記第1および第2制限荷重設定手段のいずれか一方の制限荷重設定手段は緊急時に常時作動可能にされていることを特徴とする請求項6記載のシートベルトリトラクタ。
  10. 前記第1および第2制限荷重設定手段のいずれか他方の制限荷重設定手段の前記駆動部材は、前記作動制御部材を作動するためのガスジェネレータを備えていることを特徴とする請求項9記載のシートベルトリトラクタ。
  11. 請求項6ないし10のいずれか1記載のシートベルトリトラクタを備えていることを特徴とするシートベルト装置。
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