JP2006061947A - 溶接ビード加工軌道作成方法と溶接ビード成形装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 溶接部3の溶接線方向と交差する方向の母材1,2と溶接ビード4との境界点を溶接線方向に複数求め、この境界点の最も接合中心側に位置する内側の境界点を加工部断面形状の特徴点P1,P2として定め、この特徴点P1,P2の位置で溶接ビード4と母材1,2との滑らかな接続を実現するために、変換前後の幾何学的性質を保ったままで形状を変えるアフィン変換を適用して、実測した加工部断面形状に予め準備した曲線の加工軌道の基本軌道形状を嵌めあわせることにより加工軌道6を作成する。
【選択図】 図2
Description
まず、加工対象部3の断面形状を溶接線方向に計測する。この断面形状とは、溶接部の溶接線方向と交差する方向の母材1,2と溶接ビード4との断面の形状であり、この断面形状を計測する方法としては、基準平面S1と傾斜平面S2との双方に垂直な平面で加工対象部3の断面形状を計測する。一般に溶接ビード4の境界は直線ではないので、断面形状は溶接線方向に複数計測(ここではn断面計測とする。)し、各断面におけるビード端点を求める。
この実施形態では、図2に示す特徴点P1におけるQ1−P1間軌道とP1−P2間軌道、および特徴点P2におけるQ2−P2間軌道とP1−P2間軌道を滑らかに接続することにより、特徴点(端点)P1、P2およびP1−P2区間への応力集中を避けるようにする。
前記したように加工部断面形状の分類毎に作成した基本軌道を、その幾何学的性質を保ったまま加工部に嵌め込むことで、特徴点(端点)P1とP2との間の加工軌道を作成する。この例では、基本軌道を4次曲線とし、加工部の特徴点P0、P1、P2と、基本軌道の特徴点p0、p1、p2の各点を一致させる二次元のアフィン変換を適用している。なお、計算を簡単にするために、基本軌道を作成する段階でp0を原点(0、0)としておき、計測で得た加工部の特徴点もP0が原点(0、0)になるようにオフセットした状態でアフィン変換を行うようにしている。
p0=(0、0)
p1=(x1、y1)
p2=(x2、y2)
P0a=P0−offset=(0、0)
P1a=P1−offset=(X1、Y1)
P2a=P2−offset=(X2、Y2)
とする。ここで、offset=(P0x、P0y)。
X1=Ka・x1+Kb・y1
Y1=Kc・x1+Kd・y1
X2=Ka・x2+Kb・y2
Y2=Kc・x2+Kd・y2
となる。これを満たすようにアフィン変換の係数Ka、Kb、Kc、Kdを求める。
Xn=Ka・xn+Kb・yn
Yn=Kc・xn+Kd・yn
となり、原点を元に戻して、
Pn=Pna+offset=(Xn+P0x、Yn+P0y)
となって、簡単な計算で、基本軌道上の点が加工軌道上の点に変換される。
図3の分類表に示した加工部断面形状の分類毎に予め準備する基本軌道形状は、下記要領にて作成して加工形状を調整する。
基本軌道の形状は、分類表の基本軌道形状1に示すように、長方形p0−p1−p3−p2の隣り合う2辺p0−p1およびp0−p2に接し、通過点ptを通る4次曲線で作成する。通過点ptは、対角線p0−p3上の点である。
1.特徴点p1を通る。
2.特徴点p2を通る。
3.通過点ptを通る。
4.特徴点p1での接線の傾きは、線分p0−p1の傾き。
5.特徴点p2での接線の傾きは、線分p0−p2の傾き。
分類1の場合について、4次曲線で作成した基本軌道の具体的な形状調整方法を説明する。
図4は本願発明で作成する加工軌道の例を示す図面であり、(a) は内側溶接部の軌道例を示す断面図、(b) は外側溶接部の軌道例を示す断面図である。図5(a),(b) は、本願発明で作成する加工軌道と母材との関係の一例を示す概念図である。
pt=Kpt・p4
図4(a) のように隅肉溶接部の内側を処理する場合などで、なるべく加工量(研削量)を少なくしたい時は、Kptの値を大きくし通過点ptを交点p4に近づく方向に移動させる。一方、図4(b) のように外側の処理に適用する場合などで、なるべく加工量(研削量)を少なくしたい時は、Kptの値を小さくしptをp0に近づく方向に移動させる。
図6(a),(b) は、本願発明で作成する加工軌道の縦横比を変化させた場合の関係を示す概念図である。
図7は本願発明の溶接ビード加工軌道作成方法における縦横比と通過点係数の関係を示す線図である。前記縦横比ARと通過点係数Kptの設定にあたっては、基本軌道の形状の条件として、
1.2接線(線分p0−p1および線分p0−p2)からはみ出さない(図5(a) )。
2.途中で窪んだり盛り上がらない(図5(b) )。
という制限を加えると、縦横比ARと通過点係数Kptの操作可能範囲は図7に示す領域1内となる。つまり、図7のAR−Kpt線図において、領域1内で縦横比ARと通過点係数Kptを選択すれば、これら1,2の条件を満たすようにできる。なお、図7の領域2内で縦横比AR、通過点係数Kptを選択すると前記条件1を満たさないし、領域3内で縦横比AR、通過点係数Kptを選択すると前記条件2を満たさない。
分類2の基本軌道は、図3の分類表の基本軌道2に示すように、特徴点p1では長方形p0−p1−p3−p2の1辺p0−p1に接し、特徴点p2では対角線p1−p2に接し、通過点ptを通る4次曲線で作成する。
1.2接線(線分p0−p1および線分p1−p2)からはみ出さない(図5(a) )。
という制限を加えると、分類1の場合と同様に縦横比ARと通過点係数Kptの操作可能範囲が決まるので、この範囲内でパラメータとなる縦横比ARと通過点係数Kptとを操作することにより、その形状を調整することができる。
分類3は、平行面の突き合わせ部で段差がある場合などである。前記分類1や分類2と同様に、溶接ビード端点の特徴点P1、P2を滑らかに結んだ形状に成形するために、基本軌道3のような4次曲線を作成すれば良い。
1.2接線(線分p0−p1および線分p2−p3)からはみ出さない(図5(a) )。
といった制限を加えると、分類1,2の場合と同様に縦横比ARと通過点係数Kptの操作可能範囲が決まるので、この範囲内でパラメータとなる縦横比ARと通過点係数Kptとを操作することにより、その形状を調整することができる。
分類4は、平行面の突き合わせ部で段差が無い場合などである。この分類4の場合、特徴点が溶接ビード端点の特徴点P1、P2のみのため、長方形を基盤とした4次曲線を作成するための特徴点として溶接ビードの最も低い点を特徴点P0とし、特徴点P1,P2を滑らかな曲線で結ぶような4次曲線で基本軌道4を作成する。
1.特徴点p1、特徴点p2、通過点ptを通る。
2.特徴点p1と特徴点p2で、線分p1−p2を通る直線に接する。
ところで、前記した溶接ビード加工軌道作成方法では、予め加工軌道の基本軌道形状を準備し、実測した加工部断面形状にこの基本軌道形状を嵌めあわせることにより加工軌道を作成している。そのため、予め準備する基本軌道形状を調整することにより、作成される加工軌道を調整することができる。この加工軌道を調整することにより、加工量(研削量)の調整ができる。
この場合も、まず、基準平面S1と傾斜平面S2との双方に垂直な平面で加工対象部3の断面形状を前記レーザスリット光投射型センサ等で溶接線方向に複数計測し、各計測断面における溶接線方向と交差する方向の母材と溶接ビードとの境界点を求める。そして、基準平面S1側のビード端点(境界点)P1n(n=1〜n)と、傾斜平面S2側のビード端点(境界点)P2n(n=1〜n)の点の中で最も内側の点を特徴点P1およびP2とし、最も外側の点をQ1およびQ2とする。同時に、ここで求めた特徴点P1、P2における接線の傾きを求める。この形状計測により求めるのは、次の4項目である。
特徴点P1の座標:P1(y1、z1)、特徴点P1における接線の傾き:m1
特徴点P2の座標:P2(y2、z2)、特徴点P2における接線の傾き:m2
(b) 特徴点P1−P2間の加工軌道の作成
(b−1) 3次曲線による加工軌道の作成
求める3次曲線を、(1)式とおく。
z=a・y3+b・y2+c・y+d ・・・(1)
この時、接線の式は、(2)式となる。
zz=3a・y2+2b・y+c ・・・(2)
求める3次曲線は、2点P1、P2を通り、両点における傾きがそれぞれm1、m2なので、以下の(3)〜(6)の式を解き、3次曲線の係数a、b、c、dを求めることによって加工軌道を作成する。
z1=a・y13+b・y12+c・y1+d ・・・(3)
z2=a・y23+b・y22+c・y2+d ・・・(4)
m1=3a・y12+2b・y1+c ・・・(5)
m2=3a・y22+2b・y2+c ・・・(6)
この方法の場合は、調整用のパラメータが無いので、加工軌道形状の調整ができない。
求める4次曲線を、(1)式とおく。
z=a・y4+b・y3+c・y2+d・y+e ・・・(1)
この時、接線の式は、(2)式となる。
zz=4a・y3+3b・y2+2c・y+d ・・・(2)
求める4次曲線は、2点P1、P2を通り、両点における接線の傾きがそれぞれm1、m2である。さらに、途中の通過点Pt(yt、zt)を1点与え、以下の(3)〜(7)の式を解き、4次曲線の係数a、b、c、d、eを求めて加工軌道を作成する。
z1=a・y14+b・y13+c・y12+d・y1+e ・・・(3)
z2=a・y24+b・y23+c・y22+d・y2+e ・・・(4)
m1=4a・y13+3b・y12+2c・y1+d ・・・(5)
m2=4a・y23+3b・y22+2c・y2+d ・・・(6)
zt=a・yt4+b・yt3+c・yt2+d・yt+e ・・・(7)
この方法の場合は、通過点ptを調整用のパラメータとして、加工軌道形状の調整ができる。
求めるn次曲線を、(1)式とおく。
z=kn+1・yn+kn・y(n-1)+・・・+k3・y2+k2・y+k1 ・・・(1)
この時、接線の式は、(2)式となる。
zz=n・kn+1・y(n-1)+(n−1)・kn・y(n-2)+・・・+2・k3・y+k2 ・・・(2)
求めるn次曲線は、2点P1、P2を通り、両点における接線の傾きがそれぞれm1、m2である。さらに、途中の通過点ptとして(n−3)個の点を与え、連立方程式を解き係数kn+1〜k1を求めて、計画軌道とする。
この方法の場合は、通過点ptを調整用のパラメータとして、加工軌道形状の調整ができる。
図8は本願発明の溶接ビード加工軌道作成方法における楕円で加工軌道を作成する例を示す説明図である。この方法の場合は、特徴点P1とP2における接線が、直交する場合にのみ使える方法であり、特徴点P1、P2の2点を頂点(長軸、短軸の頂点)とする楕円を求め、その1/4弧(楕円弧)を加工軌道としている。
この方法の場合、
a:特徴点P1の接線と特徴点P2の接線とが直交する交点から、特徴点P1までの距離
b:特徴点P1の接線と特徴点P2の接線とが直交する交点から、特徴点P2までの距離
とすると、楕円の式は、
y2/a2+z2/b2=1
となり、特徴点P1と特徴点P2が図8の位置関係にある場合は、楕円の左下1/4弧を加工軌道とする。
この方法の場合は、調整用のパラメータが無いので、軌道形状の調整ができない。
図9は本願発明に係る溶接ビード成形装置の一例を示す構成図である。前記した溶接ビード加工軌道作成方法を実施するための溶接ビード成形装置を以下に説明する。この溶接ビード成形装置は、前記した溶接ビード加工軌道作成方法によって作成された加工軌道に沿って加工工具を動作させることにより、加工部の溶接ビードを所望の形状に成形することができる。この例では、溶接ビードの成形を自動的に行う自動化機械として、加工工具を3次元的に動作させる多軸加工機として機能する産業用ロボットを例に説明する。
3…溶接部(加工対象部)
4…溶接ビード
5…スリット光
6…加工軌道
7…基本軌道形状
10…溶接ビード成形装置
11…産業用ロボット
12…緩衝機構
13…グラインダ
14…形状計測センサ
15…軌道計画装置
16…計測データ入力部
17…計測データ処理部
18…軌道計画部
19…記憶部
20…通信部
21…ロボットコントローラ
S1…基準平面
S2…傾斜平面
P0〜P2…特徴点
p0〜p2…特徴点
p4…交点
pt…通過点
Kpt…通過点係数
AR…縦横比
Q1,Q2…最も外側の点
Claims (10)
- 複数の母材を溶接で接合した溶接部における溶接ビード表面を成形する溶接ビード加工軌道作成方法であって、
前記溶接部の溶接線方向と交差する方向の母材と溶接ビードとの境界点を溶接線方向に複数求め、該境界点の最も接合中心側に位置する内側の境界点を加工部断面形状の特徴点として定め、該特徴点の位置における接線の傾きを求めて該特徴点の位置で溶接ビードと母材との滑らかな接続を実現する曲線の加工軌道を作成する溶接ビード加工軌道作成方法。 - 複数の母材を直交させて溶接で接合した溶接部における溶接ビード表面を成形する溶接ビード加工軌道作成方法であって、
前記溶接部の溶接線方向と交差する方向の母材と溶接ビードとの境界点を溶接線方向に複数求め、該境界点の最も接合中心側に位置する内側の境界点を加工部断面形状の特徴点として定め、該特徴点を頂点とする楕円を求めて該特徴点の位置で溶接ビードと母材との滑らかな接続を実現する楕円弧の加工軌道を作成する溶接ビード加工軌道作成方法。 - 複数の母材を溶接で接合した溶接部における溶接ビード表面を成形する溶接ビード加工軌道作成方法であって、
前記溶接部の溶接線方向と交差する方向の母材と溶接ビードとの境界点を溶接線方向に複数求め、該境界点の最も接合中心側に位置する内側の境界点を加工部断面形状の特徴点として定め、該特徴点の位置で溶接ビードと母材との滑らかな接続を実現するために、変換前後の幾何学的性質を保ったままで形状を変える変換を適用して、実測した加工部断面形状に予め準備した曲線の加工軌道の基本軌道形状を嵌めあわせることにより加工軌道を作成する溶接ビード加工軌道作成方法。 - 前記加工部断面形状の特徴点の位置関係から加工部断面形状を分類し、該分類した加工部断面形状毎に基本軌道形状を予め準備し、前記実測した加工部断面形状に応じて、分類した基本軌道形状を嵌めあわせることにより加工軌道を作成するようにした請求項3記載の溶接ビード加工軌道作成方法。
- 前記基本軌道形状を、その両端位置と該両端位置での傾きを任意に設定でき、且つ形状を調整できる曲線とし、該基本軌道形状を調整することによって加工軌道の加工量を調整できるようにした請求項3又は請求項4記載の溶接ビード加工軌道作成方法。
- 前記基本軌道形状を、長方形を基盤とした4次曲線を利用し、基盤となる長方形の縦横比と対角線上の通過点を操作することにより、加工量と加工形状とを調整するようにした請求項3〜5のいずれか1項に記載の溶接ビード加工軌道作成方法。
- 前記変換前後の幾何学的性質を保ったまま形状を変える変換として、アフィン変換又は射影変換もしくは相似変換を適用した請求項3〜6のいずれか1項に記載の溶接ビード加工軌道作成方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶接ビード加工軌道作成方法を用いて加工する溶接ビード加工方法であって、
前記溶接ビード加工軌道作成方法によって得られた加工軌道に沿って加工工具を動作させ、溶接ビードを溶接線方向に所定の断面形状に成形する溶接ビード加工方法。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶接ビード加工軌道作成方法を実施するための溶接ビード成形装置であって、
前記溶接ビード加工軌道作成方法によって得られた加工軌道に沿って加工工具を動作させる自動化機械を備え、該自動化機械で溶接ビードを所定の断面形状に成形する溶接ビード成形装置。 - 請求項9記載の溶接ビード成形装置において、
前記自動化機械を、加工工具を3次元的に動作させることができる多軸加工機で構成した溶接ビード成形装置。
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