JP2006059558A - 電気化学蓄電デバイス及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 架橋可能なシラン及びシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物を空隙を有する黒鉛に含浸させ、この黒鉛内において上記有機珪素化合物の架橋物を形成し、これを非酸化性ガス中、600〜1,400℃の温度で加熱して上記架橋物を黒鉛と反応させることによって得られたC/Si/O複合材料を電極活物質としてなることを特徴とする電気化学蓄電デバイス。
【効果】 本発明で得られたC/Si/O複合材料による電気化学蓄電デバイスは、特にリチウムイオン二次電池用負極及び電気化学キャパシタ用電気化学蓄電デバイスとして用いることで、高容量でかつサイクル性に優れた電気化学蓄電デバイスを得ることができる。また、その製造方法についても簡便であり、工業的規模の生産にも十分耐え得るものである。
【選択図】 なし
【効果】 本発明で得られたC/Si/O複合材料による電気化学蓄電デバイスは、特にリチウムイオン二次電池用負極及び電気化学キャパシタ用電気化学蓄電デバイスとして用いることで、高容量でかつサイクル性に優れた電気化学蓄電デバイスを得ることができる。また、その製造方法についても簡便であり、工業的規模の生産にも十分耐え得るものである。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電気化学蓄電デバイス及びその製造方法に関するものであり、特にリチウムイオン二次電池用負極及び電気化学キャパシタ用電気化学蓄電デバイス及びその製造方法に関する。
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化、軽量化の観点から、電気化学蓄電デバイスとして電気二重層キャパシタや二次電池が広く利用されている。電気二重層キャパシタと二次電池には、電気エネルギーの蓄電メカニズムに相違があり、電気二重層キャパシタは、充放電時には電解液中に含まれるイオンが移動するのみで、電極と電解液の間の電気化学反応が起こらないため一般に長寿命となり、また、イオンの移動速度が大きいため高出力密度である。これに対し、二次電池は、充放電に伴う電気化学反応によって劣化することから、電気二重層キャパシタより短寿命であり、また反応速度が小さいために出力密度も低い。しかし、電極材料自体にエネルギーが蓄積されるため、電極と電解液の界面にのみエネルギーが蓄積される電気二重層キャパシタより高エネルギー密度である。
一方、酸化還元反応可能な金属酸化物に導電処理を施した特許文献1:国際公開第2002/021617号パンフレットや導電性の有機材料をベースにした特許文献2:特開平5−178948号公報や特許文献3:特開2001−257133号公報が提案されているが、電気化学キャパシタとしては容量の小さなものであった。
本発明は上記事情を改善するためになされたもので、高容量で、サイクル性に優れた電気化学蓄電デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、リチウムを大量に吸蔵できる珪素を用いた電気化学蓄電デバイスについて鋭意検討した結果、電極活物質として下記C/Si/O複合材料を用いることで、特にリチウムイオン二次電池用負極として優れた容量及びサイクル特性を示し、また大容量の電気化学キャパシタとすることが可能となった。
従って、本発明は、架橋可能なシラン及びシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物を空隙を有する黒鉛に含浸させ、この黒鉛内において上記有機珪素化合物の架橋物を形成し、これを非酸化性ガス中、600〜1,400℃の温度で加熱して上記架橋物を黒鉛と反応させることによって得られたC/Si/O複合材料を電極活物質としてなることを特徴とする電気化学蓄電デバイス、及び架橋可能なシラン及びシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物を空隙を有する黒鉛に含浸させ、この黒鉛内において上記有機珪素化合物の架橋物を形成し、これを非酸化性ガス中、600〜1,400℃の温度で加熱して上記架橋物を黒鉛と反応させて、C/Si/O複合材料を形成し、これを活物質として用いて電極を形成することを特徴とする電気化学蓄電デバイスの製造方法を提供する。この場合、C/Si/O複合材料を有機ガス又は蒸気を含む雰囲気下、600〜1,400℃の温度で熱処理して上記C/Si/O複合材料表面に炭素皮膜を形成し、これを電極活物質として用いることができる。
上記電気化学蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池、電気化学キャパシタが挙げられる。この場合、一般的用途での二次電池は、放電時の電池電圧が一定であることが望まれるのに対して、電気化学キャパシタは電気量と電圧が比例することが望まれている。珪素材料単体を対極にリチウムを用いた酸化還元反応では、0.4ボルト付近に平坦な放電電位を持つのに対し、C/Si/O複合材料は対極にリチウムを用いた酸化還元反応で電気量と電圧が比例する特性が確認され、電気化学キャパシタとして望ましい特性を有している。また、リチウムイオン吸蔵量が黒鉛に比べて大きく、またサイクル特性にも優れ、リチウムイオン二次電池用材料としても有望である。
本発明で得られたC/Si/O複合材料による電気化学蓄電デバイスは、特にリチウムイオン二次電池用負極及び電気化学キャパシタ用電気化学蓄電デバイスとして用いることで、高容量でかつサイクル性に優れた電気化学蓄電デバイスを得ることができる。また、その製造方法についても簡便であり、工業的規模の生産にも十分耐え得るものである。
本発明に係る電気化学蓄電デバイスにおいて、電極活物質材料として使用するC/Si/O複合材料(即ち、炭素、珪素及び酸素を構成元素として含有する無機焼結体)は、架橋可能なシラン及びシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物を空隙を有する黒鉛に含浸させ、この黒鉛内において上記有機珪素化合物の架橋物を形成し、これを非酸化性ガス中、600〜1,400℃の温度で加熱して上記架橋物を黒鉛と反応させることによって得られるものである。
ここで、本発明のC/Si/O複合材料の原料である有機珪素化合物(シラン、シロキサン)としては、分子中に珪素原子に結合したアルケニル基等の脂肪族不飽和基、水酸基、水素原子(SiH基)、加水分解性基等の架橋性官能基を2個以上有するものであればよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これは直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよく、具体的には、下記一般式(1),(2)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサン、式(3)で表される分岐状のオルガノポリシロキサン、式(4)で表される環状のオルガノポリシロキサン、式(5)で表されるシランやシリコーンレジン等が例示される。
これらの有機珪素化合物は、室温(25℃)で液状であることが好ましいが、シリコーンレジン等で軟化点を有するものであれば固体であってもよい。また、有機珪素化合物を溶解させることができる有機溶剤や非反応性のシリコーンオイルで希釈して使用してもよい。有機溶剤としては、ヘキサン、トルエン、キシレン等が例示され、非反応性のシリコーンオイルとしてはジメチルポリシロキサンオイル等が例示される。
上記式中、R1〜R7は、独立して水素原子、水酸基、加水分解性基、又は1価炭化水素基を示す。この場合、加水分解性基としては、アルコキシ基、アルケニロキシ基、アシロキシ基等の炭素数1〜6のものが好ましい。また、1価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が例示される。
また、上記式において、m,n,kは0〜2,000、特に0〜1,000であり、p,qは0〜10であるが、p,qは同時に0になることはなく、p+qが3〜10であることが好ましい。
本発明における原料である架橋可能なシラン、シロキサンなどの有機珪素化合物は、一般的なシリコーン製造などで用いるものであれば特に限定されないが、通常、有機シロキサンポリマーのごとき有機珪素系高分子の鎖状ポリマーは、特に非酸化性気流中での加熱によって、その主鎖結合が容易に熱解裂を起こして低分子物(たとえば、環状の3〜6量体)に分解することにより揮散し易くなってしまう。これに対して、たとえばハイドロシリレーション反応により形成される珪素−炭素結合は、熱に対して強いことから、このようなハイドロシリレーションによって高度に架橋した場合は低分子化が起こりにくく、起こったとしても高度に架橋しているので揮散しにくいものになる。これによって、焼成過程においても揮散することなく有効に無機物化することができることから、特に上記一般式(1)〜(5)で表されるシラン又はシロキサンにおいて、分子内にSiH基を好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、更に好ましくは4〜2,000個有するシラン及び/又はシロキサンと、分子内にアルケニル基、アルキニル基といった脂肪族不飽和基を好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、特に4〜50個有し、かつ、珪素原子10個あたりの脂肪族不飽和基が2個以上、特に2.5〜10個であるシロキサンとを使用し、白金、白金化合物等の公知のハイドロシリレーション触媒の存在下に、黒鉛内でハイドロシリレーション反応して架橋物を形成する付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いることが好ましい。
この場合、脂肪族不飽和基に対するSiH基の割合がモル比で0.8〜2、特に0.9〜1.2となるように反応させることが好ましい。なお、ハイドロシリレーション触媒の添加量は触媒量であり、通常白金質量換算で5〜1,000ppm、特に10〜200ppm程度であることが好ましい。
また、分子内に水酸基やアルコキシ基、アシロキシ基等の加水分解性基を有し、触媒反応又は無触媒反応によって縮合し、高度に架橋することが可能なシリコーンレジンを使用することも好ましい。この場合、触媒としては、縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物で公知な縮合触媒、例えばジアルキルスズジ有機酸などの有機スズ化合物が使用できる。
更に、本発明で原料として用いる有機珪素化合物(シラン、シロキサン又はこれらの混合物)は、下記平均式CxHySiOzNwで示されるものであることが好ましい。ここで、x,y,zは正数で、wは0又は正数であり、x−z>0であることが好ましい。
即ち、本発明における炭化珪素の生成反応は下記式により起こり、完全に炭化珪素化する必要はないが、理論的にはx−z=1であることが好ましい。
CxHySiOzNw → SiC+zCO+y/2H2+w/2N2
しかし、炭素源として黒鉛も寄与すること、またハイドロシリレーション反応では、若干ロスも見込まれることから、x−zが0より大きなシラン、シロキサン又はその混合物、好ましくは0.9〜1.5、更に好ましくは1.0〜1.2となるシラン、シロキサン又はその混合物が好適に用いられる。x−zが0以下では原料中の酸素の割合が多くなり、収率の低下及び電気伝導度等の特性が劣ることがあり、逆にx−zが1.5より大きいと、生成したC/Si/O複合材料中に炭素分が多くなり、やはり収率が低下してしまうおそれがある。そのためx−zは0<x−z≦1.5であることが好ましい。
CxHySiOzNw → SiC+zCO+y/2H2+w/2N2
しかし、炭素源として黒鉛も寄与すること、またハイドロシリレーション反応では、若干ロスも見込まれることから、x−zが0より大きなシラン、シロキサン又はその混合物、好ましくは0.9〜1.5、更に好ましくは1.0〜1.2となるシラン、シロキサン又はその混合物が好適に用いられる。x−zが0以下では原料中の酸素の割合が多くなり、収率の低下及び電気伝導度等の特性が劣ることがあり、逆にx−zが1.5より大きいと、生成したC/Si/O複合材料中に炭素分が多くなり、やはり収率が低下してしまうおそれがある。そのためx−zは0<x−z≦1.5であることが好ましい。
本発明はこれら原料を空隙を有する黒鉛に含浸させた後、上記有機珪素化合物乃至オルガノポリシロキサン組成物を熱硬化又は触媒反応によって硬化させて、高度な架橋物とする。この場合、含浸させる黒鉛は、内部に空隙を有するもの、即ち、吸着能をもった気孔を有すれば特に限定されないが、質量で数倍から数百倍(通常2〜300倍、好ましくは3〜200倍、より好ましくは5〜100倍)の油性液体を吸着できる特性を持つ、空隙率の高いバルク状(塊状)の膨張黒鉛を用いることが、生産性、効率の点から好ましい。熱硬化又は触媒反応の条件は、使用する架橋可能な有機珪素化合物の種類等に応じた公知の条件とし得るが、付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物の場合は、加熱硬化させることが好ましく、50〜500℃、特に80〜400℃で硬化させることが好ましい。硬化性シリコーンレジンの場合は室温で硬化させても加熱して硬化させてもよい。
なお、上記有機珪素化合物乃至オルガノポリシロキサン組成物を空隙を有する黒鉛に含浸させる方法としては、必要により有機溶剤、例えばn−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの非極性有機溶剤を加えて粘度を25℃において1〜100mPa・s程度としたものと黒鉛とを混合するなどの方法が採用し得る。
また、黒鉛と有機珪素化合物乃至オルガノポリシロキサン組成物の使用量、使用割合は、黒鉛1質量部に対して1〜200質量部、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部程度である。
以上のようにして空隙を有する黒鉛内部で架橋物を形成した後、この架橋物を非酸化性ガス雰囲気中、600〜1,400℃、好ましくは800〜1,300℃の温度範囲で黒鉛と反応させる。1,400℃を超えると、未反応及び熱分解生成物が急激に発生し、耐酸化性に優れたC/Si/O複合材料が得られないためである。この場合、非酸化性ガス雰囲気としては、窒素やアルゴン、ネオン等の不活性ガスが挙げられる。また、処理時間は10分〜10時間、特に30分〜5時間とすることが好ましい。
上記原料を上記処理温度で加熱・反応させることで、大気中1,000℃における質量減少率が10%以下、特には1%以下の耐酸化性に優れるC/Si/O複合材料が製造でき、この場合、質量減少は初期の段階で見られ、それ以降は殆ど質量減少しないため、このC/Si/O複合材料は目的、用途によってはそのままでも使用することは可能であるが、初期の段階から更に耐酸化性を向上したい用途に使用する場合は、このC/Si/O複合材料を更に高温で処理することで、更に飛躍的に耐酸化性を向上したC/Si/O複合材料を製造することができる。この場合、処理温度は上記非酸化性ガス雰囲気下での加熱処理よりも高温で、600〜1,400℃、特に800〜1,300℃の範囲が好ましい。処理温度が600℃より低いとC/Si/O複合材料中に水素基が多く残存する場合があり、逆に1,400℃より高いとそれ以上の効果が見られないばかりか、炉材の選定が困難になったり、電力コストの上昇を招くことがある。なお、処理時間は10分〜10時間、特に30分〜5時間とすることが好ましい。
なお、製造方式についても特に限定されず、連続法、回分法での製造が可能であり、具体的には流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉等をその目的によって適宜使用することができる。
本発明で得られるC/Si/O複合材料における各成分の比率は、原料の選択等により種々調整することができるが、耐酸化性や電気伝導性等を考えると、炭素5〜85質量%、珪素5〜70質量%、酸素3〜60質量%(合計で100質量%)、特に炭素10〜70質量%、珪素10〜60質量%、酸素5〜50質量%(合計100質量%)であることが好ましい。
本発明のC/Si/O複合材料は、その表面を更に導電性被覆処理してもよい。この場合、形成される導電性皮膜は、構成された電池或いはキャパシタにおいて、分解や変質を起こさない導電性材料であればよく、具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn等の金属膜や炭素皮膜が挙げられる。この中でも炭素皮膜は被覆処理のし易さ、導電率の高さからより好適に用いられる。
この場合、導電性皮膜を形成する方法は特に限定されず、めっき法、メカニカルアロイング法、化学蒸着法等が挙げられるが、導電性皮膜の均一形成の点で化学蒸着法が優れており、より好適に用いられる。
また、導電性被覆処理を施す母材として、C/Si/O複合材料を有機珪素系表面処理剤で処理した処理物を用いてもよいが、更に導電性を高めるために、導電材料(例えば黒鉛粉末)とC/Si/O複合材料又はこれを有機珪素系表面処理剤で処理した処理物との混合物を用いることもできる。
上記炭素皮膜を形成する方法としては、CVD法を採用することが好ましく、上記母材を有機物ガス又は蒸気を含む雰囲気下、600〜1,400℃、より好ましくは800〜1,300℃の温度域で熱処理することで得る方法が好適に採用される。熱処理温度が600℃より低いと、例えば導電性炭素皮膜が形成されない場合があったり、長時間の熱処理が必要となったりし、効率的ではない。逆に1,400℃より高いと、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こす可能性があり、凝集面で導電性皮膜が形成されず、電気化学蓄電デバイスとして用いた場合、サイクル性能が低下するおそれがある。
本発明における有機物ガスを発生する原料として用いられる有機物としては、特に非酸化性雰囲気下において、上記熱処理温度で熱分解して炭素(黒鉛)を生成し得るものが選択され、例えばメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン等の炭化水素の単独もしくは混合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環乃至3環の芳香族炭化水素もしくはこれらの混合物が挙げられる。また、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油も単独もしくは混合物として用いることができる。
上記母材と有機物ガスとの熱処理は、非酸化性雰囲気において、加熱機構を有する反応装置を用いればよく、特に限定されず、連続法、回分法での処理が可能で、具体的には流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉等をその目的に応じ適宜選択することができる。
被覆炭素量は、上記母材に対して5〜70質量%、特に10〜50質量%が好ましい。被覆炭素量が5質量%未満では、導電性向上に著しい効果は見られず、電気化学蓄電デバイスとして用いた場合にサイクル性が十分でない場合があり、逆に70質量%を超えると、炭素の割合が多くなりすぎ、電気化学蓄電デバイスとして用いた場合に負極容量が低下するおそれがある。
本発明の電気化学蓄電デバイスは、上記C/Si/O複合材料活物質を用いて、リチウムイオン二次電池及び電気化学キャパシタの電極を製造することができる。
この場合、リチウムイオン二次電池は、上記活物質を負極材として用いる点に特徴を有し、その他の正極、負極、電解質、セパレータなどの材料及び電池形状などは限定されない。例えば、正極活物質としてはLiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O6、MnO2、TiS2、MoS2などの遷移金属の酸化物及びカルコゲン化合物などが用いられる。電解質としては、例えば、過塩素酸リチウムなどのリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフランなどの単体又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
なお、上記リチウムイオン二次電池負極材を用いて負極を作製する場合、リチウムイオン二次電池負極材に黒鉛等の導電剤を添加することができる。この場合においても導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であればよく、具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維、又は天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛を用いることができる。
また、電気化学キャパシタは、電極に上記活物質を用いる点に特徴を有し、その他の電解質、セパレータなどの材料及び電池形状などは限定されない。例えば、電解質として六フッ化リン酸リチウム、過塩素リチウム、ホウフッ化リチウム、六フッ化砒素酸リチウムなどのリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフランなどの単体又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記例で%は質量%を示す。
[実施例1]
平均空孔径が約130μmの内部に空隙を有するバルク状の膨張黒鉛(バルクの密度;6kg/m3(=0.006g/cm3)4.4gに、予めメチルビニルシクロシロキサン(信越化学工業(株)製、LS−8670=1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン)43gとメチル水素シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、KF−99)31gの混合物に白金触媒100ppmを添加した付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物にトルエンを50g添加した溶液を投入し、これらをよく混合してこの組成物を膨張黒鉛に吸着(含浸)させた(黒鉛の膨張率;約28倍)。その後、大気下で300℃、1時間加熱し、この組成物を硬化させて前記メチルビニルシクロシロキサンの架橋物を形成し、その後アルゴン雰囲気下、1,000℃で1時間熱処理して、粉状のC/Si/O複合材料を得た。こうして作製した複合材料をペレット状に成形し、大気中で1,000℃で1時間焼成を行った。
平均空孔径が約130μmの内部に空隙を有するバルク状の膨張黒鉛(バルクの密度;6kg/m3(=0.006g/cm3)4.4gに、予めメチルビニルシクロシロキサン(信越化学工業(株)製、LS−8670=1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン)43gとメチル水素シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、KF−99)31gの混合物に白金触媒100ppmを添加した付加反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物にトルエンを50g添加した溶液を投入し、これらをよく混合してこの組成物を膨張黒鉛に吸着(含浸)させた(黒鉛の膨張率;約28倍)。その後、大気下で300℃、1時間加熱し、この組成物を硬化させて前記メチルビニルシクロシロキサンの架橋物を形成し、その後アルゴン雰囲気下、1,000℃で1時間熱処理して、粉状のC/Si/O複合材料を得た。こうして作製した複合材料をペレット状に成形し、大気中で1,000℃で1時間焼成を行った。
こうして得られたC/Si/O複合材料をらいかい器で解砕し、C/Si/O複合材料粉末を得た。次に、このC/Si/O複合材料粉末をロータリーキルンを用いて、Ar/CH4ガス雰囲気中、1,200℃で化学蒸着処理を行った。得られた黒色粉末は、平均粒子径20μm、BET比表面積1.5m2/g、黒鉛被覆量12%の導電性粉末であった。
○電池評価
次に以下の方法で、得られた導電性粉末を電気化学蓄電デバイスの活物質として用いて電池評価を行った。
まず、得られた導電性粉末に人造黒鉛(平均粒子径5μm)を全炭素の割合が40%となるように加え、混合物を製造した。この混合物にポリフッ化ビニリデンを10%加え、更にN−メチルピロリドンを加え、スラリーとし、このスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、最終的には20mmφに打ち抜き、負極とした。
次に以下の方法で、得られた導電性粉末を電気化学蓄電デバイスの活物質として用いて電池評価を行った。
まず、得られた導電性粉末に人造黒鉛(平均粒子径5μm)を全炭素の割合が40%となるように加え、混合物を製造した。この混合物にポリフッ化ビニリデンを10%加え、更にN−メチルピロリドンを加え、スラリーとし、このスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、最終的には20mmφに打ち抜き、負極とした。
ここで、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解させた非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
作製したリチウムイオン二次電池は、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用い、予備充放電試験として、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.1mA/cm2の定電流で充電を行った。放電は0.1mA/cm2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。以上の充放電試験を2回繰り返し、予備充放電試験とした。
その後、本充放電試験として、充電電流をテストセルの電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm2の定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が0.1mA/cm2を下回った時点で充電を終了した。放電は0.3,1.2,3.0mA/cm2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。以上の本充放電試験を50回繰り返し、50サイクル後のサイクル保持率を求めた。その結果、予備充放電試験初回の放電プロファイルと本充放電試験3サイクル目(図1中には、5th Dischargeと記載)の0.3,1.2,3.0mA/cm2の各電流での放電プロファイルを図1に示す。図1より、電極作製時に添加した黒鉛に由来する電位と容量の放電特性が0〜0.3V付近まで見られ、0.3V以降には、C/Si/O複合材料に由来する電位と容量の緩やかに上昇する放電特性が見られ(図1に示す斜線部分)、電気化学キャパシタとして望ましい特性を示していることが確認された。また予備充放電試験及び本充放電試験で求めた充放電容量を表1に示す。
[比較例1]
ケミカルグレード用金属珪素粉末をヘキサン溶媒中でボールミル粉砕し、平均粒子径D5010μmの珪素粉末を得た。得られた珪素粉末にポリフッ化ビニリデンを15%加え、更にN−メチルピロリドンを加え、スラリーとし、このスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形した。その後、この電極をアルゴンガス中300℃で2時間熱処理し、最終的には20mmφに打ち抜き、負極とした。ここで、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解させた非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
ケミカルグレード用金属珪素粉末をヘキサン溶媒中でボールミル粉砕し、平均粒子径D5010μmの珪素粉末を得た。得られた珪素粉末にポリフッ化ビニリデンを15%加え、更にN−メチルピロリドンを加え、スラリーとし、このスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形した。その後、この電極をアルゴンガス中300℃で2時間熱処理し、最終的には20mmφに打ち抜き、負極とした。ここで、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシエタンの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解させた非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
作製したリチウムイオン二次電池は、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用い、テストセルの電圧が0Vに達するまで0.5mA/cm2の定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が0.1mA/cm2を下回った時点で充電を終了した。放電は0.3mA/cm2の定電流で行い、セル電圧が2.0Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。以上の本充放電試験を50回繰り返し、50サイクル後のサイクル保持率を求めた。その結果、充放電試験初回の放電プロファイルを図2に示す。図2より、珪素に由来する電位と容量の平坦な放電特性が0.4V付近に見られ、二次電池として望ましい特性を有していることが確認された。また、充放電試験により求められた初回充電量は3,400mAh/g、初回放電量は3,060mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率は25%であり、サイクル特性に劣る電気化学蓄電デバイスであった。
Claims (10)
- 架橋可能なシラン及びシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物を空隙を有する黒鉛に含浸させ、この黒鉛内において上記有機珪素化合物の架橋物を形成し、これを非酸化性ガス中、600〜1,400℃の温度で加熱して上記架橋物を黒鉛と反応させることによって得られたC/Si/O複合材料を電極活物質としてなることを特徴とする電気化学蓄電デバイス。
- 黒鉛が膨張黒鉛である請求項1記載の電気化学蓄電デバイス。
- C/Si/O複合材料の表面に炭素皮膜が形成された請求項1,2又は3記載の電気化学蓄電デバイス。
- リチウムイオン二次電池である請求項1乃至4のいずれか1項記載の電気化学蓄電デバイス。
- 電気化学キャパシタである請求項1乃至4のいずれか1項記載の電気化学蓄電デバイス。
- 架橋可能なシラン及びシロキサンから選ばれる1種又は2種以上の有機珪素化合物を空隙を有する黒鉛に含浸させ、この黒鉛内において上記有機珪素化合物の架橋物を形成し、これを非酸化性ガス中、600〜1,400℃の温度で加熱して上記架橋物を黒鉛と反応させて、C/Si/O複合材料を形成し、これを活物質として用いて電極を形成することを特徴とする電気化学蓄電デバイスの製造方法。
- 黒鉛が膨張黒鉛である請求項7記載の製造方法。
- C/Si/O複合材料を有機ガス又は蒸気を含む雰囲気下、600〜1,400℃の温度で熱処理して上記C/Si/O複合材料表面に炭素皮膜を形成し、これを電極活物質として用いる請求項7、8又は9記載の製造方法。
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