以下、本発明を実施するための形態(以下実施形態という)を図面に従って説明する。
図1,2は、本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機の制御装置を含むシステム全体構成の概略を示す図であり、図1はベルト式無段変速機及び油圧制御装置の構成の概略を示し、図2は電子制御装置の概略を示す。本実施形態のシステムは、主にベルト式無段変速機14、油圧制御装置40、及び電子制御装置42によって構成され、例えば車両に搭載されるものである。
ベルト式無段変速機14は、入力軸26に連結されたプライマリプーリ30、出力軸36に連結されたセカンダリプーリ32、及びプライマリプーリ30とセカンダリプーリ32とに巻き掛けられた略V字型断面の無端ベルト34を備えている。入力軸26(プライマリプーリ30)には、エンジン10の発生するトルクがトルクコンバータ及び前後進切替装置(ともに図示せず)を介して伝達される。ベルト式無段変速機14は、入力軸26に伝達されたトルクを変速して出力軸36へ伝達する。出力軸36に伝達されたトルクは、駆動負荷(例えば図示しない駆動輪)へ伝達される。
プライマリプーリ30は、入力軸26方向に移動可能なプライマリ可動シーブ30aとプライマリ固定シーブ30bとで構成されている。同様に、セカンダリプーリ32は、出力軸36方向に移動可能なセカンダリ可動シーブ32aとセカンダリ固定シーブ32bとで構成されている。プライマリ可動シーブ30aには、プライマリプーリ油室30cに供給された作動油の圧力Ppによって入力軸26方向の推力が作用する。同様に、セカンダリ可動シーブ32aには、セカンダリプーリ油室32cに供給された作動油の圧力Psによって出力軸36方向の推力が作用する。プライマリ可動シーブ30a及びセカンダリ可動シーブ32aが軸方向に移動することにより、無端ベルト34がプライマリプーリ30及びセカンダリプーリ32に巻き掛かる部分の回転半径が変化する。これによって、ベルト式無段変速機14の変速比が連続的に変化する。
なお、本実施形態のベルト式無段変速機14については、プライマリ可動シーブ30aがプライマリプーリ油室30cに供給された油圧Ppを入力軸26方向(推力発生方向)に受ける受圧面積A1が、セカンダリ可動シーブ32aがセカンダリプーリ油室32cに供給された油圧Psを出力軸36方向(推力発生方向)に受ける受圧面積A2と等しくなるように設計されている。
ベルト式無段変速機14のプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cに供給される油圧は、油圧制御装置40によって供給され、それらの油圧は電子制御装置42によって制御される。
「油圧制御装置の構成」
次に、油圧制御装置40の主な構成について説明する。油圧制御装置40は、油圧供給用ポンプ54、変速用ポンプ60、高圧ライン用レギュレータ56、低圧ライン用レギュレータ58、プーリ側切替弁64、高圧ライン側切替弁70、及び逆止弁72を備えている。
油圧供給用ポンプ54はエンジン10が発生するトルクを利用して回転駆動され、リザーバ52に貯溜された作動油を汲み上げて高圧ライン68へ吐出する。油圧供給用ポンプ54が吐出した作動油は、プライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cに供給される他に、各部の潤滑や前後進切替装置のクラッチC1への供給油圧等にも用いられる。
高圧ライン用レギュレータ56は、高圧ライン68と低圧ライン66との間に設けられており、高圧ライン68における作動油の圧力PLが設定圧力となるように調整する。高圧ライン用レギュレータ56が開くと、高圧ライン68における作動油が低圧ライン66へ流出する。また、低圧ライン用レギュレータ58は、低圧ライン66とリザーバ52との間に設けられており、低圧ライン66における作動油の圧力Pdが設定圧力となるように調整する。低圧ライン用レギュレータ58が開くと、低圧ライン66における作動油がリザーバ52へドレインされる。
変速用ポンプ60は、電動式のポンプであり、変速用モータ62によって回転駆動される。そして、本実施形態では、変速用ポンプ60を回転駆動させることで、ベルト式無段変速機14の変速比の変更を行うことができる。すなわち、変速用ポンプ60は、プライマリプーリ油室30cの作動油をセカンダリプーリ油室32cへ移動させることができ、これによって、減速動作(ダウンシフト)を行うことができる。さらに、変速用ポンプ60は、セカンダリプーリ油室32cの作動油をプライマリプーリ油室30cへ移動させることもでき、これによって、増速動作(アップシフト)を行うことができる。このように、本実施形態の変速用ポンプ60は可逆ポンプであり、作動油を変速用ポンプ60によってプライマリプーリ油室30cとセカンダリプーリ油室32cとの間で可逆的に移動させることができる。そして、プーリ油室30c,32c内の作動油をリザーバ52へドレインすることなく変速動作を行うことができるので、油圧制御装置40の駆動効率を向上させることができる。
高圧ライン側切替弁70は、高圧ライン68からの作動油の圧力PLの供給を許容する開状態(図1の左側の状態)と、高圧ライン68からの作動油の圧力PLの供給を遮断する閉状態(図1の右側の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでの高圧ライン側切替弁70は、電子制御装置42から出力される制御信号によって開閉可能な電磁切替弁で構成することができる。
プーリ側切替弁64は、プライマリプーリ油室30cを低圧ライン66と連通させるとともにセカンダリプーリ油室32cを高圧ライン側切替弁70と連通させるプライマリ低圧供給状態(図1の右側の状態)と、セカンダリプーリ油室32cを低圧ライン66と連通させるとともにプライマリプーリ油室30cを高圧ライン側切替弁70と連通させるセカンダリ低圧供給状態(図1の左側の状態)と、に切り替わることが可能である。なお、プーリ側切替弁64と高圧ライン側切替弁70を接続するための油路76には、絞り(オリフィス)78が設けられている。
ここでのプーリ側切替弁64は、パイロット圧切替弁で構成することができる。そして、プライマリプーリ油室30cにおける作動油の圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cにおける作動油の圧力Psが、パイロット圧としてスプール(図示せず)の両端にそれぞれ供給される。ここで、スプールの一端部が圧力Ppを軸方向に受ける受圧面積S1が、スプールの他端部が圧力Psを軸方向に受ける受圧面積S2に等しくなるように設計されている。これによって、S1/S2がA1/A2に等しくなるように設計される。
Pp×S1>Ps×S2、すなわちPp×A1>Ps×A2(本実施形態では、A1=A2、S1=S2のため、Pp>Ps)のときは、プーリ側切替弁64は、前述のセカンダリ低圧供給状態に切り替わる。一方、Ps×S2>Pp×S1、すなわちPs×A2>Pp×A1(本実施形態では、A1=A2、S1=S2のため、Ps>Pp)のときは、プーリ側切替弁64は、前述のプライマリ低圧供給状態に切り替わる。また、Ps×S2=Pp×S1、すなわちPs×A2=Pp×A1(本実施形態では、A1=A2、S1=S2のため、Ps=Pp)でありスプールが中立位置にあるときは、スプールによりプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cと低圧ライン66との連通が遮断される(図1の中央の状態)。
このように、本実施形態のプーリ側切替弁64は、プライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cのうち、供給された作動油の圧力が小さい方のプーリ油室を低圧ライン66と連通させる。これによって、プーリ推力(ベルト挟圧力)が小さいと判断される方のプーリ油室に低圧ライン66における作動油の圧力Pdを供給することができるので、ベルト式無段変速機14の駆動状態に応じて必要なプーリ推力(ベルト挟圧力)を安定して確保することができる。したがって、無端ベルト34の滑りを確実に抑制することができる。ここで、低圧ライン66における作動油の圧力Pdを低圧ライン用レギュレータ58によって調整することで、プーリ推力(ベルト挟圧力)を調整することができる。
低圧ライン66とセカンダリプーリ油室32cを接続するためのバイパス路74がプーリ側切替弁64をバイパスして設けられており、バイパス路74には逆止弁72及び絞り(オリフィス)80が設けられている。逆止弁72は、低圧ライン66からセカンダリプーリ油室32cへの作動油の流れを許容するとともに、セカンダリプーリ油室32cから低圧ライン66への作動油の流れを遮断する。前述したように、プーリ側切替弁64のスプールが中立位置にあるときは、スプールによりプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cと低圧ライン66との連通が遮断される。ただし、低圧ライン66から逆止弁72を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給してセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを増大させることができるので、プーリ側切替弁64を前述のプライマリ低圧供給状態に切り替えることができる。このとき、低圧ライン66から絞り(オリフィス)80を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油が供給されることで、セカンダリプーリ油室32cの圧力Psの急変が抑止される。
以上のように構成された油圧制御装置40において、高圧ライン側切替弁70を閉状態(図1の右側の状態)に切り替えることで、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cへの作動油の圧力の供給を遮断するとともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給する高圧遮断状態に切り替えることができる。一方、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(図1の右側の状態)にあるときに、高圧ライン側切替弁70を開状態(図1の左側の状態)に切り替えることで、図3に示すように、高圧ライン68からセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給するとともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力を供給するセカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。そして、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(図1の左側の状態)にあるときに、高圧ライン側切替弁70を開状態(図1の左側の状態)に切り替えることで、図4に示すように、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力を供給するとともに低圧ライン66からセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給するプライマリ高圧供給状態に切り替えることができる。
「電子制御装置の構成」
次に、電子制御装置42の主な構成について説明する。図2に示すように、電子制御装置42は、変速制御部83、圧力ライン制御部81、プーリ側切替弁判定部88、低車速状態判定部89、急減速制御判定部90、異常判定部91、定常制御判定部92、及び切替弁制御部82を備えている。
変速制御部83は、スロットル開度A及び車速V(ともに図示しないセンサにより検出)に基づいて変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動状態を制御することで、ベルト式無段変速機14の変速比Gの制御を行う。そして、変速制御部83は、減算器84、フィードフォワード制御部85、フィードバック制御部86、及び加算器87を備えている。
スロットル開度A及び車速Vに基づいて目標変速比Grが設定され、目標変速比Grはフィードフォワード制御部85に入力される。フィードフォワード制御部85は、目標変速比Grに対応したフィードフォワード制御指令値Gffを算出して加算器87へ出力する。
また、設定された目標変速比Grは、減算器84にも入力される。減算器84には、例えばプライマリプーリ30の回転速度Np及びセカンダリプーリ32の回転速度Nsから検出した変速比Gも入力される。減算器84は、目標変速比Grと検出した変速比Gとの制御偏差ΔGを算出してフィードバック制御部86へ出力する。そして、フィードバック制御部86は、この制御偏差ΔGに所定のフィードバックゲインkGを乗じたフィードバック制御指令値kG×ΔGを加算器87へ出力する。ここでは比例項によるフィードバック制御指令値を算出する場合を説明しているが、積分項や微分項も考慮したフィードバック制御指令値を算出してもよい。
加算器87は、フィードフォワード制御指令値Gffとフィードバック制御指令値kG×ΔGとを加算した制御指令値Gff+kG×ΔGを変速用モータ62へ出力する。この制御指令値Gff+kG×ΔGによって変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われることで、変速比Gを目標変速比Grに追従させるための変速制御が行われる。
圧力ライン制御部81は、高圧ライン用レギュレータ56が開くときの圧力及び低圧ライン用レギュレータ58が開くときの圧力をそれぞれ制御することで、高圧ライン68における作動油の圧力PLの制御及び低圧ライン66における作動油の圧力Pdの制御をそれぞれ行う。ここで、低圧ライン66の圧力Pdが高圧ライン68の圧力PL以下になるように、高圧ライン用レギュレータ56及び低圧ライン用レギュレータ58が開くときの圧力がそれぞれ制御される。低圧ライン用レギュレータ58が開くときの圧力は、プライマリプーリ30への入力トルクTp(例えばスロットル開度A、エンジン10の回転速度Ne、及びプライマリプーリ30の回転速度Npに基づいて推定)及び変速比G(例えばプライマリプーリ30の回転速度Np及びセカンダリプーリ32の回転速度Nsから算出)に基づいて設定される。前述したように、低圧ライン66における作動油の圧力Pdはプーリ側切替弁64を介してプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cに供給されてプーリ推力を発生させるため、この設定により、プライマリプーリ30への入力トルクTp及び変速比Gに基づいてプーリ推力が制御されることになる。
プーリ側切替弁判定部88は、プーリ側切替弁64の状態を判定する。前述したように、プーリ側切替弁64は、Pp>Psのときはセカンダリ低圧供給状態(図1の左側の状態)に切り替わり、Ps>Ppのときはプライマリ低圧供給状態(図1の右側の状態)に切り替わる。したがって、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppとセカンダリプーリ油室32cの圧力Ps(例えばともに圧力センサにより検出)を比較することで、プーリ側切替弁64の状態を判定することができる。
また、以下に説明する判定方法により、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを検出する圧力センサを用いることなくプーリ側切替弁64の状態を判定することができる。ここで、本願発明者が行った実験の結果を図5に示す。図5は、プライマリプーリ30への入力トルクTp(エンジントルク)を変化させたときの変速比(減速比)Gと圧力比Ps/Ppの関係を示す実験結果であり、図5(A)は変速比(減速比)Gの時間変化率dG/dtを固定した場合の関係を示し、図5(B)は変速比(減速比)Gの時間変化率dG/dtを変化させた場合の関係を示す。図5に示す実験結果は、プライマリプーリ30への入力トルクTp、変速比G、及び変速比Gの時間変化率dG/dtから圧力比Ps/Ppが決定されることを示している。例えば、圧力比Ps/Ppは以下の(1)式で表すことができる。
Ps/Pp=f(Tp,G)+δf(dG/dt) (1)
(1)式において、f(Tp,G)は、図5(A)に示す変速比Gと圧力比Ps/Ppの静的な関係を表しており、δf(dG/dt)は、変速比Gの時間変化率dG/dtに応じた補正値を表している。
そこで、プーリ側切替弁判定部88は、入力トルクTp、変速比G、及び変速比Gの時間変化率dG/dtに対応する圧力比Ps/Ppを(1)式から求め、この圧力比Ps/Ppが1より大きいか否かを判定することによっても、プーリ側切替弁64の状態を判定することができる。なお、(1)式において、補正値δf(dG/dt)を省略することも可能であるが、補正値δf(dG/dt)を考慮した方がプーリ側切替弁64の状態をより精度よく判定することができる。
低車速状態判定部89は、車速Vが閾値V1以下であるか否かを判定する。ここで、車速Vとセカンダリプーリ32の回転速度Nsは対応関係にあるため、例えばセカンダリプーリ32の回転速度Nsが閾値N1以下であるか否かを判定することで、車速Vが閾値V1以下であるか否かを判定することができる。あるいは、検出した車速Vが閾値V1以下であるか否かを直接判定してもよい。ここでの閾値N1,V1は、変速比Gの検出精度が低下すると判断される閾値として設定される。この閾値の設定によって、エンジン10の始動時、車両の停止時または極低速走行時にあるか否かを判定することができる。
急減速制御判定部90は、急減速制御を行う条件が成立したか否かを判定する。ここでは、目標変速比Grの時間変化率dGr/dtが閾値G1(G1>0)より大きい条件と、目標変速比Grと検出した変速比Gとの制御偏差ΔGが閾値G2(G2>0)より大きい条件と、の両方が成立した場合に急減速制御を行う条件が成立したと判定することができる。あるいは、これら2つの条件のいずれか一方が成立した場合に急減速制御を行う条件が成立したと判定することもできる。急減速制御を行う条件が成立した場合は、変速用ポンプ60による変速制御をアシストすることが必要と判定され、後述する制御により、変速用ポンプ60による変速制御をアシストする制御が行われる。
異常判定部91は、変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことが可能か否かを判定する。ここでは、目標変速比Grと検出した変速比Gの制御偏差ΔGの絶対値が閾値G3(G3>0)より大きい状態が所定時間t1継続する条件と、目標変速比Grと検出した変速比Gの制御偏差ΔGの時間変化率dΔG/dtの絶対値が閾値G4(G4>0)より大きい状態が所定時間t2継続する条件と、の両方が成立した場合に変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことができないと判定することができる。あるいは、これら2つの条件のいずれか一方が成立した場合に変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことができないと判定することもできる。この判定により、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生したか否かを判定することができる。
定常制御判定部92は、変速比Gをほぼ一定に保つ制御が行われるか否かを判定する。ここでは、目標変速比Grの時間変化率dGr/dtの絶対値が閾値G5(G5>0)以下であるか否かを判定することで、変速比Gをほぼ一定に保つ制御が行われるか否かを判定することができる。
切替弁制御部82は、プーリ側切替弁判定部88、低車速状態判定部89、急減速制御判定部90、異常判定部91、及び定常制御判定部92による判定結果に基づいて、高圧ライン側切替弁70の開閉制御を行う。切替弁制御部82から高圧ライン側切替弁70へ制御信号が出力されない場合は、高圧ライン側切替弁70は閉状態に保たれる。一方、切替弁制御部82から高圧ライン側切替弁70へ制御信号が出力された場合は、高圧ライン側切替弁70は開状態に切り替えられる。なお、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70の開閉状態を切り替える条件の詳細については後述する。
「電子制御装置による制御」
本実施形態においては、電子制御装置42は、エンジン10の始動時、車両の停止時または極低速走行時には、変速比Gを最大変速比Gmaxに一致させるための制御を行う。その際に、電子制御装置42は、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態を前述のセカンダリ高圧供給状態(図3に示す状態)に切り替えて変速用ポンプ60の駆動を停止させる制御を行う。以下、電子制御装置42により実行される処理を図6のフローチャートを用いて説明する。この処理は、エンジン10の始動時あるいはエンジン10の運転が行われているとき(すなわちエンジン10の回転速度Neが0より大きいとき)に実行される。
まずステップ(以下Sとする)1においては、低車速状態判定部89により車速Vが閾値V1以下であるか否かが判定される。S1の判定結果がNOの場合は、S2に進む。S2においては、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われることで、変速比Gを目標変速比Grに追従させるための変速制御が行われる。このとき、切替弁制御部82から高圧ライン側切替弁70へ制御信号が出力されないことで、高圧ライン側切替弁70が閉状態(図1の右側の状態)に保たれる。これによって、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S1に戻り、S1の判定が繰り返される。
一方、エンジン10の始動時、車両の停止時または極低速走行時には、セカンダリプーリ32の回転速度Nsが閾値N1以下(車速Vが閾値V1以下)となり、変速比Gの検出精度が低下すると判断される。その場合は、S1の判定結果はYESであり、S3に進む。S3においては、プーリ側切替弁判定部88によりプーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(図1の右側の状態)にあるか否かが判定される。
S3でPp≧Psの場合は、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にない(S3の判定結果がNO)と判定され、その場合はS4に進む。S4においては、変速用ポンプ60がプライマリプーリ油室30c内の作動油をセカンダリプーリ油室32cへ吐出するように、すなわち減速動作が行われるように、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われる。このとき、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態に保たれることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S3に戻り、S3の判定が繰り返される。ただし、車速Vの低下に伴って変速用ポンプ60による減速動作が行われるため、S3の判定時には、通常はPs>Ppとなる、すなわちプーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にある。
一方、S3でPs>Ppの場合は、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にある(S3の判定結果がYES)と判定され、その場合はS5に進む。S5においては、切替弁制御部82から高圧ライン側切替弁70へ制御信号が出力されることで、高圧ライン側切替弁70が開状態(図1の左側の状態)に切り替えられる。これによって、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態がセカンダリ高圧供給状態(図3に示す状態)に切り替えられる。このとき、高圧ライン68の圧力PLが低圧ライン66の圧力Pdより十分高くなるように、圧力ライン制御部81による圧力制御が行われる。次に、S6においては、変速用モータ62の発生トルクを0にすることで、変速用ポンプ60の駆動を停止する。そして、S1に戻り、S1の判定が繰り返される。
以上説明したように、本実施形態においては、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にあるとき(Ps>Ppのとき)に高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替えると、セカンダリプーリ油室32cに高圧ライン68の圧力PLが供給されるとともにプライマリプーリ油室30cに低圧ライン66の圧力Pdが供給される(図3に示すセカンダリ高圧供給状態)。これによって、変速用モータ62の発生トルクが0であっても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、セカンダリプーリ油室32cの圧力Ps及びプライマリプーリ油室30cの圧力Ppを制御することができ、変速比Gの制御を行うことができる。したがって、変速用ポンプ60の動力を用いずに所望の変速比Gを得ることができる。なお、高圧ライン68から絞り(オリフィス)78を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油が供給されることで、セカンダリプーリ油室32cの圧力Psの急変が抑止される。
ここで、図5に示す実験結果から、プライマリプーリ30への入力トルクTp及び圧力比Ps/Ppに基づいて変速比Gが決定されることがわかる。そこで、圧力ライン制御部81は、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が図3に示すセカンダリ高圧供給状態にあるときには、入力トルクTp、目標変速比Gr、及び目標変速比Grの時間変化率dGr/dtに対応する圧力比Ps/Ppを前述の(1)式から求め、この圧力比Ps/Ppが得られるように高圧ライン68の圧力PLと低圧ライン66の圧力Pdの比PL/Pdを制御する。この圧力制御によって、変速比Gを目標変速比Grに一致させる制御を行うことができる。例えば、圧力ライン制御部81は、高圧ライン68の圧力PLと低圧ライン66の圧力Pdの比PL/Pdが入力トルクTp、最大変速比Gmax及び目標変速比Grの時間変化率dGr/dtに対応する圧力比Ps/Pp以上となるように制御を行うことで、変速比Gを最大変速比Gmaxに一致させる制御を行うことができる。この制御によって、エンジン10の始動時、車両の停止時または極低速走行時には、変速用ポンプ60の動力を用いずに最大変速比Gmaxを得ることができる。なお、(1)式において、補正値δf(dGr/dt)を省略することも可能であるが、補正値δf(dGr/dt)を考慮した方が変速比Gの制御をより精度よく行うことができる。
また、本実施形態においては、電子制御装置42は、変速用ポンプ60による変速制御をアシストすることが必要と判定した場合に、変速用ポンプ60の駆動制御を行うとともにプーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態を前述のセカンダリ高圧供給状態(図3に示す状態)に切り替える制御を行う。以下、電子制御装置42により実行される処理を図7のフローチャートを用いて説明する。この処理は、エンジン10の始動時あるいはエンジン10の運転が行われているとき(すなわちエンジン10の回転速度Neが0より大きいとき)に実行される。
まずS101においては、急減速制御判定部90により急減速制御を行う条件が成立しているか否かが判定される。S101の判定結果がNOの場合は、変速用ポンプ60による変速制御をアシストすることが必要ないと判定してS102に進む。S102においては、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態(図1の右側の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。それとともに、変速制御部83による変速用モータ62の駆動制御が行われる。そして、S101に戻り、S101の判定が繰り返される。
一方、S101の判定結果がYESの場合は、変速用ポンプ60による変速制御をアシストすることが必要と判定してS103に進む。S103においては、プーリ側切替弁判定部88によりプーリ側切替弁64の状態がプライマリ低圧供給状態(図1の右側の状態)にあるか否かが判定される。S103でPp≧Psの場合は、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にない(S103の判定結果がNO)と判定される。その場合はS102に進み、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態に保たれる。それとともに、変速用ポンプ60がプライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を移動させるように、すなわち減速動作が行われるように、変速制御部83による変速用モータ62の駆動制御が行われる。
一方、S103でPs>Ppの場合は、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にある(S103の判定結果がYES)と判定され、その場合はS104に進む。S104においては、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が開状態(図1の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態がセカンダリ高圧供給状態(図3に示す状態)に切り替えられる。このとき、高圧ライン68の圧力PLが低圧ライン66の圧力Pdより十分高くなるように、圧力ライン制御部81による圧力制御が行われる。それとともに、変速用ポンプ60がプライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を移動させるように、すなわち減速動作が行われるように、変速制御部83による変速用モータ62の駆動制御が行われる。そして、S101に戻り、S101の判定が繰り返される。
以上説明したように、本実施形態においては、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態にあるとき(Ps>Ppのとき)に高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替える(図3に示すセカンダリ高圧供給状態に切り替える)ことで、変速用ポンプ60によりプライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給するだけでなく、高圧ライン68からセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給することもできる。このように、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdの制御により、変速用ポンプ60による減速制御をアシストすることができるので、減速速度を増大させることができる。したがって、変速制御の応答性を向上させることができ、急減速制御時でも十分な応答性を得ることができる。さらに、変速動作に必要な消費エネルギーを低減することができる。
なお、急減速制御時の応答性をより向上させるためには、目標変速比Grと検出した変速比Gの制御偏差ΔGの増大に対して、高圧ライン68の圧力PLと低圧ライン66の圧力Pdの差を増大させることがより好ましい。また、目標変速比Grの時間変化率dGr/dtの増大に対して、高圧ライン68の圧力PLと低圧ライン66の圧力Pdの差を増大させることがより好ましい。
また、本実施形態においては、電子制御装置42は、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppがセカンダリプーリ油室32cの圧力Psより高いときに変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことができないと判定した場合には、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態を前述のプライマリ高圧供給状態(図4に示す状態)に切り替える制御を行う。以下、電子制御装置42により実行される処理を図8のフローチャートを用いて説明する。この処理は、エンジン10の始動時あるいはエンジン10の運転が行われているとき(すなわちエンジン10の回転速度Neが0より大きいとき)に実行される。
まずS201においては、プーリ側切替弁判定部88によりプーリ側切替弁64の状態がセカンダリ低圧供給状態(図1の左側の状態)にあるか否かが判定される。S201でPs≧Ppの場合は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にない(S201の判定結果がNO)と判定され、その場合はS202に進む。S202においては、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態(図1の右側の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S201に戻り、S201の判定が繰り返される。
一方、S201でPp>Psの場合は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にある(S201の判定結果がYES)と判定され、その場合はS203に進む。S203においては、異常判定部91により変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生したか否かが判定される。S203の判定結果がNOの場合は、変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことが可能と判定してS202に進み、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態に保たれる。
一方、S203の判定結果がYESの場合は、変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことができないと判定してS204に進む。S204においては、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が開状態(図1の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態がプライマリ高圧供給状態(図4に示す状態)に切り替えられる。このとき、高圧ライン68の圧力PLが低圧ライン66の圧力Pdより高くなるように、圧力ライン制御部81による圧力制御が行われる。
以上説明したように、本実施形態においては、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にあるとき(Pp>Psのとき)に高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替えると、プライマリプーリ油室30cに高圧ライン68の圧力PLが供給されるとともにセカンダリプーリ油室32cに低圧ライン66の圧力Pdが供給される(図4に示すプライマリ高圧供給状態)。これによって、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生して変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことが困難な場合でも、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを制御することができ、変速比Gの制御を行うことができる。したがって、変速用ポンプ60の動力を用いずに所望の変速比Gを得ることができる。その際に、高圧ライン68から絞り(オリフィス)78を介してプライマリプーリ油室30cへ作動油が供給されることで、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppの急変が抑止される。
前述したように、図5に示す実験結果から、プライマリプーリ30への入力トルクTp及び圧力比Ps/Ppに基づいて変速比Gが決定される。そこで、圧力ライン制御部81は、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が図4に示すプライマリ高圧供給状態にあるときには、入力トルクTp、目標変速比Gr、及び目標変速比Grの時間変化率dGr/dtに対応する圧力比Ps/Ppを前述の(1)式から求め、この圧力比Ps/Ppが得られるように低圧ライン66の圧力Pdと高圧ライン68の圧力PLの比Pd/PLを制御する。この圧力制御によって、変速比Gを目標変速比Grに一致させる制御を行うことができる。例えば、変速比Gが最小変速比Gminにあるときに変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生した場合を考えると、圧力ライン制御部81は、低圧ライン66の圧力Pdと高圧ライン68の圧力PLの比Pd/PLが入力トルクTp、最小変速比Gmin及び目標変速比Grの時間変化率dGr/dtに対応する圧力比Ps/Pp以下となるように制御を行うことで、変速比Gを最小変速比Gminに一致させる制御を行うことができる。この制御によって、変速用ポンプ60の動力を用いずに最小変速比Gminを得ることができる。なお、(1)式において、補正値δf(dGr/dt)を省略することも可能であるが、補正値δf(dGr/dt)を考慮した方が変速比Gの制御をより精度よく行うことができる。
ここで、本願発明者が行った実験の結果を図9に示す。図9は、変速比Gが最小変速比Gminにあるときに変速用ポンプ60の故障を模擬して変速用モータ62への出力電圧を0にした場合の実験結果であり、図9(A)は高圧ライン側切替弁70を閉状態に保った場合を示し、図9(B)は変速用モータ62への出力電圧を0にするとともに高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替えた場合を示す。
高圧ライン側切替弁70を閉状態に保った場合は、変速用モータ62への出力電圧を0にすると、圧力の高いプライマリプーリ30から圧力の低いセカンダリプーリ32へ作動油が移動することで減速動作が行われてしまう。そのため、図9(A)に示すように、プライマリプーリ30に連結されたエンジン10の回転が吹け上がってしまう。
一方、高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替えた場合は、変速用モータ62への出力電圧が0であっても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを制御することができる。そのため、図9(B)に示すように、変速用モータ62への出力電圧が0であっても、変速比Gを最小変速比Gminに保つことができ、エンジン10の回転の吹け上がりを防止することができる。
また、本実施形態においては、電子制御装置42は、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppがセカンダリプーリ油室32cの圧力Psより高いときに変速比Gをほぼ一定に保つ場合は、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態を前述のプライマリ高圧供給状態(図4に示す状態)に切り替える制御を行う。以下、電子制御装置42により実行される処理を図10のフローチャートを用いて説明する。この処理は、エンジン10の始動時あるいはエンジン10の運転が行われているとき(すなわちエンジン10の回転速度Neが0より大きいとき)に実行される。
まずS301においては、プーリ側切替弁判定部88によりプーリ側切替弁64の状態がセカンダリ低圧供給状態(図1の左側の状態)にあるか否かが判定される。S301でPs≧Ppの場合は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にない(S301の判定結果がNO)と判定され、その場合はS302に進む。S302においては、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われる。それとともに、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態(図1の右側の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S301に戻り、S301の判定が繰り返される。
一方、S301でPp>Psの場合は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にある(S301の判定結果がYES)と判定され、その場合はS303に進む。S303においては、定常制御判定部92により変速比Gをほぼ一定に保つ制御が行われているか否かが判定される。S303の判定結果がNOの場合は、S302に進み、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われるとともに、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が閉状態に保たれる。
一方、S303の判定結果がYESの場合は、S304に進む。S304においては、切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70が開状態(図1の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び高圧ライン側切替弁70の状態がプライマリ高圧供給状態(図4に示す状態)に切り替えられる。このとき、高圧ライン68の圧力PLが低圧ライン66の圧力Pdより高くなるように、圧力ライン制御部81による圧力制御が行われる。次に、S305においては、変速用モータ62の発生トルクを0にすることで、変速用ポンプ60の駆動を停止する。そして、S301に戻り、S301の判定が繰り返される。
以上説明したように、本実施形態においては、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にあるとき(Pp>Psのとき)に高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替える(図4に示すプライマリ高圧供給状態に切り替える)ことで、変速用モータ62の発生トルクが0であっても、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを制御することができるので、変速比Gの制御を行うことができる。したがって、変速用ポンプ60の動力を用いずに所望の変速比Gを得ることができる。その際に、高圧ライン68から絞り(オリフィス)78を介してプライマリプーリ油室30cへ作動油が供給されることで、プライマリプーリ油室30cの圧力Ppの急変が抑止される。なお、変速比Gの制御については、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生した場合の制御と同様の制御を用いることができる。
なお、詳細な動作説明を省略するものの、本実施形態においては、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にあるとき(Pp>Psのとき)に高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替える(図4に示すプライマリ高圧供給状態に切り替える)ことで、変速用ポンプ60によりセカンダリプーリ油室32cからプライマリプーリ油室30cへ作動油を供給するだけでなく、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30cへ作動油を供給することもできる。このように、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdの制御により、変速用ポンプ60による増速制御をアシストすることができるので、増速速度を増大させることができる。したがって、変速制御の応答性を向上させることができる。
「油圧制御装置の他の構成及びその制御」
次に、本実施形態における油圧制御装置40の他の構成例について説明する。
図11に示す油圧制御装置40においては、圧力ライン側切替弁71は、出力ポート71aを高圧ライン68と連通させるとともに出力ポート71aと低圧ライン66との連通を遮断する高圧連通状態(図11の左側の状態)と、出力ポート71aを低圧ライン66と連通させるとともに出力ポート71aと高圧ライン68との連通を遮断する低圧連通状態(図11の右側の状態)と、出力ポート71aと高圧ライン68及び低圧ライン66との連通を遮断する遮断状態(図11の中央の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでの圧力ライン側切替弁71は、切替弁制御部82から出力される制御信号によって切り替え可能な電磁切替弁で構成することができる。
また、プーリ側切替弁64は、プライマリプーリ油室30cを低圧ライン66と連通させるとともにセカンダリプーリ油室32cを圧力ライン側切替弁71の出力ポート71aと連通させるプライマリ低圧供給状態(図11の右側の状態)と、セカンダリプーリ油室32cを低圧ライン66と連通させるとともにプライマリプーリ油室30cを圧力ライン側切替弁71の出力ポート71aと連通させるセカンダリ低圧供給状態(図11の左側の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでのプーリ側切替弁64の状態が切り替わる条件については、図1のプーリ側切替弁64と同様である。そして、油圧制御装置40の他の構成については、図1に示す構成と同様である。
切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71を閉状態(図11の中央の状態)に切り替えることで、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cへの作動油の圧力の供給を遮断するとともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給する高圧遮断状態に切り替えることができる。一方、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(図11の右側の状態)にあるときに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71を高圧連通状態(図11の左側の状態)に切り替えることで、図12に示すように、高圧ライン68からセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給するとともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力を供給するセカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。そして、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(図11の左側の状態)にあるときに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71を高圧連通状態(図11の左側の状態)に切り替えることで、図13に示すように、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力を供給するとともに低圧ライン66からセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給するプライマリ高圧供給状態に切り替えることができる。
さらに、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態またはセカンダリ低圧供給状態にあるときに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71を低圧連通状態(図11の右側の状態)に切り替えることで、図14に示すように、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cへの作動油の圧力の供給を遮断するともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給する両プーリ低圧供給状態に切り替えることができる。ただし、図14は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にある場合を示している。
次に、油圧制御装置40が図11に示す構成である場合に、電子制御装置42により実行される処理について説明する。ただし、以下の説明では、油圧制御装置40が図1に示す構成である場合の処理と異なる点について説明し、説明を省略する処理については油圧制御装置40が図1に示す構成である場合と同様である。
図6のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S2,S4において、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われるとともに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が閉状態(図11の中央の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S5においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が高圧連通状態(図11の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述のセカンダリ高圧供給状態(図12に示す状態)に切り替えられる。これによって、S6で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。
また、図7のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S102において、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が閉状態(図11の中央の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S104においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が高圧連通状態(図11の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述のセカンダリ高圧供給状態(図12に示す状態)に切り替えられる。これによって、変速用ポンプ60による減速制御をアシストすることができ、急減速制御時の応答性を向上させることができる。
なお、図15のフローチャートに示すように、S103の判定結果がNOのときは、S105において、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71を低圧連通状態(図11の右側の状態)に切り替えることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態を前述の両プーリ低圧供給状態(図14に示す状態)に切り替えてもよい。プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態を両プーリ低圧供給状態に切り替えることで、変速用ポンプ60によりプライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給するだけでなく、プライマリプーリ油室30cから圧力ライン側切替弁71を介して低圧ライン66へ作動油を吐出することができる。これによって、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(Pp>Ps)にあるときの減速速度を増大させることができ、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(Ps>Pp)へ切り替わるのに要する時間を短縮することができる。したがって、急減速制御時の応答性をさらに向上させることができる。
また、油圧制御装置40が図11に示す構成である場合は、図8のフローチャートに示す処理の代わりに、図16のフローチャートに示す処理が実行される。まずS211においては、S202と同様に、異常判定部91により変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生したか否かが判定される。S211の判定結果がNOの場合は、変速用ポンプ60による変速比Gの制御を行うことが可能と判定してS211に戻り、S211の判定が繰り返される。
一方、S211の判定結果がYESの場合は、変速用ポンプ60による変速比Gの制御を行うことができないと判定してS212に進む。S212においては、S201と同様に、プーリ側切替弁判定部88によりプーリ側切替弁64の状態がセカンダリ低圧供給状態(図11の左側の状態)にあるか否かが判定される。S212でPp>Psの場合は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にある(S212の判定結果がYES)と判定され、その場合はS213に進む。S213においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が高圧連通状態(図11の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述のプライマリ高圧供給状態(図13に示す状態)に切り替えられる。これによって、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生して変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことが困難な場合でも、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。したがって、エンジン10の回転の吹け上がりを防止することができる。
一方、S212でPs≧Ppの場合は、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態にない(S212の判定結果がNO)と判定され、その場合はS214に進む。S214においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が低圧連通状態(図11の右側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述の両プーリ低圧供給状態に切り替えられる。これによって、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生して変速用ポンプ60による変速比Gの制御を正常に行うことが困難な場合でも、プライマリプーリ油室30cの圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cの圧力Psを等しく保つことができる。したがって、変速比Gの急変を抑止することができ、エンジン10の回転の吹け上がりを抑止することができる。
また、図10のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S302において、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われるとともに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が閉状態(図11の中央の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S304においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁71が高圧連通状態(図11の左側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71の状態が前述のプライマリ高圧供給状態(図13に示す状態)に切り替えられる。これによって、S305で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。
また、図17に示す油圧制御装置40においては、圧力ライン側切替弁71は、パイロット圧切替弁で構成される。そして、プライマリプーリ油室30cにおける作動油の圧力Pp及びセカンダリプーリ油室32cにおける作動油の圧力Psが、パイロット圧としてスプール(図示せず)の両端にそれぞれ供給される。ここで、スプールの一端部が圧力Ppを軸方向に受ける受圧面積S11が、スプールの他端部が圧力Psを軸方向に受ける受圧面積S12に等しくなるように設計されている。これによって、S11/S12がA1/A2に等しくなるように設計される。
Pp×S11>Ps×S12、すなわちPp×A1>Ps×A2(本実施形態では、A1=A2、S11=S12のため、Pp>Ps)のときは、圧力ライン側切替弁71は、前述の低圧連通状態(図17の右側の状態)に切り替わる。一方、Ps×S12>Pp×S11、すなわちPs×A2>Pp×A1(本実施形態では、A1=A2、S11=S12のため、Ps>Pp)のときは、圧力ライン側切替弁71は、前述の高圧連通状態(図17の左側の状態)に切り替わる。また、Ps×S12=Pp×S11、すなわちPs×A2=Pp×A1(本実施形態では、A1=A2、S11=S12のため、Ps=Pp)でありスプールが中立位置にあるときは、スプールにより高圧ライン68及び低圧ライン66と出力ポート71aとの連通が遮断される(図17の中央の状態)。
圧力ライン側切替弁73は、圧力ライン側切替弁71の出力ポート71aからの作動油の圧力の供給を許容する開状態(図17の右側の状態)と、圧力ライン側切替弁71の出力ポート71aからの作動油の圧力の供給を遮断する閉状態(図17の左側の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでの圧力ライン側切替弁73は、切替弁制御部82から出力される制御信号によって開閉可能な電磁切替弁で構成することができる。
また、プーリ側切替弁64は、プライマリプーリ油室30cを低圧ライン66と連通させるとともにセカンダリプーリ油室32cを圧力ライン側切替弁73と連通させるプライマリ低圧供給状態(図17の右側の状態)と、セカンダリプーリ油室32cを低圧ライン66と連通させるとともにプライマリプーリ油室30cを圧力ライン側切替弁73と連通させるセカンダリ低圧供給状態(図17の左側の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでのプーリ側切替弁64の状態が切り替わる条件については、図1のプーリ側切替弁64と同様である。そして、油圧制御装置40の他の構成については、図1に示す構成と同様である。
切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73を閉状態(図17の左側の状態)に切り替えることで、前述の高圧遮断状態に切り替えることができる。一方、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(図17の右側の状態)にあるときに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73を開状態(図11の右側の状態)に切り替えることで、前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。そして、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(図11の左側の状態)にあるときに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73を開状態(図11の右側の状態)に切り替えることで、前述の両プーリ低圧供給状態に切り替えることができる。
次に、油圧制御装置40が図17に示す構成である場合に、電子制御装置42により実行される処理について説明する。
図6のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S2,S4において、変速制御部83による変速用モータ62(変速用ポンプ60)の駆動制御が行われるとともに、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73が閉状態(図17の左側の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S5においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73が開状態(図17の右側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替えられる。これによって、S6で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。
また、図7のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S102において、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73が閉状態(図17の左側の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S104においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73が開状態(図17の右側の状態)に切り替えられることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替えられる。これによって、変速用ポンプ60による減速制御をアシストすることができ、急減速制御時の応答性を向上させることができる。
なお、図7のフローチャートに示す処理の代わりに、図18のフローチャートに示す処理を実行することもできる。まずS111においては、S101と同様に、急減速制御判定部90により急減速制御を行う条件が成立しているか否かが判定される。S111の判定結果がNOの場合は、変速用ポンプ60による変速制御をアシストすることが必要ないと判定してS112に進む。S112においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73が閉状態(図17の左側の状態)に保たれることで、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述の高圧遮断状態に保たれる。そして、S111に戻り、S111の判定が繰り返される。一方、S111の判定結果がYESの場合は、変速用ポンプ60による変速制御をアシストすることが必要と判定してS113に進む。S113においては、切替弁制御部82により圧力ライン側切替弁73が開状態(図17の右側の状態)に切り替えられる。そして、S111に戻り、S111の判定が繰り返される。
プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(Pp>Ps)にあるときに圧力ライン側切替弁73を開状態に切り替えた場合は、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述の両プーリ低圧供給状態に切り替わる。この場合は、変速用ポンプ60によりプライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給するだけでなく、プライマリプーリ油室30cから圧力ライン側切替弁71を介して低圧ライン66へ作動油を吐出することができる。これによって、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(Pp>Ps)にあるときの減速速度を増大させることができ、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(Ps>Pp)へ切り替わるのに要する時間を短縮することができる。
一方、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(Ps>Pp)にあるときに圧力ライン側切替弁73を開状態に切り替えた場合は、プーリ側切替弁64及び圧力ライン側切替弁71,73の状態が前述の前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替わる。この場合は、変速用ポンプ60によりプライマリプーリ油室30cからセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給するだけでなく、高圧ライン68からセカンダリプーリ油室32cへ作動油を供給することもできる。したがって、減速速度を増大させることができ、急減速制御時の応答性を向上させることができる。
以上の油圧制御装置40においては、高圧ライン68における作動油の圧力PLをプーリ側切替弁64を介してプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cへ供給する場合について説明した。ただし、本実施形態の油圧制御装置40においては、高圧ライン68における作動油の圧力PLをプーリ側切替弁64を介さずにプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cへ供給することもできる。
図19に示す油圧制御装置40においては、高圧ライン側切替弁70は、セカンダリプーリ油室32cを高圧ライン68と連通させるセカンダリ連通状態(図19の右側の状態)と、プライマリプーリ油室30cを高圧ライン68と連通させるプライマリ連通状態(図19の左側の状態)と、セカンダリプーリ油室32c及びプライマリプーリ油室30cと高圧ライン68との連通を遮断する閉状態(図19の中央の状態)と、に切り替わることが可能である。高圧ライン側切替弁70がセカンダリ連通状態にあるときは、高圧ライン68から絞り(オリフィス)77を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油が供給される。一方、高圧ライン側切替弁70がプライマリ連通状態にあるときは、高圧ライン68から絞り(オリフィス)79を介してプライマリプーリ油室30cへ作動油が供給される。また、高圧ライン側切替弁70が閉状態にあるときは、高圧ライン68からの作動油の圧力PLの供給が遮断される。ここでの高圧ライン側切替弁70は、切替弁制御部82から出力される制御信号によって切り替え可能な電磁切替弁で構成することができる。
また、プーリ側切替弁64は、プライマリプーリ油室30cを低圧ライン66と連通させるとともにセカンダリプーリ油室32cと低圧ライン66との連通を遮断するプライマリ低圧供給状態(図19の右側の状態)と、セカンダリプーリ油室32cを低圧ライン66と連通させるとともにプライマリプーリ油室30cと低圧ライン66との連通を遮断するセカンダリ低圧供給状態(図19の左側の状態)と、に切り替わることが可能である。ここでのプーリ側切替弁64の状態が切り替わる条件については、図1のプーリ側切替弁64と同様である。そして、油圧制御装置40の他の構成については、図1に示す構成と同様である。
切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70を閉状態(図19の中央の状態)に切り替えることで、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30c及びセカンダリプーリ油室32cへの作動油の圧力の供給を遮断するとともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30cまたはセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給する高圧遮断状態に切り替えることができる。一方、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(図19の右側の状態)にあるときに切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70をセカンダリ連通状態(図19の右側の状態)に切り替えることで、高圧ライン68からセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給するとともに低圧ライン66からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力を供給するセカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。そして、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(図19の左側の状態)にあるときに切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70をプライマリ連通状態(図19の左側の状態)に切り替えることで、高圧ライン68からプライマリプーリ油室30cへ作動油の圧力を供給するとともに低圧ライン66からセカンダリプーリ油室32cへ作動油の圧力を供給するプライマリ高圧供給状態に切り替えることができる。
油圧制御装置40が図19に示す構成である場合は、切替弁制御部82は、図6のフローチャートに示す処理のS5において、高圧ライン側切替弁70をセカンダリ連通状態(図19の右側の状態)に切り替えることで、前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替える。これによって、S6で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。そして、切替弁制御部82は、図7のフローチャートに示す処理のS104において、高圧ライン側切替弁70をセカンダリ連通状態に切り替えることで、前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替える。これによって、変速用ポンプ60による減速制御をアシストすることができ、急減速制御時の応答性を向上させることができる。
また、切替弁制御部82は、図8のフローチャートに示す処理のS204において、高圧ライン側切替弁70をプライマリ連通状態(図19の左側の状態)に切り替えることで、前述のプライマリ高圧供給状態に切り替える。これによって、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生しても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。そして、切替弁制御部82は、図10のフローチャートに示す処理のS304において、高圧ライン側切替弁70をプライマリ連通状態に切り替えることで、前述のプライマリ高圧供給状態に切り替える。これによって、S305で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。
また、図20に示す油圧制御装置40においては、高圧ライン側切替弁70は、電磁切替弁で構成され、セカンダリプーリ油室32cを高圧ライン68と連通させる開状態(図20の左側の状態)と、セカンダリプーリ油室32c及びプライマリプーリ油室30cと高圧ライン68との連通を遮断する閉状態(図20の右側の状態)と、に切り替わることが可能である。高圧ライン側切替弁70が開状態にあるときは、高圧ライン68から絞り(オリフィス)77を介してセカンダリプーリ油室32cへ作動油が供給される。一方、高圧ライン側切替弁70が閉状態にあるときは、高圧ライン68からの作動油の圧力PLの供給が遮断される。なお、油圧制御装置40の他の構成については、図19に示す構成と同様である。
切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70を閉状態(図20の右側の状態)に切り替えることで、前述の高圧遮断状態に切り替えることができる。一方、プーリ側切替弁64がプライマリ低圧供給状態(図20の右側の状態)にあるときに切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70を開状態(図20の左側の状態)に切り替えることで、前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。
油圧制御装置40が図20に示す構成である場合は、切替弁制御部82は、図6のフローチャートに示す処理のS5において、高圧ライン側切替弁70を開状態(図20の左側の状態)に切り替えることで、前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替える。これによって、S6で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。そして、切替弁制御部82は、図7のフローチャートに示す処理のS104において、高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替えることで、前述のセカンダリ高圧供給状態に切り替える。これによって、変速用ポンプ60による減速制御をアシストすることができ、急減速制御時の応答性を向上させることができる。
また、図21に示す油圧制御装置40においては、高圧ライン側切替弁70は、電磁切替弁で構成され、プライマリプーリ油室30cを高圧ライン68と連通させる開状態(図21の左側の状態)と、セカンダリプーリ油室32c及びプライマリプーリ油室30cと高圧ライン68との連通を遮断する閉状態(図21の右側の状態)と、に切り替わることが可能である。高圧ライン側切替弁70が開状態にあるときは、高圧ライン68から絞り(オリフィス)77を介してプライマリプーリ油室30cへ作動油が供給される。一方、高圧ライン側切替弁70が閉状態にあるときは、高圧ライン68からの作動油の圧力PLの供給が遮断される。なお、油圧制御装置40の他の構成については、図19に示す構成と同様である。
切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70を閉状態(図21の右側の状態)に切り替えることで、前述の高圧遮断状態に切り替えることができる。一方、プーリ側切替弁64がセカンダリ低圧供給状態(図21の左側の状態)にあるときに切替弁制御部82により高圧ライン側切替弁70を開状態(図21の左側の状態)に切り替えることで、前述のプライマリ高圧供給状態に切り替えることができる。
油圧制御装置40が図21に示す構成である場合は、切替弁制御部82は、図8のフローチャートに示す処理のS204において、高圧ライン側切替弁70を開状態(図21の左側の状態)に切り替えることで、前述のプライマリ高圧供給状態に切り替える。これによって、変速用ポンプ60または変速用モータ62に異常が発生しても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。そして、切替弁制御部82は、図10のフローチャートに示す処理のS304において、高圧ライン側切替弁70を開状態に切り替えることで、前述のプライマリ高圧供給状態に切り替える。これによって、S305で変速用モータ62の発生トルクを0にしても、高圧ライン68の圧力PL及び低圧ライン66の圧力Pdを制御することで、変速比Gの制御を行うことができる。
また、以上の油圧制御装置40においては、プーリ側切替弁64をパイロット圧切替弁で構成した場合について説明した。ただし、本実施形態の油圧制御装置40においては、プーリ側切替弁64を切替弁制御部82から出力される制御信号によって切り替え可能な電磁切替弁で構成することもできる。その場合に、切替弁制御部82は、Ps>Ppのときは、プーリ側切替弁64を前述のプライマリ低圧供給状態に切り替える。一方、切替弁制御部82は、Pp≧Psのときは、プーリ側切替弁64を前述のセカンダリ低圧供給状態に切り替える。
以下、プーリ側切替弁64を電磁切替弁で構成した場合に、電子制御装置42により実行される処理について説明する。ただし、以下の説明では、プーリ側切替弁64をパイロット圧切替弁で構成した場合の処理と異なる点について説明し、説明を省略する処理についてはプーリ側切替弁64をパイロット圧切替弁で構成した場合と同様である。
図6のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S1の判定結果がYESの場合に、S3の判定を省略してS5に進み、切替弁制御部82によりプーリ側切替弁64をプライマリ低圧供給状態に切り替えるとともに高圧ライン側切替弁70を開状態(圧力ライン側切替弁71を高圧連通状態)に切り替える。これによって、セカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。そして、図7のフローチャートに示す処理が実行されるときは、S101の判定結果がYESの場合に、S103の判定を省略してS104に進み、切替弁制御部82によりプーリ側切替弁64をプライマリ低圧供給状態に切り替えるとともに高圧ライン側切替弁70を開状態(圧力ライン側切替弁71を高圧連通状態)に切り替える。これによって、セカンダリ高圧供給状態に切り替えることができる。
なお、以上の本実施形態の説明においては、変速制御の目標値として目標変速比Grを設定した場合について説明した。ただし、本実施形態においては、目標変速比Grの代わりにプライマリプーリ30の目標回転速度Nprを用いてもよい。その場合の本実施形態の動作としては、以上の説明において、目標変速比Grをプライマリプーリ30の目標回転速度Nprに置き換え、変速比の偏差ΔGをプライマリプーリ30の目標回転速度Nprと検出したプライマリプーリ30の回転速度Npとの偏差ΔNpに置き換えた場合の動作を考えればよい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
10 エンジン、14 ベルト式無段変速機、30 プライマリプーリ、32 セカンダリプーリ、34 無端ベルト、40 油圧制御装置、42 電子制御装置、54 油圧供給用ポンプ、56 高圧ライン用レギュレータ、58 低圧ライン用レギュレータ、60 変速用ポンプ、62 変速用モータ、64 プーリ側切替弁、66 低圧ライン、68 高圧ライン、70 高圧ライン側切替弁、71,73 圧力ライン側切替弁、72 逆止弁、81 圧力ライン制御部、82 切替弁制御部、83 変速制御部、88 プーリ側切替弁判定部、89 低車速状態判定部、90 急減速制御判定部、91 異常判定部、92 定常制御判定部。