図1は、本発明が適用されたエンジン10と自動変速機12とが備えられた車両用のエンジン始動機能を備えた自動変速機の油圧装置(以下、エンジン始動/作動油供給兼用装置)14の構成を説明する概略図である。
例えば、自動変速機12は複数の遊星歯車装置を共通の軸心上に有し、トルクコンバータ16を介してエンジン10によって回転駆動される入力軸(すなわちトルクコンバータ16のタービン軸)の回転を変速して出力軸18から出力する。出力軸18は差動歯車装置(終減速機)20や一対の車軸22等を順次介して左右の駆動輪24を回転駆動する(図2参照)。各遊星歯車装置はサンギヤ、ピニオンギヤ、そのピニオンギヤを自転および公転可能に支持するキャリヤ、ピニオンギヤを介してサンギヤと噛み合うリングギヤを備え、それらの一部が互いに連結されることによって複数の回転要素が構成される。これらの各回転要素は、クラッチCやブレーキBを介して自動変速機12の入力軸やケース或いは相互に選択的に連結されたり、出力軸18に連結されている。
そして、予め定められたクラッチCやブレーキBの係合作動の組合せに従って、自動変速機12の各変速段が成立させられる。また、クラッチCやブレーキBは、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置(以下、係合装置という)である。この油圧アクチュエータは、変速用油圧制御回路26に含まれる例えば電磁弁や切換弁等から供給される制御油圧によってその作動が制御される。
エンジン始動/作動油供給兼用装置10は、油圧ポンプモータ30と所定の作動油圧源としての電動オイルポンプ32とポンプ/モータ切換弁34と逆止弁36と調整弁38と連通/遮断切換弁40とを備え、エンジン10を始動すると共に、自動変速機12へ作動油を供給するすなわち自動変速機12の変速の為に電磁弁や切換弁等から油圧アクチュエータへ供給される制御油圧の元圧となる作動油圧を変速用油圧制御回路26に供給したり或いはまた潤滑用の油圧を供給する。
例えば、油圧ポンプモータ30は、トルクコンバータ16と自動変速機12との間に配置されてエンジン8と作動的に連結されており、吸入口42へ作動油が供給されて回転駆動されることによりエンジン10を始動する油圧モータとして機能すると共に、エンジン8により直接的に回転駆動されることにより吐出口44から作動油を吐出して自動変速機12へ作動油を供給する油圧ポンプとして機能する。
また、電動オイルポンプ32は、電動モータ46とその電動モータ46に作動的に連結されるオイルポンプ48とを備え、そのオイルポンプ48を電動モータ46により回転駆動することにより還流油貯留槽としてのオイルパン50内の作動油を吸い上げて吐出口52から吐出し、油圧ポンプモータ30や自動変速機12へ作動油を吐出する。
また、ポンプ/モータ切換弁34は、そのポンプ/モータ切換弁34に備えられた図示しないスプール弁子B34の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子B34を電動オイルポンプ32から油圧ポンプモータ30へ作動油が供給され得るモータ(破線)側位置へ向かう推力F54を付与するスプリング54と、そのスプール弁子B34の他方の軸端側に設けられスプール弁子B34を油圧ポンプモータ30から自動変速機12へ作動油が供給され得るポンプ(実線)側位置へ向かう推力F56を付与するソレノイド弁56とを備えている。
このように構成されたポンプ/モータ切換弁34において、ソレノイド弁56による推力F56が付与されずスプリング54の推力F54によってスプール弁子B34がモータ側位置へ付勢されると、電動オイルポンプ32から吐出された作動油が、入出力ポート58へ入力されて出力ポート60から油圧ポンプモータ30へ供給され、更に油圧ポンプモータ30から入力ポート62へ入力されて排出ポート64を経てオイルパン50へ還流される第1油路としての第1切換状態が構成される。また、スプール弁子B34をポンプ側位置へ付勢する為の予め定められた推力F56が付与されてスプール弁子B34がポンプ側位置へ付勢されると、オイルパン50内の作動油が、入力ポート66に入力されて出力ポート60から油圧ポンプモータ30に吸い上げられ、更に油圧ポンプモータ30から入力ポート62へ入力されて入出力ポート58を経て自動変速機12へ作動油を供給するための供給油路68へ供給される第2油路としての第2切換状態が構成される。
このように、ポンプ/モータ切換弁34は、油圧ポンプモータ30の吸入口42を電動オイルポンプ32に接続する第1切換状態とその吸入口42をオイルパン50に接続する第2切換状態とを切り換えると共に、第1切換状態において油圧ポンプモータ30の吐出口44をオイルパン50に接続し、第2切換状態においてその吐出口44を供給油路68に接続する第2切換状態とを切り換える。言い換えれば、ポンプ/モータ切換弁34は、電動オイルポンプ32から油圧ポンプモータ30へ作動油が供給される第1切換状態と油圧ポンプモータ30から自動変速機12へ作動油が供給される第2切換状態とを切り換える。第1切換状態への切換えによって電動オイルポンプ32により油圧ポンプモータ30へ作動油が供給され得、油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられ得てエンジン始動が可能になる。また、第2切換状態への切換えによってオイルパン50から油圧ポンプモータ30へ作動油が汲み上げられ得、油圧ポンプモータ30が油圧ポンプとして機能させられ得て自動変速機12へ作動油が供給され得る。また、第1切換状態へ切り換えられて油圧ポンプモータ30によりエンジン10が始動されるときには、油圧ポンプモータ30の吐出口44からの作動油がオイルパン50へ排出されるので、その作動油が自動変速機12へ供給されることに比べて負荷が軽くなってエンジン始動がより速やかに行われる。
ところで、電動オイルポンプ32から供給された作動油は入出力ポート58へ入力されるように、また油圧ポンプモータ30から供給された作動油はその入出力ポート58を経て自動変速機12へ供給されるように油路が構成されている。言い換えれば、電動オイルポンプ32は、油圧ポンプモータ30から自動変速機12へ作動油が供給される供給油路68に接続されている。そうすると、電動オイルポンプ32により自動変速機12へ作動油が供給され得るものの、油圧ポンプモータ30から吐出された作動油が供給油路68を介して電動オイルポンプ32へ流入して、すなわち供給油路68内の作動油が電動オイルポンプ32へ流入して、油圧ポンプモータ30から自動変速機12へ供給される作動油圧の圧低すなわち供給油路68内の油圧の圧低が発生する可能性がある。そこで、供給油路68内の作動油が電動オイルポンプ32へ流入するのを防止する逆止弁36を介して電動オイルポンプ32が供給油路68に接続されるようにその逆止弁36が設けられている。
また、調整弁38は、その調整弁38に備えられた図示しないスプール弁子B38の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子B38を油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から自動変速機12へ作動油が供給され得る連通(実線)側位置へ向かう推力F70を付与するスプリング70と、そのスプール弁子B38の他方の軸端側に設けられスプール弁子B38を油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給された作動油がオイルパン50へ排出され得るリリーフ(破線)側位置へ付勢するために油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給された作動油圧を受け入れる油室72とを備えている。また、スプリング70の推力F70は、予め定められた所定油圧P’を超える作動油圧が油室72へ供給されるとスプール弁子B38がリリーフ側位置へ付勢されて作動油がオイルパン50へ排出されるように予め設定されている。
このように構成された調整弁38において、スプリング70の推力F70によってスプール弁子B38が連通側位置へ付勢されると、油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給された作動油が入力ポート74へ入力されて供給ポート76を経て自動変速機12へ供給される。そして、油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給された作動油圧が所定油圧P’を超えるとスプール弁子B38がリリーフ側位置へ付勢され、入力ポート74へ入力された油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給された作動油が排出ポート78を経てオイルパン50へ排出される。
このように、調整弁38は、供給油路68に設けられてこの供給油路68内の油圧を、すなわち自動変速機12へ供給される作動油圧を所定油圧P’に調整(調圧)する。これによって、自動変速機12へ適切な作動油圧が供給される、すなわち自動変速機12の変速の為に電磁弁や切換弁等から油圧アクチュエータへ供給される制御油圧の元圧が変速用油圧制御回路26へ適切に供給される。
ところで、電動オイルポンプ32により油圧ポンプモータ30へ作動油が供給されるときに、電動オイルポンプ32の発生油圧が調整弁38により調整されて油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させる為のその発生油圧による動力が小さくされる可能性がある。そうすると、電動モータ46の出力やオイルポンプ48のポンプ吐出量を大きくする必要があり、電動オイルポンプ32を大型化する必要がある。そこで、電動オイルポンプ32により油圧ポンプモータ30へ作動油が供給されるときに、電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路が遮断され得る為に、その油路を断接可能な連通/遮断切換弁40が調整弁38の入力側に設けられているのである。
例えば、連通/遮断切換弁40は、その連通/遮断切換弁40に備えられた図示しないスプール弁子B40の一方の軸端側に設けられそのスプール弁子B40を油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から調整弁38への作動油の供給が遮断される遮断(破線)側位置へ向かう推力F80を付与するスプリング80と、そのスプール弁子B40の他方の軸端側に設けられスプール弁子B40を油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給され得る連通(実線)側位置へ向かう推力F82を付与するソレノイド弁82とを備えている。
このように構成された連通/遮断切換弁40において、ソレノイド弁82による推力F82が付与されずスプリング80の推力F80によってスプール弁子B40が遮断側位置へ付勢されると、油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給されて入力ポート84へ入力された作動油の油路は連通/遮断切換弁40内にて遮断される。また、スプール弁子B40を連通側位置へ付勢する為の予め定められた推力F82が付与されてスプール弁子B40が連通側位置へ付勢されると、油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から供給された作動油が入力ポート84へ入力され出力ポート86を経て調整弁38へ供給される。
このように、連通/遮断切換弁40は、調整弁38の入力側に設けられてその調整弁38へ向かう作動油の供給を断接可能なもの、例えば電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路を断接可能なものである。これによって、電動オイルポンプ32により油圧ポンプモータ30へ作動油が供給されるときに、電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路が遮断され得る。
図2は、図1のエンジン始動/作動油供給兼用装置14などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。電子制御装置88は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン10の出力制御や自動変速機12の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用等に分けて構成される。この図2には、電子制御装置88の制御機能のうちエンジン10の始動や自動変速機12の変速用の作動油供給等に関する制御作動を説明する機能ブロック線図が示されている。
図3は、車両状態に応じた油圧ポンプモータ30および電動オイルポンプ32のそれぞれの作動状態をまとめた図表である。
図3において、エンジン始動時に対応するモード1では、電動オイルポンプ32が作動させられ、その電動オイルポンプ32により汲み上げられた(すなわち供給された)作動油で油圧ポンプモータ30が回転駆動させられて油圧モータとして機能させられ、エンジン10が始動させられる。
また、エンジン作動中或いは車両走行中に対応するモード2では、エンジン10により油圧ポンプモータ30が回転駆動させられて油圧ポンプとして機能させられ、作動油が自動変速機12へ供給される。このとき、作動油の必要流量に応じて、言い換えれば油圧ポンプモータ30による自動変速機12への作動油の流量では不足する流量に応じて、電動オイルポンプ32が作動乃至非作動させられ、作動油が自動変速機12へ供給される。
また、車両停止中に対応するモード3では、電動オイルポンプ32が非作動とされ、エンジン10の始動に備えて油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられ得る状態とさせられる。
図2に戻り、アクセルペダルの操作量Accを検出するためのアクセル操作量センサ90、エンジンの回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ92、電子スロットル弁の開度θTHを検出するためのスロットル弁開度センサ94、車速Vを検出するための車速センサ96、エンジン10を始動する為の操作指令SONを検出するためのスタートスイッチ98などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどからアクセル操作量Acc、エンジン回転速度NE、スロットル弁開度θTH、車速V、操作指令SONなどを表す信号が電子制御装置88に供給されるようになっている。
電子制御装置88において、変速制御手段100は、例えば車速Vおよびアクセル操作量Accをパラメータとして車速Vが高くなったりアクセル操作量Accが小さくなったりするに従って変速比が小さい高速側の変速段が成立させられる為の予め記憶された図示しない関係(マップ、変速線図)から実際の車速Vおよびアクセル操作量Accに基づいて変速判断を行い、その判断した変速段が得られる為の変速出力を変速用油圧制御回路26に対して行うことにより、自動変速機12の変速段を自動的に切り換える変速制御を行う。
また、エンジン始動判定手段102は、車両停止中にすなわちエンジン10が非作動であって車速Vが零と判定されるときに、エンジン10を始動する為の信号である操作指令SONが検出されたか否かを判定する。また、このエンジン始動判定手段102は、スロットル弁開度θTHや車速Vが零と判定されるか否かに基づいて車両停止中であるか否かを判定する車両停止中判定手段としての機能も有している。つまり、エンジン始動判定手段102は、エンジン10が非作動であって車速Vが零と判定されるときには車両停止中であると判定する。また、エンジン始動判定手段102は、エンジン10が非作動であっても車速Vが零でないと判定されるときには、或いは車速Vが零であると判定されるときであってもエンジン10が作動中であるときには車両停止中でないと判定する。
また、油圧ポンプモータ切換制御手段104は、ポンプ/モータ切換弁34と連通/遮断切換弁40との各々の弁切換えにおいて、油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させる為の制御様式としての油圧モータモードに切り換える油圧モータモード切換制御手段106と、油圧ポンプモータ30を油圧ポンプとして機能させる為の制御様式としての油圧ポンプモードに切り換える油圧ポンプモード切換制御手段108とを備え、前記エンジン始動判定手段102により操作指令SONが検出されたと判定されたエンジン10の始動時(図3のモード1に対応)或いはエンジン始動判定手段102により車両停止中(図3のモード3に対応)であると判定されたときには油圧モータモード切換制御手段106により油圧モータモードに切り換えて油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させられる状態とし、エンジン始動判定手段102により車両停止中でない(図3のモード2に対応)と判定されたときには油圧ポンプモード切換制御手段108により油圧ポンプモードに切り換えて油圧ポンプモータ30を油圧ポンプとして機能させられる状態とする。
油圧モータモード切換制御手段106は、油圧モータモードに切り換える為に、ソレノイド弁56に対して推力F56を発生させる指令を出力せずポンプ/モータ切換弁34の状態をモータ側位置とすることにより前記第1切換状態に切り換えさせると共に、ソレノイド弁82に対して推力F82を発生させる指令を出力せず連通/遮断切換弁40の状態を遮断側位置とすることにより電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路を遮断させる。
油圧ポンプモード切換制御手段108は、油圧ポンプモードに切り換える為に、ソレノイド弁56に対して推力F56を発生させる指令を出力してポンプ/モータ切換弁34の状態をポンプ側位置とすることにより前記第2切換状態に切り換えさせると共に、ソレノイド弁82に対して推力F82を発生させる指令を出力して連通/遮断切換弁40の状態を連通側位置とすることにより油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路を連通させる。
また、電動オイルポンプ制御手段110は、電動オイルポンプ32を作動して電動オイルポンプ32により作動油を吐出させる。
具体的には、前記エンジン始動判定手段102により操作指令SONが検出されたと判定されたエンジン10の始動時(図3のモード1に対応)には、電動オイルポンプ制御手段110は、油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させる為に、電動オイルポンプ32を作動させる。そして、油圧モータモード切換制御手段106により切り換えられた前記第1切換状態において作動油が油圧ポンプモータ30へ供給される。
但し、前記エンジン始動判定手段102により車両停止中(図3のモード3に対応)であると判定されたときは、電動オイルポンプ制御手段110は、電動オイルポンプ32を作動させない、すなわち電動オイルポンプ32を非作動とさせる。
また、前記エンジン始動判定手段102により車両停止中でない(図3のモード2に対応)と判定されたときには、電動オイルポンプ制御手段110は、自動変速機12へ作動油が供給される為に、前記第2切換状態において、電動オイルポンプ32を作動させる。例えば、電動オイルポンプ制御手段110は、油圧ポンプモータ30による自動変速機への作動油の流量では不足する流量を充足する為に、その不足する流量に応じてすなわち自動変速機12への作動油の必要流量に応じて電動オイルポンプ32を作動させる。
例えば、油圧ポンプモータ30はエンジン10により回転駆動されて作動油を吐出することから、油圧ポンプモータ30による自動変速機12への作動油の流量はエンジン回転速度NEが高い程多くさせられる。そこで、電動オイルポンプ制御手段110は、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE’以上であるときには、電動オイルポンプ32を非作動とさせる。反対に、電動オイルポンプ制御手段110は、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE’未満のときの前記変速制御手段100による自動変速機12の変速中には、電動オイルポンプ32を作動させる。この所定回転速度NE’は、自動変速機12の変速時に自動変速機12へ供給される作動油の流量がすなわち変速用油圧制御回路26へ供給される作動油の流量が充足される為の予め実験的に求められて設定されたエンジン回転速度NEの判定値である。
また、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE’未満であるか所定回転速度NE’以上であるかによって電動オイルポンプ32の作動と非作動とを切り換えることに換えて、電動オイルポンプ制御手段110は、エンジン回転速度NEに応じて電動オイルポンプ32からの吐出量を変化させるように電動オイルポンプ32を作動させても良い。
例えば、必要オイル流量算出手段112は、エンジン回転速度NEが低くなるに従って電動オイルポンプ32から自動変速機12へ供給する作動油の必要流量Rが多くなるように予め実験的に求めて設定されたエンジン回転速度NEと必要流量Rとの図示しない関係(マップ)から実際のエンジン回転速度NEに基づいて電動オイルポンプ32から自動変速機12へ供給する作動油の必要流量Rを算出する。
そして、電動オイルポンプ制御手段110は、前記必要オイル流量算出手段112により算出された電動オイルポンプ32から自動変速機12へ供給する作動油の必要流量Rが得られるように電動オイルポンプ32を作動させる。
図4は、電子制御装置88の制御作動の要部すなわちエンジン10の始動や自動変速機12の変速用の作動油供給に関する制御作動を説明するフローチャートであって、所定の周期で繰り返し実行される。
図4において、前記エンジン始動判定手段102に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、スロットル弁開度θTHや車速Vが零と判定されるか否かに基づいて車両停止中であるか否かが判定される。
上記S1の判断が肯定される場合は同じくエンジン始動判定手段102に対応するS2において、エンジン10を始動する為の信号である操作指令SONが検出されたか否かが判定される。
上記S2の判断が肯定される場合は前記油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧モータモード切換制御手段106)に対応するS3において、ソレノイド弁56に対して推力F56を発生させる指令が出力されずポンプ/モータ切換弁34の状態がモータ側位置とされることにより前記第1切換状態に切り換えられる油圧モータモードに切り換えられる。
次いで、同じく油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧モータモード切換制御手段106)に対応するS4において、ソレノイド弁82に対して推力F82を発生させる指令が出力されず連通/遮断切換弁40の状態が遮断側位置とされることにより電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路が遮断される。
次いで、前記電動オイルポンプ制御手段110に対応するS5において、電動オイルポンプ32が作動させられ、上記S3、S4にて切り換えられた前記第1切換状態において作動油が油圧ポンプモータ30へ供給される。
このS3乃至S5の作動は図3のモード1に対応するものであり、S3乃至S5が実行されることにより油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられてエンジン10が始動させられる。
前記S2の判断が否定される場合は前記油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧モータモード切換制御手段106)に対応するS6において、ソレノイド弁56に対して推力F56を発生させる指令が出力されずポンプ/モータ切換弁34の状態がモータ側位置とされることにより前記第1切換状態に切り換えられる油圧モータモードに切り換えられる。
次いで、前記電動オイルポンプ制御手段110に対応するS7において、電動オイルポンプ32が非作動とされる。
このS6、S7の作動は図3のモード3に対応するものである。
前記S1の判断が否定される場合は前記油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧ポンプモード切換制御手段108)に対応するS8において、ソレノイド弁56に対して推力F56を発生させる指令が出力されてポンプ/モータ切換弁34の状態がポンプ側位置とされることにより前記第2切換状態に切り換えられる油圧ポンプモードに切り換えられる。
次いで、同じく油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧ポンプモード切換制御手段108)に対応するS9において、ソレノイド弁82に対して推力F82を発生させる指令が出力されて連通/遮断切換弁40の状態が連通側位置とされることにより油圧ポンプモータ30や電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路が連通される。
次いで、前記必要オイル流量算出手段112に対応するS10において、予め実験的に求めて設定されたエンジン回転速度NEと電動オイルポンプ32から自動変速機12へ供給する作動油の必要流量Rとの図示しない関係(マップ)から実際のエンジン回転速度NEに基づいて電動オイルポンプ32から自動変速機12へ供給する作動油の必要流量Rが算出される。
次いで、前記電動オイルポンプ制御手段110に対応するS11において、上記S10にて算出された必要流量Rが得られるように電動オイルポンプ32が作動させられる。
このS8乃至S11の作動は図3のモード2に対応するものであり、S8乃至S11が実行されることにより油圧ポンプモータ30が油圧ポンプとして機能させられて自動変速機12へ作動油が供給されると共に、必要流量Rに応じて電動オイルポンプ32が作動させられる。
上述のように、本実施例によれば、ポンプ/モータ切換弁34により油圧ポンプモータ30の吸入口42を電動オイルポンプ32に接続する前記第1切換状態とその吸入口42をオイルパン50に接続する前記第2切換状態とが切り換えられるので、前記第1切換状態への切換えによって電動オイルポンプ32により油圧ポンプモータ30へ作動油が供給され得、油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられ得てエンジン始動が可能になる。また、前記第2切換状態への切換えによってオイルパン50から油圧ポンプモータ30へ作動油が汲み上げられ得、油圧ポンプモータ30が油圧ポンプとして機能させられ得て自動変速機12へ作動油が供給され得る。よって、エンジン10を始動する為に用いられるスタータモータを廃止し、電動オイルポンプ32とポンプ/モータ切換弁34とに変更するだけでよいので、低コスト化や小型化が実現される。
また、本実施例によれば、ポンプ/モータ切換弁34により前記第1切換状態において油圧ポンプモータ30の吐出口44がオイルパン50に接続され、前記第2切換状態においてその吐出口44が供給油路68に接続されるので、前記第1切換状態へ切り換えられて油圧ポンプモータ30によりエンジン10が始動されるときには、油圧ポンプモータ30の吐出口44からの作動油がオイルパン50へ排出されるので、自動変速機12へ作動油が供給されることに比べて負荷が軽くなってエンジン始動がより速やかに行われる。また、第2切換状態へ切り換えられて油圧ポンプモータ30により作動油が吐出されるときには、自動変速機12へ作動油が供給される。
また、本実施例によれば、電動オイルポンプ32は、供給油路68に、その供給油路68内の作動油が電動オイルポンプ32へ流入するのを防ぐ逆止弁36を介して接続されるので、電動オイルポンプ32から自動変速機12へ作動油が供給され得る。よって、油圧ポンプモータ30により自動変速機12へ供給すべき作動油が少なくされ得て、油圧ポンプモータ30自体の小型化が可能となる。また、油圧ポンプモータ30から吐出された作動油が供給油路68を介して電動オイルポンプ32へ流入するのが防止されることから、供給油路68内の油圧の圧低が防止される。
また、本実施例によれば、供給油路68に設けられてその供給油路68内の油圧を所定油圧P’に調整する調整弁が備えられるので、自動変速機12へ適切な作動油圧が供給される。
また、本実施例によれば、調整弁38の入力側に設けられてその調整弁38へ向かう作動油の供給を断接可能な連通/遮断切換弁が備えられるので、電動オイルポンプ32から油圧ポンプモータ30へ作動油が供給されるときに、連通/遮断切換弁40により調整弁38へ向かう作動油の供給が遮断され得る。よって、電動オイルポンプ32の発生油圧が調整弁38により調整されて油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させる為のその発生油圧による動力が小さくされることが防止される。また、その発生油圧による動力が小さくされることが防止されることによって、電動オイルポンプ32の電動モータ46の出力やオイルポンプ48のポンプ吐出量が小さくされ得て電動オイルポンプ32自体の小型化が可能となる。
また、本実施例によれば、エンジン10の始動時にポンプ/モータ切換弁34により前記第1切換状態に切り換えさせて油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させると共に、エンジン10の作動時にポンプ/モータ切換弁34により前記第2切換状態に切り換えさせて油圧ポンプモータ30を油圧ポンプとして機能させる電子制御装置88が備えられるので、エンジン10の始動時には、前記第1切換状態へ切り換えられることによって電動オイルポンプ32により油圧ポンプモータ30へ作動油が供給され、油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられてエンジン10が始動させられる。また、エンジン10の作動時には、前記第2切換状態へ切り換えられることによってオイルパン50から油圧ポンプモータ30へ作動油が汲み上げられ、油圧ポンプモータ30が油圧ポンプとして機能させられて自動変速機12へ作動油が供給される。
また、本実施例によれば、電子制御装置88は、エンジン10の作動時にポンプ/モータ切換弁34により前記第2切換状態に切り換えさせたとき、自動変速機12への作動油の必要流量Rに応じて電動オイルポンプ32からも作動油を吐出させるので、油圧ポンプモータ30から吐出される自動変速機12への作動油では不足する流量が電動オイルポンプ32から吐出されて、自動変速機12へ適切な作動油圧が供給される。或いはまた、必要以上に電動オイルポンプ32を作動させる必要がないので、燃費が向上したり、電動オイルポンプ32自体の小型化が可能となる。或いはまた、電動オイルポンプ32により自動変速機12へ作動油が供給され得て、油圧ポンプモータ30により自動変速機12へ供給すべき作動油が少なくされ得る。よって、油圧ポンプモータ30自体の小型化が可能となる。
また、本実施例によれば、電子制御装置88は、車両停止中はポンプ/モータ切換弁34により前記第1切換状態に切り換えさせるので、電動オイルポンプ32から作動油が吐出されれば油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられ得て、速やかにエンジン10が始動させられ得る。
また、本実施例によれば、エンジン10の始動時は、ポンプ/モータ切換弁34により前記第1切換状態に切り換えさせると共に連通/遮断切換弁40により電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路を遮断させる油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧モータモード切換制御手段106)と、電動オイルポンプ32により作動油を吐出させる電動オイルポンプ制御手段110とが電子制御装置88に備えられているので、エンジン10の始動時には、前記第1切換状態へ切り換えられることによって電動オイルポンプ32により吐出された作動油が油圧ポンプモータ30へ供給され、油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられてエンジン10が始動させられる。また、このエンジン始動時には、電動オイルポンプ32の発生油圧が調整弁38により調整されて油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させる為のその発生油圧による動力が小さくされることが防止される。また、その発生油圧による動力が小さくされることが防止されることによって、電動オイルポンプ32の電動モータ46の出力やオイルポンプ48のポンプ吐出量が小さくされ得て電動オイルポンプ32自体の小型化が可能となる。
また、本実施例によれば、車両停止中でないとき(エンジン作動時)に、ポンプ/モータ切換弁34により前記第2切換状態に切り換えさせると共に連通/遮断切換弁40により電動オイルポンプ32から調整弁38へ作動油が供給される油路を連通させる油圧ポンプモータ切換制御手段104(油圧ポンプモード切換制御手段108)と、電動オイルポンプ32により作動油を吐出させる電動オイルポンプ制御手段110とが電子制御装置88に備えられているので、エンジン10の作動時には、前記第2切換状態へ切り換えられることによってオイルパン50から油圧ポンプモータ30へ作動油が汲み上げられ、油圧ポンプモータ30が油圧ポンプとして機能させられて自動変速機12へ作動油が供給される。また、このエンジン作動時には、電動オイルポンプ32により吐出された作動油が自動変速機12へ供給されて、油圧ポンプモータ30により自動変速機12へ供給すべき作動油が少なくされ得る。よって、油圧ポンプモータ32自体の小型化が可能となる。
また、本実施例によれば、電動オイルポンプ制御手段110により自動変速機12への作動油の必要流量Rに応じて電動オイルポンプ32が作動させられるので、油圧ポンプモータ30から吐出される自動変速機12への作動油では不足する流量が電動オイルポンプ32から吐出されて、自動変速機12へ適切な作動油圧が供給される。また、必要以上に電動オイルポンプ32を作動させる必要がないので、燃費が向上したり、電動オイルポンプ32自体の小型化が可能となる。
また、本実施例によれば、電動オイルポンプ制御手段110によりエンジン回転速度NEが所定回転速度NE’未満のときの自動変速機12の変速中に、電動オイルポンプ32が作動させられるので、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE’未満の為にエンジン10により回転駆動される油圧ポンプモータ30から吐出される自動変速機12への作動油の流量が不足するときには、電動オイルポンプ32が作動させられて、自動変速機12へ適切な作動油圧が供給される。
また、本実施例によれば、電動オイルポンプ制御手段110によりエンジン回転速度NEが所定回転速度NE’以上であるときに、電動オイルポンプ32が非作動とされるので、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE’以上とされてエンジン10により回転駆動される油圧ポンプモータ30から吐出される自動変速機12への作動油の流量が充足するときには、電動オイルポンプ32が非作動とされて燃費が向上したり、電動オイルポンプ32自体の小型化が可能となる。
また、本実施例によれば、車両停止中に、ポンプ/モータ切換弁34により前記第1切換状態に切り換えさせる油圧ポンプモータ切換制御手段104が電子制御装置88に備えられているので、エンジン10を始動する為の信号である操作指令SONが検出されたときに電動オイルポンプ32から作動油が吐出されれば油圧ポンプモータ30が油圧モータとして機能させられ得て、速やかにエンジン10が始動させられ得る。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例において、逆止弁36や調整弁38や連通/遮断切換弁40は必ずしも備えられなくとも本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、ポンプ/モータ切換弁34は、スプリング54の推力F54やソレノイド弁56による推力F56によってスプール弁子B34の位置が移動させられたが、ソレノイド弁によってスプール弁子B34が直接的に移動させられる直動型であっても良い。また、連通/遮断切換弁40も同様に直動型であっても良い。
また、ポンプ/モータ切換弁34や調整弁38や連通/遮断切換弁40は、実施例以外に種々のものが好適に用いられても良い。
例えば、ポンプ/モータ切換弁34において、モータ側位置にあるときに出力ポート60と連通するポートと、ポンプ側位置にあるときに入力ポート62と連通するポートとは共通の入出力ポート58であったが、それぞれ別のポートと連通するように構成されても良い。この場合には、モータ側位置にあるときに出力ポート60と連通するポートに電動オイルポンプ32が接続される油路と、供給油路68に電動オイルポンプ32が接続される油路との2つの油路を備えることになる。また、このときには、逆止弁36や連通/遮断切換弁40は、電動オイルポンプ32が供給油路68に接続される油路に設けられればよい。
また、例えば、調整弁38において、スプリング70が付与する推力F70の方向と平行にリニアソレノイド弁の制御圧が付与されるように構成して、エンジントルク等に応じてそのリニアソレノイド弁の制御圧を変化させて調整弁38からの出力油圧をエンジントルク等に応じて変化させても良い。
また、前述の実施例では、所定の作動油圧源は、電動オイルポンプ32であったが、それに替えて、油圧ポンプモータ30へ作動油を供給してその油圧ポンプモータ30を油圧モータとして機能させられ得る例えばアキュムレータ等の油圧を発生させられ得る油圧源であっても良い。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。