以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
(電気光学装置における画像表示領域の構成)
図1ないし図4を参照して、本発明を適用した電気光学装置の画像表示領域における構成について、その動作とともに説明する。図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線層等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極などが形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群のうちの一部を示す平面図であり、図3、図4および図5はそれぞれ、図2のA−A′断面図、B−B′断面図およびC−C′断面図である。なお、図2、図3、図4および図5においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
図1において、本実施の形態による電気光学装置1の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aと、この画素電極9aを制御するためのTFT30とを備えており、画像信号が供給されるデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。TFT30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して電気光学物質に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する。)に形成された対向電極(後述する。)との間で一定期間保持される。本形態において、電気光学物質は液晶であり、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が画素毎に変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの電気光学物質部分を通過不可能になり、ノーマリーブラックモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの電気光学物質部分を通過可能となる。従って、電気光学装置1からは、画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。
ここで、保持された画像信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、各画素には、画素電極9aと対向電極との間に形成される電気光学物質容量(液晶容量)と並列に容量素子15を付加する。たとえば、画素電極9aの電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ容量素子15により保持される。これにより、保持特性は更に改善され、コントラスト比の高い電気光学装置1を実現できる。
(画素の構成)
図2および図3において、電気光学装置1のTFTアレイ基板2上には、その基体たる石英基板からなる透明基板20上に、複数の透明な画素電極9aがマトリクス状に形成されており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿って、アルミニウム膜からなるデータ線6aと、導電化した半導体膜からなる走査線3aおよび容量線3bとが形成されている。また、TFTアレイ基板2上には島状の半導体膜30aを利用して画素スイッチング用TFT30が形成されている。データ線6aは、ポリシリコン膜等からなる半導体膜30aのうち、画素スイッチング用TFT30のソース領域31aにコンタクトホール5を介して電気的接続され、画素電極9aは、半導体膜30aのうち、ドレイン領域32aにコンタクトホール8を介して電気的接続されている。また、半導体膜30aのうち、画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aに対向するように走査線3aが配置され、走査線3aは画素スイッチング用TFT30のゲート電極として機能する。
また、本形態において、容量素子15は容量線3bを利用して形成され、この容量線3bは、走査線3aに沿ってほぼ直線状に延びる直線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図2に対して上向き)に突出した突出部とを有している。
(TFTアレイ基板の構成)
本形態では、図2に示す太線L1で囲まれた領域には、TFTアレイ基板20の表面側で凹む凹部50が形成されている。この凹部50の構成については、後に図3、図4および図5を参照して詳述するとして、図3を参照して画素スイッチング用TFT30の構成を説明しておく。
図3において、TFTアレイ基板2には、図3に示すように、ITO膜(Indium Tin Oxide膜)などの透明導電性薄膜からなる画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。この画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、ゲート電極としての走査線3a、この走査線3aからの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域33a、走査線3aと半導体膜30aとを絶縁するゲート絶縁膜41、ソース電極としてのデータ線6a、半導体膜30aに形成された低濃度ソース領域31b並びに高濃度ソース領域31cからなるソース領域31a、半導体膜30aに形成された低濃度ドレイン領域32b並びに高濃度ドレイン領域32cからなるドレイン領域32aを備えている。高濃度ドレイン領域32cには、複数の画素電極9aのうちの対応する一つが接続されている。ソース領域31aおよびドレイン領域32aは、後述のように、半導体膜30aに対し、n型又はp型のチャネルを形成するかに応じて所定濃度のn型用又はp型用のドーパントをドープすることにより形成されている。本形態において、画素スイッチング用TFT30はnチャネル型のTFTであり、このnチャネル型のTFTは、動作速度が速いという利点があるので、画素のスイッチング素子として用いられることが多い。
本形態において、データ線6aは、Al等の低抵抗な金属膜や金属シリサイド等の合金膜などの遮光性の薄膜から構成されている。また、走査線3a、ゲート絶縁膜41の上には、高濃度ソース領域31cへ通じるコンタクトホール5、および高濃度ドレイン領域32cへ通じるコンタクトホール8が各々形成された層間絶縁膜14が形成されている。このソース領域31aへのコンタクトホール5を介して、データ線6aは高濃度ソース領域31cに電気的接続されている。さらに、データ線6aおよび層間絶縁膜14の上には、高濃度ドレイン領域32cへのコンタクトホール8が形成された層間絶縁膜17が形成されている。この高濃度ドレイン領域32cへのコンタクトホール8を介して、層間絶縁膜17の上層に形成された画素電極9aが高濃度ドレイン領域32cに電気的接続されている。なお、画素電極9aと高濃度ドレイン領域32cとは、データ線6aと同時形成されたAl膜などを中継して電気的接続するようにしてもよい。
画素スイッチング用TFT30は、好ましくは上述のようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域31bおよび低濃度ドレイン領域32bに相当する領域に対して不純物イオンの打ち込みを行わないオフセット構造を有していてもよいし、走査線3aをマスクとして高濃度の不純物イオンを半導体膜30aに打ち込んで走査線3aに対して自己整合的に高濃度ソースおよび高濃度ドレイン領域を形成したセルフアライン構造を有していてもよい。
また、本形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極(走査線3a)をソース−ドレイン間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。この際、各々のゲート電極には同一の信号が印加されるようにする。このようにデュアルゲート或いはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース−ドレイン領域接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。これらのゲート電極の少なくとも1個をLDD構造やオフセット構造にすれば、更にオフ電流を低減でき、安定したスイッチング素子を得ることができる。
このように構成したTFTアレイ基板2において、一般には、半導体膜30aのチャネル領域33a、低濃度ソース領域31bおよび低濃度ドレイン領域32bなどのポリシリコン層に強い光が入射すると、ポリシリコンが有する光電変換効果により光電流が発生してしまい画素スイッチング用TFT30のトランジスタ特性が劣化する。そこで、本形態では、走査線3aを上側から覆うように、アルミニウム膜などの遮光性を有する金属膜からなるデータ線6aが形成されているので、少なくともチャネル領域33a、低濃度ソース領域31bおよび低濃度ドレイン領域32bには対向基板7の方から強い光が入射することはない。
(容量素子の構成)
本形態では、画素電極9aに蓄積容量を付加する容量素子15を形成するにあたって、ゲート絶縁膜41を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜30aを延設して第1蓄積容量電極15aとし、更にこれらに対向するように容量線3bを形成してある。より詳細には、半導体膜30aの高濃度ドレイン領域32cが、データ線6aの下に延設されて、同じくデータ線6aおよび走査線3aに沿って伸びる容量線3bにゲート絶縁膜41を介して対向配置されて、第1蓄積容量電極15aとされている。ここで、容量素子15の誘電体としての絶縁膜は、高温酸化によりポリシリコン膜上に形成されるTFT30のゲート絶縁膜41に他ならないので、薄く、かつ、高耐圧の絶縁膜であるので、容量素子15は比較的小面積で大容量の静電容量を備えている。
このように、本形態では、データ線6a下の領域および走査線3aに沿って電気光学物質のディスクリネーションが発生しやすい領域に容量線3bを形成することにより、開口領域を外れたスペースを有効に利用して容量素子15を形成し、画素電極9aに蓄積容量を付加してある。このため、本形態の電気光学装置1は、小型でありながら、高精細で、かつ、明るい表示を行うことができるとともにお、コントラスト比も高い。
また、容量線3bと走査線3aとは、同一のポリシリコン膜からなる。また、容量素子15の誘電体膜と画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜41とは、同一の酸化膜あるいは窒化膜等の絶縁膜からなる。さらに、第1蓄積容量電極15aと、画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33a、ソース領域31a、ドレイン領域32aなどは、同一の半導体膜30aからなる。このため、容量素子15を形成するといってもTFTアレイ基板2上に形成される積層構造を単純化できる。また、本形態の電気光学装置1を製造するにあっては、TFT30を形成していく工程を援用して容量素子15を形成することができる。
このようにしてTFT30および容量素子15を形成したTFTアレイ基板2において、画素電極9aおよび層間絶縁膜17の表面には、配向膜18が形成されている。この配向膜18は、画素電極9および層間絶縁膜17の表面に形成したポリイミド膜などの有機薄膜透明導電性薄膜に対してラビング処理を行うことにより形成される。
(対向基板の構成)
このように構成したTFTアレイ基板2は、ガラス板や石英などの透明基板70を基体とする対向基板7と対向配置されている。この対向基板7には、各画素の開口領域(画像表示領域内において実際に入射光が透過して表示に有効に寄与する領域)以外の領域に、ブラックマスク或いはブラックマトリクスと称される第2遮光膜72が設けられている。このため、対向基板7の側から入射した光が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aなどに侵入することはない。さらに、第2遮光膜72は、コントラストの向上、色材の混色防止などの機能を有する。
また、対向基板7には、遮光膜72の上層側にITO膜(透明導電性薄膜)からなる透明な対向電極71が形成され、この対向電極71の上層側には配向膜73が形成されている。この配向膜73も、対向電極71の表面に形成したポリイミド膜などの有機薄膜に対してラビング処理を行うことにより形成される。
(基板の貼り合わせ構造)
このように構成した対向基板7とTFTアレイ基板2とは、画素電極9aと対向電極71とが対面するように対向配置された後、後述するスペーサ配合のシール材により囲まれた空間内に電気光学物質(液晶)が封入され、電気光学物質層11が形成される。電気光学物質層11は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜18、73により所定の配向状態をとる。電気光学物質層11は、たとえば一種又は数種類のネマティック電気光学物質を混合した電気光学物質からなる。
(TFTアレイ基板における平坦化構造)
このように構成した電気光学装置1において、TFTアレイ基板2には、図2に太線L1で囲んだ領域には、図3に示すように、TFTアレイ基板2の透明基板20の側において凹んだ凹部50が形成されている。このため、図2のB−B′断面およびC−C′断面はそれぞれ、図4および図5に示すように表される。
図3、図4および図5において、凹部50は、TFTアレイ基板2において多数の画素電極9aが形成されている画像表示領域において、画素スイッチングTFT30の形成領域、あるいは走査線3a、データ線6aおよび容量線3bなどの配線層の形成領域うち、配向膜18の表面に形成されがちな段差を相殺できる領域であれば、画素スイッチングTFT30あるいは配線層の一部のみと平面的に重なる領域に限定して形成される場合があるが、本形態では、図2から明らかなように、画素スイッチングTFT30や容量素子15を形成するための半導体膜30aが形成される領域、および走査線3a、データ線6aおよび容量線3bなどの配線層が形成される領域の全てと重なる領域に形成されている。
すなわち、本形態では、TFTアレイ基板2の基体である透明基板20の表面のうち、画素スイッチングTFT30や容量素子15を形成するための半導体膜30aが形成される領域、および走査線3a、データ線6aおよび容量線3bなどの配線層が形成される領域の全てと重なる領域に対して凹部50が形成されている。このため、透明基板20の表面のうち、各画素において半導体膜30aや配線層が形成されていない開口領域に相当する領域は、凹部50が形成されている領域からみて一段、高い領域となっている。
但し、この凹部50の内部には、半導体膜30a、ゲート絶縁膜41、走査線3a、容量線3b、層間絶縁膜14、17が形成され、これらの膜によって、凹部50は埋められている。しかも、半導体膜30a、ゲート絶縁膜41、走査線3a、容量線3bなどは、凹部50の内部だけに形成され、その分だけ、凹部50が形成されている領域における膜厚の総和は、開口領域における膜厚の総和に比較して大になっている。しかも、凹部50の深さは、半導体膜30aや各配線層が形成される領域における各膜厚の総和と、これらの半導体膜30aや配線層が形成されない領域における膜厚の総和との差に起因する段差を解消できるように、これらの膜厚の総和に基づいて最適な値に設定される。本形態において、凹部50の深さは、約0.1μmから約2.0μmまでの範囲に設定される。従って、TFTアレイ基板2において、その最も上層側(配向膜18の表面)には大きな段差がない。
また、本形態において、凹部50は、底部51から45°以上の角度で立ち上がるテーパ面からなる側壁部52を備えている。また、凹部50の開口縁53は、湾曲した断面形状を備えており、角張った形状になっていない。従って、走査線3a、データ線6aおよび容量線3bなどの配線層が、凹部50の内部から外側に引き出されるような場合でも、凹部50の側壁部52や開口縁53において断線することがない。また、このような配線層は、TFTアレイ基板2の製造工程において、TFTアレイ基板2の全面に形成した導電膜に対してパターニングを施すことによって形成されるので、不要な領域に導電膜が残ると、短絡などの原因となる。しかるに本形態において、凹部50は側壁部52が斜め上向きのテーパ面になっており、かつ、開口縁53が角張っていないので、開口縁53の影になって側壁部52などに不要な導電膜が残ることがない。
また、本形態では、図4および図5に示すように、容量素子15を構成する第1蓄積容量電極15aについては、凹部50の底部51およびテーパ状の側壁部52にわたって形成され、この第1蓄積容量電極15aよりも容量線3bが幅広に形成されている。このため、同一投影面積で比較すると、凹部50の底部51のみで第1蓄積容量電極15aと容量線3bとが対向している構成に比較して、第1蓄積容量電極15aと容量線3bとの対向面積が広い。それ故、容量素子15は、画素内の狭い面積に形成したにもかかわらず、大きな静電容量を有している。
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態の電気光学装置1において、TFTアレイ基板2には、データ線6a、走査線3a、容量線3b並びにTFT30が形成された領域の下層側に、所定深さの凹部50が形成されているので、これらの配線層などが形成された領域の最も上層側(配向膜18の表面)は、画素の開口領域における最も上層側(配向膜18の表面)に対して平坦化される。しかも、本形態では、データ線6a、走査線3aおよび容量線3b並びにTFT30が相重なるためこれらの各種配線層やTFT30からなる積層体が最も厚くなる領域に対して、それらの膜厚の総和に等しい深さの凹部50を形成してあるので、この最も厚くなる領域も、開口領域に対してほぼ完全に平坦化される。その結果、TFTアレイ基板2の最も上層側において、TFT30や各種の配線層が形成されている領域と、これらの薄膜が形成されていない開口領域との間には段差がなく、全体が平坦であるので、TFTアレイ基板2において、その最も上層側に、配向膜18を形成するためのポリイミド膜を平坦に形成できる。それ故、TFTアレイ基板2に対してラビング処理を適正に行うことができるので、TFTアレイ基板2と対向基板7とを貼り合わせた後、この基板間に液晶などの電気光学物質を封入すると、電気光学物質は適正に配向する。このため、電気光学物質のディスクリネーションが発生しないので、ディスクリネーションによる起因する画質の劣化がない。また、ディスククリネーションの影響が開口領域に及ばないようにするために、開口領域を狭める必要もないので、明るい表示を行うことができる。よって、本形態の電気光学装置1を用いた表示装置では、コントラストの向上、および表示の高精彩化を図ることができるなど、品位の高い表示を行うことができる。
また、本形態の電気光学装置1の製造方法については、後述するが、凹部50はあくまで配線層や画素スイッチング用TFT30の下層側に形成するので、製造工程の初期の段階で凹部50を形成しておけば、それ以降、CVD工程、スパッタリング工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程などの各種工程を、従来と略同様、あるいは全く同一の条件で行うことができる。従って、配線層や画素スイッチング用TFT30を形成するのに新たな工程を追加する必要がなく、かつ、工程を複雑化する必要もない。また、層間絶縁膜の厚さを領域で変えるという手間のかかる工程を行う必要がないため、生産性が低下することもない。さらに、層間絶縁膜の膜厚を領域毎に厚くしたり、薄くしたりする構成と違って、本形態のように、層間絶縁膜14、17の膜厚が全領域で一定であれば、層間絶縁膜が厚くてクラックが発生してしまうという問題や、層間絶縁膜が薄くてバックチャネルが発生するという問題も発生しないので、信頼性が低下することもない。
また、本形態では、TFTアレイ基板1に形成した凹部50の側壁部52は、テーパ状に形成され、かつ、開口縁53が角張っていない。従って、後述するように、凹部50として凹んだ部分に対して、フォトリソグラフィ技術を利用して画素スイッチング用TFT30や各配線層を形成する場合でも、側壁部52がテーパのない凹部、あるいは側壁部52が逆テーパの凹部を形成した場合と違って、側壁部52を横切るように配線層を引き回しても断線などが発生せず、かつ、凹部50の内部にポリシリコン膜やレジストなどの異物が残ることがない。このため、TFTアレイ基板2の最も上層側を確実に平坦化できるとともに、凹部50の内部に残った異物に起因する不具合なども発生しない。
なお、TFT30や配線層が形成されている領域には多少の凹凸があるので、この領域のうち、どの部分における配向膜18の高さを開口領域における配向膜18の高さに合わせるかは任意である。たとえば、容量素子15の上方における配向膜18の高さを開口領域における配向膜18の高さに合わせるようにしてもよいし、TFT30の形成領域から外れた走査線3aや容量線3bの上層における配向膜18の高さを合わせるようにしてもよい。さらに、TFTアレイ基板2のどの領域を凹状に窪めるかも任意であり、たとえばデータ線6aに対向する領域においてのみ凹部を形成してもよいし、TFT30に対向する領域においてのみ凹部を形成してもよい。どの場合にも、開口領域から外れた領域に対して若干なりとも凹みを形成すれば、この凹みの形成領域および深さに応じた平坦化の効果が得られる。従って、このようにどの領域にどのような深さの凹みを形成するかは、実際には要求される画素開口率(画素の開口領域の非開口領域に対する比率)、精細度、歩度まりなどを勘案しての最適条件に定められる。
(電気光学装置の製造方法)
図6ないし図9を参照して、本形態に係る電気光学装置1の製造方法を説明する。図6ないし図9はいずれも、本形態のTFTアレイ基板の製造方法を示す工程断面図であり、図3と同様、図2のA−A’断面に対応している。
先ず、図6(A)に示すように、TFTアレイ基板2の基体となる石英基板からなる透明基板20を準備した後、この透明基板20の表面に対してレジストマスク55を形成する。
次に、レジストマスク55の開口を介して透明基板20の表面に反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングを施し、画像表示領域内の各配線層およびTFTが形成される予定の非開口領域(図2、図3、図4および図5を参照。)に対して、一旦テーパのないあるいはテーバの少ない凹部50を形成する。
ここで、透明基板20は、たとえば1mm程度の厚みを持っており、平坦化のために数ミクロン程度の凹部50を形成したとしても何等問題は生じない。この際、本発明者の実験によれば、たとえば、SF6/CHF3ガスを用いたドライエッチングを行う場合には、混合比が14/112であればエッチングレートは5290オングストローム/min(オングストローム/分)となり、混合比が17/90であればエッチングレートは5169オングストローム/minとなり、混合比が23/67であればエッチングレートは4297オングストローム/minとなる。すなわち、SF6/CHF3ガスの混合比を調節することにより所望のエッチングレートが得られ、よって所望の深さの凹部50を形成できる。特に、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチングのような異方性エッチングを行うことにより凹部50を形成した方が、凹部50をレジストマスク55のパターンどおりの形状にすることができる。
このようにしてドライエッチング処理によってテーパのない凹部50を形成した後、続いて、たとえば780オングストローム/min程度の低いエッチングレートのウエットエッチングにより、図6(B)に示すように、凹部50の側壁部52をテーパ状にする。この時、凹部50の開口縁53もなだらかにエッチングされ、角のない状態となる。このように側壁部52がテーパ状になっている凹部50を形成すれば、この凹部50内に後工程でポリシリコン膜やレジストを形成した後、それらを除去する際に、凹部50内にポリシリコン膜やレジストがエッチングや剥離されずに異物として残ってしまうことがない。それ故、TFTアレイ基板2の歩留まりが低下せず、かつ、後で不要な凹凸が形成されない。
なお、凹部50の側壁部52をドライエッチングだけでテーパ状に形成するには、エッチング途中でレジストマスク55を後退させてから、再度のドライエッチングを行えばよい。
ここで好ましくは、N2(窒素)等の不活性ガス雰囲気且つ約900〜1300℃の高温で透明基板20に対してアニール処理を行い、後に実施される高温プロセスにおいて透明基板20に生じる歪みが少なくなるように前処理しておく。即ち、製造プロセスにおける最高温で高温処理される温度に合わせて、凹部50の形成前に、透明基板20をそれと同じ温度か、あるいはそれ以上の温度で熱処理しておく。
なお、石英からなる透明基板20に換えて、シリコン基板、ハードガラス等に対して上述のエッチング処理やアニール処理を施して、TFTアレイ基板2を構成してもよい。
また、以降に行われるマスキング工程などにおける透明基板20の位置合わせ(アライメント)は、たとえば、この工程で凹部50と同時に、位置合わせ用の凹部(アライメント用凹部)をTFTアレイ基板2側の透明基板20の所定箇所に形成し、この凹部を光の干渉等で認識することにより行えばよい。
次に図6(C)に示すように、透明基板20の全面に、約450〜550℃、好ましくは約500℃の比較的低温環境中で、流量約400〜600cc/minのモノシランガス、ジシランガス等を用いた減圧CVD(たとえば、圧力約20〜40PaのCVD)により、アモルファスシリコン膜からなる半導体膜30aを形成する。その後、窒素雰囲気中で、約600〜700℃にて約1〜10時間、好ましくは、4〜6時間のアニール処理を施すことにより、ポリシリコン膜1を約500〜2000オングストロームの厚さ、好ましくは約1000オングストロームの厚さとなるまで固相成長させる。
この際、図3を参照して説明した画素スイッチング用TFT30として、nチャネル型のTFTを形成する場合には、少なくともチャネル領域に相当する領域にチャネルドープを行うために、半導体膜30aに対してSb(アンチモン)、As(砒素)、P(リン)などのV族元素のドーパントを僅かにイオン注入などによりドープしてもおく。また、画素スイッチング用TFT30をpチャネル型とする場合には、B(ボロン)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)などのIII族元素のドーパントを僅かにイオン注入等によりドープしても良い。尚、アモルファスシリコン膜を経ないで、減圧CVD法等によりポリシリコン膜からなる半導体膜30aを直接形成しても良い。或いは、減圧CVD法等により堆積したポリシリコン膜にシリコンイオンを打ち込んで一旦非晶質化(アモルファス化)し、その後アニール処理等により再結晶化させてポリシリコン膜からなる半導体膜30aを形成しても良い。固相成長させる方法としては、RTA(Rapid Thermal Anneal)を使用したアニール処理、エキシマレーザー等のレーザーアニールを用いても良い。
次に図6(D)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、半導体膜30aを島状のパターニングする。ここで、図2を参照して説明したように、データ線6aの下層側で容量線3bが形成される領域および走査線3aに沿って容量線3bが形成される領域に半導体膜30aを延設し、第1蓄積容量電極15aを形成する。
次に図7(A)に示すように、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体膜30a全体を約900〜1300℃の温度、好ましくは約1000℃の温度により熱酸化することにより、約300オングストロームの比較的薄い厚さの熱酸化シリコン膜を形成し、更に減圧CVD法等により高温酸化シリコン膜(HTO膜)や窒化シリコン膜を約500オングストロームの比較的薄い厚さに堆積し、多層構造を持つゲート絶縁膜41を形成する。このゲート絶縁膜41を形成した際に、第1蓄積容量電極15aの表面に形成された絶縁膜は容量素子15の誘電体膜として利用される。このようにしてゲート絶縁膜41を形成すると、半導体膜30aの厚さは、約300〜1500オングストロームの厚さ、好ましくは約350〜500オングストロームの厚さとなり、ゲート絶縁膜41の厚さは、約200〜1500オングストロームの厚さ、好ましくは約300〜1000オングストロームの厚さとなる。このように高温熱酸化時間を短くすることにより、特に8インチ程度の大型基板を使用する場合に熱によるそりを防止することができる。但し、ポリシリコン膜からなる半導体膜30aを熱酸化することのみにより、単一層構造を持つゲート絶縁膜41を形成してもよい。
なお、導入するタイミングについては特に限定されないが、半導体膜30aのうち、第1蓄積容量電極15aとなる部分に、たとえば、Pイオンをドーズ量約3×1014/cm2でドープして、低抵抗化させてもよい。
次に図7(B)に示すように、減圧CVD法等によりポリシリコン層300(半導体膜)を堆積した後、リン(P)を熱拡散し、ポリシリコン膜300を導電化する。又は、Pイオンをポリシリコン膜300を成膜する際に不純物を同時に導入してドープトシリコン膜を形成してもよい。
次に図7(C)に示すように、レジストマスクを用いたフォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、図2に示した如きパターンの走査線3aと共に容量線3bを形成する。このエッチング工程において、本形態では、図2ないし図5に示すように、容量線3bについては、半導体膜3 aよりもわずかに幅広に形成する。これらの容量線3b(走査線3a)の層厚は、たとえば約3500オングストロームである。
次に図7(D)に示すように、画素スイッチング用TFT30をLDD構造を持つnチャネル型のTFTとする場合、半導体膜30aに、先ず低濃度領域を形成するために、走査線3a(ゲート電極)を拡散マスクとして、PなどのV族元素のドーパントを低濃度で(たとえば、Pイオンを1〜3×1013/cm2のドーズ量にて)ドープする。これにより走査線3a下の半導体膜30aはチャネル領域33aとなる。この不純物のドープにより容量線3bおよび走査線3aも低抵抗化される。
続いて図7(E)に示すように、画素スイッチング用TFT30を構成する高濃度ソース・ドレイン領域を形成するために、走査線3aよりも幅の広いレジストマスク56を走査線3aを覆うように形成した後、同じくPなどのV族元素のドーパント61を高濃度で(たとえば、Pイオンを1〜3×1015/cm2のドーズ量にて)ドープする。この不純物のドープにより容量線3bおよび走査線3aはさらに低抵抗化される。ここで、画素スイッチング用TFT30をpチャネル型とする場合には、半導体膜30aに、低濃度ソース・ドレイン領域並びに高濃度ソース・ドレイン領域を形成するために、BなどのIII族元素のドーパントを用いてドープする。なお、低濃度のドープを行わずに、オフセット構造のTFTとしてもよく、走査線3aをマスクとして、Pイオン、Bイオン等を用いたイオン注入技術によりセルフアライン型のTFTとしてもよい。
これらの工程と並行して、nチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTから構成される相補型構造を持つデータ線駆動回路および走査線駆動回路等の回路をTFTアレイ基板2上の周辺部に形成する。このように、本形態において画素スイッチング用TFT30は半導体膜30aをポリシリコンで形成するので、画素スイッチング用TFT30の形成時にほぼ同一工程で、データ線駆動回路および走査線駆動回路を形成することができ、製造上有利である。
次に図8(A)に示すように、画素スイッチング用TFT30、走査線3a、容量線3bを覆うように、たとえば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG(ノンドープトシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる層間絶縁膜14を形成する。層間絶縁膜14の層厚は、約5000〜15000オングストロームが好ましい。
次に高濃度ソース領域31cおよび高濃度ドレイン領域32cを活性化するために約1000℃のアニール処理を20分程度行った後、図8(B)に示すように、データ線31に対するコンタクトホール5を、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより或いはウエットエッチングにより形成する。また、走査線3aや容量線3bを図示しない配線層と接続するためのコンタクトホールも、コンタクトホール5と同一の工程により層間絶縁膜14に形成する。
次に図8(C)に示すように、層間絶縁膜14の上に、スパッタ処理等により、遮光性のAl等の低抵抗金属や金属シリサイド等を金属膜6として、約1000〜5000オングストロームの厚さ、好ましくは約3000オングストロームに堆積した後、図8(D)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、データ線6aを形成する。
次に図9(A)に示すように、データ線6a上を覆うように、たとえば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる層間絶縁膜17を形成する。この層間絶縁膜17の層厚は、約5000〜15000オングストロームが好ましい。
次に図9(B)に示すように、フォトリソグラフィ工程、反応性エッチングや反応性イオンビームエッチング等のドライエッチング工程等により、層間絶縁膜14、17のうち、高濃度ドレイン領域32cに対応する領域にコンタクトホール8を形成する。
次に図9(C)に示すように、層間絶縁膜17の上に、スパッタ処理等により、ITO膜等の透明導電性薄膜9を、約500〜2000オングストロームの厚さに堆積した後、図9(D)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、画素電極9aを形成する。なお、反射型の電気光学装置1を形成する場合には、Al等の反射率の高い不透明な材料から画素電極9aを形成してもよい。
続いて、画素電極9aの上にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように、かつ、所定方向に向けてラビング処理を施すことにより、図3に示すように配向膜18を形成する。このようにしてTFTアレイ基板2を形成する。
このように、本形態において、TFTアレイ基板2を形成するにあたって、その最も上層側を平坦に形成するといっても、凹部50をあくまで配線層や画素スイッチング用TFT30の下層側に形成するので、製造工程の初期の段階で凹部50を形成しておけば、それ以降、CVD工程、スパッタリング工程、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程などの各種工程を、従来と略同様、あるいは全く同一の条件で行うことができる。従って、配線層や画素スイッチング用TFT30を形成するのに新たな工程を追加する必要がなく、かつ、工程を複雑化する必要もないなど、生産性が低下しないなどの利点がある。
一方、図3に示す対向基板7を形成するには、まず、ガラス基板あるいは石英基板などといった透明基板30を用意する。次に、透明基板30に対して、たとえば金属クロム膜をスパッタ形成した後、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、各画素に対応する遮光膜72をマトリクス状に形成するととも、画像表示領域に対する周辺見切り用としての見切り用の遮光膜を形成する。これらの遮光膜72については、金属クロム膜に限らず、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)などの金属材料の他、Si(シリコン)、カーボンやTi(チタン)をフォトレジストに分散した樹脂ブラックなどの材料から形成してもよい。
次に、対向基板7の全面にスパッタ処理等により、ITO等の透明導電性薄膜を、約500〜2000オングストロームの厚さに堆積することにより、対向電極71を形成する。更に、対向電極71の全面にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように且つ所定方向でラビング処理を施すことにより、配向膜73を形成する。このようにして対向基板7を形成する。
しかる後には、TFTアレイ基板2と対向基板7とを配向膜18、73同士が対面するようにシール材により貼り合わせ、真空吸引等により、両基板間の隙間内に、たとえば複数種類のネマティック電気光学物質を混合してなる電気光学物質を減圧、注入し、電気光学物質層11を形成する。
尚、以上の製造方法において、層間絶縁膜17の表面に対してCMP処理、あるいはスピンコート処理(SOG)を行って層間絶縁膜17の表面をより完全に平坦化してもよい。このように平坦化すれば、その平坦化の度合いに応じて、層間絶縁膜17の表面の凹凸により引き起こされる電気光学物質のディスクリネーション(配向不良)をより完全に防止できる。このような処理を行う場合でも、本形態の電気光学装置1では、TFTアレイ基板2に形成した凹部50によって層間絶縁膜17の上面の段差がかなり低減されているため、このようなより完全なグローバル平坦化を図る工程(CMP処理、あるいはスピンコート処理)を簡略な処理条件で済むという利点がある。
[実施の形態2]
図10および図11はいずれも、本形態の電気光学装置の構成を示す断面図である。ここで、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る電気光学装置と同様であるため、その基本的な構成については図1、図2および図3に示すとおりである。従って、本形態の特徴的な部分のみを図10および図11を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図10および図11に示すことにして、それらの説明を省略する。なお、図10および図11はそれぞれ、本形態の電気光学装置の断面のうち、図2のB−B′線およびC−C′線における断面図に相当する。
図10および図11に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様に、画素電極9aに蓄積容量を付加する容量素子15を形成するにあたって、ゲート絶縁膜41を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜30aを延設して第1蓄積容量電極15aとし、更にこれらに対向するように容量線3bを形成してある。また、本形態でも、TFTアレイ基板2の最も上層側を平坦化するため、透明基板20の表面には凹部50が形成され、この凹部50の内部に、走査線3a、容量線3b、画素スイッチング用TFT30や容量素子15の第1蓄積容量電極15aを形成する半導体膜30aが形成されている。さらに、本形態でも、凹部50は、底部51およびこの底部51から45°の角度で斜めに立ち上がるテーパ状の側壁部52を備えている。
本形態において、容量線3bの幅寸法は、第1蓄積容量電極15aの幅寸法よりわずかに狭く、第1蓄積容量電極15aの両側からはみ出していない。それでも、本形態でも、容量素子15を構成する第1蓄積容量電極15aは、凹部50の底部51およびテーパ状の側壁部52にわたって形成され、かつ、容量線3も凹部50の底部51およびテーパ状の側壁部52にわたって形成されている。すなわち、凹部50のテーパ状の側壁部52を利用して容量素子15が形成されている。このため、本形態でも、実施の形態1と同様、同一投影面積で比較すると、凹部50の底部51のみで第1蓄積容量電極15aと容量線3bとが対向している構成に比較して、第1蓄積容量電極15aと容量線3bとの対向面積が広い。それ故、容量素子15は、画素内の狭い面積に形成したにもかかわらず、大きな静電容量を有している。
[実施の形態3]
なお、実施の形態1では、TFTアレイ基板2の基体たる透明基板20の表面に、直接、エッチングを施して、画素スイッチング用のTFT30の下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に凹部50を形成したが、以下に説明するように、透明基板20の表面に形成した絶縁膜に対して凹部を形成してもよい。
図12は、本形態の電気光学装置において、図2のB−B′線に相当する位置で切断したときの断面図である。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る電気光学装置と同様であるため、その基本的な構成については図1、図2および図3に示すとおりである。従って、本形態の特徴的な部分のみを図12を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図12に示すことにして、それらの説明を省略する。
図12に示すように、本形態では、TFTアレイ基板2の基体である透明基板20の表面には厚い下地絶縁膜200が形成され、この下地絶縁膜200の表面のうち、画素スイッチング用TFT30(図2および図3を参照。)並びに容量素子15を形成するための半導体膜30aの下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に対して、凹部50が形成されている。この下地絶縁膜200としては、NSG、PSG、BSG、BPSGなどの高絶縁性ガラス又は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜等を用いることができる。その他の構成は、実施の形態1、2と同様であるため、説明を省略する。
このように構成したTFTアレイ基板2を用いた電気光学装置においても、TFTアレイ基板2には、データ線6a、走査線3a、容量線3b並びにTFT30などが形成された領域の下層側に、所定深さの凹部50が形成されているので、これらの配線層などが形成された領域の最も上層側(配向膜18の表面)は、画素の開口領域における最も上層側(配向膜18の表面)と同等の高さであり、大きな段差がない。従って、TFTアレイ基板2の最も上層側は、全体が平坦であるので、TFTアレイ基板2において、その最も上層側に、配向膜18を形成するためのポリイミド膜を平坦に形成できる。それ故、TFTアレイ基板2に対してラビング処理を適正に行うことができるので、TFTアレイ基板2と対向基板7とを貼り合わせた後、この基板間に液晶などの電気光学物質を封入すると、電気光学物質は適正に配向する。このため、電気光学物質のディスクリネーションが発生しないので、ディスクリネーションによる起因する画質の劣化がないなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
また、本形態では、画素スイッチング用TFT30が凹部50の内部に形成されるといっても、下層側には透明基板20との間に下地絶縁膜200が介在しているので、透明基板20の方からの不純物が画素スイッチング用TFT30に対して影響を及ぼすことがない。
このような構成のTFTアレイ基板2を製造するには、図6ないし図9を参照して説明した実施の形態1に係るTFTアレイ基板2の製造方法のうち、図6(A)、(B)を参照して説明した工程に代えて、図12に示すように、透明基板20の表面に厚い下地絶縁膜200を形成した後、図6(A)に示すレジストマスク55と同一パターンのレジストマスクを形成し、次に、所定の条件で下地絶縁膜200の表面に対してエッチングを行い、凹部50を形成する。しかる後には、図6(c)を参照して説明した工程以降の工程を行えばよい。
[実施の形態4]
図13は、本形態の電気光学装置において、図2のB−B′線に相当する位置で切断したときの断面図である。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る電気光学装置と同様であるため、その基本的な構成については図1、図2および図3に示すとおりである。従って、本形態の特徴的な部分のみを図13を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図13に示すことにして、それらの説明を省略する。
実施の形態1、3では、TFTアレイ基板2において、画素スイッチング用のTFT30の下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に凹部50を形成した後、この凹部50の内部に直接、半導体膜30aや走査線3aなどを形成したが、本形態では、図13に示すように、透明基板20の表面に凹部50を形成した後、透明基板20の表面全体に薄い絶縁膜201を形成し、しかる後に、絶縁膜201の表面に半導体膜30aや走査線3aなどを形成した構成になっている。
従って、本形態では、凹部50の底部51および側壁部52が薄い絶縁膜201で覆われた状態で、凹部50内に半導体膜30aや走査線3aなどが形成されている。このため、透明基板2の表面をエッチングして凹部50を形成した際に凹部50の内面が荒れていても、この表面を絶縁膜201で覆うので、荒れた凹部50の内面上に直接、半導体膜30a(画素スイッチング用TFT30の能動層)などを形成した場合と違って、凹部50の内面の表面状態が画素スイッチング用TFT30のトランジスタ特性、たとえば、しきい値電圧(Vth)に影響を及ぼすことがない。それ故、本形態のTFTアレイ基板2では、TFTのしきい値電圧のドリフト、能動層における移動度の低下、オフリークの上昇等の特性の劣化がないので、平坦化のために凹部50を形成しても信頼性が低下することはない。
また、本形態では、画素スイッチング用TFT30が凹部50の内部に形成されるといっても、下層側には透明基板20との間に下地絶縁膜200が介在しているので、透明基板20の方からの不純物が画素スイッチング用TFT30に対して影響を及ぼすことがない。
[実施の形態5]
図14は、本形態の電気光学装置において、図2のB−B′線に相当する位置で切断したときの断面図である。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る電気光学装置と同様であるため、その基本的な構成については図1、図2および図3に示すとおりである。従って、本形態の特徴的な部分のみを図13を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図13に示すことにして、それらの説明を省略する。
実施の形態4は、実施の形態1の改良例に相当する構成であったが、同様な改良は、実施の形態3に対しても適用できる。すなわち、図14に示すように、本形態では、TFTアレイ基板2において、透明基板20の表面に厚い絶縁膜200を形成した後、この絶縁膜200の表面のうち、画素スイッチング用のTFT30の下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に凹部50を形成した後、透明基板20の表面全体に薄い絶縁膜201を形成し、しかる後に、絶縁膜201の表面に半導体膜30aや走査線3aなどを形成した構成になっている。
従って、本形態では、凹部50の底部51および側壁部52が薄い絶縁膜201で覆われた状態で、凹部50内に半導体膜30aや走査線3aなどが形成されている。このため、透明基板2の表面をエッチングして凹部50を形成した際に凹部50の内面が荒れていても、この表面を絶縁膜201で覆うので、荒れた凹部50の内面上に直接、半導体膜30a(画素スイッチング用TFT30の能動層)などを形成した場合と違って、凹部50の内面の表面状態が画素スイッチング用TFT30のトランジスタ特性、たとえば、しきい値電圧(Vth)に影響を及ぼすことがない。それ故、本形態のTFTアレイ基板2では、TFTのしきい値電圧のドリフト、能動層における移動度の低下、オフリークの上昇等の特性の劣化がないので、平坦化のために凹部50を形成しても信頼性が低下することはない。
[実施の形態6]
図15および図16を参照して、本発明の実施の形態6に係る電気光学装置を説明する。図15は、本形態の電気光学装置において、データ線、走査線、画素電極などが形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群のうちの一部を示す平面図であり、図16は、図15のD−D′断面図である。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る電気光学装置と同様であるため、本形態の特徴的な部分のみを図15および図16を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図15および図16に示すことにして、それらの説明を省略する。
先に説明した実施の形態1ないし5では、画素電極9aに蓄積容量を付加する容量素子15を形成するにあたって、半導体膜30aを延設して第1蓄積容量電極15aとするとともに、この第1蓄積容量電極15aに対向するように容量線3bを形成したが、本形態では、図15および図16に示すように、半導体膜30aの高濃度ドレイン領域32cがデータ線6aに沿って前段の走査線3aに向けて延びて、前段の走査線3aの下層に重なる領域が第1蓄積容量電極15aとなっている。このような構成であっても、第1蓄積容量電極15aと前段の走査線3aとは、ゲート絶縁膜41がこの領域にまで延設された部分を誘電体膜として対向して容量素子14が形成される。
また、本形態でも、TFTアレイ基板2には、図15に太線L1で囲んだ領域には、図16に示すように、TFTアレイ基板2の透明基板20の側において凹んだ凹部50が形成されている。この凹部50も、実施の形態1と同様、TFTアレイ基板2において多数の画素電極9aが形成されている画像表示領域において、画素スイッチングTFT30が形成されている領域、走査線3aおよびデータ線6aなどの配線層が形成されている領域の全てと重なる領域に形成され、この凹部50の内部には、半導体膜30a、ゲート絶縁膜41、走査線3a、層間絶縁膜14、17が形成され、これらの膜によって、凹部50は埋められている。しかも、半導体膜30a、ゲート絶縁膜41、走査線3a、容量線3bなどは、凹部50の内部だけに形成され、その分だけ、凹部50が形成されている領域における膜厚の総和は、開口領域における膜厚の総和に比較して大になっているなど、実施の形態1と同様な構成を有している。
従って、本形態の電気光学装置1においても、TFTアレイ基板2には、データ線6a、走査線3a並びにTFT30が形成された領域の下層側に、所定深さの凹部50が形成されているので、これらの配線層などが形成された領域の最も上層側(配向膜18の表面)は、画素の開口領域における最も上層側(配向膜18の表面)に対して平坦化される。このため、TFTアレイ基板2の最も上層側において、配向膜18を形成するためのポリイミド膜を平坦に形成できる。それ故、TFTアレイ基板2に対してラビング処理を適正に行うことができるので、TFTアレイ基板2と対向基板7とを貼り合わせた後、この基板間に液晶などの電気光学物質を封入すると、電気光学物質は適正に配向する。よって、電気光学物質のディスクリネーションが発生しないので、ディスクリネーションによる起因する画質の劣化がないなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
また、本形態では、図16に示すように、容量素子15を構成する第1蓄積容量電極15aについては、凹部50の底部51およびテーパ状の側壁部52にわたって形成され、この第1蓄積容量電極15aよりも走査線3aが幅広に形成されている。このため、同一投影面積で比較すると、凹部50の底部51のみで第1蓄積容量電極15aと走査線3aとが対向している構成に比較して、第1蓄積容量電極15aと走査線3aとの対向面積が広い。それ故、容量素子15は、画素内の狭い面積に形成したにもかかわらず、大きな静電容量を有している。
[実施の形態7]
図17ないし図20を参照して、本発明の実施の形態7に係る電気光学装置を説明する。図17は、本形態の電気光学装置において、データ線、走査線、画素電極などが形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群のうちの一部を示す平面図であり、図18、図19および図20はそれぞれ、図17のA−A′断面図、B−B′断面図およびC−C′断面図である。なお、本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態1に係る電気光学装置と同様であるため、本形態の特徴的な部分のみを図17ないし図20を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図17ないし図20に示すことにして、それらの説明を省略する。
図17ないし図20に示すように、本形態では、実施の形態3と同様、TFTアレイ基板2の基体である透明基板20の表面には厚い下地絶縁膜200が形成され、この下地絶縁膜200の表面のうち、画素スイッチング用TFT30並びに容量素子15を形成するための半導体膜30aの下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に対して、凹部50が形成されている。その他の構成は、実施の形態1、2と同様であるため、説明を省略する。
このように構成したTFTアレイ基板2を用いた電気光学装置においても、TFTアレイ基板2には、データ線6a、走査線3a、容量線3b並びにTFT30などが形成された領域の下層側に、所定深さの凹部50が形成されているので、TFTアレイ基板2の最も上層側は、全体が平坦である。このため、TFTアレイ基板2において、その最も上層側に、配向膜18を形成するためのポリイミド膜を平坦に形成できる。それ故、TFTアレイ基板2に対してラビング処理を適正に行うことができるので、TFTアレイ基板2と対向基板7とを貼り合わせた後、この基板間に液晶などの電気光学物質を封入すると、電気光学物質は適正に配向する。このため、電気光学物質のディスクリネーションが発生しないので、ディスクリネーションによる起因する画質の劣化がないなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
また、本形態では、透明基板20と下地絶縁膜200との層間において、凹部50と略重なる領域全体にわたって、不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo、Pdのうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド等あるいはSiから構成される遮光膜16が形成され、この遮光膜16は、画素スイッチング用TFT30に各々対向する状態にある。従って、画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aは、TFTアレイ基板2の裏面側からみて遮光膜16で覆われた状態にある。このため、本形態では、TFTアレイ基板2の裏面側からの戻り光が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aなどに入射する事態を未然に防ぐことができ、光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が劣化することはない。
また、本形態において、遮光膜16は不透明な高融点金属などといった高耐熱性の材料で形成されている。このため、遮光膜16を形成した以降、画素スイッチング用TFT30を形成するために高温処理が行われても、遮光膜16は、破壊も溶融もすることがない。なお、遮光膜16としては、ポリシリン膜を用いても良い。また、遮光膜16としては、高融点金属の上層にポリシリコン膜を形成して、反射防止処理を行ったものを用いてもよい。
さらに、下地絶縁膜200は、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体膜30aを遮光膜16から電気的に絶縁する層間絶縁膜として形成したものであるが、下地絶縁膜16が、TFTアレイ基板2の全面に形成されることにより、画素スイッチング用TFT30のための下地膜としての機能をも有する。即ち、TFTアレイ基板2の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。また、下地絶縁膜16は、遮光膜16が画素スイッチング用TFT30等を汚染する事態を未然に防ぐこともできる。
このような構成のTFTアレイ基板2を製造するにあたっては、図6ないし図9を参照して説明した実施の形態1に係るTFTアレイ基板2の製造方法のうち、図6(A)、(B)を参照して説明した工程に代えて、図18ないし図20に示すように、透明基板20の表面に、Ti、Cr、W、Ta、MoおよびPd等の金属や金属シリサイド等の金属合金膜を、スパッタにより、1000〜5000オングストローム程度の層厚、好ましくは約2000オングストロームの層厚で形成した後、それをフォトリソグラフィ工程、エッチング工程等によりパターニングして遮光膜16を形成する。ここで、遮光膜16としてポリシリコン膜を用いれば、この上層側に形成される下地絶縁膜16が遮光膜16から受ける応力によって破壊するのを防止することができる。次に遮光膜16の表面側に厚い下地絶縁膜200を形成した後、図6(A)に示すレジストマスク55と同一パターンのレジストマスクを形成し、次に、所定の条件で下地絶縁膜200の表面に対してエッチングを行い、凹部50を形成する。しかる後には、図6(c)を参照して説明した工程以降の工程を行えばよい。
なお、本形態では凹部50と略重なるような広い領域にわたって遮光膜16を形成したが、画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aを選択に覆うような領域のみに遮光膜16を島状に形成した構成であっもよい。このような構成であれば、格子状やストライプ状に設けられた遮光膜の場合と比較して、遮光膜16が一体として形成される部分の面積が遥かに小さいため、遮光膜16とそれに隣接する膜との間の物性の相違により遮光膜16に発生するストレスを大幅に緩和できる。その結果、遮光膜16における膜剥がれや膜変形、或いはクラックの発生を防止できる。また、遮光膜16自身のストレスにより画素スイッチング用TFT30の特性が劣化する事態を未然に防ぐことができる。
さらに、遮光膜16は、定電位源又は容量素子15に電気的接続されてもよい。たとえば、遮光膜16は、定電位とされた容量線3bにコンタクトホールを介して電気的に接続されてもよい。このように構成すれば、遮光膜16に対向配置される画素スイッチング用TFT30に対して遮光膜16の電位変動が悪影響を及ぼすことはない。また、容量線3bを定電位とすることで、容量素子15の第2蓄積容量電極として良好に機能し得る。この場合、定電位源としては、当該電気光学装置を駆動するための周辺回路(たとえば、走査線駆動回路、データ線駆動回路等)に供給される負電源、正電源等の定電位源、接地電源、対向電極71に供給される定電位源等が挙げられる。
[実施の形態8]
図21を参照して、本発明の実施の形態8に係る電気光学装置を説明する。図20は、本形態の電気光学装置に用いたTFTアレイ基板の断面図である。本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態7に係る電気光学装置と同様であるため、本形態の特徴的な部分のみを図21を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図21に示すことにして、それらの説明を省略する。なお、図21は、図17のB−B′線における断面に相当する。
図21に示すように、本形態では、実施の形態1と同様、TFTアレイ基板2の基体である透明基板20の表面のうち、画素スイッチング用TFT30並びに容量素子15を形成するための半導体膜30aの下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に対して、凹部50が形成されている。また、透明基板20の表面側には層間絶縁膜220が形成されている。この層間絶縁膜220の表面には、透明基板20の表面に形成した凹部50の形状が反映され、この反映された凹部内に画素スイッチング用TFT30並びに容量素子15を形成するための半導体膜30a、および走査線3a、容量線3bなどの配線層が形成されている。
また、本形態では、透明基板20と層間絶縁膜220との層間において、凹部50と略重なる領域全体にわたって、不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo、Pdのうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド等あるいはSiから構成された遮光膜16が形成され、この遮光膜16は、画素スイッチング用TFT30に各々対向する状態にある。従って、画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aは、TFTアレイ基板2の裏面側からみて遮光膜16で覆われた状態にある。このため、本形態でも、TFTアレイ基板2の裏面側からの戻り光が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aなどに入射する事態を未然に防ぐことができ、光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が劣化することはないなど、実施の形態7と同様な効果を奏する。
[実施の形態9]
図22および図23を参照して、本発明の実施の形態9に係る電気光学装置を説明する。図22および図23はいずれも、本形態の電気光学装置に用いたTFTアレイ基板の断面図である。本形態の電気光学装置の基本的な構成は、実施の形態7に係る電気光学装置と同様であるため、本形態の特徴的な部分のみを図22および図23を参照して説明し、共通する部分については同一の符号を付して図22および図23に示すことにして、それらの説明を省略する。なお、図22および図23はそれぞれ、図17のB−B′線およびC−C′線における断面に相当する。
図22および図23に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、TFTアレイ基板2の基体である透明基板20の表面のうち、画素スイッチング用TFT30並びに容量素子15を形成するための半導体膜30aの下層側、およびデータ線6a、走査線3a、容量線3bなどの配線層の下層側に対して、凹部50が形成されている。
ここで、透明基板20の表面には層間絶縁膜230が形成されている。また、層間絶縁膜230の上層側では、画素スイッチング用TFT30並びに容量素子15を形成するための半導体膜30a、および走査線3a、容量線3bなどの配線層が凹部50の内部に形成されている。しかも、層間絶縁膜230の上層側において、走査線3aや容量線3bと、データ線6aとの絶縁分離するための層間絶縁膜14も、凹部50の内部に形成されている。このため、図23に示すように、容量素子15を形成している部分では、層間絶縁膜14の表面がかなり平坦化され、そこにデータ線6aが形成されている構造になっている。従って、本形態では、凹部50はデータ線6aで塞がれ、その内側に容量素子15などが形成されている状態にある。
また、図23に示すように、データ線6aの幅寸法W2は、その下層側に形成された凹部50の開口幅をLL1とし、凹部50内でデータ線6aの下層側に形成された層間絶縁膜230、14の膜厚をta、tbとしたとき、下式
W2<{(LL1−2・(ta+tb)}
を満たしている。すなわち、凹部50の側壁部52が約45度のテーパ面なので、凹部50の開口付近で、その幅方向において層間絶縁膜230、14が占める寸法は、データ線6aの両側分として、層間絶縁膜230、14の膜厚ta、tbの和の2倍であるので、凹部50の開口幅LL1から、層間絶縁膜230、14の膜厚ta、tbの和を2倍した値を差し引いた値以下にデータ線6aの幅寸法W2を設定すると、データ線6aは、層間絶縁膜14に生じた凹部内の底部に位置することになって、テーパ状の側壁部に重ならない。従って、上層側には、データ線6aと凹部の側壁部との重なりに起因する無駄な凹凸が発生しない。
さらに、半導体膜30aの幅寸法W1は、その下層側に形成された凹部50の底部51の幅をLL2とし、凹部50内で半導体膜30aの下層側に形成された層間絶縁膜230の膜厚をtaとしたとき、下式
W1<(LL2−2・ta)
を満たしている。すなわち、凹部50の側壁部52が約45度のテーパ面なので、凹部50の底付近で、その幅方向において層間絶縁膜230が占める寸法は、半導体膜30aの両側分として、層間絶縁膜230の膜厚taの2倍であるので、凹部50の底部51の幅寸法LL2から、層間絶縁膜230の膜厚taを2倍した値を差し引いた値以下に半導体膜30aの幅寸法W1を設定すると、半導体膜30aは、層間絶縁膜230に生じた凹部内の底部に位置することになって、テーパ状の側壁部に重ならない。従って、上層側には、半導体膜30aと凹部の側壁部との重なりに起因する無駄な凹凸が発生しない。
それ故、本形態のTFTアレイ基板2では、その最も上層側にほとんど凹凸がないので、配向膜18を形成するためのポリイミド膜を平坦に形成できる。それ故、TFTアレイ基板2に対してラビング処理を適正に行うことができるので、TFTアレイ基板2と対向基板7とを貼り合わせた後、この基板間に液晶などの電気光学物質を封入すると、電気光学物質は適正に配向する。このため、電気光学物質のディスクリネーションが発生しないので、ディスクリネーションによる起因する画質の劣化がないなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
また、本形態では、凹部50の内側において、透明基板20と層間絶縁膜230との層間には、底部51から側壁部52にわたって、不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo、Pdのうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド等あるいはSiから構成された遮光膜16が形成され、この遮光膜16は、画素スイッチング用TFT30に各々対向する状態にある。従って、画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aは、TFTアレイ基板2の裏面側からみて遮光膜16で覆われた状態にある。このため、本形態でも、TFTアレイ基板2の裏面側からの戻り光が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域33aなどに入射する事態を未然に防ぐことができ、光電流の発生により画素スイッチング用TFT30の特性が劣化することはないなど、実施の形態7と同様な効果を奏する。特に、本形態では、底部51から側壁部52にわたって遮光膜16が形成されているので、図23に矢印Qで示すように、たとえTFTアレイ基板2の裏面側から斜めに光が入射してきても、このような光を遮断することができる。
なお、本形態において、凹部50の側壁部52がテーパ面でない場合には、凹部50の形成領域に重ねて形成されている半導体膜30aの幅寸法、容量線3bの幅寸法、データ線6aの幅寸法を、いずれも凹部50の開口幅LLと比較して、略等しい寸法、あるいは凹部50の開口幅LLよりも10μm以下だけ狭い寸法に形成することが好ましい。このように構成すると、半導体膜30a、容量線3b、データ線6aはそれぞれの形成領域が、凹部50の形成領域と略完全に重なっているので、凹部50の側壁部52と半導体膜30aの両端、および凹部50の側壁部52と容量線3bの両端との間に広い隙間がなく、かつ、データ線6aの両端に透明基板20の表面部分との間に無駄な重なりがない。
[電気光学装置の全体構成]
以上のように構成された電気光学装置の各実施の形態の全体構成を図24および図25を参照して説明する。尚、図24は、TFTアレイ基板2をその上に形成された各構成要素と共に対向基板7の側から見た平面図であり、図25は、対向基板7を含めて示す図24のH−H’断面図である。
図24において、TFTアレイ基板2の上には、シール材152がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、たとえば周辺見切り用の遮光膜153が形成されている。シール材152は、TFTアレイ基板2と対向基板7とをそれらの周辺で貼り合わせるための、たとえば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のスペーサが混入されている。シール材152の外側の領域には、データ線駆動回路101および実装端子102がTFTアレイ基板2の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域の辺に沿って両側に配列してもよい。たとえば奇数列のデータ線6aは画像表示領域の一方の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給し、偶数列のデータ線は前記画像表示領域の反対側の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給するようにしてもよい。この様にデータ線6aを櫛歯状に駆動するようにすれば、データ線駆動回路の占有面積を拡張することができるため、複雑な回路を構成することが可能となる。更にTFTアレイ基板2の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線層105が設けられている。また、対向基板7のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板2と対向基板7との間で電気的導通をとるための上下導通材106が設けられている。そして、図25に示すように、図24に示したシール材152とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板7が当該シール材152によりTFTアレイ基板2に固着されている。
ここで、データ線駆動回路101および走査線駆動回路104をTFTアレイ基板2の上に設ける代わりに、たとえばTAB(テープオートメイテッドボンディング基板)上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板2の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的および機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板7の投射光が入射する側およびTFTアレイ基板2の出射光が出射する側には各々、たとえば、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード、D−STN(ダブル−STN)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
以上説明した各実施の形態における電気光学装置1は、カラー電気光学物質プロジェクタに適用されるため、3枚の電気光学装置がRGB用のライトバルブとして各々用いられ、各パネルには各々RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになる。従って、各実施の形態では、対向基板7に、カラーフィルタは設けられていない。しかしながら、遮光膜72の形成されていない画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜と共に、対向基板7上に形成してもよい。このようにすれば、電気光学物質プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー電気光学物質テレビなどのカラー電気光学装置に各実施の形態における電気光学装置を適用できる。更に、対向基板7上に1画素1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい電気光学装置が実現できる。更にまた、対向基板7上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー電気光学装置が実現できる。
以上説明した各実施の形態における電気光学装置1では、従来と同様に入射光を対向基板7の側から入射することとしたが、TFTアレイ基板2の側に遮光膜16を形成した場合には、このTFTアレイ基板2の側から光を入射し、対向基板7の側から出射するようにしても良い。即ち、このようにして電気光学装置1をプロジェクタに取り付けても、半導体膜30aのチャネル領域33aなどに光が入射することを防ぐことができ、高画質の画像を表示することが可能である。ここで、従来は、TFTアレイ基板2の裏面側での反射を防止するために、反射防止用のAR被膜された偏光板を別途配置したり、ARフィルムを貼り付ける必要があった。しかし、TFTアレイ基板2の裏面と半導体膜30aの少なくともチャネル領域33aなどの間に遮光膜16を形成した場合には、このようなAR被膜された偏光板やARフィルムを用いたり、TFTアレイ基板2そのものをAR処理した基板を使用する必要が無くなる。また、耐光性が優れているため、明るい光源を使用したり、偏光ビームスプリッタにより偏光変換して、光利用効率を向上させても、光によるクロストーク等の画質劣化を生じない。
また、各画素に設けられるスイッチング素子としては、正スタガ型又はコプラナー型のポリシリコンTFTであるとして説明したが、逆スタガ型のTFTやアモルファスシリコンTFT等の他の形式のTFTに対しても、各実施の形態は有効である。
更に、電気光学装置の各画素のスイッチング素子として、TFTに変えて、TFD等の2端子型非線形素子を用いてもよい。この場合には、走査線およびデータ線のうちの一方を対向基板に設けてストライプ状の対向電極とし、他方を素子アレイ基板に設けて、各TFD素子等を介して各画素電極に接続するように構成すればよい。
[電子機器]
次に、以上詳細に説明した液晶装置100を備えた電子機器の実施の形態について図26から図28を参照して説明する。
先ず図26に、このように電気光学装置1を備えた電子機器の概略構成を示す。図26において、電子機器は、表示情報出力源1000、表示情報処理回路1002、駆動回路1004、液晶装置100、クロック発生回路1008並びに電源回路1010を備えて構成されている。表示情報出力源1000は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、光ディスク装置などのメモリ、画像信号を同調して出力する同調回路等を含み、クロック発生回路1008からのクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号などの表示情報を表示情報処理回路1002に出力する。表示情報処理回路1002は、増幅・極性反転回路、シリアル−パラレル変換回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種処理回路を含んで構成されており、クロック信号に基づいて入力された表示情報からデジタル信号を順次生成し、クロック信号CLKと共に駆動回路1004に出力する。駆動回路1004は、液晶装置100を駆動する。電源回路1010は、上述の各回路に所定電源を供給する。尚、電気光学装置1を構成するTFTアレイ基板の上に、駆動回路1004を搭載してもよく、これに加えて表示情報処理回路1002を搭載してもよい。
次に図27から図28に、このように構成された電子機器の具体例を各々示す。
図27において、電子機器の一例たる液晶プロジェクタ1100は、上述した駆動回路1004がTFTアレイ基板上に搭載された電気光学装置1を含む液晶表示モジュールを3個用意し、各々RGB用のライトバルブ100R、100Gおよび100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bに各々導かれる。この際特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123および出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bにより各々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
図28において、電子機器の他の例たるマルチメディア対応のラップトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)1200は、上述した電気光学装置1がトップカバーケース内に設けられており、更にCPU、メモリ、モデム等を収容すると共にキーボード1202が組み込まれた本体1204を備えている。
以上図27から図28を参照して説明した電子機器の他にも、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、携帯電話、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが図26に示した電子機器の例として挙げられる。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、比較的簡単な構成を用いての画像表示領域内における平坦化を図ることができるので、生産性および信頼性を低下させることなく、電気光学物質のディスクリネーションの発生を低減し、画素開口領域を大きくとることができる。従って、明るく高品質の画像表示が可能な電気光学装置を実現できる。