JP2006051447A - 光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材及びその製造方法 - Google Patents

光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】可視領域で透過率が高く、赤外領域で反射率が高い特長を有するヒートミラー性能と、有害物質の分解除去、防汚並びに防曇などの特長を有する光触媒性能を併せ持つ積層膜が被覆され、耐候性があり、窓材等として単板使用可能であり、且つ前記積層膜が被覆されている基材面の反対側から光照射した場合にも光触媒性能を発現する透明基材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラスなどからなる透明基材表面上に、誘電体層、金属層、誘電体層の順に所望の膜厚に積層されており、金属層は熱線反射特性を有し、最内層及び最外層の誘電体層は可視領域において反射防止特性を有し、且つ最外層の誘電体層は光触媒性能を有し、更には、最内層の誘電体層は、最外層の誘電体層よりも大きいエネルギーギャップを有することを特徴とする透明基材、及びその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、省エネルギーと環境浄化の広範囲な分野に適応可能な、光触媒機能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、可視領域で透過率が高く、赤外領域で反射率が高いヒートミラー性能と、有害物質の分解作用や防汚・防曇作用などの光触媒性能を併せ持ち、耐候性があり、例えば、窓材として単板で使用可能であり、更には、光照射されている透明基材面とは反対側、即ち、裏面において光触媒性能を発現できる透明基材及びその製造方法に関するものである。本発明は、日射熱を遮る特性を有するヒートミラー(熱線反射)薄膜をコーティングしたヒートミラーガラス(熱線反射ガラス、熱反ガラス)の技術分野において、例えば、従来の光触媒性能を併せ持つTiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーは、積層膜が被覆されていない裏面に光照射した場合には、十分に高い光触媒性能を発現できないという問題があったことを踏まえ、裏面に光照射した場合にも高い光触媒性能を発現する新しいタイプの透明基材を製造し、提供するものである。
近年、都市部での夏季の気温が郊外でのそれよりも高くなる「ヒートアイランド現象」は、住民に不快感をもたらすのみならず、健康にも影響を与えており、とりわけ高齢者や幼児、病人等に大きな負担となっている。また、ヒートアイランド現象は、二酸化炭素の排出を伴うエネルギー利用が要因の一つであるが、ヒートアイランド現象による高温を回避するために冷房を利用する結果、二酸化炭素排出量が増加し、更なる高温化をもたらす負のスパイラルが生じている。例えば、東京23区などの都市部において、気温の上昇に影響を与える熱(空気への顕熱)のうち、都市部に集中するオフィスビルなどの空調設備に起因して発生する建物排熱は約4分の1あり、自動車排熱もそれと同等の割合である。従って、建物排熱及び自動車排熱を低減するために、冷房負荷をできるだけ低減するための技術戦略は重要である。
オフィスビルや住宅及び自動車において、日射熱(太陽エネルギーの近赤外部分)の大部分は、ガラス窓を通して室内に侵入する。そこで、日射熱を遮る特性を有するヒートミラー(熱線反射)薄膜をコーティングしたヒートミラーガラス(熱線反射ガラス、熱反ガラス)が、これまで国内外のガラスメーカーによって盛んに研究されてきた。ヒートミラーで要求される光学的性能は、波長380nmから760nmの可視光の波長領域で透過率が高く、それより波長の長い赤外領域で反射率が高いといった性能である。
この要求は、これまで、錫をドープした酸化インジウムやアルミニウムをドープした酸化亜鉛などの酸化物半導体薄膜をガラス基材上に堆積したものや、金、銀、銅、アルミニウムといった貴金属や、窒化チタン、窒化ジルコニウムといった金属状窒化物を遷移金属酸化物からなる反射防止膜で挟んだものをガラス基板上に作製することによって実現されてきた。特に、窒化チタン薄膜を2枚の二酸化チタン薄膜で挟んだ構造をガラス基材上に作製したもの(以後、TiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーと略称する)は、スパッタリング法を用いれば比較的容易に作製できること(非特許文献1)、貴金属と比べ耐久性が格段に優れることから、オフィスビル用窓などに単板で使用されている。
一方、省エネルギーの観点から住宅やオフィスビルの高気密化及び高断熱化が進められた結果、「シックハウス症候群」と呼ばれる現代病が新たな問題としてクローズアップされるようになった。これは、建材や塗装剤から揮発するごく微量のVOC(Volatile Organic Compound=揮発性有機化合物)が室内に長時間とどまり、人体に影響を及ぼすものであり、具体的な症状は、目や鼻、のどの痛みを初め、頭痛、めまい、吐き気、脱力感、肩こり、皮膚の炎症、発疹など多彩である。この問題に対して、光触媒を用いてVOCを酸化分解・除去してしまう方法が大変注目されている。
光触媒とは、例えば、バンドギャップが3eV(電子ボルト)程度の半導体に、紫外線などの光を照射すると、半導体内部において強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔が生成し、例えば、半導体表面に付着した有機物質を酸化還元作用により分解したり(非特許文献2)、超親水性を発現したりする特性のことであり(非特許文献3)、更に具体的には、抗菌、防汚、防曇などの環境浄化の効果を発現するものである。光触媒の最大の利点は、太陽光などの光が照射されさえすれば、表面に吸着した有機化合物は酸化分解され、最終的には有機物質が二酸化炭素と水として空気中に分解・放出されることである。
種々の光触媒材料の中でも、二酸化チタンは、機械的・化学的耐久性と共に、極めて優秀な光触媒特性を有することから最も広く用いられている。最近では、前記VOCの分解・除去を目的として、空気清浄機に光触媒を組み込んだものが市販され始めている。しかし、この場合は、光触媒機能を発現させるために、ブラックライト等の光源も空気清浄機内に組み込む必要があり、それ故に、従来の空気清浄機と比較して高コストであるという問題点があった。そこで、本発明者らは、例えば、前述のTiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーにおいて、最外層の二酸化チタンに光触媒性能を発現できるようにせしめる技術を提案した(特許文献1)。
光触媒性能を併せ持つヒートミラーをガラス窓に採用することで、例えば、オフィスビルのガラス窓の室内側に前記積層膜が被覆されている面をセットした場合、太陽熱エネルギーの室内への流入を制御するのみならず、太陽光が照射されることによって、二酸化チタンに代表されるようなバンドギャップ3eV程度の半導体の持つ光触媒性能によって、室内の有害物質を酸化分解する効果をもたらし、前述のシックハウス症候群対策としても大変有効となることが期待される。この場合、自然の恵みである太陽光がガラス窓に照射されれば、無給電で空気清浄が行われるため、極めて低コストで有害物質の除去が実現できるという利点が得られる。
しかしながら、前記特許文献で提示されているような光触媒性能を併せ持つTiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーは、最外層と最内層とで同質のTiO2 膜を用いるので、積層膜が被覆されていない裏面に光照射した場合、最内層、即ち、ガラス表面と接合しているTiO2 において紫外光を吸収してしまうため、最外層のTiO2 は光触媒反応を起こすための電子−正孔対を生成することができず、十分に高い光触媒性能を発現できないという問題があった。したがって、上記に鑑み、当該技術分野においては、熱線反射特性を有し、光触媒特性を有する薄膜が被覆され、前記薄膜が被覆されていない透明基材面、即ち、裏面に光照射した場合にも光触媒性能を発現する新しいタイプの透明基材を開発することが強く要請されていた。
特願2003−169854号公報 M. Georgson, A. Roos and C-. G. Ribbing, The influence of preparation conditions on the optical properties of TiN based solar control films, J. Vac. Sci. Technol. A 9, 2191 - 2195, 1991. M. A. Fox and M. T. Dulay, Heterogeneous photocatalysis, Chem. Rev. 93, 341-357, 1993. R. Wang, K. Hashimoto, A. Fujishima, M. Chikuni, E. Kojima, A. Kitamura, M. Shimogaki and T. Watanabe, Light-induced amphiphilic surfaces, Nature 388, 431-432, 1997.
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の諸問題を抜本的に解消することを可能とする新しい光触媒機能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材及びその製造方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、最内層、即ち、ガラス表面と接合している最内層たる誘電体膜を、光触媒性能を有する最外層たる誘電体膜よりも大きいバンドギャップを有する誘電体薄膜とせしめることにより、より具体的には、例えば、最内層をバンドギャップが3.2eVよりも大きい誘電体薄膜とせしめ、例えば、最外層をバンドギャップが3.0eVから3.2eVの間であるTiO2 膜とせしめることにより、所期の目的を達成し得ることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
本発明は、可視領域で透過率が高く、赤外領域で反射率が高い特長を有するヒートミラー性能と、防菌、防汚並びに防曇などの特長を有する光触媒性能を併せ持ち、耐候性があり、単板使用可能な透明基材において、特に光照射されている透明基材表面とは反対側、即ち、裏面において光触媒性能を発現させることを可能とする光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材を製造し、提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材であって、(1)ガラスなどの透明基材表面上に、最内層たる第1の誘電体薄膜、中間層たる赤外反射特性を有する金属薄膜、及び最外層たる第2の誘電体薄膜が被覆されている、(2)可視領域で透過率が高く赤外領域で反射率が高い特長を有するヒートミラー性能と、光照射下において無機化合物・有機化合物を分解させる光触媒性能とを併せ持つ、且つ(3)前記薄膜が被覆されている基材面の反対側から光照射した場合にも光触媒性能を発現する機能を有する、ことを特徴とする透明基材。
(2)ガラスなどの基材表面上に、最内層たる第1の誘電体薄膜を堆積する工程、該第1の誘電体薄膜表面上に、中間層たる赤外反射特性を有する金属薄膜を積層する工程、及び該金属薄膜表面上に、光触媒性能を有し、且つ該第1の誘電体薄膜よりもエネルギーギャップの小さい最外層たる第2の誘電体薄膜を積層する工程、により作製されたことを特徴とする前記(1)記載の透明基材。
(3)前記最内層たる第1の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.2eV(電子ボルト)以上であり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.0eVから3.2eVの間であることを特徴とする、前記(1)又は(2)記載の透明基材。
(4)前記最内層たる第1の誘電体薄膜の構成物質が、二酸化ハフニウム、二酸化ジルコニウム、タンタル酸カリウム、二酸化錫のいずれかであり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜の構成物質が、二酸化チタンであることを特徴とする、前記(1)乃至(3)記載の透明基材。
(5)前記金属薄膜の構成物質が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、及びチタンとハフニウムとタンタルとジルコニウムのうちの2種以上の元素を含む窒素化合物のいずれかであることを特徴とする、前記(1)乃至(4)記載の透明基材。
(6)光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材を製造する方法であって、ガラスなどの透明基材表面上に、最内層たる第1の誘電体薄膜を堆積する工程と、該第1の誘電体薄膜表面上に、中間層たる赤外反射特性を有する金属薄膜を積層する工程と、該金属薄膜表面上に、可視光照射下においても光触媒性能を有し、且つ該第1の誘電体薄膜よりもエネルギーギャップの小さい最外層たる第2の誘電体薄膜を積層する工程とを有することを特徴とする上記透明基材の製造方法。
(7)前記最内層たる第1の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.0eVから3.2eVの間であり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.0eV以下であることを特徴とする、前記(6)記載の透明基材の製造方法。
(8)前記最内層たる第1の誘電体薄膜の構成物質が、二酸化チタンであり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜の構成物質が、窒素、炭素、硫黄、フッ素のうちの一種以上の元素がドープされた二酸化チタンであることを特徴とする、前記(6)又は(7)記載の透明基材の製造方法。
(9)前記金属薄膜の構成物質が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、及びチタンとハフニウムとタンタルとジルコニウムのうちの2種以上の元素を含む窒素化合物のいずれかであることを特徴とする、前記(6)記載の透明基材の製造方法。
(10)前記(6)から(9)に記載のいずれかの方法により作製された透明基材を構成要素として含む、光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持ち、且つ前記薄膜が被覆されている基材面の反対側から光照射した場合にも光触媒性能を発現する機能を有することを特徴とする構造部材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の第1の態様は、ガラスなどから成る透明基材表面上に、最内層たる屈折率が2.0以上の第1の金属酸化物薄膜を形成し、該第1の金属酸化物薄膜表面上に、中間層たる赤外反射特性を有する金属窒化物薄膜を形成し、該金属窒化物薄膜表面上に、光触媒性能を有する最外層たる第2の金属酸化物薄膜を形成し、且つ該最内層たる第1の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップを、該最外層たる第2の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップよりも大きくせしめることを特徴とするものである。本発明は、上記構成において、該第1の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップを、該第2の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップよりも大きくせしめることにより、太陽光などの光源を用いて、積層膜が被覆されていない透明基材面、即ち、裏面に光照射した場合にも、該第2の金属酸化物薄膜表面において光触媒性能を発現できるという作用をもたらす。
上記作用をもたらす理由は、基材の裏面から光照射された場合、該第1の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップよりも小さいエネルギーを有する光は、該第1の金属酸化物薄膜を透過し、該透過光のうち、該第2の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップよりも大きいエネルギーを有する光は吸収され、該吸収光は、該第2の金属酸化物中で電子正孔対を生成し、光触媒作用に寄与するためである。本発明により、ヒートミラー性能と光触媒性能を併せ持つ積層膜が被覆され、更に、該積層膜が被覆されていない面、即ち、裏面に光照射した場合にも光触媒性能を発現する透明基材を形成できることが実験的に検証された。
本発明において採用される薄膜積層構造としては、例えば、図1に示されるように、石英ガラス基材上三層薄膜が例示され、その順序は、基材は石英ガラス11、最内層が二酸化ジルコニウム12、中間層が窒化ジルコニウム13、最外層が二酸化チタン14である(以後、TiO2 /ZrN/ZrO2 型ヒートミラーと略称する)。まず、前記薄膜積層構造を形成する前に、ガラス基材上に作製した各々の二酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム及び二酸化チタン単層膜の光学特性の評価を行った結果について説明する。図3に、直流(DC)反応性スパッタリング法により作製した二酸化ジルコニウムと二酸化チタンの分光透過率、ならびに交流(RF)反応性スパッタリング法により作製した窒化ジルコニウムの分光反射率を示す。
これより、二酸化ジルコニウム薄膜は、二酸化チタン薄膜と比較して、より波長の短い、即ち、よりエネルギーの大きい光を透過することは明らかである。また、二酸化ジルコニウム薄膜では透過し、且つ二酸化チタン薄膜では吸収する波長域、即ち、280nm−350nmでは、10%−20%の光が、窒化ジルコニウム薄膜によって反射されることになる。良好なヒートミラー特性を有する薄膜積層構造の膜厚を設計するためには、各々の二酸化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、及び二酸化チタン薄膜の光学定数が必要である。光学定数を決定する方法として、分光エリプソメトリ法を用い、例えば、波長範囲を380nmから1700nmとすることが例示される。
一般に、金属薄膜の屈折率は、作製方法や作製条件、ならびに膜厚に大きく依存するため、窒化ジルコニウム薄膜に関しては、目的となる積層構造で一般的に用いられる膜厚、即ち、およそ20nmから30nm、例えば、ここでは25nmの薄膜をガラス基材上に作製し、光学定数が決定される。二酸化ジルコニウムならびに二酸化チタンの分散モデルとしては、所謂コーシーモデルが用いられ、窒化ジルコニウムの分散モデルとしては、所謂ローレンツ振動子モデルが用いられる。コーシーモデルによると、二酸化ジルコニウムの屈折率nZrO2、及び二酸化チタンの屈折率nTiO2は、次式で与えられる。
但し、λは波長、A,B,C,A’,B’,C’はパラメータである。
一方、ローレンツ振動子モデルでは、窒化ジルコニウムの複素屈折率nZrN +ikZrN は以下で与えられる。
但し、Am ,Bm ,Em はm番目の振動子の振幅、幅、中心エネルギーであり、ε0 とEは紫外領域での誘電率と入射光のエネルギーである。これらのモデルを使った場合の各々のパラメータの結果を、表1〜表3に示す。また、380nmから2500nmの波長範囲で導出したそれぞれの屈折率の結果を、図4、図5、及び図6に示す。
これらの結果をもとに、薄膜積層構造の膜厚設計を行った結果、TiO2 /ZrN/ZrO2 型積層膜の膜厚を、TiO2 が32nm、ZrNが22nm、ZrO2 が39nmとした場合に、比較的良好なヒートミラー特性を示すことが予想される。
そこで、スパッタリング法を用いて、図1に示すような薄膜構造の作製を行った。ガラス基材11表面上に、例えば、直流(DC)反応性マグネトロンスパッタリング法により、膜厚が39nmの二酸化ジルコニウム膜12を形成する。スパッタリング法の成膜条件は、用いたターゲット材料は、例えば、純度99.9%の金属ジルコニウムタブレットであり、用いた導入ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスであり、例えば、成膜時の全ガス圧は、0.5Paであり、そのうち、酸素の分圧は15%である。また、例えば、成膜時の基板温度は350℃であるが、この場合、無加熱で非晶質の二酸化ジルコニウム薄膜を成膜した後、350℃で熱処理を施して多結晶の二酸化ジルコニウム薄膜を形成させても良い。しかし、成膜条件は、これらに制限されるものではない。
続いて、該二酸化ジルコニウム膜12上に、例えば、13.56MHzの高周波(RF)反応性マグネトロンスパッタリング法により、基板温度300℃で膜厚22nmの窒化ジルコニウム膜13を形成する。スパッタリング法の成膜条件は、用いたターゲット材料は、例えば、純度99.9%の金属ジルコニウムタブレットであり、用いた導入ガスは、アルゴンと窒素の混合ガスであり、例えば、成膜時の全ガス圧は、0.3Paであり、そのうち、窒素の分圧は5%である。続いて、該窒化ジルコニウム膜13上に、例えば、DC反応性マグネトロンスパッタリング法により、光触媒機能薄膜たる膜厚32nmの二酸化チタン膜14を形成する。
スパッタリング法の成膜条件は、用いたターゲット材料は、例えば、純度99.9%の金属チタンタブレットであり、用いた導入ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスであり、例えば、成膜時の全ガス圧は、0.3Paであり、そのうち、酸素の分圧は7%である。該二酸化チタン膜14は、例えば、成膜時の基板温度は350℃であるが、この場合、無加熱で非晶質の二酸化チタン膜を成膜した後、350℃で熱処理を施して多結晶の二酸化チタン薄膜を形成させても良い。しかし、成膜条件は、これらに制限されるものではない。
前記工程によって作製された試料の透過率及び反射率の分光特性を、図7に示す。図7中において、波長380nmから760nmの可視光領域において、透過率が0.6から0.7の間であり、波長760nm以上の近赤外及び中赤外領域で反射率が約0.6であり、優れたヒートミラー性能を有していることは明らかである。前記工程により、ヒートミラー性能と光触媒性能を併せ持つ薄膜が被覆され、該積層膜が被覆されている基材面とは反対側、即ち、裏面に光照射した場合にも光触媒性能を発現できる透明基材を製造することができることが分かる。
次に、図2を参照して、本発明の第2の態様について説明する。
本発明の第2の態様は、ガラスなどから成る透明基材表面上に、最内層たる屈折率が2.0以上の第1の金属酸化物薄膜を形成し、該第1の金属酸化物薄膜表面上に、中間層たる赤外反射特性を有する金属窒化物薄膜を形成し、該金属窒化物薄膜表面上に、可視光に応答する光触媒性能を有し、且つ該第1の金属酸化物薄膜よりもエネルギーギャップの小さい最外層たる第2の金属酸化物薄膜を形成することを特徴とするものである。本発明は、上記構成において、該第2の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップを、該第1の金属酸化物薄膜のエネルギーギャップよりも小さくせしめ、且つ該第2の金属酸化物薄膜に可視光で応答する光触媒性能を発現せしめることにより、太陽光などの光源を用いて、積層膜が被覆されていない透明基材面、即ち、裏面に光照射した場合にも、該第2の金属酸化物薄膜表面において光触媒性能を発現でき、且つ太陽光の可視成分も光触媒機能に寄与せしめられるという第1の作用をもたらすとともに、積層膜が被覆されている透明基材表面もしくは裏面に、蛍光ランプなどの可視光源を用いて光照射した場合にも、該第2の金属酸化物薄膜表面において光触媒性能を発現できるという第2の作用をもたらす。
更に、本発明により、ヒートミラー性能と光触媒性能を併せ持つ積層膜が被覆され、該積層膜が被覆されていない面、即ち、裏面に光照射した場合にも光触媒性能を発現し、更には、該積層膜が被覆されている表面に可視光を照射した場合にも光触媒性能を発現する透明基材を形成できることが実験的に検証された。可視光を照射した場合にも光触媒性能を発現させる手段として、例えば、先行技術文献(例えば、特開2001- 205103号公報)に開示されているように、二酸化チタン薄膜結晶中の酸素サイトの一部を窒素で置換して、窒素組成比を0%から13%の間にせしめることが有効である(以後、窒素ドープされた二酸化チタンは、TiO2 :Nと略称する)。二酸化チタン中に窒素を配置せしめると、酸素の特性を支配する半導体の価電子帯が影響を受け、バンドギャップが狭くなり、その結果、窒素がドープされていない場合よりも低エネルギーの可視領域の光をも吸収して、光触媒性能を発現する。
本発明において採用される薄膜積層構造としては、図2に示されるように、石英ガラス基材上三層薄膜が例示され、その順序は、基材が石英ガラス21、最内層が二酸化チタン22、中間層が窒化チタン23、最外層が窒素ドープされた二酸化チタン24である(以後、TiO2 :N/TiN/TiO2 型ヒートミラーと略称する)。まず、ガラス基材21上に、例えば、直流(DC)反応性マグネトロンスパッタリング法により、膜厚が40nmの二酸化チタン膜22を形成する。
スパッタリング法の成膜条件は、用いたターゲット材料は、例えば、純度99.9%の金属チタンタブレットであり、用いた導入ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスであり、例えば、成膜時の全ガス圧は、0.3Paであり、そのうち、酸素の分圧は8%である。
また、該二酸化チタン膜22は、例えば、成膜時の基板温度は350℃であるが、この場合、無加熱で非晶質二酸化チタン膜を成膜した後、350℃で熱処理を施して多結晶の二酸化チタン膜を形成させても良い。しかし、成膜条件は、これらに制限されるものではない。
続いて、該二酸化チタン膜22上に、例えば、13.56MHzの高周波(RF)反応性マグネトロンスパッタリング法により、無加熱で膜厚20nmの窒化チタン膜23を形成する。スパッタリング法の成膜条件は、用いたターゲット材料は、例えば、純度99.9%の金属チタンタブレットであり、用いた導入ガスは、アルゴンと窒素の混合ガスであり、例えば、成膜時の全ガス圧は、0.5Paであり、そのうち、窒素の分圧は1.5%である。続いて、該窒化チタン膜23上に、例えば、13.56MHzの高周波(RF)反応性マグネトロンスパッタリング法により、無加熱で膜厚40nmの窒化ドープされた二酸化チタン膜24を形成し、その後、アニール処理することにより、多結晶膜とせしめる。
スパッタリング法の成膜条件は、用いたターゲット材料は、例えば、二酸化チタンタブレットであり、用いた導入ガスは、アルゴンと窒素の混合ガスであり、例えば、成膜時の全ガス圧は、0.5Paであり、そのうち、窒素の分圧は40%である。更に、アニール処理の条件として、例えば、10Paの窒素雰囲気中で基板温度400℃で4時間保持することが例示される。前記工程により、ヒートミラー性能と光触媒性能を併せ持つ薄膜が被覆され、該積層膜が被覆されている基材面とは反対側、即ち、裏面に可視光照射した場合にも光触媒性能を発現できる透明基材を製造することができることが分かる。
本発明により、光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ積層薄膜を透明基材上に形成でき、且つ該積層薄膜は、裏面から光照射した場合にも光触媒性能を発現できる。本発明において、光触媒性能とは、第1に、光照射下において、無機化合物、有機化合物、微生物菌体等の物質を分解させる機能であり、より具体的には、ホルムアルデヒド、窒素酸化物等の人体に有害な影響を及ぼす物質の分解機能、悪臭の原因物質の分解機能であり、水及び空気などの浄化機能であり、第2に、光照射下において、超親水性を示し、且つ光照射が遮断され暗所に保持された後も、該超親水性がある程度持続される機能であり、より具体的には、空気中の湿分や湯気が結露しても、凝縮水は個々の水滴を形成することなく一様な水膜になるため、前記透明基材表面において光散乱性の曇りが良く際される機能であり、更に、前記透明基材表面に付着した煤塵や汚染物は、降雨若しくは放水等により一様に洗い流されることにより、前記透明基材表面はセルフクリーニングされ、それ故視認性や美観が維持できる機能である。
また、本発明において、ヒートミラー性能とは、可視領域で透過率が高く、赤外領域で反射率が高い光学特性であり、より具体的には、太陽光の可視光成分は導入し、赤外光成分は導入しない効果であり、冷房負荷軽減などの省エネルギー機能である。前記のような光触媒ヒートミラーを、オフィスビルや住宅の窓ガラスに用いることにより、より具体的には、前記積層薄膜を室内側にして用いることにより、ヒートミラー性能による冷房負荷軽減などの省エネルギー効果と、光触媒性能による有害物質の除去などの室内空気浄化効果は絶大なものになる。また、前記のような光触媒ヒートミラーを、自動車や電車などのサイドガラスやルーフガラスに用いることにより、より具体的には、前記積層薄膜を室内側にして用いることにより、ヒートミラー機能による冷房負荷軽減及びそれによる石油資源節減の効果と、光触媒機能による防汚、防曇効果及びそれにより向上する運転安全性の向上効果は絶大なものになる。
また、前記のような光触媒ヒートミラーを、自動車などのリアガラスに用いることにより、より具体的には、前記積層薄膜を室内側にして用いることにより、ヒートミラー機能による冷房負荷軽減及びそれによる石油資源節減の効果と、光触媒機能による防汚、防曇効果及びそれにより向上する運転安全性の向上効果は絶大なものになるのみならず、一般に、リアガラスにプリントされている防曇用熱線を必要としなくてもすむため、車両の美観向上効果や熱線作動コストのカットの効果も奏される。また、前記のような光触媒ヒートミラーを、電子レンジ及びオーブンレンジの覗き窓、冷凍若しくは冷蔵用ショーケースのガラスに用いることにより、より具体的には、前記積層薄膜をレンジ内及びショーケース内側にして用いることにより、ヒートミラー機能によるレンジ内及びショーケース内の保温効果及びそれによる省エネルギー効果と、光触媒機能によるレンジ内及びショーケース内の防汚効果と細菌死滅化効果及びそれによる食品衛生上の安全性向上効果は絶大なものになる。
本発明は、このような光触媒ヒートミラーを、任意の透明構造体の表面に形成して複合化した複合体を提供することができる。ここで、任意の透明構造体とは、具体的には、ポリカーボネート、食品包装用ラップフィルム、PMMA、PET等である。このような光触媒ヒートミラーを、任意の建造物の窓ガラス部材として用いることにより、人類が解決すべき喫緊の課題である「ヒートアイランド現象」と「シックハウス症候群」を同時に緩和する効果は絶大なものになる。
本発明により、(1)光触媒性能とヒートミラー特性を併せ持つ積層薄膜を表面に形成した透明基材を製造し、提供することができる、(2)前記積層薄膜が被覆されている透明基材面とは反対側、即ち、裏面に光照射した場合にも光触媒性能を発現させることが可能な透明基材を提供することができる、(3)耐候性があり、窓材等として単板で使用可能な、光触媒機能とヒートミラー性能を併せ持つ新しいタイプの透明基材を提供することができる、(4)多機能性窓ガラス等として高い性能を発揮する新しい高機能性ガラスを提供することができる、という格別の効果が奏される。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
ガラスから成る透明基板に、直流(DC)反応性スパッタリング法により、ヒートミラー最内層たる二酸化ジルコニウム膜を形成した。該二酸化ジルコニウム膜は、多結晶構造を有し、膜厚39nmであった。スパッタリング法の成膜条件は、ターゲット材料としては、純度99.9%の金属ジルコニウムタブレットが用いられ、スパッタリング出力は800Wが投入された。ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスが導入され、成膜時の全ガス圧は、0.5Paであり、そのうち、酸素の圧力は9%であった。また、成膜時の基板温度は300℃としたが、この場合、無加熱で非晶質二酸化ジルコニウム薄膜を成膜した後、300℃で熱処理を施して多結晶の二酸化ジルコニウム薄膜を形成させることもできる。
続いて、該二酸化ジルコニウム膜上に、交流(RF)反応性スパッタリング法により、ヒートミラー中間層たる窒化ジルコニウム膜を形成した。該窒化ジルコニウム膜は、多結晶構造を有し、膜厚22nmであった。スパッタリング法の成膜条件は、ターゲット材料としては、純度99.9%の金属ジルコニウムタブレットが用いられ、RFスパッタリング出力は、周波数13.56MHz、200Wであった。ガスは、アルゴンと窒素の混合ガスが用いられ、成膜時の全ガス圧は0.1Paであり、そのうち、窒素の分圧は6%であった。また、成膜時の基板温度は300℃としたが、この場合、例えば、無加熱でも多結晶構造を有する窒化ジルコニウム薄膜を形成することができる。
続いて、該窒化ジルコニウム薄膜上に、直流(DC)反応性スパッタリング法により、ヒートミラー最外層たる二酸化チタン膜を形成した。該二酸化チタン膜は、多結晶構造を有し、膜厚32nmであった。スパッタリング法の成膜条件は、ターゲット材料としては、純度99.9%の金属チタンタブレットが用いられ、スパッタリング出力は800Wが投入された。ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスが導入され、成膜時の全ガス圧は、0.3Paであり、そのうち、酸素の圧力は13%であった。また、成膜時の基板温度は300℃としたが、この場合、無加熱で非晶質二酸化チタン薄膜を成膜した後、300℃で熱処理を施して多結晶の二酸化チタン薄膜を形成させることもできる。
図7に、本実施例1の工程によって作製された試料の透過率及び反射率の分光特性を示す。図7から明らかなように、本実施例1によって作製された試料は、波長380nmから760nmの可視領域で、透過率が0.6から0.7の間であり、波長760nmから2500nmの近赤外及び中赤外領域で、反射率が約0.6であり、優れたヒートミラー性能を有していることが分かった。
続いて、本実施例1の工程によって作製された試料の光触媒性能を、図8に示すような、アセトアルデヒドガスの分解性能試験装置で評価した。本装置は、100WのXeランプ81、内容積が180cm3 のステンレス製の筒状容器82、ガス導入用配管83、排気用配管84,ガスクロマトグラフ測定装置85からなる。該筒状容器82は、片側に石英窓が具備されており、この窓を通して容器内にXeランプ光を照射することができる。もう一方の側に扉が具備されており、容器内に30mm×30mmまでの大きさにカットされた試料86を設置できる。
該筒状容器81は、該排気用配管84を通して真空排気された後、該ガス導入配管83を通して、例えば、300ppmのアセトアルデヒド及び1%の水を含む空気ガスが導入された。該試料86の積層薄膜が被覆されていない側、即ち、裏面を該Xeランプ光源81に向けて設置した場合と、前記積層薄膜が被覆されている表面側を該Xeランプ光源81に向けて設置した場合について、該Xeランプ81を光源とした紫外光が石英窓を通して照射され、光触媒反応が開始された。その後、図8に示すような、ガスクロマトグラフ測定装置85中に、一定の時間毎にガスサンプルを取り込み、アセトアルデヒドの分解生成物である二酸化炭素の濃度測定を行った。その結果を表4に示す。
表4から明らかなように、本実施例1の工程によって作製されたTiO2 /ZrN/ZrO2 型ヒートミラーにおいて、裏面を光源側にして設置して測定した場合のCO2 生成速度は、表面を光源側にして測定した場合と比較して、50%程度になっていた。一方、比較のために作製した従来型のTiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーについても光触媒性能の評価を行ったところ、裏面を光源側にして設置して測定した場合のCO2 生成速度は、表面を光源側にして測定した場合と比較して、26%程度まで値が小さくなっていた。これらの結果より、本実施例1によって作製されたTiO2 /ZrN/ZrO2 型ヒートミラーは、従来型のTiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーと比較して、裏面に光照射した場合においても高い光触媒性能を発現することは明らかである。
ガラスから成る透明基板に、例えば、直流(DC)反応性マグネトロンスパッタリング法により、ヒートミラー最内層たる二酸化チタン膜を形成した。該二酸化チタン膜は、多結晶構造を有し、膜厚42nmであった。スパッタリング法の成膜条件は、ターゲット材料としては、純度99.9%の金属チタンタブレットが用いられ、スパッタリング出力は800Wが投入された。ガスは、アルゴンと酸素の混合ガスが導入され、成膜時の全ガス圧は、0.3Paであり、そのうち、酸素の分圧は8%であった。また、成膜時の基板温度は350℃としたが、この場合、無加熱で非晶質二酸化チタン膜を成膜した後、350℃で熱処理を施して多結晶の二酸化チタン膜を形成させることもできる。
続いて、該二酸化チタン膜上に、交流(RF)反応性マグネトロンスパッタリング法により、ヒートミラー中間層たる窒化チタン膜を形成した。該窒化チタン膜は、多結晶構造を有し、膜厚20nmであった。スパッタリング法の成膜条件は、ターゲット材料としては、純度99.9%の金属チタンタブレットが用いられ、RFスパッタリング出力は、周波数13.56MHz、120Wであった。ガスは、アルゴンと窒素の混合ガスが導入され、成膜時の全ガス圧は、0.5Paであり、そのうち窒素の分圧は1.5%であった。また、成膜時の基板温度は300℃としたが、この場合、例えば、無加熱でも多結晶構造を有する窒化チタン膜が形成できる。
続いて、該窒化チタン膜上に、交流(RF)反応性マグネトロンスパッタリング法により、ヒートミラー最外層たる窒化ドープされた二酸化チタン膜を形成した。該窒素ドープされた二酸化チタン膜は、非晶質構造を有し、膜厚40nmであった。スパッタリング法の成膜条件は、ターゲット材料として、二酸化チタンタブレットが用いられ、スパッタリング出力は、周波数13.56MHz、500Wであった。ガスは、アルゴンと窒素の混合ガスが導入され、成膜時の全ガス圧は、0.5Paであり、そのうち、窒素の分圧は40%であった。
続いて、該窒素ドープされた二酸化チタン膜は、アニール処理が施されることにより、多結晶構造とせしめられた。アニール処理の条件として、例えば、10Paの窒素雰囲気中で基板温度400℃で4時間保持した。本実施例2の工程によって作製されたTiO2 :N/TiN/TiO2 型ヒートミラーは、波長380nmから760nmの可視領域で0.6以上の透過率を示し、波長760nm以上の赤外領域で約0.6の反射率がを示していたことから、優れたヒートミラー性能を有していることが分かった。
続いて、本実施例2の工程によって作製された試料の光触媒性能を、図8に示すようなアセトアルデヒドガスの分解性能試験装置で評価した。ここで、図8中のXeランプ81から照射される光は、光学フィルタを用いて波長410nm以下の紫外光成分を取り除いて、可視光成分のみを取り出した。本実施例2の工程によって作製されたTiO2 :N/TiN/TiO2 型ヒートミラーでは、裏面を可視光源側に設置して測定した場合のCO2 生成速度は、表面を可視光源側に設置して測定した場合のCO2 生成速度と比較して、約50%程度の値であった。
一方、比較のために作製した従来型のTiO2 /TiN/TiO2 型ヒートミラーについても同様の光触媒性能評価を行ったところ、裏面を可視光源側に設置して測定した場合も、表面を可視光源側に設置して測定した場合も、CO2生成速度はほぼゼロであった。これは、TiO2 膜が波長410nm以上の可視光成分を吸収せず、TiO2 膜内部において電子−正孔対が生成されないため、アセトアルデヒドの分解反応が進行しないものと考えられる。これらの結果より、本実施例2によって作製されたTiO2 :N/TiN/TiO2 型ヒートミラーは、裏面に可視光照射した場合においても高い光触媒性能を発現することは明らかである。
以上詳述したように、本発明は、光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材及びその製造方法に係るものであり、本発明により、ガラスなどからなる透明基材表面に、誘電体層、金属層、及び誘電体層の順に所望の膜厚に積層された、上記金属層は熱線反射特性を有し、最内層及び最外層の誘電体層は、可視領域において反射防止特性を有し、且つ最外層の誘電体層は光触媒性能を有し、上記積層膜が被覆されている透明基材面とは反対側、即ち、裏面に光照射した場合にも光触媒性能を発現させることが可能な新しい透明基材を製造し、提供することができる。本発明は、多機能性窓ガラス等として高い性能を発揮する新しいタイプの高機能性ガラス等を提供するものとして有用である。
図1は、本発明の第1の態様に係る製造工程によって作製された積層構造の概略図である。 図2は、本発明の第2の態様に係る製造工程によって作製された積層構造の概略図である。 図3は、ガラス基材上に作製した二酸化ジルコニウム単層膜の透過率、ガラス基材上に作製した窒化ジルコニウム単層膜の反射率、及びガラス基材上に作製した二酸化チタン単層膜の透過率である。 図4は、分光エリプソメトリで決定した二酸化ジルコニウム薄膜の光学定数を示す。 図5は、分光エリプソメトリで決定した二酸化チタン薄膜の光学定数を示す。 図6は、分光エリプソメトリで決定した窒化ジルコニウム薄膜の光学定数を示す。 図7は、本発明の第1の態様に係る製造工程によって作製されたTiO2 /ZrN/ZrO2 型ヒートミラー試料の透過率及び反射率の分光特性を示す。 図8は、光触媒効果の測定に用いた装置の一例を示す。
符号の説明
11 石英ガラスなどから成る基板
12 二酸化ジルコニウム膜
13 窒化ジルコニウム膜
14 二酸化チタン膜
21 石英ガラスなどから成る基板
22 二酸化チタン膜
23 窒化チタン膜
24 窒素ドープされた二酸化チタン膜
81 100WのXeランプ
82 内容積が180cm3 のステンレス製の筒状容器
83 ガス導入用配管
84 排気用配管
85 ガスクロマトグラフ測定装置
86 作製された試料

Claims (10)

  1. 光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材であって、(1)ガラスなどの透明基材表面上に、最内層たる第1の誘電体薄膜、中間層たる赤外反射特性を有する金属薄膜、及び最外層たる第2の誘電体薄膜が被覆されている、(2)可視領域で透過率が高く赤外領域で反射率が高い特長を有するヒートミラー性能と、光照射下において無機化合物・有機化合物を分解させる光触媒性能とを併せ持つ、且つ(3)前記薄膜が被覆されている基材面の反対側から光照射した場合にも光触媒性能を発現する機能を有する、ことを特徴とする透明基材。
  2. ガラスなどの基材表面上に、最内層たる第1の誘電体薄膜を堆積する工程、該第1の誘電体薄膜表面上に、中間層たる赤外反射特性を有する金属薄膜を積層する工程、及び該金属薄膜表面上に、光触媒性能を有し、且つ該第1の誘電体薄膜よりもエネルギーギャップの小さい最外層たる第2の誘電体薄膜を積層する工程、により作製されたことを特徴とする請求項1記載の透明基材。
  3. 前記最内層たる第1の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.2eV(電子ボルト)以上であり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.0eVから3.2eVの間であることを特徴とする、請求項1又は2記載の透明基材。
  4. 前記最内層たる第1の誘電体薄膜の構成物質が、二酸化ハフニウム、二酸化ジルコニウム、タンタル酸カリウム、二酸化錫のいずれかであり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜の構成物質が、二酸化チタンであることを特徴とする、請求項1乃至3記載の透明基材。
  5. 前記金属薄膜の構成物質が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、及びチタンとハフニウムとタンタルとジルコニウムのうちの2種以上の元素を含む窒素化合物のいずれかであることを特徴とする、請求項1乃至4記載の透明基材。
  6. 光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持つ透明基材を製造する方法であって、ガラスなどの透明基材表面上に、最内層たる第1の誘電体薄膜を堆積する工程と、該第1の誘電体薄膜表面上に、中間層たる赤外反射特性を有する金属薄膜を積層する工程と、該金属薄膜表面上に、可視光照射下においても光触媒性能を有し、且つ該第1の誘電体薄膜よりもエネルギーギャップの小さい最外層たる第2の誘電体薄膜を積層する工程とを有することを特徴とする上記透明基材の製造方法。
  7. 前記最内層たる第1の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.0eVから3.2eVの間であり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜のエネルギーギャップが、3.0eV以下であることを特徴とする、請求項6記載の透明基材の製造方法。
  8. 前記最内層たる第1の誘電体薄膜の構成物質が、二酸化チタンであり、且つ前記最外層たる第2の誘電体薄膜の構成物質が、窒素、炭素、硫黄、フッ素のうちの一種以上の元素がドープされた二酸化チタンであることを特徴とする、請求項6又は7記載の透明基材の製造方法。
  9. 前記金属薄膜の構成物質が、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、及びチタンとハフニウムとタンタルとジルコニウムのうちの2種以上の元素を含む窒素化合物のいずれかであることを特徴とする、請求項6記載の透明基材の製造方法。
  10. 請求項6から9に記載のいずれかの方法により作製された透明基材を構成要素として含む、光触媒性能とヒートミラー性能を併せ持ち、且つ前記薄膜が被覆されている基材面の反対側から光照射した場合にも光触媒性能を発現する機能を有することを特徴とする構造部材。

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