以下に、本発明に係るプラズマディスプレイパネル等のパネル製造システムの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係るプラズマディスプレイパネル等のパネル製造システムは概略的には図1〜図4に示すように、閉ループ状に形成された循環経路1と、循環経路1上を、走行・停止を繰り返しつつ順次に移動する複数のカート2と、これらカート2に設けられ、重ね合わされた少なくとも一組の一対の基板3,3が搭載される基板搭載部4と、これらカート2に設けられ、排気管5が一対の基板3の一方に対面するようにして着脱自在に装着される排気管装着部6と、これらカート2に設けられ、排気管装着部6に接続されて排気管5を介して排気処理を行う排気装置7と、循環経路1に設備され、走行するカート2上の少なくとも一組の一対の基板3相互の接合および排気管5の基板3への接合のために熱処理を行うとともに、カート2の排気装置7により排気管5を介して一対の基板3間からの排気処理が行われる熱処理炉8と、循環経路1に、カート2の走行方向に沿って熱処理炉8と隣接させて設備された積み卸し部9と、積み卸し部9に、重ね合わせた一対の基板3や排気管5を搬入する搬入系としての基板搬入用コンベア10および排気管搬入用コンベア11と、積み卸し部9に設けられ、制御情報に基づいて動作されて、熱処理炉8に装入されるカート2に対して、排気管装着部6および基板搭載部4への排気管5および一対の基板3の供給を行うとともに、熱処理炉8から抽出されたカート2に対して、基板3と接合されている排気管5の封止・切断および切断後に残留する排気管5の撤去と、排気管5が切断されて完成されたパネルの荷下ろしを行う作業ロボット12〜15と、積み卸し部9からパネルを搬出する搬出系としてのパネル搬出用コンベア16と、これらカート2、排気装置7、熱処理炉8、搬入系である基板搬入用コンベア10、排気管搬入用コンベア11、作業ロボット12〜15、並びに搬出系であるパネル搬出用コンベア16を制御する制御手段17〜20とを備えて構成される。
積み卸し部9は、循環経路1を移動するカート2の走行方向に見ると、熱処理炉8と隣接する関係にあり、カート2への基板3や排気管5の供給作業や、カート2からの製品化されたパネルの荷下ろし作業を行う場所として設けられる。積み卸し部9には、搬入系として、フリットシールを介して重ね合わせた状態の一対の基板3を搬入する基板搬入用コンベア10や、フリットシール21が上端に設けられた排気管5を搬入する排気管搬入コンベア11と、搬出系として、完成されたパネルを搬出するパネル搬出用コンベア16が設けられる。カート2は、熱処理炉8から抽出されたパネルが搬出された後、新たに基板3と排気管5とが供給され、再び熱処理炉8へと装入される。
また積み卸し部9には、各種作業を行う作業ロボット12〜15が適宜配置される。具体的には、熱処理炉8の装入口8a側には、当該熱処理炉8へ向かうカート2の走行方向に沿って、カート2への排気管5や基板3の組立順序に従い、排気管ハンドリングロボット12と、基板搭載ロボット13が順次設けられる。排気管ハンドリングロボット12は、排気管5を排気管搬入用コンベア11からカート2の排気管装着部6に供給し、基板搭載ロボット13は、互いに重ね合わされた一対の基板3を基板用搬入コンベア10からカート2の基板搭載部4に供給する。また熱処理炉8の抽出口8b側には、当該熱処理炉8から抽出されたカート2の走行方向に沿って、排気管封止切断ロボット14と、パネル荷下ろしロボット15が順次設けられる。
排気管封止切断ロボット14は、基板3に接合されて排気処理に用いられた排気管5を封止しかつ切断するとともに、切断された排気管5を排気管装着部6から撤去する。またパネル荷下ろしロボット15は、排気管5が切断されることで完成されたパネルをカート2から荷下ろしして、パネル搬出用コンベア16に移載する。さらに、積み卸し部9には、適宜箇所に、カート2の走行や、排気装置7などカート2上の各種機器を制御するカート制御盤17、熱処理炉8の運転を制御する炉制御盤18、各種ロボットをそれぞれ制御する複数のロボット制御盤19、そして基板3や排気管5の搬入用コンベア10,11やパネル搬出用コンベア16を含む設備全体をコントロールする主制御盤20が設けられる。
循環経路1は、工場設備内に設置される。この循環経路1は、互いに平行に一対並設され、例えば8つの車輪22を備えるカート2がその上を走行するレール23と、これらレール23の両端にそれぞれ設けられ、カート2をレール23相互間で乗り移りさせる一対のカート・トラバーサー24,25とから、全体として矩形状の閉ループ状に形成される。一対のレール23の一方には、これに沿って熱処理炉8が設けられる。他方のレール23は、熱処理炉8に並設する配置で設定された積み卸し部9に沿って設けられる。
この循環経路1には、順次に移動する複数のカート2が設けられ、これらカート2は、積み卸し部9に沿って他方のレール23上を走行移動し、図中、レール23の左端に達すると、カート2を熱処理炉8へ装入するための装入用カート・トラバーサー24により、一方のレール23へと乗り移り、その後、熱処理炉8内を経過して走行移動し、図中、レール23の右端に達すると、カート2を積み卸し部9へと抽出するための抽出用カート・トラバーサー25により、他方のレール23へと乗り移るように、循環経路1を循環移動するようになっている。これらカート2は、走行と停止を繰り返す、いわゆるタクト運転により、順次に積み卸し部9と熱処理炉8との間を循環経路1に沿って走行される。
製造工程の自動制御化のために、本実施形態に係るパネル製造システムにあっては、各カート2毎に走行・停止操作を行うことが可能な駆動機構を備えるとともに、停止したカート2を循環経路1に対して固定状態とするために、図5に示すように、カート2に係脱自在に係合するロック装置26が備えられる。まず、駆動機構について説明すると、各レール23には、複数のカート2下に一連に配置して、レール方向に一定のストロークで反復的に前後進駆動され、かつその軸周りに一定の回転角度で反復的に正逆転駆動される駆動バー27が設けられる。この駆動バー27には、各カート2下に設けた係合部28それぞれに係脱自在に係合する複数の突起29が設けられる。
駆動バー27は、各カート2の係合部28それぞれに各突起29が係合した状態で前進方向へ駆動され、その後停止されることで、複数のカート2個々を、同時に一定ストロークで前進させ、その後正転方向へ回転駆動されることで係合部28から突起29が離脱し、次いで、カート2が停止している状態で、後進方向へ駆動されて停止され、再度逆転方向へ回転駆動されることで各突起29がカート2の係合部28にそれぞれ係合し、この状態で再度前進方向へ駆動される動作が繰り返されて、複数のカート2個々を、走行・停止を繰り返しつつ一挙に一定ストロークで移動させるようになっている。また、カート2の走行は図2に示すように、その左右方向がサイドガイド30にて案内される。
そしてこのカート2の停止時に、カート2の静止状態を維持するために、これらカート2の停止位置に配置して、カート2の係合部28に係脱自在に係合するロック装置26が設けられる。このロック装置26は、例えばレール23側に固定した図示しないシリンダ機構と、このシリンダ機構によって係合部28に向かって進退駆動されるロック片31とから構成される。ロック片31はシリンダ機構により、カート2が停止して駆動バー27の突起29が離脱したことに応じて係合部28に係合し、また突起29が係合することに応じて係合部28から離脱されるようになっていて、これにより、自動制御に便利なように、停止時のカート2の静止状態を保持することができる。カート2の走行機構は、ラックアンドピニオンを用いた自走式とすることでも、ほぼ同様に構成することができる。
カート2には図2などに示すように、基板搭載部4が設けられる。この基板搭載部4には、予め互いに重ね合わせた状態の一対の基板3がこれを一組として、横向きに寝かせて、あるいは縦向きに立てた状態で、複数組搭載される。図示例にあっては、複数の基板3を横置き状態で多段に搭載する形式の基板搭載部4が示されていて、この基板搭載部4は、カート2上に立設された4本の支柱32と、これら支柱32により支持された複数のサポート梁33と、これらサポート梁33に突設されて各基板3を複数の箇所で支持するサポート34とから構成される。
基板3は、ガラス製や合成樹脂製、金属製などで形成される。一対の基板3は、いずれか一方の基板3の外周縁部にフリットシールを塗布した状態で他方の基板3を重ね合わせ、さらに図6に示すように、これら基板3をクリップ35等の治具で挟み込んで一体化した状態で取り扱われる。また、いずれか一方の基板3には、コーナ部近傍に位置させて、熱処理炉8内でのこれら基板3間からの排気処理のために、またプラズマディスプレイパネルを製造する際には、排気処理後の放電ガスの注入などのために、排気管5が接合される通気孔36が形成される。
カート2にはまた、複数搭載される基板3の組数に対応させて、複数の排気管装着部6が設けられる。カート2上には、図15などに示すように、基板搭載部4の外側であって基板3の通気孔36位置に近接させて1本の取り付け柱37が設けられるとともに、この取り付け柱37の高さ方向に多段に張り出し部38が設けられ、複数の排気管装着部6は、これら張り出し部38それぞれに取り付けられる。そして各排気管装着部6に、排気管5がそれぞれ着脱自在に装着される。排気管5は、各サポート34上に支持される一対の基板3のうち、通気孔36を有する基板3に下側から対面するようにして、その下方部分が排気管装着部6に挿入されて取り付けられる。この排気管5には、当該基板3に面する上端にフリットシール21が塗布して設けられる。
特に、排気管5や一対の基板3をカート2に供給する排気管ハンドリングロボット12や基板搭載ロボット13は、自動制御化に適合する供給動作として、少なくとも一組の一対の基板3の基板搭載部4への搭載操作と同時に一方の基板3に排気管5を対面させる組み立てを完了するために、排気管5を排気管装着部6に装着した後に、一対の基板3を基板搭載部4に搭載するように、ロボット制御盤19によって作動制御される。
これら排気管装着部6には、これに装着した排気管5を利用して一対の基板3間から排気処理を行うために、カート2に搭載された排気装置7が接続される。排気処理は、熱処理炉8内にてカート2を走行させながら行われる。排気装置7は図4に示すように、排気ポンプ39と、排気すべく開閉自在に開放される排気バルブ40と、一対の基板3間圧力が設定圧力に達したことを検出して排気バルブ40を閉止するコントローラ41とを備え、排気処理の自動制御が達成される。
また、カート2は必要に応じて、プラズマディスプレイパネルを製造する場合に必要な放電ガスを基板3間に注入するために、排気処理後であって排気管5の封止・切断の前に、排気管装着部6の排気管5を介して、一対の基板3間に放電ガスを注入する放電ガス供給装置42を備える。放電ガス供給装置42は、放電ガス供給源43と、放電ガス供給源43から排気管5へ放電ガスを供給すべく開閉自在に開放される供給バルブ44と、一対の基板3間圧力が設定圧力に達したことを検出して供給バルブ44を閉止するコントローラ41とを備え、放電ガス注入作業の自動化が達成される。放電ガスの注入を行わない場合には、排気処理によって中空のパネルが形成されることになる。
各排気管装着部6には、それぞれ電磁式開閉弁45を有する個別の配管46を介してヘッダ47が接続され、このヘッダ47には、排気バルブ40を有する排気配管48を介して排気ポンプ39が、また供給バルブ44を有する給気配管49を介してボンベ等の放電ガス供給源43が接続される。ヘッダ47は、排気ポンプ39や放電ガス供給源43で、複数組の基板3に対する排気処理や放電ガス封入処理を一括して連続的に行うために設置される。コントローラ41は、圧力計50と制御器51とから構成される。ヘッダ47には、各組の基板3間の圧力を検知するために圧力計50が設けられる。圧力計50の検知出力は制御器51に出力され、制御器51は、各バルブ40,44の開閉や、排気ポンプ39の作動などを制御する。
排気処理では、排気バルブ40および個別配管46の電磁式開閉弁45がともに開放されて各基板3間が排気ポンプ39と連通され、各基板3間は10-4〜10-7Torrまで排気される。放電ガスの注入処理では、排気ポンプ39が停止され、排気バルブ40が閉じられるとともに、供給バルブ44が開放され、放電ガス供給源43から、例えば、Ne,Ar,Xe等の放電ガスが基板3間に400〜700Torrまで注入される。
排気処理については、ヘッダ47に、排気配管48および給気配管49に対して切り換え可能に、図示しない電磁式開閉弁を介してパージガス供給管を接続するようにし、排気処理の初期に、基板3間から排気し、ついでパージガスを基板3間に供給し、その後再度基板3間から排気するパージ工程を設定するようにしても良い。
熱処理炉8は図3に示すように、カート2の移動方向に沿う装入口8a側から抽出口8b側に向かって順次に、それぞれ複数のゾーンからなる封着処理ブロックA、排気処理ブロックB、および冷却処理ブロックCに分けて構成され、各ブロックA〜Cは必要な熱処理操作のために異なる炉内温度に設定され、熱処理炉8内を走行するカート2は各ブロックA〜Cで当該炉内温度の炉内雰囲気に晒される。熱処理炉8の炉床には、炉床下のレール23でカート2を走行させるために、全長にわたって開口部が形成される一方で、カート2には、当該開口部を封鎖する断熱部材が設けられ、レール23上を複数のカート2が互いに隣接した状態で連続的に走行されることで、当該炉床の開口部はこれらカート2の断熱部材によって封鎖された状態となる。
順次封着温度まで炉内雰囲気が上昇される封着処理ブロックAと、封着温度よりも若干低い排気温度に一定に保たれる排気処理ブロックBには、炉体内に設けた循環バッフルにより形成された循環通路に、ラジアントチューブバーナまたは電熱ヒータ等の熱源が配置され、炉内雰囲気は、熱源により加熱されつつ循環ファンにより循環されて、基板3等を加熱する。冷却処理ブロックCは、封着処理ブロックAや排気処理ブロックBにおける熱源に加えて、外気導入開口あるいは冷却チューブ等の冷却源が備えられる。封着処理ブロックAでは、フリットシールの溶融により一対の基板3同士が接合され、また基板3へ排気管5が接合される封着処理が達成され、排気処理ブロックでは、排気装置7による排気管5を介しての排気処理が行われる。また、熱処理炉8の抽出口8bと抽出用カート・トラバーサー25との間に、基板3間に放電ガスを注入するための放電ガス注入エリア52が設けられる。
以下、おおよそパネルの製造工程に従って、自動制御化に好ましい構成を順次説明する。まず、自動制御で排気管5を装着するのに好ましい排気管装着部6、並びに熱処理炉8における熱処理の影響を考慮して、排気管5を保持する排気管装着部6を好ましく取り付けることができる構造について説明する。
図6〜図11に示すように、排気管装着部6は、その中心部に、個別配管46を介して排気装置7に連通させて形成され、排気管5を上向きに装着するための装着孔53と、装着孔53に設けられ、排気管5に接離可能に圧接されて排気管5を保持しつつ、その周囲を気密にシールする弾性部材からなる中空の環状シール54とを備える。また、環状シール54の状態変化にかかわらず常に、排気管5を上方から搭載される一対の基板3の一方に圧接させるために、排気管装着部6を上下方向に移動自在とする上下スライド機構としての滑りガイド56を備えるとともに、排気管装着部6を上方へ向かって付勢する付勢手段としてのスプリング55を備える。
排気処理は、下方部が排気管装着部6に装着されたガラス製などの排気管5の上端を基板3に押圧した状態で、熱処理炉8内で加熱することにより排気管5を通気孔36に接合した後、この排気管5から排気管装着部6を介して基板3間からの排気を行うようになっている。排気管5を基板3へ接合するに際しては、排気管5の上端を基板3に押圧した状態、すなわち、排気管5に適度な圧縮応力が作用している状態で加熱して融着させる。
排気管装着部6はさらに、熱処理時の熱に対してこの環状シール54を冷却するためにその周囲に配設された環状水冷ジャケット57と、環状シール54の内部空間に連通されたエア供給・排気管58と、これらを上下から挟持する上部端面部材59および下部端面部材60とを備え、排気管装着部6自体は、上部端面部材59の下方に設けられたスプリング55を介して、取り付け柱37の張り出し部38に上下動自在に支持されている。61は冷却水供給管、62は冷却水排出管である。排気管5は接合側である上端が漏斗形状に形成され、排気管5の一定径の下方部は、上部端面部材59の開口から環状シール54を貫いて装着孔53内の所定位置に配置される。この状態で、エア供給・排気管58から供給された高圧エアにより膨張した環状シール54により排気管5の外周部は気密に保持される。環状シール54は機械的に膨張収縮させるようにしても良い。
排気管5を排気管装着部6へ装着するには、予めフリットシール21を上端に塗布しておき、この排気管5の下方部を排気管装着部6の装着孔53内に挿入する。この場合、排気管5の上端は、基板3がサポート34上に水平に搭載された時の基板3の下面位置より1〜2mm程度上方に突出するように位置決めしたのち、エア供給・排気管58から高圧エアを環状シール54の内部空間に供給して排気管5の周面を当該環状シール54により締め付けて固定する。
その後、通気孔36が排気管5に合致するように基板3をカート2上に搭載する。排気管5の上端が基板3の下面より若干突出して排気管装着部6に固定されているため、排気管装着部6はスプリング55の弾発力に抗して下降し、排気管5の上端は基板3の下面に押圧された状態で密着する。これにより、排気管5は、適度な圧縮応力が加わっている状態で、排気管装着部6に気密に保持され、この状態でカート2が熱処理炉8内に装入され、封着・排気処理が行われる。排気管5に適度な圧縮応力が作用している状態で加熱して排気管5を基板3に融着させるため、リーク等が発生することのない確実な接合を形成できるとともに、また、封着・排気処理時に排気管5が変形することも無く、その後の切断作業を効率よく行うことができ、したがって、排気管5の封止・切断作業の自動制御化を円滑に導入することができる。
さらにまた、カート2の走行時、また封着・排気処理等の間、排気管5と基板3の各部が相対的に一定の位置関係を保つことが望ましいが、振動や衝撃により、或いは熱膨張や収縮の差等によって排気管装着部6と基板3との間に相対的位置ずれを起こす場合がある。この場合、例えば、環状シール54から排気管5に作用する力が過大であると、この力が基板3と排気管5とを一体的に固定する力に打ち勝ち、排気管5が傾斜して破損したり、或いはフリットシール21が基板3の下面から離れて封着処理が不可能となる等の問題が生じるおそれがあり、これを考慮する必要がある。また、排気管装着部6と基板3との間に水平方向での相対的位置ずれが発生した場合、排気管装着部6が平行移動せず、傾斜することがある。この場合、排気管5に回転を生じさせる好ましくない力が作用し、排気管5に過大な曲げモーメントが作用して、排気管5が傾斜し、排気管5の破損や、封着処理が不可能になるという事態も考慮する必要がある。
図示例にあっては、上部端面部材59の下方に設けられたスプリング55を介して排気管装着部6が張り出し部38に支持されているが、この場合も前記同様の問題が生じることが考えられる。
そこでさらに、張り出し部38と下部端面部材60との間に滑りガイド56が介設されている。この滑りガイド56は、摺動作用を円滑化するカーボン製などの内周面を有する筒状体63とこの筒状体63内に摺動可能に嵌挿されたロッド部材64とからなり、筒状体63は張り出し部38の下面に固定され、ロッド部材64は下部端面部材60に立設されている。そして、この滑りガイド56により張り出し部38に対して、排気管装着部6は相対的に横方向の移動は規制され、上下方向にのみ移動可能となっている。
基板3を上から載置することで排気管装着部6が基板3の自重により押し下げられて若干下降する際、滑りガイド56により排気管装着部6が案内されて、排気管5は横方向の力を受けることなく、上下方向にのみ変位可能となっている。滑りガイド56の作用と相俟って、スプリング55による排気管装着部6、ひいては排気管5の上端の基板3への押圧作用により、フリットシール21と基板3との間の摩擦力が大きく確保されるため、封着工程において、加熱される基板3は排気管5が押圧された通気孔36を基点として膨張するようになり、排気管5と通気孔36との間での位置ずれは生じない。また、この封着工程において、基板3に反りが生じたとしても、排気管5は滑りガイド56の作用によりスプリング55によって確実に上向きに付勢されているため、基板3とフリットシール21との間に隙間が生じることもない。
従って、クリップ35で基板3と排気管5とを一体固定することなく封着処理することが可能であるため、排気管5とともに基板3を熱処理炉8内に装入する際の衝撃や振動に伴い、或いは封着・排気処理時における各部の熱膨張や収縮の差から生じる熱変形に伴い排気管5に過大な力、特に側方から排気管5を回転させようとする力が作用するのを回避でき、さらに、クリップ35による傷の発生、排気管5の損傷を防止できるとともに、封着処理の準備作業が簡素化され、その信頼性も向上させることができる。このように、排気管装着部6をスプリング55により支持するとともに、上下方向にのみ変位可能としているため、基板3に向けて押圧され、封着される排気管5が垂直に保たれ、排気管5にこの垂直な方向以外の意図しない方向の力が作用せず、排気管5の押圧状態の維持が容易になる。
付勢手段としては、スプリング55に代えて、図12に示すように、排気管装着部6を一端に取り付けた梃子65の他端にカウンターウエイト66を設ける形式としても良い。
次に、排気管5の排気管装着部6への装着操作の自動制御化について説明する。排気管ハンドリングロボット12のロボット制御盤19などの制御手段は、自動制御で排気管5を排気管搬入用コンベア11からカート2の排気管装着部6に供給するために、カート2の実停止位置情報および排気管装着部6の排気管5の実装着位置情報を画像情報として取得し、これら実停止位置情報および実装着位置情報に基づき、排気管ハンドリングロボット12による排気管供給動作の制御情報を出力する供給動作設定手段を備える。
供給動作設定手段は、予め設定されているカート2の基準停止位置情報に基づき実停止位置情報を画像情報として取得し、基準停止位置に対する実停止位置の偏差からカート2の停止位置を修正し、予め設定されているカート停止位置からの排気管装着部6の基準設置位置情報に基づき実設置位置情報を画像情報として取得し、基準設置位置に対する実設置位置の偏差から排気管装着部6の設置位置を修正し、排気管5の実装着位置情報を画像情報として取得し、予め設定されている排気管5の基準装着位置に対する実装着位置の偏差から排気管5の装着位置を修正し、修正した修正供給動作を排気管ハンドリングロボット12による排気管供給動作の制御情報として出力するようになっている。
排気管ハンドリングロボット12のロボット制御盤19などの制御手段は、自動制御で排気管ハンドリングロボット12により排気管5を搬入系の排気管搬入用コンベア11から取り出すために、取り出し待機位置における排気管5の実待機状態情報を画像情報として取得し、予め設定されている排気管5の基準待機状態情報に対する実待機状態情報の偏差に基づいて取り出し動作を修正し、修正した修正取り出し動作を制御情報として出力する排気管取り出し動作修正手段を備える。
排気管ハンドリングロボット12のロボット制御盤19などの制御手段は、自動制御で排気管ハンドリングロボット12により排気管5を排気管装着部6に装着するために、排気管ハンドリングロボット12による排気管5の実把持状態情報を画像情報として取得し、予め設定されている排気管5の基準把持状態情報に対する実把持状態情報の偏差に基づいて装着動作を修正し、修正した修正装着動作を制御情報として出力する排気管装着動作修正手段を備える。
排気管搬入用コンベア11で積み卸し部9に搬入される排気管5は排気管装着部6への供給にあたり、図13に示すように、排気管5だけの状態でトレイ67に立てて準備されるか、図14に示すように排気管5の上端にフリットシール21が配置された状態でトレイ67に立てて準備される。そして、排気管5は、排気管装着部6の装着孔53内に挿入される。ところで、排気管5はガラス製等で破損し易く、また図13に示すように、製作誤差のため、排気管5の長さは、ΔL1(基準長さ±1mm程度)のばらつきが生じ一定でない。さらに、この排気管5の上端にフリットシール21が配置された状態において、図14に示すように排気管5およびフリットシール21を含めた寸法においても、ΔL2のばらつきが生じる。一方、排気管装着部6の上面と排気管5の上端との間の距離を一定の値に保つ必要がある。
これらの理由から、排気管5の排気管装着部6への装着は、人手により、以下の手順により行われている。まず、トレイ67から取り出された1本の排気管5が、作業者の目視確認により排気管装着部6の装着孔53内に挿入される。続いて、排気管装着部6の上面と排気管5の上端との間の距離が一定の値になるように排気管5の高さが調整される。最後に、高さ調整された排気管5が環状シール54に高圧エアを送り込むことにより排気管装着部6に気密に保持される。しかしながら、人手による排気管5の排気管装着部6への装着は、作業効率が悪く、生産性が低い。自動化のための排気管ハンドリングロボット12を採用し、排気管5を排気管装着部6へ装着する一連の動作を自動制御することが好ましい。
この場合、定位置に固定設置された排気管ハンドリングロボット12の前方にカート2が停止した後、一連の装着動作が開始されるが、カート2は決められた基準停止位置にて常に停止するとは限らず、その停止位置のばらつきは避けられない。また、カート2上に取り付けて設けられる排気管装着部6および基板搭載部4それ自体が熱処理炉8内における封着・排気処理過程で熱変形するため、排気管装着部6の装着孔53の位置にもばらつきが生じる。さらに、装着孔53内に排気管5が挿入された場合でも、排気管装着部6の高さにばらつきがあるため、排気管5を排気管装着部6で正常に保持させることが難しい。そこで、これらに対する対策を施すことが、自動制御下には必要となる。
図24および図25に示すように、カート2のコーナ部に基準標識1X、1Yおよび1Zが取付けられており、基準標識1Xはレール23に沿った水平なX軸方向におけるカート2の位置を示す基準となり、基準標識1Yはレール23に直交する水平なY軸方向におけるカート2の位置を示す基準となり、基準標識1ZはX軸およびY軸に直交するZ軸方向におけるカート2の位置、即ち高さを示す基準となる。また、図15および図16に示すように、カート2上に立設された取り付け柱37の張り出し部38の各々にも、その位置を示す基準となる基準標識1Hが設けられている。基準標識1X,1Yおよび1Zは、カート2そのものに形成したものでもよく、カート2とは別個の部材により形成したものでもよい。同様に、基準標識1Hは張り出し部38そのものに形成したものでもよく、張り出し部38とは別個の部材により形成したものでもよい。
一方、積み卸し部9の定位置に固定して設けられる排気管ハンドリングロボット12は、三次元的に直線運動および回転運動可能なロボットハンドを有する。このロボットハンドには、各種の制御情報を画像情報として取得するためにカメラ68が取付けられており、このカメラ68により図17に示すように、排気管装着部6の装着孔53が検知される。そして、ロボットハンドにより、装着孔53の中心位置座標を算出するための第一作動と、トレイ67に収納された特定の排気管5を把持して装着孔53内に挿入する第二作動とが行われる。第二作動においては、図18および図19に示すように、ロボットハンドのチャック部69により把持される排気管5の上端がカメラ68により検知され、チャック部69から排気管5の上端までの距離、或いは排気管5にフリットシール21が設けられている場合には、チャック部69からフリットシール21の上端迄の距離が計測される。
排気管5の排気管装着部6への挿入にあたっては、まず、ステップ(1)で、移動してきたカート2が排気管ハンドリングロボット12の前方で停止すると、カメラ68により検知された基準標識1X,1Yおよび1Zの位置に基づいて、カート2の基準停止位置と実停止位置との間の誤差量(Δx1,Δy1,Δz1)が算出される。この算出された誤差量(Δx1,Δy1,Δz1)に基づき、ロボットハンドの第一基準移動停止位置である第一計測地点の修正が行われる。例えば、誤差量のX軸方向成分が+ΔXであれば、ロボットハンドのストロークのX軸方向成分をΔXだけ長くし、逆に誤差量のX軸方向成分が−ΔXであれば、ストロークのX軸方向成分をΔXだけ短くする。Y軸方向、Z軸方向についても同様の修正が行われる。従って、カート2の実停止位置に誤差が生じても、ロボットハンドの第一計測地点は張り出し部38上の基準標識1Hをカメラ68により検知できる位置に修正される。
ステップ(2)で、ロボットハンドが修正された第一計測地点にて停止すると、カメラ68によって張り出し部38上の基準標識1Hが検知され、排気管装着部6の基準配置位置、具体的には装着孔53の中心位置と実配置位置との間の誤差量(Δx2,Δy2,Δz2)が算出される。さらに、この算出された誤差量(Δx2,Δy2,Δz2)に基づき、前記と同様にしてロボットハンドの第二基準移動停止位置である第二計測地点の修正が行われる。従って、排気管装着部6の基準配置位置に誤差が生じても、ロボットハンドの第二計測地点は、装着孔53の中心位置をカメラ68により検知できる位置に修正される。
続いて、ステップ(3)で、ロボットハンドが修正された第二計測地点にて移動停止して、図17に示すように装着孔53の中心位置の上方にカメラ68が移動し、このカメラ68により装着孔53の基準中心位置と実中心位置との間の誤差量(Δx3,Δy3,Δz3)が算出される。ステップ(1)〜(3)により、排気管5の装着作業時におけるロボットハンドの排気管装着部6上における適正な停止位置(X,Y,Z)が決定される。
一方、ロボットハンドの前記停止位置(X,Y,Z)からの下降停止位置(X,Y,Z1)は、Z軸方向の排気管装着部6の高さ情報と把持対象である排気管5の実長さ情報或いは排気管5にフリットシール21を加えた実長さ情報とに基づき決定される。例えば、ロボットハンドのチャック部69による排気管5の把持位置、即ちロボットハンドの停止位置を一定とすれば、図18および図19に示すように、チャック部69から排気管5の上端までの距離H1或いはチャック部69からフリットシール21の上端までの距離H2が計測され、排気管5の基準長さと実長さとの間の誤差量(ΔL)が算出される。なお、図18は排気管5のみを装着孔53内に挿入する場合を、図19はフリットシール21が上端に配置された排気管5を装着孔53内に挿入する場合を示している。
そして、排気管装着部6のZ軸方向の前記高さ情報と排気管5に関する前記誤差量(ΔL)とに基づき、排気管5の実長さに対応したロボットハンドの下降停止位置(X,Y,Z1)が決定される。例えば、排気管5の実長さと基準長さとの間の誤差量(=実長さ−基準長さ)が+ΔLであれば、ロボットハンドの下降停止位置は誤差量が零である場合を基準にしてΔLだけ低い位置となり、常に排気管5或いはフリットシール21の上端と排気管装着部6の高さとの位置関係は一定となる。
ところで、前述した操業例では、チャック部69により排気管5を把持した後に排気管5或いはフリットシール21の上端位置を計測したが、これに限定することなく、チャック部69により排気管5を把持する前に予め排気管5或いはフリットシール21の上端位置を計測しておいてもよい。この場合、チャック部69により排気管5を把持する前に予めカメラ68等により排気管5或いはフリットシール21の上端位置を計測しておき、この計測された上端位置情報に基づきチャック部69による排気管5の把持位置を修正し、その後、排気管装着部6の高さ情報に基づいてロボットハンドの下降停止位置を補正すればよい。
以上のような排気管ハンドリングロボット12の制御を行うことで、カート2の実際の停止位置のばらつき、製作誤差或いは張り出し部38等の熱変形による排気管装着部6における装着孔53の中心位置のばらつき、さらに排気管5の製作誤差による排気管長さのばらつきが生じても、装着孔53に合わせて、かつ排気管5の長さに合わせて適正な位置に排気管5を装着孔53内に装着することができる。また、ばらつきの大きいカート2の停止位置を検知して、検知範囲を絞ったうえで、ばらつきの小さい装着孔53の中心位置を検知するようにしているため、カメラ68の視野が狭くても、装着孔53の中心位置が確実に検知され、排気管5の装着孔53内への装着がより円滑に行われる。
次に、排気管装着部6に排気管5が装着されているカート2上に、基板3を自動制御で搭載するのに好適な構成について説明する。基板搭載部4には、複数の仕切部であるサポート梁33によって、少なくとも一組の一対の基板3を個別に装入する基板装入用空間Sが形成されるとともに、基板搭載ロボット13のロボット制御盤19などの制御手段は、自動制御で基板搭載ロボット13により各一対の基板3を基板搭載部4へ搭載するために、基板装入用空間Sの寸法を画像情報として取得し、取得された寸法情報に基づいて、一対の基板3の基板装入用空間Sへの装入の可否の制御情報を出力する装入操作判定手段を備える。
基板搭載ロボット13のロボット制御盤19などの制御手段は、自動制御で基板搭載ロボット13により基板搬入用コンベア10から供給される少なくとも一組の一対の基板3の通気孔36をカート2の排気管装着部6の排気管5に合致させるために、排気管装着部6に装着された排気管5の中心位置情報および一対の基板3の搭載待機位置における通気孔36の中心位置情報を画像情報として取得し、これら中心位置情報を用いて、予め基板搭載ロボット13に設定されている一対の基板3を搭載待機位置から基板搭載部4へ供給する基準搭載動作による排気管5と通気孔36との中心位置の誤差を算出し、誤差に基づいて修正した修正搭載動作を制御情報として出力する搭載動作修正手段を備える。
サポート梁33の配置間隔をD、サポート34の高さをhとすると、一対の基板3はサポート34の上面とサポート梁33の下面との間の縦方向に寸法(D−h)の空間、即ち基板装入用空間Sに装入されることになる。また、基板1のサポート34上への載置は、基板1のコーナ部近傍に設けられた通気孔36の中心と排気管5の中心とを一致させることが必須条件となっている。
一方、支柱32及びサポート梁33が、熱処理炉8内での封着・排気工程において熱変形するため、サポート34の上面とサポート梁33の下面との間の間隔が前述した寸法(D−h)から変化し、一定の値に保たれない。また、排気管装着部6の装着孔53の位置、即ち排気管装着部6に装着された排気管5の中心位置は、カート2の停止位置のばらつきや前述した熱変形等により一定ではない。さらに、基板3の通気孔36の位置は製作時の誤差によっても一定にはならない。これらの理由により基板1のカート2への積載は人手により行われている。人手による基板3のカート2への積載は、作業効率が悪く、また生産性が低い。そこで、自動制御化のための基板搭載ロボット13を採用し、ロボットハンドにより基板3を保持して、基板装入用空間Sまで移送し、サポート34上に載置することが考えられる。
しかしながら、基板装入用空間Sが前記寸法(D−h)の状態から変化して、これよりも小さくなり、十分な高さを有さない場合であっても、基板3はロボットハンドにより基板装入用空間S内に装入され、基板1とサポート34或いはロボットハンドとサポート梁33とが衝突し、これらを破損するおそれがあり、これを考慮に入れる必要がある。また、ロボットハンドにより基板3を常に同じ位置に移送するとしても、カート2の停止位置にばらつきがあり、基板3の通気孔36の中心と排気管5の中心の各位置が必ずしも一致するとは限らないことにも、留意する必要がある。
レール23の側方の積み卸し部9に基板搭載ロボット13が配置されており、カート2上に配設された複数段のサポート梁33の外側面の三箇所に、図20に示すように、基準標識70が設けられている。この基準標識70はサポート梁33自体に加工して形成してもよく、別部材により形成してもよい。また、カート2上の各排気管装着部6には、排気管ハンドリングロボット12により排気管5が装着されている。そして、基板搭載ロボット13のロボットハンドに設けた図示しないカメラによりこの基準標識70が検知されて、各段におけるサポート梁33の実際の高さが計測され、以下の手順により基板3のカート2への積載が行われる。
基板3のカート2への積載は図21に示すように、まず、ステップS1で、カメラにより検知された基準標識70の高さに基づき、各段のサポート梁33の下面とその下方のサポート34との間の隙間寸法の算出が行われる。具体的には、例えば1段目と2段目に関して、図20に示すように検知された各基準標識1の高さから、各サポート34の上面の基準レベルL0からの高さZ1a,Z1b,Z1c,Z2a,Z2b,Z2cが算出され、Z1a,Z1b,Z1cの中で最大値、即ちMax(Z1a,Z1b,Z1c)とZ2a,Z2b,Z2cの中で最小値、即ちMin(Z2a,Z2b,Z2c)が求められる。さらに、隙間寸法として、[Min(Z2a,Z2b,Z2c)−Max(Z1a,Z1b,Z1c)−D]の値が算出される。この値は、可能性としてあり得る最も小さい隙間寸法の値である。
ステップS2で、算出された隙間寸法の場合、ロボットハンドに保持された基板3の装入が可能か否かの判断がなされ、YESの場合にはステップS3に進み、NOの場合にはステップS7に進む。ステップS3で、図22及び図23に示すように、ロボットハンドにより基板3を固定カメラ71の上方の定位置に移送して、この固定カメラ71により装入前の基板3の通気孔36が検知され、ロボットハンドの一定の動作によりこの基板3をサポート34の上方に移送した場合におけるロボットハンドの移動停止位置での通気孔36の中心位置の計測が行われる。
ステップS4で、既にロボットハンドのカメラにより検知され、求められている排気管5の中心位置とステップS3で計測された通気孔36の中心位置とが一致するか否かの判断がなされ、YESの場合にはステップS5に進み、NOの場合にはステップS9に進む。ステップS5で、排気管5の中心位置と通気孔36の中心位置とが一致するということで、ロボットハンドにより基板3が上下のサポート梁33間に移送され、排気管5の上方に位置させられた後、サポート34上に載置され、基板3の装入が完了する。
この装入の後、必要に応じて、ステップS6で、ロボットハンドによりクリップ35を用いて基板3と排気管5との固定が行われる。一方、ステップS7で、上下のサポート梁33への基板3の装入はできないということで、即ちサポート梁33が異常に変形しているということで警報を発し、続くステップS8でカート2への基板3の積載作業を中止する。また、ステップS9で、通気孔36の中心位置が予め決められた正規の位置からずれて、この正規の位置からの誤差を生じているということで、その誤差の算出が行われる。
さらに、ステップS10で、ステップS9での算出結果に基づき、ロボットハンドの移動停止位置の修正がなされ、その後ステップS5に進み、前述したように基板3のサポート34上への装入が行われる。以上のようにして、基板3が排気管5の上に載置され、基板3のカート2への積載が完了する。そして、上述した作業がサポート梁33の段数だけ繰返される。
カート2に基板搭載ロボット13により基板3を積載するに際し、基板装入用空間Sの高さを計測し、この基板装入用空間Sへの基板3の装入が可能か否かを判断し、可能である場合に、基板3の通気孔36の中心位置情報と排気管装着部6の排気管5の中心位置情報とに基づき、両中心位置が一致するように基板3を保持したロボットハンドの移動停止位置を必要に応じて修正した後、サポート34上に基板3を移送するようにしてあるため、基板搭載ロボット13により基板3を他の部分との衝突を起こすことなく基板装入用空間Sに装入し、適正位置に移送することが可能になり、自動制御化によって作業効率を向上させることができる。
次に、パネル製造作業の自動制御化にあたり、基板搭載部4とこれに搭載した基板3とが熱処理操作などによって位置ズレすることに対応できる機構について説明する。基板搭載部4は少なくとも一組の一対の基板3を複数箇所で個々に支持する複数のサポート34を備え、これら複数のサポート34のうち、排気管5に近接する少なくとも一つの近接位置サポート34aを除く他の遠隔位置サポート34bは、一対の基板3を、近接位置サポート34aに比して相対移動し易く支持するようになっている。遠隔位置サポート34bは揺動可能に構成してもよい。またあるいは、遠隔位置サポート34bは、転動軸心Tが排気管5の中心位置方向と直交させて配置され、その上に一対の基板3を支持するローラ機構で構成される。
熱処理にあっては、カート2の各部や基板3の熱膨張、収縮を伴う。この場合、カート2の各部及び基板3の熱膨張率が必ずしも同一でなく、それぞれの熱膨張、収縮による変化量の差異や各部温度に起因して排気管5と基板3との接合部や排気管5自体に外力が作用すると、排気管5と基板3の通気孔36との間の位置ずれや排気管5の破損という事態を招くおそれがあることに留意する必要がある。
このため、カート2では、排気管5を保持する排気管装着部6に接続する個別配管46などの配管類をフレキシブルチューブとし、このフレキシブルチューブを介して排気管装着部6を張り出し部38に取り付けることにより排気管装着部6の移動を拘束しないようにするなどの工夫がなされる。これにより、排気管装着部6の荷重や外力が排気管5に作用するのを極力回避しようとしているが、これが自動化等の省力化の大きな障害になるとともに、排気管5に作用する外力を完全には排除できないため、上述した位置ずれや破損が生じるおそれがあり、これがプラズマディスプレイパネル等のパネル製造上の歩留まり低下の原因になっている点を考慮することが望ましい。
また、サポート34が突設されたサポート梁33の熱膨張率と基板3の熱膨張率とを同じにしたり、サポート34上に基板3と同じ膨張率を有するベースプレートを設置し、これにサポート34を突設することも考えられるが、基板3がガラス製などであるため、これと同材料としたサポート梁33やベースプレートは破損やそりが生じ易く、またカート2全体の重量が増し、熱効率の低下を招く等の問題も改善することが好ましい。
図24および図25に示すように、カート2上には、サポート梁33とは別に、取り付け柱37で支持されている張り出し部38の延長部74に、排気管5近傍に位置させて近接位置サポート34aが突設される一方で、支柱32で支持されているサポート梁33には、近接位置サポート34aよりも排気管5から離れて位置する遠隔位置サポート34bが突設されている。そして、近接位置サポート34aの上端面と基板3との間の摩擦係数は遠隔位置サポート34bの上端面と基板3との間の摩擦係数よりも大きくなっている。例えば、近接位置サポート34aは金属繊維、金属網、或いは、セラミック材により、上端面が粗い面になるように形成され、遠隔位置サポート34bは金属やセラミックにより、上端面が鏡面仕上げされて形成されている。図示例にあっては、各張り出し部38に二つずつ、排気管5から略等距離の位置に上述した近接位置サポート34aを備えている。
基板3は、フリットシール21が配設された排気管5の上端及びこれらサポート34a,34bの上端面上に配置され、排気管5の中心と基板3の通気孔36の中心とが略一致させられるが、この際、カート2の各部や基板3が熱膨張や収縮して、それぞれ異なる量の相対寸法変化を起こしても、近接位置サポート34aの上端面の位置にて基板3は相対移動を生じることなく支持され、遠隔位置サポート34bの上端面の位置にて基板3が横方向に相対移動、即ち滑りを起こし、排気管5と基板3との接合部や排気管5自体に外力が作用することはなく、排気管5と基板3の通気孔36との間の位置ずれや排気管5の破損という事態は回避される。遠隔位置サポート34bについては、上端面に転動可能な、一般的な球状やローラ状の支持体を配設し、この球状やローラ状の支持体により基板3を支持するようにしてもよい。
図26は、他の支持形態を示したもので、遠隔位置サポート34bの構成のみが異なる。遠隔位置サポート34bは、上面が球面または曲面状に形成された頭部75と、この頭部75の下方に延びる脚部76と、下面が球面または曲面状に形成され、この下面の中心部に脚部76を貫通させたフランジ部77とを備え、脚部76はサポート梁33に穿設された貫通孔78内に遊嵌し、貫通孔78の上端開口の周縁部上に摺動可能にフランジ部77が載置されている。そして、ほぼ貫通孔78の中心軸とフランジ部77との交点を中心として脚部76は揺動可能となっている。即ち、この遠隔位置サポート34bは、基板3に対して横方向に、基板3と遠隔位置サポート34b間の位置のズレに対応し相対移動し易く設けられている。なお、フランジ部77の下面の曲率は、脚部76が揺動しても頭部75の最上部の高さが一定に保たれるようになっているのが好ましい。
図27〜図30には、ローラ機構からなる、さらに他の支持形態が示されている。遠隔位置サポート34bでは、上面が開口した箱体79に、円柱状のローラ72を載置し、ローラ72が自由に回転できるように形成されている。また、ローラ72が位置する箱体79内の支持面73は中心部が低くなるように傾斜しており、何等外力が作用しない場合にはローラ72は重力の作用で支持面73の中心に止まる一方、箱体79の各側面は支持面73よりも上方に突出するように形成され、ローラ72がこの箱体79から離脱することがないようになっている。
さらに、各ローラ72の中心軸Tが排気管5に向かう図中一点鎖線で示された方向に対して直交するように遠隔位置サポート34bは配設されており、前述した熱膨張や収縮の際に基板3において、近接位置サポート34aの部分に対して他の遠隔位置サポート34bが円滑に横方向に相対移動でき、排気管5と基板3との接合部や排気管5自体に外力が作用することはなく、排気管5と基板3の通気孔36との間の位置ずれや排気管5の破損という事態は回避されるようになっている。
近接位置サポート34aの設置個数は二つに限定されない。また、排気管5が上向きに突出される場合に限らず、下向きに突出した場合にも適用されるものである。
次に、熱処理炉8から抽出された基板3の排気管5を封止・切断する作業において、自動制御化を円滑に導入しうる構成について説明する。排気管封止切断ロボット14のロボット制御盤19などの制御手段による自動制御で二つ割りに開閉自在に作動され、排気管5の封止・切断を行うために閉じられて排気管5周囲を取り囲むヒータを備える。
基板3には排気管5が接合され、一対の基板3間からの排気処理等の後、排気管5の封止・切断処理が行われる。この排気管5の封止・切断処理は、以前はガスバーナを用いて人手により排気管5の特定部位を溶融させて、封止するとともに切断することにより実施されていて、その自動制御化が望まれている。
排気管封止・切断装置80は図31および図32に示すように、二つに分割可能な一対のケーシング部材81からなる断熱構造のケーシング82と、ケーシング部材81の各々の内部に設けた排気管外周部加熱用のヒータ(図示せず)とを備えている。また、一方のケーシング部材81は取付け座83上に、他方のケーシング部材81は取付け座84上にそれぞれ配置されている。さらに、二つの取付け座83,84間には、伸縮シリンダ85が介設されており、例えば、一方の取付け座84にシリンダボディ86が結合され、他方の取付け座83にピストンロッド87が結合され、これにより一方のケーシング部材81に対して他方のケーシング部材81が移動し、ケーシング82全体として開閉可能となっている。
各ケーシング部材81は断面半円形の箱体状に形成され、その内部には断熱材が充填され、また各ケーシング部材81には、これらが閉じて合わせられることで略真円となる半円形の溝88が形成されている。ヒータはこの半円形の溝88に沿って配設される。そして、ケーシング82が閉状態となったとき、ケーシング部材81同士が当接して、二つの溝88により排気管収納用の貫通孔89が形成される。取付け座84には、軸体90が立設され、この軸体90の上端に基板3を挟持するクリップ35が設けられている。
排気管5を介して基板3内の真空排気処理の後、基板3内への放電ガスの封入処理が完了すると、図示するように、開状態にある排気管封止・切断装置80を、排気管封止切断ロボット14により排気管5の両側にケーシング部材81が位置するようにクリップ35で基板3を挟持させて、基板3に取り付ける。クリップ35の装着は、ロボットハンドのカメラで基板3の位置を画像情報として取得し、その位置に対してロボットハンドが移動して装着動作が行われるようになっている。続いて、伸縮シリンダ85を収縮させてケーシング部材81を一体化し、即ち、ケーシング82を閉状態にして、貫通孔89内に排気管5を位置させる。このとき、排気管5の略全周が二つのヒータにより包囲される。その後、ヒータに通電し、このヒータにより排気管5の外周を所定時間だけ加熱する。この加熱により排気管5の全周が均一に加熱され、溶融して封止が完了する。さらに、ヒータ5の通電を続けると、この封止部が切断される。
以上の構成の装置により、排気管5の封止・切断作業を自動制御化することができ、作業効率の向上が可能になるとともに、この装置80を排気管封止切断ロボット14により順次クリップ35で基板3に付け替えていくことで、基板3毎にチップ管封着・切断装置80を設ける必要がなく、その台数を減らすことが可能になる。
ヒータに代えて、バーナにて排気管5の封止切断処理を自動制御で行うこともできる。排気管封止切断ロボット14のロボット制御盤19など制御手段による自動制御で作動され、排気管5の封止・切断を行うために、排気管5を溶融させるバーナおよび排気管5を延伸させるべく排気管装着部6を下降させる下降手段が備えられる。すなわち、上述したクリップ35を各基板3に装着する排気管封止切断ロボット14のロボットハンドにバーナを備えるとともに、排気管装着部6を下降させる手段としては、例えば排気管装着部6を張り出し部38に対し昇降駆動可能に取り付けるようにすればよい。バーナの位置制御は、画像情報を利用する上述の基板装入用空間Sへ基板3を挿入する自動制御や排気管5を装着孔53に挿入する自動制御に類似した方式にて行えばよい。
切断されて排気管装着部6に残留する残排気管5は、同様にしてカメラで取得される画像情報を利用して、まず排気管封止切断ロボット14により把持され、次いでエア供給・排気管58を介して高圧エアが抜かれることで排気管装着部6の環状シール54による保持が解除され、これにより撤去されることになる。残留する残排気管5は、新たな排気管5をカート2に供給する排気管ハンドリングロボット12で撤去させるようにしても良い。このようにすれば、排気管装着部6から排気ポンプ39にわたる系路に大気が流入することを極力防止できる。
さらに、排気管5が封止切断されて完成されたパネルをカート2から荷下ろしする作業を自動制御化するようになっている。パネル荷下ろしロボット15のロボット制御盤19などの制御手段は、自動制御でパネルをカート2の基板搭載部4からパネル搬出用コンベア16に荷下ろしするために、カート2の実停止位置情報およびパネルの実搭載位置情報を画像情報として取得し、これら実停止位置情報および実搭載位置情報に基づき、パネル荷下ろしロボット15によるパネルの荷下ろし動作の制御情報を出力する荷下ろし動作設定手段を備える。この自動制御は、基板3の搭載作業と同様な制御によって達成することができる。
パネルのカート2からの荷下ろしにあたっては、まず、移動してきたカート2がパネル荷下ろしロボット15の前方で停止すると、カメラにより検知された基準標識1X,1Yおよび1Zの位置に基づいて、カート2の基準停止位置と実停止位置との間の誤差量が算出される。この算出された誤差量に基づき、ロボットハンドの第一基準移動停止位置である第一計測地点の修正が行われる。従って、カート2の実停止位置に誤差が生じても、ロボットハンドの第一計測地点は、パネル位置を特定できる張り出し部38上の基準標識1Hをカメラにより検知できる位置に修正される。
ステップ2で、ロボットハンドが修正された第一計測地点にて停止すると、カメラによって張り出し部38上の基準標識1Hが検知され、パネルの基準搭載位置と実搭載位置との間の誤差量が算出される。さらに、この算出された誤差量に基づき、ロボットハンドの第二基準移動停止位置である第二計測地点の修正が行われる。ステップ1および2により、パネルの実搭載位置に対するロボットハンドの適正な停止位置が決定される。
以上のようなパネル荷下ろしロボット15の制御を行うことで、カート2の実際の停止位置のばらつき、製作誤差或いは各部の熱変形があっても、適正な位置にロボットハンドを移動させてパネルをカート2から自動制御により荷下ろしすることができる。