JP2006049097A - 燃料電池用電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、高分子電解質形燃料電池の電極において発生した水を電極から排出するための構造であり、かつ、簡便に作製する事ができる構造を提供すること。
【解決手段】 高分子電解質膜10を挟んで、カソード触媒層21、アノード触媒層22が高分子電解質膜10に接合されており、各々には、高分子電解質膜10と対向する側に、カソード側ガス拡散層31、アノード側ガス拡散層32を接して配置し、更に、カソード側集電体41、アノード側集電体42が配置した高分子電解質形燃料電池の電極において、カソード側ガス拡散層31に孔110を設け、更にカソード側集電体41のカソード側ガス拡散層31と対向する側に、導水帯112を設置することにより、カソード内で発生する水を適宜電極外部に排出できる構造とした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高分子電解質形燃料電池の電極の改良に関するものであり、特に、電極に発生する水を触媒層や電極から効率良く排出するための構造に関するものである。
近年のエネルギー問題や環境問題の高まりから、高エネルギー密度で、排出物がクリーンな電源として燃料電池が注目されている。中でも、高分子電解質形燃料電池は100℃以下の低温での駆動が可能なため、起動特性が良く、特に定置用分散電源、自動車電源、携帯機器用電源として活発に開発が進められている。
従来の高分子電解質形燃料電池は、電極の構成として、高分子電解質膜に接した部位に触媒層が、続いてガス拡散層、集電体が積層して配置される。更に燃料や酸素の流路が電極面に沿って形成される。流路は多くの場合、集電体をかねたセパレータである。燃料電池は、負極での燃料の酸化と、正極での酸素の還元とを電気化学的に同時に行い、両極の電位差と電気化学反応にて取り出される電流から出力を得る装置である。
さて、燃料電池を運転した場合の正極における反応は、酸素を反応物として水を生成する反応である。そこで高分子電解質形燃料電池が100℃以下で運転されることからくる問題が生じる。つまり、電流密度が小さい場合は水の生成速度が遅いため、水は水蒸気となって外部に放出されるが、電流密度が大きい場合、電極において水が凝縮し、ガス拡散層に滞留し、ガス拡散層の空孔が水により閉塞する。所謂フラディングが起きる。そのため、正極触媒層への酸素の供給量が低下し、その結果発電量が低下する問題が生じる。電流密度が高いほど、酸素供給量の低下による影響は顕著であり、急速に出力が低下することとなる。
更に水は高分子電解質膜をイオンが伝導する際に負極から正極に移動することでも、正極にて発生する。
また、負極燃料が乾燥している場合、正極で発生した水が高分子電解質膜を正極から負極側に移動する逆拡散と呼ばれる現象が生じ、負極で水が発生し、滞留する場合も有る。
以上の問題に対して各社各研究機関では、従来から電極周辺の部材、特に触媒層やガス拡散層に対して工夫を加えてきた。例えば、ガス拡散層を繊維状カーボンで作製し、繊維方向を一方向にして水の流れ方向を一定にした例、触媒層を高分子電解質膜側とガス拡散層側に2分割し、それぞれの層に含有する溶媒可溶性含フッ素重合体の含有率を変化する事で、撥水度合いを変化した例が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。
また、ガス拡散層を製造する工程において炭素流体への撥水性樹脂の付着を均一にする製造方法を示す例が挙げられる(例えば、特許文献2参照。)。
特開2001−357858(第4−6頁、第1図) 特開2003−109611(第3−4頁)
しかし、いずれの方法においてもフラディングが起きる事は避けられない。それは触媒層やガス拡散層の構造やそれらの層内にある水の排水ルートに問題があるためである。
触媒層やガス拡散層の構造に関しては、背景技術に示した通り、撥水剤を含有させる事が一般的である。しかし撥水剤の濃度が高い層を水が浸透しにくいために、該層と高分子電解質膜の間に水が貯留される事となる。また、水が該層を通過してガス拡散層に至るには、撥水作用、通過部位の断面積、水の表面張力との兼ね合いにより、有る程度の力が必要である。従って該層と高分子電解質膜の間の水に圧力がかかる事となる。以上から貯留された水により、触媒層への酸素供給量が低下する事は避けられない。
更に排水ルートに関する問題としては、まず、ガス拡散層の面内中央部から端部まで、ガス拡散層の寸法に応じた距離を水が通過しなければならない事が挙げられる。例えばガス拡散層が矩形の場合は、排水ルートの最大距離は、ガス拡散層の辺長さの1/2が面内中央部から端部までの距離である。また、水の移動を妨げる種々の抵抗が排水ルートに存在する事も問題である。つまり、水の流路と外部の気体が入り込むための疎水部分とが混在しており、排水ルートを複雑な形にする事、排水ルート付近に気体の溜まりが生じて流路を閉塞する事、電極の各部材は厚み方向に押し付けられて組み立てられるため排水ルートとして有効な容積が得られない事などにより生じた抵抗が水のスムーズな流れを阻害する。以上の通り、従来の方法によると、抵抗の有るルートを長距離水が移動しなければならないため、水が電極端部に移動するまでに時間が掛かり、その結果、電流密度が高くなると排水速度が水の生成速度より遅くなってしまい、水が多量に電極内に保持され、フラディングが避けられない事となる。
また、撥水剤の劣化、劣化防止のために製造方法を変えること、ガス拡散層の種類や構造が限定されてしまうことなどによりコストアップが生じる。これを回避するには、排水構造は簡便且つ安価に作製する事が好ましい。
本発明は、高分子電解質形燃料電池の電極において発生した水を電極から排出するための構造であり、かつ、簡便に作製する事ができる構造を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明においては、水素イオンを伝導する高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟む一対の電極とからなる高分子電解質形燃料電池の電極において、高分子電解質膜に接して配置され、電気化学反応を行う触媒層と、触媒層の高分子電解質膜に対向する側に配置され、導電性材料で形成され、導電性材料間に存在する空孔や間隙によりガス透過性を有するガス拡散層と、ガス拡散層の触媒層と対向する側に配置される集電体とから成り、ガス拡散層が触媒層に対して垂直に貫通して形成された複数の孔を具備することを特徴としている。
孔の作用として、孔側面はガス拡散層端面と同様に水を排出できること、孔を複数にする事で水を排出する部位を増加し、排出速度を向上できること、孔に水が到達すると孔内で表面張力が働き、水をガス拡散層内から引っ張ることが挙げられる。従って本発明により、上記した課題である触媒層やガス拡散層の構造やそれらの層内にある水の排水ルートの問題を解決する事が可能となる。つまり、水の排水ルートの最大距離が隣接する孔同士の距離の1/2となり、電極内部を水が通過する距離を極めて短くする事が出来、また、水は孔を通ってガス拡散層の触媒層と対向する側に何ら抵抗を受けること無く移動する事が可能となる。以上の通り、本構造により触媒層に水を貯留する作用を低減できるようになる。
またガス拡散層への孔形成は、プレス抜きなどの一般的な技術を用いる事ができるため、簡便、且つ、低コストに行う事が可能である。
更に、孔の幅の範囲が、下限がガス拡散層の導電性材料間に存在する空孔や間隙の幅と略同一であり、上限がガス拡散層厚みの50倍であることを特徴としている。
これにより、水の表面張力とガス拡散層内の流路抵抗の関係から、孔に到達した水が電極外部に流出しやすくなるので、ガス拡散層内の空孔や間隙から孔への水の流れが効率的になる。また、燃料電池組み立て時、ガス拡散層は高分子電解質膜、触媒層、集電体と共に積層して圧縮されるが、該孔の寸法ならば孔が潰れることなく、水を保持することが可能であるため、孔による水の排出機能が損なわれる事はない。但し孔寸法が上限値を上回った場合には、単位面積当りの孔面積が多くなるため、触媒層への酸素供給速度が低下し、燃料電池の出力を低下させてしまう。
更に、周囲に複数存在する孔において、一対の孔同士の間隔が、ガス拡散層厚みの1/2以上、ガス拡散層厚みの50倍以下であることを特徴としている。
これは、隣接する孔の中央部から発生した水が孔に至るの効率の良い距離である。但し孔間隔が下限値を下回った場合には、単位面積当りの孔数が多くなるため、触媒層への酸素供給速度が低下し、燃料電池の出力を低下させてしまう。
また、孔内に、親水性部材が充填されている事を特徴としている。
これにより、親水性部材と水の相互作用により、孔に水を引き込む効果を生じ、水排出を促進するようになる。ここで特に限定するわけではないが、親水性部材が、高分子樹脂(例えばアクリル系、セルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂)や、毛管力によって吸水性を付与した繊維材料(例えばカーボン,ガラス等を基体とする繊維材料、アクリル,ナイロン等からなる合成繊維)、或いは多孔質のセラミック材料或いはカーボンから成る群から選ばれる材料を用いて作製する事が可能である。
また、孔に至った水を吸収し、保持する吸水帯を具備し、吸水帯の一部が、少なくともガス拡散層の触媒層と対向する面と同一面上にあり、且つ、孔の開口部に位置する事を特徴としている。
これにより、孔内に到達した水を吸水帯に吸収し保持するため、長時間燃料電池を運転しても孔から水があふれ出る事が無く、水排出性能を維持し続けられる。また、燃料電池の外部に水を漏洩する事が無くなる。
ここで特に限定するわけではないが、吸水帯は、高分子樹脂(例えばアクリル系、セルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂など)や繊維状の紙または布のような有機系吸水性材料や、シリカゲル、アルミナゲル、ゼオライトのような無機系吸水性材料から成る群の内いずれか一種以上の材料から形成する事ができる。
もしくは、孔に至った水を電極外に導出する導水帯を具備し、導水帯の一部が、少なくともガス拡散層の触媒層と対向する面と同一面上にあり、且つ、孔の開口部に位置する事を特徴としている。
これにより、孔内に至った水が導水帯を伝って、ガス拡散層外部に排出する事となる。従って長時間運転をしても孔の水があふれる事が無く、燃料電池の出力を一定に保つ事が可能となる。
ここで特に限定するわけではないが、導水帯は、吸水性高分子樹脂(例えばセルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂など)の繊維や、毛管力によって吸水性を付与した材料(例えばカーボン,ガラス等を基体とする繊維材料、アクリル,ナイロン等からなる合成繊維、或いは多孔質のセラミック材料或いはカーボン)成る群から選ばれる少なくとも一種の素材を用いる事により作製する事ができる。
更に、導水帯から導出された水を貯蔵する貯水部を該高分子電解質形燃料電池に配置した事を特徴としている。
これにより、貯水部は導水帯の水を貯蔵するため、長時間運転をしても孔の水があふれずに導水帯を通して貯水部に流れ続けるため、燃料電池の出力を一定に保つ事が可能となる。ここで特に限定するわけではないが、貯水部は、高分子樹脂(例えばアクリル系、セルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂など)や繊維状の紙または布のような有機系吸水性材料や、シリカゲル、アルミナゲル、ゼオライトのような無機系吸水性材料から成る群の内いずれか一種以上の材料から形成する事ができる。以上のような吸水性材料を用いれば、貯水部は導水帯から水を引っ張る効果を生じるため、導水帯も孔から水を引っ張る事となり、積極的に水を電極外部に排出できるようになる。
また上記課題を解決する別の方法として、本発明においては、水素イオンを伝導する高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟む一対の電極とからなる高分子電解質形燃料電池の電極において、
高分子電解質膜に接して配置され、電気化学反応を行う触媒層と、触媒層の高分子電解質膜に対向する側に配置され、導電性材料で形成され、導電性材料間に存在する空孔や間隙によりガス透過性を有するガス拡散層と、ガス拡散層の触媒層と対向する側に配置される集電体とから成り、ガス拡散層が、触媒層に平行する面を切断するように形成された切り込みを複数具備することを特徴としている。
切り込みの作用として、切り込み側面はガス拡散層端面と同様に水を排出できること、切り込みを複数にする事で水を排出する部位を増加し、排出速度を向上できること、切り込みに水が到達すると切り込み内で表面張力が働き、水をガス拡散層内から引っ張ることが、まず挙げられる。従って、上記発明により、上記した課題である触媒層やガス拡散層の構造やそれらの層内にある水の排水ルートの問題を解決する事が可能となる。つまり、水の排水ルートの最大距離が隣接する切り込み同士の距離の1/2となり、電極内部を水が通過する距離を極めて短くする事が出来、また、水は切り込みを通ってガス拡散層の触媒層と対向する側やガス拡散層の側面に、何ら抵抗を受けること無く移動する事が可能となる。以上の通り、本構造により触媒層に水を貯留する作用を低減できるようになる。
更に切り込みを伝って水が自由に流れるため、電極内に水量の分布ができず、長時間運転にかかわらず電極内での電流分布が偏る事がない。従って、高分子電解質膜の劣化速度を低下でき、燃料電池の寿命を延ばす事が可能となる。
またガス拡散層への切り込み形成は、プレス抜きや切削加工などの一般的な技術を用いる事ができるため、簡便、且つ、低コストに行う事が可能である。
更に、切り込みの幅の範囲が、下限がガス拡散層の導電性材料間に存在する空孔や間隙の幅と略同一であり、上限がガス拡散層厚みの50倍であることを特徴としている。
これにより、水の表面張力とガス拡散層内の流路抵抗の関係から、切り込みに到達した水が電極外部に流出しやすくなるので、ガス拡散層内の空孔や間隙から切り込みへの水の流れが効率的になる。また、燃料電池組み立て時、ガス拡散層は高分子電解質膜、触媒層、集電体と共に積層して圧縮されるが、該切り込みの寸法ならば切り込みが潰れることなく、水を保持することが可能であるため、切り込みによる水の排出機能が損なわれる事はない。但し切り込み寸法が上限値を上回った場合には、単位面積当りの切り込み面積が多くなるため、触媒層への酸素供給速度が低下し、燃料電池の出力を低下させてしまう。
更に、複数の切り込みにおいて、切り込み同士の間隔が、ガス拡散層厚みの1/2以上、ガス拡散層厚みの50倍以下であることを特徴としている。
これは、隣接する切り込みの中央部から発生した水が切り込みに至るの効率の良い距離である。但し切り込み間隔が下限値を下回った場合には、単位面積当りの切り込み数が多くなるため、触媒層への酸素供給速度が低下し、燃料電池の出力を低下させてしまう。
また、切り込み内に、親水性部材が充填されている事を特徴としている。
これにより、親水性部材と水の相互作用により、切り込みに水を引き込む効果を生じ、水排出を促進するようになる。ここで特に限定するわけではないが、親水性部材が、高分子樹脂(例えばアクリル系、セルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂)や、毛管力によって吸水性を付与した繊維材料(例えばカーボン,ガラス等を基体とする繊維材料、アクリル,ナイロン等からなる合成繊維)、或いは多孔質のセラミック材料或いはカーボンから成る群から選ばれる材料を用いて作製する事が可能である。
また、切り込みに至った水を吸収し、保持する吸水帯を具備する事を特徴としている。
吸水帯とガス拡散層の接続関係に関して、ガス拡散層の触媒層と対向する面と同一面上で、且つ、切り込み上部に位置するように、少なくとも吸水帯の一部を配置する構成とする。
また、吸水帯の一部が、切り込みの端部と接するように配置しても良い。ここで切り込みの端部とは、切り込みのガス拡散層側面と同一面上の部位を言う。
これにより、切り込みの一部と吸水帯の一部とが接するように配置されるため、切り込み内に到達した水は吸水帯に吸収され保持されるため、長時間燃料電池を運転しても切り込みから水があふれ出る事が無く、水排出性能を維持し続けられる。また、燃料電池の外部に水を漏洩する事が無くなる。
ここで特に限定するわけではないが、吸水帯は、高分子樹脂(例えばアクリル系、セルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂など)や繊維状の紙または布のような有機系吸水性材料や、シリカゲル、アルミナゲル、ゼオライトのような無機系吸水性材料から成る群の内いずれか一種以上の材料から形成する事ができる。
もしくは、切り込みに至った水を電極外に導出する導水帯を具備する事を特徴としている。
ここで導水帯とガス拡散層の接続関係に関して、ガス拡散層の触媒層と対向する面と同一面上で、且つ、切り込み上部に位置するように、少なくとも導水帯の一部を配置する構成とする。
また、導水帯の一部が、切り込みの端部と接するように配置しても良い。
これにより、切り込みの一部と導水帯の一部とが接するように配置されるため、切り込み内に至った水が導水帯を伝って、ガス拡散層外部に排出する事となる。従って長時間運転をしても切り込みの水があふれる事が無く、燃料電池の出力を一定に保つ事が可能となる。
ここで特に限定するわけではないが、導水帯は、吸水性高分子樹脂(例えばセルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂など)の繊維や、毛管力によって吸水性を付与した材料(例えばカーボン,ガラス等を基体とする繊維材料、アクリル,ナイロン等からなる合成繊維、或いは多孔質のセラミック材料或いはカーボン)成る群から選ばれる少なくとも一種の素材を用いる事により作製する事ができる。
更に、導水帯から導出された水を貯蔵する貯水部を該高分子電解質形燃料電池に配置した事を特徴としている。
これにより、貯水部は導水帯の水を貯蔵するため、長時間運転をしても切り込みの水があふれずに導水帯を通して貯水部に流れ続けるため、燃料電池の出力を一定に保つ事が可能となる。ここで特に限定するわけではないが、貯水部は、高分子樹脂(例えばアクリル系、セルロース系、ポリビニルアルコール系樹脂など)や繊維状の紙または布のような有機系吸水性材料や、シリカゲル、アルミナゲル、ゼオライトのような無機系吸水性材料から成る群の内いずれか一種以上の材料から形成する事ができる。以上のような吸水性材料を用いれば、貯水部は導水帯から水を引っ張る効果を生じるため、導水帯も切り込みから水を引っ張る事となり、積極的に水を電極外部に排出できるようになる。
以上説明したように、上記課題を解決するために、本発明においては、水素イオンを伝導する高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟む一対の電極とからなる高分子電解質形燃料電池の電極において、高分子電解質膜に接して配置され、電気化学反応を行う触媒層と、触媒層の高分子電解質膜に対向する側に配置され、導電性材料で形成され、導電性材料間に存在する空孔や間隙によりガス透過性を有するガス拡散層と、ガス拡散層の触媒層と対向する側に配置される集電体とから成り、ガス拡散層を触媒層に対して垂直、且つ、直線的に貫通する孔を、ガス拡散層に複数具備したことを特徴としている。
これにより、カソードやアノードで発生した水は、長くても隣接する孔の距離の1/2を移動すれば孔に至る事ができ、また、孔に達した水はガス拡散層の触媒層と対向する側に何ら抵抗を受けること無く移動する事が可能となる。従ってこの構造により、ガス拡散層や触媒層に水が滞留する作用を低減できるようになる。
またガス拡散層に切り込みを形成することを特徴としている。
これにより、切り込みを伝って水が自由に流れるため、電極内に水量の分布ができず、長時間運転にかかわらず発電電力を一定に保つ事が可能となる。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による電極の断面の模式図である。構造は、高分子電解質膜10を挟んで、カソード触媒層21、アノード触媒層22が高分子電解質膜10に接合されている。カソード触媒層21、アノード触媒層22の各々には、高分子電解質膜10と対向する側に、カソード側ガス拡散層31、アノード側ガス拡散層32が接して配置され、更に、カソード側集電体41、アノード側集電体42が配置されている。ここで、高分子電解質膜10はデュポン社製のNafion112を、カソード触媒層21及びアノード触媒層22は、田中貴金属工業(株)製PEFC用触媒、カソード側ガス拡散層31及びアノード側ガス拡散層32には東レ(株)製カーボンペーパーを、カソード側集電体41、アノード側集電体42としてNi網(100mesh)を用いた。以上の部品に関しては、本実施例で用いた部材にこだわるものでは無く、以下に示す機能を有するものであれば他でも良い。
各要素の機能として、高分子電解質膜10は、カソードとアノードの反応物を混合しないようにする分離膜であると同時に、両極間にイオンを伝導する機能を持つ。また、カソード触媒層21、アノード触媒層22は、ここで電気化学反応を行い、両極の電位差と反応速度から、電力を取り出す事が出来るようになっている。またカソード側ガス拡散層31及びアノード側ガス拡散層32は、各触媒層で用いる反応物を触媒層全体に均一に供給するため、及び、各触媒層と対応する各集電体との間で電荷を受け渡しするために配置するものである。また集電体はガス拡散層と電荷を受け渡しし、燃料電池に接続される外部回路と電荷を受け渡しする機能を持つ。
さて、本実施例では電気化学反応、及び、高分子電解質膜10を移動してカソードで発生する水を電極から排出するために、カソード側ガス拡散層31に孔110を設けた。これを図2のカソード側ガス拡散層上面図に示す。ちなみにA−A’での切断面が図1と対応している。カソード側ガス拡散層31の膜厚は0.2mm、孔直径は0.5mm、隣接する孔の間隔は1mmとした。またカソード側集電体41のカソード側ガス拡散層31と対向する側に、セルロースを基材とした導水帯112を設置した。カソード側集電体41には、孔110と対応する位置に穴を開け、導水帯112を、孔110内に入れ込むようにした。これにより導水帯112の一部は、カソード側ガス拡散層31のカソード触媒21と対向する面と同一面上で、且つ、孔111の開口部に位置することとなり、導水帯112が孔111に溜まった水を、孔外部に導出できるようになる。更に、導水帯112の燃料電池と反対側の端部にはスポンジによる貯水部113を設け、導水帯112を通る水を貯水部113に吸収させた。
以上の構造によると、カソードで発生した水は孔110を通して導水帯112を通って排出された。その結果、図3に示す電流電圧曲線の通り、高電流においても大きな電圧の低下は見られなかった。また図4に示す出力電圧の経時変化の通り、出力電圧の変化は極めて小さかった。尚、経過時間20時間における電圧の落ち込みは、アノード側の燃料である水素の供給を停止した事により、発電を終了した事を示している。また発電の最中を通して、カソードで発生した水は、孔110に一旦溜まり、導水帯112を経て吸水部に至る様子が観察された。従って、図3、図4に示す発電特性は、カソードで発生した水が適度に外部に排水されたために得られた効果であり、フラディングに対して本構造が有効である事が示された。
図5は、本発明による電極の断面の模式図である。構造、及び、各要素の機能は、実施例1と同様である。
さて、本実施例ではカソード側ガス拡散層31に孔を連結させて、切り込み111とした。これを図6のカソード側ガス拡散層上面図に示す。図6の通り、ガス拡散層は切り込み111によって完全に切り離さず、一部をつなげておくことで燃料電池を作製しやすいようにした。しかし、勿論完全に分離してもかまわないし、切り込み形状もこれにこだわらない。ちなみにB−B’での切断面が図5と対応している。カソード側ガス拡散層31の膜厚は0.1mm、切り込み幅は0.2mm、隣接する切り込みの間隔は2mmとした。またカソード側ガス拡散層31の周囲に、カソード側ガス拡散層31や切り込み111端部と接するようにセルロースを基材とした吸水帯114を設置した。
以上の構造によると、カソードで発生した水は、切り込み111を通して吸水帯114に排出され、保持された。発電特性の傾向は図3、図4と同様であり、高電流においても大きな電圧の低下は見られず、また出力電圧の経時変化は極めて小さかった。また発電の最中を通して、カソードで発生した水が切り込み111に染み出てくる様子と、吸水帯114に水が吸収される様子が観察された。従って、カソードで発生した水が適度に外部に排水されたために得られた効果であり、フラディングに対して本構造が有効である事が示された。
また本構造では、導水帯を電極に積層する必要が無いため、より一層燃料電池を小さくまとめる事が可能となった。
比較例として、実施例1で用いた部材に、孔110を施さずに燃料電池を作製し、発電特性を評価した。結果は、図3の電流電圧曲線、図4の出力電圧の経時変化を示すグラフの通りである。図3によると、0.8A以上の高電流領域において電圧の急激な落ち込みが見られる。また図4によると、1時間程度の発電時間で発電が終了してしまった事が分かる。これらはいずれも、電極付近に水が溜まっていた事から、フラディングにより酸素のカソード触媒層への供給速度が低下したことが原因である。
本発明による電極の断面の模式図。 本発明によるカソード側ガス拡散層上面図。 実施例1と比較例とによる燃料電池の電流電圧曲線。 実施例1と比較例とによる燃料電池の出力電圧の経時変化。 本発明による電極の断面の模式図。 本発明によるカソード側ガス拡散層上面図。
符号の説明
10 高分子電解質膜
21 カソード触媒層
22 アノード触媒層
31 カソード側ガス拡散層
32 カソード側ガス拡散層
41 カソード側集電体
42 アノード側集電体
110 孔
111 切り込み
112 導水帯
113 貯水部
114 吸水帯
A−A’ 図1の切断面
B−B’ 図3の切断面

Claims (18)

  1. 水素イオンを伝導する高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟む一対の電極とからなる高分子電解質形燃料電池の電極において、
    前記高分子電解質膜に接して配置され、電気化学反応を行う触媒層と、
    前記触媒層の前記高分子電解質膜に対向する側に配置され、導電性材料で形成され、導電性材料間に存在する空孔や間隙によりガス透過性を有するガス拡散層と、
    前記ガス拡散層の前記触媒層と対向する側に配置される集電体とから成り、
    前記ガス拡散層が、前記触媒層に対して垂直に貫通して形成された複数の孔を具備することを特徴とする高分子電解質形燃料電池の電極。
  2. 前記孔の幅の範囲が、下限がガス拡散層の導電性材料間に存在する空孔や間隙の幅と略同一であり、上限がガス拡散層厚みの50倍であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  3. 前記貫通孔同士の間隔が、前記ガス拡散層厚みの1/2以上かつ前記ガス拡散層厚みの50倍以下であることを特徴とする請求項2に記載の高分子電解質形燃料電池。
  4. 前記孔内に充填された、親水性部材が充填されている事を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池。
  5. 前記孔に至った水を吸収し、保持する吸水帯を具備し、前記吸水帯の一部が、少なくとも前記ガス拡散層の前記触媒層と対向する面と同一面上にあり、且つ、前記孔の開口部に位置する事を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  6. 前記孔に至った水を電極外に導出する導水帯を具備し、前記導水帯の一部が、少なくとも前記ガス拡散層の前記触媒層と対向する面と同一面上にあり、且つ、前記孔の開口部に位置する事を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  7. 前記導水帯から導出された水を貯蔵する貯水部を該高分子電解質形燃料電池に配置した事を特徴とする請求項6に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  8. 水素イオンを伝導する高分子電解質膜と、前記高分子電解質膜を挟む一対の電極とからなる高分子電解質形燃料電池の電極において、
    前記高分子電解質膜に接して配置され、電気化学反応を行う触媒層と、
    前記触媒層の前記高分子電解質膜に対向する側に配置され、導電性材料で形成され、導電性材料間に存在する空孔や間隙によりガス透過性を有するガス拡散層と、
    前記ガス拡散層の前記触媒層と対向する側に配置される集電体とから成り、
    前記ガス拡散層が、前記触媒層に平行する面を切断するように形成された切り込みを複数具備することを特徴とする高分子電解質形燃料電池の電極。
  9. 前記切り込みの幅の範囲の下限が、ガス拡散層の導電性材料間に存在する空孔や間隙の幅と略同一であり、上限がガス拡散層厚みの50倍であることを特徴とする請求項8に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  10. 複数の前記切り込みにおいて、前記切り込み同士の間隔が、ガス拡散層厚みの1/2以上、ガス拡散層厚みの50倍以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  11. 前記切り込み内に、親水性部材が充填されている事を特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  12. 前記切り込みに至った水を吸収し、保持する吸水帯を具備する事を特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  13. 前記吸水帯の一部が、少なくとも前記ガス拡散層の前記触媒層と対向する面と同一面上にあり、且つ、前記切り込み上部に位置する事を特徴とする請求項12に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  14. 前記吸水帯の一部が、前記切り込みの端部と接する事を特徴とする請求項12に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  15. 前記切り込みに至った水を電極外に導出する導水帯を具備する事を特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  16. 前記導水帯の一部が、少なくとも前記ガス拡散層の前記触媒層と対向する面と同一面上にあり、且つ、前記切り込み上部に位置する事を特徴とする請求項15に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  17. 前記導水帯の一部が、前記切り込みの端部と接する事を特徴とする請求項15に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
  18. 前記導水帯から導出された水を貯蔵する貯水部を該高分子電解質形燃料電池に配置した事を特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の高分子電解質形燃料電池の電極。
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