JP2006045333A - ポリアセタール樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ポリアセタール樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。詳しくは、熱安定性に優れ、かつ、ペレットおよび成形品からのホルムアルデヒド発生量が抑制されたポリアセタール樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。
ポリアセタール樹脂はバランスの取れた機械的性質と良好な自己潤滑特性及び電気特性を有するエンジニアリングプラスチックとして、各種の機械部品や電気部品等に広く使用されている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂組成物はモノマーの主原料がホルムアルデヒドであることから、樹脂の重合時や成形加工時等にかかる熱履歴での僅かな熱分解反応によりきわめて微量ながらもホルムアルデヒドが発生し、成形金型を汚染したり、労働(衛生)環境の悪化を惹起している。近年、最終製品から発生するホルムアルデヒドによるシックハウス症候群等が社会問題となり、厚生労働省からの室内ホルムアルデヒド濃度指針値は、0.08ppmと厳しく規定されており、シックハウス症候群対策として、ホルムアルデヒド発生量を現状よりさらに低くすることが求められている。そのためには、ホルムアルデヒド発生量の低いポリアセタール樹脂組成物が望ましい。
しかしながら、ポリアセタール樹脂組成物はモノマーの主原料がホルムアルデヒドであることから、樹脂の重合時や成形加工時等にかかる熱履歴での僅かな熱分解反応によりきわめて微量ながらもホルムアルデヒドが発生し、成形金型を汚染したり、労働(衛生)環境の悪化を惹起している。近年、最終製品から発生するホルムアルデヒドによるシックハウス症候群等が社会問題となり、厚生労働省からの室内ホルムアルデヒド濃度指針値は、0.08ppmと厳しく規定されており、シックハウス症候群対策として、ホルムアルデヒド発生量を現状よりさらに低くすることが求められている。そのためには、ホルムアルデヒド発生量の低いポリアセタール樹脂組成物が望ましい。
従来、ポリアセタール樹脂組成物のペレットおよび成形品のホルムアルデヒド発生量を抑制するために、種々の添加剤を配合することが提案されている。例えば、特許文献1にはポリアセタール樹脂にアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジドを配合した組成物(特許文献1)、立体障害性フェノールとメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物(特許文献2)など種々の窒素含有化合物を単独或いは他の安定剤等と組み合わせて使用することが提案されている。また、樹脂や繊維処理剤などから発生するホルムアルデヒドの吸着剤或いは消臭剤として、アルデヒドと反応する官能基を有する化合物を用いることも知られており、例えば、特許文献3には、ポリイソシアネートとヒドラジン化合物を反応させて得られる平均セミカルバジド残基数が2.5以上のセミカルバジド誘導体が提案されている。また、特許文献4には、ポリアセタール樹脂の摺動性向上のために、オレフィン系重合体とビニル系重合体のグラフトもしくはブロック共重合体を配合した組成物の安定製を向上させるため、特定性状のメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物及び酸化防止剤を配合した組成物が提案されている。
しかしながら、これらは、取り扱い性が悪かったり、効果が不十分であったり、成形品物性を低下させるなどの問題があり、更にホルムアルデヒドの発生が抑制されたポリアセタール樹脂組成物及びその成形品が求められている。
しかしながら、これらは、取り扱い性が悪かったり、効果が不十分であったり、成形品物性を低下させるなどの問題があり、更にホルムアルデヒドの発生が抑制されたポリアセタール樹脂組成物及びその成形品が求められている。
本発明の目的は、熱安定性にすぐれ、かつ、製品から発生するホルムアルデヒド量が大幅に低減され、成形時の金型汚染の無いポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリアセタール樹脂に特定のジセミカルバジド化合物および特定の共重合体を立体障害性フェノールと共に配合することにより、ペレットおよび成形品から発生するホルムアルデヒド量を著しく抑制し、かつ金型汚染を少なくすることができることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨は、(A)ポリアセタール樹脂100重量部に、(B)下記一般式(1)で示されるジセミカルバジド化合物0.01〜5重量部、(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステル化合物からなる共重合体0.001〜0.9重量部、及び(D)立体障害性フェノール0.01〜5重量部を配合してなり、且つ、(C)/(B)の重量比が0.01〜1であることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物及びこれを用いた成形品に存する。
{式中、R1は炭素数10以下のアルキレン基、シクロアルキレン基または下記一般式(2)で示される基を意味する。
(式中、R2は、直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基,−O−、−S−、−CO−、−SO2−を表す。)}。
本発明に係わるポリアセタール樹脂組成物は、熱安定性に優れ、成形時の金型汚染が低減されるのみならず、ペレットおよび成形品から発生するホルムアルデヒド量を抑制することができることから、いわゆるシックハウス症候群対策として自動車内装部品、家屋や学校等に使用される建材部品、および電気部品等にきわめて有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に使用される(A)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−CH2O−)を主たる構成単位とするアセタールホモポリマー以外に、前記オキシメチレン基以外の構成単位を1種以上含むコポリマー(ブロックポリマーも含む)、およびターポリマー等も含まれる。また、前記ポリアセタール樹脂は、線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。前記オキシメチレン基以外の構成単位としてはオキシエチレン基(−CH2CH2O−)、オキシプロピレン基(−CH2CH2CH2O−)、オキシブチレン基(−CH2CH2CH2CH2O−)等の炭素数2〜4の分岐していても良いオキシアルキレン基が挙げられ、中でもオキシエチレン基が好ましい。ポリアセタール樹脂中のオキシアルキレン単位の含有量としては、0.1〜20重量%が好ましい。
本発明に使用される(A)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−CH2O−)を主たる構成単位とするアセタールホモポリマー以外に、前記オキシメチレン基以外の構成単位を1種以上含むコポリマー(ブロックポリマーも含む)、およびターポリマー等も含まれる。また、前記ポリアセタール樹脂は、線状構造のみならず分岐、架橋構造を有していてもよい。前記オキシメチレン基以外の構成単位としてはオキシエチレン基(−CH2CH2O−)、オキシプロピレン基(−CH2CH2CH2O−)、オキシブチレン基(−CH2CH2CH2CH2O−)等の炭素数2〜4の分岐していても良いオキシアルキレン基が挙げられ、中でもオキシエチレン基が好ましい。ポリアセタール樹脂中のオキシアルキレン単位の含有量としては、0.1〜20重量%が好ましい。
オキシメチレン基(−CH2O−)と炭素数2〜4のオキシアルキレン基を構成単位とするポリアセタール樹脂は、ホルムアルデヒドの3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)などのオキシメチレン基の環状オリゴマーとエチレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキソカン、1,3−ジオキセパン等の炭素数2〜4のオキシアルキレン基を含む環状オリゴマーとを共重合することによって製造することができる。中でも、トリオキサンやテトラオキサンなどの環状オリゴマーとエチレンオキサイドもしくは1,3−ジオキソランとの共重合体が好ましい。特に、トリオキサンと1,3−ジオキソランとの共重合体がさらに好ましい。
本発明において使用される(B)ジセミカルバジド化合物は、前記一般式(1)で示される構造を有する。かかるジセミカルバジド化合物は具体的に、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,4−シクロヘキサンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、ビフェニレン−4,4’−ビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラフェニレン)ジセミカルバジド、ジフェニルエーテル−4,4’−ビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、ジフェニルチオエーテル−4,4’−ビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、ジフェニルスルホン−4,4’−ビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、ジフェニルケトン−4,4’−ビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)等が挙げられる。これらの中、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)[一般式(1)のR1がヘキサメチレン基の化合物]は、日本ヒドラジン工業社から「HN−130」の商品名で、また、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラフェニレン)ジセミカルバジド[一般式(1)のR2がメチレン基の化合物]は日本ヒドラジン工業社から「HN−150」の商品名で市販され、容易に入手できる。また、他の化合物は、対応するジイソシアネートとジメチルヒドラジンを反応させることにより製造できる。
これらのジセミカルバジド化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
これらのジセミカルバジド化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明に使用される(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられ、好ましくはエチレンである。α−オレフィンと共重合させるα,β−不飽和カルボン酸エステルの具体的な例としては、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチルなどのアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類が挙げられる。
(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体として、好ましくは、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体である。
(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体として、好ましくは、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体である。
上記(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルの共重合体は、公知の重合法によって製造されるものであって、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体等の何れの構造でも良いが、(1)測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるMI値が1〜50g/10minであることが好ましく、また、(2)共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸エステルの比率が5〜50モル%であることが好ましい。特に(1)及び(2)を共に満たしていることが好ましい。(C)共重合体のMI値が1g/10minより小さいと、組成物内の共重合体の分散性が悪く、また、MI値が50g/10minより大きいと、共重合体自体による金型汚染が多くなる傾向がある。好ましいMI値は3〜40g/10minであり、さらに好ましくは5〜30g/10minである。また、共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸エステルの比率が5モル%未満、あるいは50モル%より大きいとポリアセタールとの親和性が不十分となるので金型汚染性に影響が与え好ましくない。共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸エステルの好ましい比率は8〜45モル%、さらに好ましくは10〜40モル%である。
本発明において使用される(D)立体障害性フェノールとは、ヒンダードフェノールとも呼ばれ、基本的には下記一般式(3)で示される様なフェノール性水酸基のオルト位に置換基を有する構造を少なくとも一個有する化合物をいう。
(式中、R3およびR4は、各々独立して、置換または非置換のアルキル基を表す。さらに、ヒドロキシ基に対してメタ位およびパラ位が任意の置換基で置換されていても良い。)。
(D)立体障害性フェノールの具体例としては、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルジメチルアミン、ステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファ−ビシクロ〔2,2,2〕−オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2’−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等をあげることができるが、これらのなかで、特に好ましいものは、下記一般式(4)で示される構造を少なくとも一個以上有する化合物である。
(式中、R3およびR4は、一般式(3)におけると同じ意味である。)。
一般式(4)の構造を有する化合物の好ましい具体例としては、前記の中で、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2’−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等がこれに該当する。
一般式(4)の構造を有する化合物の好ましい具体例としては、前記の中で、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2’−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等がこれに該当する。
さらに、これらの中でより好ましいものは、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2’−チオジエチル−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕である。
本発明組成物は以上の(A)〜(D)を必須成分として含有するが、好ましくは、更に、(E)アミノ置換トリアジン及び、又は(F)金属含有化合物を含有する。本発明に使用される、(E)アミノ置換トリアジン化合物とは、下記一般式(5)で示される構造を有する置換トリアジン類、または該置換トリアジン類とホルムアルデヒドとの初期重縮合物である。
(式中、R5,R6,R7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アミノ基または置換アミノ基を示し、その少なくとも一つは、アミノ基、または置換アミノ基を表す。)。
アミノ置換トリアジン化合物、または、該アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの初期重縮合物の具体例としては、例えばグアナミン、メラミン、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N”−トリフェニルメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、アメリン(N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン)、または、それらとホルムアルデヒドとの初期重縮合物等があげられる。中でも、メラミン、メチロールメラミン、ベンゾグアナミン、水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
本発明に使用される(F)の金属含有化合物としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩またはアルコキシドから選ばれる。具体的には、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、これら金属の炭酸塩、燐酸塩、ケイ酸塩、ほう酸塩などの無機酸塩、これら金属のメトキシド、エトキシドなどのアルコキシドが挙げられる。(E)の金属含有化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩またはアルコキシドが好ましく、特に、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムが好ましい。
本発明によれば、(A)ポリアセタールに(B)、(C)及び(D)の成分、好ましくは更に(E)、(F)の成分を、特定の量比で配合することにより、熱安定性に優れ、ホルムアルデヒド発生量が低減された組成物が得られる。本発明の樹脂組成物中の(B)ジセミカルバジド化合物の量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し0.01〜5重量部、好ましくは0.03〜4重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部である。(C)オレフィン系重合体の量は0.001〜0.9重量部、好ましくは0.003〜0.8重量部、さらに好ましくは0.005〜0.7重量部である。(D)立体障害性フェノールの量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部である。(E)アミノ置換トリアジン化合物の量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し0.01〜7重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。(F)金属含有化合物の量は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し0.004〜5重量部、好ましくは0.005〜5重量部である。
また、本発明組成物は、上記組成内で(B)ジセミカルバジド化合物に対する(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステル化合物からなる共重合体を、重量比で0.01〜1とすることが必要である。(C)/(B)の比が0.01より小さいとモールドデポジット低減の効果が少なく、また配合比が1より大きいと、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステル化合物からなる共重合体に起因するモールドデポジットが発生し、いずれも好ましくない。配合比は好ましくは0.03〜0.9であり、さらに好ましくは0.05〜0.8である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、以上の成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲内で公知の添加剤および/または充填剤を添加することが可能である。前記添加剤としては、例えば滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。また、前記充填剤としてはガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。さらに、顔料、染料を加えて所望の色目に仕上げることも可能である。
本発明のポリアセタール樹脂組成物の製法は、特に限定されるものではなく、上記(A)〜(D)成分、及び必要に応じて添加されるその他の成分を混合・混練することによって調製することができる。混合・混練の方法については、特に制限はなく、従来から知られている混合・混練装置を使用する方法が挙げられる。混練は、ポリアセタール樹脂が溶融する温度以上、具体的には、原料のポリアセタール樹脂の融解温度以上(一般的には170℃以上)で行うのが好ましい。
具体的には、例えば、(A)ポリアセタール樹脂に対して、(B)ジセミカルバジド化合物、(C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステル化合物からなる共重合体、(D)立体障害性フェノール、必要であれば(E)アミン置換トリアジン化合物及び、又は(F)金属含有化合物を、所定の量、同時に添加し、必要に応じて他の樹脂添加剤を添加した後、タンブラー型ブレンダー等によって混合し、得られた混合物を1軸または2軸押出し機にて溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化することにより所望の組成のポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、例えば押出成形法、射出成形法等の公知のポリアセタール樹脂の成形加工法を適用して成形品を得ることができる。本発明の成形品としては、例えば、ペレット、丸棒、厚板等の素材、シート、チューブ、各種容器、機械電気、自動車、建材その他の各種部品等、ポリアセタール樹脂の用途として知られる種々の成形品が挙げられる。本発明の組成物は熱安定性に優れているだけでなく、ホルムアルデヒドの発生を大幅に抑制することが可能であることから、いわゆるシックハウス症候群対策として自動車内装部品や建材部品、および電気部品等の材料としてきわめて有用である。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例で使用した材料、及び測定法を以下に示す。
なお、実施例及び比較例で使用した材料、及び測定法を以下に示す。
<材料>
(1)ポリアセタール樹脂:コモノマーとして1,3−ジオキソランを樹脂に対して4.2重量%用いたアセタールコポリマー、メルトインデックス(10.5g/10分)。
(1)ポリアセタール樹脂:コモノマーとして1,3−ジオキソランを樹脂に対して4.2重量%用いたアセタールコポリマー、メルトインデックス(10.5g/10分)。
(2)ジセミカルバジド化合物−1:1,1,1’、1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド。
(3)ジセミカルバジド化合物−2:1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)。
(4)ヒドラジド化合物:アジピン酸ジヒドラジド。
(3)ジセミカルバジド化合物−2:1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)。
(4)ヒドラジド化合物:アジピン酸ジヒドラジド。
(5)α−オレフィン共重合体:エチレン−アクリル酸エチル共重合体、190℃、荷重2.16kgにおけるMI値:23g/10min、共重合体中のアクリル酸エチルの比
(6)立体障害性フェノール:トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、商品名:イルガノックス245、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製。
(7)アミノ置換トリアジン化合物:メラミン。
(8)金属含有化合物:水酸化マグネシウム。
<物性評価>
(a)発生ホルムアルデヒド量:実施例又は比較例で得られた樹脂組成物を、日精樹脂工業社製PS−40E5ASE成形機を用いて、シリンダー温度215℃で成形した100mm×40mm×厚さ2mmの平板を試験片として、成形翌日にドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して次の手順で測定した。
(i)ポリエチレン容器中に蒸留水50mlを入れ、試験片を吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃、3時間保持する
(ii)その後、室温で60分間放置後、試験片を取り出す。
(iii)ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド濃度を、UVスペクトロメーターを用いてアセチルアセトン比色法で測定する。
(a)発生ホルムアルデヒド量:実施例又は比較例で得られた樹脂組成物を、日精樹脂工業社製PS−40E5ASE成形機を用いて、シリンダー温度215℃で成形した100mm×40mm×厚さ2mmの平板を試験片として、成形翌日にドイツ自動車工業組合規格VDA275(自動車室内部品−改訂フラスコ法によるホルムアルデヒド放出量の定量)に記載された方法に準拠して次の手順で測定した。
(i)ポリエチレン容器中に蒸留水50mlを入れ、試験片を吊るした状態で蓋を閉め、密閉状態で60℃、3時間保持する
(ii)その後、室温で60分間放置後、試験片を取り出す。
(iii)ポリエチレン容器内の蒸留水中に吸収されたホルムアルデヒド濃度を、UVスペクトロメーターを用いてアセチルアセトン比色法で測定する。
(b)熱安定性:実施例又は比較例で得られた樹脂組成物を、日精樹脂工業社製PS−40E5ASE成形機を用いて、シリンダー温度215℃−10分サイクルで成形した100mm×40mm×厚さ2mmの平板を試験片とし、滞留時の成形安定性(着色性、シルバー発生の有無)を観察し、次の基準で評価した。
◎:熱安定性は非常に良好。
○:熱安定性は良好。
△:熱安定性は普通。
×:熱安定性は不良。
◎:熱安定性は非常に良好。
○:熱安定性は良好。
△:熱安定性は普通。
×:熱安定性は不良。
(c)金型汚染性:実施例又は比較例で得られた樹脂組成物を、住友重機械工業社製ミニマットM8/7A成形機を用い、しずく型金型を用いて、成形温度230℃、金型温度35℃で3000ショット連続成形し、終了後金型の付着物の状態を肉眼で観察し、以下の6段階の基準で評価した。
[実施例1〜8,比較例1〜13]
ポリアセタール樹脂100重量部に対し、下記表1〜表4に示す配合処方で原料を秤量し、タンブラー型ブレンダーによって混合した。次に、得られた混合物を40mmΦ単軸押出機(田辺プラスチックス社製、型式:VS−40)にて、シリンダー温度200℃、吐出速度13kg/hrで溶融混練してペレット化し、所望のポリアセタール樹脂組成物を得た後、射出成形機にてシリンダー温度215℃で2mm厚の平板を成形し、成形品の発生ホルムアルデヒド量を測定した。
結果を表1〜表4に示した。
なお、発生ホルムアルデヒド量は比較例1での値を基準(1.00)とする相対値を表示した。
ポリアセタール樹脂100重量部に対し、下記表1〜表4に示す配合処方で原料を秤量し、タンブラー型ブレンダーによって混合した。次に、得られた混合物を40mmΦ単軸押出機(田辺プラスチックス社製、型式:VS−40)にて、シリンダー温度200℃、吐出速度13kg/hrで溶融混練してペレット化し、所望のポリアセタール樹脂組成物を得た後、射出成形機にてシリンダー温度215℃で2mm厚の平板を成形し、成形品の発生ホルムアルデヒド量を測定した。
結果を表1〜表4に示した。
なお、発生ホルムアルデヒド量は比較例1での値を基準(1.00)とする相対値を表示した。
表1〜表4より明らかな様に、オレフィン系共重合体(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)を含有する実施例の組成物は何れも金型汚染性が1又は2と極めて小さいが、α−オレフィン共重合体を含有しない対応する比較例の組成物はホルムアルデヒド量は実施例と変わらないものの、金型汚染性は4又は5とモールドデポシット量が非常に多いことを示している。また、比較例12と13から、ジセミカルバジドの代わりにホルムアルデヒド捕捉剤として知られているアジピン酸ジヒドラジドを配合した組成物では、α−オレフィン共重合体の配合による金型汚染の低減効果が余りないことが分かる。
Claims (6)
- (C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が、以下の(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
(1)測定温度190℃、荷重2.16kgにおけるMI値が1〜50g/10min。
(2)共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸エステルの比率が5〜50モル%。 - (C)α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
- (A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、更に(E)アミノ置換トリアジン化合物0.01〜7重量部を配合することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
- (A)ポリアセタール樹脂100重量部に対し、さらに(F)アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩またはアルコキシドから選ばれる少なくとも1種の金属含有化合物0.004〜5重量部を配合することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 請求項1〜5の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物から形成される成形品。
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JP2004227642A JP2006045333A (ja) | 2004-08-04 | 2004-08-04 | ポリアセタール樹脂組成物およびそれからなる成形品 |
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- 2004-08-04 JP JP2004227642A patent/JP2006045333A/ja active Pending
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