JP2006043045A - 送血管およびこれを用いた血液供給装置 - Google Patents

送血管およびこれを用いた血液供給装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 迅速かつ正確な送血が可能な送血管およびこれを用いた血液供給装置、さらには、患者(検体)の大小や年齢あるいは病症の相違に関係なく、各種の手術に対して汎用的に使用できる送血管およびこれを用いた血液供給装置を提供することにある。
【解決手段】 分岐手段2によって分岐し形成する複数の分岐路3を有し、1つの基幹流路1の内径を最大として分岐するごとに同径あるいは小径の内径とする分岐路3からなる送血管であって、各々固有の内径および管長を有する前記分岐路3の組み合わせによって、圧力あるいは流量の分配比率を確定した複数の分岐流路を形成することを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、送血管およびこれを用いた血液供給装置に関し、例えば、抹消血管から体内に挿入し血液を供給するための送血管およびこれを用いた血液供給装置に関する。
従来、心臓手術などにおいて、開胸手術をすることなく、末梢血管から脱血管及び送血管を低侵襲で体内に挿入し、血液を循環させ心臓の負担を軽くすることができる血液循環補助装置として、各種の装置が提案され、実際に用いられている。具体的には、図5に示すような、末梢血管から右心房218に挿入して血液を抜き出することができる脱血管201又は先端に穿刺芯を有し、末梢血管から右心房218及び心房中隔の卵円孔を経て左心房221に挿入して血液を抜き出すことができる脱血管201と、末梢血管から大動脈224又は頸動脈に挿入して大動脈224又は頸動脈に血液を送ることができ、かつ下流側部に血液吐出口211を設けている送血管208と、該脱血管201から血液を吸引し該送血管208に血液を送り出すことができる血液ポンプと、必要に応じて血液中の二酸化炭素を酸素と交換することができる酸素ガス交換器とから成る血液循環補助装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、図6に示されるように、真空保持された静脈リザーバ84と、動脈遠心ポンプ104との間に配置された逆止弁102は、静脈リザーバにおける負圧を酸素付加器106から分離する。チュービング110に沿って配置された複数の迅速接続断デバイス108は、バイパス回路構成要素の1つが不具合のとき、その交換を可能にする。このチュービングは、典型的には、直径において約3/16インチと1/2インチとの間であり、塩化ビニル系樹脂(PVC)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等価物から作製される。この迅速接続断デバイス108は、正ロック/ロック解除機構を有した、各側にリブまたはバーブを有した、必要に応じたストレートコネクタであり、このデバイスをオスおよびメス構成要素へ分解することを可能にする。シールOリングは、典型的にはオス構成要素とメス構成要素との間の接続の重要な部分である。デバイス108はまた、本発明が現在既存のバイパス装備およびポンプハードウェアとともに使用されることを可能にする適応性のあるハードウェアとして観察され得る。酸素付加器106を出る血液は、次いで患者へ送達し戻すための動脈フィルタ112および心停止熱交換器114の両方へ流れ得る。そして必要に応じて、心停止ポンプもまた、血液送達を容易化するために設置され得る。典型的には、動脈ライン118および心停止送達ライン120は、血液を患者へ戻す(例えば特許文献1参照)。
特開平5−200110号公報 特表2002−526208号公報
しかしながら、従来の血液供給装置では、実際の使用時にいくつかの課題があり、特に緊急を要する場合には、殆んど間に合わず使用されないことも多くあった。
血液供給に際しては臨床専門家が必要となるとともに、実際の手術においては各臓器あるいは生体内の部位に対応した複数の送血流路を必要とすることが多く、こうした臨床専門家でも送血準備に数10分から1時間近くを必要とする。つまり、各臓器あるいは生体内の部位に対応した流路の設定および供給流量あるいは圧力の調整が必要となり、緊急対応が非常に困難であった。
また、上述のように、従来の血液供給装置では1つの送血流路に対し1つのポンプを用いることが基本であるが、各流路ごとにポンプの特性を確認し、その特性と供給先の各臓器あるいは生体内の部位に適した供給流量あるいは圧力を調整するために、上記のように臨床専門家であっても実際の送血を開始するまでの所定の準備時間が不可欠であった。
さらに、通常複数の供給流路を使用することが多く、複数のポンプを必要とすることになる。こうしたポンプは、給送対象および用途が特殊であるため非常に高価であり、これを複数備えることは、医療機関での装置の負担が大きいことも当該装置の利用を制限する大きな障害であった。
また、本来血液の供給には、汚染のない、かつ血液凝固あるいはキャビテーション(気泡発生)の発生するおそれのない器具および装置であることという、他の技術分野にはない特殊、かつ絶対的な条件が課されており、こうした要請に適合する送血管およびこれを用いた血液供給装置の実用化は、非常に困難であった。
そこで、この発明の目的は、こうした要請に対応し、迅速かつ正確な送血が可能な送血管およびこれを用いた血液供給装置を提供することにある。さらに、患者(検体)の大小や年齢あるいは病症の相違に関係なく、各種の手術に対して汎用的に使用できる送血管およびこれを用いた血液供給装置を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す送血管およびこれを用いた血液供給装置によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は、分岐手段によって分岐し形成する複数の分岐路を有し、1つの基幹流路の内径を最大として分岐するごとに同径あるいは小径の内径とする分岐路からなる送血管であって、各々固有の内径および管長を有する前記分岐路の組み合わせによって、圧力あるいは流量の分配比率を確定した複数の分岐流路を形成することを特徴とする。
上記のように緊急時の手術においては、1つの送血管による迅速な設定・送血が不可欠である。本発明者は、体内での各臓器あるいは血流部位における血液の流量は、心臓という1つの送血手段からの血液を、血管の内径および管長によって確定する分配比によって最適に配分されることを利用し、体外で使用する送血管へのこうした機能の適用を研究した結果、本発明のような構成を有する送血管によって同様の送血機能を実現できることを見出したものである。つまり、比較的大口径の基幹流路を分岐し、供給流路を所定の内径および管長を有する配管あるいは固有の内径および管長を有する分岐路の組み合わせによって分配比を確定しておけば、人工的な送血流路においても、特別な各流路での流量・圧力調整を必要としない体外送血流路を形成することができることを案出した。また、本発明の構成によれば、従来不可能であった、各部位への同時送血を行うことができることから、体内での二次的な異常の発生を防止することも可能となる。さらに、こうした体内での血液循環機能と同様の機能によって体外からの血液供給を行うことは、検体への余分な負荷を与えない、供給装置を含む検体全体の血液循環システムの、調和の取れた作用効果を期待することができる。
本発明は、上記送血管であって、前記分岐手段前後の分岐路の内径の比率が、1.0:0.8〜1.0であることを特徴とする。
従来1つの送血手段による複数の流路への送血に際し、各流路に並行に送血する方法などが試みられたが、実用化を阻止する1つの要因として、融液や薬剤の添加あるいは供給血液の温度変化に伴う血液の粘性の影響があることが判った。これに対しては、まず上記の流路構成を行うことによって実用化が可能となったことに加え、分岐路の内径の比率を所定範囲内にすることによって、さらに血液粘度の変化をカバーしうる流路構成が可能であることを案出した。また、所定の比率で徐々に流路を狭小化することによって、血流の乱れを少なくしキャビテーションの発生を防ぐことができる点においても有用である。各血液供給先の流量あるいは圧力に適合するように、こうした内径を有する分岐路の組み合わせおよび管長の設定を行うことによって、検体あるいは病症の相違に関係なく、各種の手術に対して汎用的に使用できる送血管およびこれを用いた血液供給装置を提供することが可能となった。
本発明は、上記送血管であって、前記分岐路の少なくとも一部が、テーパ形状の管状体からなることを特徴とする。
送血管は、血液を滞留なく円滑に送血するとともに、上記のような血流の乱れの発生を防止することが非常に重要な機能として要求される。特に血液の粘性を考慮すると、送血管中の血流の状態は非常に影響が大きい。本発明では、送血管から検体内部への流路を極力段差のない状態とすることで、こうした機能をより高めることができることを案出したものである。テーパ形状の管状体によって、送血管を流れる血液に対する管壁からの抵抗を軽減し、円滑な送血を行うことが可能となる。また、血流の乱れを少なくしキャビテーションの発生を防ぐことができる点においても有用である。
本発明は、上記送血管であって、前記分岐流路の少なくとも1つの分岐流路に、圧力あるいは流量を検出する手段を配置することを特徴とする。
血液供給は、検体の生命を左右するものであり、その供給の確実を図ることが最優先事項である。一方、複数の流路によって供給する場合にはその流路ごとの供給確認が必要となり、供給確認の手段を流路に設けることは事故の可能性を増やすこととなる。本発明の送血管は、1つの基幹流路を分岐する構成を有することから、少なくとも1つの分岐流路に圧力あるいは流量を検出する手段を配置することで全ての供給の確認を行うことが可能となる。従って、こうした安全性の向上にも有用となる。
本発明は、上記送血管であって、前記分岐流路が、各々血液を供給する臓器あるいは生体内の部位に対応した送血端を有することを特徴とする。
上記のように本発明の送血管は、供給流路の内径および管長を調整し、種々の血液を供給する臓器あるいは生体内の部位に対応するものである。しかし、検体への実際の使用に際しては、送血する箇所は数箇所に限定されるものであり、また、心臓から距離など条件的に互換可能な送血箇所もあることから、本発明者は、1つの送血管の構成による対応の可能性を検討した。その結果、上記のような基幹流路からの分岐流路からなる構成によって、脳を含む数箇所の部位に対応した流路を限定することが可能であることの知見を得ることができた。従って、1つの構成によって素早く各部位への送血が可能となり、特に脳への迅速な送血が可能となったことで非常に高い有用性を有するものとなった。
本発明は、上記のいずれかの送血管を用いた血液供給装置であって、1つの送血手段を用いて複数の分岐流路に送血することを特徴とする。
上記のように、本発明に係る送血管は1つの基幹流路からの分岐流路からなる構成であり、これを用いた血液供給装置にあっては、従来のような複数の送血手段および複数の送血流路を用いることによる各流路の設定および調整などに非常に時間を要することがなくなった。つまり、1つの送血手段を用い、比較的大口径の基幹流路に送血することによって、予め確定された分配比に従った各部位への同時送血が可能となる。また、こうした特別な各流路での流量・圧力調整を必要としない体外送血流路の形成は、体内での血液循環機能と同様の機能によって体外からの血液供給を行うことができることを意味し、検体への余分な負荷を与えない、供給装置を含む検体全体の血液循環システムの、調和の取れた作用効果を期待することができる。
本発明は、上記の血液供給装置であって、前記送血手段が無拍動ポンプであることを特徴とする。
無拍動ポンプは、構造が簡単で小型かつ駆動エネルギーが低いことで人工心肺装置などにおいても使用されていた。本発明のように血液供給装置としては、心臓に近い送血の可能性もあり心臓の脈動に影響を与えないことが好ましいとの観点に加え、分岐流路を構成する場合には、分岐点あるいはその近傍での流れの変化がポンプの拍動と相俟って、乱流の発生およびそれに伴うキャビテーションの発生の誘因を排除する意味からも無拍動ポンプの有する特性によって、検体への余分な負荷を与えない、さらに安定性の高い血液供給装置を構成することが可能となる。特に、無拍動ポンプの1種である遠心ポンプを本発明の血液供給装置における送血手段として用いた場合、従来殆んど利用されていなかった機能を最大限に活用できることを見出したもので、具体的には、遠心ポンプの吐出圧の変化に応じてポンプの吐出流量が変化させることが可能であり、例えば、検体の大きさによる供給量の変更、送血部位の減少・追加があっても、ポンプでの供給圧(流量)を自動的に制御し、そのまま送血を行うことが可能である。従って、非常に緊急度の高い場合であっても、迅速に安定な送血を行うことができる点において優れている。さらに精度を上げるための自動フィードバック制御が容易に可能となることから特に有用である。
以上のように、本発明によれば、従来困難であった、迅速かつ正確な送血が可能な送血管およびこれを用いた血液供給装置を提供することが可能となった。特に、血液の粘性が送血に大きな影響を与え、かつ血流の乱れがキャビテーションの発生を招くおそれがあることを考慮すると、検体あるいは病症の相違に関係なく、各種の手術に対して汎用的に使用できる送血管およびこれを用いた血液供給装置を提供は、非常に有用性の高いものといえる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明に係る送血管の基本的な構成を例示している。1つの基幹流路1から分岐手段2(具体的には2a)によって分岐路3(具体的には3aと3b)に分岐し、さらに順に分岐路3bを分岐手段2bによって分岐路3cと3d、分岐路3dを分岐手段2cによって分岐路3eと3f、分岐路3fを分岐手段2dによって分岐路3gと3hに分岐し、計5つの送血端4(具体的には4a,4c,4e,4g,4h)を有した構成を示している。使用しない送血端4(図1の例では、4e,4g,4h)には閉止手段5(具体的には5e,5g,5h)を接続する。また、分岐路3dの流路中には、分岐手段6を設け、分岐された流路に切換手段7を配して圧力検出手段(図示せず)あるいは流量検出手段(図示せず)を接続することが可能な構造(検出端8)としている。基幹流路1の一端部1aから導入された血液は、基幹流路1および複数の分岐路3を通過して分岐され、送血端4と接続されたカニューレ(図示せず)を介して、臓器あるいは生体内の部位に送血される。
ここで、1つの基幹流路1の内径を最大として分岐するごとに同径あるいは小径の内径とする分岐路3から送血管を構成し、各々固有の内径および管長を有する分岐路3a〜3hの組み合わせによって、圧力あるいは流量の分配比率を確定した複数の分岐流路を形成することができる。つまり、端部1a〜送血端4aの分岐流路は、基幹流路1および分岐路3aからなり、端部1a〜送血端4cの分岐流路は、基幹流路1〜分岐路3b〜分岐路3cから形成される。端部1a〜送血端4e,4g,4hについても、基幹流路1と複数の分岐路3から形成される。このとき、各分岐路3a〜3hの内径および管長をそれぞれ同一あるいは異なる数値で設定し、各分岐流路ごとに異なる流路抵抗を形成することによって、1つの基幹流路1からの血液を所定の分配比率で配分して送血することが可能となる。こうした配分は、送血を受ける検体の立場から見れば、血液成分や融液や薬剤の添加あるいは供給血液の温度変化があっても殆んど変化のない状態を維持できる。一方送血する立場から見れば、検体の大きさや年齢が異なった場合、供給量の変化はあっても、配分の変化は殆んどない状態を維持することが可能である。
各分岐流路は、その送血端4においてカニューレ(図示せず)と接続されるが、それぞれ対応する1または複数の臓器あるいは生体内の部位を特定することで、1つの送血管によって、安全かつ迅速に複数の臓器あるいは生体内の部位に同時に送血することが可能となる。つまり、体内における心臓を中心とする血液循環系の送血系と同じものを体外に準備することができることになり、後述するように、1つの送血手段(体内の心臓に相当する)によって各臓器あるいは生体内の部位に適した配分の血液を供給することが可能となった。さらに体内と同じメカニズムを実現するには、例えば、体温と同じ温度、血管と同質の流路・管壁など、体内と同様の条件を確保することが好ましい。
なお、各送血端4における流量あるいは変動に大きな差異がある場合など、上記配分の変更範囲が大きい場合には、補助的に分岐路3にプラグ(絞り)を用いて微調整することも可能である。ただし、プラグの多用あるいは大幅な調整は従来法の問題点を誘発することとなり、またキャビテーションの可能性がある場合には、プラグを使用せずに内径および管長のみでの調整が好ましい。
このとき、基幹流路1、分岐手段2および6、分岐路3、閉止手段5、切換手段7は、流路を血栓の発生を防止できる素材であれば、特に限定されるものではなく、PVC、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン樹脂、フッ素系樹脂あるいはポリウレタン系樹脂などによって形成することが好ましく、分岐手段2などの手段は硬質樹脂、基幹流路1などの流路は軟質樹脂とすることで検体との接続および固定に適した送血管を構成することができる。
また、流路の内径については、分岐手段前後の分岐路の内径の比率が、1.0:0.8〜1.0であることが好ましい。流路の形成において、ストレートな流れを急激に狭小化することは、血流の乱れを招くことから好ましくなく、あるいは流路総断面積を同じくして分岐する場合、あるいは分岐手段前後の分岐路の内径の比率が0.8を下回るときにも血流の乱れが発生する可能性があることから同様である。分岐手段を介して全体の流路断面積を一旦拡大しつつ分岐後の各流路を徐々に狭小化することによって、血流の乱れを少なくしキャビテーションの発生を防ぐことができる。
具体的には、基幹流路1の内径を1.0とすると、分岐路3の内径は、例えば3a=3b=1.0、3c=3d=0.85、3e=3f=0.72(=0.85)、3g=3h=0.61(=0.85)に設定することが好ましい。分岐路3の内径の比率を所定範囲内にすることによって、血液粘度の変化をカバーし、かつ所定の比率で徐々に流路を狭小化することによって、血流の乱れを少なくしキャビテーションの発生を防ぐことができる流路を構成することが可能となる。また、分岐手段2後段の2つの分岐路3の内径の比率を変更し、3a=1.0、3b=0.9、3c=0.85、3d=0.85、3e=3f=0.72(=0.85)、3g=3h=0.61(=0.85)に設定することも可能である。上記効果に加え、分岐段階で流量のバランスを変更し、その後の分岐路3での安定を形成することができる点優位である。あるいは、分岐路3の内径の比率を単純化して3a=1.0、3b=3c=0.85、3d=3e=3f=3g=3h=0.72(=0.85)に設定することも可能である。上記効果に加え、流量の分配を広い幅で行うことにより、送血中の検体あるいは血液供給条件に変化が生じてもその影響を低減し、安定な送血状態を維持することができる点優位である。なお、上記はごく一部の例を挙げたに過ぎず、各分岐路3を、0.8〜0.9の任意の値を選択することも可能である。ただし、既成のチューブや配管を用いる場合には、所定の制限があるが、管長を調整することによって、流量の調整をすることができる。
さらに、分岐路3の少なくとも一部が、テーパ形状の管状体からなることが好ましい。テーパ形状の管状体の大口径側を上流にして流体を導入した場合、管状体内部を流れる流体に対する管壁からの抵抗を軽減する働きがある。こうした機能を送血管に利用すれば、血液の粘性の影響の少ない円滑な送血を行うことが可能となる。また、血流の乱れを少なくしキャビテーションの発生を防ぐことができる点においても有用である。具体的には、送血管を構成する一部の分岐路3をテーパ形状の管状体とする方法や、分岐路3の一部流路をテーパ形状の管状体とする方法、あるいはこれらの組み合わせ方法が挙げられる。
分岐手段2について、図1では2つに分岐する手段を例示したが、3以上の分岐路に分岐することも可能である。しかし、乱れのない血流の形成には、最小単位の分岐手段2を用いる方が構成が容易であり、好ましい。
上記送血管では、血液供給の確実を図るべき、少なくとも1つの分岐流路に、分岐手段6を介して検出端8を設けている。本発明の送血管は、1つの基幹流路を分岐し分岐路3の内径および管長によって分配比率を決定する構成であることから、1の分岐流路での圧力あるいは流量を確認すれば、送血管全体での送血機能を確認することが可能である。このように、最小限の手段によって送血管あるいはこれを用いた血液供給装置全体の安全性を担保する機能を具備することが可能となり、非常に機能性の高い方法といえる。検出端8に接続される検出手段としては、圧力検出手段が一般的に有用であり、具体的には圧電素子を用いたトランスデューサ等の微圧測定用センサなどが挙げられる。また、流量検出手段を用いることも可能であり、例えば差圧流量計などのように微小流量の測定が可能な検出手段が好ましい。
また、図1では、3つの送血端4に閉止手段5を接続し、分岐路3dの流路中に検出端8を設ける構造を例示したが、どの送血端4に閉止手段5を接続し、どの分岐路3に検出端8を設けるかは検体への送血の必要に応じて任意に設定されるが、本発明においては、非常に素早く検体に対応した送血管を形成することが可能である。
図2は、上記の送血管を用いた人工心肺用の血液供給装置について1の構成を例示している。各送血端4に、血液を供給する臓器あるいは生体内の部位を明示するとともに、同一構造の送血管を種々の検体や発症に対して用いることができる構成を示している。具体的には、胸腹部大動脈瘤を手術する場合などに用いることができるもので、1つの送血手段10によって直接送血管に導入する構成を例示する。導入された血液は、基幹流路1から各分岐流路を通過し、送血端4aからは大腿動脈へ送血され、送血端4cからは腋窩動脈もしくは人工血管側枝へ、送血端4eからは内頚動脈もしくは順行性分枝へ、送血端4gおよび4hからは順行性分枝へ送血される。このとき、送血管内の圧力は、基幹流路1において5〜35kPa程度、各送血端における流量は、300〜5000ml/min程度、合計約300〜5000ml/min程度である。
また、図3は、上記の送血管を用いた人工心肺用の血液供給装置について別の構成例を示している。各送血端4に、血液を供給する臓器あるいは生体内の部位を明示するとともに、実際に使用しない送血端4がある場合には対応する分岐路3をクランプCで封止することによって、同一構造の送血管を種々の検体や発症に対して用いることができる構成を示している。具体的には、胸腹部大動脈瘤を手術する場合などに用いることができるもので、これによって、迅速な処置が可能となる。血液導入口9から吸引した血液を、1つの送血手段10によって、人工心肺装置11を経由して送血管に導入する。人工心肺装置11では、供給される血液中の異物の排除あるいは酸素の付加などの処置がなされ、新鮮な血液として送血される。送血管に導入された血液は、基幹流路1から各分岐流路を通過し、送血端4aからは腋窩動脈へ送血され、送血端4cからは大腿動脈へ、送血端4eからは逆行性分枝へ、送血端4gおよび4hからは順行性分枝へ送血される。このとき、送血管内の圧力は、基幹流路1において5〜35kPa程度、各送血端における流量は、300〜5000ml/min程度、合計約300〜5000ml/min程度である。
さらに、例えば、脊椎動脈分枝に送血する場合には、分岐路3cあるいは3dをさらに分岐して、新たな送血端を設け、送血することも可能である。このように本発明においては、上記構成例以外にも、脊椎動脈、腎動脈、腹腔動脈、冠動静脈など、検体あるいは手術に必要とされる各部位に応じた送血端4の追加も容易である。
ここで、送血手段10は、図2および図3の構成のように、1つの手段を用いて複数の分岐流路に送血することが好ましい。上記のように送血する臓器あるいは生体内の部位に対応した分配比が予め確定された送血管を利用することによって、導入圧あるいは導入流量を設定すれば無調整で、必要な箇所に最適な条件で送血することができる。つまり、こうした体外送血流路の形成は、体内での血液循環機能と同様の機能によって体外からの血液供給を行うことができることを意味し、部分的な過剰送血による検体への負荷を与えることなく、調和の取れた血液供給を可能とする。
また、送血手段10としては、各種の血液ポンプを使用することができ、例えば、ダイヤフラム式、サック式、チューブ式、ピストン式(プッシャプレート式)などのいわゆる拍動ポンプを挙げることができる。従来からも多用され、圧力あるいは流量の可変範囲が広く、十分な送血機能を有することから、本発明の血液供給装置にも適用可能である。特に人工心臓用として心臓に似た動作によって血管内の弁動機能を誘起・補佐する場合に有用されていた。
ただ、1つの基幹流路1に接続し供給量の異なる複数の分岐流路に送血する場合の安定性、心臓に近い送血の場合の心臓の脈動への影響および拍動に伴うキャビテーションの発生の誘因を考慮すると、本血液供給装置における機能を一層高めるには、拍動のないポンプの使用が好ましい。具体的には、いわゆる無拍動ポンプと呼ばれる遠心ポンプや軸流ポンプが、構造が簡単で小型かつ駆動エネルギーが低い利点を有するものとして挙げることができる。
特に、遠心ポンプは、その吐出圧の変化に応じてポンプの吐出流量が変化させることが可能であり、例えば、検体の大きさによる供給量の変更、送血部位の減少・追加があっても、ポンプでの供給圧(流量)を自動的に制御し、そのまま送血を行うことが可能である。従って、非常に緊急度の高い場合であっても、迅速に安定な送血を行うことができる点において優れている。
また、本発明においては、自動フィードバック制御を適用しさらに精度を上げることが可能である。つまり、検体が交替し、患者の体の大きさが非常に異なった場合、血液供給装置からの供給量の変更は、従来全く一からやり直していたが、本発明においては、送血管は変更せずに、分岐路3に設けられた圧力あるいは流量検出手段からの信号をもとに送血ポンプの供給圧あるいは供給流量を制御するという、自動フィードバック制御が可能となる。
さらに、本血液供給装置は体外循環システムにまで拡張することが可能であり、図4にその構成を例示する。検体からの脱血(図4では心臓13の冠動脈14の近傍に表している)を取り込むラインおよび検体から血液を吸引ポンプ12によって吸引するラインをリザーバ15に接続し、該リザーバ15を図2に示した血液導入口9を介して血液供給装置と接続することで、体外循環システムが構成されている。リザーバ15には、患部あるいはそれ以外の部位からの血液が所定量維持されるように、吸引ポンプ12によって吸引量が制御されるとともに、不足分があれば、別途準備される血液あるいは血液成分が追加される。
つまり、検体から出た血液は、リザーバ15にプールされた後、遠心ポンプなどの送血手段10を経て、人工心肺装置11によって新鮮な血液とされ、フィルタ16を介して送血管Sによって分岐されて、再度検体の各部位に戻される。図4では、検体に対し、主として頭部や上肢への送血を行う左心房出口、主として骨盤腔や下肢への送血を行う大腿動脈、さらに脳細管への送血を行う脳灌流に接続している状態を例示している。体内に送られた血液は、体内を循環した後、再度脱血あるいは吸引ポンプ12による吸引を受けて人工心肺装置11により清浄化される。
このように、本血液供給装置を接続することによって、体内循環と一体化された循環システムが形成されることになり、生体の血液循環システムを補助する体外循環システムの一翼を担うことが可能となる。このとき、送血管S自体が、体内循環と同様、内径と管長によって各部位への送血量を設定する流路を構成することから、非常に調和のとれた循環システムを形成することができる。
また、こうした体外循環システムは上記の自動フィードバック制御を適用することによって、全自動体外循環システムの形成が可能となる。つまり、圧力検出手段あるいは流量検出手段の情報を人工心肺の送血装置に設定し、それをリザーバレベルと連携させることによって全自動体外循環システムを構成することができる。具体的には、人工心肺装置11のポンプ制御とリンクさせ、送血される血液の量を演算・管理することによって、リザーバ15の液量を制御し、供給と回収のバランスのとれた自動制御可能になる。つまり、人工心肺の場合は、患者から脱血してくる血液量に追従する必要があるので、送血する血液にリザーバ15から補充液を加えるシステムがいるため、その情報をもとに送血手段(ポンプ)10の回転数を制御すれば、自動的に送血量を制御することが可能となる。
上記のように、本発明は、従来理論的には確立している血液供給装置について、実際の手術の現場での緊急時の患者の救済が殆んど不可能であった現状を大きく変えることができる点において、医療の分野においては画期的な技術といえる。
また、以上は、患者つまり人体を対象とした場合を中心に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、動物など生体一般に適用可能であることはいうまでもない。
本発明に係る送血管の基本的な構成を例示する説明図。 本発明に係る血液供給装置の基本的な構成を例示する説明図。 本発明に係る血液供給装置の他の構成例を示す説明図。 本発明に係る血液供給装置を用いた自動体外循環システムの構成を例示する説明図。 従来技術に係る血液循環補助装置の構成例を概略的に示す説明図。 従来技術に係る人工心肺装置の構成例を概略的に示す説明図。
符号の説明
1 基幹流路
2、6 分岐手段
3 分岐路
4 送血端
5 閉止手段
7 切換手段
8 検出端
10 送血手段
11 人工心肺装置
12 吸引ポンプ
15 リザーバ

Claims (7)

  1. 分岐手段によって分岐し形成する複数の分岐路を有し、1つの基幹流路の内径を最大として分岐するごとに同径あるいは小径の内径とする分岐路からなる送血管であって、各々固有の内径および管長を有する前記分岐路の組み合わせによって、圧力あるいは流量の分配比率を確定した複数の分岐流路を形成することを特徴とする送血管。
  2. 前記分岐手段前後の分岐路の内径の比率が、1:0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1記載の送血管。
  3. 前記分岐路の少なくとも一部が、テーパ形状の管状体からなることを特徴とする請求項1または2記載の送血管。
  4. 前記分岐流路の少なくとも1つの分岐流路に、圧力あるいは流量を検出する手段を配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の送血管。
  5. 前記分岐流路が、各々血液を供給する臓器あるいは生体内の部位に対応した送血端を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の送血管。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の送血管を用いた血液供給装置であって、1つの送血手段を用いて複数の分岐流路に送血することを特徴とする血液供給装置。
  7. 前記送血手段が無拍動型ポンプであることを特徴とする請求項6記載の血液供給装置。
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