本発明は、電磁変換特性および走行耐久性に優れた高密度磁気記録媒体に関する。
近年、高密度記録へのニーズが高まり、高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体が求められている。またデータを繰り返し使用し、保存した時の信頼性も同時に要求される。従って、高密度記録用磁気記録媒体には、優れた電磁変換特性に加え、良好な走行耐久性も要求されている。
更に、近年のコンピュータデータストレージ用テープにおいては、高容量化のためにテープ厚みを薄くすることが必要となっている。しかしながら、薄手化されたテープでは、テープ巻面の不整(飛び出し)が発生して巻き姿が悪くなり、飛び出し部のテープエッジが折れたり、シンチングやスポーキングと呼ばれるテープ変形が生じる。このようなテープ変形も、エラーレート増加の原因となる。
また、薄手化されたテープでは、磁性層表面とヘッドの接触が不安定となってヘッド当たりが悪くなる。このようなヘッド当たりの悪化により、磁性層のより浅い凹みもドロップアウトを引き起こし、結果的にエラーレートの増加につながる。この傾向は、特に、高面記録密度(短記録波長、狭トラック)の状態で顕著となる。
走行耐久性を改善するために、バック層に粒径0.2μm以上の粗粒子のカーボンブラックを添加したり、ベース表面に突起を設けることにより、バック層表面に突起を形成させる試みが行われている。しかしながら、このような方法でバック層の突起を形成すると、製造過程でロール状態で磁気記録媒体を保存したり、製品化後磁気テープをリールハブに巻いた状態で保存すると、バック層突起が磁性層表面に転写し、微小な凹みを形成する、いわゆる「裏写り」が発生する。この結果、電磁変換特性が劣化してしまうばかりでなく、微小なドロップアウトが増加し、エラーレートを増加させるという欠点があった。
この様な「裏写り」の問題を解消するために、バック層の表面を平滑化する試みがなされている(特許文献1参照)。しかし、バック層の平滑性の向上により裏写りが減少する反面、バックコートが平滑になることで巻姿が悪くなり、保存後にエラーが増加するという問題があった。また、磁性層表面の硬さを上げて裏写りを抑制する試みもされているが、ヘッド当たりが悪化し、エラー増加につながっていた。
また、特許文献2には、磁性層の走行耐久性とヘッド当たりの両立を目的として、磁性層の塑性変形量と押し込み硬さを規定した磁気記録媒体が開示されている。しかし、更に高密度化された磁気記録媒体では、より良好なヘッド当たりの確保が求められていた。一方、ヘッド当たりの確保のために磁性層を柔軟にすると、磁性層の凹みに起因するドロップアウトが増加するという問題もあった。
特開平11−259851号公報
特開2002−237024号公報
そこで、本発明は、裏写りが少なく巻姿が良好であり、かつ、ヘッド当たりが良好な、高い電磁変換特性と優れた走行耐久性を兼ね備えた高密度記録用の磁気記録媒体を提供することを目的する。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、バックコート層表面の特定の高さを有する突起密度を制御し、かつ、磁性層表面の硬さを規定することにより、裏写りが少なく巻き姿が良好であり、かつヘッド当たりが良好な磁気記録媒体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記本発明の目的を達成する手段は、以下の通りである。
[請求項1]非磁性支持体の一方の面に強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有し、他方の面にバックコート層を有する磁気記録媒体であって、
前記バックコート層表面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した50nm以上100nm未満の高さの突起密度が20〜60個/μm2の範囲であり、100nm以上500nm以下の高さの突起密度が0.2〜1個/μm2の範囲であり、かつ、
前記磁性層の荷重5mgfでの塑性変形硬さが50〜100kgf/mm2の範囲であることを特徴とする磁気記録媒体。
[請求項2]前記バックコート層の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した表面平均粗さは20〜30nmの範囲である請求項1に記載の磁気記録媒体。
[請求項3]前記磁性層の厚さは0.02〜0.2μmの範囲である請求項1または2に記載の磁気記録媒体。
[請求項4]前記磁性層の表面粗さは1〜4nmの範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
本発明によれば、電磁変換特性および走行耐久性に優れた高密度記録に好適な磁気記録媒体を提供することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
[バックコート層]
本発明では、バックコート層表面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した50nm以上100nm未満の高さの突起密度を20〜60個/μm2の範囲に、100nm以上500nm以下の高さの突起密度を0.2〜1個/μm2の範囲に規定する。
このように、本発明において二種類の突起の密度をそれぞれ所定範囲に規定する理由は、以下の通りである。
磁性層の裏写りを防止するために磁性層を平滑にすることが行われているが、磁性層が過度に平滑であるとテープ巻き姿が悪化する。これは、テープ巻き取り時に同伴エアがうまく排出されずにテープ巻き面の飛び出しが発生するためと考えられる。そこで、本発明では、バックコート層表面に、磁性層の裏写りを引き起こしにくい比較的低い突起を所定個数設けてテープ巻き姿を改善するとともに、磁性層の裏写りを引き起こす比較的高い突起の個数を低減する。これにより、磁性層の裏写りによるドロップアウトの増加を防止しつつ、巻き姿の良好な磁気記録媒体を得ることができる。
本発明では、バックコート層表面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した50nm以上100nm未満の高さの突起密度を20〜60個/μm2の範囲に規定する。バックコート層表面の50nm以上100nm未満の高さの突起密度が20個/μm2未満では同伴エアがうまく排出されずに巻き姿が悪化する。また、前記突起個数が20個/μm2未満では、磁性層表面とバックコート層表面の接触圧力が上昇して裏写りが増加し、ドロップアウトが増加するという問題もある。一方、前記突起密度が60個/μm2を超えると、バックコート層の表面が粗くなる。このようなバックコート層の粗さが磁性層に転写されることにより、磁性層の表面も粗くなり、電磁変換特性が低下する。前記突起密度は、好ましくは、22〜50個/μm2、より好ましくは25〜40個/μm2の範囲である。
更に、本発明では、バックコート層表面の100nm以上500nm以下の高さの突起密度を0.2〜1個/μm2の範囲に規定する。前記突起密度が0.2個/μm2未満では走行耐久性が低下し、1個/μm2を超えると磁性層の裏写りが増加してドロップアウトが増加する。更に、バックコート層が粗くなることに起因して磁性層も粗くなり、電磁変換特性が低下する。前記突起密度は、好ましくは、0.3〜0.9個/μm2、より好ましくは0.4〜0.8個/μm2の範囲である。
前述のバックコート層表面の突起密度は、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定される。バックコート層表面の突起密度は、例えば、セイコーインスツルメンツ社製SPA500型原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、バックコート層面の所定の面積をコンタクトモードで走査し、凸の体積と凹み体積が等しくなる高さを基準高さとし、基準高さより50nm以上100nm未満の高さの突起数と、100nm以上500nm以下の高さの突起数を求め、それぞれを測定面積で除して求めることができる。
本発明では、バックコート層において粒径の異なるカーボンブラックを使用し、それぞれのカーボンブラックの粒径および添加量を適宜調整することによって、バックコート層表面の突起分布を制御することができる。具体的には、50nm以上100nm未満の高さの突起は、粒径15〜50nm、好ましくは30〜50nmのカーボンブラックを使用することによって設けることができ、100nm以上500nm以下の高さの突起は、粒径70〜300nm、好ましくは80〜150nmのカーボンブラックを使用することによって設けることができる。より大きな粒径のカーボンブラックを使用することにより、突起密度を増加させることができる。粒径15〜50nm(好ましくは30〜50nm)のカーボンブラックと粒径70〜300nm(好ましくは80〜150nm)のカーボンブラックの添加量の割合は、例えば、99:1〜80:20、好ましくは97:3〜90:10とすることができる。バックコート層に添加するカーボンブラック量は、例えば、結合剤100質量部に対して50〜200質量部とすることができる。
また、上記に加え、バックコート層塗布液に添加されるカーボンブラック以外の無機粉末の粒径と添加量、結合剤量、組成、バックコート層塗布液の分散条件、塗布乾燥条件、カレンダー条件等によってバックコート層表面の突起密度を制御することができる。
バックコート層に用いられる無機粉末は、モース硬度が5〜9の無機粉末であることが好ましい。このような無機粉末の添加でテープに繰り返し走行耐久性を付与し、バックコート層が強化される。特に、無機粉末をカーボンブラックと共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバックコート層となる。またモース硬度が5〜9の無機粉末を使用すると、適度の研磨力が生じ、テープガイドポール等へ削り屑等の付着が低減する。モース硬度5〜9の無機質粉末は、その平均粒子サイズが0.01〜1μm(更に好ましくは、0.05〜0.5μm、特に好ましくは、0.08〜0.3μm)の範囲にあることが好ましい。
モース硬度が5〜9の無機粉末としては、例えば、α−酸化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2 O3 )を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄またはα−アルミナが好ましい。モース硬度が5〜9の無機質粉末の含有量は、カーボンブラック100重量部に対して0.01〜5重量部とすることが好ましく、より好ましくは、0.05〜2重量部である。
バックコート層に使用される結合剤としては、後述する磁性層に使用される結合剤を用いることができる。本発明において、バックコート層に含まれる結合剤は、ニトロセルロース樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、更に硬化剤としてのポリイソシアネートを加えた組み合わせで構成されていることが好ましい。そしてニトロセルロース樹脂としては、硝化度が5〜20%の範囲の比較的ニトロ基が多く含まれているものを用いることが好ましい。また、ニトロセルロース樹脂は、結合剤中に20〜80重量%(更に好ましくは、40〜70重量%)の範囲で含有されていることが好ましい。
バックコート層には後述の磁性層の説明で記載する分散剤を添加することができる。バックコート層では、分散剤は、オレイン酸銅、銅フタロシアニン、及び硫酸バリウムを組み合わせて使用することが好ましい。分散剤は、通常結合剤100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲で添加される。
バックコート層の塗布液の調製は、以下の方法で行うことが好ましい。即ち、少なくともカーボンブラックとニトロセルロース樹脂などの結合剤をヘンシェルミキサー、ロールミル、ニーダー等の攪拌混合、分散機を用いて予備混練し、更にボールミルやサンドグラインダーで分散してペースト状とした後、少なくとも24時間デゾルバの攪拌程度の剪断力以下(即ち、1回転/分程度の緩やかな攪拌羽根の回転力下)で熟成させることにより、塗布液を調製することが好ましい。
バックコート層の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した表面平均粗さは、20〜30nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは21〜28nm、更に好ましくは22〜27nmである。前記表面平均粗さが20nm以上であれば、テープ走行時に磁性層とバックコート層との間の同伴エアがスムーズに排出されるため、巻き姿が良好になり、30nm以下であれば、バックコート層の粗さにより磁性層の平滑性を損なうことがなく、良好な電磁変換特性を維持することができる。バックコート層の表面平均粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定され、例えば、セイコーインスツルメンツ社製SPA500型原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、バックコート層面の所定の面積をコンタクトモードで走査して、平均表面粗さRaとして求めることができる。
[磁性層]
本発明の磁気記録媒体において、磁性層の荷重5mgfでの塑性変形硬さは、50〜100kgf/mm2の範囲である。
磁性層が硬ければ、バックコート層表面に存在する突起による磁性層の裏写りを低減することができるが、磁性層が過度に硬いと、磁性層のヘッド当たりが劣化してエラーレートが増加する。そこで、本発明では、磁性層の裏写りを低減しつつ良好なヘッド当たりを達成するために、磁性層の荷重5mgfでの塑性変形硬さを、50〜100kgf/mm2の範囲に規定する。
以下、塑性変形硬さについて説明する。
磁性層表面に荷重をかけながら圧子を押し込んでいき、最大変位量に達すると、その後除荷しても磁性層の変位量はゼロには戻らず、ある値を示す。これを塑性変形量という。この塑性変形量は、圧子の最大荷重に依存する。一方、塑性変形硬さは、圧子の荷重をゼロに戻したときに磁性層にどの程度の深さの凹みが形成されるかを示す尺度であり、最大荷重と塑性変形量の関係から、硬さとして規格化された値である。
磁気テープは、製造工程および製品化された状態でも巻かれた状態(磁性層面とバックコート層面が接触した状態)となっているため、当初は平滑であった磁性層であっても、時間の経過とともにバックコート層の突起が徐々に写り、磁性層面に微細な凹みが形成される。一方、前述のように、塑性変形硬さは、圧子の荷重をゼロに戻したときに磁性層にどの程度の深さの凹みが形成されるかを示す尺度であり、この値により、磁性層の硬さを、バックコート層の突起の写り易さに対応する物性値として示すことができる。
荷重5mgfでの塑性変形硬さが50kgf/mm2未満では、バックコート層表面の突起により磁性層表面に凹みが形成され、微小なドロップアウトの原因となりエラーレートが悪化し、100kgf/mm2を超えると、磁性層のカレンダー処理における成形性が落ちて磁性層表面が粗くなる。また、磁性層が硬くなるためヘッド当たりが劣化し、電磁変換特性が劣化する。前記塑性変形硬さは、好ましくは60〜90kgf/mm2、より好ましくは65〜75kgf/mm2である。
塑性変形硬さは、以下の方法によって測定される。
図1に示すように、三角錐状で、尖端部aの曲率半径が100nm、刃角度(α)が65°、稜間角(β)が115°の形状を有するダイヤモンド圧子を用いる。この特定形状の圧子を5mgfの荷重にて磁性層に押し込むと、圧子の尖端部aは磁性層の表面から0.1μmの深さまで達することはなく、従来では不可能であった磁性層の極表面での強度特性を測定することができる。上記形状を有する圧子は、バーコビッチ(Verkovich)圧子として知られており、このバーコビッチ圧子を備え、荷重5mgfで測定できる測定装置としては、(株)エリオニクス製超微小押し込み硬度測定機(型番:ENT−1100a)等を使用することができる。
図2は、荷重を連続的に増加させてバーコビッチ圧子を試料に押し込み、荷重5mgfに達した時点で除荷した時のバーコビッチ圧子の変位量の変化を示した図である。図示されるように、曲線Aに示すように、荷重が増加するのに従って変位量も増加し、5mgfにて最大変位量(Hmax)を示す。そして、除荷すると、曲線Bに示すように徐々に変位量が減少するが、荷重がゼロになっても変位量はある値を示す。このとき、曲線Bの最大変位量(Hmax)における接線bを荷重ゼロ(即ち、横軸)に外挿することにより、塑性変形量(H1)が得られる。塑性変形硬さHVは、最大荷重Pmax(=5mgf)および塑性変形量H1(μm)から、
式1
磁性層の塑性変形硬さは、磁性層に使用する結合剤の硬さによって制御することができる。特に、磁性層には、ポリイソシアネートを使用する場合には、ガラス転移温度(Tg)が60〜100℃のポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。また、ポリイソシアネートを使用しない場合には、ガラス転移温度(Tg)が130〜170℃のポリウレタン樹脂を使用することが好ましい。
また、本発明では、使用する結合剤の量と組み合わせによっても、磁性層の塑性変形硬さを制御することができる。
磁性層に使用する結合剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、及びビニルエーテルを構成単位として含む重合体、あるいは共重合体を挙げることができる。共重合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、メタアクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、メタアクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタアクリル酸エステル−スチレン共重合体、塩ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロビニルエーテル−アクリル酸エステル共重合体を挙げることができる。
上記の他に、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロースなど)、ポリ弗化ビニル、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂なども利用することができる。
また熱硬化性樹脂または反応型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物を挙げることができる。
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、及びイソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネートを挙げることができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102、タケネートD−110N、タケネ−トD−200、タケネ−トD−202、住友バイエル社製デスモジュールL、デスモジュールIL、デスモジュールNデスモジュールHL等がある。本発明では、これらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで下層塗布層、上層磁性層とも用いることができる。
上記ポリウレタン樹脂としては、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、及びポリカプロラクトンポリウレタンなどの構造を有する公知のものが使用できる。
本発明において、磁性層に使用される結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、及びニトロセルロースの中から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、ポリウレタン樹脂との組合せ、あるいはこれらに更に硬化剤としてのポリイソシアネートを加えた組み合わせで構成されていることが好ましい。
結合剤は、より優れた分散性と得られる層の耐久性を得るために必要に応じて、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=O(OM)2 (Mは水素原子又はアルカリ金属を表わす。)、−OH、−NR2 、−N+ R3 (Rは炭化水素基を表わす。)、エポキシ基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくともひとつの極性基を共重合または付加反応で導入して用いることが好ましい。このような極性基は、結合剤に10-1〜10-8モル/g(更に好ましくは10-2〜10-6モル/g)の量で導入されていることが好ましい。
磁性層中の結合剤は、強磁性粉末100質量部に対して、通常5〜50質量部(好ましくは10〜30質量部)の範囲で用いられる。なお、磁性層に結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリイソシアネートを組み合わせて用いる場合は、全結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70質量%、ポリウレタン樹脂が2〜50質量%、そしてポリイソシアネートが2〜50質量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。磁性層にポリイソシアネートを使用せず、結合剤として塩化ビニル系樹脂とポリウレタン樹脂を組み合わせて使用する場合は、全結合剤中に塩化ビニル系樹脂が30〜70質量%の範囲の量で含まれるように用いることが好ましい。
更に、本発明では、磁性層の乾燥条件やカレンダー条件によっても、磁性層の塑性変形硬さを制御することができる。乾燥温度が高いほど、塗膜中に残留する溶剤量が少なくなり、磁性層表面の塑性変形硬さは上昇する。乾燥温度は、例えば、60〜130℃とすることができる。また、カレンダー条件が強い(カレンダーロールが硬い、処理温度が高い、処理速度が遅い)ほど、塑性変形硬さは上昇する。更に、カレンダー処理後の熱処理温度が高く、また、処理時間が長いほど、塑性変形硬さは上昇する。本発明では、これらの条件を最適化して、所望の塑性変形硬さを有する磁性層を得ることができる。
本発明の磁気記録媒体において、磁性層の厚さは、0.02〜0.2μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.15μmの範囲である。磁性層の厚さが0.02μm以上であれば、磁性層を均一な塗膜として塗布することができ、磁性層の厚さが0.2μm以下であれば、厚み損失を低減し、良好な電磁変換特性を得ることができる。
本発明の磁気記録媒体において、磁性層の表面粗さは、1〜4nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜3nmの範囲である。磁性層の表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定することができ、例えば、セイコーインスツルメンツ社製SPA500型原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、磁性層面の所定の面積をコンタクトモードで走査し、平均表面粗さRaとして求めることができる。磁性層の表面粗さが1nm以上であれば、良好な走行特性を維持することができ、磁性層の表面粗さが4nm以下であれば、良好な電磁変換特性を得ることができる。
次に、磁性層に関する詳細な説明を記載する。
磁性層に使用する強磁性粉末としてはγ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、α−FeまたはNiまたはCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなど公知の強磁性粉末を使用することができ、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末を使用することが好ましい。これらの強磁性粉末には、所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。これらの強磁性粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号公報、特公昭45−18372号公報、特公昭47−22062号公報、特公昭47−22513号公報、特公昭46−28466号公報、特公昭46−38755号公報、特公昭47−4286号公報、特公昭47−12422号公報、特公昭47−17284号公報、特公昭47−18509号公報、特公昭47−18573号公報、特公昭39−10307号公報、特公昭48−39639号公報、米国特許3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
上記強磁性粉末の中で、強磁性合金粉末は、少量の水酸化物、または酸化物を含んでもよい。強磁性合金粉末としては、公知の製造方法により得られたものを用いることができる。強磁性合金粉末の製造方法としては、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末には、公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施すこともできる。
磁性層に含まれる強磁性粉末のBET法による比表面積は、25〜80m2/gであることが好ましく、より好ましくは40〜70m2/gである。25m2/g以上であればノイズが低く、80m2/g以下であれば良好な表面性を得ることができる。磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サイズは450〜100オングストロ−ムであることが好ましく、より好ましくは350〜100オングストロ−ムである。酸化鉄磁性粉末のσsは50〜90emu/g(50〜90A・m2/kg)であることが好ましく、より好ましくは70〜90emu/g(70〜90A・m2/kg)であり、強磁性金属粉末の場合は100〜200emu/g(100〜200A・m2/kg)であることが好ましく、さらに好ましくは110〜170emu/g(110〜170A・m2/kg)である。抗磁力は1,100Oe(87.5kA/m)以上3,000Oe(238.7kA/m)以下であることが好ましく、更に好ましくは1,400Oe(111.4kA/m)以上2,500Oe(198.9kA/m)以下である。強磁性粉末の針状比は4以上18以下であることが好ましく、更に好ましくは5以上12以下である。強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とすることが好ましい。結合剤の種類によって強磁性粉末の含水率は最適化することが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0.5〜1.5g/ml以上であることが好ましく、0.8〜1.2g/mlであることがさらに好ましい。強磁性合金粉末のタップ密度は0.2〜0.8g/mlであることが好ましい。0.8g/mlを超えると、強磁性粉末の圧密過程で酸化が進みやすく、充分な飽和磁化σSを得ることが困難になる場合がある。タップ密度が0.2g/ml以上であれば、分散性が良好である。γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は、好ましくは0〜20%であり、さらに好ましくは5〜10%である。また鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%であることが好ましく、より好ましくは2〜8%である。
強磁性粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であることができ、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%とすることができ、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンが含まれる場合があるが500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。
また、本発明に用いられる強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましく、その値は0〜20容量%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜5容量%である。また形状については先に示した平均粒径についての特性を満足すれば、針状、粒状、米粒状、板状のいずれでもかまわない。針状強磁性粉末の場合、針状比は4〜12であることが好ましい。この強磁性粉末のSFDは0.1〜0.6であることが好ましく、強磁性粉末のHcの分布を小さくすることにより、この範囲のSFDを達成することができる。そのためには、ゲータイトの粒度分布をよくする、γ−ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を従来より遅くするなどの方法がある。
本発明において、磁性層に含まれる強磁性粉末としては、六方晶フェライトを使用することもできる。六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等、六方晶Co粉末が使用できる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライトおよびストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V,Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。この中で、Al、Si、Ca、Cr、Y、Ba、Nd、Co、Mn、Zn、Ni、Bが含まれることが好ましい。一般にはCo−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Ir−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。特に好ましいものはバリウムフェライト、ストロンチウムフェライトの各Co置換体である。磁性層の長手方向のSFDを0.01〜0.3にすると、抗磁力の分布が小さくなり好ましい。抗磁力を制御するためには、平均粒径、粒子厚を均一にする、六方晶フェライトのスピネル相の厚みを一定にする、スピネル相の置換元素の量を一定にする、スピネル相の置換サイトの場所を一定にする、などの方法がある。
六方晶フェライトは通常六角板状の粒子であり、その平均粒径は六角板状の粒子の板の幅を意味し電子顕微鏡を使用して測定することができる。好ましい平均粒径(板径)は0.01〜0.2μm、特に0.03〜0.1μmの範囲である。また、該粒子の平均厚さ(板厚)は0.001〜0.2μm、特に0.003〜0.05μmであることが好ましい。更に板状比(平均粒径/板厚)は1〜15であることが好ましく、より好ましくは3〜7である。また、これら六方晶フェライト粉末のBET法による比表面積(SBET)は25〜100m2/gであることが好ましく、40〜70m2/gであることがより好ましい。25m2/g以上であればノイズが低く、100m2/g以下であれば良好な表面性を得ることができる。強磁性粉末の抗磁力は500Oe(39.8kA/m)以上4,000Oe(318.3kA/m)以下であることが好ましく、更に好ましくは1,200Oe(95.5kA/m)以上3,000Oe(238.7kA/m)以下である。500Oe(39.8kA/m)以上であれば、短波長において高い出力を得ることができ、4,000Oe(318.3kA/m)以下であれば、ヘッドによる記録を良好に行うことができる。σsは50〜90emu/g(50〜90A・m2/kg)であることが好ましく、より好ましくは60〜90emu/g(60〜90A・m2/kg)である。タップ密度は0.5〜1.5g/mlであることが好ましく、0.8〜1.2g/mlであることがさらに好ましい。六方晶フェライトの製法としてはガラス結晶化法・共沈法・水熱反応法等があるが、本発明は製法を選ばない。
本発明の磁気記録媒体は二層以上の構成としてもよい。従って、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを必要に応じ下層塗布層と上層磁性層、その他磁性層とで変えることはもちろん可能であり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、上下層、中間層でバインダー量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには上層磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にする為には、上層磁性層以外の磁性層か中間層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせることにより達成される。
本発明では、磁性層を二層以上の構成とすることもできる。この場合、下層磁性層に用いる磁性粉末としては、γ−Fe2O3、Co変性γ−Fe2O3、α−Feを主成分とする合金、CrO2等を挙げることができる。特に、Co変性γ−Fe2O3を用いることが好ましい。下層磁性層に用いられる強磁性粉末は、上層磁性層に用いられる強磁性粉末と同様な組成、性能を有することが好ましい。ただし、目的に応じて、両層で性能を変化させることは公知の通りである。例えば、長波長記録特性を向上させるためには、下層磁性層のHcは上層磁性層のそれより低く設定することが望ましく、また、下層磁性層のBrを上層磁性層のそれより高くすることが有効である。それ以外にも、公知の重層構成を採る事による利点を付与させることができる。
磁性層において、カーボンブラックとしては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒径は5nm〜300nm、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlであることがそれぞれ好ましい。カーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,700、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50、40、15などが挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。
また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対して0.1〜30%の量で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って、本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは磁性層、非磁性層でその種類、量、組合せを変え、平均粒径、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。本発明の磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
研磨剤としては、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6〜10の公知の材料を単独または組合せて使用することができる。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90〜100%であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の平均粒径は0.01〜2μmであることが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2/g、であることがそれぞれ好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT−50、HIT−60、HiT−60A、HIT−80、HIT−80G、HIT−100、日本化学工業社製G5、G7、S−1、戸田工業社製TF−100、TF−140などが挙げられる。これらの研磨剤は、予め結合剤で分散処理した後、磁性塗料中に添加してもかまわない。本発明の磁気記録媒体において、磁性層表面および磁性層端面に存在する研磨剤は5〜130個/100μm2テ゛あることが好ましく、5〜90個/100μm2であることが特に好ましい。
本発明においては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつ添加剤を添加することができる。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコ−ル、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコ−ルのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエーテルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール、ラウリルアルコール、が挙げられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなくてもよく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は0〜30%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10%である。
また、これら潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製NAA−102、NAA−415、NAA−312、NAA−160、NAA−180、NAA−174、NAA−175、NAA−222、NAA−34、NAA−35、NAA−171、NAA−122、NAA−142、NAA−160、NAA−173K、ヒマシ硬化脂肪酸、NAA−42、NAA−44、カチオンSA、カチオンMA、カチオンAB、カチオンBB、ナイミーンL−201、ナイミーンL−202、ナイミーンS−202、ノニオンE−208、ノニオンP−208、ノニオンS−207、ノニオンK−204、ノニオンNS−202、ノニオンNS−210、ノニオンHS−206、ノニオンL−2、ノニオンS−2、ノニオンS−4、ノニオンO−2、ノニオンLP−20R、ノニオンPP−40R、ノニオンSP−60R、ノニオンOP−80R、ノニオンOP−85R、ノニオンLT−221、ノニオンST−221、ノニオンOT−221、モノグリMB、ノニオンDS−60、アノンBF、アノンLG、ブチルステアレート、ブチルラウレート、エルカ酸、関東化学社製オレイン酸、竹本油脂社製FAL−205、FAL−123、新日本理化社製エヌジェルブLO、エヌジェルブIPM、サンソサイザーE4030、信越化学社製TA−3、KF−96、KF−96L、KF96H、KF410、KF420、KF965、KF54、KF50、KF56、KF907、KF851、X−22−819、X−22−822、KF905、KF700、KF393、KF−857、KF−860、KF−865、X−22−980、KF−101、KF−102、KF−103、X−22−3710、X−22−3715、KF−910、KF−3935、ライオンアーマー社製アーマイドP、アーマイドC、アーモスリップCP、ライオン油脂社製デユオミンTDO、日清製油社製BA−41G、三洋化成社製プロファン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400、イオネットMO−200、イオネットDL−200、イオネットDS−300、イオネットDS−1000、イオネットDO−200などが挙げられる。
これらの潤滑剤、界面活性剤は、非磁性層、磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御すること、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御すること、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させること、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させることなどが考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。
分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数11〜17個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸塩、及び銅フタロシアニン等を使用することができる。これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。分散剤は、結合剤100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲で添加することができる。
また、上記の添加剤の全てまたはその一部は、磁性塗料製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール、などのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を、任意の比率で使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなくてもよく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は0〜30%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10%である。また、有機溶媒は磁性層と非磁性層とでその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用いることにより、塗布の安定性をあげる、具体的には磁性層溶剤組成の算術平均値が、非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15〜25の溶剤が50〜80%含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
[非磁性層]
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に直接磁性層を設けたものであることができ、非磁性支持体と磁性層との間に、非磁性粉末および結合剤を含む非磁性層を設けたものであることもできる。
非磁性層に用いられる非磁性粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。具体的には、例えばα化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどを単独または組合せて使用することができる。特に好ましいものは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいものは二酸化チタンである。
これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmであることが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は0.01μm〜0.2μmである。タップ密度は0.05〜2g/mlであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜3重量%である。非磁性粉末のpHは2〜11であることができ、pHは6〜9の間であることが特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m2/gであることができ、好ましくは5〜50m2/g、更に好ましくは7〜40m2/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmであることが好ましい。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100gであることができ、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12であることができ、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。強熱減量は0〜20重量%であることが好ましい。
本発明に用いられる上記無機粉末のモース硬度は4〜10であることが好ましい。これらの粉末表面のラフネスファクターは0.8〜1.5であることが好ましく、更に好ましいラフネスファクターは0.9〜1.2である。無機粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m2であることが好ましく、更に好ましくは2〜15μmol/m2である。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は2.0×10-5〜6.0×10-5J/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åであることが適当である。水中での等電点のpHは3〜6の間にあることが好ましい。
これらの非磁性粉末の表面にはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb2O3、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいものはAl2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、であり、更に好ましいものはAl2O3、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
また、非磁性粉末は市場からも入手でき、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、石原産業製TTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、E270、E271、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOPおよびそれを焼成したものが挙げられる。
特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンであるので、二酸化チタンを例に製法を詳しく記す。これらの酸化チタンの製法は主に硫酸法と塩素法がある。硫酸法はイルミナイトの源鉱石を硫酸で蒸解し、Ti、Feなどを硫酸塩として抽出する。硫酸鉄を晶析分離して除き、残りの硫酸チタニル溶液を濾過精製後、熱加水分解を行って、含水酸化チタンを沈澱させる。これを濾過洗浄後、夾雑不純物を洗浄除去し、粒径調節剤などを添加した後、80〜1000℃で焼成すれば粗酸化チタンとなる。ルチル型とアナターゼ型は加水分解の時に添加される核剤の種類によりわけられる。この粗酸化チタンを粉砕、整粒、表面処理などを施して作製する。塩素法において原鉱石としては天然ルチルや合成ルチルが用いられる。鉱石は高温還元状態で塩素化され、TiはTiCl4に、FeはFeCl2となり、冷却により固体となった酸化鉄は液体のTiCl4と分離される。得られた粗TiCl4は精留により精製した後核生成剤を添加し、1000℃以上の温度で酸素と瞬間的に反応させ、粗酸化チタンを得る。この酸化分解工程で生成した粗酸化チタンに顔料的性質を与えるための仕上げ方法は硫酸法と同じである。
表面処理は上記酸化チタン素材を乾式粉砕後、水と分散剤を加え、湿式粉砕、遠心分離により粗粒分級が行われる。その後、微粒スラリーは表面処理槽に移され、ここで金属水酸化物の表面被覆が行われる。まず、所定量のAl、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、Znなどの塩類水溶液を加え、これを中和する酸、またはアルカリを加えて、生成する含水酸化物で酸化チタン粒子表面を被覆する。副生する水溶性塩類はデカンテーション、濾過、洗浄により除去し、最終的にスラリーpHを調節して濾過し、純水により洗浄する。洗浄済みケーキはスプレードライヤーまたはバンドドライヤーで乾燥される。最後に、この乾燥物はジェットミルで粉砕され、製品になる。また、水系ばかりでなく、酸化チタン粉末にAlCl3、SiCl4の蒸気を通じ、その後水蒸気を流入してAl、Si表面処理を施すことも可能である。その他の顔料の製法については、G.D.Parfitt and K.S.W. Sing “Characterization of Powder Surfaces” Academic Press,1976を参考にすることができる。
非磁性層にカーボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。
カーボンブラックの比表面積は100〜500m2/gであることができ、好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は20〜400ml/100gであることができ、好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの平均粒径は5nm〜80nmであることができ、好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlであることがそれぞれ好ましい。
本発明において使用可能なカーボンブラックの具体的な例としては、例えばキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、3150B、3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、同RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC等が挙げられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して0〜50重量%の範囲、非磁性層総重量の0〜40%の範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。
本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。また、非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
非磁性層のバインダー、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層のそれが適用できる。特に、バインダー量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
[層構成]
本発明の磁気記録媒体において、非磁性支持体の厚さは、1〜10μmであることができ、1〜8μmであることが好ましい。磁性層と非磁性層を合わせた厚みは、非磁性支持体の厚みの1/100〜2倍の範囲であることが好ましい。非磁性層の厚さは、0.5〜1.5μmであることが好ましい。また、非磁性支持体と非磁性層または磁性層との間に密着性向上のための接着層を設けてもよい。接着層の厚みは0.01〜0.5μmであることができ、好ましくは0.02〜0.3μmある。接着層としては公知のものを使用することができる。また、バックコート層の厚みは0.1〜2μmであることができ、好ましくは0.3〜1.0μmである。これらの接着層、バックコート層の厚みも磁気記録媒体の層厚みに含まれる。
[非磁性支持体]
非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾールなどの公知のフィルムを使用することができる。特に、アラミド樹脂を用いた非磁性支持体を用いることが好ましい。非磁性支持体のマイクロビッカース硬度は、75〜100kg/mm2であることが好ましい。フイルム製膜時の加熱条件、弛緩条件、延伸条件等を調整すること、および素材を選択することにより、非磁性支持体のマイクロビッカース硬度を75〜100kg/mm2にすることができる。これらの非磁性支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などを行ってもよい。また、非磁性支持体としては、その中心線平均表面粗さが0.001〜0.03μm、好ましくは0.001〜0.02μm、さらに好ましくは0.001〜0.01μmのものを使用することが好ましい。また、これらの非磁性支持体は、単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて非磁性支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるものである。これらのフィラーの一例としては、Al、Ca、Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩を挙げることができ、結晶性、非晶質を問わない。また、アクリル系、メラミン系などの有機微粉末を用いることもできる。
また、非磁性支持体のテープ走行方向のF−5値は、好ましくは10〜50kg/mm2(98〜490MPa)、テープ幅方向のF−5値は好ましくは10〜30kg/mm2(98〜294MPa)である。テープの長手方向のF−5値がテープ幅方向のF−5値より高いことが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。また、非磁性支持体のテープ走行方向および幅方向の100℃、30分での熱収縮率は好ましくは0〜3%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜1.5%、80℃、30分での熱収縮率は好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%である。破断強度は両方向とも5〜100kg/mm2(49〜980MPa)、弾性率は100〜2,000kg/mm2(980〜19600MPa)であることが好ましい。
[製造方法]
本発明において、磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。連続ニーダまたは加圧ニーダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理することができる。これらの混練処理の詳細については特開平1−166338号公報、特開昭64−79274号公報に記載されている。また、非磁性層用塗布液を調製する場合には、高比重の分散メディアを用いることが望ましく、ジルコニアビーズが好適である。
本発明において、重層構成の磁気記録媒体を塗布する装置、方法の例として以下のような構成を提案できる。
1.磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず非磁性層を塗布し、非磁性層がウェット状態にのうちに特公平1−46186号公報や特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により磁性層を塗布する。
2.特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
3.特開平2−174965号公報に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。
なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号公報や特開平1−236968号公報に開示されているような方法により、塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号に開示されている数値範囲を満足することが好ましい。
本発明の磁気記録媒体を得るためには、強力な配向を行うことが好ましい。1,000G(0.1T)以上のソレノイドと2,000G(0.2T)以上のコバルト磁石を同極対向で併用することが好ましく、さらには乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好ましい。また、ディスク媒体として本発明を適用する場合はむしろ配向をランダマイズするような配向法を用いることが好ましい。また、上層磁性層と下層磁性層の配向方向を変更するために配向する方向は必ずしも塗布方向で面内方向である必要はなく、垂直方向、幅方向にも配向できる。
さらに、カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールを使用することができる。また、金属ロール同士で処理することもできる。金属ロール同士で処理する場合の処理温度は、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは80〜150℃である。線圧力は好ましくは200〜500kg/cm(196〜490kN/m)、さらに好ましくは300〜400kg/cm(294〜392kN/m)である。処理速度は、好ましくは100〜350m/min、さらに好ましくは150〜250m/minである。一方、プラスチックロールを使用する場合の処理温度は、好ましくは70〜120℃、さらに好ましくは80〜100℃、線圧力は好ましくは150〜400kg/cm(147〜392kN/m)、さらに好ましくは180〜300kg/cm(176.4〜294kN/m)、処理速度は好ましくは50〜250m/min、さらに好ましくは80〜150m/minである。
本発明の磁気記録媒体の磁性層面およびその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は、好ましくは0.1〜0.5、さらに好ましくは0.15〜0.3、表面固有抵抗は好ましくは104〜1012オ−ム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは100〜2,000kg/mm2、破断強度は好ましくは1〜30kg/mm2(9.8〜294MPa)、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、長手方向とも好ましくは100〜1,500kg/mm2(980〜14700MPa)、残留伸びは好ましくは0〜0.5%、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%、最も好ましくは0〜0.1%である。磁性層のガラス転移温度(110HZで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下であることが好ましく、下層塗布層のそれは0℃〜100℃であることが好ましい。損失弾性率は1×108〜8×109dyne/cm2(1×107〜8×108)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障がでやすい。磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは0〜100mg/m2、さらに好ましくは0〜10mg/m2であり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層および非磁性層が有する空隙率はともに好ましくは0〜30容量%、さらに好ましくは0〜20容量%である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるデータ記録用磁気記録媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
本発明の磁気記録媒体の磁気特性は、磁場5kOe(398kA/m)で測定した場合、テープ走行方向の角形比は0.70〜1.00であることが好ましく、より好ましくは0.80〜1.00であり、さらに好ましくは0.90〜1.00である。テ−プ走行方向に直角な二つの方向の角型比は走行方向の角型比の80%以下となることが好ましい。磁性層のSFDは0.1〜0.6であることが好ましい。
以下に、本発明の具体的実施例および比較例を挙げるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」の表示は、特に断らない限り、「質量部」を示す。
[実施例1]
磁性層塗布液
強磁性金属粉末 組成 Fe/Co=100/30 100部
Hc 187kA/m(2350Oe)
BET法による比表面積 69m2/g
表面処理剤:Al2O3、SiO2、Y2O3
粒子サイズ(長軸径):50nm
針状比:7
σs:120A・m2/kg(120emu/g)
塩化ビニル共重合体 MR110(日本ゼオン社製) 12部
ポリウレタン樹脂 Tg 80℃ 5部
α−Al2O3 モース硬度9(平均粒径0.1μm) 5部
カ−ボンブラック(平均粒径0.08μm) 0.5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
非磁性層塗布液
非磁性粉体 αFe2O3 ヘマタイト 80部
長軸長:0.10μm
BET法による比表面積:52m2/g
pH:6
タップ密度:0.8
DBP吸油量:27〜38g/100g、
表面処理剤:Al2O3、SiO2
カーボンブラック 20部
平均一次粒子径:16nm
DBP吸油量:80ml/100g
pH:8.0
BET法による比表面積:250m2/g
揮発分:1.5%
塩化ビニル共重合体 MR110(日本ゼオン社製) 17部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
α−Al2O3(平均粒径0.2μm) 5部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
トルエン 50部
上記の塗布液について、各成分をオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液それぞれにメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性層塗布液、非磁性層塗布液をそれぞれ調製した。
得られた非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが1μmになるように、さらにその直後にその上に磁性層の厚さが0.11μmになるように、厚さ6μmで磁性層塗布面の中心線表面粗さが0.001μmのポリエチレンテレフタレート樹脂支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに、0.5T(5000G)の磁力をもつコバルト磁石と0.4T(4000G)の磁力をもつソレノイドにより配向させ乾燥後、磁性層と反対の面に0.6μmのバックコート層を塗布した。その後金属ロ−ルから構成される7段のカレンダで温度100℃、線圧350kg/cm(343kN/m)にて分速200m/minで処理を行い、1/2mm幅にスリットしてデジタル記録用テープを作製した。
バック層処方
混練物(A)
カーボンブラックA 粒径 40nm 95部
ニトロセルロース 旭化成社製セルノバBTH1/2 50部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡) 40部
分散剤 フタロシアニン系分散材 5部
オレイン酸銅 5部
沈降性硫酸バリウム 5部
メチルエチルケトン 500部
トルエン 500部
混練物(B)
カーボンブラックB 5部
SSA(比表面積):115m2/g
平均粒径:90nm
DBP吸油量:70ml/100g
ニトロセルロース 旭化成社製セルノバBTH1/2 2部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡) 1部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 15部
混練物(A)をロールミルで予備混練した。その後、混練物(A)と混練物(B)をサンドグラインダーで分散した後、以下を添加し、バックコート層塗布液を作製した。得られたバックコート層塗布液を、磁性層塗布液を塗布、乾燥させた後に、磁性層と反対の面に塗布した。
ポリエステル樹脂 東洋紡製 バイロン300 5部
ポリイソシアナート 日本ポリウレタン社製コロネートL 5部
[実施例2、3]
混練物(A)中のカーボンブラックの粒径を変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[実施例4、5]
混練物(B)中のカーボンブラックの粒径を変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[実施例6、7]
磁性層に含まれるポリウレタン樹脂のTgを変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例1、2]
混練物(A)中のカーボンブラックの粒径を変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例3]
混練物(B)を使用しなかった以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例4]
混練物(B)中のカーボンブラックの粒径を変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例5、6]
磁性層に含まれるポリウレタン樹脂のTgを変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例7]
カレンダーロールの材質をエポキシ樹脂に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例8]
カレンダー処理速度を変更した以外は、実施例1と同様に作製した。
[比較例9]
バックコート層を塗布しなかった以外は、実施例1と同様に作製した。
測定方法
(1)磁性層Ra、バック層Ra、突起密度
セイコーインスツルメンツ社製SPA500型原子間力顕微鏡(AFM)を使用して、磁性層面、バックコート層面それぞれ90μm×90μmの面積をコンタクトモードで走査し、平均表面粗さRaを求めた。バックコート層の突起密度は、上記条件でバックコート層面を走査した後、凸の体積と凹み体積が等しくなる高さを基準高さとし、基準高さより50nm以上100nm未満の高さの突起数と、100nm以上500nm以下の高さの突起数を求め、それぞれを測定面積で除して求めた。
(2)SNRsk
LTOドライブを使用し、114kfciに相当する6MHzの信号を記録再生した。6MHz出力と6MHzの信号より0.1〜1.0MHz離れた部分のノイズ成分の比をSNRskとした。
(3)ドロップアウト
LTOドライブを使用し、140kfciの信号を記録再生し、再生出力が50%以上低下した回数を測定し、ドロップアウト個数とした。
(4)走行後の磁性層ダメージ、バックコート層ダメージ
テープを1万回往復させ、走行後の磁性層およびバックコート層の擦り傷を光学顕微鏡で観察し、5点法で評価した。5点が最も良好であり、擦り傷がほとんど見られない状態である。
(5)保存後のエッジ折れ
リールに巻かれたサンプルを、温度60℃、湿度90%の環境下に1週間保存した後、テープエッジが折れた個数を数えた。
(6)磁性層の塑性変形硬さ
先に説明した方法により、磁性層の荷重5mfでの塑性変形硬さを測定した。
評価結果
バックコート層表面の原子間力顕微鏡(AFM)で測定した50nm以上100nm未満の高さの突起密度が20〜60個/μm2の範囲であり、100nm以上500nm以下の高さの突起密度が0.2〜1個/μm2の範囲であり、かつ、前記磁性層の荷重5mgfでの塑性変形硬さが50〜100kgf/mm2の範囲である実施例1〜7は、SNRが高く、ドロップアウトは少なかった。実施例1〜7では、走行後の磁性層およびバックコート層のダメージも少なかった。また、テープ巻き面が巻き乱れていると、高温高湿環境に保存したとき、巻き面より飛び出したテープエッジが折れてしまうが、実施例1〜7の磁気テープでは保存後のエッジ折れは見られなかったことから、巻き姿が良好であったことがわかる。
比較例1では、混練物(A)に含まれるカーボンブラックの粒径を実施例2よりさらに小さくしたため、バックコート層の50nm以上100nm未満の高さの突起数が15個/μm2となった。磁性層表面とバックコート層表面の接触圧力が上昇して裏写りが増加し、ドロップアウトが大きく増加した。また、磁性層とバックコート層の同伴エアの排出効果が下がり、巻き姿が悪化してエッジ折れが発生した。
比較例2では、混練物(A)に含まれるカーボンブラックの粒径を実施例3よりさらに大きくしたところ、バックコート層の50nm以上100nm未満の高さの突起数が65個/μm2となった。磁性層表面とバックコート層表面の接触圧力は低下するが、バックコート層が粗くなり磁性層も粗くなった。このためSNRが低下し、ドロップアウトが増加した。
比較例3では、混練物(B)を使用しなかったため、バック層の100nm以上500nm以下の突起数が0.15個/μm2に減少した。これにより、バックコート層の耐久性が劣化し、走行後バック層ダメージが劣化した。バックコート層がダメージを受けたため、バックコート層と接触するガイドとの摩擦係数が上がり、走行テンションが増加したことにより、磁性層表面と磁気ヘッドが強く擦られるようになり、磁性層ダメージが劣化した。
比較例4では、混練物(B)に含まれるカーボンブラックの粒径を実施例5よりさらに大きくしたため、バック層の100nm以上500nm以下の高さの突起数が1.25個/μm2まで増加し、裏写りが増加してドロップアウトが増加した。さらにバックコート層が粗くなったことに起因して磁性層も粗くなり、SNRが大きく低下した。
比較例5では、磁性層に含まれるポリウレタン樹脂のTgを実施例6より下げたため、磁性層の塑性変形硬さが20kgf/mm2まで低下し、裏写りが増加してドロップアウトが増加した。また、走行後磁性層ダメージも非常に悪化した。
比較例6では、磁性層に含まれるポリウレタン樹脂のTgを実施例7よりさらに上げたため、磁性層の塑性変形硬さが125kgf/mm2まで増加した。これにより、ヘッド当たりが劣化してドロップアウトが大きく増加した。
比較例7では、弾性率の低いエポキシ樹脂製のカレンダーロールを使用したため、磁性層の塑性変形硬さが低下し、バックコート層表面の100nm以上500nm以下の突起数が1.5個/μm2まで増加した。これにより、SNRが低下し、ドロップアウトが増加し、磁性層の走行後ダメージが悪化した。
比較例8では、カレンダー処理速度を50m/分まで低下させ、カレンダー条件を強化したことにより、磁性層の塑性変形硬さが上昇した。これにより、ヘッドと磁性層との接触状態が不良となり、SNRが低下した。また、バックコート層の100nm以上500nm以下の高さの突起が減少したため、走行後のバックコート層ダメージが悪化した。
比較例9では、バックコート層を塗布しなかったため、走行特性が極度に悪化し、テープを評価装置で走行させることができなかった。
本発明の磁気記録媒体は、高密度記録用磁気記録媒体として好適に用いることができる。
塑性変形硬さの測定に使用する圧子の説明図である。
塑性変形量の定義の説明図である。