JP2004094988A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Minoru Kanazawa
金澤 實
Yutaka Tsunoishi
角石 裕
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Abstract

【課題】バック層の極表面における強度特性から規定され、ヘッド汚れやヘッド目詰まりが低減され、電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】支持体の一方の面上に下層非磁性層と上層磁性層を設け、該支持体の他方の面上にバック層を設けてなる磁気記録媒体において、前記バック層は重層構成であって、三角錐状で、尖端部の曲率半径が100nm、刃角度が65°、稜間角が115°の形状を有するダイヤモンド圧子を、荷重6mgf(58.8μN)で前記バック層に押し込んだときの負荷除荷曲線における押し込み硬さ(DH)が25〜95Kg/mm(245〜931MPa)であり、かつヤング率(W)が500〜1500Kg/mm(4.9〜14.7GPa)であることを特徴とする磁気記録媒体。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体、特にバック層を有した磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、録音用テープ、ビデオテープ、コンピューターテープ、ディスク等として広く用いられている。磁気記録媒体は年々高密度化され記録波長が短くなっており、記録方式もアナログ方式からデジタル方式まで検討されている。 更に、磁気テープの場合、テープ厚みを薄くすることで、一定のカセットケースの中に巻く事ができるテープ長を長くし、体積的な高密度化を図る検討が進んでいる。例えば、8mmビデオテープの場合、導入当初はテープ厚み13.5μmで録再時間が90分であったものが、近年はテープ厚みを8μmとすることで180分まで録画再生できるようになった。
【0003】
テープ厚みを薄くしても良好な走行耐久性を保つために、磁性層、バック層、並びに支持体の強度向上が図られてきた。
特にバック層に関しては、特開平9−212854号公報では、バック層表面の突起の高さ及び分布を規定し、バック層の摩擦係数を低くして、走行負荷を低減し、走行耐久性を高め、薄物化にも十分対応可能とする旨提案されている。また、特開平11−31320号公報には、保磁力及び飽和磁束密度、中心線平均粗さ、表面電気抵抗、長手方向のヤング率等を規定したバック層を開示し、記録情報(磁化)が消失し難く、十分な剛性を有し、ヘッドタッチが良好であり、更には遮光性、導電性(静電気の帯電防止特性)、走行性、及び電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供する旨記載されている。
また、特開平11−86267号公報には、バック層を複層化すると共に該バック層の最上バック層以外の層に平均一次粒径が該最上バック層の膜厚よりも小さいモース硬度5以上の研磨剤としての無機粉末を含有させることにより優れた電磁変換特性を有すると共に、高いバックコート層塗膜強度を持ち、繰り返し走行耐久性に優れ、走行トルクも低い等の特徴を持つ磁気記録媒体を得られるとしている。
ところで、近年、コストダウン、バック層突起の磁性面写りによるドロップアウト(DO)の改良、熱変形改良等の目的でバルクサーモ処理を省く、いわゆるサーモレス化が検討されてきている。
しかし、サーモレス化はバック層の膜強度の低下を招き、ひいてはバインダーの削れ、粉体の脱落などによるデブリスのヘッド移着によるヘッド汚れに起因する出力低下が見られるという問題がある。
しかしながら、上記従来技術では、バック層の極表面の物性については、研究されてきていない。従って、バック層の極表面をいかに制御すれば、当該デブリス発生を防止することができるのか明らかにされておらず、デブリス発生とバック層の極表面物性との関係が見出されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、従来にはないバック層の極表面における強度特性から規定され、ヘッド汚れやヘッド目詰まりが低減され、電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、バック層の極表面、特に表面から深さ約0.1μm未満の領域(本発明において、「極表面」とはこの領域を意味する)を特定の圧子で押し込んだときの負荷除荷曲線における押し込み硬さとヤング率のバランスが重要であり、これらが磁気記録媒体の走行性や電磁変換特性に大きく影響することが判明した。そして、バック層を複層化すると共にバック層の極表面における押し込み硬さとヤング率を特定の値に制御することにより、サーモレス化されたバック層からのデブリスの発生が抑制されてヘッド汚れが低減し、電磁変換特性が改善されることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
即ち、本発明は、支持体の一方の面上に下層非磁性層と上層磁性層を設け、該支持体の他方の面上にバック層を設けてなる磁気記録媒体において、
前記バック層は複層構成であって、
三角錐状で、尖端部の曲率半径が100nm、刃角度が65°、稜間角が115°の形状を有するダイヤモンド圧子を、荷重6mgf(58.8μN)で前記バック層に押し込んだときの負荷除荷曲線における下記(1)式で定義される押し込み硬さ(DH)が25〜95Kg/mm(245〜931MPa)であり、かつ下記(2)式で定義されるヤング率(W)が500〜1500Kg/mm(4.9〜14.7GPa)であることを特徴とする磁気記録媒体。
Figure 2004094988
(但し、Pmaxは最大荷重、Hmaxは圧子の最大変位量である)
Figure 2004094988
(但し、Hは除荷曲線の最大変位における接線の荷重0での変位、dP/dHは除荷曲線の最大変位における接線の傾きである。)
本発明の好ましい態様は以下の通りである。
1)バック層は支持体上に粗粒子カーボンブラックと微粒子カーボンブラックと結合剤を含む第1バック層を設け、該第1バック層上に微粒子カーボンブラックとモース硬度5以上の非磁性無機粉末と結合剤を含む第2バック層を設けてなる磁気記録媒体。
2)上記第1バック層に用いる粗粒子カーボンブラックの粒子径は0.10〜0.5μmであり、かつ上記第1バック層及び第2バック層に用いる微粒子カーボンブラックの粒子径は0.01〜0.09μmである磁気記録媒体。
3)上記バック層の総厚は0.4〜1.0μmである磁気記録媒体。
4)第1バック層の表面粗さRaは、AFMでの測定で5〜30nmである磁気記録媒体。
尚、本明細書において、Kg/mm=9.8MPaにて換算した。
【0007】
特に、上記押し込み硬さ(DH)は25〜95Kg/mm(245〜931MPa)であることが好ましい。また、上記ヤング率(W)は、500〜1500Kg/mm(4.9〜147GPa)であることが好ましい。
【0008】
本発明によれば、バック層を複層化すると共にバック層の極表面の押し込み硬さとヤング率を上記の範囲に調整することにより、サーモレス化磁気記録媒体においてもデブリスの発生の少ないバック層を有する磁気記録媒体が得られる。そのため、走行時にドライブ内のガイドポ−ルとの摺動により発生するバック層材料の欠落や削れ等のデブリスが減少し、ひいては磁性層へのデブリスの移行等が防止されることにより磁気ヘッドへのデブリスの付着、すなわちヘッド汚れが低減されるので、電磁変換特性、特に再生出力及び出力低下が改善される。バック層の押し込み硬さとヤング率の何れか一方でも前記範囲から逸脱すると、本発明が目的とする効果が得られない。
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明において、押し込み硬さとヤング率は、以下のようにして求められる値である。
図1に示すように、三角錐状で、尖端部aの曲率半径が100nm、刃角度(α)が65°、稜間角(β)が115°の形状を有するダイヤモンド圧子を用い、荷重6mgfでバック層に押し込んだときの負荷除荷曲線に基いて求められる
【0010】
上記した特定形状の圧子を6mgfの荷重にてバック層に押し込むと、圧子の尖端部aはバック層の表面から0.1μmの深さまで達することはなく、従来では不可能であったバック層の極表面での上記各特性を測定することができる。
【0011】
尚、上記形状を有する圧子は、バーコビッチ(Verkovich)圧子として知られており、このバーコビッチ圧子を備え、荷重6mgfで測定できる測定装置としては、(株)エリオニクス製超微小押し込み硬度測定機(型番:ENT−1100a)等を使用することができる。
【0012】
図2は、荷重を連続的に増加させてバーコビッチ圧子を試料に押し込み、荷重6mgfに達した時点で除荷した時のバーコビッチ圧子の変位量の変化を示した負荷除荷曲線を示したものである。図示されるように、曲線Aに示すように、荷重が増加するのに従って変位量も増加し、6mgfにて最大変位量(Hmax)を示す。そして、除荷すると、曲線Bに示すように徐々に変位量が減少するが、荷重がゼロになっても変位量はある値を示す。このとき、曲線Bの最大変位量(Hmax)における接線bを荷重ゼロ(即ち、横軸)に外挿することにより、塑性変形量(H)が得られる。この時の接線bの傾きが、dP/dHである。尚、最大変位量からこの塑性変形量(H)を差し引いた値が弾性変形量(H)である。
【0013】
従って、押し込み硬さ(DH)は、上記において求められた最大変位量(Hmax)と最大荷重(Pmax=6mgf)とから、上記(1)式により算出され、ヤング率(W)は、塑性変形量(H)及びdP/dHから、上記(2)式により算出される。
バック層の押し込み硬さとヤング率を上記の範囲にする手段は特に制限されないが、結合剤の種類や成分比、無機物と結合剤との比、カレンダー条件、サーモ条件等を適宜選定乃至調整することが挙げられる。
【0014】
尚、従来、層表面の特性評価のために一般的に用いられているビッカース硬度は、層表面に、四角錐状のダイヤモンド圧子を所定荷重にて0.1〜0.2μm程度の深さまで押し込み、圧子を開放した後に残留する圧跡の表面積と荷重との比から求められるものであり、本発明による押し込み硬さとは異なる表面特性を測定するものである。
【0015】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
初めにバック層について説明する。
本発明の磁気記録媒体は、バック層が設けられるが、一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して、繰り返し走行性が強く要求される。このような高い走行耐久性を維持させるために、バック層には、カーボンブラックと非磁性無機粉末が含有されていることが好ましい。
【0016】
本発明に用いるバック層は、支持体上に組成の異なる層を2以上積層させたものであるが、重層化されたものが好ましい。好ましい重層構造のバック層としては、支持体上に粗粒子カーボンブラックと微粒子カーボンブラックと結合剤を含む第1バック層を設け、該第1バック層上に微粒子カーボンブラックとモース硬度5以上の非磁性無機粉末と結合剤を含む第2バック層を設けてなるものである。尚、複層化されたバック層の各々の層を含めて言う場合には単にバック層と言う。
上記第1バック層に用いる粗粒子カーボンブラックの粒子径は0.10〜0.5μmが好ましく、0.15〜0.35μmが更に好ましい。上記第1バック層及び第2バック層に用いる微粒子カーボンブラックの粒子径は0.01〜0.09μmが好ましく、0.03〜0.07μmが更に好ましい。
第1バック層において、微粒子状カーボンブラックと粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=1:1〜1:5の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、1:1.5〜1:3.0の範囲である。
第1バック層又は第2バック層中のカーボンブラックの含有量は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲であり、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
上記のような微粒子状のカーボンブラックの第1バック層及び第2バック層への添加により、バック層表面(バック面ともいう)の突起高さ及び突起分布を調整することができると共にバック層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また微粒子状カーボンブラックは一般に液体潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。特に第1バック層に含まれる粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバック面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。また、第2バック層は、第1バック層に含まれる粗粒子カーボンブラックの脱落を効果的に防止する機能を有する。
【0017】
本発明に用いられる微粒子状カーボンブラック及び粗粒子状カーボンブラックとして、市販のものを用いる場合、具体的な商品としては、WO98/35345に記載のものを挙げることができる。
【0018】
非磁性無機粉末としては、硬さの異なる二種類のものを併用することが好ましい。
具体的には、モース硬度3〜4.5の軟質無機粉末とモース硬度5〜9の硬質無機粉末とを使用することが好ましい。特に第2バック層にモース硬度5以上のものを使用することが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末を添加することで、繰り返し走行による摩擦係数の安定化を図ることができる。しかもこの範囲の硬さでは、摺動ガイドポールが削られることもない。またこの軟質無機粉末の平均粒子径は、30〜50nmの範囲にあることが好ましい。
モース硬度が3〜4.5の軟質無機粉末としては、例えば、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、及び酸化亜鉛を挙げることができる。これらは、単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
バック層内の軟質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して10〜140質量部の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、35〜100質量部である。
【0019】
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末を、特に好ましくは、第2バック層へ添加することにより、バック層の強度が強化され、走行耐久性が向上する。これらの無機粉末をカーボンブラックや前記軟質無機粉末と共に使用すると、繰り返し摺動に対しても劣化が少なく、強いバック層となる。またこの無機粉末の添加により、適度の研磨力が付与され、テープガイドポール等への削り屑の付着が低減する。特に軟質無機粉末と併用すると、表面の粗いガイドポールに対しての摺動特性が向上し、バック層の摩擦係数の安定化も図ることができる。
モース硬度が5〜9の硬質無機粉末としては、例えば、α−酸化鉄、ゲータイト、α−アルミナ、酸化チタン及び酸化クロム(Cr)を挙げることができる。これらの粉末は、それぞれ単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これらの内では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。
硬質無機粉末が球状の場合、粒子径は20〜100nmが好ましく、30〜80nmの範囲にあることが更に好ましい。また、硬質無機粉末が針状の場合には、長軸長は20〜100nmが好ましく、30〜80nmが更に好ましく、また針状比(長軸長/短軸長)は1.1〜4が好ましい。また、硬質無機粉末が板状の場合には、板径が20〜100nmが好ましく、30〜80nmが更に好ましく、また板状比(板径/板厚)は1.1〜5が好ましい。
硬質無機粉末の含有量は、カーボンブラック100質量部に対して通常3〜30質量部であり、好ましくは、3〜20質量部である。
【0020】
バック層に前記軟質無機粉末と硬質無機粉末とを併用する場合、軟質無機粉末と硬質無機粉末との硬さの差が、2以上(更に好ましくは、2.5以上、特に、3以上)であるように軟質無機粉末と硬質無機粉末とを選択して使用することが好ましい。この併用は、少なくとも第2バック層に使用されることが好ましい。
【0021】
バック層の総厚は、0.4〜1.0μmが好ましい。第1バック層及び第2バック層の層厚は、いずれも0.2〜0.5μmであることが好ましく、更に好ましくは、0.2〜0.35μmである。
バック層は、複数の層を同時に塗布することにより設けてもよいし、一つの層を乾燥した後にその上に他の層を設けてもよい。バック層を3層以上とした場合には、それらを併用してもよい。
第1バック層の表面粗さRaは、その塗布液が同時重層などに用いられるものであっても予め第1バック層単層品を作成したものを用いて測定されるものであり、AFMでの測定で5〜35nmであることが好ましく、10〜30nmであることが更に好ましい。このように第1バック層の表面性を制御することにより、バック面の表面粗さRaをAFMでの測定で好ましくは、5〜25nm、更に好ましくは、10〜20nmとすることができ、磁性面への突起写りを効果的に抑制することができる。
AFMによる表面粗さRaの測定は、SII社製SPA500型AFMによる。
バック層には、潤滑剤を含有させることができる。潤滑剤は、前述した非磁性層、あるいは磁性層に使用できる潤滑剤として挙げた潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バック層において、潤滑剤は、結合剤100質量部に対して通常1〜5質量部の範囲で添加される。尚、バック層の各層で適宜その含量を最適化することが好ましい。
バック層に用いられる潤滑剤、その他、分散剤等の添加剤、結合剤並びに塗布液用溶剤、分散方法、塗布方法、その他は、後述の磁性層について記載されることから適宜選定して用いることができる。
【0022】
次に、上層磁性層(以下、単に磁性層ともいう)に関する詳細な説明をする。
磁性層に使用する強磁性粉末としてはγ−FeOx(x=1.33〜1.5)、Co変性γ−FeOx(x=1.33〜1.5)、α−FeまたはNiまたはCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金粉末、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライトなど公知の強磁性粉末が使用できるが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。これらの強磁性粉末には後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−17284号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−10307号、特公昭48−39639号、米国特許3026215号、同3031341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号などに記載されている。
【0023】
上記強磁性粉末の中で強磁性合金微粉末については少量の水酸化物、または酸化物を含んでもよい。強磁性合金微粉末の公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
【0024】
本発明の磁性層の強磁性粉末をBET法による比表面積で表せば通常、25〜80m/gであり、好ましくは40〜70m/gである。25m/g未満ではノイズが高くなり、80m/gを超えると表面性が得にくく好ましくない。
本発明の磁性層の強磁性粉末の結晶子サイズは通常、450〜100オングストロ−ムであり、好ましくは350〜100オングストロ−ムである。酸化鉄磁性粉末の飽和磁化(σs)は通常、50〜90A・m/kg、好ましくは70〜90A・m/kgであり、強磁性金属粉末の場合は100〜200A・m/kgが好ましく、さらに好ましくは110〜170A・m/kgである。抗磁力は1,100Oe(87.5kA/m)以上3,000Oe(238.7kA/m)以下が好ましく、更に好ましくは1,400Oe(111.4kA/m)以上2,500Oe(198.9kA/m)以下である。強磁性粉末の針状比は4以上18以下が好ましく、更に好ましくは5以上12以下である。強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0.5〜1.5g/ml以上が好ましく、0.8〜1.2g/mlがさらに好ましい。強磁性合金粉末のタップ密度は0.2〜0.8g/mlが好ましく、0.8g/ml以上に使用とすると強磁性粉末の圧密過程で酸化が進みやすく、充分な飽和磁化σを得ることが困難になる。タップ密度が0.2g/ml以下では分散が不十分になりやすい。γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20%でありさらに好ましくは5〜10%である。また鉄原子に対するコバルト原子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。
【0025】
強磁性粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m以下になり好ましい。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが500ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。
【0026】
また、本発明に用いられる強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は0〜20容量%、さらに好ましくは0〜5容量%である。また形状については先に示した平均粒径についての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状、板状いずれでもかまわない。針状強磁性粉末の場合、針状比は4〜12が好ましい。この強磁性粉末のSFDが0.1〜0.6を達成するためには、強磁性粉末のHcの分布を小さくする必要がある。そのためには、ゲ−タイトの粒度分布をよくする、γ−ヘマタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速度を従来より遅くするなどの方法がある。
【0027】
本発明の磁性層に用いられる六方晶フェライトとしては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライト、及びその各置換体が使用できる。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S,Sc、Ca、Ti、V,Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。この中でAl、Si、Ca、Cr、Y、Ba、Nd、Co、Mn、Zn、Ni、Bが好ましい。一般にはCo−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Ir−Zn等の元素を添加した物を使用することができるが、特に好ましいものはバリウムフェライト、ストロンチウムフェライトの各Co置換体である。上層磁性層の長手方向のSFDは0.01〜0.3にすると抗磁力の分布が小さくなり好ましい。抗磁力を制御するためには、平均粒径、粒子厚を均一にする、六方晶フェライトのスピネル相の厚みを一定にする、スピネル相の置換元素の量を一定にする、スピネル相の置換サイトの場所を一定にする、などの方法がある。
【0028】
上記六方晶フェライトは通常六角板状の粒子であり、その板径は六角板状の粒子の板の幅を意味し電子顕微鏡を使用して測定することができるが、好ましい平均板径は0.01〜0.2μm、特に0.03〜0.1μmの範囲である。また、該粒子の板厚は0.001〜0.2μm、特に0.003〜0.05μmが好ましい。更に板状比(平均板径/板厚)は1〜15、好ましくは3〜7である。
また、これら六方晶フェライト粉末のBET法による比表面積(SBET)は25〜100m/g、40〜70m/gが好ましい。25m/g以下ではノイズが高くなり、100m/g以上では表面性が得にくく好ましくない。強磁性粉末の抗磁力は500Oe(39.8kA/m)以上4,000Oe(318.3kA/m)以下が好ましく、更に好ましくは1,200Oe(95.5kA/m)以上3,000Oe(238.7kA/m)以下である。500Oe(39.8kA/m)以下では短波長出力が低下し、4,000Oe(318.3kA/m)以上ではヘッドによる記録がしにくく好ましくない。σsは50〜90A・m/kg、好ましくは60〜90A・m/kgである。タップ密度は0.5〜1.5g/mlが好ましく、0.8〜1.2g/mlがさらに好ましい。六方晶フェライトの製法としてはガラス結晶化法・共沈法・水熱反応法等があるが、本発明は製法を選ばない。
【0029】
本発明は、支持体と磁性層の間に下層非磁性層(以下、単に非磁性層ともいう)を設けてなる。非磁性層は、結合剤、非磁性粉末及びカーボンブラックを含むことが好ましい。
非磁性層に用いられる非磁性粉末は、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、等の無機質化合物から選択することができる。具体的には、例えばα化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが単独または組合せで使用される。特に好ましいのは二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいのは二酸化チタンである。これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましいのは非磁性粉末の平均粒径は0.01μm〜0.2μmである。タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。非磁性粉末の含水率は0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜3質量%である。非磁性粉末のpHは2〜11であるが、pHは6〜9の間が特に好ましい。非磁性粉末の比表面積は1〜100m/g、好ましくは5〜50m/g、更に好ましくは7〜40m/gである。非磁性粉末の結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPを用いた吸油量は5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。比重は1〜12、好ましくは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。
【0030】
強熱減量は0〜20質量%であることが好ましい。本発明に用いられる上記非磁性粉末のモース硬度は4〜10のものが好ましい。これらの粉末表面のラフネスファクターは0.8〜1.5が好ましく、更に好ましいラフネスファクターは0.9〜1.2である。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)吸着量は1〜20μmol/m、更に好ましくは2〜15μmol/mである。非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は200erg/cm〜600erg/cmの範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Aが適当である。水中での等電点のpHは3〜6の間にあることが好ましい。
【0031】
これらの非磁性粉末の表面にはAl、SiO、TiO、ZrO,SnO,Sb,ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl、SiO、TiO、ZrO、であるが、更に好ましいのはAl、SiO、ZrOである。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0032】
また、非磁性粉末は市場からも入手でき、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100,ZA−G1、戸田工業社製DPN−250,DPN−250BX、DPN−245,DPN−270BX石原産業製TTO−51B、TTO−55A,TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100,E270,E271 チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD。堺化学製FINEX−25,BF−1,BF−10,BF−20,ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y,DEFIC−R、日本アエロシ゛ル製AS2BM,TiO2P25,宇部興産製100A,500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。
【0033】
特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンであるので、二酸化チタンを例に製法を詳しく記す。これらの酸化チタンの製法は主に硫酸法と塩素法がある。硫酸法はイルミナイトの源鉱石を硫酸で蒸解し、Ti,Feなどを硫酸塩として抽出する。硫酸鉄を晶析分離して除き、残りの硫酸チタニル溶液を濾過精製後、熱加水分解を行なって、含水酸化チタンを沈澱させる。これを濾過洗浄後、夾雑不純物を洗浄除去し、粒径調節剤などを添加した後、80〜1000℃で焼成すれば粗酸化チタンとなる。ルチル型とアナターゼ型は加水分解の時に添加される核剤の種類によりわけられる。この粗酸化チタンを粉砕、整粒、表面処理などを施して作成する。塩素法は原鉱石は天然ルチルや合成ルチルが用いられる。鉱石は高温還元状態で塩素化され、TiはTiClにFeはFeClとなり、冷却により固体となった酸化鉄は液体のTiClと分離される。得られた粗TiClは精留により精製した後核生成剤を添加し、1000℃以上の温度で酸素と瞬間的に反応させ、粗酸化チタンを得る。この酸化分解工程で生成した粗酸化チタンに顔料的性質を与えるための仕上げ方法は硫酸法と同じである。
【0034】
表面処理は上記酸化チタン素材を乾式粉砕後、水と分散剤を加え、湿式粉砕、遠心分離により粗粒分級が行なわれる。その後、微粒スラリーは表面処理槽に移され、ここで金属水酸化物の表面被覆が行なわれる。まず、所定量のAl,Si,Ti,Zr,Sb,Sn,Znなどの塩類水溶液を加え、これを中和する酸、またはアルカリを加えて、生成する含水酸化物で酸化チタン粒子表面を被覆する。副生する水溶性塩類はデカンテーション、濾過、洗浄により除去し、最終的にスラリーpHを調節して濾過し、純水により洗浄する。洗浄済みケーキはスプレードライヤーまたはバンドドライヤーで乾燥される。最後にこの乾燥物はジェットミルで粉砕され、製品になる。また、水系ばかりでなく、酸化チタン粉末にAlCl,SiClの蒸気を通じ、その後水蒸気を流入してAl,Si表面処理を施すことも可能である。その他の顔料の製法については、G.D.Parfitt and K.S.W. Sing  ”Characterization of Powder Surfaces” Academic Press,1976を参考にすることができる。
【0035】
非磁性層にカ−ボンブラックを混合させて公知の効果であるRsを下げることができるとともに、所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。このためにはゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる。
【0036】
カ−ボンブラックの比表面積は100〜500m/g、好ましくは150〜400m/g、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30〜200ml/100gである。カ−ボンブラックの平均粒径は5mμ〜80mμ、好ましく10〜50mμ、さらに好ましくは10〜40mμである。カ−ボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。本発明において使用可能なカ−ボンブラックの具体的な例としては、例えばキャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B,3150B,3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コンロンビアカ−ボン社製CONDUCTEX SC、同RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックEC等が挙げられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カ−ボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記非磁性粉末に対して0〜50質量%の範囲、非磁性層総質量の0〜40%の範囲で使用できる。これらのカ−ボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。
【0037】
本発明で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編」を参考にすることができる。また、非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62−18564号、特開昭60−255827号に記されているようなものが使用できる。下塗層は一般の磁気記録媒体において設けることが行われているが、これは支持体と磁性層等の接着力を向上させるために設けられるものであって、厚さも0.005〜0.5μmが一般的で、0.01〜0.1μmが好ましい。
【0038】
非磁性層は磁性層が均一な厚みで塗布されるための手段となる。ない方が好ましいが現実的には不可能であるため、薄層であることが望ましい。
【0039】
非磁性層の結合剤、潤滑剤、分散剤、添加剤、溶剤、分散方法その他は磁性層のそれが適用できる。特に、結合剤量、種類、添加剤、分散剤の添加量、種類に関しては磁性層に関する公知技術が適用できる。
【0040】
本発明の磁性層、非磁性層並びにバック層に使用される結合剤としては従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。
熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が1,000〜200,000、好ましくは10,000〜100,000、重合度が約50〜1,000程度のものである。
【0041】
このような樹脂の例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクルリ酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビニルアセタ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリオ−ルとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等があげられる。これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細に記載されている。また、公知の電子線硬化型樹脂を非磁性層、または上層磁性層に使用することも可能である。
【0042】
これらの樹脂とその製造方法については特開昭62−256219号に詳細に記載されている。以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコ−ル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体、中から選ばれる少なくとも1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組み合わせたものがあげられる。ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエ−テルポリウレタン、ポリエ−テルポリエステルポリウレタン、ポリカ−ボネートポリウレタン、ポリエステルポリカ−ボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタンポリオレフィンポリウレタンなど公知のものが使用できる。ここに示した全ての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るために、必要に応じ、−COOM、−SOM、−OSOM、−P=O(OM)、−O−P=O(OM)(以上につきMは水素原子、またはアルカリ金属塩基)、−OH、−NR、−N(Rは炭化水素基)エポキシ基、−SH、−CN、スルフォベタイン、カルボキシベタイン、ホスホベタインなどから選ばれる少なくともひとつ以上の極性基を共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10−1〜10−8モル/gであり、好ましくは10−2〜10−6モル/gである。
【0043】
本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカ−バイト社製VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD,VROH,VYES,VYNC,VMCC,XYHL,XYSG,PKHH,PKHJ,PKHC,PKFE,日信化学工業社製MPR−TA、MPR−TA5,MPR−TAL,MPR−TSN,MPR−TMF,MPR−TS、MPR−TM、MPR−TAO、電気化学社製1000W、DX80,DX81,DX82,DX83、100FD、日本ゼオン社製MR−104、MR−105、MR110、MR100、400X−110A、日本ポリウレタン社製ニッポランN2301、N2302、N2304、大日本インキ社製パンデックスT−5105、T−R3080、T−5201、バ−ノックD−400、D−210−80、クリスボン6109,7209,東洋紡社製バイロンUR8200、UR8300、UR−8600、UR−5500、UR−4300、RV530、RV280、FB−84、大日精化社製ダイフェラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、7020、三菱化成社製MX5004、三洋化成社製サンプレンSP−150、TIM−3003、TIM−3005、旭化成社製サランF310、F210などがあげられる。この中でMR−104、MR110、UR8300、UR−8600、UR−5500、UR−4300、TIM−3005が好ましい。
【0044】
本発明の磁性層に用いられる結合剤は強磁性粉末に対し、5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5〜30質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20質量%、ポリイソシアネートは2〜20質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好ましい。本発明において、ポリウレタンを用いる場合はガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが100〜2,000%、破断応力は通常、0.05〜10Kg/mm(0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜10Kg/mm(0.49〜98MPa)が好ましい。
【0045】
本発明において、磁性層を形成する、結合剤量、結合剤中に占める塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、並びにポリイソシアネート、あるいはそれ以外の樹脂の量、各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた樹脂の物理特性などを、必要に応じ非磁性層に対して変えることはもちろん可能であり、多層磁性層に関する公知技術を適用できる。例えば、各層でバインダー量を変更する場合、磁性層表面の擦傷を減らすためには磁性層のバインダー量を増量することが有効であり、ヘッドに対するヘッドタッチを良好にする為には、例えば、非磁性層のバインダー量を多くして柔軟性を持たせること等の手段が挙げられる。
【0046】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販されている商品名としては、日本ポリウレタン社製コロネートL、コロネートHL,コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネートMTL、武田薬品社製タケネートD−102,タケネートD−110N、タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製デスモジュ−ルL,デスモジュ−ルIL、デスモジュ−ルN、デスモジュ−ルHL等があり、これらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せで下層非磁性層、上層磁性層とも用いることができる。
【0047】
磁性層は、カーボンブラックを含むことができる。カ−ボンブラックはゴム用ファ−ネス、ゴム用サ−マル、カラ−用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。比表面積は5〜500m/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g、平均粒径は5mμ〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。カ−ボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800,700、VULCAN XC−72、旭カ−ボン社製#80、#60,#55、#50、#35、三菱化成工業社製#2400B、#2300、#900,#1000#30,#40、#10B、コンロンビアカ−ボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN 150、50,40,15などがあげられる。カ−ボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。
【0048】
また、カ−ボンブラックを磁性塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカ−ボンブラックは単独、または組合せで使用することができる。カ−ボンブラックを使用する場合は強磁性粉末に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カ−ボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカ−ボンブラックにより異なる。従って、本発明に使用されるこれらのカ−ボンブラックは磁性層、非磁性層でその種類、量、組合せを変え、平均粒径、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。本発明の磁性層で使用できるカ−ボンブラックは例えば「カ−ボンブラック便覧」カ−ボンブラック協会編を参考にすることができる。
【0049】
研磨剤としては、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカ−バイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモ−ス硬度6〜10の公知の材料が単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90〜100%であれば効果にかわりはない。これら研磨剤の平均粒径は0.01〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる研磨剤を組み合わせたり、単独の研磨剤でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2g/ml、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m/g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製AKP−20,AKP−30,AKP−50、HIT−50、HIT−60,HiT−60A、HIT−80,HIT−80G,HIT−100、日本化学工業社製G5,G7,S−1、戸田工業社製TF−100,TF−140などがあげられる。これらの研磨剤は、予め結合剤で分散処理した後、磁性塗料中に添加してもかまわない。本発明の磁気記録媒体において、磁性層表面および磁性層端面に存在する研磨剤は5〜130個/100μmが好ましく、5〜90個/100μmが特に好ましい。
【0050】
本発明においては、潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可塑効果、などをもつ添加剤を添加することができる。二硫化モリブデン、二硫化タングステングラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコ−ンオイル、極性基をもつシリコ−ン、脂肪酸変性シリコ−ン、フッ素含有シリコ−ン、フッ素含有アルコ−ル、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコ−ル、アルキル燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ポリフェニルエ−テル、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li、Na、K、Cuなど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコ−ル、(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜22のアルコキシアルコ−ル、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコ−ルのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエ−テルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミン、などが使用できる。
【0051】
これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート 、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコ−ル、ラウリルアルコ−ル、があげられる。また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシド−ル系、アルキルフェノ−ルエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルフォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコ−ルの硫酸または燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は0〜30%が好ましく、さらに好ましくは0〜10%である。
【0052】
これらの潤滑剤、界面活性剤等の添加剤は非磁性層、磁性層並びにバック層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、非磁性層と磁性層、並びにバック層の第1バック層と第2バック層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御すること、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御すること、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させること、潤滑剤の添加量を非磁性層または第1バック層で多くして潤滑効果を向上させることなどが考えられ、無論ここに示した例のみに限られるものではない。
【0053】
また、上記の添加剤の全てまたはその一部は、磁性塗料、非磁性塗料またはバック層塗料の製造のどの工程で添加してもかまわない、例えば、磁性塗料において、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。また、目的に応じて磁性層を塗布した後、同時または逐次塗布で、添加剤の一部または全部を塗布することにより目的が達成される場合がある。また、目的によってはカレンダーした後、またはスリット終了後、磁性層表面に潤滑剤を塗布することもできる。
【0054】
また、これら潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製NAA−102,NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NAA−171,NAA−122、NAA−142、NAA−160、NAA−173K,ヒマシ硬化脂肪酸、NAA−42,NAA−44、カチオンSA、カチオンMA、カチオンAB,カチオンBB,ナイミ−ンL−201,ナイミ−ンL−202,ナイミ−ンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオンS−4,ノニオンO−2、ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニオンSP−60R、ノニオンOP−80R、ノニオンOP−85R,ノニオンLT−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレート、ブチルラウレート、エルカ酸、関東化学社製オレイン酸、竹本油脂社製FAL−205、FAL−123、新日本理化社製エヌジェルブLO、エヌジョルブIPM,サンソサイザ−E4030、信越化学社製TA−3、KF−96、KF−96L、KF96H、KF410,KF420、KF965,KF54,KF50,KF56,KF907,KF851,X−22−819,X−22−822,KF905,KF700,KF393,KF−857,KF−860,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−103,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935,ライオンア−マ−社製ア−マイドP、ア−マイドC,ア−モスリップCP、ライオン油脂社製デユオミンTDO、日清製油社製BA−41G、三洋化成社製プロファン2012E、ニュ−ポ−ルPE61、イオネットMS−400,イオネットMO−200、 イオネットDL−200,イオネットDS−300、イオネットDS−1000、イオネットDO−200などが挙げられる。
【0055】
有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブチルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール、などのアルコ−ル類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコ−ル等のエステル類、グリコ−ルジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を、任意の比率で使用できる。これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。これらの不純分は0〜30%が好ましく、さらに好ましくは0〜10%である。また、有機溶媒は磁性層と非磁性層とでその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用いることにより、塗布の安定性をあげる、具体的には磁性層溶剤組成の算術平均値が,非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15〜25の溶剤が50〜80%含まれることが好ましい。また、溶解パラメ−タは8〜11であることが好ましい。
【0056】
本発明の磁気記録媒体において、その厚み構成は支持体が1〜10μmであることが好ましいが、特に、1〜8μmの薄い支持体を用いる場合に有効である。
磁性層と非磁性層を合わせた厚みは、支持体の厚みの1/100〜2倍の範囲で用いられる。また、支持体と非磁性層の間に密着性向上のための接着層を設けてもよい。接着層の厚みは通常、0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.3μmある。接着層は公知のものが使用できる。これらの接着層、バック層の厚みも磁気記録媒体の層厚みに含める。
【0057】
本発明に用いられる支持体は、マイクロビッカース硬度が75〜100Kg/mm(735〜980MPa)のものが好ましく、二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾールなどの公知のフィルムが使用できる。特に、芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂を用いた支持体が好ましい。支持体のマイクロビッカース硬度が75〜100Kg/mm(735〜980MPa)にするためにはフイルム製膜時の加熱条件、弛緩条件、延伸条件等を調整する事および素材を選択する事により行うことができる。これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理、などをおこなっても良い。また、支持体は、その中心線平均表面粗さが通常、0.001〜0.03μm、好ましくは0.001〜0.02μm、さらに好ましくは0.001〜0.01μmものを使用することが好ましい。また、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて支持体に添加されるフィラ−の大きさと量により自由にコントロ−ルされるものである。これらのフィラ−としては一例としてはAl,Ca,Si、Tiなどの酸化物や炭酸塩で結晶性、非晶質を問わない他、アクリル系、メラミン系などの有機微粉末があげられる。
【0058】
また、支持体のテ−プ走行方向のF−5値は好ましくは10〜50Kg/mm(98〜490MPa)、テ−プ幅方向のF−5値は好ましくは10〜30Kg/mm(98〜294MPa)であり、テ−プの長手方向のF−5値がテ−プ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。また、支持体のテ−プ走行方向および幅方向の100℃、30分での熱収縮率は好ましくは0〜3%、さらに好ましくは0〜1.5%、80℃、30分での熱収縮率は好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%である。破断強度は両方向とも5〜100Kg/mm(49〜980MPa)、弾性率は100〜2,000Kg/mm(0.98〜19.6GPa)が好ましい。
【0059】
本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する強磁性粉末、結合剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニ−ダや加圧ニ−ダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。連続ニ−ダまたは加圧ニ−ダを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−166338号、特開昭64−79274号に記載されている。また、非磁性層用塗布液を調製する場合には高比重の分散メディアを用いることが望ましく、ジルコニアビーズが好適である。
【0060】
本発明のような重層構成の磁気記録媒体を塗布する装置、方法の例として以下のような構成を提案できる。
1,磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず非磁性層を塗布し、非磁性層がウェット状態にのうちに特公平1−46186号や特開昭60−238179号,特開平2−265672号に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により磁性層を塗布する。
2,特開昭63−88080号、特開平2−17971号、特開平2−265672号に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘッドにより上下層をほぼ同時に塗布する。
3,特開平2−174965号に開示されているバックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により、上下層をほぼ同時に塗布する。なお、磁性粒子の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止するため、特開昭62−95174号や特開平1−236968号に開示されているような方法により塗布ヘッド内部の塗布液にせん断を付与することが望ましい。さらに、塗布液の粘度については、特開平3−8471号に開示されている数値範囲を満足する必要がある。
上記装置及び方法は、バック層の塗布に適用できる。
【0061】
本発明の磁気記録媒体を得るためには強力な配向を行うことが好ましい。0.1T以上のソレノイドと0.2T以上のコバルト磁石を同極対向で併用することが好ましく、さらには乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程を設けることが好ましい。また、ディスク媒体として本発明を適用する場合はむしろ配向をランダマイズするような配向法が必要である。
【0062】
さらに、乾燥後、上記塗布物の表面を成形するために通常、カレンダー処理が施される。バック層は非磁性層及び磁性層と同時にカレンダー処理が施されてもよいし、別個に施されてもよいし、施されなくともよい。
カレンダー処理ロ−ルとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロ−ルを使用することができる。また、金属ロ−ル同志で処理することも出来る。処理温度は、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは80〜150℃である。線圧力は好ましくは200〜500Kg/cm(196〜490kN/m)、さらに好ましくは300〜400Kg/cm(294〜392kN/m)である。
【0063】
本発明の磁気記録媒体の磁性層面およびその反対面のSUS420Jに対する摩擦係数は、好ましくは0.1〜0.5、さらに0.15〜0.3、表面固有抵抗は好ましくは10〜1012オ−ム/sq、磁性層の0.5%伸びでの弾性率は走行方向、幅方向とも好ましくは100〜2,000Kg/mm(980〜19600N/mm)、破断強度は好ましくは1〜30Kg/mm(9.8〜294N/mm)、磁気記録媒体の弾性率は走行方向、長い方向とも好ましくは100〜1,500Kg/mm(980〜14700N/mm)、残留伸びは好ましくは0〜0.5%、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は好ましくは0〜1%、さらに好ましくは0〜0.5%、もっとも好ましくは0〜0.1%である。磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50℃以上120℃以下が好ましく、下層塗布層のそれは0℃〜100℃が好ましい。損失弾性率は1×10〜1×10N/cmの範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が大きすぎると粘着故障がでやすい。磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは0〜100mg/m、さらに好ましくは0〜10mg/mであり、磁性層に含まれる残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほうが好ましい。磁性層及び非磁性層が有する空隙率はともに好ましくは0〜30容量%、さらに好ましくは0〜20容量%である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるデータ記録用磁気記録媒体では空隙率が大きい方が走行耐久性は好ましいことが多い。
【0064】
本発明の磁気記録媒体の磁気特性は磁場5kOe(400kA/m)で測定した場合、テ−プ走行方向の角形比は0.70〜1.00であり、好ましくは0.80〜1.00であり、さらに好ましくは0.90〜1.00である。テ−プ走行方向に直角な二つの方向の角型比は走行方向の角型比の80%以下となることが好ましい。磁性層のSFDは0.1〜0.6であることが好ましい。
【0065】
磁性層の中心線表面粗さRaは1nm〜10nmが好ましいが、その値は目的により適宜設定されるべきである。電磁変換特性を良好にする為にはRaは小さいほど好ましいが、走行耐久性を良好にするためには逆に大きいほど好ましい。AFMによる評価で求めたRMS表面粗さRRMSは2nm〜15nmの範囲にあることが好ましい。
【0066】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。以下において、単位「部」は何れも質量部を示す。
【0067】
[磁気記録媒体の作製]
(磁性層形成用成分)
・強磁性金属微粉末                    100部
組成:Fe/Co=90/10(原子比)、Hc:2500 Oe、
BET法による比表面積:58m/g、結晶子サイズ:175Å、
σs:130A・m/kg、pH:8.6、水溶性Na:70ppm、
水溶性Ca:10ppm、水溶性Fe:10ppm
・塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン製MR−110)     11部
・ポリエステルポリウレタン樹脂                6部
ネオペンチルグリコ−ル/カプロラクトンポリオ−ル/MDI
=0.9/2.6/1(モル比)、−SONa基含有量:1×10−4eq/g
・ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネートL)    5部
・α−アルミナ(平均粒径0.2μm)             5部
・カ−ボンブラック(平均粒径0.1μm)         0.5部
・ブチルステアレート                     1部
・ステアリン酸                        2部
・メチルエチルケトン                   150部
・シクロヘキサノン                     50部
(非磁性層形成用成分)
・無機質非磁性粉末                     80部
組成:α―Fe3 ヘマタイト、平均長軸長:0.15μm、
BET法による比表面積:60m/g、pH:6.0、
タップ密度:0.8、DBP吸油量:27〜38ml/100g、
表面処理剤:Al、SiO
・カーボンブラック                     20部
平均一次粒径:16μm、DBP吸油量:80ml/100g、
pH:8.0、BET法による比表面積:250m/g、
揮発分:1.5%
・塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン製MR−110)     12部
・ポリエステルポリウレタン樹脂                5部
ネオペンチルグリコ−ル/カプロラクトンポリオ−ル/MDI
=0.9/2.6/1(モル比)、−SONa基含有量:
1×10−4eq/g
・ポリイソシアネート(日本ポリウレタン製コロネートL)    5部
・α−アルミナ(平均粒径0.15μm)            1部
・secブチルステアレート                1.5部
・ステアリン酸                        1部
・メチルエチルケトン                   100部
・シクロヘキサノン                    100部
・トルエン                         50部
【0068】
(磁性層塗布液及び非磁性層塗布液の調製)
上記の各成分を配合し、オ−プンニ−ダ−で混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた磁性層塗布液、非磁性層塗布液には、更にメチルエチルケトン、シクロヘキサノン混合溶媒40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルタ−を用いて濾過し、磁性層塗布液及び非磁性層塗布液をそれぞれ調製した。
【0069】
[バック層形成用塗布液の調製]
実施例及び比較例で使用したバック層形成用成分は下記の通りである。尚、第1バック層の結合剤及びカーボンブラックの部数は、表1に、第2バック層の結合剤の部数は、表2に示した。
Figure 2004094988
【0070】
Figure 2004094988
【0071】
上記各塗布液の成分を連続ニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフイルターを用いて濾過し、各バック層形成用塗布液を調製した。
【0072】
【表1】
Figure 2004094988
【0073】
【表2】
Figure 2004094988
【0074】
(磁気記録媒体の作製)
上記非磁性層塗布液を、乾燥後の厚さが2.2μmになるように、更にその上に上記磁性層塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.25μmになるように、厚さ6μmで中心線表面粗さが0.001μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に同時重層塗布を行った。磁性層及び非磁性層を同時塗布後、両層が湿潤状態にあるうちに0.6Tの磁力を持つ希土類磁石と0.3Tのソレノイド磁石により配向させ、乾燥させた後、支持体の反対側に前記2種のバック層形成用塗布液を用いて第1バック層の厚さが0.5μm、第2バック層の厚さが所定の厚さとなるように同時重層塗布によりバック層を塗布した(尚、比較例3は第1バック層のみを用い0.5μm厚で形成した。)。バック層乾燥後、ロール構成がMMSのカレンダー処理機(温度80℃、速度150m/分、線圧250kN/m(260Kg/cm)に通してカレンダー処理をした。
カレンダー処理後、サ−モ処理を施すことなく、1/2吋幅にスリットし、磁気テ−プを製造した。
【0075】
[押し込み硬さとヤング率の測定]
得られた磁気テープについて、バック層の押し込み硬さとヤング率を測定した。
【0076】
(測定装置)
測定装置として、(株)エリオニクス製超微小押し込み硬さ試験機(型式ENT−1100a)を用いた。主な装置仕様は下記の通りである。
・荷重発生方式:電磁力式
・圧子:三角錐圧子、刃角度65°、稜間角115゜、ダイヤモンド製
・荷重範囲:2mgf〜100gf(19.6μN〜0.98N)
・荷重分解能:0.2μN
・変位測定方式:圧子の動きを静電容量式に検知
・変位範囲:〜20μm
・変位読取分解能:0.3nm
【0077】
(測定条件)
上記各磁気テープを5mm×5mmにカットし、アルミニウム製の、専用の測定試料台に接着剤で固定し、乾燥固定後、測定環境に約30分放置して馴染ませた後測定した。測定条件は下記の通りである。
・ 上記角磁気テ−プを5mm×5mmにカットし、CF5(ノビナイト、鋳物)製の専用の試料台に瞬間接着剤(アロンアルファ)で固定し、乾燥固定後、測定環境に約30分放置した後測定した。
・試験荷重:6mgf(58.8μN)
・分割数:100
・ステップインタ−バル:100msec
・負荷のかけ方:10秒かけて6mgfまで連続的に増加させた後、6mgfにて1秒間保持し、その後10秒かけて除荷した。
・測定環境:温度28±0.1℃
・測定n数:バック面の9箇所を測定し、ノイズの入ったデ−タ−、最大変位の大きいデ−タ−、最大変位の小さいデ−タ−を除き、中間の5個のデ−タ−を用いた。
【0078】
押し込み硬さとヤング率の求め方は、前記方法によった。結果を下記表3に示す。
(評価)
1)ミッシングパルス
IBM社製LTOドライブを用い、Bit長0.27μmの密度で記録した際の再生パルスが平均信号振幅の半分の35%以下(0.5×0.35%)の時ミッシングパルスとする。
ミッシングパルスは、実用上、3個以下/mである。
◎ 2個以下/m
○ 2〜3個/m
× 3個以上/m
【0079】
2)ヘッド汚れ
テ−プを40℃×80%RH×7日間保存後、IBM社製LTOドライブを用い、1000パス走行させた後、ヘッドを微分干渉顕微鏡で、倍率100倍で観察し、下記のように評価した。
◎ ヘッドのギャツプ部に汚れが観察されない。
○ ヘッドのギャツプ部に汚れが少し見られるが実用可である。
× ヘッドのギャツプ部に汚れが見られる
【0080】
3)磁性面への突起写り
原子間力顕微鏡AFM(SII社製SPA500)を用い、磁性面の突起分布を測定し、凹部を凸部へ画像をインバ−トして評価した。基準面からの50nm以上の突起高さを下記のように評価した。突起高さは中心面(平面と粗さ曲面で囲まれた体積が平面に対し上下で等しくかつ最小になる平面)を基準面とした高さと定義した。
◎ 25個以下/100μm×100μm
○ 26〜50個/100μm×100μm
× 51個以上/100μm×100μm
4)バック面のRa
原子間力顕微鏡AFM(SII社製SPA500)を用い、バック面90μm×90μmの測定面積から求めた。
【0081】
【表3】
Figure 2004094988
【0082】
上表より、実施例は、ヘッド汚れがなく、磁性面への突起の写りも少なく、DO及びエラーレートが少ないことが分かる。比較例3は、押し込み硬さ及びヤング率を満たすが、バック層構成が単層であるために実施例に比べて全ての評価で劣る。また、比較例1及び2のようにバック層構成が重層であっても押し込み硬さおよび/またはヤング率が本発明外であると実施例に比べて評価が低くなる。
【0083】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気記録媒体ではバック層を複層化すると共にバック層極表面の押し込み硬さとヤング率を制御することにより、サーモ処理を施さなくともバック層からのデブリス発生が抑制されるので、ヘッド汚れを改善することが出来、また磁気記録媒体の熱変形が減少するために、並びに磁性面へのバック面突起の写りが抑制されるために、電磁変換特性を向上させることができると共に製造コストの低下に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる圧子の形状を説明するための図である。
【図2】押し込み硬さとヤング率の定義を説明するための図である。

Claims (1)

  1. 支持体の一方の面上に下層非磁性層と上層磁性層を設け、該支持体の他方の面上にバック層を設けてなる磁気記録媒体において、
    前記バック層は重層構成であって、
    三角錐状で、尖端部の曲率半径が100nm、刃角度が65°、稜間角が115°の形状を有するダイヤモンド圧子を、荷重6mgf(58.8μN)で前記バック層に押し込んだときの負荷除荷曲線における下記(1)式で定義される押し込み硬さ(DH)が25〜95Kg/mm(245〜931MPa)であり、かつ下記(2)式で定義されるヤング率(W)が500〜1500Kg/mm(4.9〜14.7GPa)であることを特徴とする磁気記録媒体。
    Figure 2004094988
    (但し、Pmaxは最大荷重、Hmaxは圧子の最大変位量である)
    Figure 2004094988
    (但し、Hは除荷曲線の最大変位における接線の荷重0での変位、dP/dHは除荷曲線の最大変位における接線の傾きである。)
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JP2006134497A (ja) * 2004-11-08 2006-05-25 Hitachi Maxell Ltd 磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006134497A (ja) * 2004-11-08 2006-05-25 Hitachi Maxell Ltd 磁気記録媒体の製造方法および磁気記録媒体
JP4537179B2 (ja) * 2004-11-08 2010-09-01 日立マクセル株式会社 磁気記録媒体の製造方法

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