JP2006039221A - 電子写真用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】 長期間の連続的な画像形成および高温高湿下での画像形成において、帯電性能の変動が非常に少なく、帯電性能の低下などによる地肌カブリを発生がなく、高い画像濃度および高画質品位を有する画像を形成できる電子写真用トナーを提供する。
【解決手段】 酸価が5〜15mgKOH/gの結着樹脂、サリチル酸金属錯体、着色剤および離型剤を用いてトナーを製造するにあたり、結着樹脂由来の炭素原子およびサリチル酸金属錯体由来の金属原子のヘリウム大気圧マイクロ波誘導プラズマによる発光電圧の3乗根分布を、常圧または大気圧空間2、一端が空間2内に挿入されるキャピラリチューブ3、マイクロ波源4、キャビティ5、石英製反応管6、排気手段7、分析手段8および信号検出部9を含む微粒子測定装置1による測定値から求め、最小2乗法で近似した近似直線のばらつきを示す絶対偏差が0.08以下になるようにする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子写真用トナーに関する。
従来から、電子写真方式、静電印刷方式などを利用した画像形成装置が、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などに汎用されている。たとえば、電子写真方式の画像形成装置によれば、像担持体として表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、該感光体上に種々の作像プロセスにて画像情報に基づく静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像器から供給されかつトナーを含む現像剤により現像して可視像とし、この可視像を紙などの記録材に転写した後、現像ローラによって加熱および加圧し、記録材に定着させることにより、記録紙上に画像が形成される。
このような画像形成装置では、像担持体上に形成される静電潜像を可視化するために、トナーが用いられる。そして、トナーを用いる乾式現像法としては、パウダークラフト法、カスケード法、磁気ブラシ法などの摩擦帯電による現像方法が一般的である。これらの中でも、現像操作の制御が容易で、高画質品位を有する記録画像が得られることから、磁気ブラシ法が広く利用されている。磁気ブラシ法には、磁性物質を含むトナーのみによって磁気ブラシを形成して現像を行う一成分現像方法、トナーとキャリアと呼ばれる磁性粒子とを含む二成分現像剤によって磁気ブラシを形成し、現像を行う二成分現像方法とがあり、いずれも、磁気ブラシ上で所定電荷が付与されるトナーが感光体上の静電潜像へクーロンカによって移行して付着し、現像が行われる。トナーは、結着樹脂中に着色剤を分散させたものであり、結着樹脂としては、たとえば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの、適度な検電性と結着性とを備える各種合成樹脂が使用され、着色剤としてはカーボンブラック、有機系着色剤、無機系着色剤などが使用される。
摩擦帯電による現像方法では、画像劣化を伴うことなく、ほぼ一定の画質品位を有する画像を長期的にかつ安定的に形成するために、トナーには、現像器に補給されると直ぐに適正帯電量に達すること、さらに、長期間連続的に画像を出力する際に、摩擦撹拌が継続されても、過剰な電荷を蓄積せず、必要以上に電荷を放出せず、帯電量の変動が少ないことなどが望まれる。また、トナーには、様々な環境下において、特に湿度の高い環境下においても、トナーの帯電性能が劣化することなく、長期的に安定した帯電性能を示すことが要求される。
帯電性能の経時変化が少なく、帯電性能が安定したトナーを得るために、トナーに、含金属アゾ染料、サリチル酸の金属錯体、4級アンモニウム塩などの帯電制御剤を添加することが一般的に行われている。しかしながら、これらの帯電制御剤は、結着樹脂中での分散性が充分ではないので、長期間連続的に複写などの画像形成を行うと、帯電性能の変動が顕著になり、画質品位にばらつきのある画像が得られる場合がある。
従来技術の問題に鑑み、帯電制御剤の結着樹脂中での分散性、トナーの帯電性能の安定性などを向上させるために、種々の提案がなされている。
たとえば、少なくとも結着樹脂とクロム原子を含む金属錯化合物(帯電制御剤)とからなるトナーを含有する現像剤であって、該現像剤を大気圧マイクロ波誘導プラズマに導入し、クロム原子および炭素原子を励起・発光させ、その発光強さを経時測定して得られる現像剤中のクロム原子と炭素原子との発光スペクトルから求められるクロム原子と炭素原子との分散状態を示す近似直線に対する誤差の絶対偏差が0.3以下である静電潜像現像用現像剤が挙げられる(たとえば、特許文献1参照)。
また、少なくとも結着樹脂と金属錯化合物(帯電制御剤)と着色剤とからなるトナー粒子および外添剤を含有するトナーであって、該トナーの個数平均粒径および体積粒径平均は体積平均粒径/個数平均粒径≦1.2の関係を有し、トナー粒子の帯電量Aおよびトナーの帯電量BはB/A≦1.2の関係を有し、かつ、トナー粒子の結着樹脂由来の炭素原子に起因する発光電圧Xおよび金属錯化合物由来の元素に起因する発光電圧Yは、XとYの原点を通る直線に一次回帰したときの各元素の絶対偏差が0.08より小さく、Y=0の直線上に存在する粒子に由来するXの総計がその他の粒子にその他の粒子に由来するXの総計に対して5%以下であるという関係を有することを特徴とする静電潜像現像用トナーが挙げられる(たとえば、特許文献2参照)。
これらの従来技術は、帯電制御剤として金属錯化合物を含有するトナーをプラズマにより励起し、トナー由来の炭素原子および金属錯化合物由来の原子を発光させ、それぞれの発光強度が一次関数の関係になり、かつそれぞれの発光強度の絶対偏差が一定値より小さくなるように調整することによって、帯電制御剤の結着樹脂中での分散性を向上させ、帯電安定性の優れたトナーを得ようとするものである。これらの従来技術によれば、帯電制御剤の結着樹脂中での分散性が向上し、長期間連続的に画像形成を行う場合の、トナーの帯電安定性は改善されるけれども、高温高湿下でのトナーの帯電安定性を向上させることはできない。
また、トナーの帯電安定性は、結着樹脂の酸価によっても影響を受ける。結着樹脂の酸価が大きすぎると、湿度変化に伴うトナー粒子表面の水分増減によって、トナーの流動性が変動し、その帯電性能が大きく低下し、トナーが充分に帯電できなくなる。その結果、像担持体上の現像領域における、静電潜像以外の部分(非画像部)にトナーが付着する、地肌カブリという現象を起こし易くなる。地肌カブリは、画像の画質品位を低下させるとともに、トナー消費量を増大させる。さらに、トナーが画像形成装置内部で飛散し、装置内部を汚染するという不都合も生じる。また、結着樹脂の酸価が小さすぎると、トナーの帯電性能が不充分になり、帯電制御剤、着色剤などの結着樹脂中での分散性が低下するので、長期間連続的に画像を形成する場合に、トナーの帯電性能が不安定になり、種々の画像欠陥を生じることがある。さらに、トナー同士の融着、トナーの現像ローラへの融着などを防止するために、帯電制御剤、着色剤などとともにトナーに内添される離型剤を結着樹脂中へ分散させることが困難になり、離型剤がトナー表面に必要以上に浸出し、像担持体などを汚染する。加えて、一成分現像方式ではトナーの帯電部材への融着、二成分現像方式ではトナーのキャリア表面への融着などを起こす。これによって、特に長期的に使用する場合に、トナーの帯電不良ひいては地肌カブリが起こり易くなる。なお、結着樹脂の酸価が適正な範囲にあっても、単に上記の従来技術の方法を採用するだけでは、高温高湿下でのトナーの帯電安定性を向上させることはできない。
一方、サリチル酸およびその誘導体を配位子とし、かつジルコニウムを中心原子とするジルコニウム化合物を、静電荷像現像用トナーの電荷制御剤として用いることは公知である(たとえば、特許文献3)。しかしながら、特許文献3は、ヘリウム大気圧マイクロ波誘導プラズマに導入し、炭素原子およびサリチル酸金属錯体に由来する原子を励起・発光させる際の、炭素原子およびジルコニウム化合物による発光電圧を特定の関係に規定することおよびそれによって得られる格別の効果について、記載も示唆もない。
特開2001−13719号公報 特開2002−189309号公報 国際公開第99/12941号パンフレット
本発明の目的は、長期間の連続的な画像形成においても帯電性能が安定し、地肌カブリなどの発生がほとんどなく、高い画像濃度を有する画像を形成することができ、さらに、高温高湿下においても帯電性能が低下することがなく、地肌カブリ、画像形成装置内での飛散による装置内汚染などが生じない電子写真用トナーを提供することである。
本発明は、結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤を含み、結着樹脂の酸価が5〜15mgKOH/gでありかつ帯電制御剤がサリチル酸金属錯体である電子写真用トナーにおいて、
該トナーをヘリウム大気圧マイクロ波誘導プラズマに導入し、炭素原子およびサリチル酸金属錯体に由来する原子を励起・発光させたとき、トナー粒子毎に得られる炭素原子による発光電圧の3乗根に対するサリチル酸金属錯体に由来する金属原子による発光電圧の3乗根の分布を最小2乗法で近似した近似直線のばらつきを示す絶対偏差が0.08以下であることを特徴とする電子写真用トナーである。
また本発明の電子写真用トナーは、前述のサリチル酸金属錯体の中心原子がジルコニウムであることを特徴とする。
さらに本発明の電子写真用トナーは、前述の結着樹脂100重量部に対して、前述の帯電制御剤0.5〜3重量部を含有することを特徴とする。
さらに本発明の電子写真用トナーは、前述の結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする。
さらに本発明の電子写真用トナーは、有彩色を有するフルカラートナーとして用いられることを特徴とする。
本発明によれば、酸価が5〜15mgKOH/gである結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤としてサリチル酸金属錯体を含む電子写真用トナーにおいて、該トナーをヘリウム大気圧マイクロ波誘導プラズマ中で励起・発光させたときの、炭素原子由来の発光電圧とサリチル酸金属錯体由来の発光電圧とが特定の関係にある場合に、長期間の連続的な画像形成および高温高湿下での画像形成のいずれの場合において、帯電性能の変動が著しく少なく、帯電性能が低下することがない電子写真用トナーが得られる。
したがって、本発明の電子写真用トナーによれば、通常の画像形成時は勿論のこと、長期間の連続的画像形成時、高温高湿下での画像形成時などにおいても、地肌カブリなどの画質に悪影響を及ぼす現象、画像形成装置内の汚染などを起こすことなく、一定の高い画質品位を有しかつ画像濃度の高い画像を安定的に形成することができる。
また本発明によれば、サリチル酸金属錯体の中でも、中心原子がジルコニウムであるものが好ましい。ジルコニウムを中心原子とするサリチル酸金属錯体を用い、かつ発光電圧の関係を本発明に規定されるように調整することによって、該サリチル酸金属錯体の結着樹脂中での分散性がさらに向上し、得られる電子写真用トナーの帯電性能が一層安定化される。
また本発明によれば、本発明の電子写真用トナーにおいて、結着樹脂100重量部に対して、帯電制御剤0.5〜3重量部を使用することによって、長期的な連続的画像形成時および高温高湿下での画像形成時における帯電安定性に特に優れる電子写真用トナーが得られる。
また本発明によれば、本発明の電子写真用トナーにおいて、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いることによって、使用初期においても地肌カブリなどが発生せず、長期間の連続的画像成形においても画質劣化のない、画質品位の高い画像を安定的に形成することができる。加えて、フルカラー用のカラートナーとした場合に、彩度、二次色再現性などの高い、好適なフルカラー画像を形成することができる。
また本発明によれば、本発明の電子写真用トナーは、フルカラー用のカラートナーとして用いるのに特に適している。
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂、サリチル酸金属錯体、着色剤および離型剤を含むものであり、これをヘリウム大気圧マイクロ波誘導プラズマに導入し、結着樹脂に由来する炭素原子およびサリチル酸金属錯体に由来する金属原子を励起して発光させ、その際にトナー粒子毎に得られる炭素原子の発光電圧の3乗根に対する、トナー粒子毎に得られる金属原子の発光電圧の3乗根の分布を、最小2乗法で近似した近似直線のばらつきを示す絶対偏差が0.08以下である。
すなわち、本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂に由来する炭素原子および帯電制御剤に用いられるサリチル酸金属錯体に由来する金属原子を含有する。このようなトナー粒子をプラズマに導入し、その発光強度を測定することにより、トナー粒子中の帯電制御剤の分散状態を分析することができる。
発光強度の測定には、たとえば、図1に示す微粒子測定装置1が用いられる。図1は、微粒子測定装置1の構成を模式的に示す側面図である。微粒子測定装置1は、常圧CDV装置のような常圧または大気圧の空間2と、サンプルガス(SG)を採取するために一端が空間2内に挿入されるキャピラリチューブ3と、マイクロ波源4と、マイクロ波源4からマイクロ波が導入されるキャビティ5と、石英製反応管6と、排気手段7と、分析手段8と、信号検出部9とを含んで構成される。
常圧または大気圧の空間2には、トナー粒子を含むサンプルガス(SG)が存在する。
反応管6は、キャビティ5内を貫通するように設けられ、その一端がキャピラリチューブ3に接続されるとともに、キャリアガス(CG)を導入するキャリアガス導入部6aが設けられ、他端には検出窓6bおよびガス排出部6cが設けられる。ここで、キャリアガス(CG)には、ヘリウムが用いられる。
排気手段7は、反応管6のガス排出部6cに接続され、ガス排出部6cを介して反応管6内を真空吸引し、減圧状態にする。
分析手段8は、検出窓6bに向けて設けられ、検出部8aを備える。サンプルガス(SG)中の微粒子を定性分析または定量分析する。ここでは、分光分析器が用いられる。検出部8aは、光電子増倍管である。
信号検出部9は、前置増幅器9aと、A/D変換器9bと、マイクロプロセッサを用いた演算処理回路9cとを含む。
微粒子測定装置1では、排気手段7により反応管6内を原子化および/またはイオン化が可能な程度に減圧し、キャリアガス導入部6aから反応管6内にヘリウムガスを、またマイクロ波源4からマイクロ波をそれぞれ導入してプラズマを生成させるとともに、キャピラリチューブ3から常圧下のサンプルガス(SG)を導入し、サンプルガス(SG)に含まれる微粒子(トナー)により反応管6内に発生するイオンの発光スペクトルをインラインにて分析手段8によって分析することにより、微粒子(トナー)の定性・定量分析を行うことができる。なお、測定時の、微粒子測定装置1の内部圧は750torr(約9.999×10Pa)、ヘリウムガス導入量は450ml/分である。その他の値は測定時に自動設定される。
微粒子測定装置1によれば、たとえば、トナー粒子中にサリチル酸金属錯体が含まれる場合、結着樹脂に由来する炭素原子およびサリチル酸金属錯体に由来する金属原子(A)の発光スペクトルを得ることができ、それによって、該トナー粒子中の結着樹脂およびサリチル酸金属錯体の量を定量することができる。もしトナー粒子中に金属原子(A)を含む化合物が存在せず、トナー粒子と金属原子(A)とがサンプルガス中に別個に存在すれば、炭素原子と金属原子(A)はそれぞれ別々に発光するので、時間軸に対してずれのある非同期発光スペクトルになる。トナー粒子中にサリチル酸金属錯体が含まれると、炭素原子と金属原子(A)とは同時に発光するので、時間軸に対してずれのない同期発光スペクトルになる。微粒子測定装置1は、元素の原子数(質量)に比例する信号を検出し、原子数の三乗根は粒径に比例し、さらに三乗根電圧は粒径に比例する大きさになるので、同期発光スペクトルの強さから、トナー粒子1個当たりの炭素原子の原子数および金属原子(A)の原子数を三乗根電圧として求めることができる。
そこで、一度に多量の試料を解析し、X軸を炭素原子の同期発光スペクトルの三乗根電圧、Y軸を金属原子(A)の同期発光スペクトル三乗根電圧とする分布図において、最小2乗法によって計算された原点を通る直線を引くことができる。この直線がトナー粒子中の金属原子(A)を含む化合物の内包状態を表す近似直線である。
該近似直線に対する誤差は、誤差値x=d/H(dはデータ点から近似直線におろす垂線の長さ、Hは近似直線と垂線の交点からX軸への垂線の長さ)で求められ、この誤差の絶対偏差の値は、1/n(Σ|x−x’|)(nは誤差データの個数、x’は誤差データの平均値)で求められる。もし、サリチル酸金属錯体の分散が不充分で、トナー粒子毎に含まれるサリチル酸金属錯体の量の差が大きければ、サリチル酸金属錯体に由来する金属原子(A)の発光強度のばらつきが大きくなり、絶対偏差も大きくなる。絶対偏差が0.08よりも大きいと、サリチル酸金属錯体のトナー粒子中での分散状態が悪くなり、長期間の連続的な画像形成において、トナーの帯電安定性が低下し、ほぼ一定の画質品位を有する画像を安定的に得ることができない。また、高温高湿下において、トナーが帯電不良になり、地肌カブリなどが生じる。この絶対偏差値は0.08よりも少なければ少ないほど好ましい。
なお、微粒子測定装置1は公知であり、たとえば、特公平7−54294号公報に記載されている。また、市販品も知られており、たとえば、パーティクルアナライザPT−1000(商品名、横河電機(株)製)などが挙げられる。
さらに、微粒子測定装置1による測定値に基づき、本発明に規定の絶対偏差値を求めるソフトが市販されている。したがって、本発明では、測定値に基づいて計算により絶対偏差値を求めてもよいし、また市販ソフトを用いて絶対偏差値を求めてもよい。市販ソフトの具体例としては、たとえば、トナー解析ソフト・バージョン2.00(商品名、横河電機(株)製)などが挙げられる。
以下、本発明の電子写真用トナーに含まれる成分について説明する。
(a)結着樹脂
結着樹脂は、酸価が5〜15mgKOH/gである。酸価が5mgKOH未満では、トナーに含まれる着色剤および帯電制御剤の分散性が不充分になり、トナーの帯電安定性が低下し、ほぼ一定の画質品位を有する画像を安定的に得ることができない。また、本発明トナーをカラートナーとして用いる場合には、着色剤の分散性がトナーの分光特性に影響を及ぼし、着色剤の分散性の低下は、彩度および画像濃度の低下をもたらす。また、トナー表面に離型剤が浸出し、ドラム表面を汚染し、一成分現像方式における帯電部材への融着、二成分現像方式におけるキャリア表面への融着などを起こす。その結果、長期間の使用によってトナーの帯電不良が生じ易くなり、地肌カブリなどが生じる。一方、15mgKOH/gを超えると、トナーの吸湿性が高くなり、常湿下でもトナーの水分量が大きくなり、帯電量が低下して地肌カブリなどが発生し易くなる。なお、酸価は、JIS K0070に規定の方法に従って測定した。
結着樹脂は、酸価が5〜15mgKOH/gであれば特に制限なく、この分野で常用されるものを使用できるけれども、その中でも、ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリエステル樹脂は、他の結着樹脂よりも比較的に高い帯電性能を有し、特にトナーとしての使用初期において、地肌カブリなどの発生を少なくすることができるので、使用初期から高画質品位の画質を得ることができるという利点がある。また、帯電制御剤と組み合わせて用いることにより、高い帯電性能を維持できるので、長期間の連続的な画像形成においても、画像劣化の無い高画質品位の画像を継続的にかつ安定的に得ることができる。また、ポリエステル樹脂は優れた透明性を有するので、本発明のトナーをカラートナーに用いる場合でも、得られる画像の彩度、二次色再現性などに悪影響を及ぼすことがない。
ポリエステル樹脂としては、この分野で常用されるものを使用できるけれども、たとえば、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とから合成されるポリエステル樹脂が好ましい。
多価アルコール成分としては公知のものを使用でき、たとえば、2価アルコール類、3価以上の多価アルコール類などが挙げられる。2価アルコール類としては、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。また、3価以上の多価アルコールは、たとえば、テトラヒドロフラン不溶分が発生しない程度にポリエステル樹脂を非線状化するため用いられる。3価以上の多価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。多価アルコール成分は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
多価カルボン酸成分としては公知のものを使用でき、たとえば、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸などのアルキルコハク酸などの2塩基性カルボン酸、それらの酸無水物、それらのアルキルエステルなどが挙げられる。多価カルボン酸成分は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
(b)電荷制御剤
帯電制御剤としては、サリチル酸の金属錯体が用いられる。サリチル酸の金属錯体は、化合物として安定であり、トナーに良好な帯電安定性を付与できるという利点を有する。さらに、単色または無色であり、トナーによって形成される画像の色彩に与える影響が少ないので、本発明のトナーをカラートナーとして用いる場合に特に適している。
このようなサリチル酸の金属錯体の中でも、錯体中心原子であるジルコニウムにサリチル酸が配位した、サリチル酸ジルコニウム錯体が好ましい。サリチル酸ジルコニウム錯体は、環境安全性、結着樹脂中での分散性、化合物としての安定性などに優れ、トナーに極めて良好な帯電安定性を付与することができ、しかもトナーの逆性帯電を防止することができる。
サリチル酸ジルコニウム錯体としては公知のものを使用でき、たとえば、一般式(1)
Figure 2006039221
〔式中、Rは同一または異なって、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアラルキルオキシ基、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基またはシアノ基を示す。Rは水素原子またはアルキル基を示す。lは1〜20の整数、mは0または1〜20の整数、nは0または1〜20の整数、qは0または1〜4の整数、rは1〜20の整数をそれぞれ示す。〕
で表わされるサリチル酸ジルコニウム錯体(1)が挙げられる。
サリチル酸ジルコニウム錯体(1)は、サリチル酸およびその誘導体と、ジルコニウム化合物と反応させることにより製造できる。サリチル酸およびその塩としては、たとえば、サリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸メチルエーテル、3−t−ブチル−5−メチルサリチル酸メチルエーテル、3,5−ジクロロサリチル酸、5−メトキシサリチル酸、3,5−ジ−イソプロピルサリチル酸などが挙げられる。さらに、これらの塩を用いることもできる。ジルコニウム化合物としては、たとえば、ZrCl、ZrF、ZrBr、ZrIなどのハロゲン化ジルコニウム化合物、Zr(OR)(式中Rはアルキル基またはアルケニル基を示す。)、Zr(SOなどの無機ジルコニウム化合物、ZrOCl、ZrOCl・8HO、ZrO(NO、ZrO(ClO、HZrO(SO、ZrO(SO)・NaSO、ZrO(HPOなどの無機酸ジルコニウム化合物、ZrO(CO)、(NHZrO(CO、(NHZrO(C、ZrO(C1835などの有機酸ジルコニウム化合物などが挙げられる。Zr(OR)はジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルケニルオキシドなどであり、たとえば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムブトキシドなどが挙げられる。
サリチル酸およびその誘導体とジルコニウム化合物との反応は、好ましくは水中またはトルエンなどの適当な有機溶媒中にて、50℃前後の温度下に行われる。有機溶媒中で実施する場合には、還流下に反応を行うこともできる。
反応混合物にpH調整、濃縮などを施すことにより、反応混合物中にサリチル酸ジルコニウム錯体(1)が析出する。このサリチル酸ジルコニウム錯体(1)は、たとえば、ろ過、水洗、乾燥などの一般的な分離精製手段により、反応混合物中から容易に単離精製できる。
サリチル酸ジルコニウム錯体(1)は公知の化合物であり、たとえば、国際公開WO99/12941号パンフレットなどに記載される。
サリチル酸金属錯体は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
本発明電子写真用トナーにおけるサリチル酸金属錯体の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。0.5重量部未満では、トナーに充分な帯電安定性を付与できない可能性がある。一方、3重量部を超えると、結着樹脂中での分散が不充分になり、長期的な使用において帯電安定性が不充分になり、ほぼ一定の高画質品位を有する画像を安定的に得ることができないおそれがある。さらに、トナー表面における帯電制御剤の存在量が増加するので、高湿下において帯電不良が生じ、地肌カブリなどが発生し易くなるおそれがある。また、本発明のトナーをカラー用にする場合、トナー表面における帯電制御剤の存在量が多いとすると、トナーの透明性ひいては彩度および二次色、三次色などの発色が低下する。
なお、本発明電子写真用トナーの好ましい特性を損なわない範囲で、サリチル酸金属錯体とともに、公知の負帯電性帯電制御剤の1種または2種以上を用いることができる。
(c)着色剤
着色剤として、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
イエロートナー用着色剤としては公知のものを使用でき、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17などのアゾ系顔料、黄色酸化鉄、黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。これらの中でも、色味などを考慮すると、C.I.ピグメントイエロー17などのベンジジン系アゾ系顔料が好ましい。
マゼンタトナー用着色剤としても公知のものを使用でき、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、C.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。これらの中でも、色味などを考慮すると、C.I.ピグメントレッド122などのキナクリドン系顔料が好ましい。
シアントナー用着色剤としても公知のものを使用でき、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー 25、C.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。これらの中でも、色味を考慮すると、C.I.ピグメントブルー15などの銅フタロシアニン顔料が好ましい。
ブラックトナー用着色剤としても公知のものを使用でき、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
着色剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
着色剤の本発明電子写真用トナーにおける使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して、1〜10重量部である。着色剤をこの範囲で用いることによって、トナーの各種物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
(d)離型剤
離型剤としては、この分野で常用されるワックスを使用できる。ワックスの具体例としては、たとえば、動物由来の蜜蝋、鯨蝋、セラック蝋、植物由来のカルナバ蝋、木蝋、米糠蝋(ライスワックス)、キャンデリラワックス、石油由来のパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、鉱物由来のモンタンワックス、オゾケライトなどの天然ワックス、また合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワック(エステル、ケトン類、アミド)、水素化ワックスなどの合成ワックスが挙げられる。ワックスは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ワックスの本発明電子写真用トナーにおける使用量は特に制限されないけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して1〜10重量部である。
上記絶対偏差値を有する本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂の種類、電荷制御剤であるサリチル酸の金属錯体の種類および使用量、着色剤の種類および使用量などを適宜選択することによって製造できる。特に、電荷制御剤の種類および使用量とともに、着色剤としてカラートナー用の着色剤の中から適宜選択したものを用いることによって、上記絶対偏差値を有する本発明のトナーを容易に製造できる。
本発明の電子写真用トナーの製造に際しては、公知の方法を採用できるけれども、帯電制御剤その他の添加剤の結着樹脂中への分散が比較的容易な粉砕法が好ましい。粉砕法によれば、結着樹脂および着色剤、電荷制御剤、離型剤などの添加剤を乾式ブレンダ、ヘンシェルミキサ、ボールミルなどの一般的な混合機によって均質に予備混合し、得られる原料混合物を二軸押出機、一軸押出機などの一般的な混練機によって均一に混練し、この混練物を冷却固化して粉砕し、必要に応じて分級することによって、本発明の電子写真用トナー粒子を製造することができる。
上記の粉砕法において、原料混合物を溶融混練する際に、混練機としてオープンロール型混練機を用いるのが好ましい。このオープンロール型混練機では、互いに向かい合って配置される2つのロール間のギャップ幅は、原料混合物の供給側から排出側に向かって徐々に狭くなるように形成される。このようにギャップを形成することにより、ロールから原料混合物に作用する圧縮力が、供給側から排出側に向かって大きくなるため、得られた混練物の添加剤の分散性が良くなるという効果がある。
本発明の電子写真用トナーの粒径は特に制限されないけれども、好ましくは、平均粒径3μm〜15μmである。画質を向上させ、高画質品位の画像を得るためには、平均粒径が9μm以下の小粒径トナーが好ましく、5μm〜8μmの小粒径トナーがさらに好ましい。
本発明の電子写真用トナーには、外添剤を添加することができる。外添剤としては、たとえば、流動化剤が挙げられる。流動化剤は、たとえば、トナーの搬送性、帯電性トナーを二成分現像剤にする場合のキャリアとの撹拌性などを向上させるために用いられる。流動化剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化アルミ粉末、酸化チタン粉末、微粉末シリカなどの無機微粒子、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、脂肪酸金属塩、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの有機微粒子、これらの疎水化処理物などが挙げられる。これらの中でも、疎水化処理を施した無機微粒子が好ましい。流動化剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。2種以上併用する場合の具体例としては、疎水化処理された無機微粒子の1種または2種以上と、有機微粒子の1種または2種以上との組み合わせが挙げられる。流動化剤の使用量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくはトナー粒子100重量部に対して0.1〜3重量部である。トナー粒子と流動化剤とは一般的な混合機により混合され、トナー粒子表面に流動化剤を付着させた後、篩などによって凝集物、異物などを除去することにより、流動化剤を含む本発明の電子写真用トナーが得られる。
本発明の電子写真用トナーは、一成分現像剤および二成分現像剤として使用できる。一成分現像剤、たとえば、非磁性トナーとして用いる場合には、ブレードおよびファーブラシを用い、現像スリーブでトナーを摩擦帯電させてスリーブ上に付着させて搬送することにより、感光体表面の静電潜像にトナーを供給することができる。
また、二成分現像剤として用いる場合には、本発明の電子写真用トナーとともに、キャリアを用いる。ここでキャリアとしては特に制限されず、この分野で常用されるものを使用できるけれども、キャリアの芯材上に樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアが好ましい。
キャリアの芯材としては、たとえば、鉄、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト、マグネタイトなどの磁性酸化物、ガラスビーズなどが挙げられる。芯材の形状は、球状であることが好ましい。また芯材の粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜100μmである。
被覆樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレンアクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂およびその変性物、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂には、導電材料が含まれていてもよい。該導電材料としては、たとえば、金、銀、銅などの金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などの無機微粒子などが挙げられる。
以下に実施例、比較例および試験例を挙げ、本発明を具体的に説明する。以下において、「部」は「重量部」を意味する。
(実施例1〜2および比較例1〜4)
〔トナーの製造〕
表1に示す酸価を有するポリエステル樹脂(結着樹脂)100部に、キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122、着色剤)6部、ポリプロピレンワックス3部および表1に示す配合量のサリチル酸ジルコニウム錯体(帯電制御剤)をヘンシェルミキサにて前混合し、原料混合物を調製した。なお、サリチル酸ジルコニウム錯体としては、国際公開第99/12941号パンフレットにおける、製造例1に従って製造したものを用いた。
この原料混合物を表1に示す溶融混練機により溶融混練し、得られた混練物を冷却して固化させた。得られた固化物をスピードミルにて粗粉砕し、さらにI型ジェットミルにて粉砕し、さらにエルボージェット分級機にて微粉および粗粉を取り除き、平均粒径6.8μmのマゼンタトナー粒子を製造した。
上記で得られたマゼンタトナー粒子100部に、平均粒径12nmの疎水性コロイダルシリカ0.5部および平均粒径50nmの酸化チタン1.0部を混合して表面処理を行い、本発明および比較例のトナーを製造した。
さらに、平均粒径60μmの銅−亜鉛フェライトキャリアに対して、トナー濃度が4重量%になるように本発明および比較例のトナーを混合し、二成分現像剤を作成した。
〔近似直線〕
ホルダにステンレス鋼製メッシュを載せ、さらにメンブレンフィルタ(商品名、ワットマン(Whatman)社製、フィルタ径25mm、アパーチャ径4μm)を装着して試料台とし、これをトナー吸引装置に装着し、適正量吸引したものを測定用試料とした。この時の適正量とは、1回のスキャンで最も多く検出される原子が500カウントから1000カウントとなる量である。スキャン数は5回とし、1回目のスキャンを除いたデータを結合し、解析を行った。
トナー粒子中の結着樹脂に由来する炭素原子および電荷制御剤に由来するジルコニウム原子のプラズマ中での発光強度の測定には、パーティクルアナライザ(商品名:PT−1000、横河電機(株)製)を用いた。パーティクルアナライザの内部圧は750torr(約9.999×10Pa)、また、パーティクルアナライザへのヘリウムガス導入量は450ml/分とし、その他の値はパーティクルアナライザにより自動設定された。
データの解析には、横河電機(株)製「トナー解析ソフト・バージョン2.00」を用い、同期発光スペクトルデータに基づき、炭素原子からの電圧とジルコニウム原子からの電圧の分布図(X軸が結着樹脂に由来する炭素原子の3乗根電圧、Y軸がサリチル酸ジルコニウム錯体に由来するジルコニウム原子の3乗根電圧)を得、近似直線を得た。近似直線の傾きと近似直線に対する絶対偏差は、同ソフトによって算出した。実施例および比較例で得られたマゼンタトナー粒子の絶対偏差の値を表1に示す。
また、実施例1および比較例1のマゼンタトナー粒子について、炭素原子による3乗根電圧とジルコニウム原子による3乗根電圧との関係を示す同期分布図を、それぞれ、図2および図3に示す。なお、図2および図3において、直線は最小2乗法によって計算された原点を通る近似直線である。
また、実施例1および比較例1のマゼンタトナー粒子について、近似直線を求めたときのジルコニウム原子の絶対偏差およびそのばらつきを、それぞれ、図4および図5に示す。
Figure 2006039221
(試験例1)
実施例1〜6および比較例1〜4で得られた二成分現像剤について、次のようにして、地肌カブリ発生の有無および帯電量を評価した。結果を表2に示し、評価結果を表3に示す。
〔地肌カブリおよび帯電量評価〕
実施例1〜6および比較例1〜4の二成分現像剤を、二成分フルカラー現像装置を有する市販複写機(商品名:ARC150、シャープ(株)製)に充填し、常温常湿下において初期および5%印字画像を20000枚実写後において、地肌カブリおよび帯電量を測定した。さらに、20000枚実写後の二成分現像剤100部に、高温高湿下(35℃/85%)に1日放置したトナー1部を補給し、地肌カブリ、帯電量の測定を行った。なお、このトナーは、最初に充填した二成分現像剤中に含まれるトナーと同じものである。
地肌カブリは、予めX−Rite938(商品名、X−rite社製)にて画像濃度を測定したA4紙に白ベタ画像印字し、X−Rite938にて任意に9点測定し、A4紙自体の画像濃度値との差を求め、平均値を算出した。0.015未満のものを◎、0.015以上、0.025未満のものを○、0.025以上、0.035未満のものを△、0.035以上のものを×と評価した。
帯電量(μC/g)は、マグネットローラ上から採取した二成分現像剤をブローし、吸引式小型帯電量測定装置(q/mメータ、商品名:210HS−2A、Trek社製)により帯電量を測定した。初期、2万枚実写後および2万枚実写+トナー補給後の帯電量を測定し、初期帯電量に対する2万枚実写後、および2万枚実写後に対する2万枚実写+トナー補給後の変化率が5%未満のものを◎、5〜10%のものを○、10〜20%のものを△、20%より大きいものを×と評価した。
なお、初期変化率(%)は、初期帯電量に対する、初期帯電量と2万枚実写後帯電量との差の絶対値の百分率である。補給後変化率(%)は、2万枚実写後帯電量に対する、2万枚実写後帯電量と2万枚実写+トナー補給後帯電量との差の絶対値の百分率である。
Figure 2006039221
Figure 2006039221
表2および3から、実施例1〜6の本発明電子写真用トナーは、帯電制御剤であるサリチル酸ジルコニウム錯体の分散性が良好であるため、長期使用においても帯電量が安定しかつ地肌カブリの発生もないことが明らかである。また、実施例1〜6の本発明電子写真用トナーは、高温高湿下に放置しても、湿度によりその帯電性能が大きな影響を受けることがないので、高温高湿下に放置した後に画像形成装置に補給しても、充分に帯電され、地肌カブリも生じないことが明らかである。
一方、比較例1および3のトナーは、帯電制御剤の分散性が悪いため、長期使用時における帯電性能の安定性に欠け、2万枚実写後では初期に比べ帯電量が低下し、地肌カブリの発生が顕著になった。また、比較例2のトナーは、帯電制御剤の分散は良好なレベルといえるけれども、結着樹脂の酸価が低いことなどに起因し、離型剤がトナー表面に滲出するため、長期使用においてキャリアを汚染し、やはり帯電量の低下を招き、地肌カブリが生じた。比較例4のトナーも、帯電制御剤の分散性は良好であるものの、結着樹脂の酸価が高いため、環境依存性が高く、高湿下において帯電性の劣化が発生し、地肌カブリの発生が顕著になった。なお、比較例1〜3のトナーについても、程度の差はあるが、いずれも高湿下に放置すると、帯電量の低下が起こり、地肌カブリが生じた。
原子の発光強度の測定に用いられる微粒子測定装置の構成を模式的に示す側面図である。 実施例1の電子写真用トナーにおける、炭素原子による3乗根電圧とジルコニウム原子による3乗根電圧との関係を示す同期分布図である。 比較例1の電子写真用トナーにおける、炭素原子による3乗根電圧とジルコニウム原子による3乗根電圧との関係を示す同期分布図である。 実施例1において、近似直線を求めたときのジルコニウム原子の絶対偏差およびばらつきを示す図である。 比較例1において、近似直線を求めたときのジルコニウム元素の絶対偏差およびばらつきを示す図である。
符号の説明
1 微粒子測定装置
2 常圧または大気圧空間
3 キャピラリチューブ
4 マイクロ波源
5 キャビティ
6 石英製反応管
6a キャリアガス導入部
6b 検出窓
6c ガス排出部
7 排気手段
8 分析手段
8a 検出部
9 信号検出部
9a 前置増幅器
9b A/D変換器
9c 演算処理回路

Claims (5)

  1. 結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤を含み、結着樹脂の酸価が5〜15mgKOH/gでありかつ帯電制御剤がサリチル酸金属錯体である電子写真用トナーにおいて、
    該トナーをヘリウム大気圧マイクロ波誘導プラズマに導入し、炭素原子およびサリチル酸金属錯体に由来する原子を励起・発光させたとき、トナー粒子毎に得られる炭素原子による発光電圧の3乗根に対するサリチル酸金属錯体に由来する金属原子による発光電圧の3乗根の分布を最小2乗法で近似した近似直線のばらつきを示す絶対偏差が0.08以下であることを特徴とする電子写真用トナー。
  2. サリチル酸金属錯体の中心原子がジルコニウムであることを特徴とする請求項1記載の電子写真用トナー。
  3. 結着樹脂100重量部に対して帯電制御剤0.5〜3重量部を含有することを特徴とする請求項1または2記載の電子写真用トナー。
  4. 結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真用トナー。
  5. 有彩色を有するフルカラートナーとして用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の電子写真用トナー。
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