JP3962665B2 - 磁性黒色トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、又はトナージェット方式記録法の如き画像形成方法に用いられる磁性黒色トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法としては、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に静電荷潜像を形成し、次いで潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力、加熱圧力或いは溶剤蒸気等により定着し、トナー画像を得るものである。
【0003】
近年においては、複写機及びプリンターの多機能化、コピー画像の高画質化、更に高速化にともない、トナーに要求される性能も一段と厳しくなり、トナーの粒子径としては微粒子化され、粒度分布としては、粗大粒子を含有せず、且つ、超微粉の少ないシャープなものが要求される。
【0004】
トナーの微粒子化により画像の解像力や鮮鋭度を上げることはできても、種々の問題点が生じてくる。
【0005】
トナー粒子径を小さくすることにより、トナーの比表面積が増え、トナー帯電量自体を増大させることは達成されるが、同時に帯電量分布の幅が大きくなり、非画像部にトナーが現像されるカブリを生じ易くなる。また、感光体上から転写材にトナーを転写する際、過剰帯電されたトナーが存在する場合、飛び散りと言った、文字やライン画像の周囲にトナーが飛散する現象が生じる。この飛び散りを抑制する目的で、トナー帯電を十分に行わなかった場合には、帯電不足なトナーが存在する為、現像性の低下やカブリを引き起こしてしまう。
【0006】
更に、トナーの帯電特性がより環境の影響を受け易くなる。このカブリを減らす目的で、トナー粒度分布をシャープにすることも試みられているが、トナー製造上における収率の低下等によるコストアップの要因となってしまう。
【0007】
更に、トナーの微粒子化により、結着樹脂と他の内添剤との分散性が、よりトナー性能に影響を及ぼし易くなる。特に、磁性粉として酸化鉄粒子を有するトナーの場合には、酸化鉄粒子の分散状態により、画像濃度の低下、耐久安定性の低下及び画質低下等の問題を引き起こす場合がある。
【0008】
トナー粒子中の酸化鉄粒子が不均一状態にある場合、トナー粒子表面に析出している酸化鉄粒子の総量が個々に違う為、トナーが帯電付与部材(現像スリーブ)と摩擦帯電する際、トナー表面に酸化鉄粒子が全く無いか、微少の場合、トナー表面の帯電は高くなり、逆にトナー表面に酸化鉄粒子が過剰に存在する場合、酸化鉄粒子がリークサイトとして働き、トナー表面の帯電は低くなる。この様にして、帯電分布の幅が更に拡大し前述した種々問題点の要因となる。
【0009】
トナー粒子中に磁性粉を均一に分散させる為に、磁性粉粒子径を小径化すること及び粒度分布を狭くすることが、特許文献1や特許文献2にて開示されている。確かに、同処置によりトナー中の磁性体分散は均一化されやすくなるが、磁性体の粒子径を微粒子化するが故の問題点も発生してくる。
【0010】
従来、酸化鉄粒子、特に、マグネタイト粒子等FeO(或いはFe(II))を含有する酸化鉄粒子の黒色度は、FeOの含有量に左右される。しかし、この酸化鉄粒子中のFeO含有量は製造後の酸化による経時劣化が進むにつれ低下し、その結果、黒色度が劣化すると言う現象を伴う。この経時劣化は、酸化鉄粒子のおかれる環境により大きく左右されることは言うまでも無いが、酸化鉄粒子を微粒子化することにより、黒色度の劣化は促進される。
【0011】
黒色度が高く、且つ耐環境性に優れている酸化鉄粒子を得る為に、従来から各種元素を酸化鉄粒子に添加する技術が開示されている。例えば、特許文献3−4記載のCoを含む複合酸化鉄被覆を有する酸化鉄粒子、特許文献5記載のZnを含む複合酸化鉄被覆を有する酸化鉄粒子、特許文献6記載のMn、Zn、Cu、Ni、Co、Mg等を含む複合酸化鉄を含有する酸化鉄粒子等が挙げられる。
【0012】
これらの添加元素の役割は、FeOが直接外界の雰囲気に触れないように粒子を添加元素酸化物で被覆したり、FeOの代わりに黒色度が低下しないような添加元素酸化物に置き換えることにより、黒色度の劣化を抑制させている。
【0013】
しかし、この様な方法で得られた酸化鉄粒子では、黒色度の低下防止や経時劣化は抑制できるものの、トナー粒子中への均一分散が不十分であり、添加元素によっては、酸化鉄粒子自体の磁気特性に影響を与え、色味以外の現像に関わる欠陥の原因となる場合がある。
【0014】
また、前述の画像形成の工程で、感光体上よりトナー像を転写材に転写した場合、感光体上には、転写残のトナーが存在する。
【0015】
連続した複写を速やかに行う為に、この感光体上の残余トナーをクリーニングしてやる必要がある。更に回収された残余トナーは、本体内に設置した容器又は回収箱へ入れられた後に廃棄されるか、しかる工程をへてリサイクルされる。
【0016】
環境問題への取り組みとしては、廃トナーレスシステムとして本体内部にリサイクルシステムを設けた本体設計が必要となる。
【0017】
しかし、複写機及びプリンターの多機能化、コピー画像の高画質化、更に高速化を達成する為には、かなり大掛かりなリサイクルシステムが本体内に必要となり複写機及びプリンター自体が大きくなってしまい、省スペースの観点からの小型化に対応できない。また、本体内に設置した容器又は回収箱へ廃トナーを収納する方式や、感光体と上記の廃トナーを回収する部分を一体化した方式においても同様に小型化に対応できない。
【0018】
これらに対応する為には、感光体上よりトナー像を転写材に転写する際の転写率を向上させることが必要である。
【0019】
特許文献7において、平均粒子径が0.1〜3μmの転写効率向上剤とBET比表面積50〜300m2/gの疎水性シリカ微粉体を含有させることで、トナー体積抵抗を低減させ、感光体上に転写効率向上剤が薄膜層を形成することにより転写効率を向上させる方法が開示されている。しかし、粉砕法で製造されたトナーには粒度分布が存在する為、全ての粒子に均一に効果を出すことは難しく、更なる改善が必要とされる。
【0020】
転写効率を向上させる方法として、トナーの形状を球形に近づけるものとして、噴霧造粒法、溶液溶解法、重合法と言った製造方法によるトナーが特許文献8−11等により開示されている。しかし、これらのトナー製造には大掛かりな設備を必要とするばかりでなく、トナーが真球に近づくが故のクリーニングに関わる問題等も発生する為、転写性向上のみを目的とした場合には好ましい方法とは言えない。
【0021】
また、画像形成プロセスにて、転写効率を向上させる目的で、転写前帯電(ポスト帯電)を実施することで、余剰な電荷を緩和することにより、転写効率を向上させる方法もある。しかし、磁性黒色トナーの場合、転写効率を向上させる目的でトナー形状を球形に近づけ、転写前帯電(ポスト帯電)を実施することにより、飛び散りが悪化する場合もある。これは、前述した、トナー表面に存在する酸化鉄粒子の割合が、粒子毎に不均一である場合特に顕著である。
【0022】
一般にトナーの製造方法としては、被転写材に定着させる為の結着樹脂、トナーとしての色味を出させる各種着色剤、粒子に電荷を付与させる為の荷電制御剤を原料とし、所謂一成分現像法においては、これらに加えてトナー自身に搬送性等を付与する為の各種磁性材料が用いられ、更に必要に応じて、例えば、離型剤及び流動性付与剤等の他の添加剤を加えて乾式混合し、しかる後、ロールミル、エクストルーダー等の汎用混練装置にて溶融混練し、冷却固化した後、混練物をジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機等の各種粉砕装置により微細化し、得られた微粉砕物を各種風力分級機に導入して分級を行うことにより、トナーとして必要な粒径に揃えられた分級品を得、更に、必要に応じて流動化剤や滑剤等を添加し乾式混合して、画像形成に供するトナーとしている。
【0023】
磁性黒色トナーを転写効率向上を目的として、球形化する方法としては、上述の混練物をジェット気流式粉砕機、機械衝突式粉砕機等の各種粉砕装置により微細化する際に、製造条件を工夫する方法や微粉砕又は分級後に表面改質装置を用いて球形化する方法が挙げられる。
【0024】
但し、ジェット気流式粉砕機を用いる場合には、粉砕条件をソフト粉砕にして、処理量を低下させる必要があり、また、表面改質装置を用いる方法では、トナー生産上、1工程増えることによる生産性の悪化や設備の増加等を考慮する必要がある。これらの点から機械衝突式粉砕機によりトナーを生産することがより好ましい。
【0025】
更に、球形化した微粒子磁性黒色トナーでは、相対的にトナーに含有される個々の材料の相溶性が重要となり、特に、結着樹脂以外では、多量に含有されている磁性体原料である酸化鉄粒子の特性が、現像性に関しても従来以上に厳しい制約を受けることになる。
【0026】
つまり、感光体上の転写残トナー(廃トナー)を減少させる目的で、転写効率を向上させた、高現像性の磁性黒色トナーは実現しないのが現状である。
【0027】
【特許文献1】
特開平3−101743号公報
【特許文献2】
特開平3−101744号公報
【特許文献3】
特開平6−100317号公報
【特許文献4】
特開平8−133744号公報
【特許文献5】
特開平8−133745号公報
【特許文献6】
特開平4−162050号公報
【特許文献7】
特開平9−26672号公報
【特許文献8】
特開平3−84558号公報
【特許文献9】
特開平3−229268号公報
【特許文献10】
特開平4−1766号号公報
【特許文献11】
特開平4−102862号公報
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、廃トナーの発生が少ない、高転写効率の磁性黒色トナーを提供することにある。
【0029】
本発明の目的は、微粒子化に対しても、十分な黒色度を有する磁性黒色トナーを提供することにある。
【0030】
本発明の目的は、微粒子化に対しても、良好な現像性を維持できる磁性黒色トナーを提供することにある。
【0031】
本発明の目的は、画出し環境の影響を受けることの無い、つまり、高温高湿下及び常温低湿下においても良好な現像性を維持できる磁性黒色トナーを提供することにある。
【0032】
本発明の目的は、転写前帯電(ポスト帯電)を含む画像形成プロセスにおいても、カブリ、飛び散りの良好な、高現像性の磁性黒色トナーを提供することにある。
【0033】
本発明の目的は、粉砕法によって安易に製造可能な高生産性の磁性黒色トナーを提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂及び磁性体を有する磁性黒色トナーにおいて、
該トナーの重量平均粒子径X(μm)が5μm乃至12μmであり、
該トナーの3μm以上の粒子において、下記式(1)より求められる円形度(a)の個数基準の円形度分布において、0.900以上の円形度(a)を有する粒子が90個数%以上存在し、平均円形度が0.940〜0.970であり、
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは粒子像の周囲長を示す。〕
該磁性体は、▲1▼平均粒子径が0.10〜0.30μmの酸化鉄粒子であり、▲2▼酸化鉄粒子総量に対して、チタンに換算して0.3〜1.5質量%チタンを含有し、▲3▼粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(B%)との比が下記式(2)を満足し、
0.7≦A/B≦1.0 (2)
トナー粒子表面は、無機微粉体で外添されていることを特徴とする磁性黒色トナーに関する。
【0035】
【発明の実施の形態】
従来より、トナー形状がトナーの諸特性に影響を与えることが知られているが、本発明者らは、粉砕法にて製造される磁性黒色トナーの粒径及び形に関して検討を進め、3μm以上の粒子における円形度と転写性及び現像性(画質)、定着性には密接な関係があることを見出した。
【0036】
更に、酸化鉄粒子を多量に含有する磁性黒色トナーの場合には、酸化鉄粒子の特性が、現像性や画像の黒味に関して、大きく関与していることを見出した。
【0037】
トナーが小粒径化されることによりトナー粒子の比表面積は増大する。これによりトナーの凝集性や付着性が大きくなる。この為、感光体上よりトナー像を転写材に転写した場合、感光体とトナー間に働く付着力が強くなり、転写効率を低下させる。特に、従来の粉砕方法で製造された磁性黒色トナーは不定形で角張ったものとなり、この傾向は顕著となる。
【0038】
更に、酸化鉄粒子を多量に含有する微粒子磁性黒色トナーの場合には、酸化鉄粒子の分散状態が、特に、カブリや飛び散りと言った現像性に関して、大きく関与していることを見出した。
【0039】
つまり、転写効率を向上させる為には、小粒径であっても、通常粒径トナーと同等或いはそれ以上の低い付着性を持たせることが重要となる。
【0040】
更に、トナー中の酸化鉄粒子の分散をコントロールする為には、酸化鉄粒子自体の粒子径を微粒子化することが重要となる。
【0041】
酸化鉄粒子自体を微粒子化することで、トナー中の分散状態を均一にすることは達成される。しかし、酸化鉄粒子を微粒子化することにより、先に述べた酸化鉄粒子中のFeO(或いはFe(II))劣化は促進され、磁性黒色トナーとしての黒味を維持することが困難となる。
【0042】
つまり、磁性黒色トナー中の酸化鉄粒子の分散状態をコントロールする目的で、酸化鉄粒子自体を微粒子化する場合、画質と画像品位としての黒味を両立させる上で、更に検討する必要があった。
【0043】
つまり、酸化鉄粒子がトナー中に均一分散可能な範囲としては、酸化鉄粒子が0.10〜0.30μmの平均粒子径をもつことが重要であり、0.10〜0.20μmであることが、更に好ましい。酸化鉄粒子の平均粒子径が0.30μmを超える場合には、大粒径トナーであれば問題無いが、微粒子トナーにおいては均一分散が達成されず、カブリ、飛び散り等の悪化を促進する場合があり好ましくない。また、平均粒子径が0.10μm未満の場合には、トナー表面への酸化鉄粒子の析出量が大となり、リークサイトの増大による帯電不良から、現像性の低下やカブリ悪化等を惹き起こす場合があり好ましくない。
【0044】
更に、均一分散を目的とした酸化鉄粒子の微粒子化により、先に述べた、酸化鉄粒子自体の色味問題も考慮する必要がある。酸化鉄粒子自体が酸化劣化が促進された赤味を帯びた場合、トナー化後の画像における色味もまた、赤味を帯びたものとなる。本発明においては、均一分散を目的とした酸化鉄粒子の微粒子化に対しても、上記の色味問題が無い酸化鉄粒子を用いることで、トナー化後の画像においても、十分な黒味を持たせることを達成している。
【0045】
画像の黒味判定は、ベタ黒画像を目視することで、赤味を帯びているか判定可能であるが、透過濃度が1.2〜1.7のベタ黒画像における、Lab測定におけるa,b値が下記式(3)、(4)の関係を満足する場合は問題無いとした。
0≦a値≦0.5 (3)
−0.5≦b値≦0.8 (4)
(但し、酸化鉄粒子の平均粒子径は0.10〜0.30μmの範囲とする)
a値が0.5超えとなる場合には、赤味の強い画像となり好ましくない。また、b値が0.8超えとなる場合も黄味、赤味が強い画像となり好ましくない。
【0046】
a,b値の下限に関しては、本発明の酸化鉄を使用した場合の下限値として設定した(黒味としては、本範囲以下となっても問題は無い)。
【0047】
また、トナーを球形化することで、トナーと感光体との接触面積を減少させ、転写効率を向上させることは可能になる。しかし、粉砕法トナーで真球トナーを製造することは非常に難しい。そこで、粉砕されたトナーの角を取り、表面を滑らかにすることでこれに近づける方法は考えられている。これにより、トナーの転写効率は向上させることが可能となるが、粉砕法故の種々問題点があり、更に検討する必要があった。
【0048】
トナーを球形化する目的で、微粉砕又は分級工程後に表面改質工程を導入する場合、トナー粒子表面は一定の熱により処理されることになる。磁性黒色トナーとして、着色剤に酸化鉄粒子を用いる場合には、上記処理により、トナー粒子表面上に析出する酸化鉄粒子は減少し、トナーが帯電付与部材(現像スリーブ)と摩擦帯電する際、過剰帯電となり易く、特に飛び散りが悪化する場合がある。
【0049】
また、小粒径化されたトナーを使用した場合、ドット再現性は良好となるが、カブリ、飛び散りに関しては悪化する傾向がある。これは、粒子大の粗粉砕されたトナーから微小粒子のトナーを製造する為に、微粉及び超微粉といったトナーと目的とする粒子径の粒子が多数混在することが原因と考えられる。つまり、粒子径が違うトナーは帯電特性が異なり、個々の粒子との付着性も違う。この為、小粒径化することにより、トナーの帯電量分布は逆に広いものとなる。更に、磁性黒色トナーの場合には、添加された、酸化鉄粒子の分散が不均一であった場合にはこの傾向はなおさら顕著であり、特に飛び散りに与える影響は大きい。
【0050】
また、粉砕されたトナーを繰り返し分級することで、シャープな粒度分布を得ることはできるが、実際のトナー生産に対して、適応することは難しい。
【0051】
つまり、本発明者らの検討によれば、粉砕法で製造された磁性黒色トナーにおいて、感光体上よりトナー像を転写材に転写する際の転写率を向上させることで、廃トナーの発生を抑制し、且つ、高温高湿及び低湿下においても画質と画像品位としての黒味を両立させる為には、
▲1▼樹脂と磁性体を有するトナーにおいて、該磁性体が、平均粒子径が0.10〜0.30μmの酸化鉄粒子であり、且つ、酸化鉄粒子がチタンに換算して0.3〜1.5質量%チタンを含有し、且つ、酸化鉄粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(B%)との比が
0.7≦A/B≦1.0を満足する酸化鉄粒子を含有することで、他の材料との分散性を向上させ、安定した帯電量を持ち、更に、十分な黒色度を有するトナーを得ること、及び、
▲2▼粉砕法で製造された磁性黒色トナーの重量平均径(X)が5μm乃至12μmであり、かつ該トナーの3μm以上の粒子において、0.900以上の円形度を有する粒子が90個数%以上存在し、平均円形度が0.940乃至0.970であることが重要である。
【0052】
更に好ましくは、トナー重量平均径と3μm以下の微粉含有量により3μm以上の粒子における円形度を制御することで、粒子径の違うトナーにおいて、同一の効果を発揮することが出来る。
【0053】
本発明の磁性黒色トナーは、粒径4.0μm以下の粒子が40個数%以下であり、粒径10.1μm以上の粒子が25体積%以下であるものが好ましい。
【0054】
重量平均径が12μmを上回る磁性黒色トナーの場合には、トナー粒子径自体の大きさにより、高画質化の面で問題があり好ましくない。
【0055】
重量平均径が5μmを下回る磁性黒色トナーの場合には、トナーの円形度と酸化鉄粒子の分散状態のバランスを十分に取ることが出来ず、カブリ、飛び散りを悪化させることがあり好ましくない。粒径4.0μm以下の粒子が40個数%を超える場合、及び10.1μm以上の粒子を25体積%を超える場合に関しても同様である。
【0056】
つまり、重量平均径5乃至12μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が40個数%以下であり、粒径10.1μm以上の粒子が25体積%以下であるトナーにおいては、該トナーの3μm以上の粒子において、下記式(1)より求められる円形度aが0.900以上の粒子を個数基準の累積値で90%以上有し、平均円形度が0.940〜0.970であり、
円形度a=L0/L(1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは粒子像の周囲長を示す。〕
且つ、該磁性体は
▲1▼平均粒子径が0.10〜0.30μmの酸化鉄粒子であり、
▲2▼酸化鉄粒子総量に対して、チタンに換算して0.3〜1.5質量%チタンを含有し、
▲3▼粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(B%)との比が下記式(2)を満足することが好ましい。
7≦A/B≦1.0(2)
【0057】
このような、トナー粒子径範囲と円形度及び特定の酸化鉄粒子を有する場合、画像品位である黒色度を損なうこと無く、トナーの帯電コントロールが容易で、帯電の均一化と耐久安定性を得ることが出来る。更に、上記のような円形度を有する場合、転写効率が高くなることも判明した。これは、上述されたような円形度を有するトナーの場合、トナー粒子と感光体との接触面積が小さくなることで、トナーと感光体間に働く付着力が低下するためである。更に、従来の粉砕法により製造されたトナーと比較して、トナー粒子の比表面積が低減されている為、トナー粒子間の接触面積が減少し、トナー粉体のかさ密度は密となり、定着時の熱伝導を良化することで、定着性向上の効果も得ることができる。
【0058】
該磁性黒色トナーの3μm以上の粒子における円形度aが0.900以上の粒子の存在が個数基準の累積値で90%未満となる場合には、トナー粒子と感光体との接触面積が大きくなり、トナー粒子の感光体への付着力が増大する為、十分な転写効率を得られず好ましくない。
【0059】
該磁性黒色トナーの平均円形度が0.940未満となる場合には、十分な転写効率が得られない場合があり、逆に平均円形度が0.970超えとなる場合には、本発明の磁性体を用いても、飛び散りの悪化を抑制できない場合があり好ましくない。
【0060】
更に、トナー粒径が違う場合、トナー自体の帯電量、比表面積は違うものとなる。つまり、小粒径のトナーは、微粉含有量が多く、帯電量も高く、比表面積も大きい。逆に、大粒径のトナーは、粗粉含有量が多く、帯電量も低く、比表面積も小さい。
【0061】
上述の粒子径及び円形度範囲であれば、転写効率、帯電のコントロールに問題は無いが、粒子径の違うトナーに対して、絶えず同一の効果を与える為には、以下のように更に、詳細な円形度を規定することがより好ましい。
【0062】
本発明の磁性黒色トナーは、
a)カット率Zとトナー重量平均径X(μm)の関係が下記式(5)を満足し、
カット率Z≦5.3×X (5)
[但し、カット率Zは、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000で測定される全測定粒子の粒子濃度A(個数/μl)、円相当径3μm以上の測定粒子濃度B(個数/μl)とした時、下記式(6)で示される。
Z=(1−B/A)×100 (6)]
且つ、該トナーの3μm以上の粒子において、円形度(a)の個数基準の円形度分布において、0.950以上の円形度(a)を有する粒子の個数基準累積値Yとトナー重量平均径Xの関係が下記式(7)を満足する。
円形度0.950以上の粒子の個数基準値Y≧exp5.51×X-0.645(7)
[但し、トナーの重量平均粒子径X:5.0〜12.0μm]
或いは
b)カット率Zとトナー重量平均径X(μm)の関係が下記式(7)を満足し、
カット率Z>5.3×X (8)
且つ、該トナーの3μm以上の粒子において、円形度(a)の個数基準の円形度分布において、0.950以上の円形度(a)を有する粒子の個数基準累積値Yとトナー重量平均径Xの関係が下記式(9)を満足することが好ましい。
円形度0.950以上の粒子の個数基準値Y≧exp5.37×X-0.545(9)
[但し、トナーの重量平均粒子径X:5.0〜12.0μm]
【0063】
該トナーの3μm以上の粒子における円形度aが0.950以上の粒子が個数基準の累積値で、a)カット率Zとトナー重量平均径Xの関係が
カット率Z≦5.3×X、好ましくは、0<カット率Z≦5.3×Xの式を満たし、
個数基準累積値Y≧exp5.51×X-0.645を満足しない場合、即ち、
個数基準累積値Y<exp5.51×X-0.645を満足するような場合には、
或いは、該トナーの3μm以上の粒子における円形度aが0.950以上の粒子が個数基準の累積値で、b)カット率Zとトナー重量平均径Xの関係が
カット率Z>5.3×X、好ましくは、95≧カット率Z≦5.3×Xの式を満たし、
個数基準累積値Y≧exp5.37×X-0.545を満足しない場合、即ち、
個数基準累積値Y<exp5.37×X-0.545を満足するような場合には、定着部材等への付着を促進しやすくなり、トナーの流動性も悪化する場合があり、また、転写効率を低下させる原因となる場合がある。
【0064】
このような各円形度を有する粒子のバラツキの一つの目安として、標準偏差SDを用いることもできる。本発明においては標準偏差SDが0.030乃至0.050でることが好しい。
【0065】
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明では東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000を用いて測定を行い、測定された粒子の円形度を下記式(1)により求め、さらに下記式(10)で示すように測定された全粒子の円形度の総和を全粒子数で除した値を平均円形度と定義する。
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは粒子像の周囲長を示す。〕
【外1】
【0066】
円形度標準偏差SDは、上記式(1)及び(10)で求めた平均円形度をa、各粒子における円形度をai、測定粒子数をmとすると、下記式(11)から算出される。
【外2】
【0067】
本発明における円形度はトナー粒子の凹凸の度合いの指標であり、トナーが完全な球形の場合1.00を示し、表面形状が複雑になるほど円形度は小さな値となる。また、本発明における円形度分布のSDは、ばらつきの指標であり、数値が小さいほどシャープな分布であることを示す。
【0068】
なお、本発明で用いている測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度及び円形度標準偏差の算出に当たって、粒子を得られた円形度によって、円形度0.4〜1.0を61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度及び円形度標準偏差の算出を行う算出法を用いている。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度及び円形度標準偏差の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視できる程度であり、本発明においては、算出時間の短縮化や算出演算式の簡略化の如きデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いても良い。
【0069】
具体的な測定方法としては、容器中の予め不純物を除去した水100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5ml加え、更に測定試料を0.1〜0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行い、分散液濃度を1.2〜2.0万個/μlとして、上記フロー式粒子像測定装置を用い、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の円形度分布を測定する。尚、分散液濃度を1.2〜2.0万個/μlとすることで、カット率が大きくなった場合でも装置の精度が保てるだけの粒子濃度を維持することができる。
【0070】
測定の概略は、東亜医用電子社(株)発行のFPIA−1000のカタログ(1995年6月版)、測定装置の操作マニアル及び特開平8−136439号公報に記載されているが、以下の通りである。
【0071】
試料分散液は、フラットで扁平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
【0072】
更に本発明においてその目的を達成するに好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
【0073】
本発明に使用される磁性材料としての、酸化鉄粒子とは、好ましくはFeOの高いマグネタイトを主成分とするものである。以下の説明では、酸化鉄粒子としてその代表的なものであるマグネタイト粒子について説明する。また、酸化鉄粒子又はマグネタイト粒子と言う時には、その内容によって個々の粒子又はその集合の何れも意味する。
【0074】
具体的には、本発明のマグネタイト粒子は、粒子中にチタンを含有し、且つ粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(B%)との比A/B(以下、「表面/内部FeO比」と称す)が0.7〜1.0であることを特徴とする。
【0075】
水溶液反応により得られる酸化鉄粒子、特にFeOの高いマグネタイト粒子は、一般的に第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた水酸化第一鉄スラリーを酸化することにより得られる。かかる公知技術で得られるマグネタイト粒子の表面/内部FeO比については、特開2001−2426号公報に記載されるように、約0.3〜0.6程度である(この公報記載の粒子半径の3.5%相当厚みの粒子近傍層は、本発明の質量に換算して粒子表面から10質量%とほぼ合致する)。
【0076】
これに対して、本発明で使用する酸化鉄粒子は表面/内部FeO比が0.7〜1.0であり、粒子表面近傍のFeO含有量が十分に高く、黒色度は十分高い上、多少の表面酸化があっても黒色度の経時劣化の影響を受けない。
【0077】
この表面/内部FeO比が0.7未満の場合、表面粒子近傍のFeO量が十分とは言えず黒色度が低いものであったり、黒色度は高くても、経時劣化の面で劣る、耐環境性の不良なマグネタイト粒子となる。また、表面/内部FeO比が1.0を超える場合、黒色度や耐環境性には優れるものの、粒子表面のFeOを必要以上に高くしても、更なる本発明効果も改善は得られない。この表面/内部FeO比は、黒色度、耐環境性の改善をより高めることを考慮すると、0.8〜1.0が好ましく、0.9〜1.0がより好ましい。
【0078】
また、本発明で使用する酸化鉄粒子は、粒子中にチタンを含有していることが重要であり、チタンが、酸化鉄粒子総量に対して、チタン換算で0.3〜1.5質量%含有されていることが好ましい。本発明においては、マグネタイト粒子にチタンが含有されていることが、マグネタイト粒子の表面/内部FeO比が0.7〜1.0となることに大きく関与していることは後述するが、このチタン含有量が0.3質量%未満では、粒子表面近傍のチタン含有量が少なくなる傾向にあり、水溶液反応により得られるマグネタイト粒子の表面/内部FeO比を0.7〜1.0にすることが困難であり、1.5質量%を超える場合には、粒子表面近傍のチタン含有量が過剰となる傾向にあり、チタン含有量が高過ぎて、磁気特性や黒色度、色相等、他の特性不良を惹き起こす場合があり、好ましくない。このチタン含有量は、チタン含有量をより減らし、且つ、表面/内部FeO比が低下しないように調整する上で、0.4〜1.2質量%とすることが好ましく、0.4〜0.8質量%とすることがより好ましい。
【0079】
また、本発明で使用する酸化鉄粒子は、平均粒子径が0.10〜0.30μmであることが分散性、黒味等の点から好ましい。更に、本発明で用いる酸化鉄粒子の特徴をより発揮する為には、平均粒子径を0.10〜0.20μmとすることが好ましく、0.10〜0.15μmとすることがより好ましい。平均粒子径が0.10μm未満となる場合、トナー中における酸化鉄の再凝集等による分散不良を惹き起こしたり、本発明用酸化鉄粒子を用いても、トナー黒味を損なう場合があり好ましくない。平均粒子径が0.30μm超えとなる場合、トナー黒味としては申し分無いが、トナー粒子中の分散悪化の原因となる場合があり好ましくない。
【0080】
また、本発明で使用する酸化鉄粒子は、粒状粒子であれば、球状、六面体状、多面体状等、いかなる粒子でも問題は無いが、トナー粒子中への分散性や黒味の面から、八面体状であることがより好ましい。
【0081】
また、本発明に使用する酸化鉄粒子は、Al、Si、P、S、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Mgの総含有量が少ないことが好ましい。上記成分はマグネタイト粒子製造時に原料由来の不可避成分として含有されるか、分散性や流動性改良手段として添加されることにより、酸化鉄粒子中に含有される。本発明用の酸化鉄粒子においては、表面/内部FeO比コントロール及び高磁気特性の維持を考慮した場合、上記成分の含有量は低い方がより効果を発揮しやすく、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましい。
【0082】
また、本発明に使用する酸化鉄粒子は、JIS K5101−1991に準拠した粉体の黒色度及び色相測定において、色差計によるL値が20以下、a値が0.1以下、b値が0.1以下であることが好ましい。このL値が20を超え、a値が0.1を超え、b値が0.1を超える場合、トナー製造後におけるベタ黒画像における黒味を損なう場合があり好ましくない。
【0083】
これらの酸化鉄粒子は、795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6〜12.0kA/m、飽和磁化50〜200Am2/kg(好ましくは50〜100Am2/kg)、残留磁化2〜20Am2/kgのものが好ましい。
【0084】
結着樹脂100質量部に対して、酸化鉄粒子は50〜150質量部、好ましくは60〜120質量部使用するのが良い。50質量部未満となる場合には、カブリ,飛び散りが悪化するだけでなく、磁性黒色トナーとした場合には、黒味不足となる場合もあり、好ましくない。
【0085】
酸化鉄粒子が150質量部超える場合には、帯電付与部材(現像スリーブ)からの飛翔が十分に行えなくなり、画像濃度低下の原因となる場合もあり、好ましくない。
【0086】
次に、本発明で用いられる酸化鉄粒子の製造方法は一般的なマグネタイト粒子の製造方法を用いても特に問題は無いが、特に好ましい製造方法について、以下、具体的に説明する。
【0087】
本発明に用いる酸化鉄粒子は、第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して得られた、水酸化第一鉄スラリーを酸化して、酸化鉄粒子を製造する方法において、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩が、水酸化チタンとして析出しないように、第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、且つ温度70℃以下に調整して、第一鉄塩水溶液に添加、混合することにより得られた水酸化第一鉄スラリーを使用することより製造できる。
【0088】
ここで、重要なのは、4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩が、水酸化チタンとして析出しないように、第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、且つ温度70℃以下に調整して、第一鉄塩水溶液に添加、混合することにある。
【0089】
第一鉄塩水溶液のpHを1.5以下、且つ温度70℃以下に調整する理由は、添加する4価のチタン塩及び/又はチタン酸塩が加水分解し、水酸化チタンとして析出しないように行うものである。この方法によれば、粒子の核生成から最終的な粒子成長完了に至るまで、価数4価のチタン成分が粒子内に均一に含有され、粒子表面においてもFe(II)が安定して生成されることになる。
【0090】
添加するチタン塩及び/又はチタン酸塩は、最終的な酸化鉄粒子総量に対して、チタン換算して0.3〜1.5質量%となるように調整する。
【0091】
第一鉄塩として利用できるものは、硫酸第一鉄、塩化第一鉄等、水可溶性塩ならば特に限定されない。また、添加に用いられるチタン塩やチタン酸塩として使用できるものは、硫酸チタン(IV)、塩化チタン(IV)、硫酸チタニル、硝酸チタニル等が挙げられる。
【0092】
次に、得られた4価のチタン成分を含有する第一鉄塩水溶液とアルカリ溶液とを中和混合して、水酸化第一鉄スラリーを生成させる。
【0093】
水酸化第一鉄スラリーを生成させる際のアルカリ溶液量は、求める酸化鉄粒子の形状に応じて調整すればよい。具体的には、水酸化第一鉄スラリーのpHが8.0未満となるように調整すれば、球状粒子が得られ、8.0〜9.5となるように調整すれば、六面体状粒子が得られ、9.5を超えるように調整すれば、八面体状粒子が得られるので、適宣調整する。
【0094】
アルカリ溶液は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム水溶液等の水酸化アルカリ水溶液を用いることが出来る。
【0095】
こうして得られた、水酸化第一鉄スラリーより、酸化鉄粒子を得るために、常法の酸素含有ガス、好ましくは空気をスラリー中に吹き込みながら酸化反応を行ない、酸化反応終了後のスラリーを常法のろ過、洗浄、乾燥、粉砕処理を行う。
【0096】
本発明に用いられる結着樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が帯電性や定着性でより好ましい。
【0097】
ビニル系樹脂としては、例えばスチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの如きスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンの如き不飽和ポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンの如きN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;α,β−不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類が挙げられる。これらのビニル系モノマーが単独もしくは2つ以上で用いられる。
【0098】
これらの中でもスチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体となるようなモノマーの組み合わせが好ましい。
【0099】
また、必要に応じて以下に例示する様な架橋性モノマーで架橋された重合体又は共重合体であってもよい。
【0100】
芳香族ジビニル化合物として例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンが挙げられ;アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをャ^アクリレートに代えたものが挙げられ;芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられ;ポリエステル型ジアクリレート類として例えば、商品名MANDA(日本化薬)が挙げられる。
【0101】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0102】
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部(さらに好ましくは0.03〜5質量部)用いることができる。
【0103】
これらの架橋性モノマーのうち、トナー用樹脂に定着性、耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
【0104】
本発明において、ビニル系モノマーの単重合体または共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を、必要に応じて前述した結着樹脂に混合して用いることができる。
【0105】
2種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
【0106】
結着樹脂のガラス転移温度は好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜70℃であり、数平均分子量(Mn)は2,500〜50,000、重量平均分子量(Mw)は10,000〜1,000,000であることが好ましい。
【0107】
ビニル系重合体又は共重合体からなる結着樹脂を合成する方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法の如き重合法が利用できる。カルボン酸モノマー又は酸無水物モノマーを用いる場合には、モノマーの性質上、塊状重合法または溶液重合法を利用することが好ましい。
【0108】
一例として次のような方法が挙げられる。ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸モノエステルの如きモノマーを用い、塊状重合法、溶液重合法によりビニル系共重合体を得ることができる。溶液重合法においては、溶媒留去時にジカルボン酸、ジカルボン酸モノエステル単位を留去条件を工夫することにより一部無水化することができる。更に、塊状重合法または溶液重合法によって得られたビニル系共重合体を加熱処理することで更に無水化を行うことができる。酸無水物をアルコールの如き化合物により一部エステル化することもできる。
【0109】
逆に、この様にして得られたビニル系共重合体を加水分解処理で酸無水物基を閉環させ、一部ジカルボン酸とすることができる。
【0110】
一方、ジカルボン酸モノエステルモノマーを用い、懸濁重合法、乳化重合法で得られたビニル系共重合体を加熱処理による無水化及び加水分解処理による開環により無水物からジカルボン酸を得ることができる。塊状重合法または溶液重合法で得られたビニル系共重合体を、モノマー中に溶解し、次いで懸濁重合法または乳化重合法により、ビニル系重合体または共重合体を得る方法を用いれば、酸無水物の一部は開環してジカルボン酸単位を得ることができる。重合時にモノマー中に他の樹脂を混合してもよく、得られた樹脂を加熱処理による酸無水物化、弱アルカリ水処理による酸無水物の開環アルコール処理によりエステル化を行うことができる。
【0111】
ジカルボン酸、ジカルボン酸無水物モノマーは交互重合性が強いので、無水物、ジカルボン酸の如き官能基をランダムに分散させたビニル系共重合体を得る為には以下の方法が好ましい方法の一つである。ジカルボン酸モノエステルモノマーを用い溶液重合法によってビニル系共重合体を得、このビニル系共重合体をモノマー中に溶解し、懸濁重合法によって結着樹脂を得る方法である。この方法では溶液重合後の溶媒留去時に処理条件により、全部またはジカルボン酸モノエステル部を脱アルコール閉環無水化させることができ酸無水物を得ることができる。懸濁重合時には酸無水物基が加水分解開環し、ジカルボン酸が得られる。
【0112】
ポリマーにおける酸無水物化は、カルボニルの赤外吸収が酸またはエステルの時よりも高波数側にシフトするので酸無水物の生成または消滅は確認できる。
【0113】
この様にして得られる結着樹脂は、カルボキシル基、無水物基、ジカルボン酸基が結着樹脂中に均一に分散されているので、トナーに良好な帯電性を与えることができる。
【0114】
結着樹脂としては以下に示すポリエステル樹脂も好ましい。
【0115】
ポリエステル樹脂は、全成分中45〜55mol%がアルコール成分であり、55〜45mol%が酸成分である。
【0116】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(B)式で表わされるビスフェノール誘導体;
【外3】
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2〜10である。)
また、(C)式で示されるジオール類;
【外4】
グリセリン、ソルビット、ソルビタン等の多価アルコール類が挙げられる。
【0117】
また、全酸成分中50mol%以上を含む2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられ、また、3価以上のカルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられる。
【0118】
特に好ましいポリエステル樹脂のアルコール成分としては、前記(B)式で示されるビスフェノール誘導体であり、酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸又はその無水物、こはく酸、n−ドデセニルコハク酸又はその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸類;トリメリット酸又はその無水物のトリカルボン酸類が挙げられる。これらの酸成分及びアルコール成分から得られたポリエステル樹脂を結着樹脂として使用した熱ローラー定着用トナーとして定着性が良好で、耐オフセット性に優れているからである。
【0119】
ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下であり、OH価は好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下であることが良い。これは、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなる為である。
【0120】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は好ましくは50〜75℃、より好ましくは55〜65℃であり、さらに数平均分子量(Mn)は好ましくは1,500〜50,000、より好ましくは2,000〜20,000であり、重量平均分子量(Mw)は好ましくは6,000〜100,000、より好ましくは10,000〜90,000であることが良い。
【0121】
本発明のトナーは、その帯電性をさらに安定化させる為に必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、結着樹脂100質量部当り0.5〜10質量部使用するのが好ましい。0.5質量部未満となる場合には、十分な帯電特性が得られない場合があり好ましくなく、10質量部を超える場合には、他材料との相溶性が悪化したり、低湿下において帯電過剰になったりする場合があり好ましくない。
【0122】
荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
【0123】
トナーを負荷電性に制御する負荷電性制御剤として、例えば有機金属錯体又はキレート化合物が有効である。モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。他には、スチレン系単量体及びアクリル系単量体とスルホン酸含有アクリルアミド単量体との共重合体(スルホン酸基含有共重合体)、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、その無水物、又はそのエステル類、又は、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
【0124】
トナーを正荷電性に制御する正荷電性制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのキレート顔料として、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等)、メタクリロイルオキシトリメチルアンモニウムサルフェイトと、これと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体、高級脂肪酸の金属塩として、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキシド等のジオルガノスズオキサイドやジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレートが挙げられる。
【0125】
本発明において、必要に応じて一種又は二種以上の離型剤を、トナー粒子中に含有させてもかまわない。離型剤としては次のものが挙げられる。
【0126】
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また、酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0127】
離型剤の量は、結着樹脂100質量部あたり0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部が好ましい。
【0128】
また、これらの離型剤は、通常、樹脂を溶剤に溶解し、樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、混練時に混合する方法で結着樹脂に含有させることができる。
【0129】
本発明のトナーに使用される無機微粉体は、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものである。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ、それらをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施した処理シリカ等がある。
【0130】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
【0131】
この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタン等の他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、シリカとしてはそれらも包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが好ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。
【0132】
ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。
【0133】
【0134】
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体がより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
【0135】
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0136】
有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。さらに、ジメチルシリコーンオイルの如きシリコーンオイルが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0137】
流動性向上剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー100質量部に対して流動性向上剤0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜4質量部使用するのが良い。0.01質量部未満となる場合には、求める効果としての流動性向上が達成できない場合があり好ましくなく、8質量部超えとなる場合には、カブリが悪化する場合があり、好ましくない。
【0138】
本発明のトナーには、研摩効果に加え、帯電性付与性及び流動性付与、クリーニング助剤として、上述以外の無機微粉体を添加しても良い。無機微粉体は、トナー粒子に外添することにより、添加前後を比較するとより効果が増加し得るものである。本発明に用いられる無機微粉体としては、マグネシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、ストロンチウム、セリウム、カルシウム、バリウム等のチタン酸塩及び/又はケイ酸塩が挙げられる。特に本発明の効果をより発揮できることから、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)及びチタン酸カルシウム(CbsiO3)、ケイ酸ストロンチウム(SrSiO3)、チタン酸バリウム(TiBaO3)が好ましい。
【0139】
本発明で使用する無機微粒子は、例えば焼結法によって生成し、機械粉砕した後、風力分級して、所望の粒度分布であるものを用いるのが良い。
【0140】
本発明における無機微粒子は、トナー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部用いるのが良い。
【0141】
本発明の磁性黒色トナーの製造方法としては、先に述べた、一般的な製造装置を用いて、所望の円形度及び粒子径が得られれば、特に限定するものでは無い。
【0142】
具体的には、結着樹脂と磁性体、又はその他の添加剤として電荷制御剤や離型剤等を加えて、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により乾式混合し、ニーダー、ロールミル、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融・混練して樹脂類を互いに相溶せしめ、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粗粉砕し、得られた粗粉砕物をジェットミル、ミクロンジェット、IDS型ミル等の衝突式気流粉砕機又はクリプトロン、ターボミル、イノマイザー等の機械式粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕品を気流式分級機等を用いて所望の粒度分布とした後、流動化剤や研磨剤等の無機微粉体を外添混合することで本発明のトナーを得ることが出来る。
【0143】
また、本発明の磁性黒色トナーは、粗粉砕品を微粉砕する際の粉砕条件を工夫するか、或いは、微粉砕後又は分級後に表面改質装置等を用いることにより、所望の円形度を達成することが出来るが、生産性及び粉砕条件の設定等が容易に出来る、機械式粉砕機を使用することがより好ましい。
【0144】
具体的には、機械式粉砕機を用いることで、トナーの円形度を上げたい場合には、装置内負荷を上げ、装置内温度を上昇させ、逆に、トナーの円形度を下げたい場合には、装置内負荷を下げ、装置内温度を下げることで容易に円形度をコントロールすることが出来る。
【0145】
次に、以下の実施例中で測定した各種物性データの測定方法に関して以下に説明する。
【0146】
(1)粒度分布の測定
粒度分布については、種々の方法によって測定できるが、本発明においてはコールターカウンターのマルチサイザーを用いて行った。
【0147】
測定装置としてはコールターカウンターのマルチサイザーII型(コールター社製)を用い、個数分布,体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びCX−1パーソナルコンピューター(キヤノン製)を接続し、電解液は特級または1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターのマルチサイザーII型により、アパーチャーとして、トナー粒径を測定するときは100μmアパーチャーを用い、無機微粉末粒径を測定するときは13μmアパーチャーを用いて測定する。トナー及び無機微粉末の体積,個数を測定して、体積分布と、個数分布とを算出した。それから体積分布から求めた重量基準の重量平均径を求める。
【0148】
(2)ワックスの融点測定
示差熱分析測定装置(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。測定はASTMD3418−82に準じておこなう。測定試料2〜10mgを精秤してアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度30〜200℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。この吸熱メインピークの温度をもってワックスの融点とする。
【0149】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTMD3418−82に準じて測定する。測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。
【0150】
これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。
【0151】
この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。このときの吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を本発明におけるガラス転移温度Tgとする。
【0152】
(4)結着樹脂原料の分子量分布の測定
GPCによるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
【0153】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。試料をTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として0.05〜0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、PressureChemicalCo.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0154】
カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、例えば、Waters社製のμ−styragel500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodexKA−801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
【0155】
【実施例】
次に、本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0156】
(酸化鉄粒子の製造例1:M−1)
2mol/lの硫酸第一鉄水溶液50リットルに、0.14mol/lの硫酸チタニル水溶液5リットルを、pH1,温度50℃の条件下で混合させ、十分撹拌する。このチタン塩含有硫酸第一鉄水溶液と、5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液43リットルを混合して水酸化第一鉄スラリーを得る。この水酸化第一鉄スラリーをpHを12に維持し、85℃にて空気を吹き込み酸化反応を行った。得られたマグネタイト粒子を含むスラリーを常法のろ過、洗浄、乾燥、粉砕を行ない、酸化鉄粒子(M−1)を得た。
【0157】
得られた酸化鉄粒子は、下記に示す方法にて分析し、表1のデーターを得た。
【0158】
(a)平均粒子径
走査型電子顕微鏡(30000倍)の写真を撮影し、フェレ径にて算出した。
【0159】
(b)磁気特性
東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を使用して、外部磁場796kA/mにて測定した。
【0160】
(c)表面/内部FeO比
3.8リットルの脱イオン水に試料25gを加え、ウオーターバスで35〜40℃を保ちながら、撹拌速度200rpmで撹拌する。このスラリー中に特急塩酸試薬424mlを溶解した塩酸水溶液(脱イオン水)1250mlを加え、溶解を開始する。
【0161】
溶解開始から全て溶解して透明になるまで、10分毎に50mlサンプリングし、0.1μmメンブランフィルターでろ過して、ろ液を採取する。
【0162】
採取したろ液のうち、25mlをICPによって鉄元素の定量を行う。
【0163】
【外5】
【0164】
各サンプルのFeO含有量は、残りのろ液25mlに脱イオン水約75mlを加えて試料を調整して、指示薬としてジフェニルアミンスルホン酸ナトリウムを加えて、0.1N重クロム酸カリウムを用いて酸化還元滴定し、該試料が青紫色に着色したところを終点として滴定量を求め、次式によりFeOの鉄元素に対する比率(質量%)を求めた。
【0165】
【外6】
粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFeOの割合及び残りの90質量%中における総Fe量に対するFeOの割合は、各部位に含有されるFeO含有量を各部位に含有されるFe量に対する割合(質量%)で求めた。そして、次式にて表面/内部FeO比を求めた。
【0166】
【外7】
【0167】
(d)酸化鉄粒子中のTi元素の含有量測定
試料を溶解して、プラズマ発光分析(ICP)にて、各元素を測定した。
【0168】
(酸化鉄粒子の製造例2〜6:M−2〜M−6)
酸化鉄製造例1における硫酸チタニル水溶液の添加量を変更した以外は同様にして、酸化鉄粒子(M−2)、(M−3)、(M−4)、(M−5)、(M−6)を得た。尚、(M−4)製造時には乾燥条件も真空乾燥を採用することで、表面FeO量増加を試みた。得られた酸化鉄粒子の分析結果は表1となった。
【0169】
(酸化鉄粒子の製造例7〜10:M−7〜M−10)
酸化鉄製造例1における、空気流入量及び反応温度、反応時間を変更する以外は同様にして、酸化鉄粒子(M−7)、(M−8)、(M−9)、(M−10)を得た。得られた酸化鉄粒子の分析結果は表1となった。
【0170】
(酸化鉄粒子の製造例11:M−11)
酸化鉄製造例1において硫酸チタニル水溶液を添加しなかった以外は同様にして、酸化鉄粒子(M−9)を得た。得られた酸化鉄粒子の分析結果は表1となった。
【0171】
(酸化鉄粒子の製造例12:M−12)
2mol/lの硫酸第一鉄水溶液50リットルに、0.14mol/lの硫酸チタニル水溶液5リットルを、pH2.5,温度75℃の条件下で混合させ、十分撹拌する。このチタン塩含有硫酸第一鉄水溶液と、5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液43リットルを混合して水酸化第一鉄スラリーを得る。この水酸化第一鉄スラリーをpHを12に維持し、85℃にて空気を吹き込み酸化反応を行った。得られたマグネタイト粒子を含むスラリーを常法のろ過、洗浄、乾燥、粉砕を行ない、酸化鉄粒子(M−12)を得た。得られた酸化鉄粒子の分析結果は表1となった。
【0172】
<実施例1>
・結着樹脂(ポリエステル樹脂):100質量部
(Tg58℃、酸価22mgKOH/g、水酸基価30mgKOH/g、分子量:Mp6500、Mn3000、Mw52000)
・酸化鉄粒子(M−1):90質量部
(平均粒子径0.12μm、795.8kA/m磁場での特性Hc11.6kA/m、σs84.6Am2/kg、σr15.9Am2/kg)・アゾ系鉄錯体化合物:2質量部
・低分子量エチレン−プロピレン共重合体:3質量部
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉体原料である粉体原料A(粗粉砕物)を得た。
【0173】
粉体原料Aをターボ工業社製ターボミルT−250型を用い、粗砕品供給量を21kg/hrとして、機械式粉砕機内の入口温度は−10℃、出口温度は47℃となるように粉砕し、重量平均径が6.6μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が53個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を5.4体積%含有する微粉砕品を得た。
【0174】
次いで、風力分級機で分級することで、重量平均径が6.5μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が20.5個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を3.8体積%含有する分級品(B−1)を得た。
【0175】
この分級品B−1100質量部に対して、疎水性シリカ微粉体(BET300m2/g)1.2質量部をヘンシェルミキサーにて外添添加して評価用トナー(あ)とした。
【0176】
このトナーは重量平均径が6.5μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が21.3個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を3.8体積%含有し、FPIA1000にて測定した結果、平均円形度が0.953であり、円形度a=0.900以上の粒子が95.7個数%、円形度a=0.950以上の粒子が78.4個数%であった。
【0177】
また、3μm以下の粒子をカット前(全粒子)粒子濃度Aは15209.7個数/μlであり、3μm以上の測定粒子濃度Bは13028.3個数/μlであった。
【0178】
(評価−1)
評価用トナー(あ)を380gキヤノン製IR6000複写機用現像器に入れ、高温高湿室(32.5℃/85%)に一晩(12時間以上)放置する。現像器の質量を測定後、IR6000へ現像器を設置し、現像スリーブを3分間回転させた。この時、本体内のクリーナー部及び廃トナー回収部は事前に一旦取り外し、質量を測定しておく。印字比率6%のテストチャートを用いて、500枚画出しを行い転写率を評価した。評価用トナー(あ)の転写率Aは90%となった。
【0179】
転写率は以下の計算式で算出した。
【0180】
【外8】
【0181】
(評価−2)
評価用トナー(あ)を用いて、IR6000内の転写前帯電器(ポスト帯電器)を取り外した以外は、評価−1と全く同じ方法で転写率測定を実施した。評価用トナー(あ)の転写率Bは87%となった。
【0182】
(評価−3)
上記の転写率を測定した後、複写機を、常温低湿室(23℃/50%)へ移した後、現像器へ評価用トナー(あ)を本体設置モードにて供給した後、印字比率4%のテストチャートを用いて、2000枚画出しを行い、ベタ黒画像の透過濃度が1.7となるように調整し、A3用紙にてベタ黒画像3枚を出力した。出力した3枚目のベタ黒画像の色調を測定した。
【0183】
色調測定は1976年に国際照明委員会(CIE)で規格された表色系の定義に基づき、定量的に測定した。測定機にはX−Rite社製分光測色計タイプ938を用い、観察用光源はC光源、視野角は2°とした。その結果、a値が0.36、b値が−0.03、L値が21.1となった。また、同時に複写機開発及びトナー開発に関わる10人に上記測定した画像を目視にて黒味確認してもらったところ、10人全員が黒味は十分との回答を出した。評価レベルは以下に示す。
【0184】
◎:10人全員が問題無しと判定
○:8人以上が問題無しと判定
△:6人以上が問題無しと判定
×:5人以上が赤味が強いと判定
××:7人以上が赤味が強いと判定
【0185】
(評価−4)
上記の色調を測定した後、複写機を、常温低湿室(23℃/5%)へ移し、現像器を機外に取り出して5日間放置した後、IR6000へ現像器を設置し、現像スリーブを1分間回転させた。印字比率3%のテストチャートを用いて、1000枚画出しを行い、テストチャート上の白部のカブリと文字周辺へのトナー飛び散り具合にて画質評価した。カブリは初期から1000枚目まで0.3%未満であり問題の無いレベルとなった。また、文字周辺の飛び散りに関しても、ルーペで拡大して目視確認したが、殆ど無い状態だった。
【0186】
評価レベルは以下に示す。カブリ測定用反射測定機REFLECTMETER(東京電色(株))にて、上記の画像の白部及び未使用紙の反射率を測定し、両者の差をカブリとする。
【0187】
未使用紙反射率−画像白部の反射率=カブリ%
◎:カブリ0.3%未満
○:カブリ0.3〜1.0%
△:カブリ1.0〜2.0%
×:カブリ2.0〜2.5%
××:カブリ2.5%以上
文字周辺へのトナー飛び散り具合は画像上の文字をルーペにて拡大して、目視にて判断した。
【0188】
◎:文字周辺に飛び散ったトナーが無い
○:文字周辺に飛び散ったトナーが極僅か確認できる
△:文字周辺に飛び散ったトナーが有るが、ラインははっきりしている
×:文字周辺に飛び散ったトナーが多数存在する
××:文字周辺に飛び散ったトナーが多数存在し、ラインもはっきりしない
【0189】
(評価−5)
上記のカブリを測定した後、複写機を、高温高湿室(32.5℃/85%)へ移し、現像器を機外に取り出して2日間放置した後、IR6000へ現像器を設置し、現像スリーブを3分間回転させた。印字比率4%のテストチャートを用いて、100000枚画出しを行い、テストチャート上の黒部の画像濃度を測定して、耐久時の濃度推移を確認した。結果は初期画像濃度1.45であり、ラスト(10万枚目)1.43となり、ΔDmax=0.02と非常に安定していた。評価レベルは以下に示す。尚、
ΔDmax=初期画像濃度−耐久ラスト(10万枚目)画像濃度
とした。
【0190】
◎:ΔDmax0.05未満
○:ΔDmax0.05〜0.10
△:ΔDmax0.10〜0.25
×:ΔDmax0.25〜0.40
××:ΔDmax0.40以上
【0191】
<実施例2>
実施例1で作製した粉体原料A(粗粉砕物)を、日本ニューマチック工業社製I−2型ミルを用い、粗砕品供給量を1.5kg/hr、粉砕圧2kgPaとし、更に、所定の粒径に粉砕されなかったトナー粗砕品は再度、粉砕機内へ戻るように設定して粉砕し、重量平均径が7.4μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が49個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を9.4体積%含有する微粉砕品を得た。
【0192】
次いで、風力分級機で分級することで、重量平均径が7.4μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が15.2個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を6.7体積%含有する分級品(B−2)を得た。
【0193】
この分級品B−2100質量部に対して、疎水性シリカ微粉体(BET300m2/g)1.0質量部とチタン酸ストロンチウム(平均粒径1.8μm)4.0質量部をヘンシェルミキサーにて外添添加して評価用トナー(い)とした。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。
【0194】
評価用トナー(い)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0195】
<実施例3>
実施例1で作製した粉体原料A(粗粉砕物)を、日本ニューマチック工業社製I−2型ミルを用い、粗砕品供給量を5.5kg/hr、粉砕圧6kgPaとし、更に、所定の粒径に粉砕されなかったトナー粗砕品は再度、粉砕機内へ戻るように設定して粉砕し、重量平均径が7.2μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が53.8個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を10.1体積%含有する微粉砕品を得た。更に、得られた微粉砕品を62℃の熱球形化装置を通した後、風力分級機で分級することで、重量平均径が7.5μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が16.9個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を8.2体積%含有する分級品(B−3)を得た。
【0196】
この分級品B−2100質量部に対して、疎水性シリカ微粉体(BET300m2/g)1.0質量部とチタン酸ストロンチウム(平均粒径1.8μm)4.0質量部をヘンシェルミキサーにて外添添加して評価用トナー(う)とした。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。
【0197】
評価用トナー(う)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0198】
<実施例4〜8>
実施例1で使用した酸化鉄粒子(M−1)の替わりに、酸化鉄粒子(M−3)、(M−4)、(M−5)、(M−8)、(M−9)とした以外は全て同様にして、評価用トナー(え)、(お)、(か)、(き)、(く)とした。
【0199】
このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。
【0200】
評価用トナー(え)、(お)、(か)、(き)、(く)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0201】
<実施例9〜11>
実施例1で作製した粉体原料A(粗粉砕物)を、ターボ工業社製ターボミルT−250型を用い、粗砕品供給量及び機械式粉砕機内の入口温度と、出口温度を任意に調整して粒径及び円形度の異なる粉砕物を作製し、風力分級機で分級することで、分級品を得た後、この分級品100質量部に対して、疎水性シリカ微粉体(BET300m2/g)0.5〜1.2質量部をヘンシェルミキサーにて外添添加して評価用トナー(け)、(こ)、(さ)とした。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(け)、(こ)、(さ)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0202】
<実施例12〜15>
実施例1で使用した酸化鉄粒子(M−1)の添加量を50,75,120,150質量部に変更した以外は全て同様にして、評価用トナー(し)、(す)、(せ)、(そ)とした。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(し)、(す)、(せ)、(そ)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0203】
<比較例1>
実施例1で使用した、酸化鉄粒子(M−1)の替わりに、酸化鉄粒子(M−11)とした以外は全て同様にして、比較評価用トナー(た)を作製した。このトナーは重量平均径が6.5μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が21.8個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を3.9体積%含有し、FPIA1000にて測定した結果、平均円形度が0.952であり、円形度a=0.900以上の粒子が96.1個数%、円形度a=0.950以上の粒子が77.9個数%であった。
【0204】
また、3μm以下の粒子をカット前(全粒子)粒子濃度Aは14809.7個数/μlであり、3μm以上の測定粒子濃度Bは13103.3個数/μlであった。
【0205】
このトナーを実施例1と同様にして評価したところ、転写率、カブリ、飛び散り、濃度推移に関しては問題が無かったが、ベタ黒画像の色調を測定した結果、a値が0.52、b値が0.63、L値が21.5となり、複写機開発及びトナー開発に関わる10人に上記測定した画像を目視にて黒味確認してもらったところ、10人中6人が黒味不十分との回答を出した。
【0206】
<比較例2>
比較例1で使用した、酸化鉄粒子(M−11)の替わりに、酸化鉄粒子(M−7)とした以外は全て同様にして、比較評価用トナー(ち)を作製した。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(ち)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0207】
<比較例3>
比較例1で作製した粗砕品を用いて、日本ニューマチック工業社製I−2型ミルを用い、微粉砕後の熱球形化処理をしない以外は、実施例3と同様にして、比較評価用トナー(つ)を作製した。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(つ)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0208】
<比較例4〜5>
比較例3で使用した酸化鉄粒子(M−11)の替わりに、酸化鉄粒子(M−6)、(M−10)とした以外は全て同様にして、比較評価用トナー(て)、(と)を作製した。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(て)、(と)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0209】
<比較例6>
比較例1で使用した酸化鉄粒子(M−11)の替わりに、酸化鉄粒子(M−12)とした以外は全て同様にして、比較評価用トナー(な)を作製した。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(な)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0210】
<比較例7>
微粉砕後に行う熱球形化処理温度を82℃に変更した以外は全て実施例3と同様にして、比較評価用トナー(に)を作製した。このトナーの粒度は表2、円形度は表3であった。評価用トナー(に)を実施例1と同様に評価して、表4及び表5の結果を得た。
【0211】
<比較例8>
比較例1で使用した、酸化鉄粒子(M−11)の替わりに、酸化鉄粒子(M−2)とした以外は全て同様にして、比較評価用トナー(ぬ)を作成した。このトナーの粒度は表−2、円形度は表−3であった。
【0212】
評価用トナー(ぬ)を実施例1と同様に評価して、表−4及び表−5の結果を得た。
【0213】
【表1】
【0214】
【表2】
【0215】
【表3】
【0216】
【表4】
【0217】
【表5】
【0218】
【発明の効果】
本発明によれば、上記の如く、トナー粒子径範囲と円形度及び酸化鉄粒子を有することで、画像品位である黒色度を損なうこと無く、トナーの帯電コントロールが容易で、帯電の均一化と耐久安定性、さらに高い転写効率を得ることが出来る。
Claims (10)
- 少なくとも結着樹脂及び磁性体を有する磁性黒色トナーにおいて、
該トナーの重量平均粒子径X(μm)が5μm乃至12μmであり、
該トナーの3μm以上の粒子において、下記式(1)より求められる円形度(a)の個数基準の円形度分布において、0.900以上の円形度(a)を有する粒子が90個数%以上存在し、平均円形度が0.940〜0.970であり、
円形度a=L0/L (1)
〔式中、L0は粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を示し、Lは粒子像の周囲長を示す。〕
該磁性体は、▲1▼平均粒子径が0.10〜0.30μmの酸化鉄粒子であり、▲2▼酸化鉄粒子総量に対して、チタンに換算して0.3〜1.5質量%チタンを含有し、▲3▼粒子表面から10質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(A%)と、残りの90質量%中における総Fe量に対するFeOの割合(B%)との比が下記式(2)を満足し、
0.7≦A/B≦1.0 (2)
トナー粒子表面は、無機微粉体で外添されていることを特徴とする磁性黒色トナー。 - 該磁性黒色トナーは、透過濃度が1.2〜1.7のベタ黒画像における、Lab測定におけるa,b値が下記式(3)及び(4)の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の磁性黒色トナー。
0≦a値≦0.5 (3)
−0.5≦b値≦0.8 (4)
(但し、酸化鉄粒子の平均粒子径は0.10〜0.30μmの範囲とする) - 該酸化鉄粒子が、酸化鉄粒子総量に対して、チタンに換算して0.4〜1.2質量%チタンを含有している事を特徴とする請求項1又2に記載の磁性黒色トナー。
- 該酸化鉄粒子が、795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6〜12.0kA/mであり、飽和磁化50〜200Am2/kgであり、残留磁化2〜20Am2/kgであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
- 該黒色磁性トナーが、粒径4.0μm以下のトナーの割合が40個数%以下であり、粒径10.1μm以上のトナーの割合が25体積%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
- 該酸化鉄粒子が八面体状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
- 該磁性黒色トナーは、結着樹脂100質量部に対して、酸化鉄粒子が50〜150質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
- 該磁性黒色トナーは、結着樹脂100質量部に対して、酸化鉄粒子が60〜120質量部含有されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
- 該黒色磁性トナーは、
a)カット率Zとトナー重量平均径X(μm)の関係が下記式(5)を満足し、
カット率Z≦5.3×X (5)
[但し、カット率Zは、東亜医用電子製フロー式粒子像分析装置FPIA−1000で測定される全測定粒子の粒子濃度A(個数/μl)、円相当径3μm以上の測定粒子濃度B(個数/μl)とした時、下記式(6)で示される。
Z=(1−B/A)×100 (6)]
且つ、該トナーの3μm以上の粒子において、円形度(a)の個数基準の円形度分布において、0.950以上の円形度(a)を有する粒子の個数基準累積値Yとトナー重量平均径Xの関係が下記式(7)を満足する。
円形度0.950以上の粒子の個数基準値Y≧exp5.51×X-0.645(7)[但し、トナーの重量平均粒子径X:5.0〜12.0μm]
或いは
b)カット率Zとトナー重量平均径X(μm)の関係が下記式(8)を満足し、
カット率Z>5.3×X (8)
且つ、該トナーの3μm以上の粒子において、円形度(a)の個数基準の円形度分布において、0.950以上の円形度(a)を有する粒子の個数基準累積値Yとトナー重量平均径Xの関係が下記式(9)を満足することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
円形度0.950以上の粒子の個数基準値Y≧exp5.37×X-0.545 (9)[但し、トナーの重量平均粒子径X:5.0〜12.0μm] - 該トナー粒子は、溶融混練工程、微粉砕工程及び分級工程を経て生成されたものであって、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する混合物を溶融混練し、得られた混練物を冷却した後、冷却物を粉砕手段によって粗粉砕し、得られた粗粉砕物からなる粉体原料を、微粉砕して、重量平均径が4乃至12μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が70個数%以下であり、粒径10.1μm以上の粒子が20体積%以下である微粉砕物を生成し、
該微粉砕された微粉砕物を多分割気流式分級機にて、少なくとも微粉体、中粉体及び粗粉体に分級し、分級された中粉体から生成されたことを特徴とする1乃至9のいずれかに記載の磁性黒色トナー。
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