JP2006037590A - 二重鋼管型ブレース材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軸力管に管軸と垂直方向の外力によって曲げが生じる場合であっても軸力管を補剛することができ、その上軸力管と補剛管とのすき間の管理幅(許容範囲)が比較的広く、製作が容易な二重鋼管型ブレースを提供する。
【解決手段】 建築構造物に設置されて軸方向の力を受ける軸力管11と、この軸力管11が挿入されている補剛管20又は軸力管11内に挿入されている補剛管20とを有し、軸力管11の両端部近傍の外周面に、金属線材からなる座屈防止部材を設けた。
【選択図】 図1

Description

本発明は、建築構造物に設置されて地震発生時の地震エネルギーを吸収する軸力管と、この軸力管を補剛する補剛管とからなる二重鋼管型ブレース材に関するものである。
従来、建築構造物に設置されて地震発生時の地震エネルギーを吸収する軸力管と、この軸力管を補剛する補剛管とからなる二重鋼管型ブレース材は、軸力管が吸収する地震エネルギーを増大させるために、軸力管の非軸対称局部座屈(以下、局部座屈という)を防止して、全長にわたる圧縮塑性変形を促進するための提案がなされていた。
このために、例えば軸力管の両端を厚肉鋼管によって形成したり、軸力管の両端外周に鋼管材や帯鋼材を設置(以下、端部補剛という)したりすることによって局部座屈を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、軸力管(内管)の両端に固定された継手部材の外周に溶接ビードを肉盛りし、この溶接ビードの外周を切削加工して補剛管(外管)とのすき間を可及的に小さくすること(以下、最小すき間という)によって局部座屈を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開平6−346510号公報(第4−5頁、図1) 特許第2711994号公報(第4頁、図1)
特許文献1に記載された発明は、端部補剛によって軸力管の軸方向の力のみが導入されるものについて、軸力管の圧縮塑性変形が促進されるという効果を有するものであるため、軸力管に曲げが掛かる場合には、圧縮塑性変形が十分に促進されないという問題があった。このため、軸力管を建築構造物に剛接合することができなかったり、ピン接合する場合には接合部の摩擦を低減する工夫が必要であったりした。
また、特許文献2に記載された発明は、溶接ビードによって軸力管と補剛管とのすき間を最小にするようにしているが、二重鋼管型ブレース材を製作する際に、軸力管を補剛管内に挿入するためには両者の間に所定のすき間(例えば、5〜10mm)が必要になるため、最小すき間の保証が困難であるという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、軸力管に管軸と垂直方向の外力によって曲げが生じる場合であっても軸力管を補剛することができ、その上軸力管と補剛管とのすき間の管理幅(許容範囲)が比較的広く、製作が容易な二重鋼管型ブレースを提供することを目的としたものである。
本発明に係る二重鋼管型ブレース材は、建築構造物に設置されて軸方向の力を受ける軸力管と、該軸力管が挿入されている補剛管又は該軸力管内に挿入されている補剛管とを有し、前記軸力管の両端部近傍の外周面に、金属線材からなる座屈防止部材を設けたものである。
上記の座屈防止部材を、金属線材により一層又は複数層のスパイラル状又は鳥かご状に形成した。
また、上記の座屈防止部材を、前記軸力管の両端部から中央部に向って該軸力管の直径の0.5倍以上3倍以下の範囲に設けた。
さらに、上記の座屈防止部材を、鉄筋材によって形成した。
また、上記の座屈防止部材に、アンボンド処理を施した。
本発明によれば、二重鋼管型ブレース材の軸力管の管端部近傍が座屈防止部材によって補剛されているので、軸力管に曲げ力が掛かった場合でもこれを抑制することができ、また、軸力管と補剛管との間に形成されるすき間の管理幅(許容範囲)を比較的広くできるため、補剛管への軸力管の挿入作用が容易になる。
また、二重鋼管型ブレース材を建築構造に剛接合又は特別な工夫をすることなくピン接合することができ、同時に、軸力管自体の地震エネルギの吸収量が増加して、制震効果を促進することができる。
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1に係る二重鋼管型ブレース材の要部を模式的に示した一部断面図である。なお、図には構造をわかり易くするために、各部の寸法を誇張して示してある。
図において、二重鋼管型ブレース材1(以下、ブレース材という)は、軸方向の力を受ける軸力管部材10と、この軸力管部材10を構成する軸力管11が挿入された補剛管20とからなっている。そして、軸力管11の両端部にはエンドプレート12が接合されており、エンドプレート12の端部にはそれぞれ十字ガセットプレート13が接合されている。なお、軸力管11が補剛管20から抜け出さないように、エンドプレート12にはストッパ(図示せず)が設けられている。この抜け出し防止手段はストッパに限定するものではなく、例えば、補剛管20と軸力管部材10の一部を連結するなど、他の手段によってもよい。
14は軸力管11の外周面に、両端部から中央部に向って所定の範囲に設けられた座屈防止部材を構成するスパイラル状に巻回された1本の鉄筋材(以下、スパイラル状鉄筋材という)で、その端部はエンドプレート12に巻回され、溶接により固定されている。このスパイラル状鉄筋材14の鉄筋径や巻回数、ピッチなどの巻回態様については、特に限定するものではない。
次に、軸力管11に設けた座屈防止部材を構成するスパイラル状鉄筋材14の設置範囲について説明する。
図6は座屈防止部材が設けられていない従来の二重鋼管型ブレース材における局部座屈の長さを示す度数分布図で、縦軸に度数、横軸に軸力管の鋼管径に対する座屈長さ(管端部から局部座屈が発生している位置までの長さ)を示す。
図から明らかなように、鋼管径の2分の1未満の長さ及び鋼管径の3倍以上の長さ位置には局部座屈は発生していない。そして、鋼管径の2分の1以上から3倍までの範囲に局部座屈が発生しているが、特に、鋼管径の2分の1以上で鋼管径以下の範囲に発生する局部座屈が全体のほぼ55%を占めており、鋼管径の2分の1以上で鋼管径の1.5倍未満の範囲に発生する局部座屈は、全体のほぼ87%を占めている。
このようなことから、本実施の形態における座屈防止部材、したがって、スパイラル状鉄筋材14を巻回する範囲を、局部座屈が発生する軸力管11の外径の0.5倍以上3倍以下の範囲とした。
また、軸力管11の外周面と補剛管20の内周面との間に形成されるすき間gは、軸力管11を補剛管20内に挿入する作業が可能な程度で、かつ軸力管11が波状に塑性変形(軸対称塑性変形)することが可能な程度とする。
この軸力管11と補剛管20との間に形成されるすき間gは、上述のように、施工時には大きく、動作時(地震発生時)には小さいことが望ましいが、本実施の形態においては、両者のすき間gを比較的大きくしても、軸力管14に巻回するスパイラル状鉄筋材14の径を適宜選定することにより、すき間gを調整して小さくすることができる。
軸力管11の両端部に設けた十字ガセットプレート13は、建築構造物に設置された十字ガセットプレートと突き合わされ、貫通孔13aに挿入したボルトによりスプライスプレートを介して接合される。この場合、十字ガセットプレート13の端部にエンドプレート12と平行して取付用プレートを固定し、この取付け用プレートを建築構造物に設けた設置用プレートに当接して、両者をボルトにより接合してもよい。なお、軸力管部材10を建築構造物に接合する手段は上記に限定するものではなく、例えばピン接合するなど、他の手段を用いてもよい。
上記の説明では、座屈防止部材として軸力管11の両端部近傍にスパイラル状鉄筋材14を巻回した場合を示したが、これに代えて、軸力管11の両端部外周の所定の範囲に、鳥かご状の鉄筋材(図2参照)を巻回(配設)し、その端部を溶接によりエンドプレート12に固定してもよい。また、スパイラル状鉄筋材14を一層に巻回した場合を示したが、二層以上の複数層に巻回してもよい。
このように構成した本実施の形態に係るブレース材1においては、軸力管部材10を構成する軸力管11のスパイラル状鉄筋材14(又は鳥かご状鉄筋材)が巻回された範囲は、スパイラル状鉄筋材14によって管周方向が拘束されて端部補強が達成されており、軸力管10は曲げ変形が生じにくくなっている。また、管軸に垂直な面外の変形(例えば、円径のままの拡径化や周長が伸びるような楕円形化等)も生じにくくなる。
このため、地震発生時に建築構造物が変形して、軸力管11に軸方向の圧縮力および曲げ力が作用した場合でも、軸力管11はスパイラル状鉄筋材14(又は鳥かご状鉄筋材)を巻回した範囲が、管軸方向および円周方向で補剛されているため、当該範囲において局部座屈が生じにくくなり、軸力管11の広い範囲(軸方向の長い範囲)で圧縮塑性変形が生じ、地震エネルギを十分吸収することができる。また、軸力管11の肉厚を小さくしても所定の制震性能を発揮することができる。
[実施の形態2]
図2は本発明の実施の形態2に係るブレース材の要部を模式的に示した一部断面図である。なお、実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号が付してある。
本実施の形態に係るブレース材1は、軸方向の力を受ける軸力管11と、エンドプレート12と一体に形成され、軸力管11の両端部に接合されたピン接合用のガセットプレート15と、軸力管11の両端部の外周面にエンドプレート12から中央部に向って、実施の形態1で説明した範囲に巻回(配設)されて端部が軸力管11又はエンドプレート12に溶接により固定された座屈防止部材である鳥かご状の鉄筋材16とにより構成された軸管力部材10と、軸力管11内に収容(挿入)された補剛管20とからなっている。なお、軸力管11の両端部に接合されたガセットプレート15は、これに設けた貫通孔15aにピンが挿通され、建築構造物に設置されたクレビス継手に傾動自在に接合される。
上記の軸力管11の外周に配設した鳥かご状の鉄筋材16の鉄筋径、ピッチ等は限定するものではなく、また、2層以上の複数層設けてもよい。なお、ピン接合用のガセットプレート15に代えて十字ガセットプレート13を接合してもよく、また、鳥かご状の鉄筋材16に代えてスパイラル状の鉄筋材14を巻回してもよい。
本実施の形態においても、実施の形態1の場合と同様の制震性能効果を発揮することができる。
上記の説明では、座屈防止部材としてスパイラル状鉄筋材14又は鳥かご状鉄筋材16を用いた場合を示したが、これらを構成する材料は鉄筋材に限定するものではなく、例えば、鋼、Al合金、Ti合金等の線材やワイヤロープなど、局所的に軸方向にかかる垂直力を抑制できる線状の金属材料(以下、鉄筋材を含めてこれらの材料を金属線材という)であればよい。なお、これら金属線材で形成されたスパイラル状や鳥かご状の座屈防止部材に、軸力管11の外周面や補剛管20の内周面との摩擦を低減するために、例えば潤滑材を塗布するなどのアンボンド処理を施すことが望ましい。
次に、実施の形態1に係るブレース材1の実施例を、図3を用いて説明する。
本実施例におけるブレース材1の軸力管11は、外径D:114.3mm、板厚t:4.5mm、長さL:2500mmの100N/mm2級低降伏点鋼管(例えば、JFEスチール(株)製 商品名「RIVERFLEX100−S」)RF100−Sの鋼管を用い、補剛管20には、外径D1:139.8mm、板厚t1:4.5mm、長さL1:2550mmのSTK400の鋼管を用いた。
また、エンドプレート12には板厚t2:25mm、外径:139.8mmで、SN490Bの円形鋼板を用い、十字ガセットプレート13は、板厚t3:16mm、301.5×112mmのSM490Aの長方形板1枚と、板厚t3:16mm、310.5×48mmのSM490Aの長方形板2枚とを十字状に接合して形成した。さらに、十字ガセットプレート13の端部に試験機に取付けるための取付用プレート17として、板厚t4:50mm、一辺260mmの正方形で、SM490Aの鋼板をそれぞれ固定した。
さらに、軸力管11の両端部外周面の管端部からL3:300mmの範囲に、径6mmの鉄筋(JIS SR235)をピッチ80mmで巻回したスパイラル状鉄筋材14をそれぞれ配設し、その終端部からほぼ10mmの範囲をエンドプレート12に巻回し、溶接により固定した。なお、上記の各部の数値はその一例を示すもので、これに限定するものではない。
このスパイラル状鉄筋材14を軸力管11に巻回するにあたっては、あらかじめ、径6mmの鉄筋を軸力管の外径とほぼ等しい内径で、ピッチ80mm、長さ約310mmのスパイラル状に巻回し、これを軸力管11の管端部から挿入し、その終端部の長さ約10mmをエンドプレート12に巻回し、半自動の炭酸ガスアース溶接機によりフレア溶接して固定した。なお、スパイラル状鉄筋材14の終端部を補剛管20側に折曲げて、補剛管20に溶接して固定してもよい。
[比較例]
次に、本発明に係るブレース材の性能を確認するために、上記の実施例に係るブレース材1と、これと同じ構造で座屈防止部材が設けられていない従来のブレース材との比較試験を行った。
図4は比較試験を行う状態を示す説明図である。試験機30は、固定側の加力用治具31(以下、受力治具という)と、下端部が傾動支点32に連結されて立設され、傾動支点32を中心に傾動する加力用柱33と、この加力用柱33の上部に設けられた傾動側の加力用治具34(以下、付力治具という)と、加力用柱33を傾動する傾動駆動手段(図示せず)とからなっている。
上記のような試験機30により、試験体である前記実施例のブレース材1を試験するにあたっては、軸力管11の両端部に設けた取付用プレート17を、受力治具31と付力治具34によりそれぞれボルトにより剛接合する。このとき、ブレース材1は、直立した加力用柱33に対して45゜の角度で取付けられる。
そして、傾動駆動手段により加力用柱33を傾動支点32を中心に平面内を繰り返し傾動させると(所定範囲内で、転倒と起立を繰り返す)、試験体であるブレース材1には、軸方向の引張り力及び圧縮力に加えて、曲げ力が作用する。なお、上記の説明では、実施例に係るブレース材1について説明したが、従来のブレース材についても同様である。
図5は本発明(実施例)に係るブレース材1と、従来のブレース材の試験結果を示す応力−歪み線図で、図4において、加力用柱33の位置C(傾動支点32から2500mmの距離)が、水平方向に所定範囲変位しては元の位置に戻る場合(図4のCからD−Eの間を繰り返して往復する場合)の試験結果を示すものである。
そして、縦軸は、軸力管11に発生する応力度(傾動駆動手段によって付加された荷重の軸力管11の軸方向成分を、軸力管11の断面で除した計算値)であって、圧縮方向をプラス方向(上方向)に示す。また、横軸は、図4の十字ガセットプレート13に設けた標点A,B間の距離の伸び量を、当初の長さで除した測定値であって、圧縮歪みをプラス方向(右方向)に示す。
図5(a)は本発明に係るブレース材1の試験結果を示す線図である。
まず、図4において、加力用柱33が傾動駆動手段に駆動されて、傾動支点32を中心に図の左方向に傾動すると、軸力管11に圧縮力が加わって原点から弾性変形を開始し、圧縮降伏したのちは僅かに加工硬化しながら塑性変形が進んでいく。そして、加力用柱33が図4の位置Dに達すると、再び位置Cに向って戻る。
ついで、加力用柱33は図4の右方向に傾動し、軸力管11には引張力が加わって引張り降伏し、ごく僅かに加工硬化しながら塑性変形が進んでいく。そして、加力用柱33が図4の位置Eに達すると、再び位置Cに戻る。
以下、同様に加力用柱33はD−E間の傾動を繰り返すため、軸力管11に生ずる応力−歪みが図示するようなバウシンガー効果を有するヒステリシス曲線として描かれる。そして、30回目の加力のときに、位置(イ)において応力の増加が停止し、軸力管11に座屈が発生した。
一方、従来のブレース材の試験においては、図5(b)に示すように、本発明に係るブレース材1に準じたバウシンガー効果を有するヒステリシス曲線が描かれ、このヒステリシス曲線は本発明に係るブレース材1と同様の挙動を示している。
しかしながら、9回目の加力に入る直前、すなわち、引張り加重から圧縮加重に移行した位置(ロ)において、屈部座屈が発生した。
以上の比較結果から明らかなように、本発明に係るブレース材1は、軸力管11に座屈防止部材であるスパイラル状鉄筋材14を巻回したことにより、従来のブレース材に比べて軸力管11への繰り返し加力回数が、9回から30回と3倍以上増加しており、本発明に係るブレース材1が顕著な効果を有することが確認された。
本発明の実施の形態1に係るブレース材の要部を模式的に示した一部断面図である。 本発明の実施の形態2に係るブレース材の要部を模式的に示した一部断面図である。 図1の実施例の説明図である。 本発明に係るブレース材と従来のブレース材との比較試験を行う状態を示す説明図である。 比較試験の結果を示す応力−歪み線図である。 従来のブレース材における局部座屈長さを示す度数分布図である。
符号の説明
1 ブレース材、10 軸力管部材、11 軸力管、12 エンドプレート、13 十字ガセットプレート、14 スパイラル状鉄筋材、15 ピン接合用のガセットプレート、16 鳥かご状の鉄筋材、17 取付け用プレート、30 試験機。

Claims (5)

  1. 建築構造物に設置されて軸方向の力を受ける軸力管と、該軸力管が挿入されている補剛管又は該軸力管内に挿入されている補剛管とを有し、
    前記軸力管の両端部近傍の外周面に、金属線材からなる座屈防止部材を設けたことを特徴とする二重鋼管型ブレース材。
  2. 前記座屈防止部材を、金属線材により一層又は複数層のスパイラル状又は鳥かご状に形成したことを特徴とする請求項1記載の二重鋼管型ブレース材。
  3. 前記座屈防止部材を、前記軸力管の両端部から中央部に向って該軸力管の直径の0.5倍以上3倍以下の範囲に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の二重鋼管型ブレース材。
  4. 前記座屈防止部材を、鉄筋材によって形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二重鋼管型ブレース材。
  5. 前記座屈防止部材に、アンボンド処理を施したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二重鋼管型ブレース材。
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