JP2006029951A - 光学式速度計および変位情報測定器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ドロップ・アウトの発生を防止できて、高精度の測定を行うことができる光学式速度計および変位情報測定器を提供すること。
【解決手段】 PD1から出射された光束を、BS4で第1および第2光束8,9で分割して、被測定物10上の同一点に照射する。第1および第2光束8,9の反射光の干渉により生成されたビート信号を光電変換素子12で検出し、信号処理回路でビート信号に基づいて被測定物10の移動速度を算出する。被測定物10は平滑な表面を有するので、第1および第2光束8,9の反射光の間の光路差に起因するビート信号のドロップ・アウトが防止される。
【選択図】図1
【解決手段】 PD1から出射された光束を、BS4で第1および第2光束8,9で分割して、被測定物10上の同一点に照射する。第1および第2光束8,9の反射光の干渉により生成されたビート信号を光電変換素子12で検出し、信号処理回路でビート信号に基づいて被測定物10の移動速度を算出する。被測定物10は平滑な表面を有するので、第1および第2光束8,9の反射光の間の光路差に起因するビート信号のドロップ・アウトが防止される。
【選択図】図1
Description
本発明は、光学式速度計および変位情報測定器に関し、例えば、レーザ光のドップラー効果によって被測定物の速度および変位を測定する光学式速度計および変位情報測定器に関する。
一般に光源と観測者が相対的な運動をしている時、ドップラー効果により光は周波数の変化を受ける。レーザドップラー速度計(以下、LDV(Laser Doppler Velocimeter)と言う)はこの効果を利用して、移動する被測定物にレーザ光を照射して、その被測定物からの散乱光のドップラー周波数偏移を測定し、被測定物の移動速度を測定するものである。このLDVは1964年にYehとCumminsによって発表され(Appl. Phys. Lett. 4-10 (1964) 176)、現在では一般に広く知られており、実用化されている。
図10は、従来の代表的なLDVの光学系を示した図である。
図10において、101は半導体レーザであるレーザダイオード(以下、LD(Laser Diode)と言う)、112は受光素子であるフォトダイオード(以下、PD(Photo Diode)と言う)、106は回折格子、102はコリメータレンズ(以下、CLと言う)、105はミラー、111は集光レンズ、107は回折格子103による+1次回折光の第1光束、108は回折格子103による−1次回折光の第2光束、113は被測定物である。
上記構成の光学系では、LD101から出射したレーザ光はCL102により平行光束に変換された後、回折格子106により角度θの回折角で±1次回折光に分割されて、第1および第2光束107,108となる。そして、この第1および第2光束107,108はそれぞれミラー105で反射された後、被測定物110の表面に入射角θで入射して重ね合わせられる。上記被測定物110で散乱された第1および第2光束107,108はドップラー周波数偏移を受けており、上記LD101の発振周波数と若干異なり、また、上記散乱された第1および第2光束107,108の周波数は互いに若干異なる。このため、上記散乱された第1および第2光束107,108の干渉波はうなりを生じる。このうなりをビート信号と呼ぶ。このビート信号の周波数(つまり、うなりの周波数)をPD102でヘテロダイン検波することにより、上記被測定物110の移動速度を求めることができる。以下、上記移動速度を求める方法を詳細に説明する。
上記被測定物110が図10のように右向きに移動する場合、この移動方向を正方向とすると、第1光束107においては−fd、第2光束108においては+fdのドップラー周波数偏移を受ける。これにより、第1光束107の見かけの周波数は(f0−fd)となり、第2光束108の見かけの周波数は(f0+fd)となる。f0は、LD101の発振周波数である。このとき、LD101から出射される光の電場は、E0・cos(2πf0t)と表すことができるので、第1光束107は下記の式1で表すことができ、第2光束108は下記の式2で表わすことができる。
ただし、上記式1,2において、f0はLD101の出射光の周波数、E0はLD101の出射光の振幅、EAは第1光束107の振幅、EBは第2光束108の振幅、φAは第1光束107の位相、φBは第2光束108の位相である。
光の周波数は一般に100THz(1014Hz)程度であるので、式1や式2の周波数情報を直接測定することができない。このため、上述のようにヘテロダイン検波が一般に用いられる。すなわち、f0≫fdが成り立つので、式1および式2の光の干渉波は、下記の式3のように表すことができる。
ここで、式3の左辺の<>は、干渉波の時間平均の値を表す。このように、光の周波数よりも大幅に小さい上記干渉波の周波数は、上記PD102で測定することができる。
図11は、移動速度Vで移動する被測定物110に関して、2つの光束がそれぞれ角度αおよびβで被測定物110に入射すると共に、角度γの位置で散乱光を受光する場合の光路を示す図である。
ドップラー効果による周波数の偏移量は、厳密には相対論によるローレンツ変換を用いて求められるが、移動速度Vが光速cに比べて十分小さいときには、近似的に以下のように求めることができる。光源A、光源Bからの光と移動物体の相対速度VA1,VB1は、下記の式4および5のように表される。
上記式10および11の周波数周波数fA2,fB2と、入射光の周波数f0(=c/λ)との差がドップラー周波数偏移量fdになる。いま、観測点で測定される2つの光束のうなり周波数2fd(式3参照)は、c≫Vであることから、以下の式12のように表される。
したがって、式3で表される周波数2fdを測定し、式13を用いて計算することにより、被測定物110の移動速度Vを求めることができる。
また、式13は、以下のように幾何学的に考えることも可能である。図12は、図10の2つの光束(第1および第2光束107,108)が重なり合う領域の拡大図である。2つの光束が互いに角度2θをなして交差しており、図中の破線は各々の光束の等波面の一部を示している。この破線と破線との間隔が光の波長λとなる。また、帯状の領域が干渉縞の明部であり、その間隔をΔとすると、このΔは下記の式14のように表される。
つまり、式13のうなり周波数2fdと等しい。したがって、上記式3で表される周波数2fdを測定し、上記式13を用いて計算することにより、被測定物110の移動速度Vが求まる。例えば、λ=650(nm)、θ=12°の時、式14よりΔ=1.56(μm)であり、被測定物110が干渉縞上をΔだけ移動した時にビート信号が1パルス出力される。つまり、LDVのパルスカウントによる最小の移動検出量はΔであり、非常に高分解能な速度計および変位計を提供することができる。
しかしながら、上記LDVでは、ある時刻でビート信号の振幅が非常に小さくなり、上記ビート信号の周波数を検出できなくなるドロップ・アウトと呼ばれる現象が発生する。ドロップ・アウトが起きている間は、ビート信号を検出できないので、速度や変位が算出できず、測定器としての精度が低下するという問題がある。このドロップ・アウトは、被測定物110のランダムな表面粗さに起因する。すなわち、上記被測定物110の表面に凹凸が存在し、この凹凸の凹部の底と、凸部の頂点との間の距離が、入射光束107,108の波長以上の大きさである場合、凹部で反射した光と、凸部で反射した光との間に光路差が生じて干渉が生じる。上記光路差によって両光束は位相差が生じて、この位相差の値に応じて、上記干渉の光量が強まり、または、弱まる。
ここで、ビームスポットは、このビームスポットの領域内の各点で反射された光(以下、要素光という)からなると考える場合、受光素子で測定されるビート信号は、上記被測定物110のビームスポットの領域内の要素光の足し合わせである。以下、要素光に着目して、ビート信号のドロップ・アウトが生じる原因を説明する。
図13は、要素光について、ドロップ・アウトが生じる様子を示した図である。図13において、横軸は時間軸であり、縦軸は、要素光の変動振幅(すなわち、ビート信号の振幅)である。A01,A02,A03は、各ビート信号51,52,53の振幅の零を示す基準点である。
図13では、2つの要素光について考える。51は、所定の点における要素光に関するビート信号である。被測定物が干渉縞を横切る時、上記被測定物の表面が光波長以上の範囲の起伏を有する表面粗度であるとすると、上記被測定物の表面の反射率の違いから、均一な振幅のビート信号が得られるのではなく、振幅変調されたビート信号51が得られる。一方、52は、51と異なる点における要素光に関するビート信号である。上記異なる2つの観測点から受光素子までには光路差が生じるので、51のビート信号と、52のビート信号との間に位相差が生じる。また、ビート信号51,52を各々振幅変調する低周波成分も、上記各ビート信号51,52が生じる位置が異なるので、位相が互いに異なる。
ここで、受光素子で観測されるビート信号53は、上記2つの点からの異なるビート信号51,52を重ね合わせたものである。上記各ビート信号51,52には、信号の欠落部分は無いものの、これらを足し合わせると、ビート信号53のように振幅が略零となる部分が生じる。この振幅が略零となる部分が、ドロップ・アウトとなる部分である。
このようなドロップ・アウトによる測定精度の低下を解決するため、従来、ドロップ・アウトの発生を検知すると、このドロップ・アウト直前のビート周波数の値を保持することにより、上記ドロップ・アウトの間の信号を補間する技術が提案されている(例えば、特許文献1:特開平4−25792号公報参照)。
しかしながら、上記従来の技術は、ドロップ・アウトの期間に現実のビート信号を測定しているのでは無くて、ドロップ・アウト直前のビート信号を保持しているだけなので、例えば、急激な速度変化が起きた時には、測定誤差が大きくなる。さらに、ドロップ・アウトの期間が長くなるにつれて、速度計または変位計としての精度が低下する。
一方、ドロップ・アウトによる測定精度の低下を防ぐ他の技術として、従来、複数の観測点からのビート信号に基づいて速度等の測定を行うものが提案されている(例えば、特許文献2:特開平7−229911号公報参照)。この技術では、1つの観測点からのビート信号にドロップ・アウトが発生すると、他の観測点からのビート信号に基づいて測定を行うことにより、測定精度の低減を回避する。したがって、観測点を増大するにつれて、ドロップ・アウトの発生確率を低くすることができる。
しかしながら、上記従来の技術は、ドロップ・アウトの発生確率を低くできても、原理的にドロップ・アウトを避けることはできない。また、観測点を増やすことにより信号処理が複雑になり、LDVの複雑化とコスト上昇を招くという問題がある。
特開平4−25792号公報
特開平7−229911号公報
そこで、本発明の課題は、ドロップ・アウトの発生を防止できて、高精度の測定を行うことができる光学式速度計および変位情報測定器を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の光学式速度計は、
半導体発光素子と、
上記半導体発光素子から出射された光束を、第1および第2光束に分割する光分岐素子と、
上記第1および第2光束を、平滑な表面を有する被測定物の上記表面の略同一の位置に照射する照射系と、
上記被測定物の表面で反射されて、周波数偏移が生じた上記第1および第2光束の正反射光を受ける受光素子と、
上記受光素子からの出力を処理して、上記周波数偏移の量を算出する信号処理回路部とを有することを特徴としている。
半導体発光素子と、
上記半導体発光素子から出射された光束を、第1および第2光束に分割する光分岐素子と、
上記第1および第2光束を、平滑な表面を有する被測定物の上記表面の略同一の位置に照射する照射系と、
上記被測定物の表面で反射されて、周波数偏移が生じた上記第1および第2光束の正反射光を受ける受光素子と、
上記受光素子からの出力を処理して、上記周波数偏移の量を算出する信号処理回路部とを有することを特徴としている。
上記構成によれば、上記照射系で照射される上記第1および第2光束は、上記被測定物の平滑な表面で反射するので、この第1および第2光束の正反射光による干渉光は、光強度の変化が生じ難い。したがって、上記干渉光の光量の低下に起因するいわゆるドロップ・アウトの問題を防止することができる。その結果、上記受光素子は、安定して干渉光(ビート信号)を検出できると共に、上記処理回路部は、上記周波数偏移の量を高精度に安定して算出できる。これにより、上記被測定物の例えば速度を、高精度に安定して測定できる。
なお、上記正反射光とは、上記被測定物の表面において入射角と等しい出射角をなす反射光をいう。
なお、上記被測定物の平滑な表面とは、JIS−B−0601−2001に準ずる表面粗さにおいて、Rz≦λを満たす粗さを有する表面をいう。ここにおいて、Rzは最大高さであり、λは上記被測定物に入射する光の波長である。
一実施形態の光学式速度計は、上記光分岐素子は、光の入射側と出射側に配置されて格子定数が互いに異なる複数の回折格子と、光学ミラーとを有する。
上記実施形態によれば、上記光分岐素子として、上記複数の回折格子および光学ミラーを用いることにより、光学系を小さくすると共に、第1および第2光束の交差角を小さくすることができる。したがって、光学式速度計の小型化と、測定精度の高精度化とを行うことができる。
一実施形態の光学式速度計は、上記光分岐素子の回折格子は、ブレーズド型である。
上記実施形態によれば、上記ブレーズド型の回折格子を用いることにより、所定の次数の回折光に光量を集中させることができるので、光の利用効率を高めることができる。
一実施形態の光学式速度計は、上記受光素子は、上記第1および第2光束の反射光が互いに交差する位置に配置されている。
上記実施形態によれば、上記受光素子の配置により、この受光素子が有する受光面上で、第1および第2光束を干渉させることができ、その結果、確実にビート信号を検出できる。
一実施形態の光学式速度計は、上記被測定物と受光素子との間に位置するピンホールを備える。
上記実施形態によれば、上記ピンホールによって、上記第1および第2光束による干渉光のみを、上記受光素子に入射することができるので、S/N(信号/雑音)比の高いビート信号を得ることができる。
一実施形態の光学式速度計は、上記半導体発光素子から出射された光束を拡大する光束拡張素子を備える。
上記実施形態によれば、上記光束拡張素子を用いることにより、上記第1および第2光束が上記被測定物で反射された反射光について、互いに交差する距離を長くできる。これにより、上記受光素子の設置範囲を大幅に拡大することができる。また、上記被測定物の表面にうねりなどが存在して、上記第1および第2光束の正反射の方向が多少ずれた場合でも、上記受光素子は、両光束の干渉光を比較的高い確率で受けることができる。
一実施形態の光学式速度計は、上記第1および第2光束の波長は、その第1および第2光束の照射された被測定物の表面の領域における凹凸の頂点と底との間の寸法よりも大きい。
上記実施形態によれば、上記第1および第2光束が上記被測定物の表面で反射された反射光は、互いに位相差が少ないので、干渉光が弱まることが防止される。したがって、従来のドロップ・アウトの問題を効果的に防止できる。
一実施形態の光学式速度計は、上記第1および第2光束を、光学ミラーである上記被測定物の表面に照射する。
上記実施形態によれば、上記第1および第2光束を、光学ミラーである上記被測定物の表面に照射することにより、上記第1および第2光束の反射光による干渉光について、ドロップ・アウトのないビート信号を得ることができる。
一実施形態の光学式速度計は、シリコンウェハを上記被測定物とする。
上記実施形態によれば、ドロップ・アウトの無いビート信号に基づいて、上記シリコンウェハの速度を高精度に測定することができる。
一実施形態の光学式速度計は、上記被測定物と受光素子との間の光軸上に、集光部を備える。
上記実施形態によれば、上記集光部によって、上記受光素子上の第1および第2光束の正反射光が重なる領域を、増大することができるので、ビート信号の測定精度を増大することができる。
一実施形態の光学式速度計は、上記集光部は、レンズ群である。
上記実施形態によれば、上記レンズ群によって、上記受光素子上の第1および第2光束の正反射光が重なる領域を、容易に増大できる。
一実施形態の光学式速度計は、上記集光部は、透過型回折格子である。
上記実施形態によれば、上記透過型回折格子によって、上記受光素子上の第1および第2光束の正反射光が重なる領域を、容易に増大できる。
一実施形態の光学式速度計、上記透過型回折格子は、ブレーズド型である。
上記実施形態によれば、上記ブレーズド型回折格子により、上記第1および第2光束の正反射光について、特定の次数に集中した回折光を得ることができるので、光の利用効率を高めることができ、その結果、ビート信号のS/N比を増大できる。
一実施形態の光学式速度計は、上記集光部は、光ファイバー導波路である。
上記実施形態によれば、上記光ファイバー導波路を用いることにより、上記被測定物から受光素子にレンズで反射光を導くよりも、上記被測定物に対する受光素子の配置位置の自由度を増大できる。また、上記第1および第2光束の交差角度が、上記被測定物と受光素子との間に必要な距離に影響を与えないから、上記交差角度に対する自由度を増大できる。
一実施形態の光学式速度計は、上記集光部は、内側に鏡面が形成された円錐形ミラーである。
上記実施形態によれば、上記円錐形ミラーの内側に、上記第1および第2光束の反射光を導くことにより、上記第1および第2光束の反射光を重ね合わせて、上記受光素子の受光面の所定位置に導くことができる。上記受光素子の被測定物に対する配置位置が、上記被測定物への第1および第2光束の反射光の入射角度で制限されることが無いので、上記受光素子の配置位置の自由度を増大できる。
一実施形態の光学式速度計は、上記集光部は、鏡面が互いに向き合った2つの平面ミラーである。
上記実施形態によれば、上記2つの平面ミラーの間に、上記第1および第2光束の反射光を導くことにより、上記第1および第2光束の反射光を重ね合わせて、上記受光素子の受光面の所定位置に導くことができる。したがって、上記被測定物に対する上記受光素子の配置位置の自由度を増大できる。
本発明の変位情報測定器は、上記光学式速度計を備えることを特徴としている。
上記構成によれば、ドロップ・アウトが無いビート信号に基づいて、上記被測定物の変位を高精度に測定することができる。
以上のように、本発明の光学式速度計は、半導体発光素子と、上記半導体発光素子から出射された光束を、第1および第2光束に分割する光分岐素子と、平滑な表面を有する被測定物と、上記第1および第2光束を、上記被測定物の表面の略同一の位置に照射する照射系と、上記被測定物の表面で反射されて、周波数偏移が生じた上記第1および第2光束の正反射光を受ける受光素子と、上記受光素子からの出力を処理して、上記周波数偏移の量を算出する信号処理回路部とを有するので、上記被測定物の表面で反射された第1および第2光束の反射光について、位相や振幅の乱れを低減することができるので、これらの光束の干渉光量を安定にできて、ドロップ・アウトの発生を効果的に防止できる。
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の光学式速度計を示す概略図である。図1では、光学部品等の配置のみを表示してあり、その他の各光学部品を保持する部品や、信号処理回路等は省略している。
この光学式速度計は、半導体発光素子としてのLD(Laser Diode)1を備える。このLD1から出射した光は、コリメータレンズ(以下、CLという)2と絞り3を介して平行光束となる。
上記LD1から出射する光は、所定角度の広がりをもって進行する。上記LD1からの出射光をそのまま被測定物に照射しようとすると、上記出射光は、進行距離が長くなるに伴って波面が球面状になり、平面波でなくなるため、測定点で干渉縞を形成しなくなってしまう。また、光束が広がるため、光強度が分散されてしまい、信号のS/N比が悪化してしまう。そこで、図1に示すように、CL2を所定位置に配置することにより、上記LD1からの出射光を平行光束にして、この出射光を、進行距離に関わらず、平面波となるようにしている。
また、LD1から出射した光の強度分布は、光軸を中心にガウス分布をしており、その裾の広がり方は光の偏光方向に応じて異なるファーフィールドパターン(FFP)となる。このため、出射したLD光をそのまま被測定物に照射すると、この被測定物の測定点上に光量のムラが生じ、干渉縞の強度にムラが生じて、ビート信号を高精度に検出し難くなる。そこで、上記CL2の出射側に絞り3を設け、この絞り3によって光束の外側の光強度の弱い部分をカットして、光強度が比較的強くて一様な光束を形成する。
この光学式速度計は、光分岐素子としてのビームスプリッタ(以下、BSと言う。)4と、照射系としてのミラー5を備える。
上記BS4は、LD1が出射した光を2光束に分割する。この2つの光束のうちの第1光束8は、BS4を透過した光束である。上記BS4により反射した第2光束9は、ミラー5で反射して被測定物10に照射される。第1光束8と第2光束9は、上記BS4とミラー5によって、被測定物10上で一点に重ね合わされる。
上記被測定物10の表面は、粗度が上記LD1の発光波長以下である平滑な表面に形成されている。上記被測定物10は、例えば、Siウェハ等を用いて、表面を光学ミラーに形成するのが好ましい。しかしながら、被測定物10はこれに限定されることなく、上記LD1の発光波長以下の表面粗度を有するものであれば、何でもよい。
図2は、図1の光学式速度計において、被測定物10が、特に表面加工のなされていないステンレスと、Siウェハとである場合に測定されたビート信号を示す図である。図2から分かるように、上記被測定物10がステンレスの場合、ビート信号が低周波のノイズで振幅変調されている。これは、ステンレス表面のランダムな粗さによるもので、上記ステンレスの表面には、入射光束の波長以上の範囲で起伏する凹凸が存在し、この凹部での反射光と、凸部での反射光との間には光路差が生じるため、これらの反射光同士は干渉する。上記光路差に応じた位相差により、上記干渉光は強め合い、または、弱め合う。上記測定物の表面のビームスポット内の各点における反射光の一つ一つを要素光と呼ぶと、これらの要素光の足し合わせが、受光素子としての光電変換素子12で、ビート信号として観測される。従来、図13に示したように、上記要素光が弱め合うときに、ビート信号のドロップ・アウトが発生する。これに対して、本発明の被測定物10としてSiウェハを用いた場合、図2に示すように低周波の振幅変調は生じない。これは、Siウェハの表面の粗さが、LD1の出射光の波長よりも小さいため、上記Siウェハ表面におけるビームスポットの各要素光の位相が、全て略同一に揃うことによる。すなわち、被測定物の反射面において、第1および第2光束8,9の要素光の総和であるビート信号の位相が揃っている。したがって、この状態ではドロップ・アウトは発生しない。
被測定物10において1点に集光された2つの光束8,9は、交差角の広がりをもって反射する。図3は、被測定物10上における2つの光束8,9の照射の様子を表した模式図である。上記2つの光束8,9が重なり合う領域に形成される干渉縞領域21は、光電変換素子12でヘテロダイン検波によりビート信号として観測される。しかしながら、上記光電変換素子12は、光の周波数における光量変動に追随する応答速度を有していないので、1つの光束8,9のみの部分22に応じた信号はDC成分となる。このDC成分は、式3から明らかなように、AC信号の周波数を検出する上でノイズとなる。上記2つの光束8,9は、被測定物10から離れるに伴って分離するので、上記光電変換素子12が被測定物10から離れるに伴って、2つの光束8,9が重なりあう干渉縞領域の面積は減ることとなる。この干渉縞領域が減少した状態では、上記光電変換素子12からの信号は、DCノイズが支配的となってS/N比の低いビート信号となる。したがって、S/N比を向上するためには、分離した第1および第2光束8,9の反射光が、光電変換素子12上で重なる部分を多くするか、あるいは、2つの反射光を分離しないように光電変換素子12上に集光する集光部11が必要である。上記集光部11でS/N比を向上することにより、光の利用効率を高めることができるので、LD1の出射光量を低減でき、その結果、光学式速度計の消費電力を抑えることができる。
上記光電変換素子12は、上記S/N比が比較的高いビート信号を受け、この光電変換素子12からの出力に基づいて、図示しない信号処理回路によって、上記ビート信号の周波数から被測定物10の移動速度を算出する。あるいは、上記ビート信号をパルスカウントすることにより、上記被測定物10の変位量を算出して、変位情報測定器を構成してもよい。
上記実施形態において、光分岐素子としてBS4を用いたが、上記光分岐素子は、図4に示すように、入射側と出射側とで格子定数が異なる2つの回折格子と光学ミラーとで構成されたものを用いてもよい。
なお、図4において、上記被測定物10に第1および第2光束を導く半導体発光素子、光分岐素子および照射系は、図1と同様であるので、省略している。以下、図5〜9において、半導体発光素子、光分岐素子および照射系を、同様に省略している。
図4の光分岐素子4は、格子定数が互いに異なる2つの回折格子42,43と、この回折格子42,43の間に配置されたミラー41とで構成している。この光分岐素子において、LD1からの光束7が、入射側の回折格子43を通過する。この回折格子43により、上記光束7は0次回折光と±1次回折光に分けられる。上記±1次回折光について、正負のうちのいずれか一方の1次回折光を用いる。ここで、上記回折格子として、ブレーズド型回折格子を使用して、所定の次数の回折光に光量を集中させて、光の利用効率を高めてもよい。
上記入射側の回折格子43で回折した光束は、ミラー41で反射して、出射側の回折格子42を透過する。上記出射側の回折格子42の格子定数を設定することにより、図1のBS4およびミラー5と同様の機能を有する光学ブロックを構成することができる。この光学ブロックにより、上記BS4およびミラー5によるよりも小型で、しかも、第1および第2光束の交差角度が小さい光学系を構成できる。
また、上記被測定物10と、光電変換素子12との間には、ピンホールを配置してもよい。上記ピンホールを適切に配置することにより、図3に示した第1および第2光束の重複領域21に対応する光のみを透過させて、第1および第2光束のうちの一方のみの反射光がDCノイズとして観測される不都合を防止できる。これにより、上記光電変換素子12が検出するビート信号のS/N比を向上することができる。
本実施形態では、被測定物10と光電変換素子12との間に、上記被測定物10での反射光を集めて上記光電変換素子12に導く集光部11を備える。この集光部11は、例えば、図5に示すように、レンズ群11で構成することができる。このレンズ群11は、2枚のレンズで構成されており、第1のレンズで上記被測定物10からの反射光を平行光に戻すことにより、上記被測定物10と光電変換素子12との間の距離を、比較的高い自由度で設定することができる。
上記集光部としては、図6に示すように、透過型回折格子11を用いてもよい。上記透過型回折格子11を使用することにより、部品点数を削減できて、光学系を小型化できる。また、透過型回折格子11に換えて、ブレーズド型回折格子を配置してもよい。これにより、特定の次数の回折光に光量を集中させることができて、光の利用効率を高めることができる。
上記集光部としては、図7に示すように、光ファイバー導波路を使用してもよい。この光ファイバー導波路は、上記被測定物10の反射光を集光する受光レンズ17と、この受光レンズ17で集光した反射光を光電変換素子12に導く光ファイバー18とを有する。上記光ファイバー導波路を用いることにより、上記被測定物10に近接して上記光電変換素子12を配置することができる。さらに、上記光電変換素子12の設置位置を、例えば集光部としてレンズ群を用いた場合と比較して、上記被測定物10への光束の入射角等の制限を受けることなく、比較的高い自由度で設定することができる。本実施形態では、上記被測定物10への入射光と反射光とが90°をなすので、この入射光と反射光とを導く光学系をレンズで構成するよりも大幅に小さいスペースを用いて、被測定物10から光電変換素子12に反射光を導くことができる。したがって、光学式速度計を大幅に小型化できる。また、被測定物10近傍の2光束を、光ファイバー18で光電変換素子12に導くことができるので、S/N比の高いビート信号を得ることができる。また、光ファイバー18を用いることにより、上記被測定物10と光電変換素子12との間の距離を大幅に小さくすることができて、光学系を大幅に小型化できる。
また、上記集光部としては、図8に示すような円錐ミラー13を使用してもよい。上記円錐ミラー13の頂点部分にはピンホールが形成されていると共に、円錐形状の底に相当する部分が開口している。上記円錐ミラー13の開口から入射した第1および第2光束の反射光は、この円錐ミラー13の内側面の鏡面を反射して上記頂点部分に向かう。これに伴って、上記第1および第2光束の反射光が重なり合って、上記ピンホールから出射する。この円錐ミラー13の頂点部分に接して配置された光電変換素子12により、上記重なり合った両光束の反射光が直ちに検出される。したがって、S/N比の高いビート信号を検出することができる。
また、上記円錐ミラー13は、平面ミラーで光束を導く場合のような、第1および第2光束8,9の反射光が形成する面と平面ミラーとがなす角度に対する制限が無くて、上記被測定物10に対して自由に設置できる。したがって、上記円錐ミラー13を用いることにより、容易にS/N比が高いビート信号を検出することが可能となる。
また、上記集光部としては、図9に示すように、上記被測定物10と光電変換素子12との間に、2つの光学ミラー11a,11bを、この光学ミラー11a,11bの間の距離が、上記被測定物10から光電変換素子12に向かうにつれて小さくなるように「ハ」字形に対向させて構成してもよい。ここで、上記両ミラー11a,11bは、上記被測定物10に入射する光軸が含まれる面と、略垂直に設置されている。これにより、上記被測定物10で反射された両光束が一旦分離したときでも、この反射光束を、図7に示すように、2枚のミラー11a,11bで徐々に集光する。その結果、上記ミラー11a,11bの光出射側に配置された光電変換素子12上では、上記両反射光束が重ね合わされて、良好なS/N比のビート信号が検出される。このように、上記ハ字形に配置した2つの光学ミラー11a,11bを用いることにより、上記第1および第2光束8,9の交差角に対する光学系の制限を低減することができる。
上記各実施形態において、受光素子として、PD(Photo Diode)12を用いたが、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージャ、CCD(charge-coupled device)イメージャ等を用いてもよい。
1 LD(レーザーダイオード)
2 CL(コリメータレンズ)
3 絞り
4 BS(ビームスプリッタ)
5 ミラー
7 LDからの光束
8 第1光束
9 第2光束
10 被測定物
11 集光部
12 光電変換素子
2 CL(コリメータレンズ)
3 絞り
4 BS(ビームスプリッタ)
5 ミラー
7 LDからの光束
8 第1光束
9 第2光束
10 被測定物
11 集光部
12 光電変換素子
Claims (16)
- 半導体発光素子と、
上記半導体発光素子から出射された光束を、第1および第2光束に分割する光分岐素子と、
上記第1および第2光束を、平滑な表面を有する被測定物の上記表面の略同一の位置に照射する照射系と、
上記被測定物の上記表面で反射されて、周波数偏移が生じた上記第1および第2光束の正反射光を受ける受光素子と、
上記受光素子からの出力を処理して、上記周波数偏移の量を算出する信号処理回路部と
を有することを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計において、
上記光分岐素子は、光の入射側と出射側に配置されて格子定数が互いに異なる複数の回折格子と、光学ミラーとを有することを特徴とする光学式速度計。 - 請求項2に記載の光学式速度計において、
上記光分岐素子の上記回折格子は、ブレーズド型であることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計において、
上記受光素子は、上記第1および第2光束の反射光が互いに交差する位置に配置されていることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計において、
上記被測定物と受光素子との間に位置するピンホールを備えることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計において、
上記半導体発光素子から出射された光束を拡大する光束拡張素子を備えることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計において、
上記第1および第2光束の波長は、その第1および第2光束の照射された被測定物の表面の領域における凹凸の頂点と底との間の寸法よりも大きいことを特徴とする光学式速度計。 - 請求項7に記載の光学式速度計において、
シリコンウェハを上記被測定物とすることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計において、
上記被測定物と受光素子との間の光軸上に、集光部を備えることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項9に記載の光学式速度計において、
上記集光部は、レンズ群であることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項9に記載の光学式速度計において、
上記集光部は、透過型回折格子であることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項11に記載の光学式速度計において、
上記透過型回折格子は、ブレーズド型であることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項9に記載の光学式速度計において、
上記集光部は、光ファイバー導波路であることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項9に記載の光学式速度計において、
上記集光部は、内側に鏡面が形成された円錐形ミラーであることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項9に記載の光学式速度計において、
上記集光部は、鏡面が互いに向き合った2つの平面ミラーであることを特徴とする光学式速度計。 - 請求項1に記載の光学式速度計を備える変位情報測定器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004208554A JP2006029951A (ja) | 2004-07-15 | 2004-07-15 | 光学式速度計および変位情報測定器 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004208554A JP2006029951A (ja) | 2004-07-15 | 2004-07-15 | 光学式速度計および変位情報測定器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006029951A true JP2006029951A (ja) | 2006-02-02 |
Family
ID=35896497
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2004208554A Pending JP2006029951A (ja) | 2004-07-15 | 2004-07-15 | 光学式速度計および変位情報測定器 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2006029951A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018173290A1 (ja) * | 2017-03-24 | 2018-09-27 | 愛知時計電機株式会社 | 計測装置 |
-
2004
- 2004-07-15 JP JP2004208554A patent/JP2006029951A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2018173290A1 (ja) * | 2017-03-24 | 2018-09-27 | 愛知時計電機株式会社 | 計測装置 |
JPWO2018173290A1 (ja) * | 2017-03-24 | 2019-11-07 | 愛知時計電機株式会社 | 計測装置 |
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