しかし、特許文献1に開示されている溶接されたヘッダーの場合、冷暖房パネルを再利用しようとすると、冷熱媒供給源からの連絡配管を取り外す際に、ヘッダー自体を傷つけてしまい、漏水などの不具合が発生する可能性があった。即ち、取り外し作業によって、冷熱媒受け入れ管接続口、排出管接続口、及びそれらに溶接されている連結管継手に余計な負担が生じて破損しやすく、また、パネル中に埋設された冷熱媒流通管を変形、損傷することがあるため、場合によっては、冷暖房パネル全体を取り替えなければならず、結果としてパネルの再利用が困難であるという問題があった。
また、特許文献2に開示されているヘッダーの場合、着脱可能な接続部は床下取り出し式に構成されているため、床面に開口部を設けることが必須となり既存の床面を損傷することになる。また、パネルの撤去作業が大掛かりにならざるを得ず、再使用が事実上困難であるという問題があった。
さらに、総厚みの制約を受ける中で、冷暖房パネル使用時に体感温度斑の発生を抑制するために、冷暖房パネル内の媒体は十分かつバランス良く流れる必要があり、そのためには従来のヘッダーと同等の圧損性能が要求されている。
そこで、本発明は、溶接を行わずに、繰り返し荷重に耐え得る十分な耐久性を保持しつつも、パネルの敷設撤去を容易なものとすることによって再利用を可能とし、かつ従来のヘッダーと同等の圧損性能を維持することができる冷熱媒流通ヘッダー、及びそれを用いた冷暖房パネルを提供することを課題とする。
本発明者は鋭意検討した結果、従来の常識を覆し、冷熱媒受け入れ管接続口及び前記冷熱媒排出管接続口を、ヘッダー本体に対して横方向から着脱自在な連結管継手で作成することを着想した。この着脱自在な連結管継手をヘッダーの横方向からの取り出しとした方式の場合、従来技術ではヘッダーから連結管継手の脱落を防止する固定金具も含めると、全体として20〜30mmの外径となってしまい、仕上げ材を含めたパネルの総仕上がり厚みを大きくするか、ヘッダー部に箱形のハウジングを設けて、連結管継手を保護する必要があり、コストや美観の観点から使用できないという問題が生じる。そこで本発明者は、ヘッダー本体、及び連結管継手の形状が全体の厚みに与える影響を吟味しつつ、併せて脱落防止金具の形状を工夫することにより、圧損性能を維持し、かつ、一度敷設後も、取り外し、再利用可能な、冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー、及びそれを用いた冷暖房パネルを提供することが実用上可能であることを見出して本発明を完成した。
即ち、第一の本発明は、平板状のヘッダー本体とヘッダー本体に連結される連結管継ぎ手とを具備し、ヘッダー本体は内部に互いに独立した複数の流路を備えるとともに各流路の端部はヘッダー本体の端面に開口し、連結管継ぎ手は開口から平板の面方向にその一端側をヘッダー本体内に差し入れることによりヘッダー本体と連結され、連結管継ぎ手のうち少なくとも冷熱媒供給源側に通じる配管に接続されるべきものは互いに独立にヘッダーの開口に着脱自在に取り付け可能である、冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダーである。
この第一の本発明によれば、連結管継ぎ手はヘッダー本体に着脱自在に取り付けることができるので、冷熱媒供給源からの連絡配管を取り外す際にも、ヘッダーを傷つける恐れがない。従って、パネルの再使用が容易なものとなる。
また、各流路の端部はヘッダー本体の端面に開口し、連結管継ぎ手は開口から平板の面方向にその一端側をヘッダー本体内に差し入れるように配置されているので、ヘッダー本体と、連結管継ぎ手とがほぼ同一面内に収まり、ヘッダー全体の形状を薄くすることができる。従ってパネルの敷設や、撤去の作業を簡易なものとすることができる。また、ヘッダー本体内部の流路と、連結管継ぎ手内部の流路とは、重力方向にはヘッダー本体の厚さの範囲内に収められているので、圧損性能を維持する上でも有利である。
さらに、連結管継ぎ手はそれぞれ独立して設けられているので、ヘッダー本体に連結する際に互いに干渉しあって、無理な力がかることもない。
上記冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダーにおいて、ヘッダー本体と連結管継ぎ手とは、Oリングによりシールされていることが好ましい。
このようにすれば、安価で入手しやすく、簡易な構造を持つ部材を利用して、確実かつ容易にヘッダー本体と、連結管継ぎ手とのシールを図ることができる。
上記冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダーは、さらに、連結管継ぎ手がヘッダー本体から脱落するのを防止する抜け止め機構を備え、抜け止め機構はヘッダー本体の厚みを画する二面の間に、あるいはこれらの面に接して配置されるとともに、ヘッダー本体とは別体の抜け止め部材を備え、抜け止め部材は自らをヘッダーに固定する固定部と連結管継ぎ手の抜け方向への移動を位置的に干渉して規制する移動規制部とを有していることが好ましい。
このように構成した場合には、ヘッダー全体としての厚みを薄く保ちつつ、ヘッダー本体からの連結管継ぎ手の抜け落ちを防止できる。
また、上記冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダーにおいて、連結管継ぎ手はヘッダー本体内に差し入れられる部位の外周面に周方向の溝を備え、抜け止め部材はヘッダー本体に設けられた孔に、その全体が差し入れられるとともに、その側面がヘッダー本体に連結している連結管継ぎ手の溝に嵌め合わされることが好ましい。
このようにすると、簡単な構造により、連結管継ぎ手の抜け止めを実現することができ、しかもヘッダー全体の厚みが増加することがない。
さらに、上記冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダーにおいて、ヘッダー本体に凹部が設けられるとともに、連結管継ぎ手の連結時外部に露出する部位の外周面には周方向の溝が形成され、抜け止め材は一端側が本体の凹部に噛み合うとともに他端側が連結管継ぎ手の溝に噛み合い、弾性によってこれらの凹部と溝との間を挟みつけているように構成することも好ましい。
このように構成した場合にも、簡単な構造により連結管継ぎ手の抜け止めを実現することができ、しかもヘッダー全体の厚みが増加することがない。
第二の本発明は、上記の冷熱媒流通ヘッダー(各変形例を含む。)が、パネル面内に収容されるように、該パネルに取り付けられた冷暖房用パネルである。
この第二の本発明によれば、ヘッダー厚みがパネルの厚み内に納まるので、パネルの敷設や、撤去の作業を簡易なものとすることができる。
またさらに、第三の本発明は、上記冷暖房用パネルを床面に設置する工法であって、ヘッダー本体にあらかじめ着脱自在な連結管継ぎ手を連結させておき、該連結管継ぎ手の連結されたヘッダーを備えたパネルを床面に敷設することを特徴とする冷暖房用パネルを床面に設置する工法である。
第三の本発明によれば、特許文献1に開示されているような、従来のヘッダーの場合と同一の現場作業により、パネルの敷設をすることができる。
本発明によれば、一度敷設後、取り外し、再利用可能な、冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー及びそれを用いた冷暖房パネルを提供できる。また、現場で熱源機からの配管を接続する際に、ヘッダー接続部を傷つけてしまった場合、従来は冷暖房用パネル全体の使用ができなくなっていたが、本発明によれば連結管継ぎ手を交換するだけで、パネル全体の交換は不要とすることができ、その工業的価値はきわめて大きい。
以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の冷暖房用パネルを備えた冷暖房システムを示す概念図である。図示の冷暖房システムでは、冷熱媒供給源(例えば、ボイラー、冷凍機コンプレッサー等)において、加温あるいは冷却された冷熱媒体は、冷熱媒往き管、ヘッダーを経て、冷暖房パネルに供給される。冷暖房パネルは、その内部に冷熱媒流通管が全面に亘って蛇行するように配置されている。かかる冷暖房パネルは、例えば住宅の室内に配置されており、加温あるいは冷却されて供給された冷熱媒と、室内空気との熱交換をすることにより室温を所定の快適な温度に保持する役割を果たしている。冷暖房パネル内に流通されることにより、室内空気との熱交換に供されて、降温あるいは昇温された冷熱媒は、冷熱媒流通管の下流側を経てヘッダーに戻される。さらに、冷熱媒戻り管を経て、冷熱媒供給源に戻され、加温、冷却を受けて再び上記循環に供される。
ここに冷熱供給源とて冷熱媒体を冷却、加熱するものが考えられる。加熱装置としては通常、ガスや、灯油等化石燃料を燃焼させて熱源とするもの(いわゆるボイラー)、電磁気エネルギーを熱に変換するヒーター等、あるいは近隣に大規模発電設備あるいは焼却設備等が存在する場合にはそこから発生する廃熱を利用するものであってもよい。冷却装置としては通常、電気で駆動されるコンプレッサーを備えた冷却器を使用することが可能であるが、近隣にLNGや天然ガスの貯蔵設備がある場合には、その冷熱を利用することも可能である。
本発明において、冷熱媒供給源とヘッダーとの間を結ぶ冷熱媒往き管、及び冷熱媒戻り管は特に限定されるものではなく、通常の冷暖房システムに使用されているものと同様のもの、例えば合成樹脂管、内面及び/または外面に合成樹脂を被覆した金属管等を使用することができる。
冷暖房パネルの部分、及びヘッダーについては後に詳しく説明する。なお、本発明は冷房、暖房のいずれにも適用可能であるが、以下の説明では本発明を床暖房に適用した形態について説明する。特に本発明にかかる冷熱媒流通ヘッダー及びそれを用いた冷暖房パネルは、置き敷きタイプの床暖房システムに適用した場合にその特徴的効果を奏することが顕著となる。
図2は、置き敷き床暖房を備えた暖房システムを一点透視法により示すものである。図面中央が当該置き敷き床暖房を備えた居住室内20であり、その左側は室外、右側は隣室、下側は床下をそれぞれ表している。室外側には、ガスを熱源とした熱源機21が設置されている。一方居住室内20には、床面に置き敷きタイプ暖房可能な床構造30(以下において単に「床構造30」という。)が配設されている。床構造30については後に詳しく説明する。
熱源機21と、床構造30との間は、熱媒体の往き/戻り管23(以後において、熱媒体の往きと戻りとを区別するときはそれぞれ「往き管23a」、「戻り管23b」と称して両者を区別する。)により接続されている。これら温水の往き/戻り管23は互いに断熱されつつ一体的に束ねられている。室内20と室外とを隔てる壁にはダクトスリーブ29が設けられており、温水の往き/戻り管23は、ダクトスリーブ29を経て室外から室内へと導かれている。なお、室内に配置されている温水の往き/戻り管23は、カバー24に覆われている。図2においては、熱媒体の往き/戻り管23を明確に示すため、カバー24は実際の固定位置からずらせて表されている。
床構造30が設けられた居住室内20と隣室とを隔てる壁には、床面から1〜1.5mほどの高さに、床暖房の温度設定等をする、操作パネル25が設けられている。操作パネル25内には、任意の温度を設定するための温度設定部、室内の気温を感知する温度センサ、及び制御装置(いずれも不図示)が設けられている。使用者が操作パネル25により、所望の室内温度を設定すると、温度センサの感知する温度と設定温度との情報を基に、制御装置は、熱源機21の燃焼動作を制御する。そのために、操作パネル25から熱源機21にいたる信号線26、28が設けられている。床面から立ち上がる信号線26、及び操作パネル25にも、カバー27が取り付けられている。
図3は、床構造30の層構成を示し、(A)は図2と同じ視点から床構造30の部分のみ示す分解図、(B)は施工後の層構造を示す垂直断面図である。図示の床構造30は、水平かつ平行に配置された多数の垂木31A〜31Iの上に、合板32が敷かれ、その上に化粧木板33が配置された既存の床の上に設置されるものである。
既存の化粧木板33の上には高比重シート34が載置されている。高比重シート34の上には暖房パネル35が配置され、さらに暖房パネル35の上面側には仕上げ材36が配置されている。高比重シート34の上面には、不図示の不織布が貼付されている。また、暖房パネル35の下面側には面状メカニカルファスナーのオス材37がその係合部を下向きにされて貼付されている。かかる構成により、面状メカニカルファスナーオス材37の多数の係合部(通常鉤形状、あるいはきのこ形状をしている。)が、不織布の繊維に絡んで、高比重シート34上に配置された暖房パネル35が高比重シート34に固定される。
高比重シート34は、通常密度が1.5g/cm3以上、好ましくは2.0g/cm3以上である。このような高比重シートとしては、アスファルト含有短繊維シート、充填材含有ゴムシート等が挙げられる。高比重シート34の面積は、暖房床を敷設する面積に応じて、100〜500cm2の範囲で選ぶことができる。暖房床の面積が大きな時は、多数の高比重シートを敷き連ねれば良い。かかる高比重のシートとすることにより、既存の床の化粧木板33上に載置した際に、自重により床面に適合し、両者の界面に大きな摩擦力が発生するので、容易にズレを生じることがなく、床面に安定的に敷設することができる。また、暖房パネル35は上記のとおり高比重シート34に面状メカニカルファスナーを介して固定されているので、これも既存の床上に、安定的に載置される。さらに、上記構成には基本的には接着剤を使用しないので、既存の床上から高比重シート34、暖房パネル35、及び仕上げ材36をきわめて容易に撤去することができる。加えて、撤去後の既存床面上に接着剤等が使用されていないので、設置前の元の姿に復帰させることが可能である。
暖房パネル35は、薄手の板状体38の表面に形成された埋設溝に熱媒体チューブ39、39、…が埋設されている。かかる構成により、熱媒体チューブ39、39、…は、板状体38の内部に埋設されて、支持される。板状体38はかかる機能を全うするために剛性が高く、かつ耐熱性も高いことが要求される。このような観点から、板状体38を構成する材料として、木製単板、合板、合成樹脂板等を挙げることができる。合成樹脂としてはポリアミド(PA)6、PA66、ポリアミドイミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、PET、PBTなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることができる。暖房パネル35の板状体38として用いる場合、これらの合成樹脂を発泡させた発泡合成樹脂体として使用することが特に好適である。発泡倍率は1.5〜20倍程度が好ましい。
埋設溝に埋設される熱媒体チューブは、その内側空間に熱媒体を流通させて外部に放熱するように機能するものであり、可撓性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などに優れている必要がある。このような特性を発揮する熱媒体チューブとしては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、管の壁面に金属線を埋設した樹脂管などを挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管である。熱媒体チューブの口径は、暖房パネルの用途によって変えるが、一般的には、外径が5〜30mm、内径が3〜25mmの値囲とされる。この熱媒体チューブの内部を流通させる熱媒体としては、水、水にポリエチレングリコールを混合した通常「不凍液」と呼ばれるもの、低粘度高引火点に調整された鉱油、合成油、水蒸気などを挙げることができる。
図4は、本発明の冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダーを示す概略図である。(A)は正面図(ただし内部を透視して表している。)、(B)は(A)におけるIVB−IVB矢視断面を表す図である。図示の冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40は、
(1)熱媒体が流通する中空部47a〜47c、48a〜48c、及び連結孔49a、49bを有し、かつ平板形状に形成されたヘッダー本体41と、
(2)連結孔49aに連結され、熱源機21から熱媒体往き管23aを介して熱媒体を受け入れ可能とした熱媒体受け入れ連結管継ぎ手42と、
(3)連結孔49bに連結され、該熱源機21に熱媒体戻り管23bを介して熱媒体を排出可能とした熱媒体排出連結管継ぎ手43と、
(4)中空部47a〜47cに連結され、暖房パネル35の熱媒体流通用往き管に接続される熱媒体流通用往き連結管継ぎ手45a〜45dと、
(5)中空部48a〜48dに連結され、暖房パネル35の熱媒体流通用戻り管に接続される熱媒体流通用戻り連結管継ぎ手46a〜46dと、を備えている。
平板状かつ平面形状が長方形であるヘッダー本体41の長手方向左側面には、4つの孔141〜144が設けられている。また右側面にも4つの孔145〜148が設けられている。一方ヘッダー本体41の短手方向の一側面(図面では手前側)には2つの孔49a、49bが設けられている。
次にこれら、各管とヘッダー本体、及び各孔と、各中空部との関係を熱媒体の流れ方向に従って、順に説明する。なお、冗長を避けるため以後の説明では各管、連結管継ぎ手は、その後に参照符号を付して、「熱媒体往き」等の修飾語は省略する。
熱源機21にて加温された熱媒体は往き管23aから連結管継ぎ手42にいたる。連結管継ぎ手42は、ヘッダー本体の孔49aに着脱自在に形成されている。具体的には、連結管継ぎ手42の外径は孔49aの内径よりやや小さく形成されている。また、連結管継ぎ手42の、孔49aに差し入れられる部分の外周部にはシール部が形成されている。シール部150の外径は、孔49aの内径よりわずかに大きく選ばれている。かかる構成によって、孔49aに連結管継ぎ手42が着脱自在に、かつ熱媒体を漏洩させることなく連結される。孔49aと孔148とはヘッダー本体41の内部で連通している。かかる構成は、戻り側の連結管継ぎ手43、及びヘッダー本体41側の孔49b、144に関してもまったく同一である。
孔148には、連結管継ぎ手45aが溶接により固定されている。孔148と孔143とは、中空部47aによりヘッダー本体41の内部で連通している。孔143には、連結管継ぎ手45bが溶接により固定されている。孔143と孔146とは、中空部47bによりヘッダー本体41の内部で連通している。孔146には、連結管継ぎ手45cが溶接により固定されている。孔146と孔141とは、中空部47cによりヘッダー本体41の内部で連通している。孔141には、連結管継ぎ手45dが溶接により固定されている。以上に説明した、連結管継ぎ手45a〜45dが、暖房パネル35の熱媒体チューブ39、39、…に連結され、暖房パネル35に加温された熱媒体を供給する。
一方、暖房パネル35で、熱交換されて温度が低下した熱媒体は、熱媒体チューブ39、39、…から、連結管継ぎ手46a〜46dに戻される。連結管継ぎ手46a〜46dは、ヘッダー本体41の孔145、142、147、144にそれぞれ溶接により固定されている。またこれらの孔145、142、147、144は、中空部48a〜48cによりヘッダー本体41の内部において連通されている。なお、図面上、往きの中空部47a〜47cと、戻りの中空部48a〜48cとは合流しているように見えるが、実際には両中空部はヘッダー本体41の厚み方向の異なる二面上にそれぞれ配置されており、合流することはない(図4(B)参照)。かくして、温度低下した熱媒体は、孔144、49b、連結管継ぎ手43、そして戻り管23bを経て熱源機21へと戻される。
本発明において、「ヘッダー本体の、内部に互いに独立した複数の流路」とあるのは、往きの中空部と戻りの中空部とで、互いに独立していて複数の流路を形成していることを意味しており、各々往きの中空部、あるいは戻りの中空部から冷暖房パネルにつながる複数の連結管継ぎ手に枝分かれしていることを複数の流路と呼ぶものではない。
本発明の冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40を構成する材料は特に限定されるものではない。所定の耐熱性、強度、及び時間的耐久性を備えていれば、金属、合成樹脂、セラミック等使用可能である。これらの中でも、強度、及び耐熱耐久性のバランスを高く保つという観点から金属製とすることが好ましく、孔や中空部の加工性の観点から、真鍮などの銅合金やアルミニウムなどが好適に使用される。一方、暖房パネル35の厚みが薄く、ヘッダー本体41の厚みが制限を受ける場合、多少加工性を犠牲にしても、SUS304やSUS430などのステンレス鋼の使用が推奨される。
本発明においてヘッダー本体41の厚みは、冷暖房パネル35の厚みの制限を受けるため、なるべく薄く設定することが好ましいが、逆に、中空部形状による圧損特性の悪化を防止するとともに連結管継ぎ手取り付け部の強度を維持するためには、一定以上の厚みを必要とする。圧損特性を維持するため連結管継ぎ手及び中空部の内径は、最小限3.0mm程度必要であり、材料強度を考慮してこれから連結管継ぎ手外径が決定される。そうすると、各孔の内径もこれと同程度必要になり、孔外周部の肉厚により所定の強度を得るために、ヘッダー本体41の最低限の厚みが決まり、これらからヘッダー本体41の厚みが決せられる。材料をステンレス鋼等強度の高いものにすることにより、より薄い厚みのヘッダー本体を得ることができる。通常連結管継ぎ手や中空部の内径をR、外径をS、ヘッダー本体厚みをTとするとき、これら三者の間に
3.0≦R≦0.4S≦0.35T
なる関係が成立することが望ましい。
ヘッダー本体41の平面形状や大きさは特に限定されない。要は、接続される連結管継ぎ手の数に応じて、妥当な強度が得られる形状、大きさを決定すれば良い。
連結管継ぎ手42、43の熱源機21への往き/戻り管23の取り付け部には、長さ方向に外径が増減するタケノコ部171、172が形成されている。一方、連結管継ぎ手42、43のヘッダー本体41に差し入れられる部位には二条の溝が形成されており、この溝にはそれぞれシール部150が形成されている。タケノコ部171、172のシール部150寄りには大径部173、174が形成されている。大径部173、174の外径は、ヘッダー本体41の孔49a、49bの内径より僅かに小さく形成されている。かかる構成により、連結管継ぎ手42、43はヘッダー本体41にガタツキなく装着することができる。
連結管継ぎ手42、43は、ヘッダー本体41への連結の際のシール性を考慮して、シール部150として、Oリングを装着していることが好ましい。シールの確実性、及び経済性のバランスの観点から、Oリングの使用本数は連結管継ぎ手1本当たり2〜4とすることが好ましい。組み立て時の作業性を考慮すれば、Oリングは連結管継ぎ手側に装着することが好ましいが、ヘッダー本体41の孔49a、49bの内周面に沿って溝を形成し、そこにOリングを装着しても良い。連結管継ぎ手42、43と、ヘッダー本体41の孔49a、49bとのシールを図る観点から、Oリング以外の構造として、特開2003−28356号公報に開示されている、モールド弾性材等を使用することができる。
Oリングを使用する場合、Oリングの形状寸法が、JIS B2406:1991「Oリング取り付け溝部の形状・寸法」に適合していることが望ましい。
次に図5を参照しつつ、本発明の冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40の暖房パネル35への取り付けについて説明する。図5に示されるように、暖房パネル35はその一部か切り欠かれている。その切り欠き部に冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40が入り込むように配置されている。暖房パネル35の面と、冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40のヘッダー本体41の面とが略同一面となるように配置され、各連結管継ぎ手45a〜45d、46a〜46d、42、及び43も、ヘッダー本体41の側面側から本体の形成する面内に横方向から取り付けられている。従って、暖房パネル35と冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40とが同一面内に収められているので、既存の床面に敷設する際にも、床面を加工する等の大掛かりな工事を要しない。
図6は、ヘッダー本体41に着脱自在な連結管継ぎ手42、43をヘッダー本体41に装着した場合における、ヘッダー本体41から連結管継ぎ手42、43の脱落を防止する抜け止め機構の一実施形態を示す斜視図である。この図には、連結管継ぎ手42、43と、ヘッダー本体の連結管継ぎ手42、43との連結に預かる部分と、抜け止め部材60とが表されている。ヘッダー本体は、抜け止め部材60を装着できるよう、連結管継ぎ手42、43の接続側近傍に加工が施されている。以後においてはこの加工が施されたヘッダー本体に参照符号41aを付して表す。ヘッダー本体41aには、孔49a、49bが開口されている側面から長手方向にわずかに中央側の部位の、両側及び中央に凹部61、62、63が設けられている。これらの凹部61、62、63はヘッダー本体41aの厚み方向に貫通して設けられている。
連結管継ぎ手42、43の熱源機21への往き戻り管23の取り付け部には、長さ方向に外径が増減するタケノコ部67a、67bが形成されている。タケノコ部67a、67bの外径が最も大きな部位を参照符号68a、68bを付して、以後において節部と呼ぶ。節部68a、68bのOリング装着部寄りには大径部70a、70bが設けられている。大径部70a、70bの外径は、ヘッダー本体41aの孔49a、49bの内径より僅かに小さく形成されている。
抜け止め部材60は、ヘッダー本体41aの孔49a、49b開口がある端面に当接される当接面部64と、ヘッダー本体41aの凹部61、62、63にそれぞれ差し入れられる係止部65a〜65cと、これら当接面と係止部とを連結するブリッジ69とを備えている。当接面部64には2箇所に、馬蹄形状のエグレ部66a、66bが形成されている。エグレ部66a、66bの水平方向幅は連結管継ぎ手42、43のタケノコ部67a、67bの節部68a、68bよりわずかに大きく、大径部70a、70bより明らかに小さく形成されている。また、係止部65a〜65cは、その先端が当接面部64側に向けて傾斜して形成されており、係止部の姿勢を垂直方向にすると当接面部64方向に弾性による付勢が発生する。
以上のように構成された、ヘッダー本体41aに連結管継ぎ手42、43を装着し、さらに抜け止め部材60を、上記した所定の姿勢に装着することにより、連結管継ぎ手42、43の抜け止めが達成される。すなわち抜け止め部材60は、ヘッダー本体41aの凹部61〜63と、ヘッダー本体41aの孔49a、49b開口がある端面との間で自らの弾性により係止されており、連結管継ぎ手42、43が抜ける方向に移動しようとしても、当接面部64のエグレ部66a、66bより大径部70a、70bの径が大であるので、かかる移動は当接面部64により規制される。
以上のように構成された抜け止め部材60は、ブリッジ69の厚みの分だけ、ヘッダー本体41aの下方に突き出るが、その厚みはごくわずかであるので、冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40としての上記した効果を奏することが可能である。さらに、図6に表されているように、ヘッダー本体41aの下面側をブリッジ69の厚み分だけ削り落として、この削り落とした部分にブリッジ69をはめ込むようにしても良い。このようにすれば、抜け止め部材60とヘッダー本体41aの下面側とが面一となって、抜け止め部材60は完全にヘッダー本体41aの厚み内に収まるので、さらに敷設時等に取り扱いの容易な冷暖房パネル用冷熱媒流通ヘッダー40を構成することができる。
図7は、図6に示す実施形態の変形例を示す斜視図である。この変形例では、抜け止め部材60の、各係止部65a〜65cの先端にバックル状金具75a〜75cを取り付けて、抜け止め部材60がヘッダー本体41aから外れないようにして、抜け止めが確実に機能するように構成したものである。
図8は、ヘッダー本体41から連結管継ぎ手42、43の脱落を防止する抜け止め機構の他の実施形態を示す斜視図である。この図には、連結管継ぎ手42、43と、ヘッダー本体の連結管継ぎ手42、43との連結に預かる部分と、2本の抜け止めピン85、86とが表されている。抜け止めピン85、86は、円筒形状のピン本体87、88の頭部に工具(この図ではマイナスドライバを想定している。)係合部91、92を備えている。ピン本体87、88の外周面には雄ねじが切られている。ヘッダー本体には、抜け止めピン85、86と螺合する雌ねじが内周面に形成されたねじ孔83、84がヘッダー本体の厚み方向に形成されている。すなわち、ねじ孔83、84は、垂直方向(ヘッダー本体の厚み方向)にあけられている。以後においてはこのねじ孔加工が施されたヘッダー本体に参照符号41bを付して表す。ヘッダー本体41bにおけるねじ孔83、84の位置については後述する。
連結管継ぎ手42、43の熱源機21への往き/戻り管23の取り付け部には、長さ方向に外径が増減するタケノコ部71、72が形成されている。タケノコ部71、72のOリング151、151装着部寄りには大径部73、74が形成されている。大径部73、74の外径は、ヘッダー本体41bの孔49a、49bの内径より僅かに小さく形成されている。さらに大径部73、74と、上記Oリング取り付け部との間に、連結管継ぎ手42、43の外周方向に溝部81、82が形成されている。そして、連結管継ぎ手42、43をヘッダー本体41bに装着し、ヘッダー本体41bに抜け止めピン85、86を螺合するとき、連結管継ぎ手42、43の溝部81、82に抜け止めピン85、86のピン本体87、88の外周側面が接するように、ヘッダー本体41bのねじ孔83、84が位置決めされている。従って、ヘッダー本体41bに連結管継ぎ手42、43を装着し、さらに抜け止めピン85、86を螺合すると、連結管継ぎ手42、43がヘッダー本体41bから抜け出そうとしても、連結管継ぎ手42、43の溝部81、82の側面に、ヘッダー本体41bに螺合されている抜け止めピン85、86が食い込んでいるので、連結管継ぎ手42、43の抜け方向への動きが規制されて、脱落が防止される。
図9は、図8に示す他の実施形態の変形例を示す斜視図である。この図には、連結管継ぎ手42、43と、ヘッダー本体の連結管継ぎ手42、43との連結に預かる部分と、ヘッダー本体の長手方向側面に差し入れられる2本の抜け止めピン185、186とが表されている。抜け止めピン185、186は、円筒形状のピン本体187、188の頭部に工具係合部191、192を備えている。ピン本体187、188の外周面には雄ねじが切られている。ヘッダー本体には、抜け止めピン185、186と螺合する雌ねじが内周面に形成されたねじ孔183、184がヘッダー本体の長手方向側面に形成されている。すなわち、ねじ孔183、184は、略水平方向(ヘッダー本体の厚み方向に直交する方向)にあけられている。以後においてはこのねじ孔加工が施されたヘッダー本体に参照符号41cを付して表す。ヘッダー本体41cにおけるねじ孔の位置については後述する。
連結管継ぎ手42、43の熱源機21への往き/戻り管23の取り付け部には、長さ方向に外径が増減するタケノコ部71、72が形成されている。タケノコ部71、72のOリング151、151装着部寄りには大径部73、74が設けられている。大径部73、74の外径は、ヘッダー本体41cの孔49a、49bの内径より僅かに小さく形成されている。さらに大径部73、74と、上記Oリング取り付け部との間に、連結管継ぎ手42、43の外周方向に溝部81、82が形成されている。従って、連結管継ぎ手42、43に関する構成は図8において説明したものと同様である。そして、連結管継ぎ手42、43をヘッダー本体41cに装着し、ヘッダー本体41bに抜け止めピン185、186を螺合するとき、連結管継ぎ手42、43の溝部81、82の頂部に抜け止めピン185、186のピン本体187、188の先端が当接するように、ヘッダー本体41cのねじ孔183、184が位置決めされている。従って、ヘッダー本体41cに連結管継ぎ手42、43を装着し、さらに抜け止めピン185、186を螺合すると、連結管継ぎ手42、43のヘッダー本体41cからの脱落が防止される。
この変形例にかかる実施形態の場合、図8に示されるように抜け止めピンの側面と、連結管継ぎ手の溝部81、82とが当接するように配置すると、ヘッダー本体41cの厚みが十分でないため、ねじ孔とヘッダー本体41c厚み方向上下いずれかの面との間の肉厚を十分にとることができず、強度が弱くなる恐れがあるため、ねじ孔183、184をヘッダー本体41cの厚さ方向中心に配置して、抜け止めピン185、186の先端を連結管継ぎ手42、43の溝部81、82に当接するように構成した。
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う冷熱媒流通ヘッダー及びそれを用いた冷暖房パネルもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。