JP2006021669A - マスタシリンダ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】マスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置等、マスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置における電磁弁の使用を可及的に回避する。
【解決手段】
マスタシリンダ88に連動切換弁210,パイロット式切換弁220を設け、段付マスタピストン104の前進によりポート212,214を連通させ、動力液圧源30の液圧をパイロット圧室270に供給し、スプール224を移動させて加圧室126とブレーキシリンダ22,24との連通を遮断させ、フィルアップ室128,ストロークシミュレータ92の補完室170をリザーバ40に連通させて、ストロークシミュレータ92を有効化し、フィルアップ制御弁装置96を無効化する。動力液圧源30等の故障時にはスプール224は移動せず、加圧室126のブレーキ液と共にフィルアップ室128のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されてフィルアップが行われる。
【選択図】 図1
【解決手段】
マスタシリンダ88に連動切換弁210,パイロット式切換弁220を設け、段付マスタピストン104の前進によりポート212,214を連通させ、動力液圧源30の液圧をパイロット圧室270に供給し、スプール224を移動させて加圧室126とブレーキシリンダ22,24との連通を遮断させ、フィルアップ室128,ストロークシミュレータ92の補完室170をリザーバ40に連通させて、ストロークシミュレータ92を有効化し、フィルアップ制御弁装置96を無効化する。動力液圧源30等の故障時にはスプール224は移動せず、加圧室126のブレーキ液と共にフィルアップ室128のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されてフィルアップが行われる。
【選択図】 図1
Description
本発明はマスタシリンダ装置に関するものであり、特に、マスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置を備えたマスタシリンダ装置に関するものである。
この種のマスタシリンダ装置としては、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、マスタシリンダ,マスタカット弁装置,ストロークシミュレータおよびシミュレータ制御弁装置を含むものがある。このマスタシリンダ装置においては、マスタカット弁装置は常開の電磁開閉弁により構成され、シミュレータ制御弁装置は常閉の電磁開閉弁により構成されており、動力液圧源の液圧によりブレーキを作動させ、ブレーキシリンダの圧力であるブレーキシリンダ圧を電気的に制御する電気制御制動時には、マスタカット弁装置が閉じられて、加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを阻止する阻止状態とされ、シミュレータ制御弁装置は開かれて、加圧室から排出されるブレーキ液が収容室に収容される有効化状態とされる。それにより、加圧室のブレーキ液はブレーキシリンダに供給される代わりにストロークシミュレータに収容され、ブレーキペダルの踏込み量に応じた操作感がブレーキ操作者に付与されるとともに、その踏込み量に応じた液圧が加圧室に発生させられ、ブレーキシリンダには、加圧室の液圧であるマスタシリンダ圧に応じた高さに制御された動力液圧源の液圧が供給される。
それに対し、ブレーキペダルの踏込みに基づいてマスタシリンダの加圧室に発生させられた液圧によってブレーキを作動させるマニュアル制動時には、マスタカット弁装置が開かれて、加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態とされ、シミュレータ制御弁装置は閉じられて、収容室にブレーキ液が収容されない無効化状態とされる。
それに対し、ブレーキペダルの踏込みに基づいてマスタシリンダの加圧室に発生させられた液圧によってブレーキを作動させるマニュアル制動時には、マスタカット弁装置が開かれて、加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態とされ、シミュレータ制御弁装置は閉じられて、収容室にブレーキ液が収容されない無効化状態とされる。
また、加圧面積制御弁装置が設けられることもある。例えば、マスタシリンダが、大径ピストンと小径ピストンとを一体的に有する段付のマスタピストンと、段付きのシリンダボアを備えた段付ハウジングとを備えたものとされ、ブレーキクリアランスが消滅し、ブレーキシリンダの液圧が、実質的な制動効果を生じさせ始める高さに達する(これをフィルアップの終了と称する)までは、小径ピストン前方の加圧室と大径ピストン前方のフィルアップ室との両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、フィルアップの終了後は、フィルアップ室のブレーキ液がブレーキシリンダには供給されず、低圧源への流出が許容されるようにすることが行われており、そのためにフィルアップ制御弁装置が設けられる。具体的には、フィルアップ室と低圧源との間に、リリーフ弁と絞りとの並列回路から成るフィルアップ制御弁装置を設けることが行われている。また、見かけ上の構成は同じであるが、リリーフ弁のリリーフ圧を、実質的な制動効果を生じさせ始める高さより高く設定し、大径部も加圧ピストンとして機能するようにすることも知られている。この場合には、ブレーキシリンダの所要液圧が比較的低い間は、小径ピストンと大径ピストンとの両方の前方に形成される2つの加圧室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、所要液圧が高くなった後は、大径部前方の加圧室からはブレーキ液がブレーキシリンダへ供給されず、低圧源への流出が許容される。それによって、段付ピストンの有効加圧面積が減少し、同じブレーキ操作力に対してマスタシリンダにおいて発生させられる液圧が増大する。このために使用されている加圧面積制御弁装置を上記フィルアップ制御弁装置と区別して加圧特性制御弁装置と称することとする。
このフィルアップ制御弁装置あるいは加圧特性制御弁装置を電磁弁を含むものとすることが、下記特許文献2に記載されている。上記リリーフ弁と絞りとの並列回路を含むものにおいては、電気制御制動時に、リリーフ弁が開くまでは、大径部前方のフィルアップ室あるいは加圧室の液圧がブレーキ操作部材に対する操作反力として作用し、操作力の一部が無駄になり、あるいは操作フィーリングが悪くなる不都合があるため、リリーフ弁と絞りとの並列回路にさらに並列に電磁開閉弁を設けて、電気制御制動時にはこの電磁開閉弁が開かれ、リリーフ弁および絞りが無効化されるようにすることが行われているのである。この電磁開閉弁を、フィルアップ室あるいは加圧室を低圧源に開放する制御弁という意味で開放弁と称することとする。
特開2001−18779号公報
特開2002−211383号公報
しかしながら、特許文献1に記載のマスタシリンダ装置においては電磁弁が複数設けられ、装置コストが高い問題がある。また、上記開放弁を設ければ、その分、装置コストが高くなる。さらに、電磁弁の切換えはブレーキペダルの踏込みに基づいて行われるが、切換えに遅れが生ずることがある。ブレーキペダルの踏込みは、例えば、ブレーキ操作部材が原位置にあるか否かを検知するブレーキスイッチの出力信号いかんや、踏力センサ,ストロークセンサ等の踏込み量センサにより検出されるブレーキペダルの踏込み量が設定量を超えるか否か等により検出されるのであるが、ブレーキペダルの踏込み速度が速い場合には、電磁弁の切換えに遅れが生じ、ブレーキシリンダ圧が踏込みストロークに応じて予定された高さから外れた高さとなり、ブレーキシリンダ圧の制御精度が低下する。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、マスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置,開放弁等、マスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置における電磁弁の使用を可及的に回避することを課題として為されたものである。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、マスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置,開放弁等、マスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置における電磁弁の使用を可及的に回避することを課題として為されたものである。
本発明は、上記の課題を解決するために、(a)1つ以上のマスタピストンとその1つ以上のマスタピストンを液密かつ摺動可能に収容するマスタハウジングとを備え、前記1つ以上のマスタピストンの少なくとも1つの前方に加圧室が形成されたマスタシリンダと、(b)そのマスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置とを含むマスタシリンダ装置において、供給状態制御弁装置の少なくとも一部を、前記マスタピストンの前記マスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動して作動する連動切換弁装置としたことを特徴とするものである。
連動切換弁装置は、マスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動して作動する装置であり、電磁弁を使用することなく構成される。そのため、供給状態制御弁装置の少なくとも一部を連動切換弁装置とすれば、その分、電磁弁を減少させることができ、マスタシリンダ装置のコストを低減させることができ、あるいは、連動切換弁装置はマスタピストンとマスタハウジングとの相対移動に対して遅れなく作動させられるため、ブレーキシリンダの液圧制御精度の低下と、操作フィーリングの悪化との少なくとも一方が抑制される。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(11)項と(12)項とを合わせたものが請求項5に、(13)項が請求項6に、(14)項が請求項7に、(17)項と(18)項とを合わせたものが請求項8にそれぞれ相当する。
(1)1つ以上のマスタピストンとその1つ以上のマスタピストンを液密かつ摺動可能に収容するマスタハウジングとを備え、前記1つ以上のマスタピストンの少なくとも1つの前方に加圧室が形成されたマスタシリンダと、
そのマスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置と
を含むマスタシリンダ装置において、
前記供給状態制御弁装置の少なくとも一部を、前記マスタピストンの前記マスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動して作動する連動切換弁装置としたマスタシリンダ装置。
(2)前記供給状態制御弁装置が、前記加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられるマスタカット弁装置を含み、そのマスタカット弁装置が前記連動切換弁装置とされた(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
本項のマスタシリンダ装置によれば、加圧室からブレーキシリンダへのブレーキ液の供給の許容,阻止の切換えを安価に行うことができるとともに、許容状態から阻止状態への切換えを遅れなく行うことができる。
(3)前記加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切換え可能なマスタカット弁装置と、
そのマスタカット弁装置の前記阻止状態において前記加圧室から排出されるブレーキ液を収容室に収容するとともに、収容したブレーキ液の量が増大するにつれて前記収容室の液圧を増大させるストロークシミュレータと、
そのストロークシミュレータを有効化する有効化状態と無効化する無効化状態とに切り換え可能なシミュレータ制御弁装置と
を含み、前記供給状態制御弁装置としてのシミュレータ制御弁装置が前記連動切換弁装置とされた(1)項または(2)項に記載のマスタシリンダ装置。
シミュレータ制御弁装置は、例えば、ストロークシミュレータの収容室とマスタシリンダの加圧室とを連通させる液通路に設けられた開閉弁を含むものとすることができる。この開閉弁が閉状態とされれば、収容室へのブレーキ液の流入が不可能となり、ストロークシミュレータが無効化されるのである。また、ストロークシミュレータが、容積が収容室と補完関係にある補完室を備えたものである場合には、シミュレータ制御弁装置を、その補完室と低圧源とを連通させる液通路に設けられた開閉弁とすることもできる。補完室が低圧源から遮断され、ブレーキ液が流出不可能な状態とされれば、収容室が容積増大不能となり、ストロークシミュレータが無効化されるのである。
本項のマスタシリンダ装置によれば、ストロークシミュレータの有効化状態と無効化状態との切換えを安価に行うことができるとともに、有効化状態から無効化状態への切換えを遅れなく行うことができる。
(4)前記マスタシリンダが、前記1つ以上のマスタピストンとして、少なくとも前進は一体的に行う2つのマスタピストンを少なくとも備え、それら2つのマスタピストンの各々の前方に第一液室および第二液室が形成されたものであり、前記供給状態制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、設定液圧に達した後は、第二液室のブレーキ液がブレーキシリンダには供給されず、低圧源への流出が許容される状態とする加圧面積制御弁装置を含み、その加圧面積制御弁装置が前記連動切換弁装置とされた(1)項ないし(3)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
マスタピストンを、大径ピストンと小径ピストンとを一体的に有する段付ピストンとし、マスタハウジングも段付孔を有するものとしてもよく、また、互いに別体の大径ピストンと小径ピストンとを仕切壁で仕切られた前後のシリンダボアに嵌合し、上記仕切壁を液密かつ摺動可能に貫通して後方のピストンの力を前方のピストンに伝達する伝達ロッドを設けてもよい。なお、後者の場合には、前後のピストンの直径を同じにすることも可能である。
本項の特徴によれば、下記のフィルアップ制御や加圧特性制御を安価に、あるいは高い信頼性を以て実現することができる。
なお、本項のマスタシリンダ装置において、例えば、動力液圧源の液圧である動力液圧をパイロット圧とするパイロット式切換弁と、そのパイロット式切換弁への動力液圧の供給,遮断をマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に連動して切り換える連動切換弁とを設け、パイロット式切換弁を、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧に達しない状態で第二液室のブレーキ液の低圧源への流出を許容する開放弁とすれば、加圧面積制御を無効化することができ、無効化を安価にかつ迅速に行うことができる。
(5)前記加圧面積制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が実質的な制動効果を生じさせ始める高さに設定された設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、前記設定液圧に達した後は、第一液室からはブレーキ液が供給されるが第二液室からは供給されない状態とするフィルアップ制御弁装置であり、前記第一液室が加圧室、前記第二液室がフィルアップ室である(4)項に記載のマスタシリンダ装置。
フィルアップ制御を行えば、ブレーキシリンダがマスタシリンダからのブレーキ液により作動させられる状態において、マスタシリンダの作動ストローク(ひいてはブレーキ操作部材の所要操作ストローク)が大きくなることと、ブレーキ操作部材の所要操作力が大きくなることとを共に良好に回避することができる。
(6)前記加圧面積制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が実質的な制動効果を生じさせ始める高さより高く設定された設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、前記設定液圧に達した後は、第一液室からはブレーキ液が供給されるが第二液室からは供給されない状態とする加圧特性制御弁装置であり、前記第一および第二液室が共に加圧室である(4)項に記載のマスタシリンダ装置。
加圧特性制御を行えば、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増大を回避しつつ大きな制動力を発生させることが可能となる。
(7)前記第一液室と前記第二液室とが連通路により互いに連通させられており、その連通路に、第二液室から第一液室に向かう作動液の流れは許容するが逆向きの流れは阻止する逆止弁が設けられた (4)項ないし (6)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
逆止弁を備えた連通路によれば、単純な装置により、第二液室から第一液室を経てブレーキ液をブレーキシリンダに供給することができる。
(8)前記加圧面積制御弁装置が、
リリーフ弁と、
前記第二液室を前記リリーフ弁を経て前記低圧源に連通させるリリーフ弁経由状態と、リリーフ弁をバイパスして直接連通させる直結状態とに切り換え可能なリリーフ制御弁装置と
を含む(4)項ないし(7)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
リリーフ弁は、マスタピストンあるいはマスタハウジングに設けることも可能であり、マスタハウジングの外部に設けることも可能である。前者の場合に、リリーフ弁の本体をマスタピストンあるいはマスタハウジングに取り付けることも可能であるが、マスタピストンあるいはマスタハウジング自体をリリーフ弁の本体とすれば構成を単純化し得る。
第二液室が低圧源に直接連通させられれば、第二液室の液圧が速やかに低下させられる。
加圧面積制御弁装置は、リリーフ弁と絞りとの並列回路を含む装置とすることもできる。しかし、この場合、第二液室が絞りを有する液通路により、常時、低圧源に連通させられることとなり、例えば、ブレーキペダルの踏込み後、踏力が一定に保たれる場合、ブレーキの効き遅れが生じる。マスタピストンには、第一,第二液室の各液圧に基づく反力が作用し、これら反力の和が上記一定の踏力と釣り合うが、第二液室の液圧に基づく反力は、第二液室のブレーキ液が絞りを経て低圧源に流出するにつれて低下するため、踏力が一定に保たれる場合、第一液室の液圧は第二液室の液圧の低下に従って緩やかに上昇することとなり、その分、効き遅れが生じるのである。また、ブレーキ操作部材の操作が緩やかに行われる場合には、第二液室から絞りを経て低圧源に流出するブレーキ液の量が多くなり、その分、ブレーキ操作ストロークが無駄になる問題もある。
それに対し、本項のマスタシリンダ装置によれば、未だ公開されていないが、本出願人に係る特願2004−178760号の明細書および図面に記載されているように、第二液室がリリーフ制御弁装置によって低圧源に直結されるまでの間は、第二液室の液圧がリリーフ圧に達してブレーキ液が低圧源へ流出しない限り、第二液室のブレーキ液が必ずブレーキシリンダに供給され、第二液室のブレーキ液が絞りを経て低圧源へ流出することによる操作ストロークの無駄の問題が解消され、また、第二液室が低圧源に直結させられれば、第二液室の液圧が速やかに低下し、実質的に全操作力がブレーキシリンダに作動に利用される状態となり、ブレーキの効き遅れの問題が軽減される。
(9)前記リリーフ制御弁装置が、前記1つ以上のマスタピストンの前記マスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動する連動弁装置である(8)項にマスタシリンダ装置。
リリーフ制御弁装置は電磁弁装置により構成してもよいが、機械的に連動する装置とすれば、マスタシリンダ装置を安価に構成することができる。また、電気系統に異常が生じても、リリーフ制御弁装置は作動することができ、信頼性が高い。
(10)前記リリーフ制御弁装置が、前記2つのマスタピストンのいずれか一方と前記マスタハウジングとにより構成された(9)項に記載のマスタシリンダ装置。
連動弁装置をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、マスタハウジングとマスタピストンとにより構成すれば、マスタピストンを弁子として利用することができる。しかも、連動弁装置は必然的にマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動することとなって、連動装置が不要になり、装置コストを低減し得る。
(11)前記連動切換弁装置が、少なくとも、前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態と、その後退端位置から設定距離前進した状態とで、連通状態が異なる連動切換弁を含む(1)項ないし(10)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
(12)前記連動切換弁が、前記マスタハウジングと前記1つ以上のマスタピストンの1つとにより構成された(11)項に記載のマスタシリンダ装置。
連動切換弁装置の少なくとも一部を成す連動切換弁をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、マスタハウジングとマスタピストンとにより構成すれば、マスタピストンを弁子として利用することができる。しかも、連動切換弁装置は必然的にマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動することとなって、連動装置が不要になり、装置コストを低減し得る。
(13)前記連動切換弁装置が、
パイロット圧室に液圧が供給されない状態では第一状態にあり、供給されれば第二状態になるパイロット式切換弁と、
前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態では前記パイロット圧室を動力液圧源から遮断するとともに低圧源に連通させて前記パイロット式切換弁を前記第一状態とする動力液圧遮断状態にあり、マスタピストンが後退端位置から設定距離前進すればパイロット圧室を低圧源から遮断するとともに動力液圧源と連通させて前記パイロット式切換弁を前記第二状態とする動力液圧導入状態に切り替わる連動切換弁と
を含む(1)項ないし(12)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
連動切換弁は、マスタピストンの前進,後退により機械的に動力液圧遮断状態と動力液圧導入状態とに切り換わり、パイロット式切換弁が機械的に第一状態と第二状態とに切り換えられる。そのパイロット式切換弁を、マスタカット弁,シミュレータ制御弁,フィルアップ制御弁,加圧特性制御弁等の少なくとも1つとすれば、その少なくとも1つと連動切換弁とによりマスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置,フィルアップ制御弁装置,加圧特性制御弁装置の少なくとも1つの少なくとも一部が構成される。
(14)前記パイロット式切換弁の、液通路を連通させ、あるいは遮断する弁部が、前記マスタハウジングとそれにより相対移動可能に保持された弁子とによって構成されたものである(13)項に記載のマスタシリンダ装置。
パイロット式切換弁をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、弁部を、マスタハウジングと弁子とによって構成すれば、マスタハウジングをバルブハウジングとして利用することができ、マスタシリンダ装置を簡易にかつ安価に構成することができる。
(15)前記パイロット式切換弁が、前記マスタハウジングに形成された弁孔に液密かつ摺動可能に嵌合された弁子を備え、その弁子に前記パイロット圧室の液圧がその弁子をその弁子の一端面から反対側の端面に向かって移動させる向きに作用させられ、それとは逆向きに弾性部材の付勢力が作用させられる(14)項に記載のマスタシリンダ装置。
弁子は弾性部材の付勢力により一端面側の原位置(第一状態)に保たれ、パイロット圧室に液圧が作用させられれば付勢力に抗して反対側の端面に向かって移動させられ、パイロット圧室の液圧が除去されれば、付勢力により原位置に戻される。
(16)前記弁子が、前記一端面に大気圧の作用を受け、前記反対側の端面に前記加圧室の液圧の作用を受ける(15)項に記載のマスタシリンダ装置。
弁子の反対側の端面には、加圧室の液圧を直接作用させてもよく、加圧室の液圧により作動させられる別の部材を介して間接的に作用させてもよい。前者の場合、弁孔を加圧室に臨むように設けて弁子に加圧室の液圧を作用させてもよく、あるいは弁孔と加圧室とを液通路により接続して弁子に加圧室の液圧を作用させてもよい。マスタシリンダとパイロット式切換弁とが直列に並ぶ状態とすることが望ましく、同軸に並ぶ状態とすることが特に望ましい。いずれにしても、マスタシリンダ装置をマスタピストンの直径方向においてコンパクトに構成することができる。
本項のマスタシリンダ装置によれば、加圧室の液圧に基づいて弁子に、その反対側の端面から一端面に向かう向きの力を加えることができる。そのため、例えば、パイロット圧室に液圧が供給されず、パイロット式切換弁が第一状態になるべき状態において、何らかの事情により弁子が弾性部材の付勢力によっては原位置へ復帰させられず、パイロット式切換弁が第二状態になったままである場合、加圧室の液圧に基づく大きな力により弁子を移動させ、第一状態とすることができる。
(17)前記弁子が一端面においてマスタハウジングの外部に臨まされており、かつ、その一端面の位置の変化に基づいて前記パイロット式切換弁が前記第一状態にある場合と前記第二状態にある場合とで異なる電気信号を発生させる検出器を含む(14)項ないし(16)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
検出器として、例えば、接触式センサあるいは光電センサ等の非接触式センサ等、種々の検出器を採用可能である。
本項のマスタシリンダ装置によれば、例えば、パイロット式切換弁,連動切換弁および動力液圧源の少なくとも一つの異常を検出することができる。パイロット式切換弁が第二状態にあるべきであるにもかかわらず、第一状態にある場合の電気信号が発せられている場合、第一状態にあるべきであるにもかかわらず、第二状態にある場合の電気信号が発せられている場合、異常であることがわかるのである。
(18)前記検出器が、前記弁子の前記一端面に接触する検出子を有するものである(17)項に記載のマスタシリンダ装置。
弁子が直接検出され、パイロット式切換弁が第一状態にある場合と第二状態にある場合とにおいて異なる電気信号の発生が確実に為される。
(19)前記マスタシリンダが、小径ピストンと大径ピストンとを一体的に備えた段付マスタピストンと、その段付マスタピストンを液密かつ摺動可能に収容する段付状のシリンダボアを備えた段付ハウジングとを備え、前記小径ピストンと前記大径ピストンとがそれぞれ前記2つのマスタピストンの1つずつを構成し、前記段付ハウジングが前記マスタハウジングを構成している(4)項ないし(7)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
本項が(5)項に従属する態様においては、小径ピストンの前方に形成される液室と、大径ピストンの前方(大径ピストンと小径ピストンとの間の段付面の前方)に形成される液室との一方を加圧室、他方をフィルアップ室とすることができる。大径ピストンの前方に形成される液室をフィルアップ室とすることが便利な場合が多い。
本項が(6)項に従属する態様においては、小径ピストンの前方に形成される液室と、大径ピストンの前方に形成される液室との両方を加圧室としてもよい。
(20)前記供給状態制御弁装置を複数種類含み、それら複数種類の供給状態制御弁装置の少なくとも2種類のものの前記連動切換弁装置が、
パイロット圧室に液圧が供給されない状態では第一状態にあり、供給されれば第二状態になるパイロット式切換弁と、
前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態では前記パイロット圧室を動力液圧源から遮断するとともに低圧源に連通させて前記パイロット式切換弁を前記第一状態とする動力液圧遮断状態にあり、マスタピストンが後退端位置から設定距離前進すればパイロット圧室を低圧源から遮断するとともに動力液圧源と連通させて前記パイロット式切換弁を前記第二状態とする動力液圧導入状態に切り替わる連動切換弁と
を含み、かつ、それら少なくとも2種類の供給状態制御弁装置の前記パイロット式切換弁が一体的に構成され、それら少なくとも2種類の供給状態制御弁装置が前記連動切換弁を共有する(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
複数種類の供給状態制御弁装置には、例えば、マスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置,フィルアップ制御弁装置および加圧特性制御弁装置がある。本項によれば、マスタシリンダ装置をコンパクトにかつ安価に構成することができる。
(21)前記ストロークシミュレータがシミュレータハウジングを備え、そのシミュレータハウジング内に前記収容室が設けられるとともに、収容室にブレーキ液の量が増大するにつれて収容室の液圧を増大させる弾性手段が設けられた(3)項に記載のマスタシリンダ装置。
弾性手段の弾性力に抗して収容室にブレーキ液が収容可能な場合、シミュレータピストンは有効化状態にある。シミュレータ制御弁装置が設けられる場合、収容室へのブレーキ液の流入を許容する状態と阻止する状態とにストロークシミュレータを切り換える。
収容室へのブレーキ液の流入量が多いほど弾性手段の弾性力が増大し、運転者にブレーキ操作量に応じた操作感が付与される。
前記(11)項ないし(20)項に記載の各特徴は、本項のマスタシリンダ装置に適用することができる。
(22)前記弾性手段が、前記収容室へのブレーキ液の流入量に対して非線形の弾性力を発生させる非線形弾性装置を含む(21)項に記載のマスタシリンダ装置。
ばね定数が非線形の弾性装置を弾性手段として使用すれば、ブレーキ操作部材に対して非線形の操作反力を付与することができる。例えば、フィルアップ機能を備えない通常の液圧ブレーキシステムにおけるように、操作開始当初は操作反力の増大勾配が小さく、後半に増大勾配が大きくなるようにすることができるのである。そのため、例えば、ブレーキ操作部材の操作開始当初であって、制動開始時においてブレーキ操作部材の単位操作ストロークに対する操作力、すなわち加圧室の液圧の増大量が小さく、操作力あるいは加圧室の液圧に基づいてブレーキシリンダ圧を電気的に制御する場合、ブレーキシリンダ圧の微妙な制御が可能である。非線形弾性装置は、例えば、ばね定数が非線形である一つの弾性部材で構成したり、ばね定数が線形である複数の弾性部材の組合わせで構成したりすることができる。
(23)前記マスタシリンダの作動ストロークを検出するストローク検出器と、
前記加圧室の液圧を検出する液圧検出器と、
それらストローク検出器および液圧検出器により検出されたストロークと液圧との関係が予め設定された基準領域から外れた場合に異常が発生したとする異常検出部と
を含む(1)項ないし(22)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
ストローク検出器は、マスタシリンダの作動ストローク自体、すなわちマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動量を検出するものとしても、ブレーキペダル等ブレーキ操作部材の操作ストローク等、マスタシリンダの作動ストロークと一対一に対応するストロークを検出するものとしてもよい。
異常の検出により、操作者のブレーキ操作に応じた液圧が加圧室に発生させられていないことがわかり、異常発生を表示装置等の報知装置によって報知する等、種々の異常対処手段を講ずることができる。
(24)前記異常検出部が、前記供給状態制御弁装置を構成する切換弁の少なくとも1つの固着を検出する弁固着検出部を含む(23)項に記載のマスタシリンダ装置。
(25)(1)項ないし(24)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置と、
そのマスタシリンダ装置に連携させられたブレーキ操作部材と、
前記加圧室にマスタ通路を経て接続されたブレーキシリンダと、
前記ブレーキシリンダに、前記マスタシリンダ装置と並列に接続された動力液圧源と、
その動力液圧源から前記ブレーキシリンダに供給される液圧を制御する動力液圧制御装置と
を含むブレーキシステム。
動力液圧制御装置は、動力液圧源自体の出力液圧を制御するものでも、動力液圧源から供給されるほぼ一定の液圧を減圧制御するものでもよい。後者の場合、例えば、動力液圧源は、ブレーキ液を加圧下に蓄えるアキュムレータおよびリザーバからブレーキ液を汲み上げてアキュムレータに供給するポンプを含む液圧源とされ、動力液圧制御装置は、アキュムレータのほぼ一定の液圧を制御してブレーキシリンダに供給する制御弁装置を含む装置とされる。前者の場合、例えば、動力液圧源はポンプを含み、動力液圧制御装置は、ポンプを駆動する駆動源たるポンプモータを制御し、ポンプの吐出圧を制御する装置とされる。
マスタシリンダ装置が(13)項に記載のマスタシリンダ装置である場合、パイロット圧室に連通させられる動力液圧源は、マスタシリンダ装置と並列に接続された動力液圧源でもよく、それとは別にパイロット式切換弁の切換えに専用の動力液圧源でもよい。
マスタシリンダ装置も液圧源の一種であり、本ブレーキシステムは液圧源を2つ備え、それら2つの液圧源を適宜に用いてブレーキを作動させることができる。動力液圧制御装置によればブレーキシリンダの液圧が電気的に制御され、種々の態様でブレーキシリンダ圧を制御することが可能である。また、例えば、動力液圧源および動力液圧制御装置の故障時にマスタシリンダ装置によりブレーキシリンダに液圧を供給することができる。供給状態制御弁装置は、本項のブレーキシステムにおいて特に有効なものである。
そのマスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置と
を含むマスタシリンダ装置において、
前記供給状態制御弁装置の少なくとも一部を、前記マスタピストンの前記マスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動して作動する連動切換弁装置としたマスタシリンダ装置。
(2)前記供給状態制御弁装置が、前記加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられるマスタカット弁装置を含み、そのマスタカット弁装置が前記連動切換弁装置とされた(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
本項のマスタシリンダ装置によれば、加圧室からブレーキシリンダへのブレーキ液の供給の許容,阻止の切換えを安価に行うことができるとともに、許容状態から阻止状態への切換えを遅れなく行うことができる。
(3)前記加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切換え可能なマスタカット弁装置と、
そのマスタカット弁装置の前記阻止状態において前記加圧室から排出されるブレーキ液を収容室に収容するとともに、収容したブレーキ液の量が増大するにつれて前記収容室の液圧を増大させるストロークシミュレータと、
そのストロークシミュレータを有効化する有効化状態と無効化する無効化状態とに切り換え可能なシミュレータ制御弁装置と
を含み、前記供給状態制御弁装置としてのシミュレータ制御弁装置が前記連動切換弁装置とされた(1)項または(2)項に記載のマスタシリンダ装置。
シミュレータ制御弁装置は、例えば、ストロークシミュレータの収容室とマスタシリンダの加圧室とを連通させる液通路に設けられた開閉弁を含むものとすることができる。この開閉弁が閉状態とされれば、収容室へのブレーキ液の流入が不可能となり、ストロークシミュレータが無効化されるのである。また、ストロークシミュレータが、容積が収容室と補完関係にある補完室を備えたものである場合には、シミュレータ制御弁装置を、その補完室と低圧源とを連通させる液通路に設けられた開閉弁とすることもできる。補完室が低圧源から遮断され、ブレーキ液が流出不可能な状態とされれば、収容室が容積増大不能となり、ストロークシミュレータが無効化されるのである。
本項のマスタシリンダ装置によれば、ストロークシミュレータの有効化状態と無効化状態との切換えを安価に行うことができるとともに、有効化状態から無効化状態への切換えを遅れなく行うことができる。
(4)前記マスタシリンダが、前記1つ以上のマスタピストンとして、少なくとも前進は一体的に行う2つのマスタピストンを少なくとも備え、それら2つのマスタピストンの各々の前方に第一液室および第二液室が形成されたものであり、前記供給状態制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、設定液圧に達した後は、第二液室のブレーキ液がブレーキシリンダには供給されず、低圧源への流出が許容される状態とする加圧面積制御弁装置を含み、その加圧面積制御弁装置が前記連動切換弁装置とされた(1)項ないし(3)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
マスタピストンを、大径ピストンと小径ピストンとを一体的に有する段付ピストンとし、マスタハウジングも段付孔を有するものとしてもよく、また、互いに別体の大径ピストンと小径ピストンとを仕切壁で仕切られた前後のシリンダボアに嵌合し、上記仕切壁を液密かつ摺動可能に貫通して後方のピストンの力を前方のピストンに伝達する伝達ロッドを設けてもよい。なお、後者の場合には、前後のピストンの直径を同じにすることも可能である。
本項の特徴によれば、下記のフィルアップ制御や加圧特性制御を安価に、あるいは高い信頼性を以て実現することができる。
なお、本項のマスタシリンダ装置において、例えば、動力液圧源の液圧である動力液圧をパイロット圧とするパイロット式切換弁と、そのパイロット式切換弁への動力液圧の供給,遮断をマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に連動して切り換える連動切換弁とを設け、パイロット式切換弁を、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧に達しない状態で第二液室のブレーキ液の低圧源への流出を許容する開放弁とすれば、加圧面積制御を無効化することができ、無効化を安価にかつ迅速に行うことができる。
(5)前記加圧面積制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が実質的な制動効果を生じさせ始める高さに設定された設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、前記設定液圧に達した後は、第一液室からはブレーキ液が供給されるが第二液室からは供給されない状態とするフィルアップ制御弁装置であり、前記第一液室が加圧室、前記第二液室がフィルアップ室である(4)項に記載のマスタシリンダ装置。
フィルアップ制御を行えば、ブレーキシリンダがマスタシリンダからのブレーキ液により作動させられる状態において、マスタシリンダの作動ストローク(ひいてはブレーキ操作部材の所要操作ストローク)が大きくなることと、ブレーキ操作部材の所要操作力が大きくなることとを共に良好に回避することができる。
(6)前記加圧面積制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が実質的な制動効果を生じさせ始める高さより高く設定された設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、前記設定液圧に達した後は、第一液室からはブレーキ液が供給されるが第二液室からは供給されない状態とする加圧特性制御弁装置であり、前記第一および第二液室が共に加圧室である(4)項に記載のマスタシリンダ装置。
加圧特性制御を行えば、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増大を回避しつつ大きな制動力を発生させることが可能となる。
(7)前記第一液室と前記第二液室とが連通路により互いに連通させられており、その連通路に、第二液室から第一液室に向かう作動液の流れは許容するが逆向きの流れは阻止する逆止弁が設けられた (4)項ないし (6)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
逆止弁を備えた連通路によれば、単純な装置により、第二液室から第一液室を経てブレーキ液をブレーキシリンダに供給することができる。
(8)前記加圧面積制御弁装置が、
リリーフ弁と、
前記第二液室を前記リリーフ弁を経て前記低圧源に連通させるリリーフ弁経由状態と、リリーフ弁をバイパスして直接連通させる直結状態とに切り換え可能なリリーフ制御弁装置と
を含む(4)項ないし(7)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
リリーフ弁は、マスタピストンあるいはマスタハウジングに設けることも可能であり、マスタハウジングの外部に設けることも可能である。前者の場合に、リリーフ弁の本体をマスタピストンあるいはマスタハウジングに取り付けることも可能であるが、マスタピストンあるいはマスタハウジング自体をリリーフ弁の本体とすれば構成を単純化し得る。
第二液室が低圧源に直接連通させられれば、第二液室の液圧が速やかに低下させられる。
加圧面積制御弁装置は、リリーフ弁と絞りとの並列回路を含む装置とすることもできる。しかし、この場合、第二液室が絞りを有する液通路により、常時、低圧源に連通させられることとなり、例えば、ブレーキペダルの踏込み後、踏力が一定に保たれる場合、ブレーキの効き遅れが生じる。マスタピストンには、第一,第二液室の各液圧に基づく反力が作用し、これら反力の和が上記一定の踏力と釣り合うが、第二液室の液圧に基づく反力は、第二液室のブレーキ液が絞りを経て低圧源に流出するにつれて低下するため、踏力が一定に保たれる場合、第一液室の液圧は第二液室の液圧の低下に従って緩やかに上昇することとなり、その分、効き遅れが生じるのである。また、ブレーキ操作部材の操作が緩やかに行われる場合には、第二液室から絞りを経て低圧源に流出するブレーキ液の量が多くなり、その分、ブレーキ操作ストロークが無駄になる問題もある。
それに対し、本項のマスタシリンダ装置によれば、未だ公開されていないが、本出願人に係る特願2004−178760号の明細書および図面に記載されているように、第二液室がリリーフ制御弁装置によって低圧源に直結されるまでの間は、第二液室の液圧がリリーフ圧に達してブレーキ液が低圧源へ流出しない限り、第二液室のブレーキ液が必ずブレーキシリンダに供給され、第二液室のブレーキ液が絞りを経て低圧源へ流出することによる操作ストロークの無駄の問題が解消され、また、第二液室が低圧源に直結させられれば、第二液室の液圧が速やかに低下し、実質的に全操作力がブレーキシリンダに作動に利用される状態となり、ブレーキの効き遅れの問題が軽減される。
(9)前記リリーフ制御弁装置が、前記1つ以上のマスタピストンの前記マスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動する連動弁装置である(8)項にマスタシリンダ装置。
リリーフ制御弁装置は電磁弁装置により構成してもよいが、機械的に連動する装置とすれば、マスタシリンダ装置を安価に構成することができる。また、電気系統に異常が生じても、リリーフ制御弁装置は作動することができ、信頼性が高い。
(10)前記リリーフ制御弁装置が、前記2つのマスタピストンのいずれか一方と前記マスタハウジングとにより構成された(9)項に記載のマスタシリンダ装置。
連動弁装置をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、マスタハウジングとマスタピストンとにより構成すれば、マスタピストンを弁子として利用することができる。しかも、連動弁装置は必然的にマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動することとなって、連動装置が不要になり、装置コストを低減し得る。
(11)前記連動切換弁装置が、少なくとも、前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態と、その後退端位置から設定距離前進した状態とで、連通状態が異なる連動切換弁を含む(1)項ないし(10)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
(12)前記連動切換弁が、前記マスタハウジングと前記1つ以上のマスタピストンの1つとにより構成された(11)項に記載のマスタシリンダ装置。
連動切換弁装置の少なくとも一部を成す連動切換弁をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、マスタハウジングとマスタピストンとにより構成すれば、マスタピストンを弁子として利用することができる。しかも、連動切換弁装置は必然的にマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動することとなって、連動装置が不要になり、装置コストを低減し得る。
(13)前記連動切換弁装置が、
パイロット圧室に液圧が供給されない状態では第一状態にあり、供給されれば第二状態になるパイロット式切換弁と、
前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態では前記パイロット圧室を動力液圧源から遮断するとともに低圧源に連通させて前記パイロット式切換弁を前記第一状態とする動力液圧遮断状態にあり、マスタピストンが後退端位置から設定距離前進すればパイロット圧室を低圧源から遮断するとともに動力液圧源と連通させて前記パイロット式切換弁を前記第二状態とする動力液圧導入状態に切り替わる連動切換弁と
を含む(1)項ないし(12)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
連動切換弁は、マスタピストンの前進,後退により機械的に動力液圧遮断状態と動力液圧導入状態とに切り換わり、パイロット式切換弁が機械的に第一状態と第二状態とに切り換えられる。そのパイロット式切換弁を、マスタカット弁,シミュレータ制御弁,フィルアップ制御弁,加圧特性制御弁等の少なくとも1つとすれば、その少なくとも1つと連動切換弁とによりマスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置,フィルアップ制御弁装置,加圧特性制御弁装置の少なくとも1つの少なくとも一部が構成される。
(14)前記パイロット式切換弁の、液通路を連通させ、あるいは遮断する弁部が、前記マスタハウジングとそれにより相対移動可能に保持された弁子とによって構成されたものである(13)項に記載のマスタシリンダ装置。
パイロット式切換弁をマスタシリンダの外部に設けることも可能であるが、弁部を、マスタハウジングと弁子とによって構成すれば、マスタハウジングをバルブハウジングとして利用することができ、マスタシリンダ装置を簡易にかつ安価に構成することができる。
(15)前記パイロット式切換弁が、前記マスタハウジングに形成された弁孔に液密かつ摺動可能に嵌合された弁子を備え、その弁子に前記パイロット圧室の液圧がその弁子をその弁子の一端面から反対側の端面に向かって移動させる向きに作用させられ、それとは逆向きに弾性部材の付勢力が作用させられる(14)項に記載のマスタシリンダ装置。
弁子は弾性部材の付勢力により一端面側の原位置(第一状態)に保たれ、パイロット圧室に液圧が作用させられれば付勢力に抗して反対側の端面に向かって移動させられ、パイロット圧室の液圧が除去されれば、付勢力により原位置に戻される。
(16)前記弁子が、前記一端面に大気圧の作用を受け、前記反対側の端面に前記加圧室の液圧の作用を受ける(15)項に記載のマスタシリンダ装置。
弁子の反対側の端面には、加圧室の液圧を直接作用させてもよく、加圧室の液圧により作動させられる別の部材を介して間接的に作用させてもよい。前者の場合、弁孔を加圧室に臨むように設けて弁子に加圧室の液圧を作用させてもよく、あるいは弁孔と加圧室とを液通路により接続して弁子に加圧室の液圧を作用させてもよい。マスタシリンダとパイロット式切換弁とが直列に並ぶ状態とすることが望ましく、同軸に並ぶ状態とすることが特に望ましい。いずれにしても、マスタシリンダ装置をマスタピストンの直径方向においてコンパクトに構成することができる。
本項のマスタシリンダ装置によれば、加圧室の液圧に基づいて弁子に、その反対側の端面から一端面に向かう向きの力を加えることができる。そのため、例えば、パイロット圧室に液圧が供給されず、パイロット式切換弁が第一状態になるべき状態において、何らかの事情により弁子が弾性部材の付勢力によっては原位置へ復帰させられず、パイロット式切換弁が第二状態になったままである場合、加圧室の液圧に基づく大きな力により弁子を移動させ、第一状態とすることができる。
(17)前記弁子が一端面においてマスタハウジングの外部に臨まされており、かつ、その一端面の位置の変化に基づいて前記パイロット式切換弁が前記第一状態にある場合と前記第二状態にある場合とで異なる電気信号を発生させる検出器を含む(14)項ないし(16)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
検出器として、例えば、接触式センサあるいは光電センサ等の非接触式センサ等、種々の検出器を採用可能である。
本項のマスタシリンダ装置によれば、例えば、パイロット式切換弁,連動切換弁および動力液圧源の少なくとも一つの異常を検出することができる。パイロット式切換弁が第二状態にあるべきであるにもかかわらず、第一状態にある場合の電気信号が発せられている場合、第一状態にあるべきであるにもかかわらず、第二状態にある場合の電気信号が発せられている場合、異常であることがわかるのである。
(18)前記検出器が、前記弁子の前記一端面に接触する検出子を有するものである(17)項に記載のマスタシリンダ装置。
弁子が直接検出され、パイロット式切換弁が第一状態にある場合と第二状態にある場合とにおいて異なる電気信号の発生が確実に為される。
(19)前記マスタシリンダが、小径ピストンと大径ピストンとを一体的に備えた段付マスタピストンと、その段付マスタピストンを液密かつ摺動可能に収容する段付状のシリンダボアを備えた段付ハウジングとを備え、前記小径ピストンと前記大径ピストンとがそれぞれ前記2つのマスタピストンの1つずつを構成し、前記段付ハウジングが前記マスタハウジングを構成している(4)項ないし(7)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
本項が(5)項に従属する態様においては、小径ピストンの前方に形成される液室と、大径ピストンの前方(大径ピストンと小径ピストンとの間の段付面の前方)に形成される液室との一方を加圧室、他方をフィルアップ室とすることができる。大径ピストンの前方に形成される液室をフィルアップ室とすることが便利な場合が多い。
本項が(6)項に従属する態様においては、小径ピストンの前方に形成される液室と、大径ピストンの前方に形成される液室との両方を加圧室としてもよい。
(20)前記供給状態制御弁装置を複数種類含み、それら複数種類の供給状態制御弁装置の少なくとも2種類のものの前記連動切換弁装置が、
パイロット圧室に液圧が供給されない状態では第一状態にあり、供給されれば第二状態になるパイロット式切換弁と、
前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態では前記パイロット圧室を動力液圧源から遮断するとともに低圧源に連通させて前記パイロット式切換弁を前記第一状態とする動力液圧遮断状態にあり、マスタピストンが後退端位置から設定距離前進すればパイロット圧室を低圧源から遮断するとともに動力液圧源と連通させて前記パイロット式切換弁を前記第二状態とする動力液圧導入状態に切り替わる連動切換弁と
を含み、かつ、それら少なくとも2種類の供給状態制御弁装置の前記パイロット式切換弁が一体的に構成され、それら少なくとも2種類の供給状態制御弁装置が前記連動切換弁を共有する(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
複数種類の供給状態制御弁装置には、例えば、マスタカット弁装置,シミュレータ制御弁装置,フィルアップ制御弁装置および加圧特性制御弁装置がある。本項によれば、マスタシリンダ装置をコンパクトにかつ安価に構成することができる。
(21)前記ストロークシミュレータがシミュレータハウジングを備え、そのシミュレータハウジング内に前記収容室が設けられるとともに、収容室にブレーキ液の量が増大するにつれて収容室の液圧を増大させる弾性手段が設けられた(3)項に記載のマスタシリンダ装置。
弾性手段の弾性力に抗して収容室にブレーキ液が収容可能な場合、シミュレータピストンは有効化状態にある。シミュレータ制御弁装置が設けられる場合、収容室へのブレーキ液の流入を許容する状態と阻止する状態とにストロークシミュレータを切り換える。
収容室へのブレーキ液の流入量が多いほど弾性手段の弾性力が増大し、運転者にブレーキ操作量に応じた操作感が付与される。
前記(11)項ないし(20)項に記載の各特徴は、本項のマスタシリンダ装置に適用することができる。
(22)前記弾性手段が、前記収容室へのブレーキ液の流入量に対して非線形の弾性力を発生させる非線形弾性装置を含む(21)項に記載のマスタシリンダ装置。
ばね定数が非線形の弾性装置を弾性手段として使用すれば、ブレーキ操作部材に対して非線形の操作反力を付与することができる。例えば、フィルアップ機能を備えない通常の液圧ブレーキシステムにおけるように、操作開始当初は操作反力の増大勾配が小さく、後半に増大勾配が大きくなるようにすることができるのである。そのため、例えば、ブレーキ操作部材の操作開始当初であって、制動開始時においてブレーキ操作部材の単位操作ストロークに対する操作力、すなわち加圧室の液圧の増大量が小さく、操作力あるいは加圧室の液圧に基づいてブレーキシリンダ圧を電気的に制御する場合、ブレーキシリンダ圧の微妙な制御が可能である。非線形弾性装置は、例えば、ばね定数が非線形である一つの弾性部材で構成したり、ばね定数が線形である複数の弾性部材の組合わせで構成したりすることができる。
(23)前記マスタシリンダの作動ストロークを検出するストローク検出器と、
前記加圧室の液圧を検出する液圧検出器と、
それらストローク検出器および液圧検出器により検出されたストロークと液圧との関係が予め設定された基準領域から外れた場合に異常が発生したとする異常検出部と
を含む(1)項ないし(22)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
ストローク検出器は、マスタシリンダの作動ストローク自体、すなわちマスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動量を検出するものとしても、ブレーキペダル等ブレーキ操作部材の操作ストローク等、マスタシリンダの作動ストロークと一対一に対応するストロークを検出するものとしてもよい。
異常の検出により、操作者のブレーキ操作に応じた液圧が加圧室に発生させられていないことがわかり、異常発生を表示装置等の報知装置によって報知する等、種々の異常対処手段を講ずることができる。
(24)前記異常検出部が、前記供給状態制御弁装置を構成する切換弁の少なくとも1つの固着を検出する弁固着検出部を含む(23)項に記載のマスタシリンダ装置。
(25)(1)項ないし(24)項のいずれかに記載のマスタシリンダ装置と、
そのマスタシリンダ装置に連携させられたブレーキ操作部材と、
前記加圧室にマスタ通路を経て接続されたブレーキシリンダと、
前記ブレーキシリンダに、前記マスタシリンダ装置と並列に接続された動力液圧源と、
その動力液圧源から前記ブレーキシリンダに供給される液圧を制御する動力液圧制御装置と
を含むブレーキシステム。
動力液圧制御装置は、動力液圧源自体の出力液圧を制御するものでも、動力液圧源から供給されるほぼ一定の液圧を減圧制御するものでもよい。後者の場合、例えば、動力液圧源は、ブレーキ液を加圧下に蓄えるアキュムレータおよびリザーバからブレーキ液を汲み上げてアキュムレータに供給するポンプを含む液圧源とされ、動力液圧制御装置は、アキュムレータのほぼ一定の液圧を制御してブレーキシリンダに供給する制御弁装置を含む装置とされる。前者の場合、例えば、動力液圧源はポンプを含み、動力液圧制御装置は、ポンプを駆動する駆動源たるポンプモータを制御し、ポンプの吐出圧を制御する装置とされる。
マスタシリンダ装置が(13)項に記載のマスタシリンダ装置である場合、パイロット圧室に連通させられる動力液圧源は、マスタシリンダ装置と並列に接続された動力液圧源でもよく、それとは別にパイロット式切換弁の切換えに専用の動力液圧源でもよい。
マスタシリンダ装置も液圧源の一種であり、本ブレーキシステムは液圧源を2つ備え、それら2つの液圧源を適宜に用いてブレーキを作動させることができる。動力液圧制御装置によればブレーキシリンダの液圧が電気的に制御され、種々の態様でブレーキシリンダ圧を制御することが可能である。また、例えば、動力液圧源および動力液圧制御装置の故障時にマスタシリンダ装置によりブレーキシリンダに液圧を供給することができる。供給状態制御弁装置は、本項のブレーキシステムにおいて特に有効なものである。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
図1に、請求可能発明の一実施例としてのマスタシリンダ装置を備えたブレーキシステムが図示されている。本ブレーキシステムは、運転者の操作によりマスタシリンダに発生させられた液圧に基づいてブレーキが作動させられるマニュアル制動と、ブレーキのブレーキシリンダの液圧であるブレーキシリンダ圧が電気的に制御される電気制御制動とが択一的に行われる装置とされており、マスタシリンダ装置10と、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12と、前後左右の各車輪14,16,18,20の回転を抑制するブレーキであって、本実施例では、車輪14〜20にそれぞれ設けられたブレーキのシリンダであるブレーキシリンダ22,24,26,28と、動力液圧源30と、動力液圧制御装置32とを備える。
動力液圧源30は、本実施例では、リザーバ40からブレーキ液を汲み上げるポンプ42と、ポンプ42を駆動する電動モータ44と、ポンプ42から吐出されたブレーキ液を加圧下に蓄えるアキュムレータ46と、ポンプ42の吐出圧を設定値以下に規制するリリーフ弁48とを含んでいる。
動力液圧制御装置32は、ポンプ42から各ブレーキシリンダ22〜28へのブレーキ液の流入を制御する増圧弁50,52,54,56と、各ブレーキシリンダ22〜28からリザーバ40へのブレーキ液の流出を制御する減圧弁60,62,64,66とを含んでおり、ポンプ42と増圧弁50〜56とは増圧通路68により接続され、減圧弁60〜66とリザーバ40とは減圧通路70により接続され、ブレーキシリンダ22〜28はそれぞれ、ブレーキシリンダ通路72,74,76,78によって増圧弁50〜56および減圧弁60〜66に接続されている。本実施例では、増圧弁50〜56および減圧弁60〜66は、供給電流に応じてリニアに液圧を制御するリニア液圧制御弁であり、増圧弁50〜56および前輪側の減圧弁60,62は常閉の電磁制御弁であり、後輪側の減圧弁64,66は常開の電磁制御弁であり、これらは液圧制御弁装置79を構成している。ポンプ42と増圧弁50との間に液圧源液圧センサ80が設けられて動力液圧源30の液圧が検出され、ブレーキシリンダ22〜28の各液圧がブレーキシリンダ圧センサ82により検出される。
前記マスタシリンダ装置10を説明する。マスタシリンダ装置10は、本実施例では、マスタシリンダ88,マスタカット弁装置90,ストロークシミュレータ92,シミュレータ制御弁装置94,フィルアップ制御弁装置96を備えている。マスタシリンダ88は、小径ピストン100と大径ピストン102とを一体的に備えた段付マスタピストン104と、その段付マスタピストン104を液密かつ摺動可能に収容する段付状のシリンダボア106を備えた段付ハウジング108とを備えている。シリンダボア106は、同心状の小径ボア部110と大径ボア部112とを備え、小径ボア部110に小径ピストン100がシール部材としての一対のカップシール116,118により液密を保持されて摺動可能に嵌合され、大径ボア部112に大径ピストン102がシール部材としてのOリング120により液密を保持されて摺動可能に嵌合されている。
これら小径ピストン100と大径ピストン102とがそれぞれ、2つのマスタピストンの1つずつを構成し、段付ハウジング108がマスタハウジングを構成している。マスタシリンダ88は、本実施例では、前進および後退を一体的に行う2つのマスタピストンを備えているのであり、小径ピストン100の前方に加圧室126が形成され、大径ピストン102の前方にフィルアップ室128が形成されている。なお、加圧室126は小径ボア部110より大きい液圧室とされている。
段付マスタピストン104は、フィルアップ室128内に配設された付勢手段の一種である弾性部材たるばね部材としての圧縮コイルスプリング130により、後退方向、すなわちフィルアップ室128の容積が増大する向きに付勢されている。前記ブレーキペダル12は、図示を省略する車体に回動可能に設けられており、運転者により踏込み操作され、ブレーキペダル12の回動運動は直線運動とされて入力ロッド134により段付マスタピストン104に伝達される。上記スプリング130の付勢による段付マスタピストン104の後退限度は、例えば、段付ハウジング108に嵌められてストッパを構成する止め輪136により規定される。
上記加圧室126とフィルアップ室128とは、小径ピストン100がカップシール116,118によってシールされることにより互いに独立しており、小径ピストン100内に設けられた連通路140によって互いに連通させられている。この連通路140には、フィルアップ室128から加圧室126に向かう作動液の流れは許容するが、逆向きの流れは阻止する逆止弁142が設けられている。
また、加圧室126は、小径ピストン100に設けられた通路146,段付ハウジング108に設けられたポート148およびリザーバ通路150によって前記リザーバ40に連通させられる。前記カップシール116,118はポート148の前後に設けられ、カップシール116は、リザーバ40から加圧室126へ向かう向きのブレーキ液の流れは許容するが、逆向きの流れは阻止し、カップシール118は、リザーバ40からフィルアップ室128へ向かう向きのブレーキの流れは許容するが逆向きの流れは阻止する。
加圧室126には、前記ストロークシミュレータ92が接続されている。ストロークシミュレータ92は、シミュレータハウジング160と、シミュレータピストン162と、弾性手段の一種である非線形弾性装置としてのゴム体164とを備えている。ストロークシミュレータ92はマスタシリンダ88とは別に設けられ、シミュレータハウジング160内にシミュレータピストン162が液密かつ摺動可能に嵌合され、シミュレータピストン162の前方に収容室168、後方に容積が収容室168と補完関係にある補完室170がそれぞれ形成されている。容積が補完関係にある、とは収容室168の容積が増大すれば、補完室170の容積が減少し、収容室168の容積が減少すれば、補完室170の容積が増大する関係にあるということである。収容室168は液通路176,段付ハウジング108に設けられたポート178により加圧室126に連通させられ、補完室170は接続通路180およびポート182によってフィルアップ室128に連通させられている。液通路176には液圧検出器たるマスタ圧センサ184が設けられ、加圧室126の液圧であるマスタ圧を検出する。
ゴム体164は、補完室170に配設されている。ゴム体164は、概して円錐状を成し、シミュレータピストン162を補完室170から収容室168に向かう向きであって、収容室168の容積を減少させる向きに付勢している。したがって、ゴム体164は、収容室168のブレーキ液の量が増大し、シミュレータピストン162の移動量が増大するにつれて圧縮されて付勢力が増大し、収容室168の液圧を増大させる。ゴム体164は、その小径部側においてシミュレータピストン162に接触させられており、収容室168へのブレーキ液の流入により、シミュレータピストン162が原位置(収容室168にブレーキ液が収容されていない状態での位置)から移動させられるとき、その移動量に対して非線形の付勢力を発生させる。シミュレータピストン162の移動量が多いほど、増加勾配が大きい付勢力を発生させるのである。
フィルアップ室128は、段付マスタピストン104内に設けられたリリーフ通路190により外部に連通させられ、さらに、段付ハウジング108に設けられたポート192およびリザーバ通路194によりリザーバ40に連通させられる。リリーフ通路190にリリーフ弁196が設けられている。リリーフ弁196は、本実施例では段付マスタピストン104に設けられているのである。フィルアップ室128はまた、段付マスタピストン104内に設けられたバイパス通路198によりリザーバ40に連通させられる。バイパス通路198は、図1に示すように、連通路140に接続してフィルアップ室128に連通させることができる。バイパス通路198は、リリーフ通路190より設定距離後方(ブレーキペダル12側)において外部に連通させられている。リリーフ通路190とバイパス通路198とは、段付マスタピストン104のリリーフ通路190とバイパス通路198との間に設けられたシール部材としてのOリング200により、段付マスタピストン104と段付ハウジング108との間のクリアランスによる連通を阻止され、ポート192およびリザーバ40に択一的に連通させられる。リリーフ圧は、ブレーキシリンダ22,24の液圧が実質的制動効果を生じさせ始める高さに達する高さであって、ほぼフィルアップが終了する高さとされている。なお、リリーフ弁196は、図示の都合で、あたかも段付マスタピストン104(大径ピストン102)内の空間に配置されているかの状態で示されているが、実際は、本実施例では、段付マスタピストン104をリリーフ弁196のハウジングとして構成されている。前記逆止弁142についても同様である。
段付マスタピストン104が後退端位置に位置する状態では、図1に示すように、リリーフ通路190がポート192によりリザーバ40に連通させられる一方、バイパス通路198はリザーバ40との連通を遮断され、フィルアップ室128がリリーフ弁196を経てリザーバ40に連通させられるリリーフ経由状態が得られる。本ブレーキシステムにおいてマニュアル制動が行われるとき、リリーフ経由状態では、ブレーキシリンダ圧が実質的な制動効果を生じさせ始める高さになり、フィルアップ室128の液圧であるフィルアップ圧がリリーフ圧に達するまでは、加圧室126およびフィルアップ室128の両方からブレーキシリンダ22,24にブレーキ液が供給され、フィルアップが行われる。
段付マスタピストン104が後退端位置から設定距離前進させられれば、Oリング200がポート192に至り、リリーフ通路190がリザーバ40との連通を遮断される一方、バイパス通路198がポート192によりリザーバ40に連通させられ、フィルアップ室128がリリーフ弁196をバイパスしてリザーバ40に直接連通させられる直結状態が得られる。直結状態では、フィルアップ室128のブレーキ液はブレーキシリンダ22,24に供給されず、リザーバ40への流出が許容される。設定距離は、ブレーキのクリアランスにばらつきがあっても、ブレーキペダル12の通常の踏込み状態においてフィルアップが終了し、ブレーキシリンダ圧がリリーフ圧に達した後にフィルアップ室128がバイパス通路198によりリザーバ40に直結させられる距離に設定されている。本実施例では、段付マスタピストン104の大径ピストン102,段付ハウジング108,バイパス通路198,Oリング200が、フィルアップ室128をリリーフ弁経由状態と直結状態とに切換え可能なリリーフ制御弁装置202を構成しており、リリーフ制御弁装置202は、段付マスタピストン104の段付ハウジング108に対する相対移動に機械的に連動する連動弁装置である。
マスタシリンダ88の後部には、連動切換弁210が設けられている。連動切換弁210は、本実施例では、段付ハウジング108に設けられた2つのポート212,214および段付マスタピストン104の大径ピストン102に設けられたシール部材としてのOリング216を含む。これらポート212,214およびOリング216は、段付マスタピストン104が後退端位置に位置する状態においてOリング216がポート212,214の間に位置し、それらの連通を遮断するように設けられている。また、一方のポート214は液通路218によって前記増圧通路68に接続され、動力液圧源30に連通させられている。したがって、段付マスタピストン104が後退端位置から設定距離前進させられれば、Oリング216がポート212に至り、ポート212,214が互いに連通させられ、ポート212が動力液圧源30に連通させられる。連動切換弁210は、段付マスタピストン104が後端端位置に位置する状態と、その状態から設定距離前進した状態とでは連通状態が異なるのであり、本実施例では、段付ハウジング108と大径ピストン102とによって構成されている。なお、この設定距離は、前記リリーフ制御弁装置202の切換えに要する設定距離より短く、ブレーキペダル12の踏込みによる段付マスタピストン104の前進開始直後にポート212とポート214とが連通させられる大きさとされている。
前記段付ハウジング108の前端部に、パイロット式切換弁220が設けられている。パイロット式切換弁220は本実施例ではスプール弁とされており、段付ハウジング108には加圧室126と段付ハウジング108の前端面とに開口する弁孔としてのスプール孔222が加圧室126と直列にかつ同心に設けられ、弁子としてのスプール224が実質的に液密かつ摺動可能に嵌合されている。本実施例では、マスタシリンダ88とパイロット式切換弁220とが直列にかつ同軸に並ぶ状態で設けられているのである。スプール224は、液通路の連通,遮断の切換えを行う切換部226と、切換部226の前部に設けられ、切換部226より小径の被検出部228とを備え、被検出部228は、スプール孔222の前部の小径孔部230にシール部材の一種であるOリング232により液密を保持されて摺動可能に嵌合され、段付ハウジング108の前端から外部に臨んでいる。スプール224は、その一端面である前端面234が外部に臨み、大気圧の作用を受ける一方、反対側の端面である後端面236は加圧室126に臨み、加圧室126の液圧の作用を受ける。後端面236は受圧面である。
スプール224は、前記加圧室126内に収容された弾性部材の一種であるばね部材としての圧縮コイルスプリング240により前進方向、すなわち後端面236から前端面234に向かう向きに付勢されている。このスプリング240の付勢によるスプール224の前進限度は、スプール224の切換部226と上記被検出部228との間の肩面242が、スプール孔222の小径孔部230との間の肩面244に当接することにより規定される。この位置がスプール224の前進端位置であり、原位置である。スプール224のスプリング240の付勢に抗して移動する後退方向の移動限度は、加圧室126とスプール孔222との間に設けられた半径方向内向きのストッパ246にスプール224が当接することにより規定される。
スプール224には、その外周面に開口する2つの環状溝250,252が軸方向に距離を隔てて設けられるとともに、環状溝252と加圧室126とを接続する液通路254が設けられている。また、段付ハウジング108には、それぞれ段付ハウジング108の外面とスプール孔222の内周面とに開口する4つのポート258,260,262,264が設けられている。ポート258は、スプール224の切換部226とスプール孔222の肩面244との間に設けられたパイロット圧室270に連通させられるとともに、液通路272によって前記連動切換弁210のポート212に接続されている。ポート260は、環状溝250に連通させられるとともに、液通路274により前記接続通路180に接続され、フィルアップ室128に接続されている。ポート262はリザーバ通路278によって前記リザーバ40に接続されており、ポート264は液通路280により前記ブレーキシリンダ通路72,74に接続されている。本実施例では、前記液通路254,ポート264,液通路280,ブレーキシリンダ通路72,74が、加圧室126と前記左右前輪14,16の各ブレーキシリンダ22,24とを接続するマスタ通路282を構成している。本ブレーキシステムにおいては、加圧室126に発生させられた液圧によって、左右前輪14,16の回転が抑制されるようにされているのである。
パイロット式切換弁220は、パイロット圧室270に液圧が供給されない状態では第一状態にあり、供給されれば第二状態に切り換わる。この切換えは連動切換弁210により為される。前記段付マスタピストン104が後退端位置に位置する状態では、ポート212とポート214との連通が遮断され、連動切換弁210は動力液圧遮断状態にあり、パイロット圧室270を動力液圧源30から遮断するとともに、ポート212,バイパス通路198,連通路140,逆止弁142,液通路146,ポート148,リザーバ通路150によりリザーバ40に連通させて、パイロット式切換弁220を第一状態とする。連動切換弁210は、ポート212を動力液圧源30に対して開閉する開閉弁である。
段付マスタピストン104が後退端位置から設定距離前進させられれば、Oリング216が前進させられ、図3に示すように、ポート212とポート214とが連通させられるとともに、ポート212とバイパス通路198との連通がOリング216によって遮断され、連動切換弁210は動力液圧導入状態に切り換わり、パイロット圧室270をリザーバ40から遮断するとともに動力液圧源30と連通させ、パイロット式切換弁220を第二状態とする。
本実施例においては、これらパイロット式切換弁220および連動切換弁210が連動切換弁装置を構成し、前記マスタカット弁装置90,シミュレータ制御弁装置94およびフィルアップ制御弁装置96がそれぞれ、連動切換弁装置とされている。パイロット式切換弁220が第一状態にある状態では、図1に示すように、スプール224が原位置に位置し、液通路254,環状溝252,ポート264および液通路280により加圧室126のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されることを許容する許容状態にある。また、ポート260とポート262との連通が遮断され、ストロークシミュレータ92の補完室170がリザーバ40との連通を遮断されて、収容室168へのブレーキ液の流入が不可能であり、パイロット式切換弁220は、ストロークシミュレータ92をないに等しくするシミュレータ無効化状態にある。さらに、ポート260,262の連通が遮断されることにより、フィルアップ室128がリザーバ通路278によるリザーバ40との連通を遮断され、パイロット式切換弁220は、リリーフ弁196およびリリーフ制御弁装置202を有効化し、フィルアップ室128の液圧がリリーフ圧に達するまでは、フィルアップ室128のブレーキ液が連通路140,逆止弁142および加圧室126を通り、加圧室126のブレーキ液と共にブレーキシリンダ22,24に供給され、フィルアップが為されることを許容するフィルアップ有効化状態にある。
パイロット圧室270に液圧が供給され、パイロット式切換弁220が第二状態になれば、スプール224はパイロット圧により前端面234から後端面236に向かう向きの力を付与され、図3に示すように、スプリング240の付勢力に抗して原位置から作動位置へ移動させられ、パイロット式切換弁220は、ポート264と環状溝252との連通を遮断し、加圧室126のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されることを阻止する阻止状態に切り換えられる。また、ポート262が環状溝250に連通させられて、ストロークシミュレータ92の補完室170がリザーバ40に連通させられ、収容室168へのブレーキ液の流入が可能となり、パイロット式切換弁220はストロークシミュレータ92を有効化するシミュレータ有効化状態に切り換えられる。さらに、フィルアップ室128が接続通路180,液通路274,ポート260,262,リザーバ通路278によりリザーバ40に連通させられ、リリーフ弁196およびリリーフ制御弁装置202がないに等しく、無効化され、パイロット式切換弁220は、フィルアップが行われることを阻止するフィルアップ無効化状態に切り換えられる。このようにパイロット式切換弁220は、スプール224の移動により各種液通路を連通させ、遮断するのであり、段付ハウジング108とそれにより相対移動可能に保持された弁子たるスプール224により弁部が構成されている。
本実施例においては、パイロット式切換弁220の液通路254,環状溝252,ポート264が設けられた部分がマスタカット弁を構成し、連動切換弁210と共にマスタカット弁装置90を構成している。マスタカット弁は、マスタ通路282の途中に設けられている。また、パイロット式切換弁220の環状溝250およびポート260,262が設けられた部分がシミュレータ制御弁たる開閉弁を構成し、連動切換弁210と共にシミュレータ制御弁装置94を構成している。さらに、パイロット式切換弁220の環状溝250,ポート260,262が設けられた部分が、フィルアップ室128とリザーバ40とを接続する接続通路の途中に設けられて、フィルアップ室128とリザーバ40との連通を許容し、遮断するフィルアップ制御弁たる開閉弁を構成し、前記リリーフ弁196,リリーフ制御弁装置202および連動切換弁210と共にフィルアップ制御弁装置96を構成している。フィルアップ制御弁装置96については、その一部が連動切換弁装置とされている。本実施例では、3種類の供給状態制御弁装置、すなわちマスタカット弁装置90,シミュレータ制御弁装置94およびフィルアップ制御弁装置96は各々のパイロット式切換弁が一体的に構成されるとともに、連動切換弁210を共有している。
マスタシリンダ88には、その前部に検出器290が設けられている。検出器290は検出子292を備え、スプール224の前端である被検出部228に接触させられている。検出器290は、本実施例では接触式のセンサとされ、検出子292はスプール224の移動方向に平行な方向に移動可能に設けられ、スプール224に追従して移動し、前記前端面234の位置の変化に基づいてパイロット式切換弁220が第一状態にある場合と第二状態にある場合とで異なる電気信号を発生させる。本実施例では、パイロット式切換弁220が第一状態にあり、スプール224が原位置に位置する状態では検出器290はOFF信号を発生し、パイロット式切換弁220が第二状態にあり、スプール224が作動位置に位置する状態では検出器290はON信号を発生することとする。
段付マスタピストン104の大径ピストン102内にはさらに、大径ピストン102の後端部において外部に連通させられた液通路320が設けられている。液通路320は前記バイパス通路198に接続されており、バイパス通路198を介してリザーバ40に連通させられる。液通路320は、シール部材の一種である1対のOリング322により、連動切換弁210のポート214に対する液密を保持され、Oリング324により外部に対する液密を保持されている。前記連動切換弁210のポート214は動力液圧源30に接続されており、例えば、Oリング322が摩耗等により要を為さなくなった場合、Oリング324により、動力液圧源30から外部へのブレーキ液の漏れが防止されるとともに、液通路320,バイパス通路198によりリザーバ40へ戻される。段付マスタピストン104が後退端位置に位置する状態では、液通路320はバイパス通路198を経て連通路140,液通路146等によりリザーバ40に連通させられ、段付マスタピストン104が前進させられてバイパス通路198がポート192によりリザーバ40に連通させられた状態では、液通路320はバイパス通路198およびポート192等によりリザーバ40に連通させられる。これらOリング322,324は液漏れ防止装置を構成し、液通路320はブレーキ液戻し装置を構成している。
本ブレーキシステムは、図2に示すブレーキECU(電子制御ユニット)350の指令に基づいて制御される。ブレーキECU350は、コンピュータを主体とする制御部352と複数の駆動回路354とを含んでおり、制御部352は、CPU356,ROM358,RAM360,入出力部362等を備えている。入出力部362には、前記液圧源液圧センサ80,ブレーキシリンダ圧センサ82,マスタ圧センサ184,ブレーキペダル10の操作ストロークを検出するストローク検出器たるペダルストロークセンサ370,ブレーキペダル10に加えられる踏力を検出する踏力センサ372,各車輪14〜20の回転速度を検出する車輪速センサ374,検出器290等が入力側に接続されるとともに、増圧弁50〜56,減圧弁60〜66の各コイル,電動モータ44,パイロット式切換弁異常表示ランプ376およびマスタ圧異常表示ランプ378等が駆動回路380を介して出力側に接続されている。操作ストロークおよび踏力はブレーキ操作部材の操作量の一種であり、ペダルストロークセンサ370および踏力センサ372はブレーキ操作部材の操作量検出装置の例である。異常表示ランプ376,378は報知装置としての表示装置の一種であり、例えば、インストルメントパネルに設けられ、それぞれ点灯によりパイロット式切換弁220,マスタ圧の各異常を運転者に報知する。また、ROM358には、フローチャートの図示は省略するがブレーキ液圧制御プログラム、アンチロック制御プログラム等の種々のプログラムや図示を省略する目標ブレーキ液圧決定テーブル,図5ないし図7にそれぞれフローチャートで示す異常検出ルーチン等が格納されている。ブレーキECU350のブレーキ操作量に基づいて前記液圧制御弁装置79を制御し、動力液圧源30からブレーキシリンダ22〜28に供給される液圧を制御する部分が液圧制御弁装置79と共に動力液圧制御装置32を構成する。
以上のように構成されたブレーキシステムの作動について説明する。まず、正常時の作動を説明する。正常時とは、動力液圧源30,動力液圧制御装置32,ブレーキECU350等、電気的に制御される部分に故障がなく、動力液圧源30の液圧に基づいてブレーキシリンダ圧を電気的に制御し得る場合である。ブレーキペダル12が踏み込まれず、ブレーキシステムが非作動状態にある場合には、図1に示すように、段付マスタピストン104は後退端位置に位置し、連動切換弁210は動力液圧遮断状態にあり、パイロット式切換弁220は第一状態にあり、マスタカット弁装置90は許容状態に、シミュレータ制御弁装置94はシミュレータ無効化状態に、フィルアップ制御弁装置96はフィルアップ有効化状態にある。
運転者によりブレーキペダル12が踏み込まれれば、段付マスタピストン104が前進させられる。それにより、加圧室内126のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されるとともに、フィルアップ室128内のブレーキ液が連通路140,逆止弁142を通って加圧室126に流入し、ブレーキシリンダ22,24に供給される。
段付マスタピストン104が設定距離前進させられ、連動切換弁210が動力液圧導入状態に切り換えられれば、パイロット圧室270が動力液圧源30に連通させられる。そのため、パイロット式切換弁220が第二状態になり、図3に示すように、スプール224がスプリング240の付勢力に抗して後退させられ、作動位置へ移動させられる。それにより、マスタカット弁装置90が阻止状態に切り換えられ、加圧室126とブレーキシリンダ22,24との連通が遮断される。また、シミュレータ制御弁装置94がシミュレータ有効化状態に切り換えられ、フィルアップ制御弁装置96がフィルアップ無効化状態に切り換えられる。
そのため、ブレーキペダル12が踏み込まれても加圧室126内のブレーキ液はブレーキシリンダ22,24に供給されず、運転者によるブレーキペダル12の操作量や、車輪速度,車体速度などに基づいて、ブレーキECU350により増圧弁50〜56および減圧弁60〜66の制御が行われて、各ブレーキシリンダ22〜28内の液圧が増圧,減圧されることにより、車両の減速度がブレーキペダル10の操作量に対応した大きさとなるようにされる。本ブレーキシステムにおいては、ブレーキペダル12の踏込開始当初は、踏込ストロークに基づいてブレーキシリンダ圧が制御されるが、踏込ストロークの増大に伴って踏力に基づいてもブレーキシリンダ圧が制御されるとともに、その比率が増大させられ、やがては踏力のみに基づいてブレーキシリンダ圧が制御される。
この際、加圧室126内のブレーキ液は、ストロークシミュレータ92の収容室168に排出され、ゴム体164が圧縮されて収容室168の液圧が増大し、運転者にブレーキ操作感が付与される。前述のようにゴム体164は概して円錐状を成し、非線形の付勢力を発生するため、図8に示すように、ブレーキペダル12の踏込ストロークに対して踏力、すなわち加圧室126の液圧の増加勾配が、ブレーキペダル12の踏込開始当初であって、制動開始時において小さく、ブレーキシリンダ圧の微妙な制御を行うことができる。なお、加圧室126内の液圧の方がフィルアップ圧より高いが、逆止弁142により加圧室126のブレーキ液がフィルアップ室128に流れることが阻止される。
フィルアップ制御弁装置96がフィルアップ無効化状態に切り換えられ、フィルアップ室128のブレーキ液はリザーバ40に流出させられ、ストロークシミュレータ92の収容室168には、加圧室126から排出されたブレーキ液のみが収容される。収容室168に流入するブレーキ液は、小径ピストン100の前進により加圧室126から排出させられたブレーキ液のみである。
ブレーキペダル12の踏込みが解除されれば、段付マスタピストン104はスプリング130の付勢により後退させられる。段付マスタピストン104の後退は、フィルアップ室128にリザーバ40からブレーキ液が流入し、加圧室126に収容室168からブレーキ液が流入することにより許容される。ブレーキ液は、バイパス通路198がリザーバ40に連通させられている間は、ポート192およびバイパス通路198からフィルアップ室128に供給され、フィルアップ制御弁装置96がフィルアップ無効化状態にある間は、リザーバ通路278,ポート262,環状溝250,ポート260,液通路274,接続通路180およびポート182からフィルアップ室128に供給され、更に、リザーバ通路150,ポート148およびカップシール118を経てフィルアップ室128に供給される。
段付マスタピストン104の後退により、ポート212とポート214との連通がOリング216により遮断され、連動切換弁210が動力液圧遮断状態に切り換えられれば、パイロット式切換弁220が第一状態になり、パイロット圧室270が動力液圧源30から遮断されるとともにリザーバ40に連通させられ、パイロット圧が低下させられる。それにより、スプール224がスプリング240の付勢により前進させられて原位置へ復帰し、マスタカット弁装置90が許容状態に切り換えられ、シミュレータ制御弁装置94がシミュレータ無効化状態に切り換えられ、フィルアップ制御弁装置96がフィルアップ有効化状態に切り換えられる。このように本マスタシリンダ装置10においては、マスタカット弁装置90,シミュレータ制御弁装置94およびフィルアップ制御弁装置96の切換えが、段付マスタピストン104の段付ハウジング108に対する移動に連動して機械的に行われるため、安価にかつ遅れなく切換えを行うことができる。
スプール224が前進させられてブレーキシリンダ22,24と加圧室126との連通が許容される状態になるまでは、ブレーキシリンダ22,24から加圧室126にブレーキ液が戻らないが、正常時には動力液圧制御装置32の制御によりブレーキシリンダ22,24をリザーバ40に連通させ、ブレーキシリンダ圧を減少させることができるため、支障はない。
動力液圧源30等に故障が発生した場合を説明する。この場合には、ブレーキペダル12の踏込みにより加圧室126に発生させられた液圧がブレーキシリンダ22,24に供給され、制動が運転者によるマニュアル操作に基づいて為される。
故障時には、動力液圧源30が作動させられず、動力液圧が得られない。そのため、ブレーキペダル12が踏み込まれ、段付マスタピストン104が前進させられて連動切換弁210が動力液圧導入状態に切り換えられても、パイロット圧室270に動力液圧が供給されず、図4に示すように、マスタカット弁装置90は許容状態に、シミュレータ制御弁装置94はシミュレータ無効化状態に、フィルアップ制御弁装置96はフィルアップ有効化状態にそれぞれ切り換えられたままである。
そのため、段付マスタピストン104の前進に伴って、加圧室126内のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されるとともに、フィルアップ室128内のブレーキ液が連通路140および逆止弁142を経て加圧室126からブレーキシリンダ22,24に供給され、多量のブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されてフィルアップ(ファーストフィル)が行われる。
この際、フィルアップ室128内の液圧は、逆止弁142の開弁圧分、加圧室126の液圧より高く、ストロークシミュレータ92の補完室170の液圧は収容室168の液圧より高い上、シミュレータピストン162にはゴム体64の弾性力が作用しているため、シミュレータピストン162は後退せず、加圧室126から収容室168へのブレーキ液の排出が阻止される。ストロークシミュレータ92は無効化状態にあるのであり、加圧室126,フィルアップ室128内のブレーキ液はすべてブレーキシリンダ22,24に供給され、フィルアップが無駄なく行われる。
ブレーキシリンダ圧が増大し、フィルアップ室128内の液圧がリリーフ圧に達すれば、フィルアップ室128内のブレーキ液はリリーフ通路190からリザーバ40に排出される。そして、段付マスタピストン104が設定距離前進させられれば、図4に示すようにバイパス通路198がポート192によりリザーバ40に連通させられ、フィルアップ室128内のブレーキ液がリザーバ40に速やかに排出され、フィルアップ圧が速やかに大気圧まで低下させられる。それにより、以後は、フィルアップ圧に抗して段付マスタピストン104を前進させるために踏力が費やされることがなくなるが、補完室170がフィルアップ室128およびバイパス通路198によりリザーバ40に連通させられ、収容室168へのブレーキ液の収容が可能となる。そのため、加圧室126のブレーキ液の一部が収容室168に排出され、その分、ブレーキシリンダ圧の増圧勾配が緩やかになる。シミュレータピストン162の収容室168側と補完室170側との受圧面積が等しく、収容室168と補完室170との液圧、すなわち加圧室126とフィルアップ室128との液圧が同じである間、シミュレータピストン162は原位置から移動せず、ストロークシミュレータ92が無効化されるのである。
このように本マスタシリンダ装置10においては、動力液圧源30等の故障時には、加圧室126およびフィルアップ室128の両方からブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されてフィルアップが速やかに行われるものでありながら、前述のように、正常時には、ストロークシミュレータ92は加圧室126から排出されるブレーキ液のみを収容すればよく、ストロークシミュレータ92が小形のもので済む。この効果は、加圧室126のブレーキ液を加圧する小径ピストン100を、大径ピストン102に比較して受圧面積の小さいものとするほど大きくなる。故障時には、加圧室126とフィルアップ室128との両方からブレーキ液が同一のブレーキシリンダ22,24に供給されるため、ブレーキを作用させるためにブレーキシリンダ22,24へ供給することが必要なブレーキ液の量とは無関係に小径ピストン100の受圧面積を小さくすることができ、それに応じてストロークシミュレータ92の小形化も可能となる。小径ピストン100を受圧面積の小さいものとすることは、ブレーキペダル12の比較的小さい踏力により大きなブレーキ液圧を発生させ得る点でも有利である。
なお、ストロークシミュレータの小形化の効果は、フィルアップを行う場合に限らず、フィルアップ室を加圧室とし、2つの加圧室から共同してブレーキシリンダ22,24にブレーキ液が供給される場合にも同様に得ることができる。
なお、ストロークシミュレータの小形化の効果は、フィルアップを行う場合に限らず、フィルアップ室を加圧室とし、2つの加圧室から共同してブレーキシリンダ22,24にブレーキ液が供給される場合にも同様に得ることができる。
ブレーキペダル12の踏込みが解除されれば、ブレーキシリンダ22,24から加圧室126へのブレーキ液の流入と、バイパス通路198あるいはカップシール118を経たリザーバ40からフィルアップ室128へのブレーキ液の流入とにより段付マスタピストン104の後退が許容され、ブレーキシリンダ圧が低下させられる。
本ブレーキシステムにおいては、パイロット式切換弁220の異常が検出される。例えば、異物の噛込み等によってスプール224が摺動することができなくなることがある。パイロット式切換弁220の異常には、パイロット式切換弁220が第一状態にあり、スプール224が原位置に位置する状態において、連動切換弁210が動力液圧遮断状態から動力液圧導入状態に切り換えられ、パイロット圧室270に動力液圧が供給されても、スプール224が原位置に位置したままであって作動位置へ移動せず、マスタカット弁90を阻止状態に、シミュレータ制御弁装置94を有効化状態に、フィルアップ制御弁装置96を無効化状態にそれぞれ切り換える作用を為さないスプール原位置固着異常と、パイロット式切換弁220が第二状態にあり、スプール224が作動位置に位置する状態において、連動切換弁210が動力液圧導入状態から動力液圧遮断状態に切り換えられ、パイロット圧室270がリザーバ40に連通させられても、スプール224が作動位置に位置したままであって、マスタカット弁90を許容状態に、シミュレータ制御弁装置94を無効化状態に、フィルアップ制御弁装置96を有効化状態にそれぞれ切り換える作用を為さないスプール作動位置固着異常とがある。
図5にフローチャートで示すスプール原位置固着異常検出ルーチンに基づいて、スプール224の原位置固着異常の検出を説明する。
本ルーチンは、ブレーキペダル12の踏込みストロークが設定ストロークより大きく、動力液圧源30の液圧が設定液圧より大きく、検出器290の検出信号が、スプール224が原位置に位置することを検出する信号(本実施例においてはOFF信号)である場合に、スプール224が原位置において固着したまま移動せず、異常であると判定するように構成されている。動力液圧源30等が故障し、パイロット圧室270に動力液圧が供給されないことによっても、スプール224は原位置に位置したままとなる。そのため、動力液圧源30の液圧が設定液圧より大きいことを異常検出条件の1つとし、スプール自体の原因によるスプール原位置固着を検出するようにされている。
本ルーチンは、ブレーキペダル12の踏込みストロークが設定ストロークより大きく、動力液圧源30の液圧が設定液圧より大きく、検出器290の検出信号が、スプール224が原位置に位置することを検出する信号(本実施例においてはOFF信号)である場合に、スプール224が原位置において固着したまま移動せず、異常であると判定するように構成されている。動力液圧源30等が故障し、パイロット圧室270に動力液圧が供給されないことによっても、スプール224は原位置に位置したままとなる。そのため、動力液圧源30の液圧が設定液圧より大きいことを異常検出条件の1つとし、スプール自体の原因によるスプール原位置固着を検出するようにされている。
スプール原位置固着異常検出ルーチンのステップ1(以後、S1と略記する)においては、ブレーキペダル12の踏込みストロークが読み込まれて設定ストロークLSより大きいか否かの判定が行われ、制動が行われているか否かが判定され、S2において動力液圧源30の液圧が読み込まれて設定液圧より大きいか否かの判定が行われ、S3において、検出器290の検出信号がOFF信号であって、スプール224が原位置に位置するか否かが判定される。これら3つの異常検出条件のうちの少なくとも1つが満たされていないのであれば、S1ないしS3のいずれかの判定結果がNOになってルーチンの実行は終了する。
3つの異常検出条件がいずれも満たされていれば、S1,S2,S3の各判定結果がYESになってS4が実行され、パイロット式切換弁220の異常が報知される。本実施例では、パイロット式切換弁異常表示ランプ376が点灯されて異常が報知される。異常の種類、すなわちスプール224の原位置固着異常であることが表示され、報知されるようにしてもよい。
図6にフローチャートで示すスプール作動位置固着異常検出ルーチンに基づいて、スプール224の作動位置固着異常の検出を説明する。
本ルーチンは、ブレーキペダル12の踏込みストロークが設定ストロークより小さく、マスタシリンダ圧が設定液圧より小さいが、検出器290の検出信号がスプール224が作動位置に位置することを検出する信号(本実施例においてはON信号)である場合に、スプール224が作動位置において固着したまま移動せず、異常であると判定するように構成されている。ブレーキペダル12の踏込みが解除されれば、踏込みストロークが減少し、段付マスタピストン104が後退させられてマスタ圧が低下し、連動切換弁210が動力液圧遮断状態に切り換えられ、パイロット圧室270がリザーバ40に連通させられてスプール224がスプリング240の付勢により原位置へ戻り、検出器290の検出信号がOFF信号になるはずであるからである。
本ルーチンは、ブレーキペダル12の踏込みストロークが設定ストロークより小さく、マスタシリンダ圧が設定液圧より小さいが、検出器290の検出信号がスプール224が作動位置に位置することを検出する信号(本実施例においてはON信号)である場合に、スプール224が作動位置において固着したまま移動せず、異常であると判定するように構成されている。ブレーキペダル12の踏込みが解除されれば、踏込みストロークが減少し、段付マスタピストン104が後退させられてマスタ圧が低下し、連動切換弁210が動力液圧遮断状態に切り換えられ、パイロット圧室270がリザーバ40に連通させられてスプール224がスプリング240の付勢により原位置へ戻り、検出器290の検出信号がOFF信号になるはずであるからである。
そのため、スプール作動位置固着異常検出ルーチンのS11においては、ブレーキペダル12の踏込みストロークが設定ストロークLSより小さいか否かの判定が行われ、制動が解除される状態にあるか否かが判定され、S12においてマスタ圧が設定液圧PMより小さいか否かの判定が行われ、S13において、検出器290の検出信号がON信号であるかか否かが判定される。これら3つの異常検出条件のうちの少なくとも1つの条件が満たされていないのであれば、S11ないしS13のいずれかの判定結果がNOになってルーチンの実行は終了する。3つの異常検出条件がいずれも満たされていれば、S11,S12,S13の各判定結果がYESになってS14が実行され、パイロット式切換弁異常表示ランプ376の点灯により異常が報知される。スプール作動位置固着異常が生じても、動力液圧源30等が正常であれば電気制御制動を行うことができる。しかし、スプール作動位置固着異常に加えて動力液圧源30等の故障も生ずれば、電気制御制動も行われなくなるため、そのような事態の発生の可能性があることも報知されるようにすることが望ましい。
なお、スプール224に作動位置固着異常が生じていても、動力液圧源30等が正常であれば、電気制御制動を行うことができる。また、パイロット式切換弁220は、マスタシリンダ88と直列にかつ同軸に設けられるとともに、加圧室126とスプール孔222とは連通させられており、加圧室126の液圧がスプール224に作用させられる。そのため、スプール224が作動位置へ移動した状態において、異物の噛込み等により、スプリング240の付勢によって原位置へ復帰することができなくなるとともに、動力液圧源30等が故障し、動力液圧が得られなくなっても、ブレーキを作動させるべくブレーキペダル12が踏み込まれ、加圧室126の液圧が高くなってスプール224に、後端面236から前端面234側へ向かう向きの大きい力が作用させられれば、スプール244は異物の噛込みによる抵抗に抗して原位置へ移動させられ、作動位置固着異常が解消される場合があり、運転者のマニュアル操作によって加圧室126に発生させられた液圧がブレーキシリンダ22,24に供給される。
本ブレーキシステムにおいては更に、ブレーキペダル12の操作量である踏込ストロークとマスタ圧との関係に基づいてマスタ圧の異常が検出されるようにされている。この異常検出を図7に示すマスタ圧異常検出ルーチンに基づいて説明する。
ブレーキペダル12が踏み込まれ、踏込ストロークが増大するとき、マスタ圧も増加するが、動力液圧源30等に故障がなく、パイロット式切換弁220にも異常がなければ、図9に実線で示すように、マスタ圧は踏込ストロークに対して基準領域から外れることなく増加する。それに対し、例えば、リリーフ弁196が開いたままとなって閉じなくなるリリーフ弁開固着異常が生じた場合には、マニュアル制動時にフィルアップが行われず、マスタ圧を上昇させるのに要する踏込ストロークが増大する。同じ踏込ストロークに対して発生させられるマスタ圧が、リリーフ弁196が正常であってフィルアップが行われる場合に比較して小さく、基準領域を下回る異常が発生する。
ブレーキペダル12が踏み込まれ、踏込ストロークが増大するとき、マスタ圧も増加するが、動力液圧源30等に故障がなく、パイロット式切換弁220にも異常がなければ、図9に実線で示すように、マスタ圧は踏込ストロークに対して基準領域から外れることなく増加する。それに対し、例えば、リリーフ弁196が開いたままとなって閉じなくなるリリーフ弁開固着異常が生じた場合には、マニュアル制動時にフィルアップが行われず、マスタ圧を上昇させるのに要する踏込ストロークが増大する。同じ踏込ストロークに対して発生させられるマスタ圧が、リリーフ弁196が正常であってフィルアップが行われる場合に比較して小さく、基準領域を下回る異常が発生する。
また、例えば、動力液圧源30および動力液圧制御装置32が正常な状態において、パイロット式切換弁220のスプール224が原位置から作動位置へ移動しなくなる原位置固着異常が生ずれば、電気制御制動が行われるとき、マスタカット弁装置90が許容状態にあるため、加圧室126から液圧がブレーキシリンダ22,24に供給されるとともに、動力液圧源30からも供給される。動力液圧制御装置32により制御された動力液圧源30の液圧は加圧室126にも作用し、マスタカット弁装置90が阻止状態とされた状態において電気制動制御が行われる場合に比較してブレーキシリンダ圧が高くなる。動力液圧源30の液圧の制御に踏力ないしマスタ圧が用いられる状態では、動力液圧源30の液圧が加圧室126に作用して動力液圧の制御のもとになるマスタ圧が高くなることにより、ブレーキシリンダ圧が高くなり、マスタ圧も高くなって踏込ストロークに対して基準領域を上回る異常が発生するのである。
図7に示すマスタ圧異常検出ルーチンにおいては、S21においてブレーキペダル12の踏込ストロークが読み込まれ、S22においてマスタ圧が読み込まれる。そして、S23が実行され、マスタ圧が異常に大きいか否かが判定される。ROM358には、踏込ストロークに対して発生させられるマスタ圧の基準領域が設定され、記憶されている。本実施例においては、基準領域の上限(図9に二点鎖線で示される)と下限(図9に一点鎖線で示される)とがそれぞれ式により規定されて記憶されている。S23においては、S21において読み込まれた踏込ストロークおよび基準領域の上限を規定する式とに基づいてマスタ圧の上限値が求められ、S22において読み込まれたマスタ圧と比較される。実際のマスタ圧が上限値より大きいのであれば異常であり、S23の判定結果がYESになってS25が実行され、異常の発生が報知される。この報知は、例えば、マスタ圧異常表示ランプ378の点灯により行われる。S25においてはまた、動力液圧源30からブレーキシリンダ22〜28に供給される液圧の制御が、ブレーキペダル12の踏込ストロークのみに基づいて行われる制御に変更される。
実際のマスタ圧が上限値以下であれば、S23の判定結果がNOになって S24が実行され、マスタ圧が異常に小さいか否かが判定される。S21において読み込まれた踏込ストロークおよびマスタ圧の基準領域の下限を規定する式とに基づいてマスタ圧の下限値が求められ、S22において読み込まれたマスタ圧と比較されるのである。実際のマスタ圧が下限値より小さいのであれば異常であり、S24の判定結果がYESになってS26が実行され、異常の発生が報知される。マスタ圧異常表示ランプ378が点灯させられるのである。マスタ圧が下限値以上であれば、異常ではなく、S24の判定結果がNOになってルーチンの実行は終了する。
以上の説明から明らかなように、本実施例においては、ブレーキECU350のS23およびS24を実行する部分が異常検出部たる弁固着検出部を構成している。また、ブレーキECU350のS1〜S3を実行する部分がパイロット式切換弁異常検出部の一種である弁子固着検出部としてのスプール固着検出部たるスプール原位置固着検出部を構成し、S11〜S13を実行する部分がスプール作動位置固着検出部を構成し、検出器290と共にパイロット式切換弁異常検出装置を構成している。
請求可能発明の別の実施例を図10ないし図12に基づいて説明する。本実施例のマスタシリンダ装置400は、ストロークシミュレータ402が収容室404のみを有し、フィルアップ室128はストロークシミュレータ402に接続されず、ストロークシミュレータ402は、常時、有効化状態にあり、シミュレータ制御弁装置は設けられていない。
ストロークシミュレータ402は、図10に示すように、シミュレータハウジング406と、シミュレータハウジング404内に収容されたブラダ408とを有する。ブラダ408は内部にガスが封入されており、ブラダ408とシミュレータハウジング406との間に収容室404が設けられている。ブラダ408は、収容室404へのブレーキ液の収容により弾性変形可能であり、収容室404のブレーキ液の量が増大するにつれて収容室404の液圧を増大させる弾性手段であって、収容室404へのブレーキ液の流入量に対して非線形の弾性力を発生させる非線形弾性装置である。また、パイロット式切換弁220のポート260は、液通路410およびポート412によってフィルアップ室128に接続されている。その他の構成は上記実施例と同じであり、同じ作用を為す構成要素には同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
動力液圧源30等の正常時には、ブレーキペダル12が踏み込まれ、図11に示すように、連動切換弁210が動力液圧導入状態に切り換えられれば、パイロット式切換弁220が第二状態となり、マスタカット弁装置90が阻止状態とされ、フィルアップ制御弁装置96がフィルアップ無効化状態とされる。マスタカット弁装置90が阻止状態とされた後、加圧室126のブレーキ液はストロークシミュレータ402の収容室404に排出され、ブラダ408を圧縮し、弾性変形させつつ収容室404に収容され、収容室404の液圧が増大し、運転者にブレーキ操作感が付与される。
動力液圧源30等の故障によりマニュアル制動が行われる場合には、図12に示すように、マスタカット弁装置90は許容状態にあり、フィルアップ制御弁装置96は有効化状態にある。そのため、ブレーキペダル12が踏み込まれれば、前記実施例のマスタシリンダ装置10と同様にフィルアップが行われる。但し、本マスタシリンダ装置400においては、ストロークシミュレータ402の収容室404が常時、有効化状態にあるため、フィルアップ開始当初から加圧室126のブレーキ液の一部が収容室404に排出される。また、フィルアップ圧がリリーフ圧に達するまでの間、フィルアップ室128から加圧室126に流入したブレーキ液の一部が収容室404に排出される。その他の作動は、上記実施例と同じであり、説明を省略する。
請求可能発明の更に別の実施例を図13ないし図15に基づいて説明する。なお、上記各実施例の構成要素と同じ作用を成す構成要素には、同一の符号を付して対応関係を示し、説明を省略する。
本実施例のマスタシリンダ装置450においては、シミュレータ制御弁装置452が、ストロークシミュレータ402の収容室404とマスタシリンダ88の加圧室126との連通を許容,遮断し、それによりストロークシミュレータ402を有効化状態と無効化状態とに切り換えるものとされている。そのため、図13に示すように、パイロット式切換弁470のスプール472には、前記スプール224と同様に、環状溝250,252が設けられるとともに、更に別の環状溝474が設けられ、段付ハウジング108には、前記ポート258,260,262,264に加えて、更に別のポート476,478が設けられている。ポート476は、液通路480によってストロークシミュレータ402の収容室404に接続されるとともに、常時、環状溝474に連通させられている。ポート478は、液通路482および段付ハウジング108に設けられたポート484によって加圧室126に接続されている。その他の構成は、上記各実施例と同じであり、説明を省略する。
本実施例のマスタシリンダ装置450においては、シミュレータ制御弁装置452が、ストロークシミュレータ402の収容室404とマスタシリンダ88の加圧室126との連通を許容,遮断し、それによりストロークシミュレータ402を有効化状態と無効化状態とに切り換えるものとされている。そのため、図13に示すように、パイロット式切換弁470のスプール472には、前記スプール224と同様に、環状溝250,252が設けられるとともに、更に別の環状溝474が設けられ、段付ハウジング108には、前記ポート258,260,262,264に加えて、更に別のポート476,478が設けられている。ポート476は、液通路480によってストロークシミュレータ402の収容室404に接続されるとともに、常時、環状溝474に連通させられている。ポート478は、液通路482および段付ハウジング108に設けられたポート484によって加圧室126に接続されている。その他の構成は、上記各実施例と同じであり、説明を省略する。
動力液圧源30等が正常であり、電気制御制動が行われる場合には、ブレーキペダル12が踏み込まれ、連動切換弁210が動力液圧導入状態に切り換えられれば、図14に示すように、パイロット圧室270に動力液圧が導入されてスプール472が原位置から作動位置へ移動させられ、ポート476,478が環状溝474により連通させられて加圧室126と収容室404とが連通させられる。それにより、加圧室126内のブレーキ液の収容室404への流入が許容されてストロークシミュレータ402が有効化され、ブラダ408が圧縮されて収容室404の液圧が増大し、ブレーキ操作感が運転者に付与される。
ブレーキペダル12の踏込みが解除されれば、加圧室126と収容室404とが連通させられている間は、収容室404から加圧室126にブレーキ液が戻る。また、連動切換弁210の動力液圧遮断状態への切換えは、段付マスタピストン104の後退の末期に行われるため、加圧室126と収容室404との連通が遮断される前に収容室404に収容された全部のブレーキ液が加圧室126に戻る。
動力液圧源30等の故障により、運転者のマニュアル操作によって制動が行われる場合には、動力液圧が供給されないため、図15に示すように、ブレーキペダル12が踏み込まれてもスプール472が原位置に位置したままであり、加圧室126と収容室404とは連通させられず、ストロークシミュレータ402は無効化状態のままである。そのため、加圧室126およびフィルアップ室128内のブレーキ液はすべてブレーキシリンダ22,24に供給され、フィルアップが速やかに無駄なく行われるとともに、フィルアップ室128がバイパス通路198によってリザーバ40に連通させられた後は、実質的に全踏力がブレーキシリンダ22,24の作動に使用される状態となる。本実施例においては、パイロット式切換弁470の環状溝474およびポート476,478が設けられた部分が、加圧室126と収容室404とを連通させる液通路の途中に設けられたシミュレータ制御弁としての開閉弁を構成し、連動切換弁210と共にシミュレータ制御弁装置452を構成している。
請求可能発明の更に別の実施例を図16ないし図18に基づいて説明する。本実施例のマスタシリンダ装置550においては、マスタシリンダ552のマスタピストン554が、互いに別体の第一ピストン556および第二ピストン558を含む。これらピストン556,558は、マスタハウジング560の仕切壁562により仕切られた前後のシリンダボア564,566にそれぞれ液密かつ摺動可能に嵌合され、前方の第一ピストン556の前方に加圧室568が設けられるとともに、後方にリザーバ室570が設けられ、後方の第二ピストン558の前方にフィルアップ室572が設けられている。
第一ピストン556は、加圧室568内に配設された弾性部材の一種であるスプリング574により後方へ、すなわち加圧室568の容積が増大する向きに付勢されている。第二ピストン558には、ブレーキペダル12の踏力が入力ロッド134により入力され、第二ピストン558の力は、仕切壁562を、シール部材たるOリング576により液密を保持されて摺動可能に貫通させられた伝達ロッド578により第一ピストン556に伝達される。スプリング574の付勢による第一,第二ピストン556,558の後退限度は、第二ピストン558がマスタハウジング560に嵌められた止め輪580に当接することにより規定される。
マスタシリンダ552には、前記マスタシリンダ88と同様に、その前端部にパイロット式切換弁220が設けられ、加圧室568は、前記加圧室126と同様に、スプール224に設けられた液通路254,環状溝252,ポート264,液通路280によりブレーキシリンダ22,24に連通させられる。加圧室568には、ストロークシミュレータ402が接続されている。本マスタシリンダ装置550においてシミュレータ制御弁装置はなく、ストロークシミュレータ402の収容室404と加圧室568とは常時、連通させられている。また、リザーバ室570は、リザーバ通路584によってリザーバ40に接続されている。
フィルアップ室572は、マスタハウジング560に設けられたポート590およびマスタハウジング560外に設けられた液通路592によって液通路280に接続されている。この液通路592には、フィルアップ室572からブレーキシリンダ22,24に向かう方向のブレーキ液の流れは許容するが、逆向きの流れは阻止する逆止弁594が設けられている。フィルアップ室572はまた、ポート596および液通路598により、パイロット式切換弁220のポート260に接続されている。
本マスタシリンダ装置550においては、フィルアップ制御弁装置600のリリーフ弁602がマスタハウジング580に設けられている。リリーフ弁602は、リザーバ通路604によってリザーバ40に接続され、第二ピストン558内に設けられたリリーフ通路606によってフィルアップ室572に連通させられる。リリーフ通路606は、第二ピストン558の外部とフィルアップ室572とに開口させられている。マスタハウジング580にはまた、第二ピストン558の前進方向においてリリーフ弁602より設定距離下流側の位置にバイパスポート610が設けられ、リザーバ通路612によってリザーバ40に接続されている。
第二ピストン558には、リリーフ通路606の外部への開口端部より、第二ピストン558の前進方向において下流側にシール部材としてのOリング616が設けられており、第二ピストン558が後退端位置に位置する状態では、リリーフ通路606はリリーフ弁602に連通させられる一方、Oリング616によりバイパスポート610との連通を遮断され、フィルアップ室572はリリーフ弁602を経てリザーバ40に連通させられ、リリーフ弁経由状態とされる。第二ピストン558が後退端位置から設定距離前進させられれば、Oリング616がバイパスポート610に至り、リリーフ通路606がバイパスポート610に連通させられ、フィルアップ室572がリリーフ弁602をバイパスしてリザーバ40に直接連通させられ、直結状態に切り換えられる。本実施例では、マスタハウジング580,第二ピストン558,バイパスポート610およびリリーフ通路606がリリーフ制御弁装置610を構成している。
本マスタシリンダ装置550においては、動力液圧源30等が正常な状態においてブレーキペダル12が踏み込まれれば、図17に示すように、第一,第二ピストン556,558が前進させられ、連動切換弁210が動力液圧導入状態に切り換えられる。それにより、パイロット式切換弁220が第一状態から第二状態になり、マスタカット弁装置90が許容状態から阻止状態に切り換えられるとともに、フィルアップ制御弁装置600がフィルアップ無効化状態とされ、フィルアップ室572がリザーバ40に連通させられる。そのため、フィルアップ室572から逆止弁594を経てブレーキシリンダ22,24にブレーキ液が供給されることはなく、第一ピストン556の前進により加圧室568のブレーキ液のみがストロークシミュレータ402の収容室404に流入し、その液圧が増大してブレーキ操作感が運転者に付与される。
動力液圧源30等の故障により制動が運転者によるマニュアル操作によって行われる場合には、図18に示すように、パイロット式切換弁220が第一状態のままであり、マスタカット弁装置90は許容状態にあり、フィルアップ制御弁装置600はフィルアップ有効化状態にあり、リリーフ制御弁装置618はリリーフ弁経由状態にある。そのため、ブレーキペダル12が踏み込まれ、第一,第二ピストン556,558が前進させられるとき、加圧室568からブレーキシリンダ22,24にブレーキ液が供給されるとともに、フィルアップ室572から逆止弁594および液通路592を経てブレーキ液がブレーキシリンダ22,24に供給されてフィルアップが速やかに行われる。
ブレーキシリンダ圧が上昇し、フィルアップ室572の液圧がリリーフ圧に達すれば、フィルアップが終了する。また、第二ピストン558が設定距離前進し、リリーフ通路606がバイパスポート610に連通させられれば、フィルアップ室572内のブレーキ液は速やかにリザーバ40に排出されるようになり、フィルアップ圧が速やかに大気圧まで低下させられる。
請求可能発明の更に別の実施例を図19に基づいて説明する。本実施例のマスタシリンダ装置650においては、連動切換弁652がマスタハウジング654の外に設けられ、ブレーキペダル656の踏込みに連動して動力液圧遮断状態と動力液圧導入状態とに機械的に切り換えられるようにされている。連動切換弁652は、ブレーキペダル656の踏込みを介して、段付マスタピストン658のマスタハウジング654に対する移動に連動して切り換えられる。そのため、連動切換弁652の弁子とブレーキペダル656とが連携装置659により連携させられている。連携装置659は、第一連携部材660および第二連携部材662を含む。第一連携部材660は、有底の中空円筒状を成す連携部668を備え、その底部側においてブレーキペダル656に軸670により、ブレーキペダル656の回動軸線に平行な軸線のまわりに回動可能に連結されている。
第二連携部材662は、連携部668の内径より小径の連携部674と、連携部674に突設された操作部676とを備え、連携部674は連携部668内に半径方向に隙間を残して嵌合されるととも、連携部674の直径方向に隔たった2箇所にそれぞれ突設された係合部としての係合突部680がそれぞれ、連携部668の周壁に軸方向に平行に設けられた一対の係合部としての長穴682に嵌合され、第二連携部材662が第一連携部材660に、ブレーキペダル656の回動軸線に平行な軸線まわりに相対回動可能にかつ第一,第二連携部材660,662の軸方向に相対移動可能に係合させられている。
また、第二連携部材662は、第一連携部材660との間に配設された付勢手段の一種である弾性部材としてのばね部材たる圧縮コイルスプリング686により、第一連携部材660から離れる向きに付勢されている。このスプリング686の付勢による第二連携部材662の移動限度は、係合突部680が長穴682の端面に当接することにより規定される。スプリング686には、連動切換弁652に設けられたスプリング688より大きいセット荷重が付与されている。
本マスタシリンダ装置650においては、ブレーキペダル656が踏み込まれず、原位置に位置する状態では、第二連携部材662はスプリング686の付勢により第一連携部材660に対して前進端位置に位置させられ、動力切換弁652は動力液圧遮断状態に切り換えられている。この状態からブレーキペダル656が踏み込まれ、回動させられれば、第一連携部材660が前進させられるとともに、スプリング682を介して第二連携部材662が一体的に前進させられ、操作部676の前進により連動切換弁652の弁子がスプリング688の付勢力に抗して移動端まで移動させられ、連動切換弁652が動力液圧導入状態に切り換えられる。その後は、第一連携部材660がスプリング686を圧縮しつつ第二連携部材662に対して前進することにより、ブレーキペダル656の踏込みが許容される。
ブレーキペダル656の踏込みが解除されれば、まず、第一連携部材660がブレーキペダル656と共に第二連携部材662に対して後退させられ、長穴682の端面が係合突部680に係合した後は、第二連携部材662が第一連携部材660と一体的に後退させられ、弁子がスプリング688の付勢により移動させられて連動切換弁652が動力液圧遮断状態に切り換えられる。
なお、加圧面積制御弁装置は、加圧特性制御弁装置としてもよい。この場合、マスタシリンダ装置は、見かけ上の構成は、例えば、図13ないし図15に示す実施例のマスタシリンダ装置450と同じにされ、リリーフ弁のリリーフ圧が、ブレーキシリンダの液圧が実質的な制動効果を生じさせ始める高さより高く設定される。そのため、マニュアル制動時にブレーキペダルが踏み込まれるとき、加圧室およびフィルアップ室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、フィルアップが行われるとともに、ブレーキのクリアランスが消滅し、フィルアップが終了した後もフィルアップ室の液圧がリリーフ圧に達するまで、両室からブレーキシリンダにブレーキ液が供給される。マスタピストンの有効加圧面積が大きく、同じ踏込ストロークに対して発生させられる液圧が大きい状態が得られる。フィルアップ室の液圧がリリーフ圧に達すれば、フィルアップ室からはブレーキ液がブレーキシリンダに供給されず、リザーバへ流出する。それによって、マスタピストンの有効加圧面積が減少し、同じブレーキ踏込力に対してマスタシリンダにおいて発生させられる液圧が増大し、加圧特性が変えられ、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増大を回避しつつ大きな制動力を発生させることが可能となる。
また、リリーフ制御弁装置は、バイパス通路に替えて絞りを有する絞り通路を含む装置としてもよい。絞り通路は、リリーフ弁をバイパスするとともに、リリーフ弁と共に常に低圧源に連通するように設けられる。
さらに、ストロークシミュレータの弾性手段は、例えば、大きいカップシール状を成すものとしてもよい。
また、マスタシリンダに加圧室を2つ設けてもよい。この場合、2つの加圧室をそれぞれフロントブレーキシリンダに接続してもよく、一方の加圧室に2つのフロントブレーキシリンダ、他方の加圧室に2つのリヤブレーキシリンダに接続してもよく、一方の加圧室に一方のフロントおよびリヤのブレーキシリンダ、他方の加圧室に他方のフロントおよびリヤのブレーキシリンダを接続してもよい。また、2つの加圧室の少なくとも一方について、マスタシリンダからのブレーキ液の供給状態が制御されるように供給状態制御弁装置を設ける。例えば、電気制御制動を行うためにマスタカット弁装置を設ける場合、2つの加圧室の両方について、ブレーキ液のブレーキシリンダへの供給が許容される状態と阻止される状態とが得られるように連動切換弁装置を設ける。
マスタシリンダに加圧室を2つ設ける場合、2つの加圧室の各々についてストロークシミュレータを設けてもよい。この場合、例えば、2つずつの加圧室とストロークシミュレータの収容室とをそれぞれ連通させる液通路の途中にパイロット式切換弁により構成される開閉弁を一体的に設け、マスタピストンのマスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動して開閉弁の開閉が行われるようにすることができる。
また、請求可能発明は、上記複数の実施例の各特徴を組み合わせた態様で実施することができる。例えば、図13ないし図15に示す実施例のシミュレータ制御弁装置452を、図16ないし図18に示すマスタシリンダ装置550に設ける。また、図10ないし図18に示す各実施例において、ストロークシミュレータをシミュレータピストンを有するものとしてもよい。シミュレータハウジング内にシミュレータピストンを液密かつ摺動可能に嵌合するとともに、シミュレータピストンの収容室とは反対側に大気圧室を設けて弾性手段を配設し、シミュレータピストンを収容室側に付勢させる。
10:マスタシリンダ装置 88:マスタシリンダ 90:マスタカット弁装置 92:ストロークシミュレータ 94:シミュレータ制御弁装置 96:フィルアップ制御弁装置 126:加圧室 128:フィルアップ室 196:リリーフ弁 198:バイパス通路 202:リリーフ制御弁装置 210:連動切換弁 220:パイロット式切換弁 224:スプール 290:検出器 292:検出子 350:ブレーキ電子制御ユニット 400:マスタシリンダ装置 402:ストロークシミュレータ 450:マスタシリンダ装置 452:シミュレータ制御弁装置 470:パイロット式切換弁 472:スプール 550:マスタシリンダ装置 552:マスタシリンダ 568:加圧室 572:フィルアップ室 600:フィルアップ制御弁装置 602:リリーフ弁 618:リリーフ制御弁装置 650マスタシリンダ装置 652:連動切換弁
Claims (8)
- 1つ以上のマスタピストンとその1つ以上のマスタピストンを液密かつ摺動可能に収容するマスタハウジングとを備え、前記1つ以上のマスタピストンの少なくとも1つの前方に加圧室が形成されたマスタシリンダと、
そのマスタシリンダからのブレーキ液の供給状態を制御する供給状態制御弁装置と
を含むマスタシリンダ装置において、
前記供給状態制御弁装置の少なくとも一部を、前記マスタピストンの前記マスタハウジングに対する相対移動に機械的に連動して作動する連動切換弁装置としたことを特徴とするマスタシリンダ装置。 - 前記供給状態制御弁装置が、前記加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切り換えられるマスタカット弁装置を含み、そのマスタカット弁装置が前記連動切換弁装置とされたことを特徴とする請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
- 前記加圧室のブレーキ液がブレーキシリンダに供給されることを許容する許容状態と阻止する阻止状態とに切換え可能なマスタカット弁装置と、
そのマスタカット弁装置の前記阻止状態において前記加圧室から排出されるブレーキ液を収容室に収容するとともに、収容したブレーキ液の量が増大するにつれて前記収容室の液圧を増大させるストロークシミュレータと、
そのストロークシミュレータを有効化する有効化状態と無効化する無効化状態とに切り換え可能なシミュレータ制御弁装置と
を含み、前記供給状態制御弁装置としてのシミュレータ制御弁装置が前記連動切換弁装置とされたことを特徴とする請求項1または2に記載のマスタシリンダ装置。 - 前記マスタシリンダが、前記1つ以上のマスタピストンとして、少なくとも前進は一体的に行う2つのマスタピストンを少なくとも備え、それら2つのマスタピストンの各々の前方に第一液室および第二液室が形成されたものであり、前記供給状態制御弁装置が、ブレーキシリンダの液圧が設定液圧に達するまでは、前記第一および第二液室の両方からブレーキシリンダにブレーキ液が供給され、設定液圧に達した後は、第二液室のブレーキ液がブレーキシリンダには供給されず、低圧源への流出が許容される状態とする加圧面積制御弁装置を含み、その加圧面積制御弁装置が前記連動切換弁装置とされたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
- 前記連動切換弁装置が、前記マスタハウジングと前記1つ以上のマスタピストンの1つとにより構成され、少なくとも、前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態と、その後退端位置から設定距離前進した状態とで、連通状態が異なる連動切換弁を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。
- 前記連動切換弁装置が、
パイロット圧室に液圧が供給されない状態では第一状態にあり、供給されれば第二状態になるパイロット式切換弁と、
前記1つ以上のマスタピストンが後退端位置に位置する状態では前記パイロット圧室を動力液圧源から遮断するとともに低圧源に連通させて前記パイロット式切換弁を前記第一状態とする動力液圧遮断状態にあり、マスタピストンが後退端位置から設定距離前進すればパイロット圧室を低圧源から遮断するとともに動力液圧源と連通させて前記パイロット式切換弁を前記第二状態とする動力液圧導入状態に切り替わる連動切換弁と
を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のマスタシリンダ装置。 - 前記パイロット式切換弁の、液通路を連通させ、あるいは遮断する弁部が、前記マスタハウジングとそれにより相対移動可能に保持された弁子とによって構成されたものであることを特徴とする請求項6に記載のマスタシリンダ装置。
- 前記弁子が一端面においてマスタハウジングの外部に臨まされており、かつ、その一端面に接触する検出子を有し、その一端面の位置の変化に基づいて前記パイロット式切換弁が前記第一状態にある場合と前記第二状態にある場合とで異なる電気信号を発生させる検出器を含む請求項7に記載のマスタシリンダ装置。
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