JP2006021103A - 遮水材注入型遮水システム - Google Patents

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Abstract

【課題】遮水シート工内に遮水材をむらなく確実に充填できる遮水材注入型遮水システムを提供する。
【解決手段】荷重物3を載置する基盤2上に複数層の遮水シート5a、5bからなる袋体6を敷設し、袋体6に設けた開口7に遮水材11を圧入する注入装置10を接続する。開口7から隔てた袋体6内の部位Pに荷重側シート5aへ向けた先端口22と袋体6の外に連通する他端とを有する通気管20を設け、通気管20により袋体6内の空気を排出しながら注入装置10により遮水材11を注入する。好ましくは、袋体6内に荷重物3の圧力に抗して間隙dを保持する多孔質離隔材8を封入し、通気管20の先端口22を多孔質離隔材8より荷重側シート5aへ向け突出させる。望ましくは、通気管20の先端口22の周囲に切欠き23を設ける。更に好ましくは、先端キャップ27の荷重側シート5aとの対向面を荷重側シート5a向きに凸の緩やかな曲面とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は遮水材注入型遮水システムに関し、とくに荷重物を載置する地盤その他の基盤上に敷設した複数層の遮水シートの間隙に遮水材を注入する遮水システムに関する。
従来から、産業廃棄物・一般廃棄物等を埋め立てる廃棄物処分場の地盤面、ゴルフ場のウォータハザード・簡易貯水池・溜池・プール等の水を貯留する底地盤面等に、合成樹脂製又はゴム製シートを用いた遮水工(以下、遮水シート工という。)が広く用いられている。遮水シート工は、施工が簡単で遮水性が良好であり、安全性・経済性の観点から容易に二層又は三層構造とすることができる利点を有する。しかし、載置する廃棄物等によって遮水シートが破損する可能性があるため、遮水シート工では定期的に破損(漏水)の有無を点検するとともに、破損を検出した場合は迅速に補修する必要がある。遮水シート工の破損を検知する方法として、例えば特許文献1は、二層遮水シート工の上側シートと下側シートとの間隙をシール材によって複数の区画に分割し、分割した各区画の間隙に漏水感知センサを設置した二重遮水シート工を開示する。漏水感知センサに代えて、遮水シートからの漏水を比抵抗・導電度・電流の位相検波等を利用して電気的に検出するシステム、前記間隙内の圧力変動によって漏水を検出するシステム、前記間隙に連通する集水配管により漏水を検出するシステム等も提案されている。
特許文献2は、二層遮水シートの外周部を接合して形成した袋状遮水シート工(以下、袋体ということがある。)を複数の区画に分割し、各区画に耐圧管を接続する第1開口と外気に連通する逆止弁付き第2開口とを設け、耐圧管及び第1開口を介して袋体内を真空吸引することにより破損区画を検出し、耐圧管及び第1開口を介して固化材を注入することにより破損区画を補修する遮水シート工を開示する。第2開口からの空気の排出により破損区画への固化材の注入の容易化を図り、第2開口から固化材が排出された時点で注入作業を終了する。特許文献2の遮水シート工によれば、例えば廃棄物処分場等において遮水シート工上に載置される廃棄物を除去することなく、遮水シート工の漏水箇所を迅速に補修することが可能である。使用可能な固化材として、固化後に強弾性を有するウレタン樹脂や高吸水性樹脂、又は接着剤としても働くエポキシ樹脂・ポリエステル樹脂等の固化性合成樹脂を提案している。
また特許文献3は、特許文献2と同様な袋体の各区画内に通気層・透水層が積層された立体網状成形体と空気抜き管とを介在させ、各区画に検知管を接続して破損の有無を検知し、破損区画に検知管経由で液状硬化剤(流動性がよく室温でゆっくり固化する液状体。例えば、疎水性イソシアネート化合物、ウレタン樹脂、エポキシ系樹脂等。)を注入する方法を提案している。高い耐圧縮強度と高い空隙率とを有する立体網状成形体を袋体内に介在させ、その成形体の間に配置した空気抜き管によって空気を抜き取りながら液状硬化剤を破損区画へ注入することにより、液状硬化剤を破損区画内へ完全に充填させる。同様に特許文献4も、二層遮水シート袋体の各区画内に長手方向両側のほぼ全長にわたり2本の空気抜き管を配設し、破損区画に止水材(例えば、親水性ウレタンプレポリマーを主成分とするもの)を所定圧力で注入する際に空気抜き管経由でその区画の空気を抜き取ることにより、破損区画の全体に止水材を充満させる方法を提案している。
特開平7−151631号公報 特許第2960821号公報 特許第3096762号公報 特許第3076518号公報
遮水シート工では、載置する荷重の圧力が非常に大きくなり、二層の遮水シートの間隙が例えば10mm以下となる場合がある。遮水シートの耐性を考慮すれば、このような狭い間隙に固化材や液状硬化剤、止水材等(以下、これらを纏めて遮水材ということがある。)を高圧で注入すると遮水シートが破損するおそれがあり、遮水材は比較的低圧でゆっくりと注入せざるを得ない。このため、補修箇所に遮水材の注入むらが生じる可能性がある。注入むらが生じると固化後の遮水材とシートとの界面等に水道が形成され、何らかの原因で補修箇所付近の遮水シートが再び破損した場合に漏水を確実に防止することが難しくなる。漏水箇所の空気を排出しながら遮水材を注入する特許文献2〜4の方法によれば、このような遮水材の注入むらを避け、むらのない遮水材の充填を期待できる。
しかし、特許文献2〜4の方法は、注入した遮水材が空気抜き管に進入して空気抜き管の閉塞が発生し、又は何らかの事故で空気抜き管が十分機能しなくなると、遮水材注入量に対する空気排出量が不足してむらのない遮水材の充填が難しくなり、遮水シート工の内圧上昇、膨張、破裂等の危険も生じ得る問題点がある。例えば特許文献3のように網状成形体と空気抜き管とを内部に介在させた遮水シート工では、注入した遮水材が比較的空隙率の低い網状成形体よりも比較的空隙率の高い空気抜き管に進入し易いため、空気抜き管の閉塞が発生しやすい。また、遮水シート工の施工時又は運用時に二層の遮水シートの間で空気抜き管が折れ曲がる可能性があり、一旦折れ曲がって機能不全に陥った空気抜き管を施工後又は運用中に復旧することは困難である。遮水シート工内に遮水材をむらなく確実に充填するためには、空気抜き管の機能低下を避けて十分な空気排出量を確保することが重要である。
そこで本発明の目的は、遮水シート工内に遮水材をむらなく確実に充填できる遮水材注入型遮水システムを提供することにある。
図1の実施例を参照するに、本発明による遮水材注入型遮水システムは、荷重物3を載置する基盤2上に敷設した複数層の遮水シート5(図示例では、荷重側シート5aと基盤側シート5b)からなる袋体6、袋体6に設けた開口7から袋体6内に遮水材11を圧入する注入装置10、及び開口7から隔てた袋体6内の部位Pに荷重側シート5aへ向けた先端口22(図2及び図4参照)を有し且つ他端が袋体6の外に連通する通気管20を備えてなるものである。
好ましくは、袋体6内に荷重物3の圧力に抗して間隙d(図4参照)を保持する多孔質離隔材8を封入し、通気管20の先端口22を多孔質離隔材8より荷重側シート5aへ向け突出させる。望ましくは、通気管20の先端口22の周囲に切欠き23を設ける。また通気管20の先端は、図4又は図5に示すように、基盤側シート5bに沿った取付口24と荷重側シート5aへ向けた先端口22と両者を繋ぐL字形貫通孔25とを有する先端キャップ27により形成することができる。望ましくは、先端キャップ27の荷重側シート5aとの対向面を荷重側シート5a向きに凸の緩やかな曲面とする。
更に好ましくは、図1及び図3に示すように複数の通気管20a、20bを設け、一部の通気管20aに吸気装置30を接続し、他の通気管20bに袋体6の内部の圧力を測定する圧力測定装置34を接続し、測定装置34の測定信号に応じて注入装置10及び/又は吸気装置30を制御する制御装置16を設ける。他の通気管20bを制御装置16が制御可能な切替装置36経由で圧力測定装置34及び吸気装置30に接続し、制御装置16により測定装置34の測定信号に基づき通気管20aの閉塞を検知し且つ閉塞の検知に応じて切替装置36を圧力測定装置34から吸気装置30に切り替えることができる。
本発明の遮水材注入型遮水システムは、複数層の遮水シートからなる袋体の開口から注入装置により遮水材を圧入すると共に、開口から隔てた袋体内の部位に荷重側シートへ向けた先端口を有する通気管により袋体内を脱気するので、次の顕著な効果を奏する。
(イ)通気管の先端口を荷重側シートに向けているので、基盤側シートに沿って流れる遮水材が流入しにくく、遮水材の進入による通気管の閉塞を防止できる。
(ロ)袋体内に間隙を保持する多孔質離隔材を封入した場合も、通気管の先端口を離隔材より荷重側シートへ向け突出させることができ、離隔材内に遮水材が充填されるまで効率よく脱気できる。
(ハ)荷重物の圧力によって荷重側シートが通気管の先端口に押圧されるが、例えば先端口の周囲に切欠き又は通気孔を設けることにより、荷重側シートの押圧に拘わらず十分な脱気量を確保できる。
(ニ)荷重側シートへ向けた先端口は、通気管の先端にL字形貫通孔付き先端キャップを取り付ける簡単な作業で施工できる。
(ホ)先端口の荷重側シート側端面をシート向きに凸の緩やかな曲面とすることにより、先端口に押圧される荷重側シートの破損を避けることができる。
(ヘ)袋体内に荷重側シート向きの先端口付き通気管を複数配置し、一部の通気管を圧力測定装置に接続し、他の通気管により袋体内を脱気することにより、他の通気管の機能低下を適切に監視することができる。
(ト)また、複数の通気管を配置することにより、一部の通気管が機能低下に陥った場合でも他の通気管に切り替えることにより十分な脱気量を確保できる。
図1は、廃棄物処分場の底地盤面である基盤2上に本発明の遮水システム1を適用した実施例の垂直断面図を示す。以下、同図を参照して本発明を説明するが、本発明は廃棄物処分場の底地盤面に限らず、処分場の側面や簡易貯水池の底面等の荷重物3が載置される基盤2に広く適用可能である。図示例の遮水システム1は、予め勾配を付けた基盤2に敷設した二層の遮水シート5a、5b(荷重側シート5aと基盤側シート5b)により形成した袋体6と、袋体6の一端(図示例では最下端)の開口7に接続した注入装置10と、開口7から隔てた袋体6内側の脱気部位P(図示例では最上端)から袋体6の外側に至る通気管20とを有する。ただし、基盤2の勾配は本発明の必須要件ではなく、袋体6の開口7及び脱気部位Pの位置は図示例に限定されない。
遮水シート5a、5bは、従来の遮水シート工と同様の熱可塑性樹脂製シート又はゴム系シートとすることができ、材質等にとくに制限はない。層状に敷設した遮水シート5a、5bは、例えば開口7以外の周縁を閉じて袋体6を形成し、袋体6内に遮水材11を封入可能とする。例えば図8の袋体6の断面図に示すように、遮水シート5a、5bの周縁、又は後述する多孔質離隔材8の周縁と遮水シート5a、5bの周縁とを相互に接合することにより、袋体6を形成することができる。図1では袋体6に単独の開口7を設け、図7に示すような二重管構造の耐圧管を開口7に接続し、耐圧管の外管を注入装置10に接続された注入管13として開口7に固定し、耐圧管の内管を通気管20として開口7から袋体6の内側の脱気部位Pまで伸長させている。ただし、袋体6に複数の開口7(例えば、最下端の開口と最上端の開口)を設け、注入装置10と通気管20とを異なる開口7に接続してもよい。施工や漏水検知の容易化のため、特許文献1〜4と同様に袋体6の内部を適当な大きさの複数の区画に分割することができ、その場合は各区画の遮水シート5a、5bの周縁を適当なシール材等により相互に接合すると共に、注入装置10及び通気管20を各区画に接続する。図8は、各区画の遮水シート5a、5bの周縁と各区画の多孔質離隔材8の周縁とをシール用遮水シート5dにより相互に接合した例である。
図3は、荷重側シート5aを取り除いた袋体6の内部構造の平面図の一例を示す。同図に示すように、袋体6内には、荷重物3の圧力に抗して荷重側シート5aと基盤側シート5bとの間に遮水材11を注入するための間隙d(図4参照)を保持する多孔質離隔材8を設けることが望ましい。多孔質離隔材8の一例は合成樹脂製の不織布、織布又は編物シートであるが、上載荷重に抗する強度と遮水材11を通す孔(空隙)とを有するものであれば材質や形状にとくに制限はない。例えば、離隔材8を凹凸付き又はハニカム構造のマット形状とし、必要に応じて補強材を含めることができ、上述した不織布シートやマットと補強材との複合積層材としてもよい。図示例は二層の遮水シート5a、5bの例であるが、遮水シート5を三層以上とした場合は、隣接する遮水シート5の間にそれぞれ多孔質離隔材8を設けて間隙dを確保する。
図3に示すように、袋体6の開口7から多孔質離隔材8の間又は離隔材8と袋体6との間に通気管20を伸張させ、通気管20の先端口22を開口7から隔てた袋体6内の脱気部位Pに荷重側シート5aへ向けて配置する。図2に示すように袋体6に圧入された遮水材11は重力により基盤側シート5bに沿って広がるが、先端口22を荷重側シート5aへ向けて配置することにより、基盤側シート5bに沿って広がる遮水材11の先端口22への流入を最小限に抑えることができる。脱気部位Pは袋体6内の上端部位であることが望ましいが、先端口22を離隔材8より荷重側シート5aへ向け突出させることにより、脱気部位Pに拘わらず離隔材8の上方に先端口22を位置付けることができる。荷重側シート5aへ向けた先端口22には対向する荷重側シート5aが荷重物3の圧力により押圧されるが、例えば先端口22の周囲に切欠きや通気孔等を設けることにより、荷重側シート5aが押圧された場合でも十分な通気量(脱気量)を確保することができる。
図示例では、通気管20の先端にL字形貫通孔25付きの先端キャップ27を取り付けることにより、荷重側シート5aへ向けた先端口22を形成している。先端キャップ27の一例を図4及び図5に示す。図示例の先端キャップ27は、基盤側シート5bに沿った取付口24と、荷重側シート5aへ向けた先端口22と、両者を繋ぐL字形貫通孔25とを有する。例えば、図3の基盤側シート5b上の脱気部位Pにコンクリート又は樹脂製の先端キャップ27を形成又は載置し、基盤側シート5bに沿って伸張させた通気管20の先端を先端キャップ27のL字形貫通孔25の取付口24に接続する。先端キャップ27は固定式又は可搬式とすることができる。
図5は円柱状の先端キャップ27を示し、荷重側シート5aと対向するキャップ27の頂部に凹入部26を形成し、凹入部26内(図示例では、凹入部26の中央)にL字形貫通孔25の先端口22を設けると共に凹入部26の周囲壁に複数の放射状切欠き23を形成している。切欠き23の数及び大きさは、遮水材11が進入しにくく且つ必要十分な通気量が得られるように設計する。切欠き23に代えて又は加えて、凹入部26の周囲壁を貫通する通気孔を形成してもよい。好ましくは、同図(B)に示すように、円柱状先端キャップ27の高さDを多孔質離隔材8により保持されるシート間隙dよりも僅かに大きくし、通気管20の先端口22を多孔質離隔材8より荷重側シート5aへ向けて突出させる。この突出により、離隔材8内に遮水材11が充填されるまで先端口22が遮水材11中に埋没することを避け、先端口22による十分な通気を確保できる。また、たとえ遮水材11が凹入部26に多少進入したとしても、凹入部26内の先端口22を凹入部26の底部ではなく凹入部26の側部に臨ませれば、遮水材11の先端口22への進入は抑制できる。キャップ27の頂面に角部があると荷重物3の圧力により頂面に押圧された荷重側シート5aに傷を付けて損傷の原因となるので、キャップ27の頂面の周縁を角のない緩やかな曲面とすることが望ましい。
図4は、荷重側シート5aとの対向面を荷重側シート5a向きに凸の緩やかな曲面とし、その頂端に凹入部26を形成し、その凹入部26内にL字形貫通孔25の先端口22を臨ませた先端キャップ27の他の一例を示す。図示例の先端キャップ27は、球又は回転楕円体を交差する平面(この場合は、基盤側シート5b)で切り取った球冠形状又は楕円球冠形状の外周面を有し、その側部にL字形貫通孔25の取付口24を設け、その頂部の凹入部26の周囲に底部に至る溝状の放射状切欠き23を形成している。この場合も、先端キャップ27の高さDはシート間隙dよりも僅かに大きくし、L字形貫通孔25の先端口22は凹入部26内の遮水材11が進入しにくい適当な部位(例えば、側部)に臨ませることができる。荷重側シート5aとの対向面を凸状の緩やかな曲面とすることにより、先端キャップ27の頂部に押圧される荷重側シート5aの破損を確実に避けることができる。
図1及び図3に示すように、袋体6の開口7に遮水材11を圧入する注入装置10と破損検知装置15とを接続すると共に、通気管20の他端に好ましくは吸気装置30を接続する。注入装置10の一例は加圧ポンプであり、吸気装置30の一例は吸気ポンプである。吸気の必要がない場合は、通気管20の他端を大気に開放してもよい。破損検知装置15は、上述した従来技術に属する漏水感知センサ、電気的検出装置、圧力変動検出装置、集水配管等を利用することができる。遮水材11は、ウレタン樹脂、高吸水性樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、セメント−ベントナイト(CB)等の無機系遮水材、ポリビニルアルコール系遮水材水溶液等を利用できるが、注入しやすく且つ固化後に良好な強度と地盤の変形等に追従できる可撓性とを有するものが望ましい。廃棄物処分場等のように広大な面積を遮水材の注入によって遮水する場合は、長時間に及ぶ注入が完了するまで固化が始まらない遮水材を用いる必要がある。例えば、重合度500以上のポリビニルアルコール系ポリマーと2以上のメチロール基を分子中に有する水溶性架橋剤とpH調整剤とを水に溶解したポリビニルアルコール系遮水材は、ゲル化時間をpHにより調整できるので、廃棄物処分場に適用した本発明の遮水システム1の遮水材11に適している。
図示例の破損検知装置15は、例えば破損検知管17を介して袋体6からの排水を定期的に又は適宜に監視することにより袋体6の破損を検知し、破損検知信号を制御装置16に出力する。制御装置16は注入装置10及び吸気装置30に接続され、破損検知信号に応じて注入装置10及び吸気装置30を起動する。注入装置10は遮水材11を蓄えた貯留槽12に接続され、制御装置16の制御信号に応じて遮水材11を袋体6の開口7へ圧入する。同時に吸気装置30は、制御装置16の制御信号に応じて通気管20を袋体6の内部に対して負圧とし、袋体6内の空気や浸出水を袋体6の外へ吸引する。注入装置10による遮水材11の注入と吸気装置30による吸引とを継続して袋体6内に遮水材11が充填されると、通気管20の先端口22が遮水材11中に埋没し、吸気装置30に遮水材11が継続的に吸引される。図示例の吸気装置30は充填検知装置37に接続されており、充填検知装置37が遮水材11の継続的な吸引に基づいて袋体6内の遮水材11の充填を検知し、制御装置16に充填検知信号を出力する。制御装置16は、充填検知信号に応じて注入装置10及び吸気装置30を停止して破損箇所の補修を終了する。
本発明によれば、遮水材11の進入による通気管20の閉塞を防止すると共に十分な脱気量を確保することができ、袋体6内に遮水材11が充填されるまで効率よく袋体6内を脱気することができるので、遮水シート工内に遮水材11をむらなく確実に充填することができる。また、通気管20の先端口22の荷重側シート5aとの対向面をシート向きに凸の緩やかな曲面とすることにより、遮水シート5aの損傷を避けつつ通気管20の先端口22を袋体6内の最上端に位置付けることができ、袋体6内の適当な部位から脱気することが可能となる。なお、図示例では本発明を遮水シート5a、5bの破損検知後の修復に利用しているが、本発明は遮水シート5a、5bを施工する際の遮水材11の圧入の際にも利用することが可能である。すなわち本発明は、先注入方法にも後注入方法にも適用又は利用できる。
こうして本発明の目的である「遮水シート工内に遮水材をむらなく確実に充填できる遮水材注入型遮水システム」の提供を達成することができる。
図1及び図3は、袋体6の内外を連通する複数の通気管20a、20bを設けた本発明の遮水システム1の実施例を示す。本発明で用いる通気管20は、荷重側シート5aへ向けた先端口22(好ましくは、周囲に切欠き23を設けた先端口22)を有するので遮水材11の進入を有効に防止できるが、何らかの理由で通気管20が折れ曲がった場合や遮水材11が多量に進入した場合に機能低下又は機能不全が発生して通気量不足となり得る。複数の通気管20a、20bを設け、例えば一方の通気管20bを介して袋体6の内圧を詳細に監視しながら他方の通気管20aを介して袋体6を脱気することにより、通気管20aの機能低下を迅速に検知することが可能となる。また、一部の通気管20aが機能低下に陥った場合でも、他の通気管20bに切り替えて十分な脱気量を確保することができるので、本発明の遮水システム1の安全性を高めることができる。更に、複数の通気管20a、20bの先端口22a、22bを袋体6内の異なる部位に配置することにより、袋体6内の一層効率的な脱気と遮水材11の一層確実な充填とを期待することができるので、基盤2の形状や状態に影響されない様々な用途の遮水工に利用可能となる。
図示例では、それぞれ袋体6内の脱気部位Pに先端口22a、22bを有する複数の通気管20a、20bを設け、その一部の通気管20aを吸気装置30に接続して袋体6の脱気に供し、他の通気管20bを圧力測定装置34に接続して袋体6の内圧を測定している。圧力測定装置34の内圧測定信号を制御装置16に入力し、制御装置16が袋体6の内圧に応じて注入装置10及び吸気装置30を制御する。圧力測定装置34の一例は、圧力ゲージである。例えば制御装置16は、破損検知装置15の破損検知信号に応じて注入装置10及び吸気装置30を起動すると共に圧力測定装置34の内圧測定を起動し、袋体6の内圧の上昇又は下降に応じて注入装置10の注入圧及び/又は吸気装置30の吸気圧を調節することにより袋体6内を適当な内圧(例えば一定の内圧)に保つ制御を行う。このような制御により、遮水材11の充填むらの発生や袋体6の膨張・破裂等を確実に避けることができる。図示例は2本の通気管20a、20bを注入管13の内側を介して袋体6内に伸長させた例であるが(図7も参照)、3本以上の通気管20a、20bを袋体6に配置することも可能である。
また図示例では、制御装置16で制御可能な切替装置36を介して通気管20bを圧力測定装置34及び吸気装置30に接続し、通気管20bを内圧測定用又は脱気用の何れにも使用可能としている。図示例の制御装置16は、圧力測定装置34の内圧測定信号に基づき、吸気装置30に接続した通気管20aの閉塞を検知する検知手段32を含む。閉塞検知手段32の一例は、吸気装置30の吸気量と圧力測定装置34の内圧との比較から通気管20aの機能低下を検知して閉塞検知信号を出力する制御装置16の内蔵プログラムである。例えば制御装置16は、切替装置36で通気管20bと圧力測定装置34とを接続した上で、上述したように袋体6内を適当な内圧に保つ制御を行いつつ閉塞検知手段32により通気管20aの機能低下を監視する。閉塞検知手段32が閉塞検知信号を出力した場合は、切替装置36に切替信号を出力して通気管20bの接続を圧力測定装置34から吸気装置30に切り替える。この切り替えにより、圧力測定用の通気管20bを脱気用に転用して十分な脱気量を確保し、脱気作業を継続することが可能となる。必要に応じて、制御装置16により機能低下に陥った通気管20aの弁(電磁弁等)31を閉鎖することができる。
図6は、複数のL字形貫通孔25a、25bを有する先端キャップ27の実施例を示す。図3の実施例において、各通気管20a、20bの先端にそれぞれ図4又は図5のL字形貫通孔25付き先端キャップ27を取り付けて荷重側シート5aへ向けた先端口22a、22bを形成することも可能であるが、複数のL字形貫通孔25a、25bを有する単独の先端キャップ27を用いることにより設置スペースを節約できる。図示例の先端キャップ27は、荷重側シート5a向きに緩やかに凸の球冠形状又は楕円球冠形状の外周面、その荷重側シート5aと対向する頂部の凹入部26内に形成した複数の先端口22a、22b、その基盤側シート5bに沿った側部に形成した複数の取付口24a、24b、先端口22a、22bと取付口24a、24bとを1対1に繋ぐ複数のL字形貫通孔25a、25b、及び凹入部26の周囲の外周面に形成した複数の放射状切欠き23とを有する。放射状切欠き23は図4及び図5と同様のものである。
例えば、図5の先端キャップ27を図3に示す袋体6内の脱気部位Pに設け、袋体6の内外を連通する各通気管20a、20bの先端をそれぞれ先端キャップ27の取付口24a、24bに接続する。図示例ではL字形貫通孔25a、25b(取付口24a、24b)を頂部凹入部26から見て90度の角度で放射状に配置しているが、L字形貫通孔25a、25bは任意の角度で配置することができ、3本以上のL字形貫通孔25a、25bを設けることも可能である。なお、図5の先端キャップ27も、例えばコンクリート又は樹脂製で固定式又は可搬式のものとすることができる。
図示例では、先端キャップ27の頂部凹入部26を階段状に凹入する階段状凹入部26a、26bとし、その下段部26aに設けた先端口22aを吸気装置30に接続された通気管20aと接続し、その上段部26bに設けた先端口22bを圧力測定装置34に接続された通気管20bと接続している。上述したように、袋体6内に遮水材11が充填されると先端キャップ27が遮水材11中に埋没して凹入部26に遮水材11が進入するが、進入した遮水材11は先ず下段部26aの先端口22aを介して通気管20aに吸引され、その吸引時においても上段部26bの先端口22bを介して袋体6の内圧を測定できる。ただし、先端キャップ27の凹入部26の構造及び凹入部26内の先端口22a、22bの配置は図示例に限定されず、各先端口22a、22bに接続される通気管20a、20bの機能に応じて適当に設計することができる。また図6(B)に示すように、必要に応じて凹入部26を塞ぐ通気性蓋28を設け、凹入部26及び取付口24a、24bへの異物の進入を防ぐことができる。
本発明の一実施例の説明図である。 図1の実施例における通気管の先端口部分の拡大説明図である。 袋体内における通気管の配置の一例を示す説明図である。 通気管の先端キャップの一実施例の説明図である。 通気管の先端キャップの他の実施例の説明図である。 通気管の先端キャップの更に他の実施例の説明図である。 図1の実施例における注入管及び通気管の拡大説明図である。 袋体の垂直断面図の一例を示す説明図である。
符号の説明
1…遮水システム 2…地盤
3…荷重物 5a、5b…遮水シート
5c…接合部 5d…シール用遮水シート
6…袋体 7…開口
8…多孔質離隔材
10…注入装置 11…遮水材
12…貯留槽 13…注入管
15…破損検知装置 16…制御装置
17…破損検知管
20、20a、20b…通気管
22…先端口 23…切欠き
24…取付口 25…L字形貫通孔
26…凹入部 26a、26b…階段状凹入部
27…先端キャップ 28…通気性蓋
30…吸気装置 31…弁
32…閉塞検知手段 34…圧力測定装置
36…切替装置 37…充填検知装置

Claims (9)

  1. 荷重物を載置する基盤上に敷設した複数層の遮水シートからなる袋体、前記袋体に設けた開口から袋体内に遮水材を圧入する注入装置、及び前記開口から隔てた袋体内の部位に荷重側シートへ向けた先端口を有し且つ他端が袋体外に連通する通気管を備えてなる遮水材注入型遮水システム。
  2. 請求項1のシステムにおいて、前記袋体内に荷重物の圧力に抗して間隙を保持する多孔質離隔材を封入し、前記通気管の先端口を多孔質離隔材より荷重側シートへ向け突出させてなる遮水材注入型遮水システム。
  3. 請求項1又は2のシステムにおいて、前記通気管の先端口の周囲に切欠きを設けてなる遮水材注入型遮水システム。
  4. 請求項1から3の何れかのシステムにおいて、前記通気管の先端を、基盤側シートに沿った取付口と荷重側シートへ向けた先端口と両者を繋ぐL字形貫通孔とを有する先端キャップにより形成してなる遮水材注入型遮水システム。
  5. 請求項4のシステムにおいて、前記先端キャップの荷重側シートとの対向面を当該シート向きに凸の緩やかな曲面としてなる遮水材注入型遮水システム。
  6. 請求項1から5の何れかのシステムにおいて、前記通気管の他端に吸気装置を接続してなる遮水材注入型遮水システム。
  7. 請求項1から5の何れかのシステムにおいて、前記通気管を複数設けてなる遮水材注入型遮水システム。
  8. 請求項7のシステムにおいて、一部の通気管に吸気装置を接続し、他の通気管に袋体内部の圧力を測定する圧力測定装置を接続し、前記測定装置の測定信号に応じて注入装置及び/又は吸気装置を制御する制御装置を設けてなる遮水材注入型遮水システム。
  9. 請求項8のシステムにおいて、前記他の通気管を制御装置が制御可能な切替装置経由で圧力測定装置及び吸気装置に接続し、前記制御装置により圧力測定装置の測定信号に基づき通気管の閉塞を検知し且つ閉塞の検知に応じて切替装置を圧力測定装置から吸気装置に切り替えてなる遮水材注入型遮水システム。
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