JP2006020714A - 放射線撮像装置および放射線検出信号処理方法 - Google Patents

放射線撮像装置および放射線検出信号処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 放射線画像を精度良く得ることができる放射線撮像装置および放射線検出信号処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 検出されたX線検出信号に対してディジタル化を行って画素の信号レベルを求めるA/D変換器について、そのA/D変換器が有するデータ範囲(14bit幅)を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定する(ステップT4)。信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを別の信号レベルに置き換える(ステップT5)。その結果、その置き換えられた信号レベルによってX線画像を求めれば、X線画像を精度良く得ることができる。
【選択図】 図11

Description

この発明は、被検体を照射して検出された放射線検出信号に基づいて放射線画像を得る放射線撮像装置および放射線検出信号処理方法に係り、特に、画素の信号レベルを補正する技術に関する。
放射線撮像装置の例としてX線を検出してX線画像を得るX線透視撮影装置は、X線を検出するX線検出器を備えている。X線検出器は、この検出器の検出面に入射されたX線に対応するX線検出信号を出力する。そして、このX線検出信号をA/D変換器はディジタル化して、画素の信号レベル(以下、信号レベルを『画素値』と呼ぶ)を求める(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−014755号公報(第2−4頁、図2,4)
しかしながら、A/D変換器にはデータ範囲の限度があり、例えば14bit幅だと0〜16383までのディジタル値しか出力できない。したがって、このデータ範囲を超えた場合、すなわちオーバーフローを起こした場合には、A/D変換器によってディジタル化された画素値(信号レベル)はオーバーフローを起こしたものについては全て最大値16383となる。
このように、オーバーフローによる過剰分は除外された状態でA/D変換器によってディジタル化されてしまう。したがって、A/D変換器によってディジタル化されて出力される時点で、本来ならば出力されるべき信号レベルが過剰分として除外される。実際には各画素毎にオフセット値、ゲイン補正係数が異なるので、オーバーフロー値もばらつくが、いずれにしても真値に対して過小評価された値のままで画素値はA/D変換器で出力されてしまう。その結果、X線画像を精度良く得ることができない。
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、放射線画像を精度良く得ることができる放射線撮像装置および放射線検出信号処理方法を提供することを目的とする。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段と、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出手段とを備え、放射線検出手段から検出された放射線検出信号に基づいて放射線画像を得る放射線撮像装置であって、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段と、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定するオーバーフロー判定手段と、そのオーバーフロー判定手段によって信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに置き換える信号レベル置換手段とを備えることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段について、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かをオーバーフロー判定手段が判定する。そのオーバーフロー判定手段によって信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに信号レベル置換手段が置き換える。その結果、その置き換えられた信号レベルによって放射線画像を求めれば、放射線画像を精度良く得ることができる。
また、請求項5に記載の発明は、被検体を照射して検出された放射線検出信号に基づいて放射線画像を得る信号処理を行う放射線検出信号処理方法であって、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段について、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定し、信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに置き換え、その置き換えられた信号レベルによって放射線画像を得ることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段について、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定する。そして、信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに置き換える。その結果、その置き換えられた信号レベルによって放射線画像を求めれば、放射線画像を精度良く得ることができる。
各発明(請求項1、請求項5に記載の発明)の好ましい一例は、真値に置き換えられた信号レベルに対して時間遅れ分を除去することである(請求項2、請求項6に記載の発明)。時間遅れ分が除去された信号レベルによって放射線画像を求めれば、時間遅れ分をも考慮した放射線画像を精度良く得ることができる。
また、オーバーフロー判定手段によるオーバーフローの判定のために用いられる閾値を予め記憶する閾値記憶手段を備えるのが好ましい(請求項3に記載の発明)。閾値記憶手段を備えることで、閾値に基づいてオーバーフロー判定手段によるオーバーフローの判定をより適切に行うことができる。
また、信号レベル置換手段による信号レベルの置き換えに用いられる上述した真値を、オーバーフローしない条件で予め求められた放射線の線量と放射線検出信号との相関関係に基づく、線量に対応した放射線検出信号によって求めるのが好ましい(請求項4に記載の発明)。オーバーフローしない条件において放射線の線量に対応した放射線検出信号によって真値を求めることで、放射線画像をより一層精度良く求めることができる。
この発明に係る放射線撮像装置および放射線検出信号処理方法によれば、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段について、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定する。そして、信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに置き換える。その結果、その置き換えられた信号レベルによって放射線画像を求めれば、放射線画像を精度良く得ることができる。
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るX線透視撮影装置のブロック図であり、図2は、X線透視撮影装置に用いられている側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路であり、図3は、平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路であり、図4は、X線透視撮影装置の画像処理部およびメモリ部の具体的なブロック図である。本実施例では、放射線検出手段としてフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」という)を例に採るとともに、放射線撮像装置としてX線透視撮影装置を例に採って説明する。
本実施例に係るX線透視撮影装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、被検体Mを透過したX線を検出するFPD3とを備えている。X線管2は、この発明における放射線照射手段に相当し、FPD3は、この発明における放射線検出手段に相当する。
X線透視撮影装置は、他に、天板1の昇降および水平移動を制御する天板制御部4や、FPD3の走査を制御するFPD制御部5や、X線管2の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部6を有するX線管制御部7や、FPD3から電荷信号であるX線検出信号をディジタル化して取り出すA/D変換器8や、A/D変換器8から出力されたX線検出信号に基づいて種々の処理を行う画像処理部9や、これらの各構成部を統括するコントローラ10や、処理された画像や後述する各種のテーブルなどを記憶するメモリ部11や、オペレータが入力設定を行う入力部12や、処理された画像などを表示するモニタ13などを備えている。
天板制御部4は、天板1を水平移動させて被検体Mを撮像位置にまで収容したり、昇降、回転および水平移動させて被検体Mを所望の位置に設定したり、水平移動させながら撮像を行ったり、撮像終了後に水平移動させて撮像位置から退避させる制御などを行う。FPD制御部5は、FPD3を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させることによる走査に関する制御などを行う。高電圧発生部6は、X線を照射させるための管電圧や管電流を発生してX線管2に与え、X線管制御部7は、X線管2を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させるによる走査に関する制御や、X線管3側のコリメータ(図示省略)の照視野の設定の制御などを行う。なお、X線管2やFPD3の走査の際には、X線管2から照射されたX線をFPD3が検出できるようにX線管2およびFPD3が互いに対向しながらそれぞれの移動を行う。
コントローラ10は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、メモリ部11は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。また、入力部12は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。X線透視撮影装置では、被検体Mを透過したX線をFPD3が検出して、検出されたX線に基づいて画像処理部9で画像処理を行うことで被検体Mの撮像を行う。
なお、画像処理部9は、図4に示すように、A/D変換器8が有するデータ範囲である14bit幅を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否か判定するオーバーフロー判定部9aと、信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを別の値の信号レベルに置き換える信号レベル置換部9bと、置き換えられた信号レベルに対して時間遅れ分を除去する時間遅れ除去部9cとを備えており、メモリ部11は、オーバーフローの判定のために用いられる閾値を記憶した閾値テーブル11aと、図6に示す相関関係を記憶した線量・信号テーブル11bとを備えている。
オーバーフロー判定部9aや信号レベル置換部9bや時間遅れ除去部9cも、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、閾値テーブル11aや線量・信号テーブル11bも、記憶媒体などで構成されている。オーバーフロー判定部9aや信号レベル置換部9bや時間遅れ除去部9cや閾値テーブル11aや線量・信号テーブル11bの具体的な機能については図5〜図9の各図や図10〜図13のフローチャートで後述する。オーバーフロー判定部9aは、この発明におけるオーバーフロー判定手段に相当し、信号レベル置換部9bは、この発明における信号レベル置換手段に相当し、時間遅れ除去部9cは、この発明における時間遅れ除去手段に相当し、閾値テーブル11aは、この発明における閾値記憶手段に相当する。
FPD3は、図2に示すように、ガラス基板31と、ガラス基板31上に形成された薄膜トランジスタTFTとから構成されている。薄膜トランジスタTFTについては、図2、図3に示すように、縦・横式2次元マトリクス状配列でスイッチング素子32が多数個(例えば、1024個×1024個)形成されており、キャリア収集電極33ごとにスイッチング素子32が互いに分離形成されている。すなわち、FPD3は、2次元アレイ放射線検出器でもある。
図2に示すようにキャリア収集電極33の上にはX線感応型半導体34が積層形成されており、図2、図3に示すようにキャリア収集電極33は、スイッチング素子32のソースSに接続されている。ゲートドライバ35からは複数本のゲートバスライン36が接続されているとともに、各ゲートバスライン36はスイッチング素子32のゲートGに接続されている。一方、図3に示すように、電荷信号を収集して1つに出力するマルチプレクサ37には増幅器38を介して複数本のデータバスライン39が接続されているとともに、図2、図3に示すように各データバスライン39はスイッチング素子32のドレインDに接続されている。
図示を省略する共通電極にバイアス電圧を印加した状態で、ゲートバスライン36の電圧を印加(または0Vに)することでスイッチング素子32のゲートがONされて、キャリア収集電極33は、検出面側で入射したX線からX線感応型半導体34を介して変換された電荷信号(キャリア)を、スイッチング素子32のソースSとドレインDとを介してデータバスライン39に読み出す。なお、スイッチング素子がONされるまでは、電荷信号はキャパシタ(図示省略)で暫定的に蓄積されて記憶される。各データバスライン39に読み出された電荷信号を増幅器38で増幅して、マルチプレクサ37で1つの電荷信号にまとめて出力する。出力された電荷信号をA/D変換器8でディジタル化してX線検出信号として出力する。
なお、A/D変換器8でディジタル化されたX線検出信号を、本明細書では『画素の信号レベル』(以下、単に『信号レベル』と略記する)あるいは『画素値』と定義する。また、本実施例ではA/D変換器8は、14bit幅のデータ範囲を有しており、0〜16383までのディジタル値を出力する。したがって、このデータ範囲を超えた場合、すなわちオーバーフローを起こした場合には、A/D変換器8によってディジタル化された信号レベルはオーバーフローを起こしたものについては全て最大値16383となる。A/D変換器8は、この発明における信号処理手段に相当する。
次に、本実施例装置におけるオーバーフロー判定部9aや信号レベル置換部9bや時間遅れ除去部9cや閾値テーブル11aや線量・信号テーブル11bによる一連の信号処理について、図5〜図9の各図や図10〜図13のフローチャートを参照して説明する。
図5は、オーバーフローの判定のために用いられる閾値を求める説明図であり、図6は、アンプ倍率が1倍のときにおけるX線の線量とX線検出信号との相関関係を模式的に示したグラフであり、図7は、置き換えられた信号レベル(画素値)のサンプリング状況を示す模式図であり、図8は、X線入射状況を示す図であり、図9は、時間遅れ状況を示す図であり、図10は、図6の相関関係を求める一連の処理を示すフローチャートであり、図11は、本実施例装置におけるオーバーフロー判定部9aや信号レベル置換部9bや閾値テーブル11aや線量・信号テーブル11bによる一連の信号処理を示すフローチャートであり、図12は、本実施例装置における時間遅れ除去部9cによる一連の信号処理を示すフローチャートであり、図13は、時間遅れ除去用の再帰的演算処理プロセスを示すフローチャートである。
まず、アンプ倍率が1倍のときにおけるX線の線量とX線検出信号との相関関係について、図6および図10を参照して説明する。
(ステップS1)X線管2のアンプ(図示省略)についてアンプ倍率を1倍に設定する。この設定は、入力部12から設定データを入力し、コントローラ10を介してX線管制御部7の高電圧発生部6に与えることで行われる。このアンプ倍率を1倍に設定することで、A/D変換器8で出力された信号レベル(画素値)はオーバーフローを起こさない。したがって、オーバーフローをしない条件であれば、アンプ倍率は必ずしも1倍に限定されず、1倍よりも大きくてもよいし、1倍よりも小さくてもよい。なお、X線の線量とX線検出信号との相関関係を求めるためにアンプ倍率を1倍に設定したが、通常のX線撮影の場合にはアンプ倍率を高く設定する。本実施例のX線撮影では、後述する説明から明らかなようにアンプ倍率を30倍に設定する。
(ステップS2)アンプ倍率を1倍に設定した状態でX線管2から照射されるX線の線量を設定する。この設定については、管電圧や管電流などに関する設定データを入力部12から入力し、同じく高電圧発生部6に与えることで行えばよい。設定された線量を、コントローラ10を介してメモリ部11の線量・信号テーブル11bに書き込んで記憶する。なお、線量の設定に限定されず、X線管2から照射されたX線の線量を線量計(図示省略)で測定して、線量計の測定による実際に照射された線量を線量・信号テーブル11bに記憶してもよい。
設定した線量の条件でX線管2からX線を照射してFPD3でX線を検出する。
(ステップS3)検出されたX線検出信号をA/D変換器8でディジタル化して、ディジタル化された信号(信号レベル)を1画素分毎に読み出す。なお、アンプ倍率を1倍に設定しているので、ディジタル化されたX線検出信号(信号レベル)は14bit幅のデータ範囲を超えることなく、すなわちオーバーフローを起こすことなく、16383未満のディジタル値で出力される。
(ステップS4)この読み出された1画素分のX線検出信号を、コントローラ10を介して線量・信号テーブル11bに記憶するとともに、ステップS2で記憶された線量に対応させて相関関係に関するテーブルを作成する。
(ステップS5)ステップS2で設定された線量の条件の下で、全ての画素について、線量とX線検出信号との相関関係を線量・信号テーブル11bに記憶すれば、次のステップS6に進み、全ての画素について記憶していなければ、ステップS3に戻って1画素分づつ繰り返す。
(ステップS6)図6のグラフを作成するために、線量を複数回に設定する必要がある。そこで、予め決められた回数にまで線量を設定したか否かを判断する。もし、全ての線量について相関関係を線量・信号テーブル11bに記憶していなければ、ステップS2に戻って新たなる値で線量を設定する。全ての線量について記憶していれば、相関関係を求める一連の処理を終了する。それぞれに設定された各線量に対応してX線検出信号が記憶されるので、図6に示すような相関関係が作成される。
続いて、オーバーフローの判定のために用いられる閾値について、図5を参照して説明するとともに、オーバーフロー判定部9aや信号レベル置換部9bや閾値テーブル11aや線量・信号テーブル11bによる一連の信号処理について、図5、図6、図11を参照して説明する。なお、この一連の信号処理は、時間遅れ除去部9cによって時間遅れを除去する信号処理(ラグ補正)までの処理である。
(ステップT1)X線管2のアンプ倍率を30倍に設定する。このアンプ倍率を30倍に設定することで、A/D変換器8で出力された信号レベル(画素値)がオーバーフローを起こす可能性がでる。
(ステップT2)アンプ倍率を30倍に設定した状態でX線管2から照射されるX線の線量を設定する。設定した線量の条件でX線管2からX線を照射してFPD3でX線を検出する。
(ステップT3)検出されたX線検出信号をA/D変換器8でディジタル化して、ディジタル化された信号レベル(画素値)を1画素分毎に読み出す。なお、アンプ倍率を30倍に設定しているので、信号レベルは14bit幅のデータ範囲を超える、すなわちオーバーフローを起こす可能性があり、オーバーフローを起こしたものについては全て最大値16383のディジタル値で出力される。なお、実際には、各画素毎にオフセット値、ゲイン補正係数を有しており、これらのオフセット値、ゲイン補正係数が各画素毎に異なるので、オーバーフローを起こす閾値、すなわちオーバーフローの判定のために用いられる閾値も16383でなく、画素毎にバラツキがある。
(ステップT4)A/D変換器8でディジタル化された信号レベル(画素値)が、閾値と同じであるか否かをオーバーフロー判定部9aが判定する。閾値と同じであれば、その信号レベルはオーバーフローを起こしたとオーバーフロー判定部9aは判定する。画素毎の閾値を求めるには、図5に示すように行う。すなわち、A/D変換器8のデータ範囲である14bit幅をStotalとし、オフセット値をSoffsetとし、増幅器38(図3を参照)のゲインを調節して出力側をそろえるキャリブレーション(校正)を行うために用いられるゲイン補正係数をGainとし、オーバーフローの判定のために用いられる閾値をSoverflowとすると、閾値Soverflowは下記(1)式により求まる。
overflow=(Stotal−Soffset)×Gain …(1)
図5(a)に示すように、14bit幅Stotalからオフセット値Soffsetを減算して、その減算された値を、図5(b)に示すように、ゲイン補正係数Gainで乗じると閾値Soverflowが求まる。閾値Soverflowを画素毎に求めればよい。
オーバーフローを起こしたと判定すれば、置き換えを行うべく次のステップT5に進み、オーバーフローを起こしていないと判定すれば、ステップT5をスキップしてステップT6に進む。
(ステップT5)ステップT4で信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを信号レベル置換部9bは別の値の信号レベルに置き換える。別の値としては、予測される真値になるように設定すればよい。本実施例では、オーバーフローしない条件であるX線管2のアンプ倍率が1倍のときにおける線量とX線検出信号との相関関係(図6を参照)に基づいて置き換えを行う。
具体的に説明すると、ステップT2で設定された線量と同じ線量を図6のグラフに当てはめる。すると、図6の点線に示すようにその線量に対応したX線検出信号を求めることができる。このX線検出信号はアンプ倍率が1倍のときであるので30倍にする。30倍になった信号を置き換えの対象として、判定された信号レベルを、図6のX線検出信号を30倍にしたX線検出信号(信号レベル)に置き換える。この置き換えられた信号レベルが予測される真値となる。
(ステップT6)全ての画素について、オーバーフローの判定および置き換えを行っていれば、図12のフローに進み、全ての画素について行っていなければ、ステップT4に戻って1画素分づつ繰り返す。
続いて、時間遅れ除去部9cによる一連の信号処理について、図7〜図9、図12を参照して説明する。なお、この一連の信号処理はラグ補正に関するものであって、後述する図13も含めたこのラグ補正では、上述したステップT1〜T6の処理を経た信号レベル(画素値)を用いている。ラグ補正では、ステップT5で置き換えられた信号レベルも含めてステップT1〜T6の処理を経た信号レベルについては、文言を『画素値』で統一して、以下の説明を行う。
ステップT5で置き換えられた画素値も含めてステップT1〜T6の処理を経た画素値は、信号レベル置換部9b(図4を参照)から時間遅れ除去部9c(図4を参照)へ、図7に示すようにサンプリング時間間隔Δtで収集される。
また、図8に示すように、時間t0〜t1の間にX線が入射されると、本来の画素値に、図9に斜線で示す時間遅れ分が加わって、画素値は図9中に太線で示すものとなる。つまり、FPD3の場合、図9に示すように、各時刻でのX線検出信号には、X線照射に対応する信号が時間遅れ分(斜線部分)として含まれる。そして、その結果が画素値にまで及んでしまう。そこで、この時間遅れ分を時間遅れ除去部9cは除去して時間遅れのない画素値に出力する。
具体的に時間遅れ除去部9cは、各画素値から時間遅れ分を除去する再帰的演算処理を、下記(2)〜(4)式により行う。
k =Yk −Σn=1 N [αn ・〔1−exp(Tn ) 〕・exp(Tn )・Snk]…(2)
n =−Δt/τn …(3)
nk=Xk-1 +exp(Tn )・Sn(k-1)…(4)
但し, Δt:サンプリング時間間隔
k:サンプリングした時系列内のk番目の時点を示す添字
k :k番目のサンプリング時点で取り出された画素値
k :Yk から時間遅れ分を除去した補正後画素値
k-1 :一時点前のXk
n(k-1):一時点前のSnk
exp :指数関数
N:インパルス応答を構成する時定数が異なる指数関数の個数
n:インパルス応答を構成する指数関数の中の一つを示す添字
αn :指数関数nの強度
τn :指数関数nの減衰時定数
式(2)の第2項の『Σn=1 N [αn ・〔1−exp(Tn ) 〕・exp(Tn )・Snk]』が時間遅れ分に該当するので、本実施例では、時間遅れ分を除去した補正後画素値Xk が(2)〜(4)式という簡潔な漸化式によって速やかに求められる。
(ステップU1)X線未照射の状態でFPD3はX線を検出して、検出されたX線検出信号をA/D変換器8でディジタル化して、ディジタル化された信号レベルを読み出す。この場合には、X線が未照射の状態であるのでオーバーフローを起こすことなく、信号レベルについては置き換えが行われず、ディジタル化された信号レベルが、ラグ補正の対象である画素値となる。そして、サンプリング時間間隔Δt(=1/30秒)で信号レベル置換部9bから時間遅れ除去部9cへX線照射前のX線画像1枚分の画素値Yk を収集する。
(ステップU2)X線を連続ないし断続的に被検体Mに照射すると、FPD3はX線を検出して、検出されたX線検出信号をA/D変換器8でディジタル化して、ディジタル化された信号レベルを読み出す。この場合には、オーバーフローを起こす可能性があるので、上述したステップT1〜T6の処理を経る。オーバーフローを起こしたときにはステップT5で置き換えられた画素値が、オーバーフローを起こさないときにはディジタル化された信号レベルが、ラグ補正の対象である画素値にそれぞれなる。そして、サンプリング時間間隔Δtで信号レベル置換部9bから時間遅れ除去部9cへX線画像1枚分の画素値Yk を収集する。
(ステップU3)X線照射が終了すれば次のステップU4に進み、X線照射が終了していなければステップU2に戻る。
(ステップU4)時間遅れ除去部9cは1回のサンプリングで収集されたX線画像1枚分の画素値Yk を読み出す。
(ステップU5)時間遅れ除去部9cは(2)〜(4)式による再帰的演算処理を行い、各画素値Yk から時間遅れ分を除去した補正後画素値Xk を求める。この補正後画素値Xkを求めることで、ステップT1〜T6の処理を経た画素値に関するラグ補正が行われることになる。
(ステップU6)画像処理部9は、1回のサンプリング分(X線画像1枚分)の補正後画素値Xk に基づいてX線画像を作成する。
(ステップU7)作成したX線画像をモニタ13に表示する。
(ステップU8)未処理の画素値Yk が残っていれば、ステップU4に戻り、未処理の画素値Yk が残っていなければ、X線撮影を終了する。
続いて、図12におけるステップU5の時間遅れ除去部9cによる再帰的演算処理について、図13を参照して説明する。
(ステップV1)(2)式、(4)式でk=0とセットする。(2)式のX0 =0,(4)式のSn0=0をX線照射前の初期値として全てセットする。指数関数の数が3個(N=3)の場合は、S10,S20,S30を全て0にセットする。
(ステップV2)(2)式、(4)式でk=1とセットする。(4)式、つまりSn1=X0 +exp(Tn )・Sn0にしたがってS11,S21,S31を求める。さらに、求められたS11,S21,S31と画素値Y1 を(2)式に代入することで補正後画素値X1 を算出する。
(ステップV3)(2)、(4)式でkを1だけ増加(k=k+1)した後、(4)式に1時点前のXk-1 を代入してS1k,S2k,S3kを求める。さらに、求められたS1k,S2k,S3kと画素値Yk を(2)式に代入することで補正後画素値Xk を算出する。
(ステップV4)未処理の画素値Yk があれば、ステップV3に戻り、未処理の画素値Yk がなければ、次のステップV5に進む。
(ステップV5)1回のサンプリング分(X線画像1枚分)の補正後画素値Xk を算出し、1回の撮影分についての再帰的演算処理が終了となる。
以上のように構成された本実施例装置によれば、検出されたX線検出信号に対して所定の処理であるディジタル化を行って画素の信号レベルを求めるA/D変換器8について、そのA/D変換器8が有するデータ範囲(14bit幅)を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かをオーバーフロー判定部9aが判定する。そのオーバーフロー判定部9aによって信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに信号レベル置換部9bが置き換える。その結果、その置き換えられた信号レベルによってX線画像を求めれば、X線画像を精度良く得ることができる。
本実施例では、信号レベル置換部9bによる信号レベルの置き換えに用いられる上述した真値を、オーバーフローしない条件で予め求められたX線の線量とX線検出信号との相関関係(図6を参照)に基づく、線量に対応したX線検出信号によって求める。オーバーフローしない条件は、本実施例ではX線管2のアンプ倍率が1倍のときである。そして、ステップT2で設定された線量に対応したX線検出信号を図6のグラフから求めるとともに、そのX線検出信号を30倍にした信号を置き換えの対象にする。
本実施例では、オーバーフロー判定部9aによるオーバーフローの判定のために用いられる閾値を予め記憶する閾値テーブル11aを備えている。閾値テーブル11aを備えることで、閾値に基づいてオーバーフロー判定部9aによるオーバーフローの判定をより適切に行うことができる。この閾値については、各画素毎に(1)式によって予め求められる。
また、ステップT1〜T6の処理を経た信号レベルに対して、すなわち画素値に対して時間遅れ分を除去するラグ補正(図12、図13のフローを参照)を行えば、時間遅れ分をも考慮したX線画像を精度良く得ることができる。
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、図1に示すようなX線透視撮影装置を例に採って説明したが、この発明は、例えばC型アームに配設されたX線透視撮影装置にも適用してもよい。また、この発明は、X線CT装置にも適用してもよい。
(2)上述した実施例では、フラットパネル型X線検出器(FPD)3を例に採って説明したが、イメージインテンシファイア(I.I)などに代表されるX線検出器であってもよい。
(3)上述した実施例では、X線を検出するX線検出器を例に採って説明したが、この発明は、ECT(Emission Computed Tomography)装置のように放射性同位元素(RI)を投与された被検体から放射されるγ線を検出するγ線検出器に例示されるように、放射線を検出する放射線検出器であれば特に限定されない。同様に、この発明は、上述したECT装置に例示されるように、放射線を検出して撮像を行う装置であれば特に限定されない。
(4)上述した実施例では、FPD3は、放射線(実施例ではX線)感応型の半導体を備え、入射した放射線を放射線感応型の半導体で直接的に電荷信号に変換する直接変換型の検出器であったが、放射線感応型の替わりに光感応型の半導体を備えるとともにシンチレータを備え、入射した放射線をシンチレータで光に変換し、変換された光を光感応型の半導体で電荷信号に変換する間接変換型の検出器であってもよい。
(5)上述した実施例では、図11のステップT1〜T6の処理を経て、図12、図13のラグ補正(時間遅れ分の除去)を行ったが、必ずしもラグ補正を行う必要はない。
(6)上述した実施例では、(2)〜(4)式による再帰的演算処理を用いて、ラグ補正を行ったが、通常において用いられるラグ補正であれば特に限定されない。例えば、重み付けと再帰的演算処理とを組み合わせたリカーシブフィルタを用いてラグ補正を行ってもよい。
(7)上述した実施例では、オーバーフローを起こす信号処理手段として、A/D変換器8を例に採って説明したが、検出された放射線(X線)検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求めるものであれば、この発明における信号処理手段は、A/D変換器8に限定されない。例えば、画像処理部9が有するデータ範囲を超えた場合、オーバーフローを起こすとして、信号レベルの置き換えを行ってもよい。なお、上述した実施例では、A/D変換器8が14bit幅のデータ範囲を有するのに対して、それよりも大きい32bit幅あるいは64bit幅のデータ範囲を画像処理部9は有している。したがって、上述した実施例では、画像処理部9においてはオーバーフローを起こさない。
(8)上述した実施例では、線量と放射線(X線)検出信号とをそれぞれ対応させて、線量と放射線検出信号との相関関係(図6を参照)を線量・信号テーブル11bに記憶したが、図6のグラフを近似曲線で近似して、近似した式をメモリ部11にプログラムとして記憶させて、ステップT5の置き換えのたびに、そのプログラムを起動させて、線量に対応した信号レベルを求めてもよい。
(9)上述した実施例では、オーバーフローの判定のために用いられる閾値を画素毎に予め求めて各画素毎にオーバーフローの判定を行ったが、多少の誤差があるものの一定値を、全画素の共通の閾値として用いて、各画素毎にオーバーフローの判定を行ってもよい。
(10)上述した実施例では、信号レベルの置き換えに用いられる真値を、オーバーフローしない条件で予め求められた線量と放射線(X線)検出信号との相関関係に基づく、線量に対応した放射線検出信号によって求めたが、予測される真値であれば、これに限定されない。例えば、相関関係などのデータを事前に求めない場合には、オーバーフローの判定のために用いられる閾値よりも大きな値を、信号レベルの置き換えに用いれば、閾値よりも大きな値は、閾値と比較すると真値に対して近くなるので、従来と比較して放射線画像を精度良く得ることができる。
実施例に係るX線透視撮影装置のブロック図である。 X線透視撮影装置に用いられている側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。 平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。 X線透視撮影装置の画像処理部およびメモリ部の具体的なブロック図である。 (a),(b)は、オーバーフローの判定のために用いられる閾値を求める説明図である。 アンプ倍率が1倍のときにおけるX線の線量とX線検出信号との相関関係を模式的に示したグラフである。 置き換えられた信号レベル(画素値)のサンプリング状況を示す模式図である。 X線入射状況を示す図である。 時間遅れ状況を示す図である。 図6の相関関係を求める一連の処理を示すフローチャートである。 本実施例装置におけるオーバーフロー判定部や信号レベル置換部や閾値テーブルや線量・信号テーブルによる一連の信号処理を示すフローチャートである。 本実施例装置における時間遅れ除去部による一連の信号処理を示すフローチャートである。 時間遅れ除去用の再帰的演算処理プロセスを示すフローチャートである。
符号の説明
2 … X線管
3 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
8 … A/D変換器
9a … オーバーフロー判定部
9b … 信号レベル置換部
9c … 時間遅れ除去部
11a … 閾値テーブル
M … 被検体

Claims (6)

  1. 被検体に向けて放射線を照射する放射線照射手段と、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出手段とを備え、放射線検出手段から検出された放射線検出信号に基づいて放射線画像を得る放射線撮像装置であって、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段と、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定するオーバーフロー判定手段と、そのオーバーフロー判定手段によって信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに置き換える信号レベル置換手段とを備えることを特徴とする放射線撮像装置。
  2. 請求項1に記載の放射線撮像装置において、前記信号レベル置換手段によって前記真値に置き換えられた信号レベルに対して時間遅れ分を除去する時間遅れ除去手段を備えることを特徴とする放射線撮像装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の放射線撮像装置において、前記オーバーフロー判定手段によるオーバーフローの判定のために用いられる閾値を予め記憶する閾値記憶手段を備えることを特徴とする放射線撮像装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線撮像装置において、前記信号レベル置換手段による信号レベルの置き換えに用いられる前記真値は、オーバーフローしない条件で予め求められた放射線の線量と放射線検出信号との相関関係に基づく、線量に対応した放射線検出信号によって求められることを特徴とする放射線撮像装置。
  5. 被検体を照射して検出された放射線検出信号に基づいて放射線画像を得る信号処理を行う放射線検出信号処理方法であって、検出された放射線検出信号に対して所定の処理を行って画素の信号レベルを求める信号処理手段について、その信号処理手段が有するデータ範囲を超えるオーバーフローを信号レベルが起こしたか否かを判定し、信号レベルがオーバーフローを起こしたと判定された場合に、その判定された信号レベルを予測される真値の信号レベルに置き換え、その置き換えられた信号レベルによって放射線画像を得ることを特徴とする放射線検出信号処理方法。
  6. 請求項5に記載の放射線検出信号処理方法において、前記真値に置き換えられた信号レベルに対して時間遅れ分を除去して、時間遅れ分が除去された信号レベルによって放射線画像を得ることを特徴とする放射線検出信号処理方法。
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