上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による半導体レーザ素子は、活性層と、活性層上に形成され、第1側面と、第1側面とは反対側に位置する第2側面とを有する凸状のリッジ部を含む半導体層とを備えている。そして、第2側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度は、第1側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度以上の大きさを有しており、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する第1実効屈折率は、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高い。
この第1の局面による半導体レーザ素子では、上記のように、リッジ部の第2側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度が、リッジ部の第1側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度以上の大きさを有するように構成するとともに、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する第1実効屈折率を、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高くすることによって、リッジ部の第1側面側の第1実効屈折率とリッジ部の第2側面側の第2実効屈折率とが同じ場合に比べて、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を大きくすることができる。これにより、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部の幅を大きくすることができる。この場合、リッジ部を構成する半導体層と、リッジ部上に形成される電極層との接触面積を増大させることができるので、半導体層と電極層との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。これにより、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、半導体層は、リッジ部の第1側面側に位置するとともに、第1の厚みを有する第1平坦部と、リッジ部の第2側面側に位置するとともに、第2の厚みを有する第2平坦部とを含み、第2平坦部の第2の厚みは、第1平坦部の第1の厚みよりも小さい。このように構成すれば、容易に、第1の厚みを有するリッジ部の第1側面側の第1平坦部と、第1の厚みよりも小さい第2の厚みを有するリッジ部の第2側面側の第2平坦部とにより、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する第1実効屈折率を、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高くすることができる。
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、リッジ部の第1側面上に形成された第1屈折率を有する第1電流狭窄層と、リッジ部の第2側面上に形成された第2屈折率を有する第2電流狭窄層とをさらに備え、第2電流狭窄層の第2屈折率は、第1電流狭窄層の第1屈折率よりも低い。このように構成すれば、容易に、第1屈折率を有するリッジ部の第1側面側の第1電流狭窄層と、第1屈折率よりも低い第2屈折率を有するリッジ部の第2側面側の第2電流狭窄層とにより、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する第1実効屈折率を、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高くすることができる。
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、リッジ部の第1側面上に形成され、第1屈折率および第1吸収係数を有する第1電流狭窄層と、リッジ部の第2側面上に形成され、第2屈折率および第2吸収係数を有する第2電流狭窄層とをさらに備え、第1電流狭窄層の第1屈折率および第1吸収係数と、第2電流狭窄層の第2屈折率および第2吸収係数とを調節することによって、第2実効屈折率が第1実効屈折率よりも低くなるように制御する。このように構成すれば、容易に、リッジ部の第1側面側の第1電流狭窄層の第1屈折率および第1吸収係数と、リッジ部の第2側面側の第2電流狭窄層の第2屈折率および第2吸収係数とを調節することにより、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する第1実効屈折率を、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高くすることができる。ここで、第1吸収係数および第2吸収係数が十分小さい場合、第2屈折率を第1屈折率よりも低くすれば、必ず第2実効屈折率が第1実効屈折率よりも低くなる。
上記第1の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、活性層は、窒化物系半導体層を含む。このような窒化物系半導体層からなる活性層を含む半導体レーザ素子では、発振波長が短いために高次モードの発生を抑制するためには、リッジ部の幅が小さくなりやすいので、本発明を用いることにより、より有効に、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部の幅を大きくすることができる。
この発明の第2の局面による半導体レーザ素子は、活性層と、活性層上に形成され、第1側面と、第1側面とは反対側に位置する第2側面とを有する凸状のリッジ部を含む半導体層とを備えている。そして、第2側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度は、第1側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度以上の大きさを有しており、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する光閉じ込め度合いは、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する光閉じ込め度合いよりも弱い。
この第2の局面による半導体レーザ素子では、上記のように、リッジ部の第2側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度が、リッジ部の第1側面と活性層の表面とがなすリッジ部の内側の角度以上の大きさを有するように構成するとともに、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する光閉じ込め度合いを、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する光閉じ込め度合いよりも弱くすることによって、リッジ部の第1側面側の光閉じ込め度合いとリッジ部の第2側面側の光閉じ込め度合いとが同じ場合に比べて、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を大きくすることができる。これにより、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部の幅を大きくすることができる。この場合、リッジ部を構成する半導体層と、リッジ部上に形成される電極層との接触面積を増大させることができるので、半導体層と電極層との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。これにより、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
上記第2の局面による半導体レーザ素子において、好ましくは、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する第1実効屈折率は、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高い。このように構成すれば、容易に、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する第2実効屈折率よりも高い発振波長に対する第1実効屈折率を有するリッジ部の第1側面側により、リッジ部の第1側面側の発振波長に対する光閉じ込め度合いを、リッジ部の第2側面側の発振波長に対する光閉じ込め度合いよりも弱くすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の構造を示した断面図であり、図2は、図1に示した第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の活性層の詳細図である。まず、図1および図2を参照して、第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の構造について説明する。なお、第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の発振波長は、約410nmである。
第1実施形態では、図1に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有する酸素がドープされたn型GaN基板1上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層2が形成されている。n型層2上には、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層3が形成されている。このn型クラッド層3の一方の側端面から所定の間隔を隔てた領域は、n型クラッド層3の上面から約100nmの深さまでが除去されている。また、n型GaN基板1、n型層2およびn型クラッド層3の両方の側端面の近傍には、転位の集中している領域17が形成されている。
n型クラッド層3上の転位の集中している領域17以外の領域には、約5nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.16Ga0.84Nからなるn型キャリアブロック層4が形成されている。n型キャリアブロック層4上には、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型光ガイド層5が形成されている。
n型光ガイド層5上には、活性層6が形成されている。この活性層6は、図2に示すように、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.02Ga0.98Nからなる4層の障壁層6aと、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.15Ga0.85Nからなる3層の井戸層6bとが交互に積層された多重量子井戸(MQW)構造を有する。なお、活性層6は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例である。
また、図1に示すように、活性層6上には、約100nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型光ガイド層7が形成されている。p型光ガイド層7上には、約20nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.16Ga0.84Nからなるp型キャップ層8が形成されている。なお、p型光ガイド層7およびp型キャップ層8は、本発明の「半導体層」の一例である。
p型キャップ層8上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.07Ga0.93Nからなるp型クラッド層9が形成されている。このp型クラッド層9の平坦部の厚みは、約80nmである。また、p型クラッド層9の上面から凸部以外の平坦部までの高さは、約320nmであり、凸部の幅は、1.95μmである。p型クラッド層9の凸部上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型In0.02Ga0.98Nからなるp型コンタクト層10が形成されている。このp型コンタクト層10とp型クラッド層9の凸部とによって、一方の側面11aと、一方の側面11aとは反対側に位置する他方の側面11bとを有するリッジ部11が構成されている。また、リッジ部11は、1.95μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成されている。なお、p型クラッド層9およびp型コンタクト層10は、本発明の「半導体層」の一例である。また、側面11aおよび11bは、それぞれ、本発明の「第1側面」および「第2側面」の一例である。
ここで、第1実施形態では、リッジ部11の側面11b近傍の幅約0.2μmにおいて、p型クラッド層9の平坦部の上面から約100nmの深さまでが除去されることにより、p型光ガイド層7の上面が露出されている。すなわち、リッジ部11の側面11bの近傍では、p型クラッド層9の平坦部およびp型キャップ層8が除去されている。これにより、側面11a側には、リッジ部11の下端部から活性層6の上面までの半導体層(p型クラッド層9の平坦部、p型キャップ層8およびp型光ガイド層7)からなる厚みが約200nmの第1平坦部が形成され、側面11b側には、リッジ部11の下端部から活性層6の上面までの半導体層(p型光ガイド層7)からなる厚みが約100nmの第2平坦部が形成される。また、リッジ部11の側面11aと活性層6の上面とがなす角度θ1と、リッジ部11の側面11bと活性層6の上面とがなす角度θ2とは、互いにほぼ同じ大きさ(約90°)を有する。ここで、リッジ部11の側面11aの下端部から活性層6の上面までの厚みを約200nmとすることにより、活性層6で生成される発振波長が約410nmの光に対して、リッジ部11の側面11a側の実効屈折率(第1実効屈折率)は、リッジ部11の下部よりも約0.005だけ低くなる。また、リッジ部11の側面11bの下端部から活性層6の上面までの厚みを約100nmとすることにより、リッジ部11の側面11b側の実効屈折率(第2実効屈折率)は、リッジ部11の下部よりも約0.017だけ低くなる。すなわち、リッジ部11の側面11a側の実効屈折率は、リッジ部11の側面11b側の実効屈折率よりも約0.012だけ高くなる。
また、リッジ部11の側面11b近傍において、p型光ガイド層7の上面が露出された部分の右側には、p型クラッド層9の平坦部と、p型キャップ層8と、p型光ガイド層7とからなる厚みが約200nmの第3平坦部が形成されている。ここで、第3平坦部の厚みは、約200nmであり、第3平坦部の下部において発振波長が約410nmに対する実効屈折率(第3実効屈折率)は、リッジ部11の下部よりも約0.005だけ低くなる。すなわち、第2平坦部の厚み(約100nm)よりも大きい厚み(約200nm)を有する第3平坦部を、第2平坦部のリッジ部11と反対側の領域に設けることにより、第2実効屈折率よりも高い第3実効屈折率を有する領域が、第2実効屈折率を有する領域のリッジ部11と反対側の領域に設けられている。
また、リッジ部11を構成するp型コンタクト層10上には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極12が形成されている。p側オーミック電極12の上面以外の領域上には、約250nmの厚みを有するSiO2膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層13が形成されている。第1実施形態では、このように、リッジ部11の側面11a側と側面11b側とで同じ屈折率を有するSiO2膜からなる電流狭窄層13が形成されている。電流狭窄層13上の所定領域には、p側オーミック電極12の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極14が形成されている。
また、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域17上には、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜15が形成されている。また、n型GaN基板1の裏面上には、絶縁膜15を覆うように、n側電極16が形成されている。このn側電極16は、n型GaN基板1の裏面側から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなる。
図3は、図1に示した第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の水平方向の近視野像(ニアフィールドパターン)である。なお、図3の横軸には、素子の水平方向の位置がとられており、縦軸には、光強度がとられている。また、図3の横軸において、−0.975μm〜0.975μmの間がリッジ部11の幅であり、X=0μm(図3中の破線)の位置がリッジ部11の中心である。また、X<−0.975μmの範囲がリッジ部11の側面11a側(実効屈折率が高い側)であり、X>0.975μmの範囲がリッジ部11の側面11b側(実効屈折率が低い側)である。図3を参照して、第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の光強度のピークは、リッジ部11の側面11a側(実効屈折率が高い側)に位置している。また、X>0.975μmの光強度は、X<−0.975μmの光強度と比較して弱くなっており、実効屈折率が低い側での光閉じ込めの度合いが強いことが分かる。すなわち、活性層6で生成される発振波長が約410nmの光に対して、実効屈折率の高いリッジ部11の側面11a側の光閉じ込め度合いは、実効屈折率の低いリッジ部11bの光閉じ込め度合いよりも弱くなる。
次に、リッジ部の一方の側面側と他方の側面側とで実効屈折率が異なる場合において、発振波長が410nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の寸法を調べた結果について説明する。なお、比較例として、リッジ部の一方の側面側と他方の側面側とで実効屈折率が同じ場合において、発振波長が410nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の寸法も調べた。
図4は、リッジ部の一方の側面側と他方の側面側とで実効屈折率が異なる場合(第1実施形態)において、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の寸法を示したグラフである。図5は、リッジ部の一方の側面側と他方の側面側とで実効屈折率が同じ場合(比較例)において、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の寸法を示したグラフである。なお、図4は、発振波長が410nmの光に対して、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率との差が0.012の場合のグラフであり、第1実施形態のGaN系半導体レーザ素子の構成に対応する。また、図5は、第1実施形態のGaN系半導体レーザ素子の構成において、リッジ部の一方の側面の下端部から活性層までの半導体層の厚みと、リッジ部の他方の側面の下端部から活性層までの半導体層の厚みとが同じ場合のグラフである。すなわち、図5は、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じ場合のグラフである。また、図4および図5中の領域F1、F2、F3およびF4は、それぞれ、カットオフ領域、0次モードのみ存在する領域、1次モードまで存在する領域および2次モードまで存在する領域である。また、図5中の領域F5およびF6は、3次モードまで存在する領域および4次モードまで存在する領域である。ここで、高次モードとは、1次以上のモードである。また、図4および図5の横軸には、リッジ部の幅の寸法がとられており、縦軸には、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差がとられている。ただし、図4のリッジ部の側面側とは、実効屈折率が高い側である。
まず、図4を参照して、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率との差が0.012の場合において、リッジ部の下部と、実効屈折率の高い側のリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.005であれば、リッジ部の幅が1.95μm以下の場合、0次モードのみの水平横モード(F2領域)が存在することが判明した(図4中の○)。この場合、リッジ部の下部と、実効屈折率の低い側のリッジ部の側面側との実効屈折率の差は、0.017である。上記した第1実施形態では、リッジ部11の側面11a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部11の下部の実効屈折率よりも0.005だけ低く、かつ、リッジ部11の幅が1.95μmであるので、0次モードのみの水平横モードが存在する。
その一方、図5を参照して、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じ場合(比較例)において、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.005であり、リッジ部の幅が1.95μmであれば、1次モード(F3領域)までの水平横モードが存在することが判明した(図5中の△)。この場合、0次モード(F2領域)のみの水平横モードが存在するためには、リッジ部の幅を1.64μm以下にする必要がある。また、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.017であり、リッジ部の幅が1.95μmであれば、2次モード(F4領域)までの水平横モードが存在することが判明した(図5中の□)。この場合、0次モード(F2領域)のみの水平横モードが存在するためには、リッジ部の幅を0.79μm以下にする必要がある。
次に、リッジ部11の側面11a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部11の下部の実効屈折率よりも0.005だけ低く、かつ、リッジ部11の幅が1.95μmである第1実施形態のGaN系半導体レーザ素子のビームの水平広がり角を調べたところ、ビームの水平広がり角は、約8.8°であった。その一方、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであるGaN系半導体レーザ素子(比較例)において、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.005の場合、ビームの水平広がり角は、約7.7°であった。これにより、第1実施形態では、高次水平横モードの発生を抑制しながら、ビームの水平広がり角を大きくすることができる。
第1実施形態では、上記のように、リッジ部11の側面11aと活性層6の上面とがなす角度θ1と、リッジ部11の側面11bと活性層6の上面とがなす角度θ2とを同じ大きさにした状態で、リッジ部11の側面11aの下端部から活性層6の上面までの厚み(約200nm)をリッジ部11の側面11bの下端部から活性層6の上面までの厚み(約100nm)よりも大きくすることにより、リッジ部11の側面11a側の発振波長(約410nm)に対する実効屈折率を、リッジ部11の側面11b側の発振波長(約410nm)に対する実効屈折率よりも約0.012だけ高くすることによって、リッジ部11の側面11a側の実効屈折率とリッジ部11の側面11b側の実効屈折率とが同じ場合に比べて、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部11の幅の上限寸法を大きくすることができる。これにより、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部11の幅を大きくすることができる。この場合、リッジ部11を構成するp型コンタクト層10と、リッジ部11上に形成されるp側オーミック電極12との接触面積を増大させることができるので、p型コンタクト層10とp側オーミック電極12との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。これにより、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
図6〜図18は、図1に示した第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図1、図2および図6〜図18を参照して、第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図6に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて、両方の側端面近傍に転位の集中している領域17を有するn型GaN基板1上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層2を成長させる。この後、n型層2上に、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.07Ga0.93Nからなるn型クラッド層3を成長させる。
続いて、n型クラッド層3上に、約5nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.16Ga0.84Nからなるn型キャリアブロック層4を成長させる。この後、n型キャリアブロック層4上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型光ガイド層5を成長させる。次に、n型光ガイド層5上に、活性層6を成長させる。具体的には、図2に示したように、n型光ガイド層5(図6参照)上に、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.02Ga0.98Nからなる4層の障壁層6aと、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.15Ga0.85Nからなる3層の井戸層6bとを交互に成長させる。これにより、MQW構造を有する活性層6が形成される。
次に、図6に示すように、活性層6上に、約100nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型光ガイド層7を成長させる。この後、p型光ガイド層7上に、約20nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.16Ga0.84Nからなるp型キャップ層8を成長させる。続いて、p型キャップ層8上に、約400nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.07Ga0.93Nからなるp型クラッド層9を成長させる。この後、p型クラッド層9上に、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型In0.02Ga0.98Nからなるp型コンタクト層10を成長させる。
上記のようにn型GaN基板1上に窒化物系半導体各層(2〜10)を成長させる際、n型GaN基板1の転位が伝播する。これにより、転位の集中している領域17が、p型コンタクト層10の上面にまで延びるように形成される。
この後、窒素ガス雰囲気中で、約800℃の温度条件下でアニール処理する。
次に、図7に示すように、電子ビーム蒸着法を用いて、p型コンタクト層10上に、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極12を形成する。この後、p側オーミック電極12上に、約250nmの厚みを有するSiO2膜21を形成する。
次に、図8に示すように、p側オーミック電極12およびSiO2膜21をパターニングすることによって、p側オーミック電極12およびSiO2膜21を、1.95μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成する。
次に、図9に示すように、Cl2系ガスによるドライエッチング技術を用いて、SiO2膜21をマスクとして、p型コンタクト層10の上面からp型クラッド層9の途中の深さ(p型クラッド層9の上面から約320nmの深さ)までをエッチングする。この際、基板温度を約200℃に保持する。これにより、p型コンタクト層10とp型クラッド層9の凸部とによって構成されるとともに、1.95μmの幅を有するストライプ状(細長状)のリッジ部11が形成される。
次に、図10に示すように、p型クラッド層9の平坦部上の転位の集中している領域17以外の所定領域に、SiO2膜21、p側オーミック電極12およびリッジ部11を覆うように、レジスト22を形成する。この後、レジスト22をマスクとして、p型クラッド層9の平坦部の上面からn型キャリアブロック層4までをエッチングする。これにより、図11に示すように、p型クラッド層9、p型キャップ層8、p型光ガイド層7、活性層6、n型光ガイド層5およびn型キャリアブロック層4に形成された転位の集中している領域17が除去される。この後、レジスト22を除去する。
次に、図12に示すように、真空蒸着法を用いて、斜め上方向(n型GaN基板1の上面に対して約60°傾いた方向)からリッジ部11の側面11a側に向かってSiO2を蒸着する。この場合、リッジ部11の側面11b側の領域には、リッジ部11、p側オーミック電極12およびSiO2膜21により陰となる領域が存在する。そして、そのリッジ部11の側面11b側の陰となる領域には、SiO2が堆積されない。このようにして、リッジ部11の側面11b側の陰となる領域以外の領域上にのみ、約250nmの厚みを有するSiO2膜23を形成する。
次に、図13に示すように、Cl2系ガスによるドライエッチング技術を用いて、SiO2膜23をマスクとして、p型クラッド層9の平坦部の上面から約100nmの深さまでをエッチングすることによって、p型光ガイド層7の上面を露出させる。これにより、リッジ部11の側面11aの下端部から活性層6の上面までの半導体層(p型クラッド層9の平坦部、p型キャップ層8およびp型光ガイド層7)の厚み(約200nm)に対して、リッジ部11の側面11bの下端部から活性層6の上面までの半導体層(p型光ガイド層7)の厚み(約100nm)を小さくする。この際、n型クラッド層3の上面から約100nmの深さまでが同時にエッチングされる。この後、SiO2膜21および23を除去することによって、図14に示す状態にする。
次に、図15に示すように、プラズマCVD法を用いて、リッジ部11の両方の側面11aおよび11bを含む全面を覆うように、約250nmの厚みを有するSiO2膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層13を形成する。この後、電流狭窄層13上のリッジ部11に対応する領域以外の領域に、レジスト24を形成する。次に、レジスト24をマスクとして、p側オーミック電極12の上面上に位置する電流狭窄層13をエッチングすることによって、図16に示す状態にする。この後、レジスト24を除去する。
次に、図17に示すように、真空蒸着法を用いて、電流狭窄層13上の所定領域に、p側オーミック電極12の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極14を形成する。
次に、図18に示すように、プラズマCVD法を用いて、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域17上に、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜15を形成する。
最後に、図1に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上に、絶縁膜15を覆うように、n側電極16を形成する。この際、n型GaN基板1の裏面側から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層と形成する。このようにして、第1実施形態によるGaN系半導体レーザ素子が形成される。
第1実施形態の製造プロセスでは、上記のように、斜め上方向(n型GaN基板1の上面に対して約60°傾いた方向)からリッジ部11の側面11a側に向かってSiO2を蒸着することによって、リッジ部11の側面11b側の陰となる領域以外の領域上にのみ、SiO2膜23が形成される。ここで、リッジ部11の側面11b側において、リッジ部11近傍に位置するp型クラッド層9の平坦部が陰となるので、その陰となるリッジ部11近傍に位置するp型クラッド層9の平坦部上にはSiO2膜23が形成されない。これにより、SiO2膜23をエッチングマスクとして用いれば、容易に、リッジ部11近傍に位置するp型クラッド層9の平坦部をエッチングすることができる。その結果、リッジ部11近傍に位置するp型クラッド層9の平坦部をエッチングするために、マスク合わせをする必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
(第2実施形態)
図19は、本発明の第2実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図19を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、半導体層により形成される電流狭窄層を用いるとともに、リッジ部の一方の側面側に形成する電流狭窄層(半導体層)の屈折率を、リッジ部の他方の側面側に形成する電流狭窄層(半導体層)の屈折率よりも高くすることによって、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率を、リッジ部の他方の側面側の実効屈折率よりも高くする場合について説明する。なお、第2実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の発振波長は、約800nmである。
この第2実施形態では、図19に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、約1×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaAs基板31の(001)面上に、約100nmの厚みを有するとともに、約3×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaAsからなるn型層32が形成されている。n型層32上には、約1.5μmの厚みを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.45Ga0.55Asからなるn型クラッド層33が形成されている。n型クラッド層33上には、約30nmの厚みを有するアンドープAl0.35Ga0.65Asからなる光ガイド層34が形成されている。光ガイド層34上には、活性層35が形成されている。この活性層35は、約5nmの厚みを有するアンドープAl0.1Ga0.9Asからなる3層の井戸層35aと、約5nmの厚みを有するアンドープAl0.35Ga0.65Asからなる2層の障壁層35bとが交互に積層されたMQW構造を有する。活性層35上には、約30nmの厚みを有するアンドープAl0.35Ga0.65Asからなる光ガイド層36が形成されている。なお、光ガイド層36は、本発明の「半導体層」の一例である。
光ガイド層36上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型Al0.45Ga0.55Asからなるp型クラッド層37が形成されている。このp型クラッド層37の平坦部の厚みは、約150nmである。また、p型クラッド層37の上面から凸部以外の平坦部までの高さは、約1.35μmであり、凸部の下端部の幅は、3.4μmである。p型クラッド層37の凸部上には、約200nmの厚みを有するとともに、約2×1018cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型GaAsからなるp型コンタクト層38が形成されている。このp型コンタクト層38とp型クラッド層37の凸部とによって、一方の側面39aと、一方の側面39aとは反対側に位置する他方の側面39bとを有するリッジ部39が構成されている。また、リッジ部39は、下端部が3.4μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成されている。なお、p型クラッド層37およびp型コンタクト層38は、本発明の「半導体層」の一例である。また、側面39aおよび39bは、それぞれ、本発明の「第1側面」および「第2側面」の一例である。
ここで、第2実施形態では、リッジ部39の側面39a側に位置するp型クラッド層37の平坦部上に、リッジ部39の側面39aを覆うように、p型クラッド層37の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.5Ga0.5Asからなる電流狭窄層40aが形成されている。この電流狭窄層40aの構成材料であるn型Al0.5Ga0.5Asは、約3.27の屈折率を有する。また、リッジ部39の側面39b側に位置するp型クラッド層37の平坦部上には、リッジ部39の側面39bを覆うように、p型クラッド層37の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.7Ga0.3Asからなる電流狭窄層40bが形成されている。この電流狭窄層40bの構成材料であるn型Al0.7Ga0.3Asは、電流狭窄層40aの構成材料であるn型Al0.5Ga0.5Asの屈折率(約3.27)よりも小さい約3.17の屈折率を有する。また、電流狭窄層40aおよび40bの構成材料であるn型Al0.5Ga0.5Asおよびn型Al0.7Ga0.3Asは、活性層35で生成される光のエネルギよりも大きいバンドギャップを有しており、活性層35で生成される光を吸収しない。なお、電流狭窄層40aおよび40bは、それぞれ、本発明の「第1電流狭窄層」および「第2電流狭窄層」の一例である。また、リッジ部39の側面39aと活性層35の上面とがなす角度θ3と、リッジ部39の側面39bと活性層35の上面とがなす角度θ4とは、互いに同じ大きさを有する。このように、リッジ部39の側面39aと活性層35の上面とがなす角度θ3と、リッジ部39の側面39bと活性層35の上面とがなす角度θ4とを同じ大きさにした状態で、リッジ部39の側面39a側の電流狭窄層40aの屈折率(約3.27)をリッジ部39の側面39b側の電流狭窄層40bの屈折率(約3.17)よりも大きくすることにより、活性層35で生成される発振波長が約800nmの光に対して、リッジ部39の側面39a側の実効屈折率は、リッジ部39の下部の実効屈折率よりも約0.004だけ低くなる。また、リッジ部39の側面39b側の実効屈折率は、リッジ部39の下部の実効屈折率よりも約0.009だけ低くなる。すなわち、リッジ部39の側面39a側の実効屈折率は、リッジ部39の側面39b側の実効屈折率よりも約0.005だけ高くなる。また、活性層35で生成される発振波長が約800nmの光に対して、実効屈折率の高いリッジ部39の側面39a側の光閉じ込め度合いは、実効屈折率の低いリッジ部39の側面39b側の光閉じ込め度合いよりも弱くなる。
また、電流狭窄層40aおよび40b上には、約100nmの厚みを有するアンドープGaAsからなるキャップ層41が形成されている。キャップ層41上のリッジ部39に対応する領域には、p型コンタクト層38の上面に接触するように、下層から上層に向かって、Cr層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するp側電極42が形成されている。
また、n型GaAs基板31の裏面上には、n型GaAs基板31の裏面側から順に、AuGe層と、Ni層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するn側電極43が形成されている。
次に、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率との差が0.005であり、リッジ部の下部と、実効屈折率の高い側のリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.004である場合において、発振波長が800nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を調べた。その結果、リッジ部の幅が3.4μm以下であれば、0次モードのみの水平横モードが存在することが判明した。ここで、第2実施形態では、リッジ部39の側面39a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部39の下部の実効屈折率よりも0.004だけ低く、かつ、リッジ部39の下端部の幅が3.4μmであるので、0次モードのみの水平横モードが存在する。
また、比較例として、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであり、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.004である場合において、発振波長が800nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を調べた。その結果、比較例において、0次モードのみの水平横モードが存在するためには、リッジ部の幅を3.0μm以下にする必要があった。
次に、リッジ部39の側面39a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部39の下部の実効屈折率よりも0.004だけ低く、かつ、リッジ部39の幅が3.4μmである第2実施形態のAlGaAs系半導体レーザ素子のビームの水平広がり角を調べたところ、ビームの水平広がり角は、約9.2°であった。その一方、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであるAlGaAs系半導体レーザ素子(比較例)において、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.004であるとともに、リッジ部の幅が3.0μmである場合、ビームの水平広がり角は、約9.0°であった。これにより、第2実施形態では、高次水平横モードの発生を抑制しながら、ビームの水平広がり角を大きくすることができる。
第2実施形態では、上記のように、リッジ部39の側面39aと活性層35の上面とがなす角度θ3と、リッジ部39の側面39bと活性層35の上面とがなす角度θ4とを同じ大きさにした状態で、リッジ部39の側面39a側の電流狭窄層40aの屈折率(約3.27(n型Al0.5Ga0.5As))をリッジ部39の側面39b側の電流狭窄層40bの屈折率(約3.17(n型Al0.7Ga0.3As))よりも大きくすることにより、リッジ部39の側面39a側の発振波長(約800nm)に対する実効屈折率を、リッジ部39の側面39b側の発振波長(約800nm)に対する実効屈折率よりも約0.005だけ高くすることによって、リッジ部39の側面39a側の実効屈折率とリッジ部39の側面39b側の実効屈折率とが同じ場合に比べて、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部39の幅の上限寸法を大きくすることができる。これにより、上記第1実施形態と同様、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部39の幅を大きくすることができる。この場合、リッジ部39を構成するp型コンタクト層39と、リッジ部39上に形成されるp側オーミック電極42との接触面積を増大させることができるので、p型コンタクト層38とp側オーミック電極42との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。これにより、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
図20〜図26は、図19に示した第2実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図19〜図26を参照して、第2実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図20に示すように、MOCVD法を用いて、n型GaAs基板31の(001)面上に、約3×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaAsからなるn型層32を成長させる。この後、n型層32上に、約1.5μmの厚みを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.45Ga0.55Asからなるn型クラッド層33を成長させる。続いて、n型クラッド層33上に、約30nmの厚みを有するアンドープAl0.35Ga0.65Asからなる光ガイド層34を成長させる。次に、光ガイド層34上に、活性層35を成長させる。具体的には、光ガイド層34上に、約5nmの厚みを有するアンドープAl0.1Ga0.9Asからなる3層の井戸層35aと、約5nmの厚みを有するアンドープAl0.35Ga0.65Asからなる2層の障壁層35bとを交互に成長させる。これにより、MQW構造を有する活性層35が形成される。
次に、活性層35上に、約30nmの厚みを有するアンドープAl0.35Ga0.65Asからなる光ガイド層36を成長させる。この後、光ガイド層36上に、約1.5μmの厚みを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型Al0.45Ga0.55Asからなるp型クラッド層37を成長させる。続いて、p型クラッド層37上に、約200nmの厚みを有するとともに、約2×1018cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型GaAsからなるp型コンタクト層38を成長させる。この後、プラズマCVD法を用いて、p型コンタクト層38上のリッジ部39(図19参照)に対応する領域に、約250nmの厚みを有するSiN膜51を形成する。
次に、図21に示すように、SiN膜51をマスクとして、p型コンタクト層38の上面からp型クラッド層37の途中の深さ(p型クラッド層37の上面から約1.35μmの深さ)までをエッチングする。これにより、p型コンタクト層38とp型クラッド層37の凸部とによって構成されるとともに、下端部が3.4μmの幅を有するストライプ状(細長状)のリッジ部39が形成される。
次に、図22に示すように、プラズマCVD法を用いて、リッジ部39の側面39bと、リッジ部39の側面39b側に位置するp型クラッド層37の平坦部と、SiN膜51の上面の一部および側面とを覆うように、約500nmの厚みを有するSiO2膜52を形成する。
次に、図23に示すように、MOCVD法を用いて、SiO2膜52およびSiN膜51を選択成長マスクとして、リッジ部39の側面39a側に位置するp型クラッド層37の平坦部上に、リッジ部39の側面39aを覆うように、p型クラッド層37の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされた約3.27の屈折率を有するn型Al0.5Ga0.5Asからなる電流狭窄層40aを成長させる。続いて、電流狭窄層40a上に、約100nmの厚みを有するアンドープGaAsからなるキャップ層41を成長させる。この後、SiO2膜52を除去する。
次に、図24に示すように、プラズマCVD法を用いて、キャップ層41と、SiN膜51の上面の一部および側面とを覆うように、約500nmの厚みを有するSiO2膜53を形成する。
次に、図25に示すように、SiO2膜53およびSiN膜51を選択成長マスクとして、リッジ部39の側面39b側に位置するp型クラッド層37の平坦部上に、リッジ部39の側面39bを覆うように、p型クラッド層37の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされた約3.17の屈折率を有するn型Al0.7Ga0.3Asからなる電流狭窄層40bを成長させる。続いて、電流狭窄層40b上に、約100nmの厚みを有するアンドープGaAsからなるキャップ層41を成長させる。この後、SiO2膜53を除去する。
次に、図26に示すように、真空蒸着法を用いて、キャップ層41上のリッジ部39に対応する領域に、p型コンタクト層38の上面に接触するように、下層から上層に向かって、Cr層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するp側電極42を形成する。
最後に、図19に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaAs基板31の裏面上に、n型GaAs基板31の裏面側から順に、AuGe層と、Ni層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するn側電極43を形成する。このようにして、第2実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子が形成される。
(第3実施形態)
図27は、本発明の第3実施形態によるAlGaInP系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図27を参照して、この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と異なり、リッジ部の一方の側面側および他方の側面側に、それぞれ、互いに異なる屈折率および吸収係数を有する電流狭窄層を設けるとともに、その電流狭窄層の屈折率および吸収係数を調節することによって、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率を、リッジ部の他方の側面側の実効屈折率よりも高くする場合について説明する。なお、第3実施形態によるAlGaInP系半導体レーザ素子の発振波長は、約660nmである。
この第3実施形態では、図27に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、(001)面に対して約7°傾斜したn型GaAs基板61の上面上に、約3×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaAsからなるn型層62が形成されている。なお、n型GaAs基板61は、Siがドープされているとともに、約1×1018cm−3のキャリア濃度を有する。n型層62上には、約400nmの厚みを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるn型クラッド層63が形成されている。n型クラッド層63上には、約30nmの厚みを有するアンドープ(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる光ガイド層64が形成されている。光ガイド層64上には、活性層65が形成されている。この活性層65は、約5nmの厚みを有するアンドープGa0.5In0.5Pからなる3層の井戸層65aと、約5nmの厚みを有するアンドープ(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる2層の障壁層65bとが交互に積層されたMQW構造を有する。活性層65上には、約30nmの厚みを有するアンドープ(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる光ガイド層66が形成されている。なお、光ガイド層66は、本発明の「半導体層」の一例である。
光ガイド層66上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるp型クラッド層67が形成されている。このp型クラッド層67の平坦部の厚みは、約150nmである。また、p型クラッド層67の上面から凸部以外の平坦部までの高さは、1.35μmであり、凸部の下端部の幅は、3.5μmである。p型クラッド層67の凸部上には、約200nmの厚みを有するとともに、約2×1018cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型Ga0.5In0.5Pからなるp型コンタクト層68が形成されている。このp型コンタクト層68とp型クラッド層67の凸部とによって、一方の側面69aと、一方の側面69aとは反対側に位置する他方の側面69bとを有するリッジ部69が構成されている。また、リッジ部69は、下端部が3.5μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成されている。なお、p型クラッド層67およびp型コンタクト層68は、本発明の「半導体層」の一例である。また、側面69aおよび69bは、それぞれ、本発明の「第1側面」および「第2側面」の一例である。
ここで、第3実施形態では、リッジ部69の側面69a側に位置するp型クラッド層67の平坦部上に、リッジ部69の側面69aを覆うように、p型クラッド層67の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5Pからなる電流狭窄層70aが形成されている。この電流狭窄層70aの構成材料であるn型(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5Pは、約3.75の屈折率を有するとともに、活性層65で生成される発振波長が約660nmの光に対して約4×104cm−1の吸収係数を有する。また、リッジ部69の側面69b側に位置するp型クラッド層67の平坦部上には、リッジ部69の側面69bを覆うように、p型クラッド層67の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaAsからなる電流狭窄層70bが形成されている。この電流狭窄層70bの構成材料であるn型GaAsは、約3.22の屈折率を有するとともに、活性層65で生成される発振波長が約660nmの光を吸収しない(光の吸収係数は0)。なお、電流狭窄層70aおよび70bは、それぞれ、本発明の「第1電流狭窄層」および「第2電流狭窄層」の一例である。また、リッジ部69の側面69aと活性層65の上面とがなすリッジ部69の内側の角度θ5(約46°)は、リッジ部69の側面69bと活性層65の上面とがなすリッジ部69の内側の角度θ6(約64°)よりも小さい。このように、リッジ部69の側面69aと活性層65の上面とがなす角度θ5(約46°)を、リッジ部69の側面69bと活性層65の上面とがなす角度θ6(約64°)よりも小さくした状態で、リッジ部69の側面69a側の電流狭窄層70aの屈折率(約3.75)をリッジ部69の側面69b側の電流狭窄層70bの屈折率(約3.22)よりも大きくするとともに、リッジ部69の側面69a側の電流狭窄層70aの吸収係数(約4×104cm−1)をリッジ部69の側面69b側の電流狭窄層70bの吸収係数(0)よりも大きくすることにより、活性層65で生成される発振波長が約660nmの光に対して、リッジ部69の側面69a側の実効屈折率は、リッジ部69の下部の実効屈折率よりも約0.003だけ低くなる。また、リッジ部69の側面69b側の実効屈折率は、リッジ部69の下部の実効屈折率よりも約0.014だけ低くなる。すなわち、リッジ部69の側面69a側の実効屈折率は、リッジ部69の側面69b側の実効屈折率よりも約0.011だけ高くなる。また、活性層65で生成される発振波長が約660nmの光に対して、実効屈折率の高いリッジ部69の側面69a側の光閉じ込め度合いは、実効屈折率の低いリッジ部69の側面69b側の光閉じ込め度合いよりも弱くなる。
また、電流狭窄層70aおよび70b上には、p型コンタクト層68の上面に接触するように、約3μmの厚みを有するとともに、約3×1019cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型GaAsからなるp型コンタクト層71が形成されている。p型コンタクト層71上には、下層から上層に向かって、Cr層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するp側電極72が形成されている。
また、n型GaAs基板61の裏面上には、n型GaAs基板61の裏面側から順に、AuGe層と、Ni層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するn側電極73が形成されている。
次に、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率との差が0.011であり、リッジ部の下部と、実効屈折率の高い側のリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.003である場合において、発振波長が660nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を調べた。その結果、リッジ部の幅が3.5μm以下であれば、0次モードのみの水平横モードが存在することが判明した。ここで、第3実施形態では、リッジ部69の側面69a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部69の下部の実効屈折率よりも0.003だけ低く、かつ、リッジ部69の下端部の幅が3.5μmであるので、0次モードのみの水平横モードが存在する。
また、比較例として、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであり、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.014である場合において、発振波長が660nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を調べた。その結果、比較例において、0次モードのみの水平横モードが存在するためには、リッジ部の幅を3.0μm以下にする必要があった。
次に、リッジ部69の側面69a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部69の下部の実効屈折率よりも0.003だけ低く、かつ、リッジ部69の幅が3.5μmである第3実施形態のAlGaAs系半導体レーザ素子のビームの水平広がり角を調べたところ、ビームの水平広がり角は、約8.2°であった。その一方、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであるAlGaAs系半導体レーザ素子(比較例)において、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.014であるとともに、リッジ部の幅が3.0μmである場合、ビームの水平広がり角は、約7.5°であった。これにより、第3実施形態では、高次水平横モードの発生を抑制しながら、ビームの水平広がり角を大きくすることができる。
第3実施形態では、上記のように、リッジ部69の側面69aと活性層65の上面とがなす角度θ5(約46°)を、リッジ部69の側面69bと活性層65の上面とがなす角度θ6(約64°)よりも小さくした状態で、リッジ部69の側面69a側の電流狭窄層70aの屈折率(約3.75(n型(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5P))をリッジ部69の側面69b側の電流狭窄層70bの屈折率(約3.22(n型GaAs))よりも大きくするとともに、リッジ部69の側面69a側の電流狭窄層70aの吸収係数(約4×104cm−1)をリッジ部69の側面69b側の電流狭窄層70bの吸収係数(0)よりも大きくすることにより、リッジ部69の側面69a側の発振波長(約660nm)に対する実効屈折率を、リッジ部69の側面69b側の発振波長(約660nm)に対する実効屈折率よりも約0.011だけ高くすることによって、リッジ部69の側面69a側の実効屈折率とリッジ部69の側面69b側の実効屈折率とが同じ場合に比べて、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部69の幅の上限寸法を大きくすることができる。これにより、上記第1実施形態と同様、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部69の幅を大きくすることができる。この場合、リッジ部69を構成するp型コンタクト層68と、リッジ部69上に形成されるp型コンタクト層71との接触面積を増大させることができるので、p型コンタクト層68とp型コンタクト層71との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。これにより、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
図28〜図34は、図27に示した第3実施形態によるAlGaInP系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図27〜図34を参照して、第3実施形態によるAlGaInP系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図28に示すように、MOCVD法を用いて、(001)面に対して約7°傾斜したn型GaAs基板61の上面上に、約3×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaAsからなるn型層62を成長させる。この後、n型層62上に、約400nmの厚みを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるn型クラッド層63を成長させる。続いて、n型クラッド層63上に、約30nmの厚みを有するアンドープ(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる光ガイド層64を成長させる。次に、光ガイド層64上に、活性層65を成長させる。具体的には、光ガイド層64上に、約5nmの厚みを有するアンドープGa0.5In0.5Pからなる3層の井戸層65aと、約5nmの厚みを有するアンドープ(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる2層の障壁層65bとを交互に成長させる。これにより、MQW構造を有する活性層65が形成される。
次に、活性層65上に、約30nmの厚みを有するアンドープ(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる光ガイド層66を成長させる。この後、光ガイド層66上に、約1.5μmの厚みを有するとともに、約3×1017cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなるp型クラッド層67を成長させる。続いて、p型クラッド層67上に、約200nmの厚みを有するとともに、約2×1018cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型Ga0.5In0.5Pからなるp型コンタクト層68を成長させる。この後、プラズマCVD法を用いて、p型コンタクト層68上のリッジ部69(図27参照)に対応する領域に、約250nmの厚みを有するSiN膜81を形成する。
次に、図29に示すように、SiN膜81をマスクとして、p型コンタクト層68の上面からp型クラッド層67の途中の深さ(p型クラッド層67の上面から約1.35μmの深さ)までをエッチングする。この際、p型クラッド層67およびp型コンタクト層68が、(001)面に対して約7°傾斜したn型GaAs基板61の上面上に形成されているので、エッチングにより形成されたp型クラッド層67およびp型コンタクト層68の側面が所定の角度傾斜する。これにより、p型コンタクト層68とp型クラッド層67の凸部とによって構成されるとともに、下端部が3.5μmの幅を有するストライプ状(細長状)のリッジ部69が形成される。また、リッジ部69の側面69aと活性層65の上面とがなすリッジ部69の内側の角度θ5は、約46°になるとともに、リッジ部69の側面69bと活性層65の上面とがなすリッジ部69の内側の角度θ6は、約64°になる。
次に、図30に示すように、プラズマCVD法を用いて、リッジ部69の側面69bと、リッジ部69の側面69b側に位置するp型クラッド層67の平坦部と、SiN膜81の上面の一部および側面とを覆うように、約500nmの厚みを有するSiO2膜82を形成する。
次に、図31に示すように、MOCVD法を用いて、SiO2膜82およびSiN膜81を選択成長マスクとして、リッジ部69の側面69a側に位置するp型クラッド層67の平坦部上に、リッジ部69の側面69aを覆うように、p型クラッド層67の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされた約3.75の屈折率を有するn型(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5Pからなる電流狭窄層70aを成長させる。この後、SiO2膜82を除去する。
次に、図32に示すように、プラズマCVD法を用いて、電流狭窄層70aと、SiN膜81の上面の一部および側面とを覆うように、約500nmの厚みを有するSiO2膜83を形成する。
次に、図33に示すように、SiO2膜83およびSiN膜81を選択成長マスクとして、リッジ部69の側面69b側に位置するp型クラッド層67の平坦部上に、リッジ部69の側面69bを覆うように、p型クラッド層67の平坦部上の部分が約700nmの厚みを有するとともに、約8×1017cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされた約3.22の屈折率を有するn型GaAsからなる電流狭窄層70bを成長させる。この後、SiO2膜83およびSiN膜81を除去する。
次に、図34に示すように、MOCVD法を用いて、電流狭窄層70aおよび70b上に、p型コンタクト層68の上面に接触するように、約3μmの厚みを有するとともに、約3×1019cm−3のキャリア濃度を有するZnがドープされたp型GaAsからなるp型コンタクト層71を成長させる。この後、真空蒸着法を用いて、p型コンタクト層71上に、下層から上層に向かって、Cr層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するp側電極72を形成する。
最後に、図27に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaAs基板61の裏面上に、n型GaAs基板61の裏面側から順に、AuGe層と、Ni層と、Au層とからなるとともに、約300nmの厚みを有するn側電極73を形成する。このようにして、第3実施形態によるAlGaInP系半導体レーザ素子が形成される。
(第4実施形態)
図35は、本発明の第4実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図35を参照して、この第4実施形態では、上記第1実施形態の構成において、リッジ部の側面を所定の角度傾斜させる場合について説明する。
この第4実施形態では、図35に示すように、n型GaN基板91上に、n型層92およびn型クラッド層93が順次形成されている。また、n型クラッド層93の一方の側端面から所定の間隔を隔てた領域は、n型クラッド層93の上面から約100nmの深さまでが除去されている。このn型クラッド層93の除去された領域の一方の側面93aおよび他方の側面93bは、それぞれ、後述するリッジ部101の一方の側面101aおよび他方の側面101bの傾斜角度と同じ角度だけ傾斜している。また、n型GaN基板91、n型層92およびn型クラッド層93の両方の側端面の近傍には、転位の集中している領域107が形成されている。なお、n型GaN基板91、n型層92およびn型クラッド層93は、それぞれ、上記第1実施形態のn型GaN基板1、n型層2およびn型クラッド層3と同様の組成および厚みを有する。
n型クラッド層93上の転位の集中している領域107以外の領域には、n型キャリアブロック層94、n型光ガイド層95、活性層96、p型光ガイド層97およびp型キャップ層98が順次形成されている。また、後述するリッジ部101の他方の側面101b側に位置する上記各層(94〜98)の側面は、側面101bの傾斜角度と同じ角度だけ傾斜している。なお、n型キャリアブロック層94、n型光ガイド層95、活性層96、p型光ガイド層97およびp型キャップ層98は、それぞれ、上記第1実施形態のn型キャリアブロック層4、n型光ガイド層5、活性層6、p型光ガイド層7およびp型キャップ層8と同様の厚みおよび組成を有する。なお、活性層96は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例であり、p型光ガイド層97およびp型キャップ層98は、本発明の「半導体層」の一例である。
p型キャップ層98上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するp型クラッド層99が形成されている。また、後述するリッジ部101の他方の側面101b側に位置するp型クラッド層99の側面は、側面101bの傾斜角度と同じ角度だけ傾斜している。p型クラッド層99の凸部上には、p型コンタクト層100が形成されている。このp型コンタクト層100とp型クラッド層99の凸部とによって、一方の側面101aと、一方の側面101aとは反対側に位置する他方の側面101bとを有するリッジ部101が構成されている。なお、p型クラッド層99およびp型コンタクト層100は、上記第1実施形態のp型クラッド層9およびp型コンタクト層10と同様の組成および厚みを有する。また、リッジ部101は、約1.9μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成されている。なお、p型クラッド層99およびp型コンタクト層100は、本発明の「半導体層」の一例である。また、側面101aおよび101bは、本発明の「第1側面」および「第2側面」の一例である。
ここで、第4実施形態では、リッジ部101の側面101b近傍の幅約0.3μmにおいて、p型クラッド層99の平坦部の上面から約100nmの深さまでが除去されることにより、p型光ガイド層97の上面が露出されている。すなわち、リッジ部101の側面101bの近傍では、p型クラッド層99の平坦部およびp型キャップ層98が除去されている。これにより、側面101a側には、リッジ部101の下端部から活性層96の上面までの半導体層(p型クラッド層99の平坦部、p型キャップ層98およびp型光ガイド層97)からなる厚みが約200nmの第1平坦部が形成され、側面101b側には、リッジ部101の下端部から活性層96の上面までの半導体層(p型光ガイド層97)からなる厚みが約100nmの第2平坦部が形成される。また、第4実施形態では、リッジ部101の側面101aと活性層96の上面とがなすリッジ部101の内側の角度θ7(約75°)は、リッジ部101の側面101bと活性層96の上面とがなすリッジ部101の内側の角度θ8(約105°)よりも小さい。ここで、リッジ部101の側面101aの下端部から活性層96の上面までの厚みを約200nmとすることにより、活性層96で生成される発振波長が約410nmの光に対して、リッジ部101の側面101a側の実効屈折率(第1実効屈折率)は、リッジ部101の下部よりも約0.005だけ低くなる。また、リッジ部101の側面101bの下端部から活性層96の上面までの厚みを約100nmとすることにより、リッジ部101の側面101b側の実効屈折率(第2実効屈折率)は、リッジ部101の下部よりも約0.017だけ低くなる。すなわち、リッジ部101の側面101a側の実効屈折率は、リッジ部101の側面101b側の実効屈折率よりも約0.012だけ高くなる。また、活性層96で生成される発振波長が約410nmの光に対して、実効屈折率の高いリッジ部101の側面101a側の光閉じ込め度合いは、実効屈折率の低いリッジ部101の側面101b側の光閉じ込め度合いよりも弱くなる。
また、リッジ部101の側面101b近傍において、p型光ガイド層97の上面が露出された部分の右側には、p型クラッド層99の平坦部と、p型キャップ層98と、p型光ガイド層97とからなる厚みが約200nmの第3平坦部が形成されている。ここで、第3平坦部の厚みは、約200nmであり、第3平坦部の下部において発振波長が約410nmに対する実効屈折率(第3実効屈折率)は、リッジ部101の下部よりも約0.005だけ低くなる。すなわち、第2平坦部の厚み(約100nm)よりも大きい厚み(約200nm)を有する第3平坦部を、第2平坦部のリッジ部101と反対側の領域に設けることにより、第2実効屈折率よりも高い第3実効屈折率を有する領域が、第2実効屈折率を有する領域のリッジ部101と反対側の領域に設けられている。
また、リッジ部101を構成するp型コンタクト層100上には、p側オーミック電極102が形成されている。p側オーミック電極102の上面以外の領域上には、SiO2膜からなる電流狭窄層103が形成されている。電流狭窄層103上の所定領域には、p側オーミック電極102の上面に接触するように、p側パッド電極104が形成されている。なお、p側オーミック電極102およびp側パッド電極104は、上記第1実施形態のp側オーミック電極12およびp側パッド電極14と同様の組成および厚みを有する。
また、n型GaN基板91の裏面の転位の集中している領域107上には、絶縁膜105が形成されている。また、n型GaN基板91の裏面上には、絶縁膜105を覆うように、n側電極106が形成されている。なお、絶縁膜105およびn側電極106は、上記第1実施形態の絶縁膜15およびn側電極16と同様の厚みおよび組成を有する。
第4実施形態では、上記のように、リッジ部101の側面101aと活性層96の上面とがなす角度θ7(約75°)を、リッジ部101の側面101bと活性層96の上面とがなす角度θ8(約105°)よりも小さくした状態で、リッジ部101の側面101aの下端部から活性層96の上面までの厚み(約200nm)をリッジ部101の側面101bの下端部から活性層96の上面までの厚み(約100nm)よりも大きくすることにより、リッジ部101の側面101a側の発振波長(約410nm)に対する実効屈折率を、リッジ部101の側面101b側の発振波長(約410nm)に対する実効屈折率よりも約0.012だけ高くすることによって、上記第1実施形態と同様、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部101の幅の上限寸法を大きくすることができるので、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部101の幅を大きくすることができる。これにより、上記第1実施形態と同様、リッジ部101を構成するp型コンタクト層100とp側オーミック電極102との間のコンタクト抵抗を低くすることができるので、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、上記第1実施形態と同様、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
図36〜図40は、図35に示した第4実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図35〜図40を参照して、第4実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図36に示すように、MOCVD法を用いて、n型GaN基板91上に、n型層92、n型クラッド層93、n型キャリアブロック層94、n型光ガイド層95、活性層96、p型光ガイド層97およびp型キャップ層98を順次成長させる。なお、n型GaN基板91、n型層92、n型クラッド層93、n型キャリアブロック層94、n型光ガイド層95、活性層96、p型光ガイド層97およびp型キャップ層98は、それぞれ、上記第1実施形態のn型GaN基板1、n型層2、n型クラッド層3、n型キャリアブロック層4、n型光ガイド層5、活性層6、p型光ガイド層7およびp型キャップ層8と同様の組成および厚みを有する。この後、p型キャップ層98上に、上記第1実施形態のp型クラッド層9と同様の組成を有するとともに、約400nmの厚みを有するp型クラッド層99を成長させる。続いて、p型クラッド層99上に、上記第1実施形態のp型コンタクト層10と同様の組成および厚みを有するp型コンタクト層100を成長させる。この際、n型GaN基板91の転位が伝播することにより、転位の集中している領域107が、p型コンタクト層100の上面にまで延びるように形成される。この後、窒素ガス雰囲気中で、約800℃の温度条件下でアニール処理する。
次に、電子ビーム蒸着法を用いて、p型コンタクト層100上に、上記第1実施形態のp側オーミック電極12と同様の組成および厚みを有するp側オーミック電極102と、約250nmの厚みを有するSiO2膜111とを順次形成する。この後、p側オーミック電極102およびSiO2膜111をパターニングすることによって、p側オーミック電極102およびSiO2膜111を、約1.9μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成する。
次に、エッチング装置の基板ホルダ(図示せず)に、図36に示した構造を約15°傾けて設置する。この後、図37に示すように、Cl2系ガスによるドライエッチング技術を用いて、SiO2膜111をマスクとして、p型コンタクト層100の上面からp型クラッド層99の途中の深さ(p型クラッド層99の上面から約320nmの深さ)までをエッチングする。この際、基板温度を約200℃に保持する。これにより、p型コンタクト層100とp型クラッド層99の凸部とによって構成されるとともに、約1.9μmの幅を有するストライプ状(細長状)のリッジ部101が形成される。また、リッジ部101の側面101aと活性層96の上面とがなすリッジ部101の内側の角度θ7は、約75°になるとともに、リッジ部101の側面101bと活性層96の上面とがなすリッジ部101の内側の角度θ8は、約105°になる。
次に、図38に示すように、図10および図11に示した第1実施形態と同様のプロセスを用いて、窒化物系半導体各層(94〜99)に形成された転位の集中している領域107を除去した後、真空蒸着法を用いて、斜め上方向(n型GaN基板91の上面に対して約60°傾いた方向)からリッジ部101の側面101a側に向かってSiO2を蒸着する。この場合、リッジ部101の側面101b側の領域には、リッジ部101、p側オーミック電極102およびSiO2膜111により陰となる領域が存在する。そして、そのリッジ部101の側面101b側の陰となる領域には、蒸着源としてのSiO2が堆積されない。このようにして、リッジ部101の側面101b側の陰となる領域以外の領域上にのみ、約250nmの厚みを有するSiO2膜112を形成する。
次に、エッチング装置の基板ホルダ(図示せず)に、図38に示した構造を約15°傾けて設置する。この後、図39に示すように、Cl2系ガスによるドライエッチング技術を用いて、SiO2膜112をマスクとして、p型クラッド層99の平坦部の上面から約100nmの深さまでをエッチングすることによって、p型光ガイド層97の上面を露出させる。これにより、リッジ部101の側面101aの下端部から活性層96の上面までの半導体層(p型クラッド層99の平坦部、p型キャップ層98およびp型光ガイド層97)の厚み(約200nm)に対して、リッジ部101の側面101bの下端部から活性層96の上面までの半導体層(p型光ガイド層97)の厚み(約100nm)を小さくする。また、リッジ部101の側面101aと活性層96の上面とがなすリッジ部101の内側の角度θ7を約75°にするとともに、リッジ部101の側面101bと活性層96の上面とがなすリッジ部101の内側の角度θ8を約105°にする。この際、n型クラッド層93の上面から約100nmの深さまでが同時にエッチングされる。このn型クラッド層93のエッチングされた領域の一方の側面93aおよび他方の側面93bは、それぞれ、リッジ部101の側面101aおよび101bの傾斜角度と同じ角度だけ傾斜する。この後、SiO2膜111および112を除去する。
次に、図40に示すように、図15〜図18に示した第1実施形態と同様のプロセスを用いて、p側オーミック電極102の上面以外の領域上に、SiO2膜からなる電流狭窄層103を形成した後、電流狭窄層103上の所定領域に、p側オーミック電極102の上面に接触するように、p側パッド電極104を形成する。また、n型GaN基板91の裏面の転位の集中している領域107上に、絶縁膜105を形成する。なお、p側パッド電極104および絶縁膜105は、それぞれ、上記第1実施形態のp側パッド電極14および絶縁膜15と同様の組成および厚みを有する。
最後に、図35に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板91の裏面上に、絶縁膜105を覆うように、上記第1実施形態のn側電極16と同様の組成および厚みを有するn側電極106を形成する。このようにして、第4実施形態によるGaN系半導体レーザ素子が形成される。
(第5実施形態)
図41は、本発明の第5実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図41を参照して、この第5実施形態では、上記第2実施形態の構成において、リッジ部39の側面39bを覆うように、上記第2実施形態の電流狭窄層40bと同様の組成(n型Al0.7Ga0.3As)を有するとともに、約500nmの厚みを有する電流狭窄層120b(第2屈折率:約3.17)が形成されている。また、リッジ部39の側面39aおよび電流狭窄層120bを覆うように、上記第2実施形態の電流狭窄層40aと同様の組成(n型Al0.5Ga0.5As)を有するとともに、約1μmの厚みを有する電流狭窄層120a(第1屈折率:約3.27)が形成されている。すなわち、この第5実施形態では、リッジ部39の側面39b側において、電流狭窄層が2層(電流狭窄層120aおよび120b)設けられている。なお、電流狭窄層120aおよび120bは、それぞれ、本発明の「第1電流狭窄層」および「第2電流狭窄層」の一例である。また、電流狭窄層120aおよび120b上には、上記第2実施形態のキャップ層41と同様の組成および厚みを有するキャップ層121が形成されている。なお、第5実施形態のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
なお、この第5実施形態では、上記第2実施形態と同様、活性層35で生成される発振波長が約800nmの光に対して、リッジ部39の側面39a側の実効屈折率(第1実効屈折率)は、リッジ部39の下部の実効屈折率よりも約0.004だけ低くなる。また、リッジ部39の側面39b側の電流狭窄層120bの下部における実効屈折率(第2実効屈折率)は、リッジ部39の下部の実効屈折率よりも約0.009だけ低くなる。すなわち、リッジ部39の側面39a側の実効屈折率は、リッジ部39の側面39b側の実効屈折率よりも約0.005だけ高くなる。
また、リッジ部39の側面39bの電流狭窄層120bが形成された部分の右側には、電流狭窄層120a(第3電流狭窄層)が形成されている。ここで、第3電流狭窄層の屈折率(第3屈折率)は、約3.27であり、第3電流狭窄層の下部において発振波長が約800nmに対する実効屈折率(第3実効屈折率)は、リッジ部39の下部よりも約0.004だけ低くなる。すなわち、第2電流狭窄層の第2屈折率(約3.17)よりも高い第3屈折率(約3.27)を有する第3電流狭窄層を、第2電流狭窄層のリッジ部39と反対側の領域に設けることにより、第2実効屈折率よりも高い第3実効屈折率を有する領域が、第2実効屈折率を有する領域のリッジ部39と反対側の領域に設けられている。
図42〜図44は、図41に示した第5実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図41〜図44を参照して、第5実施形態によるAlGaAs系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図20および図21に示した第2実施形態と同様のプロセスを用いて、リッジ部39までを形成する。
次に、図42に示すように、プラズマCVD法を用いて、リッジ部39の側面39aと、リッジ部39の側面39a側に位置するp型クラッド層37の平坦部と、リッジ部39の側面39b側に位置するp型クラッド層37の平坦部のリッジ部39近傍以外の領域と、SiN膜51の上面の一部および側面とを覆うように、約500nmの厚みを有するSiO2膜132を形成する。ここで、側面39bと側面39bの右側bに位置するSiO2膜132との間隔は、約2μmである。
次に、図43に示すように、MOCVD法を用いて、SiO2膜132およびSiN膜51を選択成長マスクとして、リッジ部39の側面39b側に位置するp型クラッド層37の平坦部上に、リッジ部39の側面39bを覆うように、上記第2実施形態の電流狭窄層40bと同様の組成(n型Al0.7Ga0.3As)を有するとともに、約500nmの厚みを有する約3.17の屈折率の電流狭窄層120bを成長させる。この後、SiO2膜132を除去する。
次に、図44に示すように、MOCVD法を用いて、SiN膜51を選択成長マスクとして、p型クラッド層37の平坦部上に、リッジ部39の側面39aおよび電流狭窄層120bを覆うように、上記第2実施形態の電流狭窄層40aと同様の組成(n型Al0.5Ga0.5As)を有するとともに、約1μmの厚みを有する約3.27の屈折率の電流狭窄層120aを形成する。続いて、SiN膜51を選択成長マスクとして、電流狭窄層120aおよび120b上に、上記第2実施形態のキャップ層41と同様の組成および厚みを有するキャップ層121を形成する。この後、SiN膜51を除去する。
なお、この後の製造プロセスは、上記第2実施形態と同様である。
第5実施形態の製造プロセスでは、上記のように、リッジ部39の側面39b側に位置するp型クラッド層37の平坦部上に選択成長マスクを形成せずに、リッジ部39の側面39a側に位置するp型クラッド層37の平坦部上に電流狭窄層120aを形成することによって、上記第2実施形態に比べて、選択成長マスクの形成工程を1回分だけ削減することができる。これにより、第5実施形態の製造プロセスでは、第2実施形態よりも製造プロセスを簡略化することができる。
(第6実施形態)
図45は、本発明の第6実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図45を参照して、この第6実施形態では、上記第1〜第5実施形態と異なり、絶縁膜により構成される電流狭窄層を用い、かつ、リッジ部の一方の側面側に形成する電流狭窄層(絶縁膜)の屈折率を、リッジ部の他方の側面側に形成する電流狭窄層(絶縁膜)の屈折率よりも高くすることによって、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率を、リッジ部の他方の側面側の実効屈折率よりも高くする場合について説明する。なお、第6実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の発振波長は、約410nmである。
この第6実施形態では、図45に示すように、n型GaN基板141上に、n型層142およびn型クラッド層143が順次形成されている。また、n型GaN基板141、n型層142およびn型クラッド層143の両方の側端面の近傍には、転位の集中している領域157が形成されている。なお、n型GaN基板141、n型層142およびn型クラッド層143は、それぞれ、上記第1実施形態のn型GaN基板1、n型層2およびn型クラッド層3と同様の組成および厚みを有する。
n型クラッド層143上の転位の集中している領域157以外の領域には、n型キャリアブロック層144、n型光ガイド層145、活性層146、p型光ガイド層147およびp型キャップ層148が順次形成されている。なお、n型キャリアブロック層144、n型光ガイド層145、活性層146、p型光ガイド層147およびp型キャップ層148は、それぞれ、上記第1実施形態のn型キャリアブロック層4、n型光ガイド層5、活性層6、p型光ガイド層7およびp型キャップ層8と同様の組成および厚みを有する。なお、活性層146は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例であり、p型光ガイド層147およびp型キャップ層148は、本発明の「半導体層」の一例である。
p型キャップ層148上には、凸部と、凸部以外の平坦部とを有するp型クラッド層149が形成されている。p型クラッド層149の凸部上には、p型コンタクト層150が形成されている。このp型コンタクト層150とp型クラッド層149の凸部とによって、一方の側面151aと、一方の側面151aとは反対側に位置する他方の側面151bとを有するリッジ部151が構成されている。このリッジ部151は、1.25μmの幅を有するストライプ状(細長状)に形成されている。なお、p型クラッド層149およびp型コンタクト層150は、上記第1実施形態のp型クラッド層9およびp型コンタクト層10と同様の組成および厚みを有する。なお、p型クラッド層149およびp型コンタクト層150は、本発明の「半導体層」の一例である。また、側面151aおよび151bは、本発明の「第1側面」および「第2側面」の一例である。
また、リッジ部151を構成するp型コンタクト層150上には、上記第1実施形態のp側オーミック電極12と同様の組成および厚みを有するp側オーミック電極152が形成されている。
ここで、第6実施形態では、リッジ部151の側面151a側において、n型クラッド層143およびp型クラッド層149の平坦部の上面と、窒化物系半導体各層(144〜149)およびp側オーミック電極152の側面と、リッジ部151の側面151aとを覆うように、約250nmの厚みを有するNb2O5膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層153aが形成されている。また、電流狭窄層153aは、リッジ部151の側面151b側において、p型クラッド層149の平坦部上のリッジ部151近傍の幅約0.2μm以外の領域およびn型クラッド層143上の側端部近傍の領域にも形成されている。この電流狭窄層153aの構成材料であるNb2O5は、約2.25の屈折率を有する。また、p側オーミック電極152の上面以外の領域上には、電流狭窄層153aを覆うように、約250nmの厚みを有するSiO2膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層153bが形成されている。すなわち、リッジ部151の側面151b側において、p型クラッド層149の平坦部上のリッジ部151近傍の領域と、リッジ部151の側面151bとは、電流狭窄層153bにより覆われている。この電流狭窄層153bの構成材料であるSiO2は、電流狭窄層153aの構成材料であるNb2O5の屈折率(約2.25)よりも小さい約1.45の屈折率を有する。また、リッジ部151の側面151aと活性層146の上面とがなす角度θ9と、リッジ部151の側面151bと活性層146の上面とがなす角度θ10とは、互いに同じ大きさ(約90°)を有する。ここで、リッジ部151の側面151a側の電流狭窄層153a(第1電流狭窄層)の第1屈折率が約2.25であるので、活性層146で生成される発振波長が約410nmの光に対して、リッジ部151の側面151a側の実効屈折率(第1実効屈折率)は、リッジ部151の下部よりも約0.008だけ低くなる。また、リッジ部151の側面151b側の電流狭窄層153b(第2電流狭窄層)の第2屈折率が約1.45であるので、リッジ部151の側面151b側の実効屈折率(第2実効屈折率)は、リッジ部151の下部よりも約0.012だけ低くなる。すなわち、リッジ部151の側面151a側の実効屈折率は、リッジ部151の側面151b側の実効屈折率よりも約0.004だけ高くなる。また、活性層146で生成される発振波長が約410nmの光に対して、実効屈折率の高いリッジ部151の側面151a側の光閉じ込め度合いは、実効屈折率の低いリッジ部151の側面151b側の光閉じ込め度合いよりも弱くなる。
また、リッジ部151の側面151bの電流狭窄層153bが形成された部分の右側には、電流狭窄層153a(第3電流狭窄層)が形成されている。ここで、第3電流狭窄層の屈折率(第3屈折率)は、約2.25であり、第3電流狭窄層の下部において発振波長が約410nmに対する実効屈折率(第3実効屈折率)は、リッジ部151の下部よりも約0.008だけ低くなる。すなわち、第2電流狭窄層の第2屈折率(約1.45)よりも高い第3屈折率(約2.25)を有する第3電流狭窄層を、第2電流狭窄層のリッジ部151と反対側の領域に設けることにより、第2実効屈折率よりも高い第3実効屈折率を有する領域が、第2実効屈折率を有する領域のリッジ部151と反対側の領域に設けられている。
また、電流狭窄層153b上の所定領域には、p側オーミック電極152の上面に接触するように、上記第1実施形態のp側パッド電極14と同様の組成および厚みを有するp側パッド電極154が形成されている。
また、n型GaN基板141の裏面の転位の集中している領域157上には、絶縁膜155が形成されている。また、n型GaN基板141の裏面上には、絶縁膜155を覆うように、n側電極156が形成されている。なお、絶縁膜155およびn側電極156は、上記第1実施形態の絶縁膜15およびn側電極16と同様の厚みおよび組成を有する。
次に、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率との差が0.004であり、リッジ部の下部と、実効屈折率の高い側のリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.008である場合において、発振波長が410nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を調べた。その結果、リッジ部の幅が1.25μm以下であれば、0次モードのみの水平横モードが存在することが判明した。ここで、第6実施形態では、リッジ部151の側面151a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部151の下部の実効屈折率よりも0.008だけ低く、かつ、リッジ部151の幅が1.25μmであるので、0次モードのみの水平横モードが存在する。
また、比較例として、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであり、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.008である場合において、発振波長が410nmの光に対して、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部の幅の上限寸法を調べた。その結果、比較例において、0次モードのみの水平横モードが存在するためには、リッジ部の幅を1.13μm以下にする必要があった。
次に、リッジ部151の側面151a側(実効屈折率の高い側)の実効屈折率がリッジ部151の下部の実効屈折率よりも0.008だけ低く、かつ、リッジ部151の幅が1.25μmである第6実施形態のGaN系半導体レーザ素子のビームの水平広がり角を調べたところ、ビームの水平広がり角は、約11.3°であった。その一方、リッジ部の一方の側面側の実効屈折率と他方の側面側の実効屈折率とが同じであるGaN系半導体レーザ素子(比較例)において、リッジ部の下部とリッジ部の側面側との実効屈折率の差が0.008であるとともに、リッジ部の幅が1.13μmである場合、ビームの水平広がり角は、約10.8°であった。これにより、第6実施形態では、高次水平横モードの発生を抑制しながら、ビームの水平広がり角を大きくすることができる。
第6実施形態では、上記のように、リッジ部151の側面151aと活性層146の上面とがなす角度θ9と、リッジ部151の側面151bと活性層146の上面とがなす角度θ10とを同じ大きさにした状態で、リッジ部151の側面151a側のNb2O5膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層153aの屈折率(約2.25)をリッジ部151の側面151b側のSiO2膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層153bの屈折率(約1.45)よりも大きくすることにより、リッジ部151の側面151a側の発振波長(約410nm)に対する実効屈折率を、リッジ部151の側面151b側の発振波長(約410nm)に対する実効屈折率よりも約0.004だけ高くすることによって、リッジ部151の側面151a側の実効屈折率とリッジ部151の側面151b側の実効屈折率とが同じ場合に比べて、高次水平横モードの発生を抑制することが可能なリッジ部151の幅の上限寸法を大きくすることができる。これにより、上記第1実施形態と同様、高次水平横モードの発生に起因するキンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、リッジ部151の幅を大きくすることができる。この場合、リッジ部151を構成するp型コンタクト層150と、リッジ部151上に形成されるp側オーミック電極152との接触面積を増大させることができるので、p型コンタクト層150とp側オーミック電極152との間のコンタクト抵抗を低くすることができる。これにより、キンク(電流−光出力特性の曲がり)の発生を抑制しながら、素子の動作電圧を低減させることができる。その結果、高出力動作時に良好なレーザ特性を得ながら、素子の動作電圧を低減させることができる。
図46〜図50は、図45に示した第6実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図45〜図50を参照して、第6実施形態によるGaN系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図46に示すように、図6〜図11に示した第1実施形態と同様のプロセスを用いて、リッジ部151を形成するとともに、窒化物系半導体各層(144〜149)に形成された転位の集中している領域157を除去する工程までを行う。
次に、図47に示すように、真空蒸着法を用いて、斜め上方向(n型GaN基板141の上面に対して約60°傾いた方向)からリッジ部151の側面151a側に向かってNb2O5を蒸着する。この場合、リッジ部151の側面151b側の領域には、リッジ部151、p側オーミック電極152およびSiO2膜21により陰となる領域が存在する。そして、そのリッジ部151の側面151b側の陰となる領域には、Nb2O5が堆積されない。このようにして、リッジ部151の側面151b側の陰となる領域以外の領域上にのみ、約250nmの厚みを有するNb2O5膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層153aを形成する。
次に、図48に示すように、リッジ部151の側面151bを含む全面を覆うように、約250nmの厚みを有するSiO2膜(絶縁膜)からなる電流狭窄層153bを形成する。この後、p側オーミック電極152の上面よりも上方に位置するSiO2膜21と、電流狭窄層153aおよび153bとを除去する。これにより、図49に示す状態にする。
次に、図50に示すように、図17および図18に示した第1実施形態と同様のプロセスを用いて、電流狭窄層153b上の所定領域に、p側オーミック電極152の上面に接触するように、上記第1実施形態のp側パッド電極14と同様の組成および厚みを有するp側パッド電極154を形成する。また、n型GaN基板141の裏面の転位の集中している領域157上に、上記第1実施形態の絶縁膜15と同様の組成および厚みを有する絶縁膜155を形成する。
最後に、図45に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板141の裏面上に、絶縁膜155を覆うように、上記第1実施形態のn側電極16と同様の組成および厚みを有するn側電極156を形成する。このようにして、第6実施形態によるGaN系半導体レーザ素子が形成される。
第6実施形態の製造プロセスでは、上記のように、斜め上方向(n型GaN基板141の上面に対して約60°傾いた方向)からリッジ部151の側面151a側に向かってNb2O5を蒸着することによって、リッジ部151の側面151bの陰となる領域以外の領域上にのみ、Nb2O5膜からなる電流狭窄層153a形成される。その結果、Nb2O5膜からなる電流狭窄層153aを部分的に形成するためのマスク合わせをする必要がないので、製造プロセスを簡略化することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、GaN系、AlGaAs系またはAlGaInP系の半導体レーザ素子に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、GaInAsN系、ZnSe系、ZnO系およびGaInAs系などのGaN系、AlGaAs系およびAlGaInP系以外の半導体レーザ素子にも適用可能である。
また、上記第2および第5実施形態では、リッジ部の一方の側面側および他方の側面側の両方に、半導体からなる電流狭窄層を形成したが、本発明はこれに限らず、リッジ部の一方の側面側に、半導体からなる電流狭窄層を形成するとともに、リッジ部の他方の側面側に、SiO2、SiNX、TiO2およびZrO2などの誘電体からなる電流狭窄層を形成してもよい。また、リッジ部の一方の側面側に電流狭窄層を形成せず、リッジ部の他方の側面側にのみ電流狭窄層を形成してもよい。この場合、リッジ部の一方の側面側には、空気の屈折率(1)を有する電流狭窄層が形成されているとみなすことができる。
また、上記第3実施形態では、光を吸収する電流狭窄層を、半導体により構成したが、本発明はこれに限らず、光を吸収する電流狭窄層を、半導体以外のRuO2、Rh2O3およびIrO2などの誘電体やポリイミドにより構成してもよい。また、光を吸収する電流狭窄層を、数十nm〜数百nmの厚みを有する下層の絶縁膜と、上層の金属層とにより構成される2層構造にしてもよい。この場合、金属層により光が吸収される。