JP2006017436A - 蓄熱システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 熱輸送流体を熱源である配管P2(エキゾーストパイプ)の熱により加熱する第1熱交換部3と、第1熱交換部3により加熱された熱輸送流体を貯溜するタンク2と、タンク2に貯溜された熱輸送流体の熱を、熱を必要とするエンジンE(熱需要機器)に与える第2熱交換部4とを具備する蓄熱システム1において、熱輸送流体は、潜熱蓄熱材をカプセル化してなるマイクロカプセルと、マイクロカプセルが分散する流動性媒体と、マイクロカプセルおよび流動性媒体の少なくとも一方に含有される熱伝導性粒子とを含んで構成した。
【選択図】 図1
Description
さらに、熱伝導性粒子が、マイクロカプセルおよび流動性媒体の少なくとも一方に含有されるため、熱輸送流体全体としての熱伝導率は高く、熱に対する潜熱蓄熱材の応答性は高くなる。したがって、熱輸送流体は、大きな熱量を吸収または放出することができる。よって、例えば、熱輸送流体の流速が高くても、熱源から熱を吸収し、熱需要機器に対しては熱を速やかに放出することができる。
なお、本実施形態では、本発明に係る蓄熱システムを自動車の排気系に適用した場合について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る蓄熱システム1は、自動車に搭載されており、その排気系の触媒ユニットCの下流側の配管P2(エギゾーストパイプ)を熱源とし、この配管P2および内部を流通する高温の排気ガスから発生する熱を一旦蓄え、エンジンE(熱需要機器)の停止後、冷えたエンジンEを作動させるとき、蓄えた熱を利用してエンジンEのスリーブ、ヘッド、ウォータジャケット近傍などを暖めるシステムである。これにより、冷却水、エンジンオイル、エンジンE本体を早期に温度上昇させ、コールドエミッションの改善、エンジンEの低温時における燃費の向上、エンジンEの保温、車室内暖房の効率を向上可能となっている。
自動車の排気系は、主として、エンジンEから下流側に向かって、排気ガス中のNOXなどを浄化する触媒ユニットCと、マフラーM(消音器)と、これらを接続する配管P1、P2を備えている。そして、エンジンEの作動中、触媒ユニットCに内蔵される白金などの排気ガス触媒は、エンジンEからの高温の排気ガスにより所定の触媒活性温度(例えば300〜600℃)に加熱される。この加熱された排気ガス触媒により、排気ガスは所定に浄化され、マフラーMにより消音された後、外部に排気される。
タンク2は、熱輸送流体を一旦貯溜するためのものである。
第1熱交換部3、第2熱交換部4は、熱交換可能であればどのような形態であってもよく、例えば、公知の熱交換器や、配管を螺旋状などに構成したもの、パイプの周面にフィンを設けたものなどによって構成される。第1熱交換部3は、熱源である配管P2に対して熱交換可能に配置されている。また、第2熱交換部4は、熱需要機器であるエンジンEに対して熱交換可能に配置されている。
タンク2の出口は、配管8aを介してポンプ5に接続しており、ポンプ5の下流側は配管8bを介して開閉弁6Aに接続している。開閉弁6Aの下流側は、配管8cを介して第1熱交換部3に接続し、第1熱交換部3の下流側は、配管8dを介してタンク2の入口に接続している。
したがって、開閉弁6Bを閉じ、開閉弁6Aを開いた状態で、ポンプ5を稼動させることで、タンク2内の熱輸送流体は、タンク2の出口から配管8a、配管8b、配管8c、第1熱交換部3、配管8d、タンク2の入口の順に循環可能となっている。
したがって、開閉弁6Aを閉じ、開閉弁6Bを開いた状態で、ポンプ5を稼動させることで、タンク2内の熱輸送流体は、タンク2の出口から、配管8a、配管8b、配管9a、配管9b、第2熱交換部4、配管9c、配管8d、タンク2の入口の順に循環可能となっている。
熱輸送流体は、発熱する配管P2(熱源)から熱を吸収し、この熱を内部に蓄えると共に、冷えたエンジンE(熱需要機器)に対して、内部に蓄えた熱を放出し、エンジンEを所定に加熱するものである。本実施形態に係る熱輸送流体は、溶質として複数のマイクロカプセル10A(図2(a)参照)と、マイクロカプセル10Aが分散する流動性媒体と、マイクロカプセル10Aを良好に分散させるための界面活性剤(分散剤)を含んで構成されている。
図2(a)に示すように、マイクロカプセル10Aは、後記するマイクロカプセルの製造方法により製造されたものであって、潜熱蓄熱材11および熱伝導性粒子13aを周壁12(外周膜、カプセル壁とも称される)でカプセル化してなり、内側の潜熱蓄熱材11と、潜熱蓄熱材11を封入する外側の周壁12と、潜熱蓄熱材11に分散した複数の熱伝導性粒子13aとを含んで構成されている。
なお、マイクロカプセル10Aの大きさ(d1)は、SEM(例えば、日立製作所社製、S−800)による形態観察や、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、SALD−7000)による粒度分布測定によって求められる。
潜熱蓄熱材11は、高温の熱源から熱を吸収する場合、相転移することによって、その熱を潜熱として内部に蓄え、一方、低温の熱需要機器に熱を放出する場合、相転移することによって、潜熱を放出する物質である。
ここで、本明細書における相転移は、融解・凝固のような固相−液相間の相転移に限定されず、結晶相間の変態、つまり、結晶相−非結晶相間の変態を含む。すなわち、本発明において、この変態に伴う潜熱を利用した潜熱蓄熱材11を使用することもできる。
具体的に例えば、潜熱蓄熱材11としては、0〜100℃の温度範囲で相転移点を有する硫酸ナトリウム水和物などの無機物、0〜200℃の温度範囲に融点を有する高級脂肪酸、高級アルコール、パラフィン、ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキシド、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ワックスなどの有機物(オリゴマ)や、エリスリトール、マニトール、ソルビトール、マルチトールなどの多価アルコール類、多糖類を使用することができる。その他、100〜200℃の温度で融点を有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属(以下、アルカリ金属類)の硝酸塩、アルカリ金属類の硫酸塩、アルカリ金属類の炭酸塩、アルカリ金属類のフッ化物、アルカリ金属類の水酸化物、アルカリ金属類の塩化物などの溶融塩類、無機塩類を使用することができる。
周壁12は、熱の吸収・放熱により相転移する潜熱蓄熱材11が外部に、つまり流動性媒体に染み出さないように封入するものである。このような周壁12は、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエチレン、ゼラチンなどの高分子化合物から形成される。周壁12の厚さ(t1)は、熱伝導性を考慮しつつ、マイクロカプセル10Aの大きさに対して相対的に決定される。前記したように、マイクロカプセル10Aの大きさを10μm以下とした場合、周壁12の厚さ(t1)は、0.1〜1.0μmの範囲内であることが好ましい。
熱伝導性粒子13aは、マイクロカプセル10Aに含まれることによって、マイクロカプセル10A全体としての熱伝導率(見かけの熱伝導率、巨視的な熱伝導率)を高めるためのものであり、熱伝導率が0.6W/m・K以上であることが好ましい。
このような熱伝導性粒子13aは、化学的に安定な貴金属または合金、若しくは酸化により表面に不動態を形成する金属、または、グラファイト、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、カーボンナノホーンなどの炭素構造体から適宜選択して形成される。このうち貴金属としては、例えば、銅、銀、プラチナ、パラジウムなど、前記金属としてはアルミニウムなどを挙げることができる。
流動性媒体は、マイクロカプセル10Aを分散させ、熱輸送流体として流動性をもたせるためのものである。流動性媒体の種類は、熱輸送流体の使用温度や使用状況(マイクロカプセル10Aの量を高め、熱輸送流体の流動性を確保しつつス、スラリー状とする場合など)を考慮して、適宜選択される。具体的には、例えば、水、シリコンオイル、鉱物油などを使用することができる。さらに具体的には、本実施形態のように、自動車用の熱輸送流体の場合、流動性媒体として、水とエチレングリコールの混合物、水とプロピレングリコールの混合物やアルコール類などを使用することができる。
さらにまた、流動性媒体は防錆剤、老化防止剤や後記界面活性剤(マイクロカプセル分散安定剤)などが添加されたものであってもよい。
界面活性剤(マイクロカプセル分散安定剤)は、複数のマイクロカプセル10Aを、流動性媒体中に好適に分散させるための薬剤である。界面活性剤の種類は、分散させるマイクロカプセル10Aと、マイクロカプセル10Aが分散する流動性媒体の種類に対応して、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤から適宜選択される。また、このように界面活性剤を添加することによって、熱輸送流体の粘度を調整することもできる。
具体的に、アニオン系の界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。カチオン系の界面活性剤としては、ポリカルボン酸塩、牛脂ジアミンジオレイン酸塩、ヤシジアミンジアジピン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系の界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。
続いて、本実施形態に係る蓄熱システム1の動作について説明する。
まず、作動する自動車の排気系から熱を吸収する場合について説明する。
開閉弁6Aを開き、開閉弁6Bを閉じた状態でポンプ5を作動し、熱輸送流体を、タンク2の出口から、配管8a、配管8b、配管8c、第1熱交換部3、配管8d、タンク2の入口の順に循環させる。そうすると、熱輸送流体は、第1熱交換部3において、発熱する配管P2から熱を吸収する。熱の吸収についてさらに説明すると、マイクロカプセル10Aの潜熱蓄熱材11が、固相から液相に相転移することによって、熱がマイクロカプセル10Aの内部に蓄えられる。この熱を蓄えたマイクロカプセル10Aが分散する熱輸送流体、つまり、熱を帯びた熱輸送流体は、タンク2に一旦貯留される。
次に、熱を放出し、冷えたエンジンEを暖める場合について説明する。
開閉弁6Aを閉じ、開閉弁6Bを開いた状態でポンプ5を作動させ、熱を蓄えた熱輸送流体を、タンク2の出口から、配管8a、配管8b、配管9a、配管9b、第2熱交換部4、配管9c、配管8c、タンク2の入口の順に循環させる。そうすると、熱を蓄えた熱輸送流体は、第2熱交換部4において、熱を放出し、エンジンEを暖める。熱の放出についてさらに説明すると、マイクロカプセル10Aの潜熱蓄熱材11が、液相から固相に相転移することによって、熱が放出される。
この熱の放出においても、熱の吸収と同様に、マイクロカプセル10Aの内部に熱伝導性粒子13aが分散しているため、熱輸送流体の流速が速くても、好適に熱を放出して、エンジンEを早期に暖気することができる。
次に、マイクロカプセル10Aの製造方法について説明する。
マイクロカプセル10Aは、周壁12の作り方によって、化学的方法、物理化学的方法、機械的方法の3つに大別される。化学的方法は、化学反応を利用して周壁12を形成し、カプセル化する方法であり、In−Site法と界面重合法が分類される。物理化学的方法は、凝固、析出などのように、化学反応によらないで周壁12を形成する方法であり、液中乾燥法、コアセルベーション法、液中硬化被覆法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法が分類される。機械的方法には、噴霧乾燥方法と乾式混合方法が分類される。
本発明に係るマイクロカプセル10Aは、いずれの方法によっても製造することができるが、ここでは、In−Site重合法で製造する場合について、簡単に説明する。
また、図2(c)に示すマイクロカプセル10Cでは、図2(b)に示す熱伝導性粒子13aが集合して、熱伝導性部13bを構成している。熱伝導性部13bは、マイクロカプセル10Cの表面に露出すると共に、内側の潜熱蓄熱材11に接触している。したがって、このようなマイクロカプセル10Cによれば、熱伝導性部13bが表面に露出しているため、熱応答性がさらに高くなる。
このようなマイクロカプセル10B〜10Fによれば、いずれの形態においても、全体としての熱伝導率は高くなる。なお、前記したマイクロカプセル10A〜10Fに係る形態を組み合わせることは自由である。
この場合において、熱伝導性粒子13aの量は、マイクロカプセル10Dと熱伝導性粒子13aの合計質量が、熱輸送流体の全体に対して90質量%以下となるように設定することが好ましい。
また、前記した実施形態では、蓄熱システム1を自動車の排気系に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、その他に給湯システムなどに適用することもできる。
2 タンク
3 第1熱交換部
4 第2熱交換部
5 ポンプ
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G マイクロカプセル
11 潜熱蓄熱材
12 周壁
13a 熱伝導性粒子
13b 熱伝導性部
C 触媒ユニット(熱源)
E エンジン(熱需要機器)
Claims (2)
- 熱輸送流体を熱源の熱により加熱する第1熱交換部と、当該第1熱交換部により加熱された熱輸送流体を貯溜するタンクと、当該タンクに貯溜された熱輸送流体の熱を、熱を必要とする熱需要機器に与える第2熱交換部とを具備する蓄熱システムにおいて、
前記熱輸送流体は、潜熱蓄熱材をカプセル化してなるマイクロカプセルと、当該マイクロカプセルが分散する流動性媒体と、前記マイクロカプセルおよび前記流動性媒体の少なくとも一方に含有される熱伝導性粒子と、を含むことを特徴とする蓄熱システム。 - 前記熱伝導性粒子は、前記マイクロカプセルの周壁に含まれていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
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