JP2006017226A - トルクリミッタ装置、その製造方法、及びその組み付け方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 トルクリミッタ装置とトランスミッション側部材との結合部における異常摩耗を抑える。
【解決手段】 このトルクリミッタ装置1は、エンジンに連結されたフライホイール2からトランスミッション側の入力軸3へ伝達されるトルクを制限するためのものである。外周部に摩擦連結部が固定されたクラッチディスク13と、トランスミッション側の入力軸3に係合するスプラインハブ15と、クラッチディスク13とスプラインハブ15とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構16と、クラッチディスク13に装着され摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、フライホイールから入力軸3へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部6とを備えている。フライホイール2と伝達トルク制限部6とは、半径方向に相対移動不能に係合している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、トルクリミッタ装置、その製造方法、及びその組み付け方法、特にダンパー機構を有するトルクリミッタ装置、その製造方法、及びその組み付け方法に関する。
車両において、エンジンから伝達される過大トルクによるトランスミッション等の破損を考慮して、エンジンとトランスミッションとの間に、所定値以上のトルクの伝達を遮断するトルクリミッタ装置が設けられることがある。このトルクリミッタ装置は、例えば、1枚以上の摩擦フェーシングを1対のプレートで両側から所定の挟持力で挟み込み、その入力側をエンジン側の部材としてのフライホイール等に連結し、出力側をトランスミッション側の入力軸等に連結するものである。
この種のトルクリミッタ装置は、外周部に1対のプレートによって所定の挟持力で挟み込まれた摩擦連結部を有するドライブプレートと、トランスミッションの入力軸に連結されるドリブン側部材と、これらの間に設けられたスプリングダンパーとを有している(例えば、特許文献1を参照)。この装置では、摩擦連結部を挟み込む1対のプレート(あるいは摩擦連結部の外周部に設けられたダンパーカバー)がフライホイールに連結されている。
このトルクリミッタ装置では、エンジンのトルクは、フライホイールから摩擦連結部を介してドライブプレートに伝達され、さらにスプリングダンパーを介してドリブン側部材及びトランスミッションの入力軸に伝達される。そして、エンジンからのトルクが所定のトルクを上回ると、摩擦連結部とプレートとの間で滑りが発生する。これにより、所定のトルクを上回るトルクが入力されても、トランスミッション側に伝達されず、過大トルクの伝達によるトランスミッションの破損を防止することができる。
このようなトルクリミッタ装置では、通常の車輌のクラッチ装置に用いられるクラッチディスク組立体をフライホイールに装着する場合と異なり、エンジンにトランスミッションをドッキングさせる前に、フライホイールとトルクリミッタ装置との芯出しを確実に行っておく必要がある。それは、エンジンとトランスミッションとをドッキングする前に、トルクリミッタ装置の摩擦連結部を所定の挟持力で挟み込んでフライホイールに固定しておく必要があるからである。
そこで、特許文献1に示されたトルクリミッタ装置では、ドライブプレートと摩擦連結部を挟み込むプレート(あるいはダンパーカバー)とを芯出し組み付けし、その後プレートあるいはダンパーカバーをフライホイールに芯出ししてトルクリミッタ装置をフライホイールに固定するようにしている。
特開2002−39210号公報
前述の従来のトルクリミッタ装置では、ドライブプレートをフライホイールに対して芯出し組み付けすることに注目して組み付けを行っている。しかし、一般的に、ドライブプレートとフライホイールとが芯出しされていても、ドリブン側部材とフライホイールとが芯出しされていることは保証されない。すなわち、ドリブン側部材は、一般的に、中央部に設けられ内周部にトランスミッションの入力軸がスプライン結合される筒状のボス部と、ボス部外周から外周側に延びるフランジ部とを有している。そして、ドライブプレートの内周部には孔が形成されており、この孔にドリブン側部材のボス部が隙間をもって挿入されている。この隙間の存在により、ドライブプレートとドリブン側部材のボス部との芯がずれる場合があり、この場合には、ドライブプレートとフライホイールとが芯出しされていても、フライホイールとドリブン側部材との芯がずれていることになる。そうすると、ドリブン側部材にはトランスミッションの入力軸がスプライン結合されているので、フライホイールとトランスミッション入力軸との芯がずれていることになり、使用中にスプライン結合部が異常摩耗してしまうという問題がある。
本発明の課題は、トルクリミッタ装置とトランスミッション側部材との結合部における異常摩耗を抑えることにある。
また、本発明の別の課題は、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実にトルクリミッタ装置とエンジン側部材との芯出しを行うことにある。
請求項1に記載のトルクリミッタ装置は、エンジンに連結されたエンジン側部材から出力軸へ伝達されるトルクを制限するためのものである。外周部に摩擦連結部が固定された入力側プレートと、出力軸に係合する出力側部材と、入力側プレートと出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、入力側プレートに装着され摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、エンジン側部材から出力軸へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部とを備えている。エンジン側部材と伝達トルク制限部とは、半径方向に相対移動不能に係合している。
一般的に、出力側部材と入力側プレートとの間には径方向隙間が存在するので、出力側部材とエンジン側の部材とが芯出しされても、入力側のプレートとエンジン側部材との間には芯ずれが存在する場合がある。芯ずれによって最も重大な悪影響が発生するのは、出力側部材とトランスミッション側の出力軸との結合部であり、芯ずれによって両部材に異常摩耗が生じる。
このトルクリミッタ装置では、エンジン側部材と伝達トルク制限部とが半径方向に相対移動不能に係合しているため、エンジン側部材と伝達トルク制限部との芯出し行うことができ、エンジン側部材と出力側部材との芯出しも行うことができる。これにより、従来、芯ずれによって発生していた最も重大な問題である出力側部材とトランスミッション側の出力軸との結合部の異常摩耗を抑えることができる。
請求項2に記載のトルクリミッタ装置は、請求項1において、エンジン側部材が円板状のエンジン側部材本体と、エンジン側部材本体から軸方向へ突出した環状の突出部とを有しており、突出部と伝達トルク制限部とは、半径方向に係合している。
従来、出力側部材とエンジン側部材との芯出しは、ノックピンにより行われている。具体的には、トルクリミッタ装置の組み付け時に、芯出し用治具に対してトルクリミッタ装置を取り付けていく。そして、芯出し用治具及びエンジン側部材にはノックピンが設けられており、伝達トルク制限部側の部材にはノックピンに対応したノック孔が設けられている。また、芯出し用治具には、出力側部材に対応する固定軸が設けられており、ノックピンと固定軸とはすでに芯出しがなされている。これにより、芯出し用治具に対してトルクリミッタ装置を組み付けていくことで、出力側部材と伝達トルク制限部との芯出しが行える。しかし、この組み付け方法では、伝達トルク制限部側の部材に予めノック孔を設けておく必要がある。また、治具やエンジン側部材にも予めノックピンを設けておく必要があるため、ノックピン及びノック孔の加工に手間がかかる。
このトルクリミッタ装置では、突出部と伝達トルク制限部とが半径方向に係合しているため、ノックピン及びノック孔を設けることなくエンジン側部材と伝達トルク制限部との芯出しを行うことができる。これにより、エンジン側部材と出力側部材との芯出しを行うことができるとともに、芯出し用のノックピン及びノック孔の加工の手間を省くことができる。
請求項3に記載のトルクリミッタ装置は、請求項2において、伝達トルク制限部が突出部の内周側に挿嵌されている。
このトルクリミッタ装置では、伝達トルク制限部が突出部の内周側に挿嵌されているため、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実にエンジン側部材と伝達トルク制限部との芯出しを行うことができる。これにより、エンジン側部材と出力側部材との芯出しを行うことができるとともに、芯出し用のノックピン及びノック孔の加工の手間を省くことができる。
請求項4に記載のトルクリミッタ装置は、請求項2または3において、突出部の内周面と伝達トルク制限部の外周面とが半径方向に当接している。
このトルクリミッタ装置では、突出部の内周面と伝達トルク制限部の外周面とが半径方向に当接しているため、ノックピン及びノック孔を設けることなく、さらに容易にかつ確実にエンジン側部材と伝達トルク制限部との芯出しを行うことができる。これにより、エンジン側部材と出力側部材との芯出しを行うことができるとともに、芯出し用のノックピン及びノック孔の加工の手間を省くことができる。
請求項5に記載のトルクリミッタ装置の製造方法は、外周部に摩擦連結部が固定された入力側プレートと、出力軸に係合する出力側部材と、入力側プレートと出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、エンジン側部材に装着され摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、エンジン側部材から出力軸へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部とを備えるトルクリミッタ装置についてのものである。
この製造方法では、以下の工程を含んでいる。
◎入力側プレートと、出力側部材と、ダンパー機構とをクラッチディスク組立体として組み付ける第1工程。
◎伝達トルク制限部を芯出し用の治具に組み付けることで伝達トルク制限部と治具との芯出しを行う第2工程。
◎クラッチディスク組立体を治具に組み付ける第3工程。
◎伝達トルク制限部とクラッチディスク組立体との組み付けを行う第4工程。
また、この製造方法では、伝達トルク制限部と治具とは、半径方向に相対移動不能に係合している。
この製造方法では、伝達トルク制限部と治具とが半径方向に相対移動不能に係合しているため、伝達トルク制限部と治具との芯出しを行うことができ、伝達トルク制限部と出力側部材との芯出しを行うことができる。これにより、トルクリミッタ装置をエンジン側部材に装着した場合に、エンジン側部材と出力側部材との芯出しを容易にかつ確実に行うことができる。
請求項6に記載のトルクリミッタ装置の製造方法は、請求項5において、治具が円板状の治具本体と、治具本体の中心部から突出したスプライン軸と、治具本体から軸方向へ突出した環状の環状部とを有している。そして、この製造方法では、第2工程は伝達トルク制限部と環状部とが半径方向に係合することで伝達トルク制限部と治具との芯出しを行う工程を含んでいる。
この製造方法では、伝達トルク制限部と環状部とが半径方向に係合しているため、ノックピン及びノック孔を設けることなく伝達トルク制限部と治具との芯出しを行うことができる。これにより、トルクリミッタ装置をエンジン側部材に装着した場合に、エンジン側部材と出力側部材との芯出しを容易にかつ確実に行うことができる。
請求項7に記載のトルクリミッタ装置の製造方法は、請求項6において、第2工程が伝達トルク制限部が環状部の内周側に挿嵌されることで伝達トルク制限部と治具との芯出しを行う工程を含んでいる。
この製造方法では、伝達トルク制限部が環状部の内周側に挿嵌されているため、ノックピン及びノック孔を設けることなく、さらに容易にかつ確実に伝達トルク制限部と治具との芯出しを行うことができ、伝達トルク制限部と出力側部材との芯出しも行うことができる。
請求項8に記載のトルクリミッタ装置の組みつけ方法は、外周部に摩擦連結部が固定された入力側プレートと、出力軸に係合する出力側部材と、入力側プレートと出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、エンジン側部材に装着され摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、エンジン側部材から出力軸へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部とを備えるトルクリミッタ装置を、エンジン側部材に装着するためのものである。
この組み付け方法では、以下の工程を含んでいる。
◎出力側部材と伝達トルク制限部とを芯出し組み付けしてトルクリミッタ装置を組み付ける第1工程。
◎伝達トルク制限部とエンジン側部材とを半径方向に係合させることでエンジン側部材と出力側部材との芯出しを行い、トルクリミッタ装置を伝達トルク制限部を介してエンジン側部材に組み付ける第2工程。
この組み付け方法では、伝達トルク制限部とエンジン側部材とが半径方向に係合しているため、伝達トルク制限部とエンジン側部材との芯出しを行うことができる。その結果、エンジン側部材と出力側部材との芯出しも行うことができる。これにより、従来、芯ずれによって発生していた最も重大な問題である出力側部材と出力軸との結合部の異常摩耗を抑えることができる。
請求項9に記載のトルクリミッタ装置の組み付け方法は、請求項8において、エンジン側部材が環状のエンジン側部材本体と、エンジン側部材本体から軸方向へ突出した環状の突出部とを有している。また、この組み付け方法では、第2工程が伝達トルク制限部を突出部の内周側に挿嵌することで伝達トルク制限部とエンジン側部材との芯出しを行う工程を含んでいる。
この組み付け方法では、伝達トルク制限部が突出部の内周側に挿嵌されているため、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実に伝達トルク制限部とエンジン側部材との芯出しを行うことができる。その結果、この組み付け方法では、エンジン側部材と出力側部材との芯出しも行うことができる。
本発明に係るトルクリミッタ装置、その製造方法、及びその組み付け方法であれば、トルクリミッタ装置とトランスミッション側部材との結合部における異常摩耗を抑えることができる。
また、本発明に係るトルクリミッタ装置、その製造方法、及びその組み付け方法であれば、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実にトルクリミッタ装置とエンジン側部材との芯出しを行うことができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
1.トルクリミッタ装置の構造
図1に本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置の断面図を示す。図1においては、左側にエンジン及びフライホイール2が配置され、図1の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。
トルクリミッタ装置1は、フライホイール2とトランスミッション入力軸3との間に設けられ、エンジンからトランスミッションに伝達されるトルクを制限するためのものである。そして、このトルクリミッタ装置1は、クラッチディスク組立体5と、クラッチディスク組立体5のクラッチディスク(摩擦連結部)を含む伝達トルク制限部6とを有している。以下に、各部の構造について説明する。
(1)クラッチディスク組立体
クラッチディスク組立体5は、主に、入力回転体としてのクラッチプレート11、リティーニングプレート12及びクラッチディスク13と、出力回転体としてのスプラインハブ15と、入力回転体と出力回転体との間に形成されたダンパー機構16とから構成されている。
クラッチプレート11及びリティーニングプレート12は、例えば共に板金製の環状の部材であり、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。クラッチプレート11はエンジン側に配置され、リティーニングプレート12はトランスミッション側に配置されている。クラッチプレート11とリティーニングプレート12とは互いに固定されて一体回転するようになっている。また、クラッチプレート11及びリティーニングプレート12の外周部には、回転方向に等間隔で4つの窓孔が形成されており、この窓孔によって、後述するトーションスプリング17が支持されている。また、クラッチプレート11及びリティーニングプレート12の中心部には、それぞれ孔が形成されている。
クラッチディスク13は、クラッチプレート11の外周部に固定されたクッショニングプレート20と、クッショニングプレート20の両面に固定された摩擦フェーシング21とを有している。このクラッチディスク13は後述する伝達トルク制限部6を構成するものである。
スプラインハブ15は、軸方向に延びる筒状のボス25と、ボス25から半径方向に延びる円板状のハブフランジ26とから構成されている。このボス25とハブフランジ26とは別部材で形成されており、両者25、26は小径のトーションスプリング27によって円周方向に所定の角度範囲で弾性的に、かつ所定の角度範囲を超えた範囲では剛性的に連結されている。そして、ボス25の内周部には、トランスミッション入力軸3が係合するスプライン孔25aが形成されている。また、ハブフランジ26には回転方向に並んだ複数の切欠きが形成されている。
また、スプラインハブ15のボス25の両端部は、それぞれクラッチプレート11及びリティーニングプレート12の中心孔に挿入されており、クラッチプレート11の孔内周面とボス15の外周面との間にはブッシュ28が配置されている。
ダンパー機構16は、入力回転体と出力回転体との間でトルクを伝達するとともに両者間の捩じり振動を吸収・減衰するための機構であり、複数のトーションスプリング17及びヒステリシス発生機構18を有している。複数のトーションスプリング17は、クラッチプレート11及びリティーニングプレート12の窓孔とハブフランジ26の切欠きとによって収納され支持されている。
(2)伝達トルク制限部
伝達トルク制限部6は、クラッチディスク組立体5のクラッチディスク13と、クラッチディスク13の摩擦フェーシング21を軸方向両側から挟み込むように設けられた第1プレート30及び第2プレート31と、1対のプレート30、31に挟持力を与えるためのコーンスプリング32と、クラッチディスク13の外周側に配置されるリング状のカバー部材33とを有している。
第1プレート30はカバー部材33のトランスミッション側の側面にリベット34により固定されている。カバー部材33の内周部において、エンジン側の端部には、内周側に突出する環状の係止突起33aが形成されている。そして、カバー部材33の内周部には、第1プレート30とともに摩擦フェーシング21を挟み込むように第2プレート31が配置され、この第2プレート31と係止突起33aとの間にコーンスプリング32が圧縮されて配置されている。このような構成では、コーンスプリング32による付勢力と、摩擦フェーシング21の摩擦係数と、摩擦部の有効半径によって伝達可能なトルクが決定され、この伝達可能トルクを上回るトルクがエンジン側から入力されると、摩擦部において滑りが生じ、伝達トルクは所定のトルクに制限される。
2.トルクリミッタ装置の製造方法
トルクリミッタ装置1の製造方法及び芯出し用の治具について説明する。図2に芯出し用の治具の構造図、図3にトルクリミッタ装置の製造工程を示す。
(1)芯出し用の治具の構造
まず、芯出し用の治具の構造について説明する。治具40は、図2に示すように、治具本体41と、スプライン軸42と、環状部43とから構成される。治具本体41は、治具の主要部を構成する円板状の部材である。スプライン軸42は、治具本体41の表面において、その中心部に突出して設けられており、クラッチディスク組立体5のスプラインハブ15のスプライン孔25aに係合可能となっている。環状部43は、治具本体41の表面外周部において、全周にわたり突出した環状の部分である。環状部43とスプライン軸42とは、予め芯出しが行われている。
(1)第1工程
第1工程S1では、まずクラッチディスク組立体5の組み付けを行う。具体的には、クラッチプレート11、リティーニングプレート12及びクラッチディスク13と、スプラインハブ15と、ダンパー機構16とを組み付ける。クラッチディスク組立体5の組み付けは、従来の組み付け工程と何ら変わるところはなく、ここでは詳細な説明は省略する。なお、このクラッチディスク組立体5の組み付けに際しては、クラッチプレート11の中心孔とスプラインハブ15のボス25との間には、ブッシュ28が設けられる。したがって、クラッチプレート11とスプラインハブ15との芯出しはこのブッシュ28によって行われ、容易に確実な芯出しを行って組み付けることができる。しかも、このブッシュ28によって、組み付け後にクラッチプレート11とスプラインハブ15(特にボス25)との芯がずれるのを抑えることができる。
(2)第2工程
次に、第2工程S2では、伝達トルク制限部6を芯出し用の治具40に組み付ける。具体的には、伝達トルク制限部6のカバー部材33が治具40に対して組み付けられる。治具本体41は、環状部43の内周側に複数のボルト孔が設けられている。そして、カバー部材33は、治具本体41に対してボルトにて組み付けられる。このとき、環状部43の内周面43aとカバー部材33の外周面33aとが当接する。環状部43の内径とカバー部材33の外径とは、挿嵌させたときにガタが生じないよう嵌め合い公差が設けられている。これにより、カバー部材33が環状部43に挿嵌されることで、カバー部材33と環状部43との芯出しが容易にかつ確実に行われる。
(3)第3工程
第3工程S3では、クラッチカバー組立体5を治具40に組み付ける。具体的には、カバー部材33の内周部にコーンスプリング32、第2プレート31をセットし、さらにクラッチディスク組立体5を載置する。その際、スプラインハブ15のスプライン孔25aに治具40のスプライン軸42を挿入しながら行う。これにより、スプラインハブ15と伝達トルク制限部6(カバー部材33)との芯出しが行えたことになる。なお、前述のように、クラッチディスク組立体5の組立に際してクラッチプレート11とスプラインハブ15とが芯出し組み付けされているので、結局、クラッチプレート11とカバー部材33の芯出しも行えたことになる。
(4)第4工程
第4工程S4では、伝達トルク制限部6とクラッチディスク組立体5との組み付けを行う。具体的には、第3工程が終了した状態で第1プレート30をセットし、リベット34をかしめる。これにより、各部が芯出しされた状態で、クラッチディスク組立体5と伝達トルク制限部6とが組み付けることができる。
以上より、この製造方法では、伝達トルク制限部6とスプラインハブ15との芯出しが行われたトルクリミッタ装置1を得ることができる。また、ノックピン及びノック孔を設けることなく、各部の芯出しを容易にかつ確実に行うことができる。
3.トルクリミッタ装置の組み付け方法
以上の製造方法により製造されたトルクリミッタ装置1を、実際に車輌に組み付けるフライホイール2及び組み付け方法の手順について説明する。
(1)フライホイールの構造
フライホイール2は、図1に示すようにフライホイール本体2aと、突出部2bとから構成される。フライホイール本体2aは、フライホイール2の主要部を構成する環状の部材であり、図示しないエンジンのクランクシャフトに固定されている。突出部2bは、フライホイール本体2aの表面外周部において、軸方向トランスミッション側へ突出した環状の部分である。
(2)組み付け方法
この組み付け方法では、前述の製造方法により組上がったトルクリミッタ装置1をフライホイール2に組み付ける。具体的には、トルクリミッタ装置1の伝達トルク制限部6のカバー部材33を、フライホイール2の突出部2bの内周側に挿嵌する。そして、伝達トルク制限部6をフライホイール本体2aに対してボルトにて固定する。このとき、突出部2bの内周面2cとカバー部材33の外周面33aとが当接する。これにより、突出部2bと伝達トルク制限部6との芯出しが行われる。前述の製造方法により、伝達トルク制限部6とスプラインハブ15との芯出しが行われているため、突出部2bによりスプラインハブ15とフライホイール2との芯出しも行われる。これにより、従来、芯ずれによって最も重大な問題の発生していたスプラインハブ15とトランスミッション入力軸3との結合部の異常摩耗を抑えることができる。
3.作用効果
本発明に係る製造方法の作用効果を以下にまとめる。
(1)トルクリミッタ装置の作用効果
このトルクリミッタ装置1では、伝達トルク制限部6が突出部2bの内周側に挿嵌されており、突出部2bの内周面2cと伝達トルク制限部6のカバー部材33の外周面33aとが当接するため、フライホイール2と伝達トルク制限部6との芯出しを行うことができる。その結果、フライホイール2とスプラインハブ15との芯出しを容易にかつ確実に行うことができる。また、このトルクリミッタ装置1では、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実にエンジン側部材と伝達トルク制限部6との芯出しを行うことができる。
(2)製造方法の作用効果
この製造方法では、伝達トルク制限部6が環状部43の内周側に挿嵌されているため、伝達トルク制限部6と治具40との芯出しを行うことができる。その結果、伝達トルク制限部6とスプラインハブ15との芯出しを行うことができる。また、この製造方法では、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実に伝達トルク制限部6とスプラインハブ15との芯出しを行うことができる。
(3)組み付け方法の作用効果
この組み付け方法では、伝達トルク制限部6が突出部2bの内周側に挿嵌されているため、フライホイール2と伝達トルク制限部6との芯出しを行うことができる。その結果、フライホイール2とスプラインハブ15との芯出しを容易にかつ確実に行うことができる。また、この組み付け方法では、ノックピン及びノック孔を設けることなく、容易にかつ確実に伝達トルク制限部とフライホイール2との芯出しを行うことができる。
4.その他の実施形態
本発明は係る上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
本発明のその他の実施形態を以下に示す。
(1)突出部及び環状部
本発明の突出部2b及び環状部43は、伝達トルク制限部6の外周側と係合するよう設けられているが、伝達トルク制限部6の内周側と係合するよう設けてもよいし、あるいは伝達トルク制限部6のカバー部材33側に設けてもよい。
本発明の一実施形態としてのトルクリミッタ装置の縦断面図。 トルクリミッタ装置の製造工程。 芯出し用の治具の構造図。
符号の説明
1 トルクリミッタ装置
2 フライホイール(エンジン側部材)
2a フライホイール本体
2b 突出部
2c 内周面
3 トランスミッション入力軸(出力軸)
5 クラッチディスク組立体
6 伝達トルク制限部
13 クラッチディスク
15 スプラインハブ(出力側部材)
21 摩擦フェーシング
30 第1プレート
31 第2プレート
32 コーンスプリング
33 カバー部材
33a 外周面
40 治具
41 治具本体
42 スプライン軸
43 環状部
43a 内周面

Claims (9)

  1. エンジンに連結されたエンジン側部材から出力軸へ伝達されるトルクを制限するためのトルクリミッタ装置であって、
    外周部に摩擦連結部が固定された入力側プレートと、
    前記出力軸に係合する出力側部材と、
    前記入力側プレートと前記出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、
    入力側プレートに装着され前記摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、前記エンジン側部材から前記出力軸へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部とを備え、
    前記エンジン側部材と前記伝達トルク制限部とは、半径方向に相対移動不能に係合している、
    トルクリミッタ装置。
  2. 前記エンジン側部材は、
    円板状のエンジン側部材本体と、
    前記エンジン側部材本体から軸方向へ突出した環状の突出部とを有しており、
    前記突出部と前記伝達トルク制限部とは、半径方向に係合している、
    請求項1に記載のトルクリミッタ装置。
  3. 前記伝達トルク制限部は、前記突出部の内周側に挿嵌される、
    請求項2に記載のトルクリミッタ装置。
  4. 前記突出部の内周面と前記伝達トルク制限部の外周面とは、半径方向に当接している、
    請求項2または3に記載のトルクリミッタ装置。
  5. 外周部に摩擦連結部が固定された入力側プレートと、出力軸に係合する出力側部材と、前記入力側プレートと前記出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、エンジン側部材に装着され前記摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、前記エンジン側部材から前記出力軸へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部とを備えるトルクリミッタ装置の製造方法であって、
    前記入力側プレートと、前記出力側部材と、前記ダンパー機構とをクラッチディスク組立体として組み付ける第1工程と、
    前記伝達トルク制限部を芯出し用の治具に組み付けることで前記伝達トルク制限部と前記治具との芯出しを行う第2工程と、
    前記クラッチディスク組立体を前記治具に組み付ける第3工程と、
    前記伝達トルク制限部と前記クラッチディスク組立体との組み付けを行う第4工程とを含み、
    前記伝達トルク制限部と前記治具とは、半径方向に相対移動不能に係合している、
    を含むトルクリミッタ装置の製造方法。
  6. 前記治具は、
    円板状の治具本体と、
    前記治具本体の中心部から突出したスプライン軸と、
    前記治具本体から軸方向へ突出した環状の環状部とを有しており、
    前記第2工程は、前記伝達トルク制限部と前記環状部とが半径方向に係合することで前記伝達トルク制限部と前記治具との芯出しを行う工程を含む、
    請求項5に記載のトルクリミッタ装置の製造方法。
  7. 前記第2工程は、前記伝達トルク制限部が前記環状部の内周側に挿嵌されることで前記伝達トルク制限部と前記治具との芯出しを行う工程を含む、
    請求項6に記載のトルクリミッタ装置。
  8. 外周部に摩擦連結部が固定された入力側プレートと、出力軸に係合する出力側部材と、前記入力側プレートと前記出力側部材とを円周方向に弾性的に連結するダンパー機構と、エンジン側部材に装着され前記摩擦連結部を1対のプレート間で狭持して、前記エンジン側部材から前記出力軸へ伝達されるトルクを制限する伝達トルク制限部とを備えるトルクリミッタ装置を、前記エンジン側部材に装着するための組み付け方法であって、
    前記出力側部材と前記伝達トルク制限部とを芯出し組み付けして前記トルクリミッタ装置を組み付ける第1工程と、
    前記伝達トルク制限部と前記エンジン側部材とを半径方向に係合させることで前記エンジン側部材と前記出力側部材との芯出しを行い、前記トルクリミッタ装置を前記伝達トルク制限部を介して前記エンジン側部材に組み付ける第2工程と、
    を含むトルクリミッタ装置の組み付け方法。
  9. 前記エンジン側部材は、環状のエンジン側部材本体と、前記エンジン側部材本体から軸方向へ突出した環状の突出部とを有し、
    前記第2工程は、前記伝達トルク制限部を前記突出部の内周側に挿嵌することで前記伝達トルク制限部と前記エンジン側部材との芯出しを行う工程を含む、
    請求項8に記載のトルクリミッタ装置の組み付け方法。
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