JP2006010359A - ダイヤモンド電極の終端化方法 - Google Patents

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栄長泰明
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松本浩一
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Takeshi Nakanishi
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Abstract

【課題】ダイヤモンド電極42を所望の原子で精度良く終端化し、より完全な終端表面を有するダイヤモンド電極42を得る方法を提供する。
【解決手段】水素終端化されているダイヤモンド電極42の表面を、希ガスをスパッタリングすることにより、当該希ガスで終端化する希ガス終端化工程と、そのダイヤモンド電極42の表面の希ガスを、目的物質で置き換えて終端化する目的物質終端化工程とを備えるようにした。
【選択図】図2

Description

本発明は電気化学的な方法を用いた濃度測定などに用いられるダイヤモンド電極の製造方法に関するものである。
導電性多結晶ダイヤモンド薄膜を用いたダイヤモンド電極には、物理的且つ化学的に安定で劣化しにくい、バックグランド電流が小さい等の特徴に加えて、電気化学測定可能な電位範囲(電位窓)が広く、しかも分子吸着過程を伴うような電極反応が進みにくい等、ボルタンメトリー法により目的とする物質に特徴的なピーク電位を検出しやすいといった優れた特徴を有する。
このようなダイヤモンド電極は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により気相合成されたダイヤモンド薄膜から作製されるが、そのままの状態では電極表面は水素によって終端しており、例えば尿酸とアスコルビン酸等、ピーク電位が重なる複数の反応種の検出を行う場合、水素終端表面のままでは検出は不可能であっても、例えば特許文献1にあるように、陽極酸化などの方法で酸素終端化して利用すれば、ダイヤモンド電極が大きな表面双極子モーメントを持つようになり、反応種に特徴的なピーク電位の位置をシフトさせ、各物質を分離して検出することが可能となる。
そこで、検出の感度を高めるためには、ダイヤモンド電極の表面をより完全に例えば酸素終端化しておき、ピーク電位のシフト量を増やすのが望ましい。
しかし、水素終端の導電性多結晶ダイヤモンド薄膜はsp3結合が水素で終端された表面構造を持ち、化学的に安定であるため、水素を全て酸素で置換し、完全に酸素終端化することは困難であった。
特開2001−147211公報
そこで本発明は、所望の原子で精度良く終端化し、より完全な終端表面とすることで、物質の濃度測定において測定感度に優れたダイヤモンド電極を得る方法の提供をその主たる課題としたものである。
すなわち本発明は、水素終端化されているダイヤモンド電極の表面を、希ガスをスパッタリングすることにより、当該希ガスで終端化する希ガス終端化工程と、そのダイヤモンド電極の表面の希ガスを、目的物質で置き換えて終端化する目的物質終端化工程とを備えたことを特徴とする方法である。
このような方法であれば、まず、ファンデルワールス力で弱く物理吸着していると考えられる希ガスでダイヤモンド電極の表面を置換し、その後目的物質で置換することで目的物質による終端化を行っているので、直接に目的物質で終端化を行うのに比べ、より高い精度で終端化を行うことが可能であり、その結果、検出の感度を上げることが可能となり、例えば酸素終端化を行う場合には、ダイヤモンド電極表面が大きな表面双極子を持つようになり、その結果、検出電流ピークが重なっていた反応種を分離して定量できる。
また、前記希ガスがアルゴンであれば、一般的なスパッタリング装置を用いることができ可用性に優れている。
更に、スパッタリングにより、ダイヤモンド電極の表面を平坦化するように構成しているものであれば、ダイヤモンド電極表面の面積を減少させ、被検液中に共存する種々の物質を吸着させにくくなるため、検出感度の低下を抑制し、メンテナンスに要する負担を軽減させるといったことが可能となる。
このような高い精度で終端化を行うことが可能な方法により得られるダイヤモンド電極を用いて溶液中の物質の濃度測定に用いるのであれば、検出の感度を上げることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る濃度測定装置1は、溶液に浸漬した電極の間に電圧を印加し、流れる電流を計測することで物質の濃度を測定するものであり、例えばポーラログラフィック法(定電位電解法)等に用いられるものである。図1に示すように、電圧を制御し、測定した濃度を表示する濃度測定装置本体2と、溶液に浸漬する濃度測定センサ3とからなるものである。
以下に各部を詳細に説明する。
濃度測定装置本体2は測定結果を表示する表示部21と、操作部22、濃度測定センサ3を着脱可能に接続するためのコネクタ23及び図示しない電池とを備えた例えばマイコンシステムである。
濃度測定センサ3のケーシング33は、図2に示すように、先端部31において細く、基端部32において太く、段階的に径が増えるよう、四つの円筒33(a)〜33(d)をその中心軸を一致させ連結した形状をしており、その先端部31には第一電極部4、中間先端側の円筒33(b)の側面には第二電極部5が設けられている。また、基端部32からは濃度測定装置本体2と接続するためのケーブル34が延出しており、末端には濃度測定装置本体2側のコネクタ23と接続可能なコネクタ35が設けられている。
第一電極部4は、図3に示すように、第一電極支持体41と、第一電極支持体41上に成膜された導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42であるダイヤモンド電極42とからなるものであり、ダイヤモンド電極42の表面は酸素終端化されている。第一電極支持体41は、表面にダイヤモンド電極42を堆積させたシリコン基板411と、銀ペーストを介してシリコン基板411裏面に接続された金属板412とからなるものである。金属板412にはリード線R1が接続され、シリコン基板411にはボロン原子が高濃度にドープされており、リード線R1とダイヤモンド電極42とは電気的に接続されている。また、濃度測定センサ3が水密となり、且つ測定時にダイヤモンド電極42のみが溶液に接触されるように絶縁物質であるエポキシ樹脂E等でシリコン基板411が現れる面を覆っている。
第二電極部5は、略円筒状の銀からなる第二電極支持体51に塩化銀52をコーティングすることで銀/塩化銀により構成される。第二電極支持体51の内側にはコーティングされていない部分が存在し、該部分にはリード線R2が接続されており、リード線R2と銀電極52とは電気的に接続されている。
第一電極部4及び第二電極部5へ接続されているリード線R1,R2は、濃度測定センサ3の基端部32よりケーブル34のチューブ内に納められ延出しており、濃度測定装置本体2と接続されている。
次に、ダイヤモンド電極42の製造方法を説明する。
ダイヤモンド電極42として導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42を用いている。このダイヤモンド薄膜の成膜にはマイクロ波プラズマCVD法を利用している。まず、ボロン等の不純物原子が高濃度にドープされたシリコン基板411の表面に、ダイヤモンド粉末による研磨等の手法で成長核を付け、CVD装置の反応室内の基板ホルダーにセットする。反応室内に水素を導入して2.45GHzのマイクロ波によってプラズマ化し、メタンなどの炭素源ととともに導電性を付与するためのボロン化合物等の不純物源を水素プラズマ中で反応させ、ボロンドープされたダイヤモンド薄膜42をシリコン基板411上に約15μm以上堆積させている。またこのようにして成膜されたダイヤモンド薄膜42は、抵抗率が約0.1mΩ・mの電気伝導性の多結晶であり、その表面の凹凸は約1μmの高低差を有している。
そして、この導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42を、アルゴン・スパッタ装置6を用いて、所定時間以上スパッタエッチングすることでダイヤモンド薄膜の表面をアルゴン終端化する。
ここでいうアルゴン・スパッタ装置6とは、上面及び底面を閉じ密閉した円筒状ケーシング61内部に、中心軸を一致させて設けた円筒状のアノード電極62と、アノード電極62の底面側に隙間又は絶縁体をおいて約0.08mm離間した位置に設けた円板状のカソード電極63と、前記アノード電極62上方のケーシング側面に設けたアルゴン・ガス導入口64及び吸引口65とを有しており、アルゴン・グロー放電領域内で高周波を用いることでスパッタリング可能としたものである。
アルゴン終端化を行う際に、アルゴン・スパッタ装置6内部では、アルゴン・ガスを流し、約0.1Paのアルゴン・ガス雰囲気とし、カソード電極63の上面に導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42を設置しておき、アノードとカソード間に13.56MHzの高周波で変化する電圧を印加することでグロー放電を起こしている。このため、アノード電極62の作る中空空間においてアルゴンがイオン化し、アルゴン・イオンが導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42へ衝突しスパッタリングが起こり、その表面の凸部からおよそ優先的に物理的にエッチングすることで平坦化される。この場合毎秒約10nmの速さでエッチングされ、また、約1000秒間スパッタリングすることで凹凸の高低差を0.1μm以下とできることが判っている。このとき、ダイヤモンド薄膜42表面にはアルゴンがファンデルワールス力によって弱く物理吸着しているものと考えられる。
そして、アルゴン終端化されている導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42を酸性またはアルカリの性の電解液で酸化反応が生じる電圧を印加し陽極酸化したり、酸素プラズマに短時間さらしてプラズマ酸化したり、ダイヤモンドが燃焼しない温度の酸素雰囲気中でアニーリングして熱酸化したりすることで、酸素終端化を行う。
このようにして酸素終端化された導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42を表面に堆積させたシリコン基板411の裏面を、銀ペーストを用いて金属板412へ電気的に接続し、ダイヤモンド電極42を堆積させたシリコン基板411が現れる面をエポキシ樹脂E等で覆うことで、導電性多結晶ダイヤモンド薄膜42の酸素終端化された表面のみが被検液に接触し、ダイヤモンド電極42として機能するようにしている。
このような製造方法であれば、まず、ファンデルワールス力で弱く物理吸着していると考えられる希ガスでダイヤモンド電極42の表面を置換し、その後目的物質で置換することで目的物質による終端化を行っているので、直接に目的物質で終端化を行うのに比べ、より高い精度で終端化を行うことが可能である。また例えば酸素終端化を行う場合、ダイヤモンド電極42表面が大きな双極子モーメントを持つようになり、反応種に特徴的なピーク電位の位置をシフトさせ、ピーク電位が重なる複数の物質を検出することが可能となる。
本発明に係る濃度測定装置1を用いて、例えば尿酸とアスコルビン酸とを含む溶液についてそれぞれの濃度を測定するには、濃度測定センサ3を被検液へ浸漬し、各電極間に所定の電圧を印加し電流を測定すればよい。
このようにすれば、例えばダイヤモンド電極の表面が高い精度で酸素終端化されているため大きな表面双極子モーメントを有し、尿酸とアスコルビン酸とのそれぞれがピーク電流を与える電位の差をより大きく広げられるため、それぞれの物質の濃度を区別して測定することができる。また、平坦化され表面積が減少しているため、バックグランド電流が減少してS/N比が向上し、また被検液中に電極表面に吸着しやすい成分が共存しても、測定中の電流の低下が起こりにくい。
なお、本発明は上記実施形態に限られない。
例えば、終端化する希ガスはもちろんアルゴンに限らず、ヘリウムやネオン、クリプトン、キセノン、ラドン等であっても構わない。
前記各構成の一部又は全部を適宣組み合わせてもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
本発明の実施形態における濃度測定装置の構成を示す濃度測定装置構成図。 同実施形態における濃度測定センサの構成をしめす濃度測定センサ構成図。 同実施形態における濃度測定センサの第一電極付近を拡大した濃度測定センサ拡大構成図。 アルゴン・スパッタ装置を模式的に説明するアルゴン・スパッタ装置の模式断面図。
符号の説明
42…ダイヤモンド電極(導電性多結晶ダイヤモンド薄膜)

Claims (4)

  1. 水素終端化されているダイヤモンド電極の表面を、希ガスをスパッタリングすることにより、当該希ガスで終端化する希ガス終端化工程と、
    そのダイヤモンド電極の表面の希ガスを、目的物質で置き換えて終端化する目的物質終端化工程とを備えたことを特徴とするダイヤモンド電極終端化方法。
  2. 前記目的物質終端化工程が酸素終端化工程である請求項1記載のダイヤモンド電極終端化方法。
  3. 前記希ガスがアルゴンであることを特徴とする請求項1又は2記載のダイヤモンド電極終端化方法。
  4. 前記希ガス終端化工程において、スパッタリングにより、ダイヤモンド電極の表面を平坦化するように構成していることを特徴とする請求項1,2又は3記載のダイヤモンド電極終端化方法。
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