JP2006009877A - 歯車 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯車表面の残留オーステナイト量、圧縮残留応力の最大値及びその位置を最適化し、もって従来の浸炭歯車よりも大幅に優れた疲労強度を有する歯車を提供する。
【解決手段】歯車表面、特に歯元−歯底間R部における表面から25〜100μm深さでの残留オーステナイト量を15〜25体積%、表面から100〜300μm深さでの残留オーステナイト量を15〜20体積%であって、圧縮残留応力のピーク位置を表面から100μmまでの範囲に設定し、そのピーク値を1000MPa以上とする。
【選択図】なし
【解決手段】歯車表面、特に歯元−歯底間R部における表面から25〜100μm深さでの残留オーステナイト量を15〜25体積%、表面から100〜300μm深さでの残留オーステナイト量を15〜20体積%であって、圧縮残留応力のピーク位置を表面から100μmまでの範囲に設定し、そのピーク値を1000MPa以上とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、例えば自動車の変速機や差動機などに用いられる歯車に係わり、特に疲労強度に優れた浸炭歯車に関するものである。
一般に、上記のような歯車の特に歯元部分には、衝撃的入力の繰り返しに耐え得るだけの疲労強度が要求される。
歯車の疲労強度向上については、ショットピーニングによる残留応力の付与が一般的であり、種々の方法が提案されている。
歯車の疲労強度向上については、ショットピーニングによる残留応力の付与が一般的であり、種々の方法が提案されている。
また、浸炭窒化処理、浸炭処理、さらにショットピーニングを組合わせ、鋼部品の表面からの深さ位置毎の残留オーステナイト量を制御することによって疲労強度を向上させることも知られている(特許文献1参照)。
特許第2636661号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、自動車や各種産業機械のシャフトとして用いられる高強度鋼部品に関するものであって、歯車において疲労亀裂が発生する歯元と歯底間のR部における残留オーステナイト量を上記特許文献1において好適とされる範囲とすることが現実的に困難であるという問題があった。
本発明は、歯車の疲労強度向上に関する上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、従来の浸炭歯車よりも大幅に優れた疲労強度を有する歯車を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく、歯車素材や熱処理条件などについて鋭意検討した結果、歯車の残留オーステナイト量、特に歯元と歯底の間のR部における残留オーステナイト量を最適化すると共に、疲労亀裂の発生位置にピーク値を有する圧縮残留応力を与えることによって、軟質な残留オーステナイトによる硬度低下を抑えて初期亀裂の発生時間を遅らせ、かつ内部の亀裂伝播速度を遅くすることができ、もって歯車の高寿命化を実現できることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の歯車は、歯車表面、とりわけ歯元−歯底間R部における表面から25〜100μm深さでの残留オーステナイト量が15〜25体積%、表面から100〜300μm深さでの残留オーステナイト量が15〜20体積%であって、表面から100μmまでの位置に、1000MPa以上の圧縮残留応力の最大値を有していることを特徴としている。
本発明によれば、歯車表面、特に疲労亀裂が発生する部位である歯元−歯底間のR部において、初期亀裂が発生する表面から25〜100μmの深さ範囲における残留オーステナイト量と、亀裂伝播に影響する表面から100〜300μmの深さ範囲における残留オーステナイト量をそれぞれ規制すると共に、初期亀裂の伝播速度を抑制するのに有効な圧縮残留応力をそのピーク位置が初期亀裂が発生する表面から100μmまでの深さ範囲となるように付与したことから、早期の亀裂発生が防止されると共に、亀裂が発生したとしてもその進展が抑えられ、歯車の早期破損を防止することができ、大幅な疲労強度向上が可能になる。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
歯車における歯元曲げ疲労による亀裂発生及び進展の形態として、疲労破壊の初期段階に発生する亀裂は、その表面から100μmまでの深さ、特に最表層部分を除いた25〜100μmの間に生じ、この間における残留オーステナイト量が体積比で25%を超えると軟質である残留オーステナイトに歪が集中して、亀裂の伝播が促進され、早期の破損、疲労強度低下が引き起こされることになるため、当該深さ範囲における残留オーステナイト量を25体積%以下とすることが必要である。
一方、当該深さ範囲における残留オーステナイト量が15%に満たない場合には、亀裂進展中に亀裂進展先の残留オーステナイトを加工誘起させてマルテンサイト化させることによる、亀裂進行の遅延という効果が得られない。
一方、当該深さ範囲における残留オーステナイト量が15%に満たない場合には、亀裂進展中に亀裂進展先の残留オーステナイトを加工誘起させてマルテンサイト化させることによる、亀裂進行の遅延という効果が得られない。
また、表面から100〜300μmの深さ範囲における残留オーステナイト量は、亀裂伝播に影響することから、当該深さ範囲における残留オーステナイト量を15〜20体積%の範囲とすることが必要である。すなわち、100〜300μm深さにおける残留オーステナイト量が体積比で20%を超えると、残留オーステナイトへの歪集中が起き、逆に残留オーステナイト量が体積比で15%に満たない場合には、マルテンサイト化による亀裂遅延が起きないという不都合が生じる。
歯車表面各位置における残留オーステナイト量を上記の範囲内とするには、浸炭前に低温の浸炭窒化処理を行うことが必要である。
そして、残留圧縮応力を付与することが初期亀裂の伝播速度を抑制するのに有効であることから、例えば、ショットピーニングやバニシングなどの処理を施すことによって、歯車表面に圧縮残留応力を付与し、圧縮残留応力の最大値が1000MPa以上、かつ最大応力値の発生位置が表面から100μmまでの深さ範囲となるようにする。
ここで、圧縮残留応力最大値を100MPa以上としたのは、残留応力値がこの値に満たない場合には、初期亀裂の伝播速度を抑制するだけの効果が十分に得られないことによる。
ここで、圧縮残留応力最大値を100MPa以上としたのは、残留応力値がこの値に満たない場合には、初期亀裂の伝播速度を抑制するだけの効果が十分に得られないことによる。
なお、歯車表面に圧縮残留応力を付与するに際しては、ショットピーニングにおける投射材の粒径、硬さ、材質、又はショットピーニングの投射条件(アークハイトなど)を適宜変化させることにより、ピーク値やピーク深さを制御することが可能である。
歯車においては、歯元曲げ疲労によって亀裂が発生する部位は、応力が集中する歯元と歯底間のR部であることから、少なくとも当該R部において上記条件、すなわち表面から25〜100μm深さでの残留オーステナイト量が15〜25体積%、表面から100〜300μm深さでの残留オーステナイト量が15〜20体積%、表面から100μmまでの位置に1000MPa以上の圧縮残留応力の最大値を有する条件を満たすことが必要となる。
本発明の歯車の素材鋼としては、いわゆるはだ焼鋼として知られている鋼材、すなわちJIS G 4102〜4106に規定されるニッケルクロム鋼材SNC415,SNC815、ニッケルクロムモリブデン鋼材SNCM220,SNCM415,SNCM616,SNCM815、クロム鋼材SCr415,SCr420、クロムモリブデン鋼材SCM415,SCM418,SCM420,SCM421,SCM822、マンガンクロム鋼材SMnC420などを使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。
(実施例1、2)
表1に示す2種類の鋼材A及びBを常法に基づいて鍛造し、焼きならし処理を施したのち、図1に示すような形状及び寸法の歯車テストピース(モジュール:1.5)に機械加工し、図2に示すヒートパターンで浸炭窒化処理を行なった。
次いで、表2に示すC条件によってショットピーニング処理を施し、当該実施例1及び2に係わる歯車テストピースを作製した。
表1に示す2種類の鋼材A及びBを常法に基づいて鍛造し、焼きならし処理を施したのち、図1に示すような形状及び寸法の歯車テストピース(モジュール:1.5)に機械加工し、図2に示すヒートパターンで浸炭窒化処理を行なった。
次いで、表2に示すC条件によってショットピーニング処理を施し、当該実施例1及び2に係わる歯車テストピースを作製した。
(比較例1)
JIS G 4052に規定されるクロムモリブデン鋼材SCM420Hを用いて、上記実施例と同様の方法によって、図1に示すた歯車テストピースに機械加工し、図3に示すヒートパターンのガス浸炭処理を施したのち、表2に示すD条件によってショットピーニング処理を施し、当該比較例に係わる歯車テストピースを作製した。
JIS G 4052に規定されるクロムモリブデン鋼材SCM420Hを用いて、上記実施例と同様の方法によって、図1に示すた歯車テストピースに機械加工し、図3に示すヒートパターンのガス浸炭処理を施したのち、表2に示すD条件によってショットピーニング処理を施し、当該比較例に係わる歯車テストピースを作製した。
上記実施例及び比較例によって得られた歯車テストピースについて、歯元−歯底間R部における圧縮残留応力のピーク値(最大値)とその位置(ピーク深さ)を求めると共に、表面から50μm及び200μmの深さにおける残留オーステナイト量(体積%)を測定した。この結果を表3に示す。
さらに、上記の各歯車テストピースについて、図4に示す動力循環型疲労試験機を用いて疲労試験を実施した。すなわち、上記実施例及び比較例で作製した各歯車テストピースを相手歯車と噛合わせた後、数段階の一定トルクを与えた状態で所定の回転速度で連続回転させ、歯元に曲げ入力を与え、破損するまでの回転数を求め、S−N線図を作成した。この結果を図5に示す。
以上の結果、圧縮残留応力の最大値が1000MPaを超え、その位置が表面下100μm以内にあって、50μm及び200μm深さにおける残留オーステナイト量が体積比で17〜20%である実施例歯車の場合には、いずれも1900MPa程度の疲労強度(繰返し回数N=105)が得られるのに対し、残留オーステナイト量が15%に満たない比較例歯車の場合には、1800MPaにも満たない疲労強度しか得られないことが確認された。
Claims (1)
- 少なくとも歯元−歯底間R部における表面から25〜100μmの深さ範囲での残留オーステナイト量が15〜25体積%であって、表面から100〜300μmの深さ範囲での残留オーステナイト量が15〜20体積%であると共に、表面から100μmまでの位置に圧縮残留応力の最大値を有し、当該圧縮残留応力の最大値が1000MPa以上であることを特徴とする歯車。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004185762A JP2006009877A (ja) | 2004-06-24 | 2004-06-24 | 歯車 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004185762A JP2006009877A (ja) | 2004-06-24 | 2004-06-24 | 歯車 |
Publications (1)
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JP2006009877A true JP2006009877A (ja) | 2006-01-12 |
Family
ID=35777352
Family Applications (1)
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JP2004185762A Pending JP2006009877A (ja) | 2004-06-24 | 2004-06-24 | 歯車 |
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JP (1) | JP2006009877A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009236822A (ja) * | 2008-03-28 | 2009-10-15 | Komatsu Ltd | 歯車の圧縮残留応力評価方法および歯車設計方法 |
JP2016183399A (ja) * | 2015-03-26 | 2016-10-20 | 新日鐵住金株式会社 | 浸炭機械構造部品 |
-
2004
- 2004-06-24 JP JP2004185762A patent/JP2006009877A/ja active Pending
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